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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1195820
審判番号 不服2006-10845  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-05-25 
確定日 2009-04-15 
事件の表示 特願2001-153401「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月20日出願公開、特開2001-321518〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年7月2日に出願された特願平11-189193号の一部を、平成13年5月23日に新たな特許出願とした特願2001-153401号であり、平成18年4月13日付けで拒絶の査定がなされ、これに対し、同年5月25日に拒絶査定不服の審判請求がなされたものである。
当審では平成20年11月11日付で拒絶理由を通知して、それに対して平成20年12月12日付で手続補正がなされたものである。

2.本願発明について
【1】本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成20年12月12日付で手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
複数の図柄を表示可能な図柄表示部を有する図柄表示器を備え、割込処理で実行される制御フローに基づいて、図柄変動信号の発生によって、前記図柄表示部に表示の図柄を変動させ、その後、所定時間後に確定図柄を表示する可変表示ゲームを行う遊技機であって、
可変表示ゲーム中における複数の図柄表示部を前記図柄表示器に表示し、その図柄表示器に表示の図柄表示部の表示位置を変更することができ、
前記複数の図柄表示部を互いに、図柄表示部の縁取り形状の相違によって識別可能に形成することを特徴とする遊技機。」(以下、「本願発明」という。)

【2】特許法第29条第2項の適用
[1]引用発明
当審で通知した平成20年11月11日付の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に日本国内で頒布された刊行物である引用文献1(特開平9-253290号公報)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(1-1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 画像表示装置と、
この画像表示装置の画面に各々表示され、複数種類の図柄を個々に変動表示するとともに、各変動表示を個々に停止させる複数の図柄表示部と、
前記図柄表示部に個々に停止表示された停止図柄の組合せが、予め定められた特別の賞態様を構成する組合せである場合に、特別の遊技を行わせる遊技制御手段とを備えた弾球遊技機において、
上記弾球遊技機は、
前記各図柄表示部の変動表示を、通常速度により停止させる通常停止態様、及び前記各図柄表示部の少なくとも1つの変動表示を、前記通常速度よりも低速なリーチ変動速度により停止させるリーチ停止態様を記憶した停止態様記憶手段と、
前記各図柄表示部を画像表示装置の画面中で移動させる図柄移動手段と、
前記図柄移動手段により、前記各図柄表示部が、予め定められた第1の配列に移動した後、変動表示を開始した場合には、通常確率で、停止態様記憶手段に記憶された変動態様のうち、リーチ停止態様にもとづく図柄の変動停止を行わせるとともに、前記第1の配列とは異なる第2の配列に移動した後、変動表示を開始した場合には、前記通常確率よりも低い低確率で、リーチ停止態様にもとづく図柄の変動停止を行わせる停止態様制御手段とを備えたことを特徴とする弾球遊技機。」
(1-2)「【0015】
上記遊技部20内には、図2に示すように、そのほぼ中央に、画像表示装置30が配置されている。また、遊技部20内には、図2に示すように、画像表示装置30の下方に、遊技球の入球により、画像表装置30の図柄の変動表示を開始させる始動口40が設けられている。・・・
【0017】
・・・上記画像表示装置30は、図2に示すように、その中央に、図柄を表示するための画面31が設けられている。この画面31には、図3に示すように、左側、中央、右側の3カ所に、複数種類の図柄、例えば「1?9」までの数字を個々に変動表示するとともに、各変動表示を個々に停止させる図柄表示部32が設けられている。また、前記各図柄表示部32は、キャラクターにより装飾されている。
【0018】
前記3個の画像表示部32は、それぞれ、画面31の上下方向に個別に移動可能に形成されている。そして、本実施の形態では、前記各図柄表示部32は、画面31の上の位置、中央の位置、下の位置の3つの位置で図柄の変動表示等を各々行うことができる。また、各図柄表示部32は、図3に示すように、キャラクターが口を大きく開口した状態で、図柄を表示し、口を閉めた状態では図柄を表示しないように形成されている。
【0019】
そして、各図柄表示部32のキャラクターの開口に停止表示された停止図柄の組合せが、予め定められた特別の賞態様を構成する組合せ、図3に示すように、例えば左側の図柄表示部32、中央の図柄表示部32、右側の図柄表示部32に、停止表示された数字が、それぞれの「7」である場合に、特別の遊技が可能となる。つぎに図1を用いて、パチンコ機10の制御回路の概略について説明する。
【0020】
パチンコ機10の制御回路は、図1に示すように、CPUから構成された電気的制御装置100を中心に構成されている。そして、電気的制御装置100の入力側には、始動口40に入球した遊技球を検出して検出信号を出力する入球センサ41と、各入賞口50,50に入球した遊技球を検出して入賞信号を出力する検出センサ51とが接続されている。
【0021】
また、電気的制御装置100の出力側には、特別の遊技の際に用いられる、遊技球が入球可能な変動入賞装置60と、図柄を表示するための画像表示装置30とが各々接続されている。電気的制御装置100は、各図柄表示部32に停止表示させる停止図柄の組合せを決定する停止図柄決定手段101と、この停止図柄決定手段101により決定された停止図柄の情報にもとづいて所定の確率で各図柄表示部32の配列を第1の配列又は第2の配列と決定する配列決定手段110と、前記配列決定手段110によって決定された第1の配列又は第2の配列とするために各図柄表示部32を画像表示装置30の画面31中で上下に移動させる図柄移動手段111と、前記入球センサ41からの検出信号を入力すると、各図柄表示部32による図柄の変動表示を開始させる始動制御手段112と、前記各図柄表示部32の変動表示を、通常速度により停止させる通常停止態様、及び前記各図柄表示部32の少なくとも1つの変動表示を、前記通常速度よりも低速なリーチ変動速度により停止させるリーチ停止態様を記憶した停止態様記憶手段113と、前記図柄移動手段111により、前記各図柄表示部32が、予め定められた第1の配列(例えば、図4に示すように、各図柄表示部32が直線上に並んでいる状態)に移動した後、変動表示を開始した場合には、通常確率で、停止態様記憶手段113に記憶された停止態様のうち、リーチ停止態様にもとづく図柄の変動停止を行わせるとともに、前記第1の配列とは異なる第2の配列(例えば、図5に示すように、図柄表示部32が左右対称に並んでいる状態及び図6に示すように、左右非対称に並んだ状態)に移動した後、変動表示を開始した場合には、前記通常確率よりも低い低確率で、リーチ停止態様にもとづく図柄の変動停止を行わせる停止態様制御手段114と、前記図柄表示部32に個々に停止表示された停止図柄の組合せが予め定められた特別の賞態様を構成する組合せ、例えば「7」「7」「7」である場合に、特別の遊技(例えば変動入賞装置60の開口を開放して遊技球の入球が容易な状態を形成する。)を行わせる遊技制御手段115とを備えている。」
(1-3)「【0026】
つぎに、上記構成を備えたパチンコ機の画像表示装置30において、その画面31中の図柄表示部32における図柄の変動表示前から図柄の変動表示を開始して図柄の変動表示を停止するまでの過程を、図7,8を用いて説明する。まず、ステップ10においては、画像表示装置30の画面31中のキャラクターは、図柄の変動表示の開始前には、図柄移動手段111によって、上下方向に連続して移動し、配列が確定していない状態となっている。
【0027】
つぎに、各図柄表示部32が図柄の変動表示を開始する前に、図柄の変動表示を開始する位置まで移動する。そして、配列決定手段110による決定に基づいて、所定の確率、例えば「約1/40」でステップ20に示すように、各図柄表示部32が第1の配列の状態、本実施の形態では、中段位置に配列された状態となって、その位置が確定する。
【0028】
ステップ20で、各図柄変動表示部32の位置が確定すると、始動制御手段112によって図柄の変動が開始され、所定の確率、本実施の形態では「約1/5」の確率で次のステップ30に進む。このステップ30においては、リーチ状態となる。このリーチ状態は、図柄を停止表示している停止図柄の組合せが、特別の賞態様を構成する図柄の組合せに含まれていて、図柄を変動表示している図柄表示部32の図柄が、特別の賞態様を構成する図柄の組合せに含まれる図柄であれば、停止図柄の組合せが特別の賞態様を構成する図柄の組合せとなる状態をいう。本実施の形態では、例えば図柄を停止表示している左側の図柄表示部32及び右側の図柄表示部32に、図柄「7」が停止表示され、中央の図柄表示部32に、図柄「7」が停止表示されれば、特別の賞態様を構成する図柄の組合せとなっている。
【0029】
そして、このステップ30においては、停止態様制御手段114によって、リーチ停止態様となる。・・・そして、ステップ30で、中央の図柄表示部32における図柄の変動表示の速度が、リーチ変動速度となると、停止態様制御手段114によって、所定の確率、例えば「約5/21」で次のステップ40に進むか、所定の確率、例えば「約8/21」で次のステップ41に進むか、あるいは所定の確率、例えば「約8/21」で次のステップ42に進む。
【0030】
・・・また、このステップ40においては、中央の図柄表示部32のキャラクターが、横方向に拡大して、左側のキャラクターと、右側のキャラクターとを吸収して、中央のキャラクターが左側の図柄表示部32と右側の図柄表示部32と、中央の図柄表示部32となった状態となる。
・・・
【0033】
・・・また、このステップ41においては、中央の図柄表示部32が、縦方向に拡大して、先に表示した図柄の一部と、これから表示する図柄の一部とが現在表示している図柄とともに変動表示された状態となる。
・・・
【0036】
・・・また、このステップ42においては、中央の図柄表示部32のキャラクターが口をパクパクさせ、口を開いたときに変動表示されている図柄が見えるようになる。」
(1-4)「【0043】
しかし、先に説明したステップ20において、ステップ30に進んで、リーチ状態となる確率が、例えば「約1/5」であるのに対し、当該ステップ50からステップ60に進んで、リーチ状態となる確率は、例えば「約1/15」である。・・・
【0044】
・・・ステップ60において、リーチ状態となると、停止態様制御手段114によって、所定の確率、例えば「約1/40」で、ステップ70に進む。
【0045】
前記ステップ70においては、図柄移動手段111によって、各図柄表示部32の位置が再び変化する。具体的には、中央の図柄表示部32が下に移動して画面31の中段に位置し、左側及び右側の図柄表示部32が上に移動して画面31の中段に位置する状態、すなわち第1の配列の状態となる。ステップ70において、図柄移動手段111によって、各図柄表示部32が第1の配列状態となると、所定の確率で、先に説明したステップ30に進む。
【0046】
先に説明したステップ60では、所定の確率、例えば「約39/40」で先に説明したステップ42に進む。また、先に説明したステップ50において、停止態様制御手段114によって、ステップ60に進まない場合には、所定の確率、例えば「約14/15」で、ステップ51に進む。」
(1-5)図3には、キャラクターにより装飾された3個の図柄表示部32が、各図柄表示部32の縁取り形状は同じ形状であるか又はほぼ同じ形状であるが、キャラクターの眼に当たる領域内の黒塗り部分又は直線の配置が異なることにより、全体として各図柄表示部32が異なるキャラクターであるように見えるものが記載されている。

上記の記載(1-1)?(1-5)及び図面によれば、引用文献1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「複数種類の図柄を個々に変動表示するとともに各変動表示を個々に停止させる複数の図柄表示部32が画面に表示される画像表示装置を備え、前記図柄表示部32に個々に停止表示された停止図柄の組合せが、予め定められた特別の賞態様を構成する組合せである場合に、特別の遊技を行わせる遊技制御手段を備えた弾球遊技機であって、
各図柄表示部32に停止表示させる停止図柄の組合せを決定する停止図柄決定手段101と、この停止図柄決定手段101により決定された停止図柄の情報にもとづいて所定の確率で各図柄表示部32の配列を第1の配列又は第2の配列と決定する配列決定手段110と、前記配列決定手段110によって決定された第1の配列又は第2の配列とするために各図柄表示部32を画像表示装置30の画面31中で上下に移動させる図柄移動手段111と、入球センサ41からの検出信号を入力すると、各図柄表示部32による図柄の変動表示を開始させる始動制御手段112と、前記図柄移動手段により、前記各図柄表示部が、予め定められた第1の配列に移動した後、変動表示を開始した場合には、通常確率で、停止態様記憶手段に記憶された変動態様のうち、リーチ停止態様にもとづく図柄の変動停止を行わせるとともに、前記第1の配列とは異なる第2の配列に移動した後、変動表示を開始した場合には、前記通常確率よりも低い低確率で、リーチ停止態様にもとづく図柄の変動停止を行わせる停止態様制御手段と備え、リーチ状態となると、約1/40の確率で各図柄表示部32の位置が再び変化して、前記第1の配列の状態となり、その後は、約5/21の確率で中央の図柄表示部32のキャラクターが、横方向に拡大して、左側のキャラクターと、右側のキャラクターとを吸収して、中央のキャラクターが左側の図柄表示部32と右側の図柄表示部32と、中央の図柄表示部32となった状態となるか、約8/21の確率で中央の図柄表示部32が、縦方向に拡大して、先に表示した図柄の一部と、これから表示する図柄の一部とが現在表示している図柄とともに変動表示された状態となるか、あるいは、約8/21の確率で中央の図柄表示部32のキャラクターが口をパクパクさせ、口を開いたときに変動表示されている図柄が見える状態のいずれかに進み、
前記各図柄表示部32は、キャラクターにより装飾され、キャラクターにより装飾された3個の図柄表示部32が、各図柄表示部32の縁取り形状は同じ形状であるか又はほぼ同じ形状であるが、キャラクターの眼に当たる領域内の黒塗り部分又は直線の配置が異なることにより、全体として各図柄表示部32が異なるキャラクターであるように見える、弾球遊技機。」(以下、「引用発明」という。)

[2]対比
引用発明は、上記[1]に示した如くのものである。
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「複数種類の図柄」は本願発明の「複数の図柄」に相当し、同様に、「個々に変動表示する」は「表示可能な」に、「図柄表示部32」は「図柄表示部」に、「画像表示装置」は「図柄表示器」に、「変動表示を開始させ」は「変動させ」に、「停止図柄」が「個々に停止表示され」は「確定図柄を表示する」に、「弾球遊技機」は「遊技機」にそれぞれ相当し、さらに引用発明について以下のことがいえる。
(1)引用発明の「図柄表示部(図柄表示部32)」は、「入球センサ41からの検出信号を入力すると、各図柄表示部32による図柄の変動表示を開始」するものであって、「入球センサ41からの検出信号を入力する」ことが、「図柄表示部(図柄表示部32)に表示の図柄を変動させ(変動表示を開始させ)」ることの条件となっているから、これを、「図柄変動信号の発生によって」ということができる。
引用発明は、「複数種類の図柄を個々に変動表示するとともに各変動表示を個々に停止させ」るものであって、「停止図柄」が「個々に停止表示され」ることを「確定図柄を表示する」ということができるから、所定時間後であるかどうかは別にして、その後、確定図柄を表示するものであるという限度で、本願発明の「その後、所定時間後に確定図柄を表示する」に共通する。
引用発明は、「遊技機(弾球遊技機)」であって、「複数種類の図柄を個々に変動表示するとともに各変動表示を個々に停止させ」、その結果、「図柄表示部32に個々に停止表示された停止図柄の組合せが、予め定められた特別の賞態様を構成する組合せである場合に、特別の遊技を行わせる」ものであるから、前記の如く「複数種類の図柄を個々に変動表示するとともに各変動表示を個々に停止させ」ることを、「可変表示ゲームを行う」と称することができる。
(2)引用発明は、「リーチ状態となると、約1/40の確率で各図柄表示部32の位置が再び変化して、前記第1の配列の状態となり、その後は、約5/21の確率で中央の図柄表示部32のキャラクターが、横方向に拡大して、左側のキャラクターと、右側のキャラクターとを吸収して、中央のキャラクターが左側の図柄表示部32と右側の図柄表示部32と、中央の図柄表示部32となった状態となるか、約8/21の確率で中央の図柄表示部32が、縦方向に拡大して、先に表示した図柄の一部と、これから表示する図柄の一部とが現在表示している図柄とともに変動表示された状態となるか、あるいは、約8/21の確率で中央の図柄表示部32のキャラクターが口をパクパクさせ、口を開いたときに変動表示されている図柄が見える状態のいずれかに進」むものであるから、「リーチ状態」となった後に「各図柄表示部32の位置が再び変化」することを、「複数の図柄表示部を前記図柄表示器に表示し、その図柄表示器に表示の図柄表示部の表示位置を変更することができ」ということができる。また、前記の「図柄表示部の表示位置を変更する」時点は、「リーチ状態」となった後であるし、その後も変動が続くから、この時点を、「可変表示ゲーム中における」と称することができる。
(3)引用発明の「図柄表示部(図柄表示部32)」は、「キャラクターにより装飾され、キャラクターにより装飾された3個の図柄表示部32が、各図柄表示部32の縁取り形状は同じ形状であるか又はほぼ同じ形状であるが、キャラクターの眼に対応する領域内の黒塗り部分又は直線の配置が異なることにより、全体として各図柄表示部32が異なるキャラクターであるように見える」から、それぞれの「図柄表示部(図柄表示部32)」は互いに識別可能であると認められる。したがって、引用発明は、複数の図柄表示部を互いに、識別可能に形成するという限度で、本願発明の「複数の図柄表示部を互いに、図柄表示部の縁取り形状の相違によって識別可能に形成する」に共通する。

[3]一致点・相違点
したがって、本願発明と引用発明とは、
複数の図柄を表示可能な図柄表示部を有する図柄表示器を備え、図柄変動信号の発生によって、前記図柄表示部に表示の図柄を変動させ、その後、確定図柄を表示する可変表示ゲームを行う遊技機であって、
可変表示ゲーム中における複数の図柄表示部を前記図柄表示器に表示し、その図柄表示器に表示の図柄表示部の表示位置を変更することができ、
前記複数の図柄表示部を互いに、識別可能に形成する遊技機、である点で一致し、以下の各点で相違する。

相違点;
相違点(A)
図柄の変動について、本願発明は、「割込処理で実行される制御フローに基づいて」行うのに対し、引用文献1には、その点について明記されていない点。

相違点(B)
本願発明は、確定図柄の表示を、図柄表示部に表示の図柄を変動させ、その後、「所定時間後に」行うのに対し、引用文献1には、その点について明記されていない点。

相違点(C)
複数の図柄表示部を互いに識別可能に形成する具体的手段として、本願発明は、「図柄表示部の縁取り形状の相違によって」行うのに対し、引用発明は、そのような構成を備えていない点。

[4]相違点の判断
(1)相違点(A)について。
弾球遊技機に代表される遊技機分野において、割込処理で実行される制御フローに基づいて、図柄表示の制御を行うことは従来周知の技術であり、例えば、特開平8-155108号公報、特開平10-127882号公報、特開平4-231086号公報に記載されるとおりである。
したがって、上記相違点(A)に係る本願発明の構成を採用することは当業者が想到容易である。

(2)相違点(B)について。
弾球遊技機に代表される遊技機分野において、図柄が変動を開始してから、その後、所定時間後に図柄の停止を行うことは従来周知の技術であり、例えば、上記特開平8-155108号公報、特開平6-277346号公報に記載されるとおりである。
したがって、引用発明の確定図柄の表示に上記周知技術を採用して、図柄表示部に表示の図柄を変動させ、その後、「所定時間後に」行うものとすることは、単なる周知技術の付加にすぎず、上記相違点(B)に係る本願発明の構成を採用することは当業者が想到容易である。

(3)相違点(C)について。
前記[2](3)に示したとおり、引用発明において、それぞれの「図柄表示部(図柄表示部32)」は互いに識別可能であると認められる。そして、縁取り形状の相違によって、二の状態を識別可能に形成するという表示態様は従来周知であって、例えば、特開平8-141170号公報〔段落【0034】、【0043】、図38、図39を参照。図柄変動時に通常確率時と高確率時とでバック図柄を変更し、それぞれ、ゴルフピンの旗のバック図柄91、バスケットのシャツのバック図柄95を表示している。〕、特開平10-165649号公報〔段落【0124】、図27を参照。キャラクタ選択用の画面において、仮選択状態のキャラクタを実線で示し、非選択状態のキャラクタを破線で示している。〕に記載されるとおりである。
したがって、引用発明の複数の「図柄表示部(図柄表示部32)」を識別可能とするため、縁取り形状は同じ形状であるか又はほぼ同じ形状であるが、キャラクターの眼に対応する領域内の黒塗り部分又は直線の配置が異なることにより識別可能とすることに替え、上記周知技術の如く、縁取り形状の相違によって識別可能とすることは、単なる周知技術の適用であるから、上記相違点(C)に係る本願発明の構成を採用することは当業者が想到容易である。

[5]むすび
相違点(A)?(C)に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、本願の他の請求項について論じるまでもなく、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-02 
結審通知日 2009-02-10 
審決日 2009-02-23 
出願番号 特願2001-153401(P2001-153401)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 太田 恒明  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 ▲吉▼川 康史
森 雅之
発明の名称 遊技機  
代理人 犬飼 達彦  

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