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審決分類 |
審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1195824 |
審判番号 | 不服2006-12347 |
総通号数 | 114 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-06-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-06-15 |
確定日 | 2009-04-16 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第149496号「診断ネットワークシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 3月31日出願公開、特開平10- 83315〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.手続の経緯 本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成9年6月6日(優先日:平成8年6月7日、出願番号:特願平8-182601号、特願平8-182602号、特願平8-182603号)の出願である。 そして、平成9年7月25日付けで、特願平8-182603号についての優先権主張が取り下げられ、平成17年3月25日付けで拒絶の理由が通知され、平成18年5月12日付けで拒絶査定がなされた。これに対して、同年6月15日付けで審判請求がなされ、同年7月18日付けで手続補正がなされたものである。 II.平成18年7月18日付け手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成18年7月18日付け手続補正を却下する。 [理由] (1)本件補正 平成18年7月18日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は、 「 【請求項1】 複数のデバイスと通信を行う診断ネットワークシステムにおいて、 前記複数のデバイスの内の関連した各1つのデバイスと個別に通信を行う複数の分散形試験ユニットと、 マスタ分散形試験ユニットと、 前記マスタ分散形試験ユニットおよび前記複数の分散形試験ユニットを通信媒体で接続して情報の伝達を可能にしたネットワークと、 前記マスタ分散形試験ユニットを経由して前記複数の分散形試験ユニットと通信を行うシステムモニタユニットと、を備え、このシステムモニタユニットは、 前記複数の分散形試験ユニットから情報を収集するコントロールユニットと、 前記複数の分散形試験ユニットから収集された前記情報を基に編集された編集情報を格納しているデータベースと、 前記収集された情報を解析し、前記複数のデバイスの内の点検修理が必要な1つ以上のデバイスの状態を識別する診断ユニットとを有する、ことを特徴とした診断ネットワークシステム。 ・・・(中略)・・・ 【請求項5】 前記システムモニタユニットと通信を行うとともにユーザに前記複数の分散形試験ユニットのそれぞれと通信を行わせるユーザインタフェースを有する請求項1記載の診断ネットワークシステム。 ・・・(中略)・・・ 【請求項14】 前記システムモニタは、前記ユーザインタフェースと通信を行って、前記複数のデバイスのトラブルシューティングを行うのに必要なツールを示す手段を含む請求項5記載の診断ネットワークシステム。 【請求項15】 前記システムモニタは、前記ユーザインタフェースと通信を行って、前記複数のデバイス上で実施できる点検修理の処理手順を示す手段を含む請求項5記載の診断ネットワークシステム。 ・・・(中略)・・・ 【請求項24】 医用モダリティを形成する複数のデバイスと通信を行う診断ネットワークシステムであって、 前記複数のデバイスの内の関連したデバイスと個別に通信を行う複数の分散形試験ユニットと、 この複数の分散形試験ユニットの試験動作を統括するマスタ分散形試験ユニットと、 前記マスタ分散形試験ユニットおよび前記複数の分散形試験ユニットを通信媒体で接続して情報の伝達を可能にしたネットワークと、 前記マスタ分散形試験ユニットを経由して前記複数の分散形試験ユニットと通信を行うシステムモニタユニットと、を備え、このシステムモニタユニットは、 前記複数の分散形試験ユニットから前記複数のデバイスの機能に関する情報を収集するコントロールユニットと、 前記複数の分散形試験ユニットから収集された前記情報を基に編集された編集情報を格納しているデータベースと、 前記収集情報を解析するとともに前記編集情報を参照して前記複数のデバイスの動作状態を診断する診断ユニットとを有する、ことを特徴とした診断ネットワークシステム。 【請求項25】 前記複数の分散形試験ユニット、前記マスタ分散形試験ユニット、前記ネットワーク、および前記システムモニタユニットを備えたシステムが複数の前記医用モダリティに個別に接続されている請求項24記載の診断ネットワークシステム。 【請求項26】 前記複数の医用モダリティは、血管X線イメージングシステム、X線CTスキャナ、および磁気共鳴イメージングシステムの内の少なくとも1種類の医用モダリティを含む請求項25記載の診断ネットワーク。 ・・・(後略)・・・」 から 「 【請求項1】 複数のデバイスと通信を行う診断ネットワークシステムにおいて、 前記複数のデバイスの内の関連したそれぞれのデバイスと個別に通信を行って当該デバイスの動作状態に関する情報を常時、収集する複数の分散形試験ユニットと、 マスタ分散形試験ユニットと、 前記マスタ分散形試験ユニットおよび前記複数の分散形試験ユニットを通信媒体で相互に接続して情報の伝達を可能にしたネットワークと、 前記マスタ分散形試験ユニットを経由して前記複数の分散形試験ユニットと通信を行うシステムモニタユニットと、 前記システムモニタユニットと通信を行うとともにユーザに前記複数の分散形試験ユニットのそれぞれと通信を行わせるユーザインタフェースと、を備え、 前記システムモニタユニットは、 前記複数の分散形試験ユニットから前記動作状態に関する情報を収集するコントロールユニットと、 前記複数の分散形試験ユニットから収集された前記動作情報に関する情報を基に編集された編集情報を格納するデータベースと、 前記収集された情報を解析して前記複数のデバイスについて点検修理が必要か否かを常時、判定する手段と、前記ユーザインタフェースとの通信に応じて前記複数のデバイスの内の点検修理が必要なデバイスについてトラブルシューティングを行うのに必要なツール及び点検修理の処理手順を示す手段を有する診断ユニットと、を備えたことを特徴とした診断ネットワークシステム。 【請求項2】 前記複数の分散形試験ユニット、前記マスタ分散形試験ユニット、前記ネットワーク、および前記システムモニタユニットを備えたシステムが複数の医用モダリティに個別に接続されている請求項1記載の診断ネットワークシステム。 【請求項3】 前記複数の医用モダリティは、血管X線イメージングシステム、X線CTスキャナ、および磁気共鳴イメージングシステムの内の少なくとも1種類の医用モダリティを含む請求項2記載の診断ネットワークシステム。 【請求項4】 前記複数の分散形試験ユニットは、前記複数のデバイスそれぞれの所望の試験位置に取り付けられ、且つ、その試験位置における当該デバイスの動作データを前記動作状態に関する情報として連続的に収集する構成を有する請求項1に記載の診断ネットワークシステム。 【請求項5】 前記複数のデバイスは、同一の医用モダリティを構成する複数のデバイスである請求項4に記載の診断ネットワークシステム。」 へと補正された。 (2)判断 本件補正による補正後の請求項1は、補正前の請求項1に、請求項1を引用する請求項5に記載された「ユーザーインターフェース」についての発明特定事項、請求項5を引用する請求項14及び請求項15にそれぞれ記載された「システムモニタ」についての発明特定事項を加入すると共に、補正前の請求項1に記載された「複数の分散ユニット」、「前記情報」、「診断ユニット」について、発明特定事項を限定する補正である。 そうすると、補正後の請求項1は、補正前の請求項14あるいは請求項15において、発明特定事項を限定した請求項であるといえるから、この補正後の請求項1についての補正は、特許請求の範囲の減縮にあたる。 しかしながら、補正後の請求項2-5は、補正後の請求項1を引用する請求項であるところ、補正後の請求項1に対応する補正前の請求項14あるいは請求項15を引用する請求項は、補正前の特許請求の範囲に存在しない。 そうすると、補正後の請求項2-5は、補正前の特許請求の範囲に記載された請求項を補正した請求項ではなく、本件補正により新たに追加された請求項である。 してみれば、本件補正が含む、補正後の請求項2-5を追加する補正は、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明、の何れの目的にも合致しない補正である。 (3)むすび したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 III.本願発明 平成18年6月15日付け手続補正は、上記II.のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、願書に最初に添付された明細書の特許請求の範囲に記載された以下のとおりのものである。 複数のデバイスと通信を行う診断ネットワークシステムにおいて、 前記複数のデバイスの内の関連した各1つのデバイスと個別に通信を行う複数の分散形試験ユニットと、 マスタ分散形試験ユニットと、 前記マスタ分散形試験ユニットおよび前記複数の分散形試験ユニットを通信媒体で接続して情報の伝達を可能にしたネットワークと、 前記マスタ分散形試験ユニットを経由して前記複数の分散形試験ユニットと通信を行うシステムモニタユニットと、を備え、このシステムモニタユニットは、 前記複数の分散形試験ユニットから情報を収集するコントロールユニットと、 前記複数の分散形試験ユニットから収集された前記情報を基に編集された編集情報を格納しているデータベースと、 前記収集された情報を解析し、前記複数のデバイスの内の点検修理が必要な1つ以上のデバイスの状態を識別する診断ユニットとを有する、ことを特徴とした診断ネットワークシステム。 IV.引用発明 引用文献1.特開平3-207136号公報 引用文献2.特開平3-259352号公報 引用文献3.特開平6-67940号公報 引用文献1は原査定の拒絶の理由に引用された文献であり、引用文献2,3は、当業者の周知技術を示すため当審において新たに引用した文献である。 (1)引用文献1には、図面と共に次の事項が記載されている(下線は当審において付加した。)。 A.「(産業上の利用分野) この発明は、LANに接続されているプログラムコンピュータ、プログラマブルコントローラおよびプロセス入出力装置の動作状態を常時監視し、各機器の異常検出を行なうプロセス異常監視装置に関する。」(1頁左欄20行-右欄5行) B.「このような構内LANにおけるプロセス異常監視装置の従来例が第3図に示してあり、1はスキャン伝送方式のLANであり、このLAN1にステーション2,3,4.5それぞれを介してプロセスコンピュータ6、プロセス人出力装置7、プログラマブルコントローラ8および異常監視手段としてのスーパーバイザリコントロールシステム9が接続されている。 そして、各機器6?9とステーション2?5との間の状態把握機能10により各ステーション2?5に各機器の状態を記憶しておき、LAN1のスキャン伝送機能11によりスーパーバイザリコントロールシステム9により異常/正常を確認するようにしている。 しかしながら、この構成による異常/正常の状態認識を信じることができるのは、あくまでもプロセスコンピュータ6、プロセス人出力装置7、プロセスコントローラ8それぞれが正常に動作している時であり、それゆえに認識できる異常のレベルが機器によりまちまちであった。」(2頁左上欄4行-右上欄3行) C.「(課題を解決するための手段) この発明のプロセス異常監視装置は、ローカルエリアネットワーク(LAN)と、このLANに各々ステーションを介して接続されたプロセスコンピュータ、プログラマブルコントローラおよびプロセス人出力装置と、情報蓄積手段と、前記プロセスコンピュータ、プログラマブルコントローラ及びプロセス人出力装置の各機器にメッセージ伝送により働きかけて各機器の動作状態情報を取込んで前記情報蓄積手段に蓄積し、当該情報蓄積手段に蓄積した情報を躬析して各機器の動作傾向を監視し、異常検出時に異常検出信号を出力するプロセス異常監視手段とを備えたものである。」(2頁左下欄16行-右下欄8行) D.「(実施例) 以下、この発明の実施例を図に基づいて詳説する。 第1図はこの発明の一実施例を示しており、従来例と同様にLAN1に対してステーション2,3,4,5それぞれを介してプロセスコンピュータ6、プロセス入出力装置7、プログラマブルコントローラ8が接続されており、さらにこの実施例の特徴としてのプロセス異常監視手段であるスーパーバイザリコントロールシステム17が接続されている。そして、このスーパーバイザリコントロールシステム17に対して情報蓄積手段としてのメモリ18が備えられている。 LAN1はスキャン伝送機能11と共にメッセジ伝送機能19を備えており、スキャン伝送の合間にプロセスコンピュータ6、プロセス人出力装置7およびプログラマプルコントローラ8と、スーパーバイザリコントロールシステム18との間でメッセージ伝送機能19により情報の授受ができるようにしている。 なお、その他の構成要素については、従来例として第3図において示した構成要素と同一のものについては同一の符号を付し、その説明は省略した。」(3頁左上欄2行-右上欄5行) E.「次に、上記の構成のプロセス異常監視装置の動作について説明する。 第2図はこの実施例のプロセス異常監視装置の動作を示すフローチャートであり、LAN1のスキャン伝送機能11は、1ミリ秒周期の高速で伝送を行なうことができ、このスキャン伝送機能11に影響を与えないようにスキャン伝送とスキャン伝送との合間にメッセージ伝送機能19によりメッセージ伝送を行なう(ステップSll,Sl2)。 そこでスーパーバイザリコントロールシステム17は、メッセージ伝送機能19により、LAN1に接続されているプロセスコンピュータ6、プロセス入出力装置7、プログラマブルコントローラ8の動作状態を正常/異常にかかわらず取出し、メモリ18に記憶していく(ステップS13)。 そして、この取出して記憶した情報の傾向を常に認識し、所定のしきい値を超えた場合にはスーパーバイザリコントロールシステム17が直接異常検出信号を外部に出力し、必要に応じて警報ブザーを鳴動させたり警報ランプを点灯させたりし、さらにこれらと同時にスーパーバイザリコントロールシステム17のコンソール(図示せず)により異常表示を行なう(ステップS14,S15)。 このようにして、スーパーバイザリコントロルシステム17にスキャン伝送機能11と共にメッセージ伝送機能1つを付加し、正常時にも各機器の動作状態についてのデータ収集を行なって各種のデータを蓄積し、その傾向を見て所定のしきい値を超えた場合にシステム異常として通知を行なうことにより、プロセスの異常監視を行なうのである。」(3頁右上欄6行-左下欄17行) (a)上記Aの「この発明は、LANに接続されているプログラムコンピュータ、プログラマブルコントローラおよびプロセス入出力装置の動作状態を常時監視し、各機器の異常検出を行なうプロセス異常監視装置に関する。」との記載、及び、上記Cの「この発明のプロセス異常監視装置は、ローカルエリアネットワーク(LAN)と、このLANに各々ステーションを介して接続されたプロセスコンピュータ、プログラマブルコントローラおよびプロセス人出力装置と、・・・(中略)・・・を備えたものである。」との記載からみて、引用文献1には、ローカルエリアネットワークに接続されているプログラムコンピュータ、プログラマブルコントローラおよびプロセス入出力装置の動作状態を常時監視し、各機器の異常検出を行なうプロセス異常監視装置の発明が開示されている。 (b)上記Dの「第1図はこの発明の一実施例を示しており、従来例と同様にLAN1に対してステーション2,3,4,5それぞれを介してプロセスコンピュータ6、プロセス入出力装置7、プログラマブルコントローラ8が接続されており」との記載からみて、プロセスコンピュータ、プロセス入出力装置、プログラマブルコントローラは、それぞれ、ステーションを介してローカルエリアネットワークに接続されている。 (c)上記Bの「このような構内LANにおけるプロセス異常監視装置の従来例が第3図に示してあり、・・・(中略)・・・そして、各機器6?9とステーション2?5との間の状態把握機能10により各ステーション2?5に各機器の状態を記憶しておき、LAN1のスキャン伝送機能11によりスーパーバイザリコントロールシステム9により異常/正常を確認するようにしている。」との記載を参照すれば、従来例において、各機器の状態は、各機器とステーションとの間の状態把握機能により各ステーションに記憶されるのであるが、上記Bの「しかしながら、この構成による異常/正常の状態認識を信じることができるのは、あくまでもプロセスコンピュータ6、プロセス人出力装置7、プロセスコントローラ8それぞれが正常に動作している時であり、それゆえに認識できる異常のレベルが機器によりまちまちであった。」との記載、及び、上記Eの「そこでスーパーバイザリコントロールシステム17は、メッセージ伝送機能19により、LAN1に接続されているプロセスコンピュータ6、プロセス入出力装置7、プログラマブルコントローラ8の動作状態を正常/異常にかかわらず取出し、メモリ18に記憶していく(ステップS13)。」との記載からみて、引用文献1に記載されたプロセス異常監視装置においては、プロセスコンピュータ等の動作状態が異常であっても、その動作状態を取出すことができるのであるから、動作状態を取出す機能は、プロセスコンピュータ等とは別個の機器であるステーションにより実現されるのであり、そのステーションが、取出した動作状態を記憶しておく状態把握機能を備えるものである。 (d)上記Dの「第1図はこの発明の一実施例を示しており、・・・(中略)・・・さらにこの実施例の特徴としてのプロセス異常監視手段であるスーパーバイザリコントロールシステム17が接続されている。」との記載、及び、第1図には、スーパーバイザリコントロールシステムがステーションを介してLANに接続することが図示されていることからみて、引用文献1に記載されたプロセス異常監視装置は、ステーションを介してローカルエリアネットワークに接続されているスーパーバイザリコントロールシステムを有している。 (e)上記Eの「第2図はこの実施例のプロセス異常監視装置の動作を示すフローチャートであり、LAN1のスキャン伝送機能11は、1ミリ秒周期の高速で伝送を行なうことができ、このスキャン伝送機能11に影響を与えないようにスキャン伝送とスキャン伝送との合間にメッセージ伝送機能19によりメッセージ伝送を行なう(ステップSll,Sl2)。 そこでスーパーバイザリコントロールシステム17は、メッセージ伝送機能19により、LAN1に接続されているプロセスコンピュータ6、プロセス入出力装置7、プログラマブルコントローラ8の動作状態を正常/異常にかかわらず取出し、メモリ18に記憶していく(ステップS13)。 そして、この取出して記憶した情報の傾向を常に認識し、所定のしきい値を超えた場合にはスーパーバイザリコントロールシステム17が直接異常検出信号を外部に出力し、必要に応じて警報ブザーを鳴動させたり警報ランプを点灯させたりし、さらにこれらと同時にスーパーバイザリコントロールシステム17のコンソール(図示せず)により異常表示を行なう(ステップS14,S15)。」との記載からみて、上記(c)にて述べたように、各ステーションが、各機器の動作状態を取出し、取出した動作状態を記憶しておく状態把握機能を備えることを考慮すれば、スーパーバイザリコントロールシステムは、各ステーションの状態把握機能が記憶しておいた各機器の動作状態を、ローカルエリアネットワークのメッセージ伝送機能により取り出してメモリに記憶していき、この記憶した情報の傾向を常に認識し、所定のしきい値を超えた場合には、異常検出信号を外部に出力するものである。 以上で検討したことから、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 ローカルエリアネットワークに接続されているプログラムコンピュータ、プログラマブルコントローラおよびプロセス入出力装置の動作状態を常時監視し、各機器の異常検出を行なうプロセス異常監視装置において、 前記プロセスコンピュータ、プロセス入出力装置、プログラマブルコントローラは、それぞれ、ステーションを介してローカルエリアネットワークに接続されており、前記各ステーションは、各機器の動作状態を取出し、取出した動作状態を記憶しておく状態把握機能を備え、 ステーションを介してローカルエリアネットワークに接続されているスーパーバイザリコントロールシステムを有し、 前記スーパーバイザリコントロールシステムは、各ステーションの状態把握機能が記憶しておいた各機器の動作状態を、ローカルエリアネットワークのメッセージ伝送機能により取出してメモリに記憶していき、この記憶した情報の傾向を常に認識し、所定のしきい値を超えた場合には、異常検出信号を外部に出力する プロセス異常監視装置 (2)引用文献2(2頁右下欄15行-3頁右上欄6行)、引用文献3(5-10段落)にそれぞれ開示されているように、システムの稼働状態の情報を収集し、収集した情報を基に編集された情報をデータベースに格納し、そのデータベースに格納された編集情報を利用することは、本願出願前に周知の技術である。 V.対比 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「プログラムコンピュータ」、「プログラマブルコントローラ」、「プロセス入出力装置」は、それぞれ、本願発明の「デバイス」に相当するから、それら3つを併せた「各機器」は、本願発明の「複数のデバイス」に相当する。 引用発明の「各ステーション」は、各機器それぞれをローカルエリアネットワークに接続すると共に、各機器の動作状態を取出すものであるから、動作状態を取出す際に、接続された各1つの機器と個別に通信を行うものであり、本願発明の「前記複数のデバイスのうちの関連した各1つのデバイスと個別に通信を行う複数の分散形試験ユニット」に相当する。 引用発明の「ステーションを介してローカルエリアネットワークに接続されているスーパーバイザリコントロールシステム」における「ステーション」は、本願発明の「マスタ分散形試験ユニット」に相当する。 引用発明の「ローカルエリアネットワーク」は、各機器及びスーパーバイザリコントロールシステムに、各ステーションを介して接続するから、各ステーションを通信媒体で接続して情報の伝達を可能にしたネットワークであるので、本願発明の「前記マスタ分散形試験ユニットおよび前記複数の分散形試験ユニットを通信媒体で接続して情報の伝達を可能にしたネットワーク」に相当する。 引用発明の「スーパーバイザリコントロールシステム」は、ステーションを介してローカルエリアネットワークに接続されていると共に、各ステーションの状態把握機能が記憶しておいた各機器の動作状態を、ローカルエリアネットワークのメッセージ伝送機能により取り出すから、自らのステーションを経由して各機器の各ステーションとメッセージ伝送機能により通信を行うものであるので、本願発明の「前記マスタ分散形試験ユニットを経由して前記複数の分散形試験ユニットと通信を行うシステムモニタユニット」に相当する。 引用発明において、スーパーバイザリコントロールシステムが「各ステーションの状態把握機能が記憶しておいた各機器の動作状態を、ローカルエリアネットワークのメッセージ伝送機能により取り出」すことは、スーパーバイザリコントロールシステムが有する、各ステーションから動作状態の情報を収集する手段により行われることであるから、その手段は、本願発明における「前記複数の分散形試験ユニットから情報を収集するコントロールユニット」に相当する。 引用発明において、ローカルエリアネットワークのメッセージ伝送機能により取り出した動作状態を記憶する「メモリ」は、各ステーションから収集された情報に基づく情報(動作状態の情報)を格納している手段である点で、本願発明の「前記複数の分散形試験ユニットから収集された前記情報を基に編集された編集情報を格納しているデータベース」に対応する。 引用発明において、スーパーバイザリコントロールシステムが「この記憶した情報の傾向を常に認識し、所定のしきい値を超えた場合には、異常検出信号を外部に出力する」ことは、スーパーバイザリコントロールシステムが有する、メモリに記憶した各機器の動作状態の情報を解析して、異常を検出した1つ以上の機器の状態を異常と識別する手段により行われることであって、機器が異常であるとは点検修理が必要な状態にあるということだから、前記の手段は、本願発明の「前記収集された情報を解析し、前記複数のデバイスの内の点検修理が必要な1つ以上のデバイスの状態を識別する診断ユニット」に相当する。 そして、引用発明の「プロセス異常監視装置」は、スーパーバイザリコントロールシステムがッセージ伝送機能により複数の機器と通信を行うことで、機器の異常を診断するネットワークシステムであるから、本願発明の「複数のデバイスと通信を行う診断ネットワークシステム」に相当する。 以上で検討したことから、本願発明と引用発明とは、以下に挙げる一致点で一致し、相違点で相違している。 (一致点) 複数のデバイスと通信を行う診断ネットワークシステムにおいて、 前記複数のデバイスの内の関連した各1つのデバイスと個別に通信を行う複数の分散形試験ユニットと、 マスタ分散形試験ユニットと、 前記マスタ分散形試験ユニットおよび前記複数の分散形試験ユニットを通信媒体で接続して情報の伝達を可能にしたネットワークと、 前記マスタ分散形試験ユニットを経由して前記複数の分散形試験ユニットと通信を行うシステムモニタユニットと、を備え、このシステムモニタユニットは、 前記複数の分散形試験ユニットから情報を収集するコントロールユニットと、 前記複数の分散形試験ユニットから収集された前記情報に基づく情報を格納している手段と、 前記収集された情報を解析し、前記複数のデバイスの内の点検修理が必要な1つ以上のデバイスの状態を識別する診断ユニットとを有する、ことを特徴とした診断ネットワークシステム。 (相違点) 前記複数の分散形試験ユニットから収集された前記情報に基づく情報が、本願発明においては「前記複数の分散形試験ユニットから収集された前記情報を基に編集された編集情報」であるのに対して、引用発明においては「各ステーションの状態把握機能が記憶しておいた各機器の動作状態」の情報であり、その情報を格納している手段が、本願発明では「データベース」であるのに対して、引用発明では「メモリ」である点。 VI.判断 上記相違点について検討する。 上記IV.(2)にて述べたように、システムの稼働状態の情報を収集し、収集した情報を基に編集された情報をデータベースに格納し、そのデータベースに格納された編集情報を利用することは、本願出願前に周知の技術である。 引用発明において、各機器から収集される動作状態の情報は、システムの稼働状態の情報であり、メモリに格納された情報を(デバイスの状態の識別に)利用するのであるから、上記の周知技術を考慮して、前記複数の分散形試験ユニットから収集された前記情報に基づく情報を「前記複数の分散形試験ユニットから収集された前記情報を基に編集された編集情報」とし、その情報を格納している手段を「データベース」とすることは、当業者にとって格別困難なことではない。 そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用発明及び周知技術から当業者であれば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。 VII.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-02-13 |
結審通知日 | 2009-02-17 |
審決日 | 2009-03-04 |
出願番号 | 特願平9-149496 |
審決分類 |
P
1
8・
573-
Z
(G06F)
P 1 8・ 571- Z (G06F) P 1 8・ 572- Z (G06F) P 1 8・ 574- Z (G06F) P 1 8・ 121- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 石川 正二、鳥居 稔、浜岸 広明 |
特許庁審判長 |
吉岡 浩 |
特許庁審判官 |
中里 裕正 鈴木 匡明 |
発明の名称 | 診断ネットワークシステム |
代理人 | 関口 俊三 |
代理人 | 波多野 久 |