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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1195826
審判番号 不服2006-13100  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-22 
確定日 2009-04-16 
事件の表示 特願2000-247332「回路基板とその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 2月28日出願公開、特開2002- 64270〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続の経緯
本願は、平成12年8月17日の出願であって、平成17年10月18日付拒絶理由通知に対し、同年12月19日付で意見書及び手続補正書が提出されたが、平成17年10月18日付拒絶理由通知書に記載した理由によって、平成18年5月19日付で拒絶査定がなされ、これを不服として、同年6月22日に審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正書が提出され、同年8月22日付で前置報告がなされ、平成20年8月8日付で審尋がなされ、同年9月24日に回答書が提出されたものである。

[2]平成18年6月22日付手続補正についての補正却下の決定

<補正却下の決定の結論>
平成18年6月22日付手続補正を却下する。

<理由>
[2-1]補正の内容
平成18年6月22日付手続補正により、特許請求の範囲の請求項1は次のとおりに補正された。
「【請求項1】複数の貫通導通孔を備えた非圧縮性の基材と前記非圧縮性の基材の両面に形成された接着層と前記接着層または前記貫通導通孔上に形成された回路パターンとを有する両面回路基板が少なくとも1枚と、
複数の貫通導通孔を備えた非圧縮性の基材と前記非圧縮性の基材の両面に形成された接着層とを有する絶縁基材が少なくとも1枚とが互いに積層された構成と、
最外層に回路パターンとを備え、
前記非圧縮性の基材は加熱加圧して硬化されて作製されたものであり、
前記貫通導通孔は、前記非圧縮性の基材中央部及び端部を含む箇所に設けられた貫通孔に充填された導電性ペーストと前記接着層から突出した導電性ペーストが加熱加圧により圧縮・硬化されて形成されたものであり、
前記接着層は、Bステージ状態の樹脂が加熱加圧により変形して硬化されて形成されたものであることを特徴とする多層の回路基板。」

[2-2]補正の目的
上記請求項1の補正は、補正前の請求項1に係る発明の発明特定事項である「基材」について、「非圧縮性の」を付加して「非圧縮性の基材」と限定し、さらに「前記非圧縮性の基材は加熱加圧して硬化されて作製されたものであり、」を付加して限定し、また、同請求項1に係る発明の発明特定事項である「貫通導通孔」を形成する「貫通孔」について、「前記非圧縮性の基材中央部及び端部を含む箇所に設けられた貫通孔」と限定し、また、同請求項1に係る発明の発明特定事項である「接着層」について、「Bステージ状態の樹脂が加熱加圧により硬化されて形成された」とされているのを、「変形して」を付加して「加熱加圧により変形して硬化されて形成された」と限定するものである。
したがって、当該補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

[2-3]独立特許要件
次いで、特許請求の範囲の減縮を目的とする上記補正後の請求項1に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。

(1)補正後の本願発明
上記補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明1」という。)は、平成18年6月22日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、上記[2-1]に記載したとおりのものと認める。

(2)引用刊行物とその記載事項
これに対して、本願出願前に頒布された下記の刊行物1?3(以下、「引用刊行物1」?「引用刊行物3」という。)には、それぞれ以下の事項が記載されている。
引用刊行物1:特開平7-263828号公報(原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2)
引用刊行物2:特開平11-298105号公報(同じく引用文献1)
引用刊行物3:特開2000-156566号公報(同じく引用文献6)

(2-1)引用刊行物1:特開平7-263828号公報
(1a)「【請求項1】基材の両表面に、熱硬化型樹脂層が存在し、前記熱硬化型樹脂層の表層にパターニングされた回路電極が形成され、かつ前記基材と前記熱硬化型樹脂層とを貫通する貫通孔が形成されており、前記貫通孔に前記両表面の回路電極どうしを電気的に接続するための導電性物質が充填されているプリント配線基板。
【請求項2】請求項1のプリント配線基板の少なくとも片面に、基材の両表面に熱硬化型樹脂層が存在し、前記熱硬化型樹脂層の一方の表層にパターニングされた回路電極が形成された層が外側になるように積層され、かつ前記基材と前記熱硬化型樹脂層とを貫通する貫通孔が形成されており、前記貫通孔に前記一表面の回路電極に電気的に接続するための導電性物質が充填されているプリント配線基板。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】、【請求項2】)、
(1b)「【0032】・・・熱硬化型樹脂層を有する離型フィルムで挟み込まれた基材を用い、かつ貫通孔に導電性ペーストを離型フィルム表面まで埋め込んだ構造を有する基材を使用することによって、比較的安定に表面の平滑性に優れたインナービア構成の両面プリント基板が得られる。・・・
【0033】また、基材に硬化済みのものをもちいるので、ビア導体と積層基材との不必要な反応もなく安定した層間接続抵抗とその信頼性が得られる。また基材表面の熱硬化樹脂層が銅箔と基材の接着に寄与し、強固な密着強度が得られる。」(段落【0032】、【0033】)、
(1c)(実施例1)として、図1(a)?(h)が示されるとともに、
「【0035】図1(a)?(h)は本発明の第1の実施例における両面プリント配線基板の製造工程を示す工程断面図である。まず図1(a)に示すようなポリエステルなどの離型性フィルム1(厚み約12μm)を準備する。つぎに図1(b)に示すように熱硬化型樹脂2を塗布し、溶剤分を除去するための乾燥をする。熱硬化型樹脂にはエポキシ樹脂を主成分とするFR-5相当の耐熱性を有する樹脂が選択できる。またその塗布方法は、ドクターブレード法やコーターによる方法などが有効であるが本実施例ではドクターブレード法で塗布厚みを20μmとした。次に基材3を図1(c)のように配して接着させる。用いる基材は、紙、アラミド(芳香族ポリアミド)のような有機質の繊維、またはガラスの織布または不織布が使用できる。本実施例ではアラミド繊維(12μm径で長さ3mm)を不織布として用いたアラミドペーパー(坪量72g/cm^(2))を用いた。このアラミドペーパーに前記と同様の熱硬化型樹脂であるエポキシ樹脂を含浸させたプリプレグを耐熱離型フィルムに挟んで熱硬化(170℃-60kg/cm^(2)真空中)させ、離型フィルムを剥離したものを基材3とした。この様にして作製した基材(厚み約450?700ミクロン)と前記熱硬化型樹脂を塗布した離型フィルムを図のように張り合わせる。張り合わせの条件は、前記離型フィルムに塗布された熱硬化樹脂の硬化温度以下の温度で加圧して行われる。本実施例ではその硬化開始温度が約130℃であったため、105℃の温度で図1(c)のような形で20kg/cm^(2)の圧力で加圧して行った。これにより熱硬化樹脂層はやや軟化し、基材と離型フィルムの接着に寄与する。この時その離型フィルムと基材との接着強度は、あまり弱すぎると後の穴加工で剥離してしまうので良くなく、また強すぎると離型フィルムが剥せなくなるので注意を要する。
【0036】次に図1(d)に示すように、離型フィルム接着後の基材の所定の箇所にレーザ加工法またはドリル加工などを利用して貫通孔4(穴径約250ミクロン)を形成する。次に図1(e)に示すように、貫通孔4に導電性ペーストを充填する。導電性ペースト5を充填する方法としては、貫通孔4を有する基材を印刷機(図示せず)のテーブル上に設置し、直接導電性ペーストを離型性フィルム1の上から印刷する。このとき、上面の離型性フィルム1は印刷マスクの役割と、基材3の表面の汚染防止の役割を果たしている。このとき使用した導電性ペーストは、導電性のフィラーとして平均粒径2μmの球状銀粉末を用い、樹脂としては前記基板材料と同様の熱硬化エポキシ樹脂(無溶剤型)、硬化剤として酸無水物系の硬化剤をそれぞれ85重量%、12.5重量%、2.5重量%となるよう3本ロールにて十分に混練して得たものである。
【0037】導電性ペーストを充填した基材を次は図1(f)に示す様に離型フィルムのみを剥離する。このように作製されたものに片面を粗化処理した35μm厚みの片面粗化銅箔(回路電極)6を粗化面を内側にして図1(g)に示す様に積層圧着する。条件は170℃-1時間真空中で行った。これにより、基材表面のエポキシ熱硬化樹脂が硬化接着し銅箔と基材の接合が行われる。そしてさらに、図1(h)に示す様に周知の技術であるフォトリソ法(ドライフィルムレジストラミネートDFR、紫外線硬化、DFR現像、エッチング、DFR剥離)によって銅箔のパターニングを行う。この後必要に応じてソルダーレジスト形成、文字形成、基板加工などを行い両面プリント基板が得られる。」(段落【0035】?【0037】)、
(1d)(実施例2)として、図2(a)(b)が示されるとともに、
「【0038】本発明の第2の実施例は、実施例1に示した両面プリント配線基板を用い多層プリント配線基板を作製する1例を示す。
【0039】まず内層用の両面板の作製方法は、実施例1と同様、ポリエチレンテレフタレートの離型性フィルム(厚み約12ミクロン)に熱硬化型樹脂(エポキシ樹脂を主成分とするFR-5相当の耐熱性を有する樹脂)を塗布し、溶剤分除去のため乾燥したものである(厚みは20μm)。次に基材の両面に前記離型フィルムを実施例1と同様に配して接着させる。用いる基材として、本実施例ではガラス織布を用いたガラスエポキシ基板材料を用いた。このガラスエポキシ基板材は実施例1と同様の熱硬化型樹脂であるエポキシ樹脂をガラス織布に含浸させたプリプレグ(厚み110μm)であり、同プリプレグを4枚重ね合わせ耐熱離型フィルムに挟んで熱硬化(170℃-60kg/cm^(2)真空中)させ、離型フィルムを剥離したものを基材とした。この様にして作製した基材(厚み約0.4mm)と前記熱硬化型樹脂を塗布した離型フィルムを張り合わせる。張り合わせの条件は、前記と同様離型フィルムに塗布された熱硬化樹脂の硬化温度以下の温度で加圧して行われる。本実施例ではその硬化開始温度が約130℃であるため、105℃の温度で20kg/cm^(2)の圧力で加圧して行った。
【0040】次に離型フィルム接着後の基材の所定の箇所にドリル加工法を利用して貫通孔(穴径約0.4mm)を形成する。この貫通孔に導電性ペーストを充填する。導電性ペーストを充填する方法としては、貫通孔を有する基材を印刷機(図示せず)のテーブル上に設置し、直接導電性ペーストを離型性フィルムの上から印刷する。このとき印刷下面は焼結金属を介して真空吸引される様にし、かつペーストが吸引され焼結金属内に取り込まれないよう紙を前記基材と焼結金属の間に設置する。また上面の離型性フィルムは印刷マスクの役割と、基材の表面の汚染防止の役割を果たしている。このとき使用した導電性ペーストは、導電性のフィラーとして平均粒径1.2μmの球状銅粉末を用い、樹脂としては前記基板材料と同様の熱硬化エポキシ樹脂(無溶剤型)、硬化剤として粉末の潜在性硬化剤を用いた。配合比はそれぞれ85重量%、12.5重量%、2.5重量%となるよう3本ロールにて十分に混練して得たものである。
【0041】導電性ペーストを充填した基材を実施例1と同様に離型フィルムのみを剥離する。このように作製されたものに両面を粗化処理した18μm厚みの両面粗化銅箔で挟み込み積層圧着する。条件は170℃1時間真空中で行った。これにより、基材表面のエポキシ熱硬化樹脂が硬化接着し銅箔と基材の接合が行われる。このようにして作製された銅張り積層基材を、配線を形成するためフォトリソ法にて回路パターンを形成する。以上の様にして作製されたガラスエポキシ両面板を内層配線用中間材として用い多層配線基板を作製する。以下本実施例の多層化の方法を図2に示す。本実施例で示した両面板と別途本実施例と同様に導電性ペーストを充填し、離型フィルムを剥離した図1(f)に示した状態の基材(以下中間板という)を用い、図2(a)のように組み合わせ、片面粗化銅箔(回路電極)7を最外層になるように位置合わせして重ね合わせる。さらに加熱加圧して積層一体化する。積層の条件は、両面板と同一の条件化で行った。このようにして作製された銅張り積層基材を、配線を形成するためフォトリソ法にて回路パターンを形成する。これにより図2(b)に示すように4層プリント配線基板が得られる。
【0042】・・・
【0043】本実施例で組み合わせる基材として、ガラスエポキシ基材による両面板と中間板を用いたが、実施例1で示した様なアラミド不織布との組み合わせでも有効であり、その他紙フェノール基材、ガラス不織布との組み合わせも有効であることはいうまでもない。」(段落【0038】?【0043】)が記載されている。
(1e)図1、図2には、両面プリント配線基板(両面板)に、導電性ペーストを充填する貫通孔が複数設けられていることが示されている。

(2-2)引用刊行物2:特開平11-298105号公報
(2a)「【請求項2】2層以上の絶縁樹脂層と銅回路パターン層が交互に積層された多層プリント配線板において、絶縁性樹脂よりなる絶縁性シートの両側に接着剤層が積層された絶縁樹脂層の、さらにその両側に銅回路パターン層が積層されており、絶縁樹脂層にビアホールが形成され、ビアホールに導電性粉末と熱硬化性樹脂よりなる導電性ペーストの硬化物が充填されており、両側の銅回路パターン層が導電性ペースト硬化物のビアホール開口部表面を覆うように積層され電気的に接続されている構造を有する・・・ビアホール充填型多層プリント基板。
」(【特許請求の範囲】の【請求項2】)、
(2b)「【0005】【課題を解決するための手段】・・・硬化状態の絶縁性シートの両面に接着剤層を積層した絶縁樹脂層を用いることで、シート状に加工された多様な絶縁性樹脂が使用可能となり、また空隙のほとんどない硬化・・・状態のシートを用いるため、穴開けやペースト充填と硬化工程などにおける基板の寸法変化が小さく、特にビアホールの位置精度を容易に向上させることが可能で、高密度な基板の製造に有利になる」(段落【0005】)、
(2c)「【0008】本発明の両面プリント基板の製造方法は、空隙率が5体積%未満で・・・硬化状態の絶縁性樹脂よりなる絶縁性シートの両側に接着剤層を積層して絶縁樹脂層を形成し、この絶縁樹脂層にビアホール用の貫通孔を形成し、この貫通孔に導電性粉末と熱硬化性樹脂よりなる導電性ペーストを充填し、この絶縁樹脂層の両側に全体を覆うように銅箔を重ね、積層体全体を加圧加熱する事により導電性ペーストを加圧硬化させるとともに銅箔を絶縁樹脂層に接着硬化させ、最後に銅箔をパターンエッチングして銅回路パターン層を形成することを特徴とする。
【0009】本発明の多層プリント基板の製造方法は、空隙率が5体積%未満で・・・硬化状態の絶縁性樹脂よりなる絶縁性シートの両側に接着剤層を積層して絶縁樹脂層を形成し、この絶縁樹脂層にビアホール用の貫通孔を形成し、この貫通孔に導電性粉末と熱硬化性樹脂よりなる導電性ペーストを充填し、この絶縁樹脂層と両面・・・プリント基板を交互に重ね、また絶縁樹脂層が最外層の場合にはさらにその上に銅箔を重ねて積層体全体を加圧加熱する事により、導電性ペーストを硬化させるとともに両面・・・プリント基板と銅箔を絶縁樹脂層に接着硬化させ、銅箔が積層された場合は銅箔層をパターンエッチングして銅回路パターン層を形成する・・・。」(段落【0008】、【0009】)、
(2d)「【0013】・・・絶縁性樹脂よりなる絶縁樹脂シートは・・・硬化状態のものが使用できるが、硬化度の高い方が変形を起こし難く好ましい。未硬化では穴開けや導電性ペースト充填工程などでシートの寸法変化が起こりやすく、ビアホールの位置のずれなどの問題が生じる。」(段落【0013】)、
(2e)図1?図4が示されるとともに、「 図1は、本発明のビアホールに導電性ペーストを充填した両面基板の断面構造を説明している。
【0026】・・・
【0027】図3は、本発明のビアホールに導電性ペーストを充填した多層基板の構造を説明している。図4は、本発明の多層基板の製造方法を説明している。・・・硬化状態の絶縁性シート4(図4a)の両側に接着剤層3を積層する(図4b)。ドリルやレーザーなどの各種の穴開け機により所望のビアホール用貫通孔5を形成する(図4c)。スクリーン印刷機などにより、導電性ペースト7を貫通孔5に充填する。図1で示す両面基板を、上記絶縁樹脂層の両側に重ね(図4d)、さらに両側に銅箔6を重ね(図4d)、真空プレスなどの熱プレスにより積層体全体を加圧加熱することにより導電性ペースト2および接着剤層3を硬化させる(図4e)。最後にプリント配線板のパターンエッチングの常法に従い、銅箔回路パターン1を形成して多層基板を形成する(図4f)。」(段落【0025】?【0027】)、
(2f)実施例1として、「【0028】・・・ガラスエポキシ基材硬化物の絶縁板(絶縁層厚み50μm)の両面に、エポキシ系接着剤を塗布し乾燥した。接着剤層の厚みは15μmであった。スルーホール試験パターンに従い直径0.3mmの貫通孔をドリルであけた。メタルマスクを用いたスクリーン印刷機でこの貫通孔に導電性ペーストを充填した。熱風炉中で120℃で40分間予備硬化した後、両側に銅箔(厚み12μm)を重ね、真空熱プレスを用いて25Kg/cm^(2)で加圧しながら170℃で60分間硬化した。バフ研磨機で基板面を研磨したのち、ドライフィルムレジストを用いてパターンエッチングを行い、スルーホール試験サンプルを得た。スルーホールの導電性は11mΩ/穴であった。」(段落【0028】)、
(2g)実施例2として、「【0029】・・・ガラスエポキシ基材硬化物の絶縁板(絶縁層厚み50μm)の両面に、エポキシ系接着剤を塗布し乾燥した。接着剤層の厚みは15μmであった。スルーホール試験パターンに従い直径0.3mmの貫通孔をドリルであけた。メタルマスクを用いたスクリーン印刷機でこの貫通孔に導電性ペーストを充填した。実施例1と同様のプロセスで作成した両面板を上記基板の両側に重ね、真空熱プレスを用いて25Kg/cm^(2)で加圧しながら170℃で60分間硬化し、4層板のスルーホール試験サンプルを得た。スルーホールの導電性は12mΩ/穴であった。積層後の基板表面および断面観察により、ビアホールの位置ずれは50μm以下で良好であった。」(段落【0029】)が記載されている。
(2h)図3、図4には、上記(2e)の多層基板が、絶縁性シートの両側に接着剤層を積層し、各貫通孔に導電性ペーストを充填して複数のビアホールを形成し、さらにその両側に銅箔回路パターンを形成した両面基板と、絶縁性シートの両側に接着剤層を積層し、各貫通孔に導電性ペーストを充填して複数のビアホールを形成した絶縁樹脂層とが積層され、それらの外側に銅箔回路パターンを形成した構造を有しており、該多層基板の中央部及び端部を含む箇所に該ビアホールが設けられている点が図示されている。

(2-3)引用刊行物3:特開2000-156566号公報
(3a)「【請求項1】 絶縁基板の両面に配線パターンが形成され、前記双方の配線パターンが電気的に接続されているプリント配線基板の製造方法であって、以下の(a)?(e)の工程を含む製造方法。
(a)導電性材料が充填された貫通孔を有し、熱硬化性樹脂を基材に含浸して形成された絶縁基板を準備する工程。
(b)前記絶縁基板の両面に、金属層を配置する工程。
(c)前記金属層および絶縁基板に対し、1回目の加熱加圧処理を行い一体化する工程。
・・・・・・」(【特許請求の範囲】の【請求項1】)
(3b)「【0031】・・・前記(a)工程では、その表面から、導電性材料が突出している構造の絶縁基板を用いることが好ましい。これにより、前記絶縁基板上に形成される配線パターンと、前記導電性材料との接触性に優れ、電気的接続の信頼性が向上する。このような絶縁基板は、基材に熱硬化性樹脂を含浸した基板の両面に、剥離性フィルムを配置し、前記基板と前記剥離性フィルムとを貫通する貫通孔を設け、前記貫通孔に導電性材料を充填した後、前記剥離性フィルムを除去することにより製造できる。」(段落【0031】)、
(3c)(第1の実施形態)として、図1(a)?(g)が示されるとともに、
「【0045】そして、同図(b)に示すように、前記絶縁基板101の両面に、剥離性フィルム102を積層した積層体を形成する。前記剥離性フィルム102としては、・・・その厚みは、通常、5?50μmの範囲であり、この厚み分だけ、後述する導電性材料104が、前記絶縁基板101の表面から突出した構造となる。
【0046】つぎに、同図(c)に示すように、前記積層体の所望の位置に、貫通孔103を設け、同図(d)に示すように、前記貫通孔103に導電性材料104を充填した後、同図(e)に示すように、前記積層体から前記剥離性フィルム102を剥離除去する。
・・・・・・
【0052】つぎに、同図(f)に示すように、前記絶縁基板101の両面に、配線パターン形成用の金属層105を配置し、さらに、前記各金属層105の外側に熱板(・・・)を配置して、矢印方向に向かい、1回目の加熱加圧処理を行うことによって、前記絶縁基板101と金属層105とを一体化する。」(段落【0045】、【0046】、【0052】)が記載されている。

(3)当審の判断
(3-1)引用刊行物1に記載された発明
(ア)摘記(1a)によれば、引用刊行物1には、基材の両表面に熱硬化型樹脂層が存在し、該熱硬化型樹脂層の表層にパターニングされた回路電極が形成され、かつ該基材と該熱硬化型樹脂層とを貫通する貫通孔が形成されており、該貫通孔に上記両表面の回路電極どうしを電気的に接続するための導電性物質が充填されている両面プリント配線基板の少なくとも片面に、基材の両表面に熱硬化型樹脂層が存在し、該熱硬化型樹脂層の一方の表層にパターニングされた回路電極が形成された層が外側になるように積層され、かつ該基材と該熱硬化型樹脂層とを貫通する貫通孔が形成されており、該貫通孔に上記一方の表層回路電極と上記両面プリント配線基板の回路電極とを電気的に接続するための導電性物質が充填されている多層プリント配線基板が記載されているといえる。
(イ)摘記(1c)によれば、アラミド繊維(12μm径で長さ3mm)を不織布として用いたアラミドペーパー(坪量72g/cm^(2))に、熱硬化型樹脂であるエポキシ樹脂を含浸させたプリプレグを耐熱離型フィルムに挟んで熱硬化(170℃-60kg/cm^(2)真空中)させ、該離型フィルムを剥離したものを基材とし、該基材の両表面に、離型性フイルムに塗布して乾燥させたエポキシ樹脂を主成分とする熱硬化型樹脂層を、その硬化開始温度の約130℃より低い105℃の温度と20kg/cm^(2)の圧力でやや軟化させて接着させ、該接着後の基材の所定の箇所に形成した貫通孔に、球状銀粉末、基板材料と同様の熱硬化エポキシ樹脂及び硬化剤を含む導電性ペーストを導電性物質として充填し、該導電性ペースト及び上記熱硬化型樹脂層上にパターニングされた回路電極を形成して上記(ア)の両面プリント配線基板を作製し得る。
(ウ)摘記(1d)によれば、熱硬化型樹脂であるエポキシ樹脂をガラス織布に含浸させたプリプレグ(厚み110μm)を4枚重ね合わせ耐熱離型フィルムに挟んで熱硬化(170℃-60kg/cm^(2)真空中)させ、離型フィルムを剥離したものを基材とし、該基材の両表面に、上記(イ)と同様の熱硬化型樹脂層を接着させ、該接着後の基材の所定の箇所に形成した貫通孔に、球状銅粉末、基板材料と同様の熱硬化エポキシ樹脂及び硬化剤を含む導電性ペーストを導電性物質として充填し、該導電性ペースト及び該熱硬化型樹脂層上にパターニングされた回路電極を形成して、上記(ア)の両面プリント配線基板に相当する内層用の両面板を作製し、該両面板と、別途作製した同様の基材の両表面に同様の熱硬化型樹脂層を接着させ、該接着後の基材の所定の箇所に形成した貫通孔に同様の導電性ペーストを充填した中間板と、片面粗化銅箔とを該銅箔が最外層になるように重ね合わせ、加熱加圧により基材表面の熱硬化型樹脂層及び導電性ペーストの熱硬化エポキシ樹脂を硬化させて積層一体化し、該銅箔のパターンエッチングにより回路パターンを形成して上記(ア)の多層プリント配線基板を作製し得る。また、該多層プリント配線基板の両面板、中間板の基材には、上記(イ)の両面プリント配線基板の基材を用いることもできる。

上記(ア)?(ウ)の事項及び摘記(1a)?(1e)の記載事項を総合すると、引用刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「170℃-60kg/cm^(2)真空中で熱硬化させた基材の両表面に、離型性フイルムに塗布して乾燥させ、その硬化開始温度の約130℃より低い105℃の温度と20kg/cm^(2)の圧力でやや軟化させて接着させた熱硬化型樹脂層が存在し、該熱硬化型樹脂層の表層にパターニングされた回路電極が形成され、かつ該基材と該熱硬化型樹脂層とを貫通する複数の貫通孔が形成されており、該貫通孔に上記両表面の回路電極どうしを電気的に接続するための導電性ペーストが充填されている両面プリント配線基板の少なくとも片面に、別途作製した、同様の基材の両表面に同様の熱硬化型樹脂層が存在し、かつ該基材と該熱硬化型樹脂層とを貫通する貫通孔が形成されており、該貫通孔に導電性ペーストが充填されている中間板と、最外層の片面粗化銅箔とが重ね合わされ、加熱加圧により基材表面の熱硬化型樹脂層及び導電性ペーストが硬化して積層一体化され、最外層の該銅箔のパターンエッチングにより回路パターンが形成されている多層プリント配線基板。」

(3-2)引用刊行物2に記載された発明
(エ)摘記(2a)の多層プリント基板は、摘記(2c)(2e)によれば、空隙率が5体積%未満で硬化状態の絶縁性樹脂よりなる絶縁性シートの両側に接着剤層を積層し、ビアホール用の貫通孔を形成し、該貫通孔に導電性ペーストを充填した絶縁樹脂層とし、絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層の両側に銅箔を重ね、加圧加熱することにより該導電性ペーストを加圧硬化させるとともに上記接着剤層を銅箔と絶縁性シート間で接着硬化させ、該銅箔をパターンエッチングして銅回路パターン層を形成した両面プリント基板とを交互に重ね、最外層の絶縁樹脂層の上にさらに銅箔を重ね、加圧加熱することにより上記導電性ペーストを加圧硬化させるとともに全体を接着硬化させ、該銅箔をパターンエッチングして最外層の銅回路パターン層を形成したものといえる。
(オ)摘記(2f)(2g)によれば、上記接着剤層は、塗布し乾燥した後、又はそれらをさらに120℃で40分間予備硬化した後、25kg/cm^(2)で加圧しながら170℃で60分間硬化して形成したものといえる。

上記(エ)(オ)の事項及び摘記(2a)?(2h)の記載事項を総合すると、引用刊行物2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。
「空隙率が5体積%未満で硬化状態の絶縁性樹脂よりなる絶縁性シートの両側に接着剤層を積層し、ビアホール用の複数の貫通孔を形成し、該貫通孔に導電性ペーストを充填した絶縁樹脂層とし、絶縁樹脂層と、該絶縁樹脂層の両側に銅箔を重ね、加圧加熱することにより該導電性ペーストを加圧硬化させるとともに上記接着剤層を銅箔と絶縁性シート間で接着硬化させ、該銅箔をパターンエッチングして銅回路パターン層を形成した両面プリント基板とを交互に重ね、最外層の絶縁樹脂層の上にさらに銅箔を重ね、加圧加熱することにより上記導電性ペーストを加圧硬化させるとともに全体を接着硬化させ、該銅箔をパターンエッチングして最外層の銅回路パターン層を形成したものであり、上記貫通孔に導電性ペーストを充填して硬化させたビアホールは、上記絶縁性シートの中央部及び端部を含む箇所に設けられており、上記接着剤層は、塗布し乾燥した後、又はそれを予備硬化させた後、加圧硬化させたものである多層プリント基板。」

(3-3)対比・判断
本願補正発明1と引用発明1とを対比すると、
(カ)引用発明1における「両面プリント配線基板」の「170℃-60kg/cm^(2)真空中で熱硬化させた基材」、及び「中間板」の「同様の基材」は、いずれも引用発明1のプリント配線基板の積層一体化のための硬化接着温度である170℃、60kg/cm^(2)の加圧下、真空中の条件で加熱加圧して硬化させ、作製されたものと理解できる。また、引用刊行物1の「基材に硬化済みのものをもちいるので、ビア導体と積層基材との不必要な反応もなく安定した層間接続抵抗とその信頼性が得られる」との記載によれば(摘記(1b)参照)、上記基材の樹脂は、上記の加熱加圧により硬化が済み、ビア導体を硬化させる時も化学的に安定な状態にあり、安定した層間接続抵抗とその信頼性が得られていると解し得るので、上記基材は非圧縮性のものといえる。
(キ)引用発明1における「両面プリント配線基板」、「中間板」、「多層プリント配線基板」はそれぞれ、両面回路基板、絶縁基材、多層の回路基板に該当する。
(ク)引用発明1における「両面プリント配線基板」及び「中間板」の各「熱硬化型樹脂層」は、それぞれの基材の両表面に、離型性フイルムに塗布して乾燥し、その硬化開始温度の約130℃より低い105℃の温度と20kg/cm^(2)の圧力でやや軟化して接着後、加熱加圧により銅箔の粗化面や基板の回路電極形成面へ軟化して圧着されることにより、それらの凹凸形状に対応する形状に変形して硬化されるものと解し得るので、該各「熱硬化型樹脂層」は、本願補正発明1における各「基材の両面に形成された・・・Bステージ状態の樹脂が加熱加圧により変形して硬化されて形成された」ものである「接着層」に相当する。
(ケ)引用発明1における「パターニングされた回路電極」は、本願補正発明1における「前記接着層または前記貫通導通孔上に形成された回路パターン」に相当し、また、引用発明1における「最外層の該銅箔の回路パターンが形成されている」は、本願補正発明1における「最外層に回路パターンとを備え、」に相当する。
(コ)引用発明1における「貫通孔」、及び導電性ペーストが充填されて硬化される「貫通孔」は、それぞれ本願補正発明1における「貫通孔」、及び「貫通導通孔」に相当し、また、引用発明1における「貫通孔」に充填されて硬化される「導電性ペースト」は、加圧加熱により、「熱硬化型樹脂層」の変形、硬化に伴い、圧縮・硬化されるものと解し得る。

そうすると、両発明は、「複数の貫通導通孔を備えた非圧縮性の基材と前記非圧縮性の基材の両面に形成された接着層と前記接着層または前記貫通導通孔上に形成された回路パターンとを有する両面回路基板が少なくとも1枚と、
貫通導通孔を備えた非圧縮性の基材と前記非圧縮性の基材の両面に形成された接着層とを有する絶縁基材が少なくとも1枚とが互いに積層された構成と、
最外層に回路パターンとを備え、
前記非圧縮性の基材は加熱加圧して硬化されて作製されたものであり、
前記貫通導通孔は、前記非圧縮性の基材に設けられた貫通孔に充填された導電性ペーストが加熱加圧により圧縮・硬化されており、
前記接着層は、Bステージ状態の樹脂が加熱加圧により変形して硬化されて形成されたものである多層の回路基板。」の点で一致し、次の点で相違する。

相違点A:本願補正発明1では、両面回路基板と絶縁基材の基材がそれぞれ複数の貫通導通孔を備え、該貫通導通孔は、基材中央部及び端部を含む箇所に設けられているのに対し、引用発明1では、そのことが明らかでない点。

相違点B:本願補正発明1では、貫通導通孔は、貫通孔に充填された導電性ペーストと前記接着層から突出した導電性ペーストが加熱加圧により圧縮・硬化されて形成されたものであるのに対し、引用発明1では、そのことが明らかでない点。

(3-4)上記相違点Aについて検討する。
引用刊行物2に記載された多層プリント基板の発明(引用発明2)において、該多層プリント基板を構成する両面基板及び絶縁樹脂層の絶縁性シートに、それぞれ複数のビアホールを形成し、該ビアホールを絶縁性シート中央部及び端部を含む箇所に設けることが記載されているので、引用発明1における多層プリント配線基板を構成する両面プリント配線基板及び中間板の上記絶縁性シートに相当する基材にも同様に、上記ビアホールに相当する導電性ペーストが充填される貫通孔をそれぞれ複数形成し、該貫通孔を基材中央部及び端部を含む箇所に設けることは、当業者が設計上適宜に採用できたものと認められる。

(3-5)上記相違点Bについて検討する。
引用刊行物3には、導電性材料が充填された貫通孔を有し、両面に配線パターンを形成して双方の配線パターンを該貫通孔を介して電気的に接続するプリント配線基板において、その接続の信頼性を向上させるため、該基板両面に剥離性フイルムを配置し、該貫通孔に導電性材料を充填した後、該フイルムを除去することにより、該フイルムの厚み分だけ該導電性材料を突出させ、該基板両面に配線パターン用の金属層を配置して加熱加圧処理することが記載されているので(摘記(3a)?(3c)参照)、引用発明1においても、貫通孔での接続の信頼性を向上させるため、該貫通孔に充填する導電性ペーストを接着層から突出させ、該導電性ペーストを加熱加圧により圧縮・硬化させることは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。
そして、本願補正発明1の上記相違点A、Bに係る効果も、引用刊行物1?3に記載された発明から当業者が普通に予測し得る程度のものであって、格別なものとは認められない。

したがって、本願補正発明1は、引用刊行物1?3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

[2-4]むすび
以上のとおり、本願補正発明1が特許出願の際独立して特許を受けることができないため、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

[3]本願発明について
(1)本願発明
平成18年6月22日付手続補正は上記のとおり却下されたので、本願請求項1?15に係る発明は、平成17年12月19日付手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりのものと認める。

「【請求項1】複数の貫通導通孔を備えた非圧縮性の基材と前記基材の両面に形成された接着層と前記接着層または前記貫通導通孔上に形成された回路パターンとを有する両面回路基板が少なくとも1枚と、
複数の貫通導通孔を備えた非圧縮性の基材と前記基材の両面に形成された接着層とを有する絶縁基材が少なくとも1枚とが互いに積層された構成と、
最外層に回路パターンとを備え、
前記貫通導通孔は、貫通孔に充填された導電性ペーストと前記接着層から突出した導電性ペーストが加熱加圧により圧縮・硬化されて形成されたものであり、
前記接着層は、Bステージ状態の樹脂が加熱加圧により硬化されて形成されたものであることを特徴とする多層の回路基板。」

(2)引用刊行物とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物2、3には、上記[2-3](2-2)、(2-3)に摘記した事項がそれぞれ記載されている。

(3)引用刊行物2に記載された発明
引用刊行物2には、上記[2-3](3-2)で認定した引用発明2が記載されている。

(4)対比・判断
本願発明1と引用発明2とを対比すると、
(サ)引用発明2における「空隙率が5体積%未満で硬化状態の絶縁性樹脂よりなる絶縁性シート」は、引用刊行物2の「空隙のほとんどない硬化・・・状態のシートを用いるため、穴開けやペースト充填と硬化工程などにおける基板の寸法変化が小さく、特にビアホールの位置精度を容易に向上させることが可能で、高密度な基板の製造に有利になる」(摘記(2b)参照)、「絶縁性樹脂よりなる絶縁樹脂シートは・・・硬化状態のものが使用できるが、硬化度の高い方が変形を起こし難く好ましい。」(摘記(2d)参照)との記載によれば、高密度で硬化度の高い非圧縮性のものといえる。
(シ)引用発明2における「両面プリント基板」、「絶縁樹脂層」、「多層プリント基板」はそれぞれ、両面回路基板、絶縁基材、多層の回路基板に該当する。
(ス)引用発明2における「絶縁性シート」の両側に積層する「接着剤層」は、塗布して乾燥した後、又はそれを予備硬化させた後、加圧硬化させたものであるから、本願発明1における各「基材の両面に形成された・・・Bステージ状態の樹脂が加熱加圧により硬化されて形成された」ものである「接着層」に相当する。
(セ)引用発明2における「両面プリント基板」の「銅回路パターン層」、「最外層の絶縁樹脂層の上にさらに最外層の銅回路パターン層を形成した」はそれぞれ、本願発明1における「前記接着層または前記貫通導通孔上に形成された回路パターン」、「最外層に回路パターンとを備え、」に相当する。
(ソ)引用発明2における「ビアホール用の複数の貫通孔」、「上記貫通孔に導電性ペーストを充填して硬化させたビアホール」はそれぞれ、本願発明1における「貫通孔」、「貫通導通孔」に相当する。

そうすると、両発明は、「複数の貫通導通孔を備えた非圧縮性の基材と前記基材の両面に形成された接着層と前記接着層または前記貫通導通孔上に形成された回路パターンとを有する両面回路基板が少なくとも1枚と、
複数の貫通導通孔を備えた非圧縮性の基材と前記基材の両面に形成された接着層とを有する絶縁基材が少なくとも1枚とが互いに積層された構成と、
最外層に回路パターンとを備え、
前記貫通導通孔は、貫通孔に充填された導電性ペーストが加熱加圧により圧縮・硬化されており、
前記接着層は、Bステージ状態の樹脂が加熱加圧により硬化されて形成されたものである多層の回路基板。」の点で一致し、次の点で相違する。

相違点C:本願発明1では、貫通導通孔は、貫通孔に充填された導電性ペーストと接着層から突出した導電性ペーストが加熱加圧により圧縮・硬化されて形成されるのに対し、引用発明2では、そのことが明らかでない点。

(5)上記相違点Cについて検討する。
引用刊行物3には、導電性材料が充填された貫通孔を有し、両面に配線パターンを形成して双方の配線パターンを該貫通孔を介して電気的に接続するプリント配線基板において、その接続の信頼性を向上させるため、該基板両面に剥離性フイルムを配置し、該貫通孔に導電性材料を充填した後、該フイルムを除去することにより、該フイルムの厚み分だけ該導電性材料を突出させ、該基板両面に配線パターン用の金属層を配置して加熱加圧処理することが記載されているので(摘記(3a)?(3c)参照)、引用発明2においても、ビアホールの接続の信頼性を向上させるため、貫通孔に充填する導電性ペーストを接着層から突出させ、該導電性ペーストを加圧加熱により圧縮・硬化させることは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。
そして、本願発明1の上記相違点Cに係る効果も、引用刊行物2、3の記載から当業者が普通に予測し得る程度のものであって、格別なものとは認められない。

そうすると、本願発明1は、引用刊行物2、3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

[4]むすび
以上のとおりであるから、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、上記のとおり本願発明1が特許を受けることができないため、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-09 
結審通知日 2008-12-16 
審決日 2009-03-03 
出願番号 特願2000-247332(P2000-247332)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
P 1 8・ 575- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 黒石 孝志  
特許庁審判長 徳永 英男
特許庁審判官 諸岡 健一
市川 裕司
発明の名称 回路基板とその製造方法  
代理人 永野 大介  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 内藤 浩樹  

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