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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N |
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管理番号 | 1195827 |
審判番号 | 不服2006-13285 |
総通号数 | 114 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-06-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-06-26 |
確定日 | 2009-04-13 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第300658号「光ディスク装置及び光ディスクの記録方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 5月21日出願公開、特開平11-136631〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成9年10月31日の出願であって、平成18年2月6日付けの拒絶理由通知に応答して平成18年4月6日付けで手続補正がなされたが、平成18年5月23日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年6月26日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。 そして、本願の請求項1乃至6に係る発明は、平成18年4月6日付け手続補正書により補正された明細書の本願特許請求の範囲の請求項1乃至6に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。 「【請求項1】 入力されたビデオ信号をデータ圧縮処理して第1の符号化データを生成する第1のビデオデータ処理手段と、 前記第1の符号化データに比して発生データ量が小さくなるように、前記ビデオ信号をデータ圧縮処理して第2の符号化データを生成する第2のビデオデータ処理手段と、 前記ビデオ信号に関連するオーディオ信号に第1のディジタル化処理を施して前記第1の符号化データに対応する第1のオーディオデータを生成する第1のオーディオデータ処理手段と、 前記オーディオ信号に第2のディジタル化処理を施して前記第1のオーディオデータに比して音質が劣化してなり、前記第2の符号化データに対応する第2のオーディオデータを生成する第2のオーディオデータ処理手段と、 前記第1及び第2の符号化データ、前記第1及び第2のオーディオデータを光ディスクに記録する記録手段とを備え、 前記記録手段は、 前記光ディスクの情報記録面を同心円状に分割してなる小領域に、前記第1及び第2の符号化データを順次循環的に割り当てて、前記第1及び第2の符号化データ、前記第1及び第2のオーディオデータを前記光ディスクに記録する ことを特徴とする光ディスク装置。」 2.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-154740号公報(平成7年6月16日公開、以下「引用例」という。)には、編集時にかかる手間や時間を格段に低減することができる記録装置に関して、図面と共に、以下の記載がある。(なお、下線は、当審で付与した。) (1)「【0002】 【産業上の利用分野】本発明は記録媒体、記録方法、記録装置、及び編集方法に関し、特に編集時にかかる手間や時間を格段に低減することができる記録媒体、記録方法、記録装置、及び編集方法を提案する。」 (2)「【0022】 【実施例】以下図面について、本発明の一実施例を詳述する。 【0023】(1)全体構成 図1及び図2において、1は全体として本発明によるビデオ編集システムに用いられる記録再生系を示し、撮像部(図示せず)によって撮像された映像信号S1及び音声信号S2と共に当該映像信号S1及び音声信号S2のインデツクス情報を記録系2を介して磁気テープ3に記録するようになされている。 【0024】撮像部によつて撮像された映像信号S1はアナログデイジタル変換回路(A/D)5に入力される。アナログデイジタル変換回路5によりデイジタル変換されたデイジタル映像信号D1はインデツクス画作成処理回路6及びフレームメモリ7にそれぞれ送出される。フレームメモリ7は、デイジタル映像信号D1に対してフレーム内記録をするためのフイールドからフレームへの画像変換処理と、圧縮のためのブロツキング処理を施す。インデツクス画作成処理回路6はディジタル映像信号D1に対して所定画素及び所定ライン毎に間引き処理を施すことにより、デイジタル映像信号D1の1/8のデータ量でなるインデツクス画データD2を作成する。 【0025】インデツクス画作成処理回路6及びフレームメモリ7で生成された各映像データD2及びD3の8フレーム分に対してインデツクス画D2の1フレーム分を周期的に出力する。因にここで出力されるインデツクス画データD2の1フレーム分には映像データD3の16フイールド(8フレーム)分の縮小画が含まれている。 【0026】このときセレクタ8は入力データD2及びD3の伝送レートに対して出力データD4の伝送レートを9/8倍に引き上げるようになされ、この結果記録系2においては、映像データD2及びD3を時間軸方向に圧縮して磁気テープ3に記録するようになされている。換言すれば、記録系2は映像データD3を時間軸方向に圧縮記録することにより得られる磁気テープ3の長手方向の空き領域にインデツクス画データD2を記録するようになされている。セレクタ8から出力される映像データD4は続く圧縮符号化ブロツク9に入力され、ここで磁気テープ3に記録可能な所定のデータ量に圧縮される。 【0027】一方、入力された音声信号S2はアナログデイジタル変換回路10によりデイジタル音声信号D6に変換され、当該ディジタル音声信号D6は音声圧縮符号化ブロツク11及びセレクタ12にそれぞれ送出される。音声圧縮符号化ブロツク11はデイジタル音声信号D6に対して1/8の圧縮符号化処理を施しこれをセレクタ12に送出する。セレクタ12は上述したセレクタ8と同様に入力したデイジタル音声信号D6及び圧縮音声データD7を周期的に続くエラー訂正コード付加回路13に送出する。 【0028】エラー訂正コード付加回路13は映像データD5及び音声データD8に対してエラーコードを付加し、このデータD9を続く一時記録媒体14に送出する。一時記録媒体14はRAM(Random Access Memory)構成でなり、通常の映像データ及び音声データ(以下これらを主記録情報と呼ぶ)と、1/8に圧縮された映像データ及び音声データ(以下これらをインデツクス情報と呼ぶ)とをそれぞれ異なる領域に一時的に格納し、バツフアリングするようになされている。 【0029】ここで一時記録媒体14への書込み及び読出しはメモリコントローラ15により制御される。この書込み及び読出しのタイミングはシステムコントローラ16から記録/再生部17に送出される制御信号S3に同期して行われる。すなわち記録系2においては、一時記録媒体14に格納したデータを読み出すと共にこのときの伝送レートに同期するように記録/再生部17を駆動することにより磁気テープ3上に上述した主記録情報及びインデツクス情報を記録する。実施例の場合、一時記録媒体14からは実時間で1分ぶんに相当する主記録情報と、これに対応するインデツクス情報とが交互に読み出されるようになされる。またシステムコントローラ16はユーザインターフエース18から送出される操作信号S4により制御される。」 (3)「【0038】(2)記録フオーマット かくして記録再生系1は、図3に示すようなフオーマットで磁気テープ3上に主記録情報及びインデツクス情報を記録するようになされている。すなわち記録再生系1は、図3(A)に示すように、主記録情報記録領域AR1に1800フレーム分の主記録情報を記録した後、続くインデツクス情報記録領域PS1に主記録情報領域AR1に記録した主記録情報1800フレーム分に対応するインデツクス情報を記録する。ここでインデツクス情報は主記録情報に比して1/8のデータ量でなることにより、1フレーム内に主記録情報8フレーム分のインデツクス情報を記録でき、この結果図3(B)に示すように、主記録情報1800フレームに相当するインデツクス情報を225フレーム内に記録することができる。ここでインデツクス情報記録領域PSの1フレーム内には16フイールド(8フレーム)分のインデツクス画が記録される。因に記録再生系1においては、ヘリカルスキヤンにより2本の記録トラックに主記録情報1フレーム分を記録する。 【0039】実際上、記録再生系1においては、記録領域AR1、AR2、AR3、……のそれぞれに1800フレーム主記録情報をそれぞれ1分で記録した後、これに対応するインデツクス情報を記録領域PS1、PS2、PS3、……にそれぞれ7.5秒で記録する。ここでインデツクス情報記録領域PSの各単位記録領域には、図3(C)に示すように、1フイールド分のインデツクス画データVD_(IND)とこれに対応する圧縮音声データAUD_(IND)が互いに隣接するように記録される。」 (4)「【0054】さらに上述の実施例においては、主記録情報及びインデックス情報を記録するオリジナル素材として磁気テープ3を用いた場合について述べたが、本発明はこれに限らず、オリジナル素材としては例えば光磁気ディスク等の種々の記録媒体を用いることができる。」 (5)「【0056】さらに上述の実施例においては、インデツクス画作成処理部6において間引き処理を施すことによりインデツクス画データD2を作成する場合について述べたが、本願発明はこれに限らず、例えば所定画素毎の平均をとることによりインデツクス画データを作成するようにしてもよく、要は原画像のデータ量を削減することによりインデツクス画像を生成し得るようになものであればよい。」 ここで、上記摘示した実施例における記録媒体は磁気テープを用いた場合であるが、光磁気ディスクを用いることも記載されているから、図面の記載とともに総合勘案すると、結局、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。 「映像信号をディジタル変換するアナログディジタル変換回路と、 ディジタル変換されたディジタル映像信号D1に対して圧縮のためのブロッキング処理を施して映像データD3を生成するフレームメモリと、 ディジタル映像信号D1に対して所定画素及び所定ライン毎に間引き処理を施してインデックス画データD2を生成するインデックス画作成処理回路と、 音声信号をディジタル変換するアナログディジタル変換回路と、 ディジタル変換されたディジタル音声信号(音声データ)D6に対して圧縮符号化処理を施して圧縮音声データD7を生成する音声圧縮符号化ブロックと、 映像データD3及び音声データD6(主記録情報)と圧縮音声データD7及びインデックス画データ(インデックス情報)を光磁気ディスクに記録する記録/再生部とを備え、 前記記録/再生部は、 主記録情報領域のそれぞれに主記録情報を記録した後、続くインデックス情報記録領域に主記録情報に対応するインデックス情報をそれぞれ記録する 記録装置。」 3.対比 そこで、本願発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「ディジタル映像信号D1」「映像データD3」は、本願発明の「入力されたビデオ信号」「第1の符号化データ」にそれぞれ相当する。 引用発明の「フレームメモリ」は、ディジタル映像信号D1に対して圧縮のためのブロッキング処理、即ち圧縮処理を施すものであるから、引用発明は、本願発明の「入力されたビデオ信号をデータ圧縮処理して第1の符号化データを生成する第1のビデオデータ処理手段」に相当する構成を備えている。 (2)引用発明の「間引き」「インデックス画データD2」は、本願発明の「データ圧縮処理」「第2の符号化データ」にそれぞれ相当する。 引用発明の「インデックス画作成処理回路」は、ディジタル映像信号D1に対して間引き(圧縮)処理を施してディジタル映像信号D1のデータ量を削減するものであるから、引用発明は、本願発明の「前記第1の符号化データに比して発生データ量が小さくなるように、前記ビデオ信号をデータ圧縮処理して第2の符号化データを発生する第2のビデオデータ処理手段」に相当する構成を備えている。 (3)引用発明の「音声信号」「ディジタル音声信号(音声データ)D6」は、本願発明の「オーディオ信号」「第1のオーディオデータ」にそれぞれ相当し、引用発明の「音声信号」が「映像信号」に関連することは明らかである。 引用発明の「アナログディジタル変換回路」は、音声信号をディジタル変換するものであるから、引用発明は、本願発明の「前記ビデオ信号に関連するオーディオ信号に第1のディジタル化処理を施して前記第1の符号化データに対応する第1のオーディオデータを生成する第1のオーディオデータ処理手段」に相当する構成を備えている。 (4)引用発明の「圧縮音声データD7」は、本願発明の「第2のオーディオデータ」に相当する。 引用発明の「音声圧縮符号化ブロック」は、ディジタル音声信号D6に対して圧縮符号化処理を施すものであり、圧縮符号化処理されたデータはディジタル音声信号D6に比して音質が劣化することは明らかであるから、引用発明は、本願発明の「前記第1のオーディオデータに比して音質が劣化してなり、前記第2の符号化データに対応する第2のディジタルデータを生成する第2のオーディオデータを生成する第2のオーディオデータ処理手段」に相当する構成を備えている。 (5)引用発明の「光磁気ディスク」は、本願発明の「光ディスク」に相当する。 引用発明は、主記録情報及びインデックス情報を光磁気ディスクに記録する記録/再生部を備えているから、本願発明の「前記第1及び第2の符号化データ、前記第1及び第2のオーディオデータを光ディスクに記録する記録手段」に相当する構成を備えている。 (6)引用発明では、図3等も参酌すると、映像データD3を主記録情報領域に、インデックス画データD2をインデックス情報領域に交互に記録するものであり、情報記録面を分割した小領域に順次循環的に割り当てているといえるから、引用発明は、本願発明の「前記記録手段は、前記光ディスクの情報記録面を」「分割してなる小領域に、前記第1及び第2の符号化データを順次循環的に割り当てて、前記第1及び第2の符号化データ、前記第1及び第2のオーディオデータを前記光ディスクに記録する」に相当する構成を備えている。 (7)引用発明の「記録装置」は、本願発明の「光ディスク装置」に相当する。 そうすると、本願発明と引用発明とは、次の点で一致する。 [一致点] 「入力されたビデオ信号をデータ圧縮処理して第1の符号化データを生成する第1のビデオデータ処理手段と、 前記第1の符号化データに比して発生データ量が小さくなるように、前記ビデオ信号データ圧縮処理して第2の符号化データを発生する第2のビデオデータ処理手段と、 前記ビデオ信号に関連するオーディオ信号に第1のディジタル化処理を施して前記第1の符号化データに対応する第1のオーディオデータを生成する第1のオーディオデータ処理手段と、 前記第1のオーディオデータに比して音質が劣化してなり、前記第2の符号化データに対応する第2のディジタルデータを生成する第2のオーディオデータを生成する第2のオーディオデータ処理手段と、 前記第1及び第2の符号化データ、前記第1及び第2のオーディオデータを光ディスクに記録する記録手段とを備え、 前記記録手段は、 前記光ディスクの情報記録面を分割してなる小領域に、前記第1及び第2の符号化データを順次循環的に割り当てて、前記第1及び第2の符号化データ、前記第1及び第2のオーディオデータを前記光ディスクに記録する 光ディスク装置。」 そして、次の各点で相違する。 [相違点] (a)「第2のオーディオデータ」について、本願発明は、「オーディオ信号に第2のディジタル化処理を施して」生成するのに対し、引用発明は、アナログディジタル変換回路から出力されるディジタル音声信号D6に対して圧縮符号化処理を施して生成する点。 (b)「小領域」について、本願発明は、「同心円状に」分割してなるものであるのに対し、引用発明は、同心円状についての記載がない点。 4.判断 そこで、上記各相違点について検討する。 相違点(a)について 通常音声信号をディジタル信号に変換するに際し、サンプリングレートを低くするほど符号化データ量は減少し音質は劣化することは周知の事項であるから、引用発明において、音声データを圧縮するために、ディジタル音声信号D6に圧縮符号化処理を施すのに代えて、音声信号に低サンプリングレートのアナログディジタル変換処理を施すこと、すなわちオーディオ信号に第2のディジタル化処理を施す程度のことは当業者が容易に想到できたものである。 相違点(b)について ディスクにおいて、同心円状にトラックを構成することは周知技術(必要があれば、原査定の拒絶の理由で引用された特開平9-213015号公報の【従来の技術】【0005】の段落の記載等参照)であるから、引用発明において、トラックの形態を同心円状とすることで主記録情報及びインデックス情報を記録する小領域も同心円状に分割したものとすることは当業者が容易に想到できたものである。 なお、審判請求人は、請求の理由((3-1)本願請求項1の発明)において、「本願請求項1の発明は、この引用文献1には開示も示唆もない構成により、編集処理時における低解像度のビデオ信号のシーク速度を向上し、編集処理における作業効率を向上することができるとの顕著な効果を奏することができる。また素材のビデオ信号を編集処理する場合にあっても、同様に、シーク速度を向上して作業効率を向上することができるとの顕著な効果を奏することができる」旨主張している。しかしながら、本願請求項1には、「編集処理」に相当する構成はなく、結局、特許請求の範囲に記載された事項に基づくものでないから、請求人の上記主張は採用できない。 そして、上記相違点を総合的に判断しても、本願発明が奏する効果は引用例及び周知技術から、当業者が充分に予測できたものであって、格別なものとはいえない。 5.むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-02-09 |
結審通知日 | 2009-02-12 |
審決日 | 2009-02-24 |
出願番号 | 特願平9-300658 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04N)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 金子 秀彦、小林 大介 |
特許庁審判長 |
小松 正 |
特許庁審判官 |
山田 洋一 吉川 康男 |
発明の名称 | 光ディスク装置及び光ディスクの記録方法 |
代理人 | 多田 繁範 |