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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01C
管理番号 1195830
審判番号 不服2006-13806  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-29 
確定日 2009-04-16 
事件の表示 平成11年特許願第 14395号「測距装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 8月 4日出願公開、特開2000-213930〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成11年1月22日の出願であって、明細書又は図面について平成17年12月26日付けで補正がなされ、平成18年5月25日付け(送達:同年5月30日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月29日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成17年12月26日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである。
「測距対象物に向けて光束を投光する投光手段と、
前記測距対象物に投光された前記光束の反射光を前記測距対象物までの距離に応じた位置検出素子上の受光位置で受光し、その受光位置に応じた信号を出力する受光手段と、
前記受光手段から出力された前記出力信号に基づいて演算を行い前記測距対象物までの距離に応じた距離信号を出力する演算手段と、
積分コンデンサを有し、前記演算手段から出力された信号に応じて前記積分コンデンサを放電又は充電して前記演算手段から出力された信号を積分する第1積分を行い、その後に一定電流で前記積分コンデンサを充電又は放電して第2積分を行い、この第2積分の際に前記積分コンデンサの電圧と基準電圧とを比較して、その結果に応じた比較結果信号を出力する積分手段と、
前記積分手段から出力された信号に基づいて前記測距対象物までの距離を検出する検出手段と、前記積分手段にて前記第1積分を行う前に、前記積分コンデンサに予め一定の電圧を印加して予備充電を行う充電手段と、
を備えて構成され、
前記投光手段による投光、前記受光手段による受光、前記演算手段による演算処理及び前記積分手段による積分処理を繰り返して複数回測距を行い、各測距の結果に基づいて前記検出手段により前記測距対象物までの距離検出を行うと共に、
前記複数回の測距のうち1回目の測距前に前記充電手段による予備充電を行い、2回目以降の測距前では前記予備充電を行わないこと、
を特徴とする測距装置。」(以下、「本願発明」という。)

2.引用例記載の事項・引用発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平8-110222号公報(以下、「引用例」という。)には、次の事項(a)ないし(m)が図面とともに記載されている。
(a)「【産業上の利用分野】本発明は、測距装置に関し、特にカメラ等に用いられるアクティブ型測距装置に関するものである。」(段落【0001】)
(b)「図1は、自動焦点式カメラの測距装置として適用され得る本発明によるアクティブ型測距装置の構成を概略的に示すブロック図である。この測距装置は、従来構成と実質的に同様な構成であり、投光レンズ(図示せず)を介して被写体(測距対象物)に赤外線を投光する赤外線発光ダイオード(IRED)10と、このIRED10を駆動させるドライバー11と、IRED10から出射され被写体で反射された赤外線を受光レンズ(図示せず)を介して受光する位置検出素子(PSD)12とを備えている。」(段落【0019】)
(c)「測距装置は、更に、PSD12から出力される信号電流I1 及び信号電流I2をそれぞれ処理する第1信号処理回路13及び第2信号処理回路14と、これらの信号処理回路13,14から出力された信号に基づき被写体までの距離情報を演算して出力する演算回路15と、この演算回路15からの出力を積分する積分回路16と、積分回路16からの出力に基づいて被写体までの距離を検出し、レンズ駆動回路17を制御して撮影レンズ18を合焦位置に移動させるマイクロコンピューター(CPU)19とを備えている。・・・。」(段落【0020】)
(d)「この測距装置の動作はCPU19により制御されるが、その動作を概説すると、測距時、まずIRED10から投光レンズ(図示せず)を介して被写体に赤外線が投光される。この赤外線は、被写体により反射され、受光レンズ(図示せず)を介してPSD12に受光される。PSD12は、赤外線の受光位置に応じて電流を2つの電極から分配して出力するフォトダイオードであり、PSD12から出力される信号電流I1 及び信号電流I2 は、それぞれ、第1信号処理回路13及び第2信号処理回路14において適宜処理された後、演算回路15に入力されるようになっている。演算回路15においては、PSD12の出力比I1 /(I1 +I2 )に相当するデータが求められ、このデータが距離情報の信号として出力される。」(段落【0021】)
(e)「ここで、積分回路16について更に詳細に説明する。本実施例における積分回路16は、セラミックコンデンサを積分コンデンサ2として備えており、この積分コンデンサ2はAFIC20に外付けされている。・・・。」(段落【0023】)
(f)「図3は、積分コンデンサ2の充電電圧の時間変化を概略的に示したタイミングチャートである。演算回路15からの信号により、積分コンデンサ2は放電され、端子2aの電位は時間とともに階段状に減少する(第1積分)。・・・。」(段落【0027】)
(g)「積分コンデンサ2に対してパルス発光回数(256回)だけの入力が終了すると、スイッチ6はオフ状態のまま保持され、スイッチ3がCPU19の信号によりオン状態にされる。これにより、積分コンデンサ2は、定電流源4の定格により定まる一定の速さで充電される(第2積分)。・・・。」(段落【0028】)
(h)「積分コンデンサ2の端子2aはコンパレータ8を介してCPU19に接続されている。このコンパレータ8は、AFIC20より充電開始から基準電圧(VREF )に達するまでhighのパルスが出力されるようになっている。CPU19は、コンパレータ8の出力がhighの時間だけ計測しており、積分コンデンサ2の充電開始から端子2aの電位が基準電位(VREF )に達するまでの時間、即ち第2積分に要した時間を計測するようになっている。積分コンデンサ2の充電速度は一定であるため、第2積分に要した時間から、一回の測距により積分コンデンサ2に入力された信号電圧の総和が求まる。これは、PSD12の信号電流から求まる出力比I1 /(I1 +I2 )に対応するものである。従って、このデータを用いることで被写体までの距離が求まる。・・・。」(段落【0029】)
(i)「本実施例では、積分回路の動作は、図2に示すタイミングチャートの如くして行われる。即ち、図2の(a)、(c)、(d)及び(e)で示すように、カメラのメイン電源がオンとされると、AFIC20の電源電圧が立ち上げられると共に、積分コンデンサ2の充電が行われる。この充電は、図2の(d)で示すタイミングでCPU19から送出された制御信号によりスイッチ6がオン状態とされることにより行われ、これにより、積分コンデンサ2は、基準電源7により与えられる基準電圧(VREF )になるまで充電される。以下、この充電を予充電ということとする。そして、一定時間経過後、AFIC20の電源がオフとされると同時に、スイッチ6がオフとされ、積分コンデンサ2への充電が停止される。
次に、図2の(b)に示すように、カメラのレリーズボタンが半押しされ、測距状態に入ると、再度、AFIC20の電源電圧が立ち上げられると共に、スイッチ6がオン状態とされて積分コンデンサ2が基準電圧(VREF )となるまで充電される。充電が完了後、スイッチ6はオフとされ、その状態で保持される。」(段落【0024】、【0025】)
(j)「【作用】請求項1に係る発明の測距装置では、第1回目の測距を行う前に予め積分コンデンサに充電を行うことにより、測距前に誘電体吸収による電圧降下を強制的に生じさせることとしている。誘電体吸収による電圧降下は、2回目以降の充電においては実質的に生じないため、第1回目の測距において誘電体吸収による誤差が回避される。」(段落【0016】)
(k)「この後、2回目以降の測距においては、積分コンデンサ2への充電は既に定電流源4により行われるので、特に長時間使用されない限りは、スイッチ3は開放状態のままで保持される。」(段落【0009】)
(l)「尚、第2積分の際の充電により第2回目以降は、測距ルーチン(測距ルーチンには基準電源7による充電が含まれる)前に、基準電源7による充電は行われず、スイッチ6は原則としてオフ状態で保持される。・・・。」(段落【0031】)
(m)「・・・この場合の充電時間は、誘電体吸収による電圧降下が実質的に解消できる最小限の時間とするのが、測距動作の遅延防止という観点からも好ましい。・・・。」(段落【0034】)

・前記記載(a)から、
(1)「測距装置」との技術事項が読み取れる。
・前記記載(b)から、
(2)「測距対象物に赤外線を投光する赤外線発光ダイオード(IRED)10」との技術事項が読み取れる。
・前記記載(b)及び(d)から、
(3)「測距対象物に投光された赤外線の反射光を受光し、赤外線の受光位置に応じた信号電流I1、I2を出力する位置検出素子(PSD)12」及び
(4)「位置検出素子(PSD)12から出力された信号電流I1、I2から出力比I1 /(I1 +I2 )が求められ、距離情報の信号として出力する演算回路15」との技術事項が読み取れる。
・前記記載(e)ないし(g)及び図3から、
(5)「積分コンデンサ2を有し、演算回路15からの信号により前記積分コンデンサ2を放電し、積分コンデンサ2の端子2aの電位が時間とともに階段状に減少する第1積分を行い、その後定電流源4の定格により定まる一定の速さで積分コンデンサ2を充電して第2積分を行うこと」との技術事項が読み取れる。
・前記記載(h)及び図4から、
(6)「第2積分の際に積分コンデンサ2の充電開始から基準電圧(VREF)に達するまでhighのパルスを出力するコンパレータ8を有する積分回路16」
(7)「積分回路16内のコンパレータ8の出力から測距対象物までの距離を求めるCPU19」との技術事項が読み取れる。
・前記記載(f)、(i)及び図3から、
(9)「積分コンデンサ2により第1積分を行う前に、前記積分コンデンサ2が基準電圧(VREF)になるまで充電する基準電源7」との技術事項が読み取れる。
・前記記載(i)及び(j)から、
(10)「1回目の測距前に基準電源7による充電を行うこと」との技術事項が読み取れる。
・前記記載(b)、(c)、(h)、(j)及び(k)から、
(11)「赤外線発光ダイオード(IRED)10による投光、位置検出素子(PSD)12による受光、演算回路15による演算処理及び積分回路16による積分処理を繰り返して測距と測距の結果に基づいてCPU19により測距対象物までの距離を検出することとを複数回行うこと」との技術事項が読み取れる。
・前記記載(l)から、
(12)「複数回の測距のうち2回目以降の測距前では基準電源7による充電を行わないこと」との技術事項が読み取れる。

以上の技術事項(1)ないし(12)を総合勘案すると、引用例には次の発明が記載されていると認められる。
(引用発明)
「測距対象物に赤外線を投光する赤外線発光ダイオード(IRED)10と、
前記測距対象物に投光された前記赤外線の反射光を受光し、赤外線の受光位置に応じた信号電流I1、I2を出力する位置検出素子(PSD)12と、
前記位置検出素子(PSD)12から出力された前記信号電流I1、I2から出力比I1 /(I1 +I2 )が求められ、距離情報の信号として出力する演算回路15と、
積分コンデンサ2を有し、前記演算回路15からの信号により前記積分コンデンサ2を放電し、積分コンデンサ2の端子2aの電位が時間とともに階段状に減少する第1積分を行い、その後に定電流源4の定格により定まる一定の速さで積分コンデンサ2を充電して第2積分を行い、この第2積分の際に前記積分コンデンサ2の充電開始から基準電圧(VREF)に達するまでhighのパルスを出力するコンパレータ8を有する積分回路16と、
前記積分回路16内のコンパレータ8の出力から前記測距対象物までの距離を求めるCPU19と、前記積分コンデンサ2により前記第1積分を行う前に、前記積分コンデンサ2が基準電圧(VREF)になるまで充電する基準電源7と、
を備えて構成され、
前記赤外線発光ダイオード(IRED)10による投光、前記位置検出素子(PSD)12による受光、前記演算回路15による演算処理及び前記積分回路16による積分処理を繰り返して測距を行うことと、該測距毎に測距の結果に基づいてCPU19により測距対象物までの距離を検出することと、を複数回行うと共に、
前記複数回の測距のうち1回目の測距前に基準電源7による充電を行い、2回目以降の測距前では基準電源7による充電を行わないようにした測距装置。」(以下、「引用発明」という。)

3.対比
本願発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明における、
「赤外線」、「赤外線発光ダイオード(IRED)10」、「受光し、赤外線の受光位置に応じた信号電流I1、I2を出力する位置検出素子(PSD)12」、「信号電流I1、I2」、「出力比I1 /(I1 +I2 )が求められ、距離情報の信号として出力する演算回路15」、「積分コンデンサ2」、「積分コンデンサ2の端子2aの電位が時間とともに階段状に減少する第1積分」、「定電流源4の定格により定まる一定の速さで」、「積分コンデンサ2の充電開始から基準電圧(VREF)に達するまで」、「highのパルス」、「コンパレータ8を有する積分回路16」、「求める」及び「CPU19」は、
本願発明における、
「光束」、「投光手段」、「測距対象物までの距離に応じた位置検出素子上の受光位置で受光し、その受光位置に応じた信号を出力する受光手段」、「出力信号」、「演算を行い前記測距対象物までの距離に応じた距離信号を出力する演算手段」、「積分コンデンサ」、「演算手段から出力された信号を積分する第1積分」、「一定電流で」、「積分コンデンサの電圧と基準電圧とを比較して」、「その結果に応じた比較結果信号」、「積分手段」、「検出する」及び「検出手段」にそれぞれ相当する。
(2)次に、本願発明における「予備充電」との用語の解釈について検討する。
ア 本願発明である特許請求の範囲の請求項1の記載から、「予備充電」は「(第1積分を行う前に積分コンデンサに予め一定の電圧を印加して行う)予備的な充電」のことを意味するものと解するのが自然である。
イ また、該「予備充電」について、対応する発明の詳細な説明の【発明の実施の形態】(段落【0012】ないし段落【0064】)には、本願発明の実施例として「予備充電」との用語は用いておらず、「過充電」や「予充電」の用語を用いている。
以上、ア、イから、本願発明の「予備充電」は対応する実施例の「過充電」や「予充電」を包含する概念としての「予備的な充電」と解するのが妥当であり、してみると、引用発明における「充電を行う基準電圧7」は、本願発明における「予備充電を行う充電手段」に相当するというべきである。
よって、引用発明における、
「第1積分を行う前に、前記積分コンデンサ2が基準電圧(VREF)になるまで充電する基準電源7」及び「基準電圧7による充電」は、
本願発明における、
「第1積分を行う前に、前記積分コンデンサに予め一定の電圧を印加して予備充電を行う充電手段」及び「充電手段による予備充電」にそれぞれ相当するといえる。
(3)さらに、
本願発明のように「繰り返して複数回測距を行い、各測距の結果に基づいて前記検出手段により前記測距対象物までの距離検出を行」うことも、
引用発明のように「繰り返して測距を行うことと、該測距毎に測距の結果に基づいてCPU19により測距対象物までの距離を検出することと、を複数回行」うことも、
共に、「繰り返して複数回測距を行い、測距の結果に基づいて前記検出手段により前記測距対象物までの距離検出を行う」点で共通している。
してみると、両者は
(一致点)
「測距対象物に向けて光束を投光する投光手段と、
前記測距対象物に投光された前記光束の反射光を前記測距対象物までの距離に応じた位置検出素子上の受光位置で受光し、その受光位置に応じた信号を出力する受光手段と、前記受光手段から出力された前記出力信号に基づいて演算を行い前記測距対象物までの距離に応じた距離信号を出力する演算手段と、
積分コンデンサを有し、前記演算手段から出力された信号に応じて前記積分コンデンサを放電して前記演算手段から出力された信号を積分する第1積分を行い、その後に一定電流で前記積分コンデンサを充電して第2積分を行い、この第2積分の際に前記積分コンデンサの電圧と基準電圧とを比較して、その結果に応じた比較結果信号を出力する積分手段と、
前記積分手段から出力された信号に基づいて前記測距対象物までの距離を検出する検出手段と、前記積分手段にて前記第1積分を行う前に、前記積分コンデンサに予め一定の電圧を印加して予備充電を行う充電手段と、
を備えて構成され、
前記投光手段による投光、前記受光手段による受光、前記演算手段による演算処理及び前記積分手段による積分処理を繰り返して複数回測距を行い、測距の結果に基づいて前記検出手段により前記測距対象物までの距離検出を行うと共に、
前記複数回の測距のうち1回目の測距前に前記充電手段による予備充電を行い、2回目以降の測距前では前記予備充電を行わないようにした測距装置。」
で一致し、以下の点で相違する。
(相違点)
相違点:「繰り返して複数回測距を行い、測距の結果に基づいて前記検出手段により前記測距対象物までの距離検出を行う」点に関して、
本願発明では「繰り返して複数回測距を行い、各測距の結果に基づいて前記検出手段(CPU19)により前記測距対象物までの距離検出を行う」のに対し、
引用発明では「繰り返して測距を行うことと、該測距毎に測距の結果に基づいてCPU19(検出手段)により測距対象物までの距離を検出することと、を複数回行う」ようにしている点。

4.判断
前記相違点について検討する。
測距装置において、正確な測距を行うために、繰り返して複数回測距を行い、その平均値に基づいてすなわち、各測距の結果に基づいて距離検出を行なうようにすることは周知な技術事項である(例えば、原審で引用された刊行物である特開平5-273456号公報:特に、段落【0008】の記載「測距動作を繰り返し実行し、その平均値に基づいて撮影レンズを駆動調停する手法が考えられた。」を参照のこと。)。
そして、正確な測距を行うことは測距装置における共通の技術課題であるから、引用発明において正確な測距を行うべく本願発明のように(1距離検出あたり)繰り返して複数回測距を行い、各測距の結果に基づいて前記検出手段により前記測距対象物までの距離検出を行なうようにすることは、当業者ならば容易に想到し得るところといえる。
そして、上記周知技術を採用するに当たり、既述したように引用発明は「複数回の測距のうち1回目の測距前に基準電源7による充電(予備充電)を行い、2回目以降の測距前では基準電源7による充電(予備充電)を行わない」ようにしているから、予備充電(充電)については、(1距離検出当たり)繰り返して複数回行う測距のうち1回目の測距前にのみこれを行うようにすれば良いことは当業者ならば明らかである。
(作用効果について)
引用例には、充電に要する時間を短くすることが測距動作の遅延防止になる旨記載されている(前記2.引用例の記載事項・引用発明の事項(m)を参照のこと。)。
そして、引用発明は、既述したように「複数回の測距のうち1回目の測距前に基準電源7による充電(予備充電)を行い、2回目以降の測距前では基準電源7による充電(予備充電)を行わない」構成を有するものであり、該構成により予備充電に要する時間を(測距毎に予備充電を行う場合に比して)短くすることができることは明らかであるから、このことが測距動作の遅延防止になること、言い換えれば測距時間が短縮化されることは、引用発明から当業者が予測可能なものであるといえる。
よって、本願発明の作用効果は、引用発明及び周知技術から当業者ならば予測可能なものであって格別なものではない。

5.請求人の主張について
請求人は審判請求の理由において、「引用例には、本願発明の特徴である複数回の測距のうち1回目の測距前に充電手段による予備充電を行い、2回目以降の測距前では予備充電を行わないことが開示されていない」旨主張しているので該主張について検討する。
引用発明が、1回目の測距で基準電源7(充電手段)による充電が行われ、2回目以降の測距で基準電源7による充電が行われないことは前記2.引用例の記載事項・引用発明の(10)ないし(12)で説示したとおりである。
そして、引用発明の「基準電源7による充電」が本願発明における「充電手段による予備充電」に相当することも前記3.対比で説示したとおりである。
したがって、引用例には、本願発明の特徴である複数回の測距のうち1回目の測距前に充電手段による予備充電を行い、2回目以降の測距前では予備充電を行わない点が開示されているから、審判請求人の主張は妥当でない。

6.むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
以上のとおりであるから、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-16 
結審通知日 2009-02-17 
審決日 2009-03-02 
出願番号 特願平11-14395
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 須中 栄治関根 洋之  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 山下 雅人
下中 義之
発明の名称 測距装置  
代理人 寺崎 史朗  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 鈴木 光  

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