• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1195864
審判番号 不服2006-23337  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-10-13 
確定日 2009-04-17 
事件の表示 平成 8年特許願第153286号「遊技装置の識別情報表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年12月 9日出願公開、特開平 9-313683〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願の経緯概要は下記のとおりである。

特許出願 平成8年5月24日
審査請求 平成14年6月21日
拒絶理由 平成18年5月8日
手続補正 平成18年7月8日
拒絶査定 平成18年9月11日
審判請求 平成18年10月13日
手続補正 平成18年11月8日
審尋 平成20年9月17日
回答書 平成20年11月25日

第2 平成18年11月8日付の手続補正についての補正却下の決定

[結論]

平成18年11月8日付の手続補正を却下する。

[理由]

1.平成18年11月8日付の手続補正における特許請求の範囲の記載について

平成18年11月8日付の手続補正(以下「本件補正」という。)における特許請求の範囲の請求項1は以下のとおりである。
「【請求項1】
映像を表示する映像表示手段と、
当り識別情報及び外れ識別情報を記憶した識別情報記憶手段と、
リーチ状態にするか否かを決めるリーチ決定手段と、
当りにするか外れにするかを決める当り外れ決定手段と、
前記リーチ決定手段によってリーチ状態にすることが決まり、前記当り外れ決定手段によって外れにすることが決まったとき、前記識別情報記憶手段から当り識別情報を読み出して前記映像表示手段の左側識別情報停止表示位置及び右側識別情報停止表示位置に前記当り識別情報を停止表示させ、さらに、前記識別情報記憶手段から外れ識別情報を読み出して映像表示手段の左側識別情報停止表示位置及び右側識別情報停止表示位置に挟まれた中央識別情報停止表示位置を通過するように外れ識別情報をスクロール移動軌跡の周囲で迂回表示させる表示制御手段とを有し、
該表示制御手段は、外れ識別情報が左側識別情報停止表示位置及び右側識別情報停止表示位置に重ならないように外れ識別情報の表示位置を決めることを特徴とする遊技装置の識別情報表示装置。」

2.原査定時の特許請求の範囲の記載について

原査定時の特許請求の範囲の請求項1は、平成18年7月8日付の手続補正における以下のとおりのものである。
「【請求項1】
映像を表示する映像表示手段と、
その映像表示手段の表示内容を制御する表示制御手段とを有しており、
その表示制御手段は、前記映像表示手段に複数の識別情報を変動状態で表示し、さらに、変動するそれら複数の識別情報を当たり表示態様又は外れ表示態様で所定停止位置に停止表示するようになっている遊技装置の識別情報表示装置において、
前記表示制御手段は、前記複数の識別情報のうちの少なくとも1つを迂回軌跡上を移動させた後に所定停止位置に停止表示し、
前記迂回軌跡は、上下方向へ直線状に延びるスクロール移動軌跡に対する横方向へ移動しながら上から下へ向けて移動する軌跡であり、
その迂回軌跡上を移動する間、前記識別情報自体も傾斜状態又は逆転状態で表示されることを特徴とする遊技装置の識別情報表示装置。」

3.本件補正についての検討

本件補正における請求項2は請求項1を引用するものである。
また、原査定時の請求項2は独立項であるが、請求項1における「迂回軌跡」について「横方向へ移動しながら」を「横方向及び上下方向へ移動しながら」と変更した以外の点で請求項1と同様であり、また原査定時の請求項3-8は、請求項1,2のいずれかを引用しているものである。
よって、本件補正の検討にあたっては、本件補正における請求項1(以下「本件補正後」という場合がある。)と原査定時の請求項1(以下「本件補正前」という場合がある。)とを比較すれば十分である。

原査定時の請求項1には、発明を特定する構成として
(a)「映像表示手段の表示内容を制御する表示制御手段」を有する点
(b)「表示制御手段」が「前記映像表示手段に複数の識別情報を変動状態で表示し、さらに、変動するそれら複数の識別情報を当たり表示態様又は外れ表示態様で所定停止位置に停止表示する」点
(c)「表示制御手段」が、「前記複数の識別情報のうちの少なくとも1つを迂回軌跡上を移動させた後に所定停止位置に停止表示」する点
(d)「迂回軌跡」が「上下方向へ直線状に延びるスクロール移動軌跡に対する横方向へ移動しながら上から下へ向けて移動する軌跡」である点
(e)「迂回軌跡上を移動する間、前記識別情報自体も傾斜状態又は逆転状態で表示される」点
といった記載があるが、本件補正における請求項1にはその点の記載はなく、一方、
(ア)「当り識別情報及び外れ識別情報を記憶した識別情報記憶手段」を有する点
(イ)「リーチ状態にするか否かを決めるリーチ決定手段」を有する点
(ウ)「当りにするか外れにするかを決める当り外れ決定手段」を有する点
(エ)「表示制御手段」が「前記リーチ決定手段によってリーチ状態にすることが決まり、前記当り外れ決定手段によって外れにすることが決まったとき、前記識別情報記憶手段から当り識別情報を読み出して前記映像表示手段の左側識別情報停止表示位置及び右側識別情報停止表示位置に前記当り識別情報を停止表示させ、さらに、前記識別情報記憶手段から外れ識別情報を読み出」す点
(オ)「表示制御手段」が「映像表示手段の左側識別情報停止表示位置及び右側識別情報停止表示位置に挟まれた中央識別情報停止表示位置を通過するように外れ識別情報をスクロール移動軌跡の周囲で迂回表示させる」点
(カ)「表示制御手段」が「外れ識別情報が左側識別情報停止表示位置及び右側識別情報停止表示位置に重ならないように外れ識別情報の表示位置を決める」点
といった記載が追加されている。

これについて検討すると、本件補正後の「迂回表示」は、本件補正前の「迂回軌跡上を移動」に相当するものであるとすれば、本件補正後の(エ)?(オ)は本件補正前の(a)?(c)を限定的に減縮したものと判断することができるかもしれない。
また、本件補正後の(ア)?(ウ)の追加については、請求人は、審尋に対する回答書においても『補正前の「変動するそれら複数の識別情報を当り表示態様又は外れ表示態様で所定停止位置に停止表示する」との記載を実現するための構成要件として限定されたもの』『補正前の「前記複数の識別情報のうちの少なくとも1つを迂回軌跡上を移動させる」における「迂回軌跡上の移動」の時期を決定するための構成要件として限定されたもの』であるから限定的減縮に該当する旨を主張している。
ここで、仮に請求人の通り、(ア)?(ウ)の構成が発明を特定するために必要な事項の限定に当たるとしても、本件補正前の(d)という点は、本件補正後には(オ)にあるように「…に挟まれた中央識別情報停止表示位置を通過するように…スクロール移動軌跡の周囲で迂回表示させる」としか記載がなく、また(e)の点については、本件補正後には全く記載がない。
とすれば、本件補正は、本件補正前の(d)の点を(オ)のように変更し、また(e)の点を削除することによって、本件補正後の請求項1に係る発明は、「迂回表示」が「迂回軌跡上を移動する間、前記識別情報自体も傾斜状態又は逆転状態で表示される」という以外の表示を含み、また「上下方向へ直線状に延びるスクロール移動軌跡に対する横方向へ移動しながら上から下へ向けて移動する」という以外の表示も含むものである。

請求人は、審判請求書において、請求項1についての補正は特許請求の範囲の減縮を目的としていると主張し、また回答書においても構成的に限定して発明を減縮していると主張しているが、本件補正後の請求項1は、上記したように特許請求の範囲を拡張している部分を含むものであるから限定的減縮に該当すると判断することはできない。
また、明りょうでない記載の釈明に該当するかどうか検討しても、特許法第17条の2第4項第4号には「拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る」とあるところ、原査定の拒絶の理由においては、そのような指摘はなく、また、本件補正前の請求項1が不明瞭なものであるとも認められないから、明りょうでない記載の釈明に当たるものではない。
さらに、誤記の訂正にも当たらないことは明らかであり、また、本件補正によって請求項の数は減っているとは云え、請求項1の上記補正が請求項の削除を目的としているものと判断することもできない。

したがって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1.本願発明

本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、上記「第2[理由]2.」に平成18年7月8日付の手続補正における特許請求の範囲の請求項1として記載したとおりのもの(以下「本願発明」という。)である。

2.引用例

原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-313694号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面と共に以下の技術事項が記載されている。

・特別図柄装置120は、特別図柄表示装置122と回数表示装置124を備えている。特別図柄表示装置122は表示装置60の一つであって、特別図柄を表示する装置である。この特別図柄表示装置122に表示される特別図柄は、所定の時期に変動する。その変動後に、停止した状態で表示された特別図柄が所定の図柄と一致した場合を「大当たり」とする。(段落【0014】)
・表示制御回路234は、CPU230からバス238を介して送られた表示制御データに従って、図2にも示す特別図柄表示装置122の表示制御を行う回路である。具体的には、CPU230から送られた制御データと図柄データに従って特別図柄表示装置122を表示制御する。すなわち、表示制御回路234は、制御データに従って図柄データをフレームメモリ232に格納するとともに、フレームメモリ232に格納された図柄データを合成して画像信号に変換して特別図柄表示装置122に送り、特別図柄等を表示する機能を有する。(段落【0030】)
・また、上記の制御データには、ROM224に格納された図柄(あるいは一画面)を表示する順番を指定したシナリオデータと、一画面における図柄の組み合わせを指定した組み合わせパターンが含まれている。さらに、図柄を合成して表示するために、上記のフレームメモリ232は複数のフレームで構成されている。(段落【0031】)
・図13(A)では、上述したステップS56の座標値設定によって、数字の「7」を示す図柄700が特別図柄表示装置122の画面中央部に表示されている。もし、ステップS56が実行されない場合は、画面の左上部(図柄702)に表示される。以下、この図柄700の位置からの変化を以下に示す。
また、ステップS52のベクトル値設定(例えば、矢印D1方向への移動)により、図柄700は図13(B)に示すような画面の右下部(図柄704)に移動して表示される。(段落【0061】)
・同様に、ステップS58の回転値設定(例えば反時計回り、すなわち矢印D2方向に90度回転)により、図柄700は図13(C)に示すように画面中央部に横向きに(図柄706)に表示される。
さらに、ステップS60のスクロール値設定(例えば、矢印D3方向への移動)により、図柄700は図14(D)に示すように画面の中央上部(図柄708)へスクロールしながら表示される。
そして、ステップS62の拡大縮小値設定(例えば、縦横2倍に拡大)により、図柄700は図14(E)に示すように画面中央部に拡大されて(図柄710)表示される。(段落【0062】)
・それから、複合的な設定を行えば、図柄700は図14(F)に示すように画面の右下部に拡大され、しかも回転して表示される。この場合における設定は、ベクトル値(矢印D1方向への移動)、回転値(反時計回りに45度回転)、拡大縮小値(縦横2倍に拡大)である。このように、複合的な設定を行うことにより、一層複雑な図柄の表示を行うことができる。その反面、表示に必要な元の図柄を最小限に抑えることができるので、図柄を記憶するROM224の記憶容量を低く抑えることができる。
(段落【0063】)
・なお、図12に示すステップS50乃至ステップS62の処理は、設定する順番を任意の順番に変えて実行してもよい。この場合において、上記の組み合わせパターンで指定される要素に従って各ステップを実行するか否かが決まる。例えば、図9(C)に示す組み合わせパターン620の各要素は、図柄番号の他にベクトル値しかないため、ステップS52しか実行されない。同様に、図9(E)に示す組み合わせパターン540の各要素は、図柄番号の他に座標値しかないため、ステップS56しか実行されない。(段落【0064】)
・また、組み合わせパターンで指定される要素にかかわらず、必要に応じて省略してもよい。すなわち、ステップS50を省略すればモノクロ表示になり、ステップS52を省略すれば図柄は画面上で移動することなく固定される。同様に、ステップS54を省略すれば、最初は優先順位の最も高いフレームが選択され、以降は順に優先順位の低いフレームが選択されるようになる。さらに、ステップS56を省略すれば、フレームの一面全体に対応する最初の座標(例えば、画面上における左上の座標)が指定される。そして、ステップS58を省略すれば図柄は回転することがなく、ステップS60を省略すれば図柄はスクロールすることがなく、ステップS62を省略すれば図柄の大きさが変化しない。(段落【0065】)
・こうして、画像処理手段50の実行によって、ROM224に記憶されたシナリオデータに従って図柄(あるいは組み合わせパターンで指定される図柄)が読み出され、読み出された図柄は合成されて画像信号に変換され特別図柄表示装置122に出力される。このため、特別図柄表示装置122にはシナリオデータに従ったアニメーションが表示される。(段落【0069】)

上記引用文献1における記載事項及び図面を総合的に勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「特別図柄を表示する特別図柄表示装置122と、
特別図柄表示装置122の表示制御を行う表示制御回路234とを有しており、
特別図柄を所定の時期に変動させ、その変動後に停止した状態で表示された特別図柄が所定の図柄と一致した場合を「大当たり」とする弾球遊技機において、
数字の「7」を示す図柄700が画面中央部に表示され、ベクトル値設定(例えば、矢印D1方向への移動)により、画面の右下部(図柄704)に移動して表示され、回転値設定(例えば反時計回り、すなわち矢印D2方向に90度回転)により、図柄700は横向きに(図柄706)に表示され、
設定する順番は任意の順番に変えて実行してもよく、
ベクトル値及び回転値の複合的な設定を行うことにより、一層複雑な図柄の表示を行うことができる弾球遊技機」

3.対比

ここで、本願補正発明と引用発明とを比較する。

引用発明における「特別図柄」は本願発明の「識別情報」に相当し、以下同様に、「特別図柄表示装置122」は「映像表示手段」に、「表示制御」は「表示内容を制御」に、「表示制御回路234」は「表示制御手段」に、「遊戯装置」は「弾球遊技機」にそれぞれ相当する。また、引用発明も「特別図柄表示装置122」と「表示制御回路234」とを有するものであるから、本願発明の「識別情報表示装置」を備えていることとなる。
さらに、引用文献1の記載等からみて、以下のことが云える。
引用発明においては「停止した状態で表示」とあるから、その所定の位置、すなわち「所定停止位置」があることは当然のことである。また、「所定の図柄」は、「一致した場合を「大当たり」とする」とあるから、本願発明の「当たり表示態様」に相当し、また、その一方で「外れ表示態様」を備えることも当然のことである。なお、「特別図柄(識別情報)」を複数とすることは、当分野の技術常識に過ぎない。
引用発明における「数字の「7」を示す図柄700」は「特別図柄(識別情報)」であるかは明らかではないが、本願発明においても詳細な説明を参照すれば「識別情報」とは「数字や図柄」(段落【0009】)なのであるから、引用発明の「数字の「7」を示す図柄700」も本願発明の「識別情報」も、いずれも「図柄」である点で一致している。
一般に、何かが移動した跡を「軌跡」というから、引用発明も図柄700は「軌跡上を移動」しているものである。
引用文献1の段落【0062】においては「スクロール値設定(例えば、矢印D3方向への移動)により、図柄700は図14(D)に示すように画面の中央上部(図柄708)へスクロールしながら表示される」とあり、図14(D)の矢印を参照しても、引用文献1における「スクロールしながら表示」とは「上下方向へ直線状に延びる」ものであって、それに対して、引用発明においては「画面中央部に表示され…矢印D1方向への移動…により、画面の右下部…に移動して表示」とあるから、引用文献1の図13(B)も参照すれば、右下方向へ移動していることは明らかであり、上記したスクロールの方向と比較すれば、右下方向への移動とは、「横方向へ移動しながら上から下へ向けて移動」に他ならないから、引用発明も「上下方向に延びるスクロール移動軌跡に対する横方向へ移動しながら上から下へ向けて移動する軌跡」を移動しているものであり、これは本願発明の「迂回軌跡」に相当する。
引用発明においても「回転値設定(例えば反時計回り、すなわち矢印D2方向に90度回転)により、図柄700は横向きに(図柄706)に表示され」とあり、ここで「横向き」とは「傾斜状態」に相当し、また引用発明においても「設定する順番は任意の順番に変えて実行してもよく」とあるから(引用文献1の段落【0064】には「設定する順番を任意の順番に変えて実行してもよい。この場合において、上記の組み合わせパターンで指定される要素に従って各ステップを実行するか否かが決まる。」とある)、引用発明における「ベクトル値設定(例えば、矢印D1方向への移動)」及び「回転値設定(例えば反時計回り、すなわち矢印D2方向に90度回転)」の順序は逆にすることも当然想定できることであるから、とすれば、先に横向き(傾斜状態)とし、それから右下方向へ移動させることも、引用発明に開示されていると云えるべきものであって、その結果「軌跡上を移動する間」「傾斜状態で表示される」こととなる。

よって、両者は、
「映像を表示する映像表示手段と、
その映像表示手段の表示内容を制御する表示制御手段とを有しており、
その表示制御手段は、前記映像表示手段に複数の識別情報を変動状態で表示し、さらに、変動する複数の識別情報を当たり表示態様又は外れ表示態様で所定停止位置に停止表示するようになっている遊技装置の識別情報表示装置において、
前記表示制御手段は、図柄を迂回軌跡上を移動させ、
前記迂回軌跡は、上下方向へ直線状に延びるスクロール移動軌跡に対する横方向へ移動しながら上から下へ向けて移動する軌跡であり、
その迂回軌跡上を移動する間、前記図柄も傾斜状態で表示される遊技装置の識別情報表示装置」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
「図柄」は、本願発明においては「複数の識別情報のうちの少なくとも1つ」であるのに対し、引用発明では「数字の「7」を示す図柄700」であって、これが特別図柄(本願発明の識別情報に相当)であるか明らかではなく、また本願発明では「図柄」を、「迂回軌跡上を移動させた後に所定停止位置に停止表示」しているのに対し、引用発明においては迂回軌跡上を移動した後に所定位置に停止するかも明らかではない点。

4.判断

上記相違点について検討する。
特開平7-155438号公報には「図7及び図8に数字の7で示される停止して確定した状態の二つの特別図柄d’、d’が水平方向に回転して表示され、図7及び図8に示される数字の4で示される確定していない状態の特別図柄d’が、上記7の特別図柄d’に対して極めて小さい状態から拡大して、上記7より大きくなって消え、次の図示しない特別図柄が、再び小さな状態から拡大して消えることを繰り返し、確定する際に、上記7と同じ大きさで表示されるようになっている。なお、上記特別図柄d’…の表示は、上述のような表示に限定されるものではなく、ワークステーション18aにより、形状データを形状変換する際に、回転や拡大縮小やその他の変形等をアニメーション表示できるように、複数の段階に分けて行なうことにより様々な表示が可能である。すなわち、回転角度や拡大率などを変えて複数の変換された形状データを作成し、これらの形状データに上記透視変換及び陰影処理を行なうことにより、…例えば、拡大と回転を組合せたものや、一つの方向に沿った伸縮などをアニメーションとして表示することができる。」(段落【0073】-【0074】)といった記載があり、また特開平8-84835号公報には「最終停止図柄領域(中図柄列80b)の立体表示については、大当りとなる該当図柄(図33(A)の場合、「7」)を変動させながら立体表示しても良い。そして、図33(B)に示すように、中図柄列80bの停止表示に伴って大当り図柄が揃うと」(段落【0050】)といった記載があるように、特別図柄(本願発明における「識別情報」)の変動表示において、特殊な表示態様とした後に停止表示させることは周知慣用技術に過ぎない。
引用発明における「数字の「7」を示す図柄700」の動きも上記周知技術における特殊な表示態様として採用することも当業者にとって何ら困難なく選択できたことであって、とすれば、引用発明における「特別図柄を所定の時期に変動させ、その変動後に停止した状態で表示」する場合において、上記周知慣用技術を適用して、引用発明における「数字の「7」を示す図柄700」の動きを、引用発明の「特別図柄」の動きとして適用することは、遊技機分野における当業者にとって容易である。

したがって、相違点にかかる構成とすることは、引用発明及び上記周知慣用技術に基づき、当業者にとって容易に想到できたことである。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び上記周知慣用技術から当業者が予測できる範囲のものである。

5.むすび

したがって、本願発明は、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第4 むすび

以上のとおり、平成18年11月8日付の補正は却下され、そして、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項2以下について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-13 
結審通知日 2009-02-18 
審決日 2009-03-03 
出願番号 特願平8-153286
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 保光  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 池谷 香次郎
川島 陵司
発明の名称 遊技装置の識別情報表示装置  
代理人 横川 邦明  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ