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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1195865
審判番号 不服2006-23441  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-10-16 
確定日 2009-04-13 
事件の表示 特願2000-326110「弾球遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 4月24日出願公開、特開2001-112987〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成9年9月5日に出願された特願平9-257773号の一部を新たな特許出願として出願されたものであり、その経緯概要は下記のとおりである。

特許出願 平成12年10月25日
審査請求 平成12年11月15日
拒絶理由 平成17年3月10日
手続補正 平成17年5月10日
拒絶理由 平成18年1月17日
手続補正 平成18年3月16日
補正却下及び拒絶査定 平成18年9月7日
審判請求 平成18年10月16日
手続補正 平成18年11月7日

第2 平成18年11月7日付の手続補正についての補正却下の決定

[結論]

平成18年11月7日付の手続補正を却下する。

[理由]

1.平成18年11月7日付の手続補正における特許請求の範囲の記載について

平成18年11月7日付の手続補正(以下「本件補正」という。)における特許請求の範囲の請求項1は以下のとおりである。
「【請求項1】遊技の制御を司る主制御部と、CPU、ROM及びRAMを有し図柄表示装置の表示を制御する図柄制御部とを備え、
前記主制御部は、始動入賞が検知されると乱数値を読み出し、該乱数値により当否判定を行うとともに、その判定結果を前記図柄制御部へ送信し、
前記RAMには、図柄決定やリーチ決定に使用するために一定周期で値が加算演算されることにより一定範囲内で値が繰り返し更新される乱数メモリ、図柄の処理時間の管理に使用される図柄処理時間メモリ、及び図柄処理番号メモリが設定されており、
前記図柄の変動時間は、通常状態、高確率状態又は変動時間短縮状態の各状態で異なる時間に設定されており、
前記CPUは、前記ROMに格納されたプログラムを読み出し、前記主制御部から送信された前記判定結果を参照して前記乱数メモリに基づき前記図柄表示装置において表示される図柄やリーチの態様を独自に決定するとともに、前記各状態に応じて前記RAMに設定された図柄処理時間メモリの情報をセットし、かつ前記RAMに設定された図柄処理番号メモリを使用して図柄処理モジュールから対応するプログラムモジュールを呼び出すことにより、変動時間制御を実行することを特徴とする弾球遊技機。」

2.原査定時の特許請求の範囲の記載について

原査定と同日付で平成18年3月16日付の手続補正は却下されており、原査定時の特許請求の範囲の請求項1は、平成17年5月10日付の手続補正における請求項1であって以下のとおりである。
「【請求項1】遊技の制御を司る主制御部と、CPU、ROM及びRAMを有し図柄表示装置の表示を制御する図柄制御部とを備え、
前記主制御部は、始動入賞が検知されると乱数値を読み出し、該乱数値により当否判定を行うとともに、その判定結果を前記図柄制御部へ送信し、
前記RAMには、図柄決定やリーチ決定のためのメモリが設定されており、当該メモリは一定周期で値が加算演算されることにより、一定範囲内で値が繰り返し更新される乱数メモリであって、
前記CPUは、前記ROMに格納されたプログラムを読み出し、前記主制御部から送信された前記判定結果を参照して前記乱数メモリに基づき前記図柄表示装置における表示態様を独自に決定することを特徴とする弾球遊技機。」

3.本件補正についての検討

本件補正は、原査定時の請求項1に対して以下の点の変更を加えたものである。
(a)原査定時の請求項1における「前記RAMには、図柄決定やリーチ決定のためのメモリが設定されており、当該メモリは一定周期で値が加算演算されることにより、一定範囲内で値が繰り返し更新される乱数メモリであって」という記載を、「前記RAMには、図柄決定やリーチ決定に使用するために一定周期で値が加算演算されることにより一定範囲内で値が繰り返し更新される乱数メモリ…が設定されており」という記載に変更
(b)原査定時の請求項1における「図柄表示装置における表示態様」という記載を、「図柄表示装置において表示される図柄やリーチの態様」と変更
(c)原査定時の請求項1に対して、
「前記RAMには…図柄の処理時間の管理に使用される図柄処理時間メモリ、及び図柄処理番号メモリが設定されており」
「前記図柄の変動時間は、通常状態、高確率状態又は変動時間短縮状態の各状態で異なる時間に設定されており」
「前記各状態に応じて前記RAMに設定された図柄処理時間メモリの情報をセットし、かつ前記RAMに設定された図柄処理番号メモリを使用して図柄処理モジュールから対応するプログラムモジュールを呼び出すことにより、変動時間制御を実行する」
という記載を追加

これについて以下検討する。

(a)の補正事項は、実質的な変更はない。
(b)の補正事項は、補正前の「表示態様」を、「表示される図柄やリーチの態様」と変更したものであって、特許請求の範囲の減縮にあたるものである。
(c)の補正事項は、補正前の発明における「RAM」の構成を限定し、また補正前の発明における「表示態様」について、その変動時間制御に関して具体的に限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮にあたるものである。

よって、(a)?(c)を総合的に勘案すれば、特許請求の範囲の拡張にあたる部分もないので、請求項1にかかる補正は特許請求の範囲の限定的減縮に相当すると判断することができる。

そこで、平成18年11月7日付の手続補正における特許請求の範囲の請求項1(以下「本願補正発明」という。)が独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。

4.引用例

原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-246050号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面と共に以下の技術事項が記載されている。

・表示用CPU302は役物用CPU301からのコマンドやデータを片側方向に対してのみデータの送信が行われるデータ線350を介して受信し、可変表示装置102の表示図柄を可変作動させるための制御を行うとともに、制御プログラム等やサウンドジェネレータ356により発生させる音データを格納しているROM351と、ワークエリアの設定や制御に必要なデータの一時記憶等を行うRAM352を内蔵している。(段落【0061】)
・ここで、役物用CPU301、RAM311およびROM314は全体として遊技制御手段360を構成し、表示種別指令手段、遊技態様判定手段としての機能を実現する。一方、表示用CPU302、ROM351、RAM352、フォントROM353およびV-RAM354は全体として表示制御手段370を構成し、表示種別制御負担手段、識別情報選択手段としての機能を実現する。さらに、表示制御手段370、サウンドジェネレータ356、アンプ357、ドライバー355は全体として表示制御装置400を構成する。(段落【0067】)
・可変表示中でないときはステップS24に進んで始動記憶があるか否かを判別する。始動記憶とは、始動口103、105あるいは106への入賞を4個を限度として記憶することをいい、この始動記憶数は可変表示装置102に表示される。始動記憶があるときはステップS26に進んで可変表示開始処理(詳細はサブルーチンで述べる)を実行する。これにより、可変表示装置102の図柄変動が開始される。その後、ステップS30に進む。(段落【0074】)
・次いで、ステップS30に進む。ステップS30では表示制御装置400側にコマンドを送信する処理を行う。ここで、本実施例では表示制御装置400側に遊技制御手段360側の制御の一部を負担させることが行われ、具体的には、可変表示装置102に表示する表示種別(例えば、大当り、外れ、ラッキーナンバー等の停止コマンド)を役物制御用CPU301から表示制御用CPU302に指令し、表示制御用CPU302側では指令された表示種別に基づいて、表示種別に応じた表示を行うように可変表示装置102の作動を制御する。すなわち、役物制御用CPU301では図柄の可変表示、停止態様(大当り、外れ、ラッキーナンバー等)のみを指令することにより、表示制御装置400側が停止時の図柄を選択して可変表示装置102に表示させることが行われる。(段落【0076】)
・可変表示開始処理 図7は役物制御用メインルーチンのステップS26における可変表示開始処理のサブルーチンを示す図である。このサブルーチンに移行すると、ステップS50で入賞時に記憶した乱数値を読み出す。本実施例では、いわゆる入賞フェッチ方式を採用しており、始動入賞があると同時に大当り判定用の乱数を取り出し、これを記憶するようになっている。したがって、入賞時に当り/外れが決定されることになる。(段落【0078】)
・次いで、ステップS52では読み出した乱数値が当り(すなわち、大当り)であるか否かを判別する。当りでなければステップS54で外れ停止コマンドをセットする。この外れ停止コマンドは表示用CPU302に送信され、表示用CPU302では外れ停止コマンドに基づいて外れの停止図柄を表示するように可変表示装置102の作動を制御する。この場合、役物制御用CPU301では、外れ停止の指令(つまり表示種別の指令)を出力するのみで、停止の図柄までは指令せず、停止の図柄は表示制御用CPU302側で決定する。これにより、役物制御用CPU301の制御負担を軽くすることが行われる。(段落【0079】)
・ステップS54を経ると、次いで、ステップS56に進み、ステップS50で読み出した乱数値の内容がリーチであるか否かを判別する。リーチとは、第1停止図柄および第2停止図柄が同じで、第3図柄が変動している状態(例えば、「77X」)である。リーチのときはステップS58に進んでリーチコマンドをセットする。次いで、ステップS60でリーチ用の可変表示タイマをセット(例えば、3秒にセット)する。可変表示タイマは可変表示装置102の図柄を変動(可変表示)させている時間をカウントするものである。これにより、表示制御用CPU302側では、例えば8秒間だけリーチ状態の図柄変動となり所定の図柄に停止する表示制御が行われる。(段落【0080】)
・なお、複数のコマンドが同時にセットされることもあり得る。例えば、上記例では外れ停止のコマンドと、リーチのコマンドとが同時にセットされる。したがって、この場合はリーチになるが、結局、外れの図柄となる(例えば、「773」)。ステップS60の処理を経ると、次いで、ステップS62で始動記憶を更新する。これは、始動記憶数を[1]だけデクリメントするもので、例えば、始動記憶が[2]のときは更新して[1]となる。次いで、ステップS64で可変表示処理を開始する。これにより、可変表示装置102の図柄変動(可変表示)を開始(つまり補助遊技を開始)するコマンドが送信されて、実際に可変表示装置102の図柄変動が開始する。(段落【0081】)
・一方、ステップS56でリーチでないときはステップS66に進んでロングリーチであるか否かを判別する。ロングリーチとは、前述したスペシャルリーチのことで、1、2個目の図柄が停止した後、3個目の図柄を停止させるときに通常停止と異なる特別停止で3個目の図柄を停止させるものである。特別停止における停止に関わる期間中は、図柄のスクロールがより一層緩やかになる。(段落【0082】)
・ロングリーチでないときはステップS68に進んで通常停止コマンドをセットするとともに、続くステップS70で通常停止用の可変表示タイマをセット(例えば、5秒にセット)する。これにより、表示制御用CPU302側では、例えば5秒間だけ通常の停止態様(つまり外れの図柄)となるような表示制御が行われる。ステップS70を経ると、ステップS62に進む。(段落【0083】)
・また、ステップS66でロングリーチであるときはステップS72に分岐してロングリーチコマンドをセットし、続くステップS74でロングリーチ用の可変表示タイマをセット(例えば、10秒にセット)する。その後、ステップS62に進む。これにより、表示制御用CPU302側では、可変表示装置102の図柄変動を10秒という長い時間にわたってリーチ変動させてから停止させる制御が行われる。(段落【0084】)
・一方、上記ステップS52で読み出した乱数値が当り(すなわち、大当り)のときはステップS76に分岐し、当り図柄がラッキーナンバーであるか否かを判別する。ラッキーナンバーとは、特定の図柄で当りになると、以後所定回にわたり、大当り確率がアップ(例えば、10倍にアップ)するようなものである。ラッキーナンバーには、例えば「333」、「777」の図柄がある。「333」の図柄で大当りになると、以後1回だけ大当り確率がアップする。なお、「777」の図柄をスペシャルラッキーナンバーとして、大当り確率を5回にわたって高めるようにしてもよい。(段落【0085】)
・ステップS76で当り図柄がラッキーナンバーであるときは、ステップS78に進んでラッキー停止コマンドをセットし、ステップS80に進む。これにより、表示制御用CPU302側では、可変表示装置102の図柄をラッキーナンバーで停止させる制御が行われる。また、当り図柄がラッキーナンバーでないときは、ステップS82に進んで当り停止コマンドをセットし、ステップS80に進む。これにより、表示制御用CPU302側では、可変表示装置102の図柄を通常の当りナンバーで停止させる制御が行われる。(段落【0086】)
・ステップS80ではロングリーチであるか否かを判別し、ロングリーチであるときはステップS72に進んでロングリーチコマンドをセットする。これにより、表示制御用CPU302側では、可変表示装置102の図柄変動を長い時間にわたってリーチ変動させてから停止させる制御が行われる。また、ロングリーチでなければステップS58に進んでリーチコマンドをセットする。これにより、表示制御用CPU302側では、例えば8秒間だけリーチの図柄変動となるような表示制御が行われる。なお、上記ステップS52、ステップS56、ステップS66、ステップS76、ステップS80の判定は何れも乱数値に基づいて行われる。また、上記の通常停止、リーチ停止、ロングリーチ停止等は識別情報の表示態様に相当する。(段落【0087】)
・可変表示処理 図8は役物制御用メインルーチンのステップS22における可変表示処理のサブルーチンを示す図である。このサブルーチンに移行すると、ステップS100で可変表示タイマがタイムアップしたか否かを判別する。可変表示タイマは可変表示装置102の図柄を変動(可変表示)させている時間をカウントするものであるから、ステップS100の判別結果がNOのときは、図柄が変動中であるのでメインルーチンにリターンする。(段落【0088】)
・また、ステップS100で可変表示タイマがタイムアップしたときはステップS102に進んで当り停止コマンドがセットされているか否かを判別する。当り停止コマンドは可変表示装置102をラッキーナンバー以外の当り図柄で停止させる指令である。当り停止コマンドがセットされていればステップS104で通常判定確率を設定する。通常判定確率とは、大当り終了後に次の大当り発生までの間における可変表示に対する大当り確率が通常の判定基準となるもので、例えば確率設定スイッチによって1/200、1/210、1/220の3段階のうちの何れかの値に大当り確率が設定されていれば、その設定された値そのままとなる。(段落【0089】)
・一方、ステップS102で当り停止コマンドがセットされていなければステップS106に進み、ラッキー停止コマンドがセットされているか否かを判別する。ラッキー停止コマンドは可変表示装置102をラッキーナンバーの当り図柄で停止させる指令である。ラッキー停止コマンドがセットされていればステップS108でラッキー判定確率を設定する。ラッキー判定確率とは、大当り終了後に次の大当り発生までの間における可変表示に対する大当り確率が通常の判定基準よりアップして10倍となるもので、例えば確率設定スイッチによって1/200、1/210、1/220の3段階のうちの何れかの値に大当り確率が設定されていれば、それぞれ1/20、1/21、1/22にアップした値となる。(段落【0091】)
・ステップS204では、入力処理を行い、ここでは遊技制御手段360からの指令を受信する(つまり、送られてきたコマンドの読み込みを行う)。遊技制御手段360からの指令には、前述したように従来と異なり、表示種別のコマンドのみであり、実際の停止図柄は表示制御手段370側で決定される。(段落【0101】)
・また、ステップS214で受信したコマンドが特別遊技コマンドでないときはステップS218に進み、可変表示装置102が可変表示中であるか否かを判別する。可変表示中のときはステップS220に進んで可変表示タイマがタイムアップしたか否かを判別する。可変表示タイマがタイムアップしていなければ、ステップS224で可変表示処理を行い、可変表示タイマがタイムアップすると、ステップS222に進んで図柄の停止処理(詳細はサブルーチンで述べる)を行う。これにより、一定時間だけ可変表示装置102の図柄が変動し、停止することになる。ステップS224あるいはステップS222の処理を経ると、ステップS210に進む。(段落【0108】)
・ステップS218で可変表示中でないときはステップS226に進み、停止コマンドを受信したか否かを判別する。停止コマンドとは、可変表示装置102の変動図柄を開始させた後、停止させる指令てあり、表示種別としては当り停止、外れ停止、ラッキーナンバー停止がある。停止コマンドであるときはステップS228に進んで可変表示装置102の停止図柄を決定する(詳細はサブルーチンで述べる)。(段落【0109】)
・これは、受信した停止コマンド(当り、外れ等の表示種別に対応したもの)に応じた停止図柄を選択する処理であり、可変表示終了(図柄停止)時に、ここで選択された図柄に可変表示装置102の表示が停止する。ステップS228を経ると、ステップS210に進む。一方、ステップS226で停止コマンドでないときはステップS210に進む。ステップS210ではフォントROM353から読み出しV-RAM354上にセットされた図柄データに基づいて可変表示装置102を駆動することが行われる。(段落【0110】)
・停止図柄決定処理 図11は表示制御用メインルーチンのステップS228における停止図柄決定処理のサブルーチンを示す図である。このサブルーチンに移行すると、ステップS250で外れ停止コマンドを受信したか否かを判別する。外れ停止コマンドは可変表示装置102を外れの図柄で停止させる指令である。外れ停止コマンドを受信したときはステップS252で表示態様コマンドに基づき外れ停止図柄(例えば、リーチ停止であれば「113」のように第1、第2停止図柄がゾロ目であり、第3図柄が異なる図柄)を設定する。この設定は、受信した外れ停止コマンドに応じてフォントROM353のアドレスを算出し、フォントROM353のアドレスに対応する外れ停止図柄データを選択して読み出すことによって行われる。(段落【0111】)
・ステップS252の処理を経ると、次いで、ステップS262に進んで可変表示タイマをセットする。この場合の可変表示タイマは、1桁目が停止する時間を設定するもので、例えば5秒にセットされる。なお、当り停止、外れ停止、ラッキーナンバー停止の何れの場合でも1桁目の停止する時間は同じに設定される。次いで、ステップS264で可変表示処理を開始し、その後、メインルーチンにリターンする。(段落【0112】)
・ステップS250で外れ停止コマンドを受信しないときは、ステップS254に進んで当り停止コマンドを受信したか否かを判別する。当り停止コマンドは可変表示装置102を当りの図柄で停止させる指令である。当り停止コマンドを受信したときはステップS256で当り停止図柄(例えば、「111」のようにゾロ目になる図柄)を設定する。この設定は、受信した当り停止コマンドに応じてフォントROM353のアドレスを算出し、フォントROM353のアドレスに対応する当り停止図柄データを選択して読み出すことによって行われる。なお、ここでの当り図柄にはラッキーナンバー図柄は含まれない。ステップS256を経ると、ステップS262に進んで同様の処理を行う。(段落【0113】)
・ステップS254で当り停止コマンドを受信しないときは、ステップS258に進んでラッキー停止コマンドを受信したか否かを判別する。ラッキー停止コマンドは可変表示装置102をラッキーナンバーの当り図柄で停止させる指令である。ラッキー停止コマンドを受信したときはステップS260でラッキー図柄(例えば、「333」のようなラッキーナンバー)を設定する。この設定は、受信したラッキー停止コマンドに応じてフォントROM353のアドレスを算出し、フォントROM353のアドレスに対応するラッキー停止図柄データを選択して読み出すことによって行われる。なお、ここでのラッキー図柄には通常の当り図柄は含まれない。ステップS260を経ると、ステップS262に進んで同様の処理を行う。(段落【0114】)
・停止処理 図12は表示制御用メインルーチンのステップS222における停止処理のサブルーチンを示す図である。このサブルーチンに移行すると、ステップS300で通常停止コマンドを受信したか否かを判別する。通常停止コマンドとは、可変表示装置102の変動図柄をリーチではなく、通常の停止時間で停止させる指令である。通常停止コマンドであるときはステップS302に進んで通常停止処理を行う。これにより、可変表示装置102の変動図柄が通常の停止時間で停止することになる。この場合の停止図柄は、停止図柄決定処理で設定されたものになる。その後、メインルーチンにリターンする。(段落【0115】)
・ステップS300で通常停止コマンドを受信しないときはステップS304に進んでリーチコマンドを受信したか否かを判別する。リーチコマンドとは、可変表示装置102の変動図柄をリーチで停止させる指令である。リーチコマンドであるときはステップS306に進んでリーチ停止処理を行う。これにより、可変表示装置102の変動図柄が通常の停止時間より長いリーチの時間で停止することになる。この場合のリーチ図柄は停止図柄決定処理で設定されたものになる。その後、メインルーチンにリターンする。(段落【0116】)
・また、ステップS304でリーチコマンドを受信しないときはステップS308に進んでロングリーチコマンドを受信したか否かを判別する。ロングリーチコマンドとは、可変表示装置102の変動図柄をロングリーチで停止させる指令である。ロングリーチコマンドであるときはステップS310に進んでロングリーチ停止処理を行う。これにより、可変表示装置102の変動図柄が通常のリーチ停止時間より長いロングリーチの時間で停止することになる。この場合のロングリーチ図柄は停止図柄決定処理で設定されたものになる。その後、メインルーチンにリターンする。一方、ステップS308の判別結果がNOのとき、すなわちロングリーチでないときは今回のルーチンを終了してリターンする。(段落【0117】)
・このように本実施例では、遊技制御手段360から表示種別の指令を行うコマンドが送信され、表示制御装置400側の表示用CPU302では受信した表示種別の指令に基づいて停止時の表示図柄を選択し、可変表示装置102に表示させることが行われる。すなわち、表示制御装置400側に遊技制御手段360側の制御の一部を負担させることが行われる。表示種別の指令としては、停止指令により可変表示を行った後に停止させる外れ停止指令、当り停止指令、ラッキーナンバー停止指令等がり、これらの各指令に対応して表示用CPU302で表示制御を行う。(段落【0118】)
・したがって、遊技制御手段360では図柄の可変表示結果としての停止態様(大当り、外れ、ラッキーナンバー等)のみを指令することになり、表示制御手段370が停止時の図柄を選択するという表示制御の一部を負担して可変表示装置102に表示させる。(段落【0119】)
・その結果、可変表示装置102の特長を活かして多彩な表示を行いながら、遊技制御手段360側の制御の負担を軽減させることができ、プログラム容量の削減(ROM容量の軽減)を図ることができる。また、プログラム容量が削減された分だけ、他の制御を付加することが可能になり、さらに興趣ある遊技制御を行うことができるようになる。(段落【0120】)
・上記実施例では、リーチおよびロングリーチを遊技制御手段側で決定しているが、これに限らず、例えば表示制御手段側で通常停止、リーチ停止、ロングリーチ停止を決定してもよい。ただし、外れの場合の通常停止、リーチ停止、ロングリーチ停止の表示時間違いおよび当りの場合のリーチ、ロングリーチの表示時間の違いを把握して役物側の制御を行う必要がある。(段落【0123】)

また、引用文献1における「表示用CPU302は…可変表示装置102の表示図柄を可変作動させるための制御を行うとともに、制御プログラム等…を格納しているROM351と、ワークエリアの設定や制御に必要なデータの一時記憶等を行うRAM352を内蔵している」(段落【0061】)という記載から、表示用CPU302がROM351から制御プログラム等を読み出すことは当然のことである。
また「表示制御手段370」は「表示制御装置400」に含まれるものであるから、上記引用文献1における記載事項及び図面を総合的に勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「遊技制御手段360と、
表示用CPU302、ROM351、RAM352、フォントROM353およびV-RAM354を有し、可変表示装置102の表示図柄を可変作動させるための制御を行う表示制御手段370とを備え、
遊技制御手段360は、始動口への入賞があると同時に大当り判定用の乱数を取り出して記憶し、その記憶した乱数値を読み出し、
読み出した乱数値が大当りであるか否かを判別し、大当りでなければ外れ停止コマンドをセットし、大当りのときは当り図柄がラッキーナンバーであるか否かを判別し、ラッキーナンバーであるときはラッキー停止コマンドをセットし、ラッキーナンバーでないときは当り停止コマンドをセットし、
表示制御手段370側にコマンドを送信し、
表示用CPU302は、ROM351に格納された制御プログラム等を読み出し、
遊技制御手段360から送られてきたコマンドの読み込みを行い、受信したコマンドに基づいて実際の停止図柄は表示制御手段370側で決定すると共に、
表示制御手段370側で通常停止、リーチ停止、ロングリーチ停止を決定する遊技機。」

5.対比

ここで、本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明における「遊技機」は本願補正発明の「弾球遊技機」に相当し、以下同様に「遊技制御手段360」は「主制御部」に、「表示制御手段370」は「図柄制御部」に、「表示用CPU302」は「CPU」に、「可変表示装置102」は「図柄表示装置」に、「ROM351」「フォントROM353」は「ROM」に、「RAM352」「V-RAM354」は「RAM」に、「表示図柄を可変作動させるための制御を行う」は「表示を制御する」に、「始動口への入賞があると」は「入賞を検知すると」に、「大当り判定用の乱数」「乱数値」は「乱数値」にそれぞれ相当する。
引用発明における遊技制御手段360が「遊技の制御を司る」ことは当然であって、また引用発明における「コマンドの読み込みを行い、受信したコマンドに基づいて」は、本願補正発明における「判定結果を参照して」に相当するものである。

さらに、引用文献1の記載等からみて、以下のことが云える。

引用発明における「実際の停止図柄は表示制御手段370側で決定する」について、請求人は、平成18年3月16日付の意見書の3-3-4.において以下のように主張している。
「(2)弾球遊技機においては、複数種類の図柄又はリーチの態様を設定するのが通常であるところ、一般的には表示制御手段側に複数種類の図柄又はリーチの態様を記憶することとなる。そして表示制御手段側での図柄又はリーチの態様の選択・決定は、主制御手段が送信する信号(判定結果)と、表示制御手段が選択する図柄又はリーチの態様とを1対1の関係にすることで行っている。つまり、主制御手段から判定結果A(例えば当りA)が送信されると表示制御手段は図柄A又はリーチの態様Aを選択し、判定結果B(例えば当りB)が送信されると表示制御手段は図柄B又はリーチの態様Bを選択する方式となっている。本例のように、主制御手段から送信される判定結果A及びBがいずれも当り(表示種別)を示す信号であっても、異なるリーチの態様A,Bを経由して当りA,Bとなる。
(3)引用文献1の遊技機の図柄決定方式においても、このような方式が用いられていることは段落0111、0113及び0114の記載からも明らかである。例えば、段落0111の『外れ停止図柄を設定する。この設定は、受信した外れ停止コマンドに応じてフォントROM353のアドレスを算出し、フォントROM353のアドレスに対応する外れ停止図柄データを選択して読み出すことによって行われる』等の記載から、主制御手段が送信する判定結果と、表示制御手段が選択するアドレスとが1対1の関係になっていることは明らかである。」
請求人は、上記意見書の(3)において、引用文献1は「判定結果と、表示制御手段が選択するアドレスとが1対1の関係になっている」ことは明らかと主張しているが、引用文献1の段落【0111】、【0113】、【0114】においては、「受信したコマンドに応じてフォントROMのアドレスを算出」した上で、「アドレスに対応する図柄データを読み出す」と記載されているものの、コマンドとアドレスが1対1に対応しているとまでは記載されていない。
そして、引用文献1の段落【0076】における「本実施例では表示制御装置400側に遊技制御手段360側の制御の一部を負担させることが行われ、具体的には、可変表示装置102に表示する表示種別(例えば、大当り、外れ、ラッキーナンバー等の停止コマンド)を役物制御用CPU301から表示制御用CPU302に指令し、表示制御用CPU302側では指令された表示種別に基づいて、表示種別に応じた表示を行うように可変表示装置102の作動を制御する。すなわち、役物制御用CPU301では図柄の可変表示、停止態様(大当り、外れ、ラッキーナンバー等)のみを指令することにより、表示制御装置400側が停止時の図柄を選択して可変表示装置102に表示させることが行われる。」、段落【0079】における「この外れ停止コマンドは表示用CPU302に送信され、表示用CPU302では外れ停止コマンドに基づいて外れの停止図柄を表示するように可変表示装置102の作動を制御する。この場合、役物制御用CPU301では、外れ停止の指令(つまり表示種別の指令)を出力するのみで、停止の図柄までは指令せず、停止の図柄は表示制御用CPU302側で決定する。これにより、役物制御用CPU301の制御負担を軽くすることが行われる。」という記載も踏まえれば、あくまで停止の図柄の選択・決定は表示制御手段370(表示(制御)用CPU302)によって行われると考えるのが当然であり、また表示制御手段370における停止図柄決定(引用文献1の【図11】も参照)において参照される遊技制御手段360から送信されるコマンドも、「外れ停止コマンド」「ラッキー停止コマンド」「当り停止コマンド」の3種類しか記載されておらず、そして遊技制御手段360におけるこれらのコマンドのセットに関する記載(引用文献1の段落【0079】、【0086】、【図7】)においても、停止図柄の選択・決定のための情報をコマンドに加工したり、上記3種類のコマンドそれぞれについて停止図柄に応じた複数の種類を設けるといった記載は全くない。
さらに、遊技制御手段側からの指令に基づき表示制御手段側で図柄選択を行うにあたり、その図柄選択にランダム性を持たせることも、例えば特開平6-210058号公報(以下「引用文献2」という。)においても、「表示図柄作成処理は…制御実行周期で特図の図柄データを更新すると共に、当該図柄データが大当たりの図柄組合わせのときは、その図柄データを大当たり図柄格納領域に、リーチ外れの図柄組合わせのときは、その図柄データをリーチ外れ図柄格納領域に、外れの図柄組合わせのときは、その図柄データを外れ図柄格納領域に更新格納する。図柄変動処理にて、大当たりの場合は大当たり図柄格納領域からそのとき格納している大当たり図柄データを、リーチ外れの場合はリーチ外れ図柄格納領域からそのとき格納しているリーチ外れ図柄データを、外れの場合は外れ図柄格納領域からそのとき格納している外れ図柄データを読込み、このデータによって大当たり図柄、リーチ外れ図柄、外れ図柄を決定する。」(段落【0089】-【0090】)という記載がある(ここで「映像制御装置」が、引用発明における「表示制御手段370」に相当)ように周知のことである。
以上の点を踏まえれば、遊技制御手段360側又は表示制御手段370側のどちらで図柄を決定するにせよ、単なる判定結果と図柄が1対1で対応することが一般的とは到底判断できないから、引用文献1の段落【0111】、【0113】、【0114】における表示用CPU302の「算出」においては、何らかの選択・決定が行われていると解することが相当である。よって請求人の上記主張を認めることはできない。
以上により、引用発明における「実際の停止図柄は表示制御手段370側で決定する」については、表示用CPU302がどのような算出を行っているか不明であるものの、表示制御手段370が「表示される図柄」を「独自に決定」しているものであると判断される。

また、引用発明には「表示制御手段370側で通常停止、リーチ停止、ロングリーチ停止を決定し」とあるが、これについて引用文献1の(段落【0123】)には「上記実施例では、リーチおよびロングリーチを遊技制御手段側で決定しているが、これに限らず、例えば表示制御手段側で通常停止、リーチ停止、ロングリーチ停止を決定してもよい」という記載がある。そして、引用文献1の実施例においては、遊技制御手段360が「読み出した乱数値の内容」を判別することによって「リーチコマンド」「通常停止コマンド」「ロングリーチコマンド」をセットしている(引用文献1の段落【0080】【0083】)ものであるが、上記段落【0123】の記載によれば、このようなリーチの選択を表示制御手段370が行うことを想定しているものと判断できる。
そして、引用発明における「通常停止、リーチ停止、ロングリーチ停止」は本願補正発明の「リーチの態様」に相当し、また引用文献1には表示制御手段370側における具体的な決定方法の記載はないが、送信されたコマンドが「外れ停止」の場合は、「通常停止」「リーチ」「ロングリーチ」から選択することが必要であり、一方コマンドが「ラッキーナンバー停止」又は「当り停止」の場合は、「リーチ」「ロングリーチ」から選択することが必要であるから、少なくとも送信されたコマンドを参照して決定することは当然想定できることである。とすれば、このような表示制御手段370による決定は、リーチ態様を「独自に決定」することに他ならない。

引用発明は「読み出した乱数値が大当りであるか否かを判別し、大当りでなければ外れ停止コマンドをセットし、大当りのときは当り図柄がラッキーナンバーであるか否かを判別し、ラッキーナンバーであるときはラッキー停止コマンドをセットし、ラッキーナンバーでないときは当り停止コマンドをセットし」、「表示制御手段370側にコマンドを送信」するものである。これに対して、本願補正発明においては「当否判定」とあるが、詳細な説明を参照しても「始動入賞が検知されると、主制御部140から乱数値が読み出されて当りの当否判定が行われる」(段落【0017】)といった記載しかないから詳細は不明であるが、遊技機分野における技術常識に基づけば、「当否判定」とは「大当りか外れかを判定すること」が通常の解釈であるので、そのように判断することとする。
とすれば、引用発明は大当りについては「ラッキーナンバーの大当り」と「それ以外の大当り」に区別し、それに応じたコマンドを送っているのに対して、本願補正発明においては大当りについては区別していないが、両者は「外れ」と「それ以外」を少なくとも区別して判定(以下「外れであるか否かの判定」という。)を行い、またその判定によって「外れ」又は「それ以外」が区別された結果(以下「判定された結果」という。)を図柄制御部(引用発明における「表示制御手段370」)に送信し、またその判定された結果に基づいて図柄が決定されている点で共通している。また、ここで「基づいて…決定」は「参照して…決定」に相当するものである。

よって、両者は、
「遊技の制御を司る主制御部と、CPU、ROM及びRAMを有し図柄表示装置の表示を制御する図柄制御部とを備え、
前記主制御部は、始動入賞が検知されると乱数値を読み出し、該乱数値により外れであるか否かの判定を行うとともに、その判定された結果を前記図柄制御部へ送信し、
前記CPUは、前記ROMに格納されたプログラムを読み出し、前記主制御部から送信された前記判定された結果を参照して前記図柄表示装置において表示される図柄やリーチの態様を独自に決定する弾球遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願補正発明においては、「RAMには、図柄決定やリーチ決定に使用するために一定周期で値が加算演算されることにより一定範囲内で値が繰り返し更新される乱数メモリ」が設定され、「乱数メモリに基づき」前記判定された結果を参照して図柄やリーチの態様を決定しているのに対して、引用発明では乱数メモリを有する旨の明記はなく、「乱数メモリに基づき」決定しているかどうか不明である点。

[相違点2]
本願補正発明においては、「RAM」には「図柄の処理時間の管理に使用される図柄処理時間メモリ」及び「図柄処理番号メモリ」が設定されており、「前記図柄の変動時間は、通常状態、高確率状態又は変動時間短縮状態の各状態で異なる時間に設定」されているものであって、「前記各状態に応じて前記RAMに設定された図柄処理時間メモリの情報をセット」して、かつ前記RAMに設定された図柄処理番号メモリを使用して図柄処理モジュールから対応するプログラムモジュールを呼び出すことにより、「変動時間制御を実行」しているのに対して、引用発明がにはかかる構成を有するかどうか不明がない点。

[相違点3]
本願補正発明においては、「外れであるか否かの判定」が「当否判定」であるのに対して、引用発明においては「外れであるか否かの判定」は「大当りであるか否かを判別し、大当りでなければ外れ停止」「大当りのときは当り図柄がラッキーナンバーであるか否かを判別し、ラッキーナンバーであるときはラッキー停止」「ラッキーナンバーでないときは当り停止」といった判別を行っており、よって、送信及び参照される「判定された結果」の内容も本願補正発明と引用発明で異なっている点。

6.判断

上記相違点について検討する。

[相違点1について]

引用発明も、表示制御基板370側が、受信したコマンドに基づき図柄及びリーチ態様を独自に決定しているものであることについては、上記5.において詳述した。そして、遊技性を鑑みれば、図柄やリーチ態様はランダムに選択されることが必要であるが、引用発明においては、引用文献1も参照すれば、図柄については受信したコマンドに基づきアドレスを算出している(段落【0111】、【0113】、【0114】)が、具体的な算出方法については不明であり、またリーチ態様については、引用文献1の実施例における遊技制御手段360における決定では乱数に基づき決定している(段落【0080】、【0083】)が、表示制御手段370において決定する場合においても同様の方法を採用しているかどうか不明である。

しかし、ランダムに選択を行うにあたって、乱数に基づき決定することは広く一般において用いられている慣用手段に過ぎず、また遊技機分野においても、図柄の選択においてランダムカウンタ(乱数)を使用することは、原査定時においても引用された特開平7-100249号公報にもあるように、周知技術に過ぎない(以下「周知技術1」という。)。
また、主制御手段(遊技制御手段)から信号を受けて駆動する副制御手段側において、乱数を生成させそれを用いることも、例えば特開平7-185084号公報(【図3】を参照)にあるように周知である(以下「周知技術2」という。)。
なお、生成した乱数を、順次更新するように記憶しておくことは当然のことであり、RAMにそのメモリを設けることは適宜設計できることである。

したがって、図柄やリーチ態様の選択にあたって、表示制御手段370側において乱数を発生させ、それに基づき表示される図柄やリーチの態様の選択を行うことは、引用発明及び周知技術1,2に基づき、当業者にとって容易に想到できたことである。

[相違点2について]

新たに引用する特開平9-24135号公報(以下「引用文献3」という。)においては、図面と共に以下の技術事項が記載されている。

・変動状態Aでは、一定の速度で特別図柄が変動表示される。具体的には、16.7ms間に1図柄が変動する。変動状態Bでは、徐々に減速して最終的に変動を停止させる。この変動状態Bでは、3図柄分の変動が行なわれる。変動状態Cでは、徐々に特別図柄を減速する。変動状態Cでは、3図柄分の変動が行なわれる。変動状態Dでは一定速度で特別図柄が変動される。具体的には333.3ms間に1図柄が変動し、1周期は5.000秒となる。…変動状態Fでは、徐々に減速して最終的に特別図柄を停止させる。変動状態Fでは、1図柄分の変動が行なわれる。…変動状態Iでは、徐々に減速して特別図柄を最終的に停止させる。(段落【0061】)
・左側の特別図柄表示領域では、前述した特別図柄の可変表示制御時間を短縮させる短縮条件が成立していない場合、変動を開始してから4.600秒間は変動状態Aの表示制御より一定の速度で特別図柄が変動する。一方、短縮条件が成立している場合、通常時ではこの時間が3.100秒に短縮され、確率変動時には1.000秒に短縮される。変動状態Aの変動表示が終了した時点で、WCRND_Lの値により事前に決定された停止図柄(以下「予定停止図柄」という)の図柄配列における3図柄分手前の図柄が停止位置にセットされ、その後、変動状態Bの表示制御が行なわれる。変動状態Bの表示制御は、1.250秒間行なわれ、その間に3図柄分の変動が行なわれて、最終的に予定停止図柄が停止表示される。(段落【0065】)
・右側の特別図柄表示領域では、短縮条件が成立していない場合、変動を開始してから5.850秒間は変動状態Aの表示制御により一定の速度で特別図柄が変動する。一方、短縮条件が成立している場合、通常時では、この時間が4.350秒に短縮され、確率変動時には2.250秒に短縮される。変動状態Aの変動表示が終了した時点で、WCRND_Rの値により事前に決定された停止図柄の図柄配列における3図柄分手前の図柄が停止位置にセットされ、その後、変動状態Bの表示制御が行なわれる。変動状態Bの表示制御は、1.250秒間行なわれ、その間に3図柄分の変動が行なわれて、最終的に予定停止図柄が停止表示される。(段落【0066】)
・次に、中央の特別図柄表示領域における中図柄の変動について説明する。中図柄の変動は、リーチを成立させないとき(リーチ以外)と、リーチを成立させるときとで表示制御の手順を異ならせている。さらに、リーチを成立させるときには、リーチ1?リーチ6の6種類のリーチ態様の中から後述する所定の条件に従って選択されたいずれかのリーチ態様となるように特別図柄の変動が表示される。(段落【0067】)
・リーチ以外のときは、短縮条件が成立していない場合、変動が開始してから7.100秒間は変動状態Aの表示制御により一定の速度で図柄が変動する。一方、短縮条件が成立している場合、通常時ではこの時間が5.600秒に短縮され、確率変動時には3.500秒に短縮される。変動状態Aの変動表示が終了した後、0.850秒間変動状態Bの表示制御により図柄が変動し、停止する。変動状態Bでは、左側および右側の変動表示と同様に、予定停止図柄の3図柄分手前の図柄が停止位置にセットされ、その後、その3図柄分を変動させて、最終的に、予定停止図柄が停止表示される。(段落【0068】)
・リーチ4では、短縮条件が成立していない場合、特別図柄の変動が開始されてから7.100秒間、変動状態Aの表示制御が行なわれる。一方、通常時において短縮条件が成立している場合、この時間は5.690秒に短縮される。なお、短縮条件が成立していない場合においてスピンが指定されている場合はこの時間が7.790秒となる。変動状態Aの変動表示が行なわれた後、リーチ図柄の4図柄手前の図柄がセットされ変動状態Cの表示制御が0.420秒間行なわれ、3図柄分の変動が行なわれる。次に、変動状態Dの表示制御が14.672秒間行なわれ、44図柄分の変動が行なわれる。次に、変動状態Fの表示制御が2.660秒間行なわれ、1図柄分の変動表示が行なわれた後、最終的に事前に決定された停止図柄停止表示される。(段落【0072】)
・ 次に、基本回路46から送信されるコマンドデータについて説明する。図31および図32は、基本回路46からLCD回路48を介してLCD表示装置35へ送信されるコマンドデータの態様を示す説明図である。コマンドデータは、COMH、COM0?COM6、COMCを含む。COMHはコマンドヘッダであり、「CAH」に固定されている。このCOMHが送信されることにより、LCD表示装置35は、基本回路46からコマンドデータが送られてきたと判断する。(段落【0121】)
・「25H」のとき、通常リーチ処理を行なうよう指定する。通常リーチには、ノーマルリーチ、どけどけリーチ、S字リーチの3つのリーチが含まれ、後述するCOM4により3種類のうちいずれのリーチ処理を行なうかが指定される。「26H」のとき、滑り(戻り)リーチ処理を行なうよう指定する。「27H」のとき、バックファイアーリーチ処理を行なうよう指定する。上記各リーチ処理と図12および図14に示したリーチ1ないしリーチ6との態様は以下のようになる。すなわち、リーチ1は、ノーマルリーチに対応し、リーチ2はS字リーチに対応し、リーチ3はどけどけリーチに対応し、リーチ4はバックファイアーリーチに対応し、リーチ5は滑りリーチに対応し、リーチ6は戻りリーチに対応する。(段落【0124】)
・図69は、全図柄変動処理の処理手順を示すフローチャートである。全図柄変動処理は、全図柄変動表示のプロセスデータなどを実行する処理である。まず、通常時の各全図柄変動プロセスデータが参照されるアドレスが指定される(F39BH)。具体的には、基本回路46のRAMに記憶されている全図柄通常変動時プロセスデータが参照されるアドレスが指定される。全図柄通常変動時プロセスデータには、特別図柄の変動開始から変動終了までの所要時間である図柄変動時間などが指定されている。全図柄通常変動時プロセスデータ内の図柄変動時間は4.6秒となっている。次に、短縮フラグがあるか否かが判断される(F39EH)。具体的には、短縮フラグの値が0以外であるか否かが判断される。短縮フラグの値が0と判断された場合、後述するプロセスデータ/タイマ処理がなされる(F3ACH)。一方、短縮フラグが0以外と判断された場合、前記通常時の各全図柄変動プロセスデータが参照されるアドレスに代えて、確率変動短縮時の各全図柄変動プロセスデータが参照されるアドレスが指定される(F3A2H)。確率変動短縮時の各全図柄変動プロセスデータ内にセットされている図柄変動時間は1.0秒となっている。次に、確率変動中であるか否かが判断される(F3A5H)。具体的には、確率変動フラグの値が0以外であるか否かが判断される。確率変動フラグの値が0以外と判断された場合、後述するプロセスデータ/タイマ処理がなされる(F3ACH)。一方、確率変動フラグの値が0であった場合、前記確率変動短縮時の各全図柄変動プロセスデータが参照されるアドレスの指定に代えて、短縮時の各全図柄変動プロセスデータが参照されるアドレスが指定される(F3A9H)。短縮時の各全図柄変動プロセスデータ内にセットされている図柄変動時間は3.1秒となっている。次に、プロセスデータ/タイマ処理(P_PRO_TM)が実行される(F3ACH)。プロセスデータ/タイマ処理については図82を用いて後述する。(段落【0178】)
・図71は、右図柄停止処理の処理手順を示すフローチャートである。右図柄停止処理は、右図柄停止(通常/リーチ予告/スピン)のプロセスデータの実行を行なう処理である。まず、各右図柄停止プロセス処理であるプロセスデータ/タイマ処理(P_PRO_TM)が実行される(F3C7H)。プロセスデータ/タイマ処理については図82を用いて後述する。(段落【0180】)
・図72は、中図柄停止処理の処理手順を示すフローチャートである。中図柄停止処理は、リーチフラグがない場合は通常停止プロセスデータの実行を行ない、リーチフラグありのときは各リーチ動作プロセスデータの実行を行なう処理である。まず、通常リーチプロセスデータの指定が行なわれる(F437H)。次に、リーチ以外であるか否かが判断される(F43AH)。具体的には、リーチ動作フラグの値が0であるか否かが判断される。リーチ動作フラグの値が0のとき、後述するプロセスタイマ処理が実行される(F4C7H)。(段落【0183】)
・スピンフラグの値が0以外の場合、各プロセスデータのアドレスが算出され(F45FH)、プロセスタイマ処理(F4C7H)へ移行する。一方、スピンフラグの値が0の場合、各リーチプロセスデータのアドレスが算出され(F45FH)、プロセスタイマ処理(F4C7H)へ移行する。次に、プロセスタイマ処理であるプロセスデータ/タイマ処理(P_PRO_TM)が実行される(F4C7H)。プロセスデータ/タイマ処理については図82を用いて後述する。(段落【0185】)
・図82は、プロセスデータ/タイマ処理の処理手順を示すフローチャートである。プロセスデータ/タイマ処理は、プロセスデータのタイマ更新とデータの更新とを行なう処理である。まず、プロセスデータセット処理(P_PRO_SET)が実行される(F5A7H)。プロセスデータセット処理については図90を用いて後述する。次に、プロセスタイマが終了しているか否かが判断される(F5AH)。具体的にはプロセス制御タイマの値が0であるか否かが判断される。プロセス制御タイマは、基本回路46のRAMに記憶されている。(段落【0205】)
・プロセス制御タイマの値が0のとき、プロセスデータの先頭アドレスがセットされた後(F5BEH)、プロセスタイマがクリアされ、プロセスデータ/タイマ処理が終了する(F5E5H)。一方、プロセス制御タイマの値が0でない場合、プロセスタイマが更新(-1)され、その結果がまだ演算中であるか否かが判断される(F5AEH)。具体的には、プロセス制御タイマの値が0以外であるか否かが判断される。プロセス制御タイマの値が0以外である場合、後述する表示器コマンドセット処理(F5DAH)へ移行する。一方、プロセス制御タイマの値が0の場合、プロセスデータアドレスが更新(+5)される(F5B3H)。次に、データが終了しているか否かが判断される(F5BAH)。データが終了している場合は、先頭アドレスがセットされ(F5BEH)、プロセスタイマがクリアされた後処理が終了する。(段落【0206】)
・図5に示すLCD表示装置35内に構成されているROM(図示省略)により、前記可変表示装置を制御するための複数種類の表示制御用プログラムを記憶している表示制御用プログラム記憶手段が構成されている。(段落【0231】)

引用文献3の段落【0065】-【0068】及び【図11】を参照すれば、リーチとならないハズレ時については、「左側の特別図柄表示領域」「右側の特別図柄表示領域」「中央の特別図柄表示領域」(以下「左図柄」、「右図柄」、「中図柄」という。)のそれぞれにおいて、「短縮条件が成立していない場合」「短縮条件が成立している場合、通常時」「短縮条件が成立している場合、確変時」(以下、まとめて「各状態」という。)のそれぞれにおいて変動状態A(一定の速度で特別図柄が変動される状態(段落【0061】))の時間を異ならせる点が記載されており、その後の変動状態Bは各状態のいずれにおいても一定時間であるから、変動時間Aの時間が異なることにより各特別図柄表示領域の変動時間もそれに応じて異なるものである。そして、「短縮条件が成立していない場合」、「短縮条件が成立している場合、通常時」、「短縮条件が成立している場合、確変時」は、本願補正発明における「通常状態」、「変動時間短縮状態」、「高確率状態」にそれぞれ相当する。
また、リーチとなる場合についても、「リーチ4」については、段落【0072】及び【図12】、【図14】を参照すれば、「短縮条件が成立していない場合」「通常時において短縮条件が成立している場合」のそれぞれにおいて変動状態Aの時間を異ならせる点が記載されており、その後の変動状態C,変動状態D,変動状態F(大当り時は変動状態I)は各状態のいずれにおいても一定時間であるから、変動時間Aの時間が異なることにより各特別図柄表示領域の変動時間もそれに応じて異なるものである。

また、引用文献3の段落【0178】、【0205】、【0206】及び【図69】、【図82】を参照すれば、図柄変動処理において、図柄変動時間が指定されているプロセスデータを参照するアドレスを指定し、プロセスデータセット処理を実行し、基本回路のRAMに記憶されているプロセスタイマの値が0であるかを判断し、プロセス制御タイマの値が0でない場合、プロセスタイマを更新(-1)する、という処理(プロセスデータ/タイマ処理)を実行しており、そして「図柄変動時間が指定されているプロセスデータ」については「通常変動時」、「確率変動短縮時」、「短縮時」(本願補正発明における「通常状態」、「高確率状態」、「変動時間短縮状態」にそれぞれ相当する。)の異なった変動時間が指定されていることが記載されており、「図柄の処理時間の管理」に使用されていることも明らかである。
上記段落【0178】の記載は「全図柄変動処理」とあり、左図柄、右図柄、中図柄の全ての図柄が変動している場合の処理に関する記載であるが、右図柄についても「右図柄停止プロセス処理であるプロセスデータ/タイマ処理が実行される」(段落【0180】)という記載があり、中図柄についても「プロセスデータ/タイマ処理が実行される」(段落【0183】)、「プロセスタイマ処理であるプロセスデータ/タイマ処理が実行される」(段落【0185】)という記載があるから、上記したプロセスデータ/タイマ処理と同様の処理を実行していると解されるものである。

以上によれば、引用文献3には、リーチ以外の場合については常に、またリーチ時においても特定のリーチの場合には、図柄の変動処理時間の管理にあたって、各状態に応じて異なった変動時間をセットし、変動時間の制御を行う点が記載されているものであって、また、リーチ時について、「短縮条件が成立している場合、確変時」という状態については記載がないが上記ハズレ時と同様の区分けを設定すること、また、変動時間を各状態に応じて異ならせることを特定のリーチに限らず他のリーチについても採用することは当業者が適宜設計できることに過ぎない。なお、処理にあたって必要な情報を記憶しておくことは例を挙げるまでもなく周知慣用の手段に過ぎないから、RAMに変動時間に関する情報を記憶させることも適宜なし得たことに過ぎない。

さらに、「RAMに設定された図柄処理番号メモリを使用して図柄処理モジュールから対応するプログラムモジュールを呼び出すことにより、変動時間制御を実行」する点は周知のリーチ制御と同様なものに過ぎないが、引用文献3においても、段落【0121】、【0124】、【0231】には、可変表示装置を表示制御するための複数種類の表示制御用プログラムを、LCD表示装置35(可変表示制御手段)に構成されているROMに記憶し、受信したコマンドデータによって複数種類のリーチから選択し、リーチ処理を行う点が記載されており、ここでリーチを指定している「コマンドデータ」は、本願補正発明における「図柄処理番号」に相当するものである。なお、その情報を処理にあたって記憶しておくことも例を挙げるまでもなく周知慣用の手段に過ぎないから、RAMにその情報を記憶させることも適宜なし得たことに過ぎない。

したがって、引用発明に上記の引用文献3に記載された技術(以下「引用文献3記載の技術」という。)及び周知慣用の手段を適用して、相違点2にかかる構成とすることは、当業者にとって容易に想到できたことである。

[相違点3について]

引用発明においても「表示制御手段370側で通常停止、リーチ停止、ロングリーチ停止を決定する」ものであるが、その場合、引用文献1の段落【0123】においても「外れの場合の通常停止、リーチ停止、ロングリーチ停止の表示時間違いおよび当りの場合のリーチ、ロングリーチの表示時間の違いを把握して役物側の制御を行う」と記載があるように、「通常停止」、「リーチ停止」、「ロングリーチ停止」のそれぞれの表示時間が異なっているために、遊技制御手段360が何らかの方法でそれを把握しないと、その後の制御を開始するタイミングが不明であるという困難性が生じる点は明示されている。
引用文献1にはその方法についての記載はないが、原査定と同日付の補正却下の決定においても引用した引用文献2は、「遊技制御装置75は、図柄変動遊技の開始信号を送れば、乱数を基にその遊技の判定を行って判定信号を映像制御装置45に送るだけで良い。これにより…遊技制御装置75の負担が軽減され」(段落【0097】-【0098】)、「オン(始動記憶)時に読込んだ乱数から大当たりかどうか、リーチかどうか、外れかどうかが判定され、その判定信号が遊技制御装置75から映像制御装置45に送られる。この判定が外れのときは、映像制御装置45によって外れ図柄が選択され…判定がリーチの外れのときは、映像制御装置45によってリーチ外れ図柄が選択され…判定が大当たりのときは、映像制御装置45によって大当たり図柄が選択され…即ち、遊技制御装置75の外れ、リーチ(外れ)、大当たりの判定にしたがい、映像制御装置45によって映像表示装置20の図柄変動後の停止図柄が選定され、リーチの図柄変動パターン、図柄停止が制御される。」(段落【0091】-【0095】)といった記載があり、引用発明と同様の目的かつ同様の解決手段を採用しているものであるが、引用文献2には「外れ信号を基に映像制御装置45が図柄の選択を行い、その図柄がリーチ(外れ)図柄のときに、リーチ信号を映像制御装置45から遊技制御装置75に送り」(段落【0104】)という記載があり、映像制御装置45(本願補正発明における「図柄制御部」、引用発明における「表示制御手段370」)から遊技制御装置(本願補正発明における「主制御部」、引用発明における「遊技制御手段360」)へ必要に応じて情報を返信する旨の技術が記載されている(以下「引用文献2記載の技術」という。)。
引用文献1の「片方向通信」に代えて、引用文献2記載の技術を適用することにより、表示制御手段370にリーチ種類の決定を任せ、遊技制御手段360がその決定に関与しないとしても、表示制御手段370からリーチの決定結果を受信したり、あるいは表示の終了時に信号受信する等の方法により、遊技制御手段360は問題なく次の制御を行うことができる。

ところで、このような表示制御手段370から遊技制御手段360への情報送信はリーチ種類の決定時に限る必然性は全くないから、引用発明における停止図柄の決定において適用し、表示制御手段370から図柄の決定結果を遊技制御手段360へ送信することは容易に想到できることである。
とすれば、遊技制御手段360は、「ラッキー停止」となった場合に大当り確率をアップ(本願補正発明における「高確率状態」に相当。)させる(段落【0085】)ために、大当り時において「ラッキー停止」か「当り停止」かを判別した上で表示制御手段370に送信しているが、これに代えて、遊技制御手段360はそのような判別を行わずに、表示制御手段370が大当り時に図柄の選択を行った上で情報を返信することも容易に想到できることであり、そうすれば遊技制御手段360は「ラッキー停止」が決定された場合に高確率状態に移行させることができる。
よって、引用発明に引用文献2記載の技術を適用して、引用発明が「ラッキー停止」か「当り停止」かの判別を行わず単に当否判定のみを行うようにすることも、当業者にとって適宜設計できたことである。

したがって、引用発明及び引用文献2記載の技術に基づいて、相違点3にかかる構成とすることは、当業者にとって容易に想到できたことである。

そうすると、相違点1?3にかかる本願補正発明の構成は、引用発明、引用文献2記載の技術、引用文献3記載の技術、周知技術1,2、周知慣用の手段から当業者が容易に想到できた範囲のものというべきである。
そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明、引用文献2記載の技術、引用文献3記載の技術、周知技術1,2、周知慣用の手段から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

7.むすび

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1.本願発明

本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1にかかる発明は、上記「第2[理由]2.」に平成17年5月10日付の手続補正における特許請求の範囲の請求項1として記載したとおりのもの(以下「本願発明」という。)である。

2.引用例

原査定の拒絶の理由において引用された引用文献1及びその記載事項は、上記「第2[理由]4.」に記載したとおりのものである。

3.対比

ここで、本願発明と引用発明とを対比する。
上記「第2[理由]5.」も参照すれば、引用発明における「停止図柄」や「通常停止、リーチ停止、ロングリーチ停止」は、本願発明における「表示態様」に相当するので、よって両者は、
「遊技の制御を司る主制御部と、CPU、ROM及びRAMを有し図柄表示装置の表示を制御する図柄制御部とを備え、
前記主制御部は、始動入賞が検知されると乱数値を読み出し、該乱数値により外れであるか否かの判定を行うとともに、その判定された結果を前記図柄制御部へ送信し、
前記CPUは、前記ROMに格納されたプログラムを読み出し、前記主制御部から送信された前記判定された結果を参照して前記図柄表示装置における表示態様を独自に決定する弾球遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願発明においては「RAMには、図柄決定やリーチ決定のためのメモリ」が設定されており、当該メモリは「一定周期で値が加算演算されることにより、一定範囲内で値が繰り返し更新される乱数メモリ」であって、「乱数メモリに基づき」前記判定された結果を参照して図柄やリーチの態様を決定しているのに対して、引用発明では乱数メモリを有する旨の明記はなく、「乱数メモリに基づき」決定しているかどうか不明である点。

[相違点2]
本願発明においては「外れであるか否かの判定」が「当否判定」であるのに対して、引用発明においては「外れであるか否かの判定」は「大当りであるか否かを判別し、大当りでなければ外れ停止」「大当りのときは当り図柄がラッキーナンバーであるか否かを判別し、ラッキーナンバーであるときはラッキー停止」「ラッキーナンバーでないときは当り停止」といった判別を行っており、よって、送信及び参照される「判定された結果」の内容も本願発明と引用発明で異なっている点。

4.判断

[相違点1について]

上記「第2[理由]5.」における[相違点1]とは、「表示される図柄やリーチの態様」が「表示態様」となった点以外は実質的に同じであるから、上記「第2[理由]6.」における、[相違点1について]の判断に同じである。

[相違点2について]

引用発明においては、遊技制御手段360は、「ラッキー停止」となった場合に大当り確率をアップ(本願補正発明における「高確率状態」に相当。)させる(段落【0085】)ために、大当り時において「ラッキー停止」か「当り停止」かを判別した上で表示制御手段370に送信しているが、本願発明には「高確率状態」なる記載はないから、そのような遊技状態を設定しない弾球遊技機も本願発明に含まれる。

とすれば、引用発明においても高確率状態を設定しないのであれば、大当りにおいて「ラッキー停止」か「当り停止」かの区別を設ける必要も当然なく、そして、遊技状態として高確率状態を設けるか否かも適宜決定できることであるから、引用発明において遊技制御手段360が大当り時にそのような判別は行わず、単に当否判定のみを行うことも、当業者にとって適宜設計できたことである。

よって、引用発明に基づき、相違点2にかかる構成とすることは、当業者にとって容易に想到できたことである。

そうすると、相違点1,2にかかる本願発明の構成は、引用発明及び周知技術1,2から当業者が容易に想到できた範囲のものというべきである。
そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術1,2から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

第4 むすび

以上のとおり、平成18年11月7日付の補正は却下され、そして、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項2以下について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-17 
結審通知日 2009-02-18 
審決日 2009-03-03 
出願番号 特願2000-326110(P2000-326110)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲吉▼川 康史  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 伊藤 陽
池谷 香次郎
発明の名称 弾球遊技機  
代理人 菅原 正倫  

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