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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1195892
審判番号 不服2007-12689  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-05-02 
確定日 2009-04-16 
事件の表示 特願2001-349391「半導体装置用テープキャリアおよびその製造方法ならびに半導体装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月23日出願公開、特開2003-152032〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続の経緯
本願は、平成13年11月14日の出願であって、平成18年12月5日付で拒絶理由通知がなされ、同拒絶理由通知書に記載した理由によって、平成19年4月2日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正書が提出され、再度、同年6月1日付で手続補正書が提出され、前置報告がなされたものである。

[2]平成19年5月2日付手続補正についての補正却下の決定

<補正却下の決定の結論>
平成19年5月2日付手続補正を却下する。

<理由>
(1)補正の内容
平成19年5月2日付手続補正は、出願当初の特許請求の範囲に記載されていた、
「【請求項1】ポリイミドテープ等の基板テープと、前記基板テープの上に所定のパターンを有して形成された配線層と、前記配線層の半田ボールランドに通じるように前記基板テープに形成されたビア穴と、一体化された前記基板テープおよび前記配線層がメッキ液に浸漬されることによって前記配線層に形成されたAu/Ni等のメッキ膜を含み、
前記半田ボールランドは、その表面に前記メッキ膜が形成されていないことを特徴とする半導体装置用テープキャリア。
【請求項2】前記半田ボールランドは、前記基板テープの表面に形成された樹脂層が前記ビア穴を塞ぐことにより前記メッキ液と接触しないことで、前記メッキ膜が形成されていないものであることを特徴とする請求項1項記載の半導体装置用テープキャリア。
【請求項3】前記樹脂層は、前記基板テープに貼り付けられた樹脂テープより構成されることを特徴とする請求項2項記載の半導体装置用テープキャリア。
【請求項4】前記樹脂テープは、積層されての運搬あるいは梱包などのときに隣接間のセパレータとして存在し、前記ビア穴を通して前記半田ボールランドに半田ボールが形成されるときに前記基板テープより剥がされて除去される存在であることを特徴とする請求項3項記載の半導体装置用テープキャリア。
【請求項5】前記樹脂テープは、前記基板テープへの貼り付けのための接着剤を片面に有することを特徴とする請求項4項記載の半導体装置用キャリアテープ。
【請求項6】銅箔をラミネートされ、所定の位置にビア穴を有するポリイミドテープ等の基板テープの前記銅箔に所定のパターンのフォトエッチング加工を施した後、前記基板テープおよび前記配線層をメッキ液に浸漬することによって前記配線層にAu/Ni等のメッキ膜を形成する半導体装置用テープキャリアの製造方法において、
前記メッキ膜は、前記基板テープに樹脂テープを貼り付けることによって前記ビア穴を塞いだ状態のもとに形成されることを特徴とする半導体装置用テープキャリアの製造方法。
【請求項7】前記メッキ膜を形成するステップは、電解メッキ法あるいは無電解メッキ法によって行われることを特徴とする請求項6項記載の半導体装置用テープキャリアの製造方法。
【請求項8】ポリイミドテープ等の基板テープと、前記基板テープ上に所定のパターンを有して形成された配線層と、前記配線層の半田ポールランドに通じるように前記基板テープに形成されたビア穴と、一体化された前記基板テープおよび前記配線層がメッキ液に浸漬されることによって前記配線層に形成されたAu/Ni等のメッキ膜と、前記配線層の所定の位置に電極を接続させて搭載された半導体チップと、前記ビア穴を通して前記半田ボールランドに形成された半田ボールを含み、
前記半田ボールランドは、その表面に前記メッキ膜が形成されておらず、
前記半田ボールは、前記半田ボールランドに直接接触して形成されていることを特徴とする半導体装置。」を、
「【請求項1】ポリイミドテープ等の基板テープと、前記基板テープの上に所定のパターンを有して形成された配線層と、前記配線層の半田ボールランドに通じるように前記基板テープに形成されたビア穴と、前記配線層の表面に形成されたAu/Ni等のメッキ膜を含み、
前記基板テープの裏面には前記ビア穴を塞ぐように樹脂テープが貼り付けられていることを特徴とする半導体装置用テープキャリア。
【請求項2】前記樹脂テープは、前記基板テープへの貼り付けのための接着剤を片面に有することを特徴とする請求項1記載の半導体装置用テープキャリア。
【請求項3】銅箔がラミネートされ、所定の位置にビア穴を有するポリイミドテープ等の基板テープの前記銅箔上にレジスト膜を形成し、前記レジスト膜に配線層のパターンに応じた露光と現像を行った後、エッチング処理を施すことにより前記銅箔を所定のパターンの配線層に加工し、前記配線層の表面にAu/Ni等のメッキ膜を形成する半導体装置用テープキャリアの製造方法において、
前記エッチング処理を施す前に前記基板テープの裏面に前記ビア穴を塞ぐように樹脂テープを貼り付け、前記メッキ膜形成後も前記樹脂テープを残すことを特徴とする半導体装置用テープキャリアの製造方法。」とする補正を含むものである。

(2)補正の目的
上記手続補正は、拒絶査定不服審判の請求の日から30日以内にするものであって、特許請求の範囲についてする補正であるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項各号に掲げる事項を目的とするものか否かについて、以下検討する。
まず、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮という目的に該当するか否かについてみる。
「半導体装置用テープキャリア」に係る補正後の請求項1、2が、補正前即ち出願当初の特許請求の範囲のいずれの請求項に対応するかについて検討するに、出願当初の特許請求の範囲において物の発明である「半導体装置用テープキャリア」に係るのは請求項1?5のみであるから、補正後の請求項1、2は、出願当初の請求項1?5のいずれかに対応するものと考えざるをえない。
しかしながら、出願当初の請求項1?5に記載された「半導体装置用テープキャリア」はいずれも、「半田ボールランドは、その表面に前記メッキ膜が形成されていないこと」を特定事項としているのに対し、補正後の請求項1、2には、同様の記載はなく、「前記基板テープの裏面には前記ビア穴を塞ぐように樹脂テープが貼り付けられている」と記載されるものの、樹脂テープがそのように貼り付けられているからといって、半田ボールランドの表面に同様のメッキ膜が形成されていないとは限らない。例えば、該樹脂テープの貼り付け以前に同様のメッキ膜を形成することもでき、必ずしも「半田ボールランドは、その表面に前記メッキ膜が形成されていないこと」にはならない。そうすると、補正後の請求項1、2は、上記特定事項を具備しているとも、或いはそれをより限定しているともいえないから、出願当初の請求項1?5のいずれかを減縮したものとは解されない。
また、「前記メッキ膜形成後も前記樹脂テープを残す・・・半導体装置用テープキャリアの製造方法」に係る補正後の請求項3が、出願当初の特許請求の範囲のいずれの請求項に対応するかについても検討するに、出願当初の特許請求の範囲において方法の発明である「半導体装置用テープキャリアの製造方法」に係るのは請求項6、7のみであるから、補正後の請求項3は、出願当初の請求項6、7のいずれかに対応するものと考えざるをえない。
しかしながら、出願当初の請求項6,7に記載された「半導体装置用テープキャリアの製造方法」はどちらも、メッキ膜形成後の樹脂テープ及びビア穴の状態について記載されておらず、メッキ膜形成後の樹脂テープ及びビア穴の状態は、同請求項6,7に記載された発明を特定するために必要な事項とはされていないから、補正後の請求項3に記載された「前記メッキ膜形成後も前記樹脂テープを残すこと」は、同請求項6,7に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものとはいえない。
してみると、補正後の請求項1?3を上記の記載とする補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものには該当しない。
次に、その他の目的要件についてみるに、補正後の請求項1?3を上記の記載とする補正は、同特許法第17条の2第4項第1号に掲げる請求項の削除、同項第3号に掲げる誤記の訂正を目的とするものに該当しないことは明らかであり、また、同項第4号に掲げる、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてする明りょうでない記載の釈明を目的とするものともいえない。

(3)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

[3]平成19年6月1日付手続補正についての補正却下の決定

<補正却下の決定の結論>
平成19年6月1日付手続補正を却下する。

<理由>
(1)補正の内容
平成19年5月2日付手続補正は上記のとおり却下されたので、平成19年6月1日付手続補正は、出願当初の特許請求の範囲の記載を、
「【請求項1】ポリイミドテープ等の基板テープと、前記基板テープの上に所定のパターンを有して形成された配線層と、前記配線層の半田ボールランドに通じるように前記基板テープに形成されたビア穴と、前記配線層の表面に形成されたAu/Niのメッキ膜を含み、
前記基板テープの裏面には前記配線層の形成以前から前記ビア穴を塞ぐように樹脂テープが貼り付けられていることを特徴とする半導体装置用テープキャリア。
【請求項2】前記樹脂テープは、前記基板テープへの貼り付けのための接着剤を片面に有することを特徴とする請求項1記載の半導体装置用テープキャリア。
【請求項3】銅箔がラミネートされ、所定の位置にビア穴を有するポリイミドテープ等の基板テープの前記銅箔上にレジスト膜を形成し、前記レジスト膜に配線層のパターンに応じた露光と現像を行った後、エッチング処理を施すことにより前記銅箔を所定のパターンの配線層に加工し、前記配線層の表面にAu/Niのメッキ膜を形成する半導体装置用テープキャリアの製造方法において、
前記エッチング処理を施す前に前記基板テープの裏面に前記ビア穴を塞ぐように樹脂テープを貼り付け、前記メッキ膜形成後も前記樹脂テープを残すことを特徴とする半導体装置用テープキャリアの製造方法。」とする補正を含むものである。

(2)補正の目的
上記手続補正は、拒絶査定不服審判の請求の日から30日以内にするものであって、特許請求の範囲についてする補正であるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項各号に掲げる事項を目的とするものか否かについて、以下検討する。
まず、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮という目的に該当するか否かについてみる。
「半導体装置用テープキャリア」に係る補正後の請求項1、2が、補正前即ち出願当初の特許請求の範囲のいずれの請求項に対応するかについて検討するに、出願当初の特許請求の範囲において物の発明である「半導体装置用テープキャリア」に係るのは請求項1?5のみであるから、補正後の請求項1、2は、出願当初の請求項1?5のいずれかに対応するものと考えざるをえない。
しかしながら、出願当初の請求項1?5に記載された「半導体装置用テープキャリア」はいずれも、「半田ボールランドは、その表面に前記メッキ膜が形成されていないこと」を特定事項としているのに対し、補正後の請求項1、2には、同様の記載はなく、「前記基板テープの裏面には前記配線層の形成以前から前記ビア穴を塞ぐように樹脂テープが貼り付けられている」と記載されるものの、樹脂テープがそのように貼り付けられているからといって、半田ボールランドの表面に同様のメッキ膜が形成されていないとは限らない。例えば、該樹脂テープの貼り付け以前に同様のメッキ膜を形成することもでき、必ずしも「半田ボールランドは、その表面に前記メッキ膜が形成されていないこと」にはならない。そうすると、補正後の請求項1、2は、上記特定事項を具備しているとも、或いはそれをより限定しているともいえないから、出願当初の請求項1?5のいずれかを減縮したものとは解されない。
また、「前記メッキ膜形成後も前記樹脂テープを残す・・・半導体装置用テープキャリアの製造方法」に係る補正後の請求項3が、出願当初の特許請求の範囲のいずれの請求項に対応するかについても検討するに、出願当初の特許請求の範囲において方法の発明である「半導体装置用テープキャリアの製造方法」に係るのは請求項6、7のみであるから、補正後の請求項3は、出願当初の請求項6、7のいずれかに対応するものと考えざるをえない。
しかしながら、同請求項6,7に記載された「半導体装置用テープキャリアの製造方法」はどちらも、メッキ膜形成後の樹脂テープ及びビア穴の状態について記載されておらず、メッキ膜形成後の樹脂テープ及びビア穴の状態は、同請求項6,7に記載された発明を特定するために必要な事項とはされていないから、補正後の請求項3に記載された「前記メッキ膜形成後も前記樹脂テープを残すこと」は、同請求項6,7に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものとはいえない。
してみると、補正後の請求項1?3を上記の記載とする補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものには該当しない。
次に、その他の目的要件についてみるに、補正後の請求項1?3を上記の記載とする補正は、同特許法第17条の2第4項第1号に掲げる請求項の削除、同項第3号に掲げる誤記の訂正を目的とするものに該当しないことは明らかであり、また、同項第4号に掲げる、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてする明りょうでない記載の釈明を目的とするものともいえない。

(3)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

[4]本願発明
平成19年5月2日付手続補正及び平成19年6月1日付手続補正は上記のとおり却下されたので、本願請求項1?8に係る発明は、出願当初の明細書の特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1、6に係る発明(以下、「本願発明1」、「本願発明6」という。)は、それぞれ以下のとおりである。
「【請求項1】ポリイミドテープ等の基板テープと、前記基板テープの上に所定のパターンを有して形成された配線層と、前記配線層の半田ボールランドに通じるように前記基板テープに形成されたビア穴と、一体化された前記基板テープおよび前記配線層がメッキ液に浸漬されることによって前記配線層に形成されたAu/Ni等のメッキ膜を含み、
前記半田ボールランドは、その表面に前記メッキ膜が形成されていないことを特徴とする半導体装置用テープキャリア。」
「【請求項6】銅箔をラミネートされ、所定の位置にビア穴を有するポリイミドテープ等の基板テープの前記銅箔に所定のパターンのフォトエッチング加工を施した後、前記基板テープおよび前記配線層をメッキ液に浸漬することによって前記配線層にAu/Ni等のメッキ膜を形成する半導体装置用テープキャリアの製造方法において、
前記メッキ膜は、前記基板テープに樹脂テープを貼り付けることによって前記ビア穴を塞いだ状態のもとに形成されることを特徴とする半導体装置用テープキャリアの製造方法。」

[5]引用刊行物の記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特許第2983214号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。

引用刊行物1:.特許第2983214号公報
(a)「樹脂製テープ1表面に銅箔4がラミネートされ、該樹脂製テープ1裏面からハンダボール係合用孔2があけられたものを、化学処理して銅箔4を清浄化後に、銅箔4表面にフォトレジスト膜7を形成してパッド部等のパターンを露光・現像し、裏面をマスキング材6で裏止めして、エッチング処理にてパターン8を形成し、上記フォトレジスト膜7を剥離後に、Ni/Au等メッキ9を施して銅箔4の表面にボング用パッド部10等を形成し、かつ銅箔4裏面にはハンダボール用パッド部11を形成する工程をもつテープ形CSPの製造方法において、
上記銅箔4を洗浄後でフォトレジスト膜7を形成する前の段階で、
〈1〉少なくとも銅箔4の裏面にSn等メッキ5を施し、
〈2〉次に上記樹脂製テープ1の裏面からマスキング材6で裏止めするとともに、
上記で銅箔4表面にもSn等メッキ5を施した場合はそれを剥離する工程を入れ、
かつ、上記Ni/Au等メッキ9を無電解で行うとともに、その後に上記樹脂製テープ1裏面の裏止め用マスキング材6を剥離するようにした・・・テープ形チップサイズパッケージの製造方法。」(【特許請求の範囲】【請求項1】)、
注1)当起案システムでは丸数字が使用できないため、丸数字の「1」、「2」を「〈1〉」、「〈2〉」と表記した。
(b)「樹脂製テープ1上の銅箔4表面には、無電解によるNi/Au等メッキが施されたボンディング用パッド部10が形成されるとともに、
ハンダボール係合用孔2を介して露呈する銅箔4裏面には、Sn等メッキ5が施されたハンダボール用パッド部11が形成された・・・テープ形チップサイズパッケージ。」(【特許請求の範囲】【請求項2】)、
(c)「Ni/Auメッキ(Niメッキ上にAuメッキを施したものをいう)、・・・Ni/Au/Auメッキ(Niメッキ上にAuメッキをし、さらにその上にAuメッキを施したものをいう)、あるいはNi/Pd/Auメッキ(Niメッキ上にPdメッキをし、さらにその上にAuメッキを施したものをいう)」(段落【0004】)、
(d)「【発明の実施の形態】本発明の上記構成おいて、Ni/Au等メッキ9というのは、Ni/Auメッキ、Ni/Au/AuまたはNi/Pd/Auメッキを指し、またSn等メッキ5とは、SnメッキやSn合金(=ハンダ)メッキを指すものとする。
樹脂製テープ1にはポリイミド樹脂製のものを用いることが望ましい。上記で樹脂製テープ1表面に銅箔4がラミネートされ、該樹脂製テープ1裏面からハンダボール係合用孔2があけられたものとは、表面に接着剤3付きのポリイミド樹脂製テープ1に、プレスまたはドリルにて孔あけして銅箔4をラミネートした3層構造のものでよいし(・・・)、また予め銅箔4がラミネートされた樹脂製テープ1に裏面からレーザにより孔あけした2層構造のものでもよい(・・・)。」(段落【0015】【0016】)、
(e)「樹脂製テープ1の裏面をマスキング材6にて裏止めするのは、表面に付着したSn等メッキ5を剥離時や、フォトレジスト膜7の剥離時に、裏面のSn等メッキ5を保護することと、ボンディング用パッド部10のためのメッキ時に、裏面のSnメッキ5にNi/Au等メッキが付着するのを防止する意味がある。
このマスキング材6には、マスキング用テープの貼布やドライフィルムの貼布でもよいが、後で剥離する際の便宜上からは機械的に剥離可能なソルダーレジストインクを貼付することが望ましい。
フォトレジスト膜7を形成して、パターンを露光し現像した後にエッチングするのは、従来の工程で行うのと同様であり、フォトレジスト膜7を剥離後に・・・Ni/Au等メッキを施す。
上記によるNi/Au等メッキにて、銅箔4の表面のボンディング用パッド部10になる部分に、Niを含むメッキが施される。しかし銅箔4の裏面は、上記の如くマスキング材6が貼布または塗布されているので、Sn等メッキ5のままが維持されている。」(段落【0019】?【0022】)、
(f)「c)また本発明では、銅箔裏面のハンダボール用パッド部へのハンダボールの接合が、従来のようなNiメッキ上へのハンダボールの接合ではなく、パッド部のSn等メッキとハンダボールのSn合金間の接合となっている。これで、ハンダボールの接合強度は大幅に向上しており、かつハンダボールを接合させる際にフラックスを必ずしも用いる必要がなくなる。
d)さらに上記ハンダボール用パッド部のSn等メッキは、ハンダボールを接合時の熱で溶融するから、ここでのハンダボールの接合は銅箔とSn等との接合となり、間にNiメッキを介した従来のものと異なり、ハンダボールの接合強度をこの点でも大幅に向上させることができる。
e)しかも、ボンディング用パッド部等への無電解によるNi/Au等メッキは、ハンダボール用パッド部が裏止め被覆された状態で行われるから、ハンダボール用パッド部表面にNi中に含まれるPやB等の不純物の析出することが無くなるし、Auメッキ中のAuがハンダボール中に拡散することも無くせる。これで、この面からもハンダボールの接合力が向上しシェアー強度を有するし、半田ボールの強度が弱くなることも無くすことができる。」(段落【0051】?【0053】)が記載されている。

[6]対比・判断
(1)本願発明1について
(ア)引用刊行物1には、摘記(b)に記載されたとおりの「テープ形チップサイズパッケージ」が記載されており、また、該「テープ形チップサイズパッケージ」の構成に含まれる、「樹脂製テープ上の銅箔表面には、無電解によるNi/Au等メッキが施されたボンディング用パッド部が形成されるとともに、ハンダボール係合用孔を介して露呈する銅箔裏面には、Sn等メッキが施されたハンダボール用パッド部が形成された」テープも記載されているといえる。そして、該テープは、当該「テープ形チップサイズパッケージ」の構成に含まれるテープキャリアであるといえる。
(イ)摘記(b)及び(d)によれば、上記「樹脂製テープ」には、ポリイミド樹脂製テープが含まれる。また、上記「ハンダボール係合用孔」とは、該樹脂製テープに銅箔がラミネートされ、その銅箔裏面が露呈するように該樹脂製テープに孔あけされ、該露呈する銅箔裏面にSn等メッキが施されてハンダボール用パッド部が形成されており、該ハンダボール用パッド部に通じるように該樹脂製テープに形成されているものと解される。
(ウ)摘記(e)及び(f)によれば、上記銅箔をエッチングして銅箔パターンを形成した後、該銅箔パターンの表面のボンディング用パッド部にNi/Au等メッキを施し、該Ni/Au等メッキ時には、上記樹脂製テープの裏面にマスキング材が貼布または塗布されているので、該銅箔パターン裏面のハンダボール用パッド部は、Sn等メッキのまま維持され、該Ni/Au等メッキが施されないものと理解できる。

上記(ア)?(ウ)の事項を考慮し、摘記(a)?(f)を整理すると、引用刊行物1には、次の「テープ形チップサイズパッケージのテープキャリア」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「ポリイミド樹脂等の樹脂製テープと、該樹脂製テープにラミネートされた銅箔のエッチングにより形成された銅箔パターンと、該銅箔裏面にSn等メッキが施されて形成されたハンダボール用パッド部と、該ハンダボール用パッド部に通じるように該樹脂製テープに形成されたハンダボール係合用孔と、該銅箔パターンの表面のボンディング用パッド部に、無電解により施されたNi/Au等メッキとを含み、該Ni/Au等メッキ時には、上記樹脂製テープの裏面にマスキング材が貼布または塗布されているので、該銅箔パターン裏面のハンダボール用パッド部は、Sn等メッキのまま維持され、該Ni/Au等メッキが施されない、テープ形チップサイズパッケージのテープキャリア。」

そこで、本願発明1と引用発明1とを対比すると、
(カ)引用発明1における「ポリイミド樹脂等の樹脂製テープ」、「該樹脂製テープにラミネートされた銅箔のエッチングにより形成された銅箔パターン」は、それぞれ本願発明1における「ポリイミドテープ等の基板テープ」、「前記基板テープの上に所定のパターンを有して形成された配線層」に相当する。
(キ)引用発明1における「該銅箔裏面にSn等メッキが施されて形成されたハンダボール用パッド部」は、半田ボールランドに該当し、また、同「該ハンダボール用パッド部に通じるように該樹脂製テープに形成されたハンダボール係合用孔」は、基板テープに形成されたビア穴に該当する。
(ク)引用発明1における「該銅箔パターンの表面のボンディング用パッド部に、無電解により施されたNi/Au等メッキ」は、摘記(c)及び(d)によれば、銅箔パターンの表面のボンディング用パッド部に、無電解により、Niメッキ上にAuメッキを施したもの、Niメッキ上にAuメッキをし、さらにその上にAuメッキを施したもの、あるいはNiメッキ上にPdメッキをし、さらにその上にAuメッキを施したものをいうのであり、無電解によるメッキでは、被メッキ物を無電解メッキ液に浸漬して該被メッキ物の所定の表面を無電解メッキすることが普通に行われており、当該「Ni/Au等メッキ」に、銅箔パターンをラミネートした樹脂製テープを無電解メッキ液に浸漬して無電解メッキする態様が含まれることは明らかである一方、本願発明1における「Au/Ni等のメッキ」も、本願の図2に示されるように、Niメッキ後、Auメッキが行われるのであるから、本願発明1における「一体化された前記基板テープおよび前記配線層がメッキ液に浸漬されることによって前記配線層に形成されたAu/Ni等のメッキ膜」と重複しているといえる。
(ケ)引用発明1における「テープ形チップサイズパッケージのテープキャリア」は、半導体装置用テープキャリアといえる。

してみると、両発明は、
「ポリイミドテープ等の基板テープと、前記基板テープの上に所定のパターンを有して形成された配線層と、前記基板テープに形成されたビア穴と、一体化された前記基板テープおよび前記配線層がメッキ液に浸漬されることによって前記配線層に形成されたAu/Ni等のメッキ膜を含み、
前記半田ボールランドは、その表面に前記メッキ膜が形成されていない半導体装置用テープキャリア」の点で一致し、次の点で相違する。

相違点A:本願発明1のビア穴は、配線層の半田ボールランドに通じるように、基板テープに形成されているのに対し、引用発明1のハンダボール係合用孔は、銅箔裏面にSn等メッキが施されて形成されたハンダボール用パッド部に通じるように、樹脂製テープに形成されている点。

そこで、相違点Aについて、以下検討する。
半導体装置用テープキャリアのハンダボールを形成する孔内に予備的なメッキを施すことなくハンダボールを形成することは、下記周知例1、周知例2に記載されているように本出願前周知の技術と認められるから、引用発明1のハンダボール係合用孔に露呈する銅箔裏面にSn等メッキを施すことなく、該銅箔裏面に通じるハンダボール係合用孔とすること、即ち、半田ボールを設けるビア穴を、配線層の半田ボールランドに通じるように形成することは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。

周知例1:特開平8-88243号公報
(周1a)「(実施例1)まず、図2に示す35mm幅のTABテープ28を製作した。ベースフィルムは125μm 厚さのポリイミドに19μm 厚さのエポキシ系の接着剤を貼り合わせたものを用い、始めに穴加工を施す。穴加工は、送り穴23やデバイスホール24と共にバイアホール19を開口させる。バイアホール19の直径は0.3mmφであり、送り穴23、及びデバイスホール24と一緒にパンチング金型により開口する。その後、全面に銅箔を貼り合わせた後に、ホトケミカルエッチング法によって配線パターン2を作る。配線パターン2にはテンティングパッド20やインナーリード7等が含まれる。テンティングパッド20は、TABテープ28に設けられたバイアホール19の一方の開口を塞ぎ、バイアホール19内に埋め込まれたハンダペースト等の導電体と接続される部分となる。配線パターン形成工程によりTABテープキャリアの製造は終わる。」(段落【0024】)、
(周1b)「その後、配線パターン2側と反対側から、印刷によりバイアホール4の穴の中にハンダペーストを埋め込んだ。・・・
印刷後、230℃のリフロー炉により、図4に示すようにハンダによる金属ボール3を形成させた。」(段落【0026】、【0027】)、
(周1c)「【発明の効果】(1)請求項1に記載の発明によれば、ホール内に導電体を埋め込んで、導電体の直上に金属ボールを設けるようにしたので、ホール内にめっきを施したり、絶縁フィルム側に配線パターンを形成する必要がなく、構造が非常に簡単である。」(段落【0032】)が記載されている。

周知例2:国際出願公開WO95/26047号パンフレット
(周2a)「具体例1
厚さ12μmの電解銅箔を片面に有する2層フレキシブル基板・・・銅箔をエッチング加工後、・・・所定の配線パターンを得た。次に、・・・絶縁基材側から配線パターン裏面に達する凹部(直径300μm)を所定の位置に所定の数だけ形成した。・・・次に、無電解ニッケル、金めっき法によりワイヤボンド用端子部にニッケル/金めっきを施した。・・・続いて、前述の凹部に所定量のはんだを印刷塗布し、赤外線リフロー炉によりはんだを溶融させて外部接続用バンプを形成した。」(第26頁1行?第27頁3行)、
(周2b)「具体例2
厚さ12μmの電解銅箔を片面に有する2層フレキシブル基材・・・銅箔をエッチング加工後、・・・所定の配線パターンを得た。次に、・・・絶縁基材側から配線パターン裏面に達する凹部(直径300μm)を所定の位置に所定の数だけ形成した。・・・次に、無電解ニッケル、金めっき法によりワイヤボンド用端子部にニッケル/金めっきを施した。・・・続いて、前述の凹部に所定量のはんだを印刷塗布し、赤外線リフロー炉によりはんだを溶融させて外部接続用バンプを形成した。」(第29頁3行?第30頁6行)が記載されている。
上記(周2a)の具体例1、(周2b)の具体例2において、「前述の凹部に所定量のはんだを印刷塗布し、・・・」の「前述の凹部」は、「絶縁基材側から配線パターン裏面に達する凹部(直径300μm)」であるから、該「絶縁基材側から配線パターン裏面に達する凹部」に予備的なメッキを施すことなく、はんだを印刷塗布して外部接続用バンプを形成していることが明らかである。

そして、本願発明1の相違点Aに係る特定事項によってもたらされる効果も、引用刊行物1に記載された発明及び上記周知技術から当業者が普通に予測し得る程度のものであって、格別なものとはいえない。
したがって、本願発明1は、引用刊行物1に記載された発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本願発明6について
(サ)引用刊行物1には、摘記(a)の【請求項1】の「テープ形チップサイズパッケージの製造方法」が記載されている。
(シ)同【請求項1】に記載された「テープ形CSPの製造方法」の「CSP」は、「チップサイズパッケージ」を略して表記したものと解される。
(ス)同【請求項1】に記載された「ボング用パッド部10」は、「ボンディング用パッド部10」の誤記と認められる。
(セ)同【請求項1】に記載された「テープ形チップサイズパッケージの製造方法」における「樹脂製テープ1表面に銅箔4がラミネートされ、該樹脂製テープ1裏面からハンダボール係合用孔2があけられたものを、化学処理して銅箔4を清浄化後に、銅箔4表面にフォトレジスト膜7を形成してパッド部等のパターンを露光・現像し、裏面をマスキング材6で裏止めして、エッチング処理にてパターン8を形成し、上記フォトレジスト膜7を剥離後に、Ni/Au等メッキ9を施して銅箔4の表面にボング用パッド部10等を形成し、かつ銅箔4裏面にはハンダボール用パッド部11を形成する工程」、「上記銅箔4を洗浄後でフォトレジスト膜7を形成する前の段階で、〈1〉少なくとも銅箔4の裏面にSn等メッキ5を施し、〈2〉次に上記樹脂製テープ1の裏面からマスキング材6で裏止めするとともに、上記で銅箔4表面にもSn等メッキ5を施した場合はそれを剥離する工程を入れ、かつ、上記Ni/Au等メッキ9を無電解で行うとともに、その後に上記樹脂製テープ1裏面の裏止め用マスキング材6を剥離する」工程は、「テープ形チップサイズパッケージ」のテープキャリアを製造する工程に該当し、当該「テープ形チップサイズパッケージの製造方法」は、当該テープキャリアを製造する工程を含むものといえる。
(ソ)摘記(d)によれば、上記「樹脂製テープ」には、ポリイミド樹脂製テープが含まれる。また、摘記(e)によれば、上記「マスキング材で裏止め」には、マスキング用テープ、ドライフィルムの貼布が含まれる。

上記(サ)?(ソ)の事項を整理すると、引用刊行物1には、次の「テープ形チップサイズパッケージの製造方法」の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているといえる。

「ポリイミド樹脂等の樹脂製テープ表面に銅箔がラミネートされ、該樹脂製テープ裏面からハンダボール係合用孔があけられたものを、化学処理して銅箔を清浄化後に、銅箔表面にフォトレジスト膜を形成してパッド部等のパターンを露光・現像し、裏面をマスキング材で裏止めして、エッチング処理にてパターンを形成し、上記フォトレジスト膜を剥離後に、Ni/Au等メッキを施して銅箔の表面にボンディング用パッド部等を形成し、かつ銅箔裏面にはハンダボール用パッド部を形成する工程をもつテープ形チップサイズパッケージの製造方法において、
上記銅箔を洗浄後でフォトレジスト膜を形成する前の段階で、
〈1〉少なくとも銅箔の裏面にSn等メッキを施し、
〈2〉次に上記樹脂製テープの裏面からマスキング用テープ、ドライフィルム等の貼布により裏止めするとともに、
上記で銅箔表面にもSn等メッキを施した場合はそれを剥離する工程を入れ、
かつ、上記Ni/Au等メッキを無電解で行うとともに、その後に上記樹脂製テープ裏面のマスキング用テープ、ドライフィルム等の裏止め用マスキング材を剥離するようにしたテープキャリアの製造工程を含む、テープ形チップサイズパッケージの製造方法。」

そこで、本願発明6と引用発明2とを対比すると、
(タ)本願発明6に係る請求項6の「前記基板テープおよび前記配線層」より前段には、「前記配線層」に相当する「配線層」という表記はないが、「銅箔をラミネートされ、所定の位置にビア穴を有するポリイミドテープ等の基板テープの前記銅箔に所定のパターンのフォトエッチング加工を施した後・・・」と記載されており、該「ラミネートされ、・・・所定のパターンのフォトエッチング加工を施した」銅箔は、「基板テープ」面上に形成された「配線層」といえる。そうすると、上記「前記配線層」は、前段の「ラミネートされ、・・・所定のパターンのフォトエッチング加工を施した」銅箔を配線層とみなし、該銅箔を「前記配線層」と表記しているものと解される。
(チ)引用発明2における「ポリイミド樹脂等の樹脂製テープ」、「ハンダボール係合用孔」、「ポリイミド樹脂等の樹脂製テープ表面に銅箔がラミネートされ、該樹脂製テープ裏面からハンダボール係合用孔があけられたもの」、「パッド部等」、「銅箔表面にフォトレジスト膜を形成してパッド部等のパターンを露光・現像し、裏面をマスキング材で裏止めして、エッチング処理にてパターンを形成し、上記フォトレジスト膜を剥離後に、」は、それぞれ本願発明6における「ポリイミドテープ等」(又は「ポリイミドテープ等の基板テープ」)、「ビア穴」、「銅箔をラミネートされ、所定の位置にビア穴を有するポリイミドテープ等の基板テープ」、「配線層」、「前記銅箔に所定のパターンのフォトエッチング加工を施した後、」に相当する。
(ツ)引用発明2における「Ni/Au等メッキを施して銅箔の表面にボンディング用パッド部等を形成し、・・・上記Ni/Au等メッキを無電解で行う」は、摘記(c)及び(d)によれば、当該「Ni/Au等メッキ」とは、銅箔パターンの表面のボンディング用パッド部に、無電解により、Niメッキ上にAuメッキを施すこと、Niメッキ上にAuメッキをし、さらにその上にAuメッキを施すこと、あるいはNiメッキ上にPdメッキをし、さらにその上にAuメッキを施すことをいうのであり、無電解によるメッキでは、被メッキ物を無電解メッキ液に浸漬して該被メッキ物の所定の表面を無電解メッキすることが普通に行われており、当該「Ni/Au等メッキ」に、銅箔パターンをラミネートした樹脂製テープを無電解メッキ液に浸漬して無電解メッキする態様が含まれることは明らかである一方、本願発明6における「Au/Ni等のメッキ」も、本願の図2に示されるように、Niメッキ後、Auメッキが行われるのであるから、本願発明6における「前記基板テープおよび前記配線層をメッキ液に浸漬することによって前記配線層にAu/Ni等のメッキ膜を形成する」と重複しているといえる。
(テ)引用発明2における「上記銅箔を洗浄後でフォトレジスト膜を形成する前の段階で、
・・・上記樹脂製テープの裏面からマスキング用テープ、ドライフィルム等の貼布により裏止めする・・・工程を入れ、かつ、上記Ni/Au等メッキを無電解で行うとともに、その後に上記樹脂製テープ裏面のマスキング用テープ、ドライフィルム等の裏止め用マスキング材を剥離する」は、本願発明6における「配線層にAu/Ni等のメッキ膜を形成する半導体装置用テープキャリアの製造方法において、前記メッキ膜は、前記基板テープに樹脂テープを貼り付けることによって前記ビア穴を塞いだ状態のもとに形成される」に相当する。
してみると、両発明は、
「銅箔をラミネートされ、所定の位置にビア穴を有するポリイミドテープ等の基板テープの前記銅箔に所定のパターンのフォトエッチング加工を施した後、前記基板テープおよび前記配線層をメッキ液に浸漬することによって前記配線層にAu/Ni等のメッキ膜を形成する製造方法において、
前記メッキ膜は、前記基板テープに樹脂テープを貼り付けることによって前記ビア穴を塞いだ状態のもとに形成される製造方法。」の点で一致し、次の点で相違する。

相違点B:本願発明6が、半導体装置用テープキャリアの製造方法であるのに対し、引用発明2は、テープキャリアの製造工程を含む、テープ形チップサイズパッケージの製造方法である点。
相違点C:本願発明6が、化学処理して銅箔を清浄化する工程、少なくとも銅箔の裏面にSn等メッキを施し、銅箔表面にもSn等メッキを施した場合はそれを剥離する工程を含まないのに対し、引用発明2は、それらの工程を含む点。

そこで、相違点Bについてまず検討する。
引用発明2における「テープキャリアの製造工程を含む、テープ形チップサイズパッケージの製造方法」は、半導体装置用テープキャリアの製造工程を含む、テープ形チップサイズパッケージの製造方法であるといえる。そして、該「半導体装置用テープキャリアの製造工程」が、チップを搭載して「テープ形チップサイズパッケージ」とする以前の半導体装置用テープキャリアの製造工程に該当し、該半導体装置用テープキャリアの製造方法を構成することは明らかである。
そうすると、引用発明2における「テープ形チップサイズパッケージの製造方法」の上記「半導体装置用テープキャリアの製造工程」をもって「半導体装置用テープキャリアの製造方法」とすることは、当業者が容易に想到できたものと認められる。

次に、相違点Cについて検討する。
本願発明6の半導体装置用テープキャリアの製造方法において、「化学処理して銅箔を清浄化する工程」、「少なくとも銅箔の裏面にSn等メッキを施し、銅箔表面にもSn等メッキを施した場合はそれを剥離する工程」等を付加的に行うことが排除されているわけではなく、本願発明6は、それらの工程を付加的に行う態様を包含していると解されるので、同態様において、引用発明2のテープ形チップサイズパッケージの製造方法と重複しているといえる。
他方、引用発明2のテープ形チップサイズパッケージの製造方法において、「化学処理して銅箔を清浄化する工程」は、銅箔の状態等に応じて適宜に変更乃至省略できるものであるし、また、「少なくとも銅箔の裏面にSn等メッキを施し、銅箔表面にもSn等メッキを施した場合はそれを剥離する工程」は、上記「(1)本願発明1について」において、相違点Aについての検討で述べたとおり、半導体装置用テープキャリアのハンダボールを形成する孔内に予備的なメッキを施すことなくハンダボールを形成することは本出願前周知の技術と認められるから、同様のハンダボールを形成するために、当業者が適宜に省略できるものと認められる。
そうすると、相違点Cは、実質的な相違点を構成するものではないし、仮に実質的な相違点を構成するとしても、上記「(1)本願発明1について」の相違点Aと同様、当業者が容易に想到できたものと認められる。
そして、本願発明6の相違点B、Cに係る特定事項によってもたらされる効果も、引用刊行物1に記載された発明及び上記周知技術から当業者が普通に予測し得る程度のものであって、格別なものとはいえない。
したがって、本願発明6は、引用刊行物1に記載された発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

[7]むすび
以上のとおり、本願発明1、6は、引用刊行物1に記載された発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができた発明であるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、上記のとおり本願発明1、6が特許を受けることができないため、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-13 
結審通知日 2009-02-17 
審決日 2009-03-04 
出願番号 特願2001-349391(P2001-349391)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 市川 篤  
特許庁審判長 岡 和久
特許庁審判官 粟野 正明
市川 裕司
発明の名称 半導体装置用テープキャリアおよびその製造方法ならびに半導体装置  

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