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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02K
管理番号 1195899
審判番号 不服2007-17299  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-06-21 
確定日 2009-04-16 
事件の表示 特願2003-133182「回転電機」拒絶査定不服審判事件〔平成16年11月25日出願公開、特開2004-336966〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成15年5月12日の出願であって、平成19年5月16日付で拒絶査定がなされ、同年6月21日に拒絶査定に対する不服審判請求がなされ、その後平成20年10月2日付で当審より拒絶理由を通知したところ同年12月5日に手続補正書が提出されたものである。
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成20年12月5日付の手続補正書により補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる。
「スロットが毎極毎相当たり2で設けられた環状の固定子鉄心および上記固定子鉄心に装着された三相固定子巻線を有する固定子と、この固定子の内側に回転自在に設けられ、界磁巻線および永久磁石による磁束を発生する回転子とを備えた回転電機において、
上記三相固定子巻線は、それぞれ6スロット毎の上記スロットで構成されるスロット群のそれぞれに巻装された複数の巻線を備え、
上記三相固定子巻線を構成するX相巻線、Y相巻線およびZ相巻線は、それぞれ隣接する上記スロット群に巻装された第1および第2の固定子巻線を直列に接続して構成され、 上記スロットは、スロット開口部の中心線間の間隔が電気角でα°と(60-α)°とを交互にとる不等ピッチ(α≠30°)に形成され、
上記回転子の磁極が磁性鋼板を積層一体化して構成されていることを特徴とする回転電機。」

2.引用刊行物
(1)これに対して、当審の拒絶の理由に引用した特開2001-238384号公報(以下「引用刊行物」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
・「【0012】
【課題を解決するための手段】この発明に係る交流発電機は、回転周方向に沿ってNS極を形成する回転子と、該回転子と対向配置された固定子鉄心およびこの固定子鉄心に装着された多相固定子巻線を有する固定子、上記回転子と上記固定子とを支持するブラケットとを備えた交流発電機において、上記固定子鉄心は、軸方向に延びるスロットが周方向に所定ピッチで複数形成された積層鉄心を備え、上記多相固定子巻線は、長尺の素線が、上記固定子鉄心の端面側の上記スロット外で折り返されて、所定スロット数毎に上記スロット内でスロット深さ方向に内層と外層とを交互に採るように巻装された巻線を複数有し、上記固定子鉄心の端面側の上記スロット外で折り返された上記素線のターン部が周方向に並んでコイルエンド群を構成しているものである。
【0013】また、上記素線が上記スロットのそれぞれにスロット深さ方向に2n本ずつ配列され、上記素線のターン部が周方向にn列に並んで配列されているものである。」
・「【0031】また、上記固定子巻線の収容されるスロット数が毎極毎相当たり2であり、上記多相固定子巻線は毎極毎相当たりのスロットに対応する第1の多相巻線群と第2の多相巻線群とを備えているものである。
【0032】また、上記第1の多相巻線群と第2の多相巻線群とが直列に接続され、その巻線端が上記整流器に接続されているものである。」
・「【0075】この交流発電機においては、図23に示されるように、ファン5は回転子7のリヤ側の端部にのみ設けられ、固定子8Bが絶縁性樹脂25を介してケース3に当接して取り付けられている。この絶縁性樹脂25は、熱伝導率が0.5(W/mk)のエポキシ樹脂(主剤)と熱伝導率が3.5(W/mk)のアルミナとを1:4の割合で混合したものである。固定子8Bは、固定子鉄心15Bに巻装された多相固定子巻線16Bのコイルエンド群16a、16bが、図24に示されるように、絶縁性樹脂25で一体にモールドされて構成されている。そして、多相固定子巻線16Bは、それぞれ第1および第2巻線31、32を直列に接続してなる2ターンの6相分の固定子巻線群166を交流結線して作製された2組の3相固定子巻線群165を備えている。また、回転子7には、爪状磁極22、23の側面に2個の永久磁石26を一対とした、磁石部材が設けられている。つまり、図25および図26に示されるように、爪状磁極22、23の側面形状に沿った形状の永久磁石26を磁石保持部材27によって爪状磁極内径側より囲い込むように構成されている。用いられる永久磁石26は、爪状磁極22、23の側面形状に沿った略台形で厚み2mmのフェライト磁石を使用しており、-40℃における車両用交流発電機の発電時に、反磁界(磁石の磁界と逆向きの磁界)が磁石に作用しても、減磁を抑制できるような異方性磁石に設定している。
【0076】また、図27に示されるように、それぞれ第1および第2巻線31、32を直列に接続してなる2ターンの3相分の固定子巻線群166が星型結線されて2組の3相固定子巻線群165を構成し、2組の3相固定子巻線群165がそれぞれ整流器12に接続され、各整流器12の出力が並列に接続されて合成されるように回路構成されている。さらに、3相固定子巻線群165の星型結線の中性点が整流器12に接続されている。また、直方体の鉄心36Bは、図28に示されるように、スロット36aが電気角で30°ピッチで設けられ、開口部36bが36°の電気角と24°の電気角とを交互にとるように設けられている。これにより、2組の3相固定子巻線群165の位相差が36°となる。なお、上記実施の形態1では、2組の3相固定子巻線群160の位相差は30°となる。
【0077】なお、この実施の形態3、固定子のターン数を本巻線構造において、スロット内の占積率が最大限とれる最小のターン数である2ターンとしているため、発電機の出力発生回転数が遅く、従って、発電機回転数で2500rpmまでの低速回転で出力が不足することになる。これを補うために、上記のように、回転子爪状磁極22、23間に永久磁石26を介在させて、この間の漏れ磁束を抑制し誘起電力を得るとともに、加えて、低速回転時には界磁コイルへの界磁電流を最大限供給し、2500rpm以上の高速時には、逆に界磁電流を制限することで、必要以上の出力を抑制することで、固定子や整流器の温度を許容値に抑えている。本実施例の場合、低速回転時の界磁コイルへの界磁電流を7.5Aに、高速時を4Aに抑えるよう制御している。」

また、実施の形態3を示す図23,24,27には、固定子鉄心が環状であり、この環状固定子鉄心に3相固定子巻線群が装着されていること、及び固定子の内側に回転自在に設けられ、界磁巻線による磁束を発生する回転子を備えていることが、また図25,26には回転子が永久磁石26による磁束も発生するものである点が示されている。
そして、実施の形態1?3に共通の構成を記載した上記【0031】の「また、上記固定子巻線の収容されるスロット数が毎極毎相当たり2であり、」という記載及び実施の形態3の構成を記載した【0076】の「スロット36aが電気角で30°ピッチで設けられ、開口部36bが36°の電気角と24°の電気角とを交互にとるように設けられている。」という記載から、実施の形態3の3相固定子巻線群165は、実施の形態1の結線状態を説明する【図3】に記載されたものと同様にそれぞれ6スロット毎のスロットで構成されるスロット群のそれぞれに巻装されているということができる。

したがって、引用刊行物には、実施の形態3に係る次の事項からなる発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「スロットが毎極毎相当たり2で設けられた環状の固定子鉄心15Bおよび上記固定子鉄心15Bに装着された3相固定子巻線群165を有する固定子8Bと、この固定子8Bの内側に回転自在に設けられ、界磁巻線および永久磁石26による磁束を発生する回転子とを備えた交流発電機において、
上記3相固定子巻線群165は、それぞれ6スロット毎の上記スロットで構成されるスロット群のそれぞれに巻装された固定子巻線群166を備え、
上記3相固定子巻線群は、それぞれ第1および第2巻線31、32を直列に接続してなる2ターンの3相分の固定子巻線群166で構成され、
上記スロットは、開口部36bが36°の電気角と24°の電気角とを交互にとるように設けられている交流発電機。」

3.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「3相固定子巻線群165」は前者の「三相固定子巻線」に相当し、以下同様に、「交流発電機」は「回転電機」に、「固定子巻線群166」は「複数の巻線」に相当する。
また、後者の「3相固定子巻線群165」は前者の「三相固定子巻線」と同様に、「X相巻線、Y相巻線およびZ相巻線」で構成されているものといえる。
さらに、後者の「それぞれ第1および第2巻線31、32を直列に接続してなる2ターンの3相分の固定子巻線群166で構成され」は前者の「それぞれ隣接するスロット群に巻装された第1および第2の固定子巻線を直列に接続して構成され」に相当する。
また、後者の「開口部36bが36°の電気角と24°の電気角とを交互にとるように設けられ」は、前者の「スロット開口部の中心線間の間隔が電気角でα°と(60-α)°とを交互にとる不等ピッチ(α≠30°)に形成され」に相当する。
したがって両者は、
[一致点]
「スロットが毎極毎相当たり2で設けられた環状の固定子鉄心および上記固定子鉄心に装着された三相固定子巻線を有する固定子と、この固定子の内側に回転自在に設けられ、界磁巻線および永久磁石による磁束を発生する回転子とを備えた回転電機において、
上記三相固定子巻線は、それぞれ6スロット毎の上記スロットで構成されるスロット群のそれぞれに巻装された複数の巻線を備え、
上記三相固定子巻線を構成するX相巻線、Y相巻線およびZ相巻線は、それぞれ隣接する上記スロット群に巻装された第1および第2の固定子巻線を直列に接続して構成され、 上記スロットは、スロット開口部の中心線間の間隔が電気角でα°と(60-α)°とを交互にとる不等ピッチ(α≠30°)に形成されている回転電機。」で一致し、
[相違点]
本願発明が「回転子の磁極が磁性鋼板を積層一体化して構成され」るものと特定しているのに対し、引用発明は、このような特定をしていない点で相違している。

4.相違点に対する判断
本願発明において、回転子の磁極を磁性鋼板を積層一体化して構成することの効果は明細書の段落【0035】の記載からみて回転子表面損失を小さくすることにあると認められるところ、回転電機において、回転子表面損失を小さくするために回転子を、磁性鋼板を積層一体化して構成することは周知技術(例.特開2003-134761号公報「【発明が解決しようとする課題】…固定子スロット高調波の回転子導体に対する鎖交率が高くなり、このために、高調波2次銅損が高くなり……この高調波2次銅損を低減することが新たな課題となって生じていた。……【課題を解決するための手段】…薄板電磁鋼板が積層されてなり……が設けられた回転子鉄心」、特開平11-150902号公報「【0019】…回転子コイル13で発生した多くの磁束はポールコア33を通過するが、爪状磁極36、38は薄い鋼板を積層して構成されており、ポールコア33での渦電流の発生を低減することができ、鉄損が低減して発電効率が向上する。」、特開2002-247817号公報「【0031】…回転軸に対して複数の鉄板を積層してなるものであって…回転子表面の渦電流損を低減させることができる…。」等参照)である。
したがって、引用発明において、回転子における損失低減という周知の課題のための上記周知技術を採用して相違点に係る本願発明の構成とすることは当業者にとって容易である。
また、本願発明の全体構成により奏される効果は、引用発明及び上記周知技術から予測し得る程度のものと認められる。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-10 
結審通知日 2009-02-17 
審決日 2009-03-02 
出願番号 特願2003-133182(P2003-133182)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H02K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松本 泰典  
特許庁審判長 田良島 潔
特許庁審判官 仁木 浩
小川 恭司
発明の名称 回転電機  
代理人 古川 秀利  
代理人 梶並 順  
代理人 曾我 道治  
代理人 鈴木 憲七  
代理人 大宅 一宏  
代理人 上田 俊一  

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