• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B28D
管理番号 1195924
審判番号 不服2007-34102  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-12-19 
確定日 2009-04-16 
事件の表示 特願2002-132355「切断装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月11日出願公開、特開2003-320520〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、平成14年5月8日の特許出願であって、同19年3月23日付けで拒絶の理由が通知され、同19年5月24日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同19年11月13日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、これに対し、同19年12月19日に本件審判の請求がされ、同20年1月9日に明細書を補正対象書類とする手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。

第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容の概要
本件補正は、特許請求の範囲を含む明細書について補正をするものであって、特許請求の範囲について補正前後の請求項1の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。
(1) 補正前の請求項1
「略円柱状の細長いロッドを切断するための切断装置にして、中心軸線を中心として回転自在に装着され、該中心軸線に沿って延在せしめられるロッドの一端部を把持する把持手段と、該把持手段を回転せしめるための回転駆動手段と、一端部が該把持手段に把持されたロッドの切断部の振動を抑制するための抑制手段と、該中心軸線に対して実質上垂直な方向にロッドを切断するための切断手段とを具備し、該把持手段は、ロッドの周方向に間隔をおいて、ロッドの周表面に向かう方向及びロッドの周表面から離隔する方向に移動自在に配設された3個以上の把持片と、該把持片の各々をロッドの周表面に向けて偏倚するための把持片偏倚手段とを含み、該把持片の各々は該中心軸線方向及び周方向に湾曲せしめられていてロッドの周表面に実質上点接触せしめられる把持面を有する、ことを特徴とする切断装置。」
(2) 補正後の請求項1
「真直ではなくて湾曲を有し外径も均一ではなく変動する略円柱状の細長いポリシリコンロッドを切断するための切断装置にして、中心軸線を中心として回転自在に装着され、該中心軸線に沿って延在せしめられるロッドの一端部を把持する把持手段と、該把持手段を回転せしめるための回転駆動手段と、一端部が該把持手段に把持されたロッドの切断部の振動を抑制するための抑制手段と、該中心軸線に対して実質上垂直な方向にロッドを切断するための切断手段とを具備し、該把持手段は、ロッドの周方向に間隔をおいて、ロッドの周表面に向かう方向及びロッドの周表面から離隔する方向に移動自在に配設された3個以上の把持片と、該把持片の各々をロッドの周表面に向けて偏倚するための把持片偏倚手段とを含み、該把持片の各々は該中心軸線方向及び周方向に湾曲せしめられていてロッドの周表面に実質上点接触せしめられる把持面を有し、該抑制手段は、ロッドの周方向に間隔をおいて回転自在に配設されロッドの周表面に当接せしめられる少なくとも3個のローラと、該ローラの少なくとも1個をロッドの周表面に向けて偏倚する偏倚手段とを含む、ことを特徴とする切断装置。」
2 補正の適否
請求項1における補正は、略円柱状の細長いロッドについて、「真直ではなくて湾曲を有し外径も均一ではなく変動するポリシリコン」ロッドであると特定するとともに、抑制手段について、「ロッドの周方向に間隔をおいて回転自在に配設されロッドの周表面に当接せしめられる少なくとも3個のローラと、該ローラの少なくとも1個をロッドの周表面に向けて偏倚する偏倚手段とを含む」抑制手段であるという限定事項を付加するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討する。
(1) 補正発明
補正発明は、本件補正により補正がされた明細書及び図面の記載からみて、上記1の(2)の補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。
(2) 引用例記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された本件出願前に頒布された刊行物である特開平5-169437号公報(以下「引用例1」という。)、及び、同じく本件出願前に頒布された刊行物である特開2000-317756号公報(以下「引用例2」という。)には、以下のとおり記載されている。
(2)-1 引用例1の記載事項
ア 段落【0001】
「【産業上の利用分野】本発明は、インゴットの切断方法および切断装置に関し、特に、半導体素子の素材であるシリコン等のインゴットを切断するのに好適な切断方法および装置に関する。」
イ 段落【0004】
「【発明が解決しようとする課題】ところで、製作されたインゴットの外周に凹凸が多くて、インゴットの外形が円筒形でない場合には、切断方向に垂直になるようにインゴットの成長軸を保持して回転させることは非常に困難であるため、インゴットをその成長軸と垂直に切断することは非常に困難であるという問題がある。」
ウ 段落【0010】?【0011】
「【実施例】以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。図1は、本発明の一実施例のインゴット切断装置がインゴットに取りつけられた状態をインゴット成長軸方向からみた断面図である。インゴット切断装置20には、インゴット1を回転させる回転装置8と、この回転装置8に一体的に設けられた4つの押圧装置12a、12b、12c、12dとが備えられている。回転装置8には、4つの押圧装置12a?12dがインゴット成長軸14に対して直交する4方向に設けられており、これらの押圧装置12a?12dによってインゴット1を把持する。この回転装置8には4つの押圧装置12a?12dが設けられているが、成長軸14に対して垂直面内の半径方向の少なくとも3方向に押圧装置が設けられているとインゴット1を確実に把持することが可能である。
この回転装置8は駆動モータ9によりチェーン10を介して回転されるため、インゴット1は押圧装置12a?12dとともに回転する。押圧装置12a?12dには、それぞれインゴット固定棒5、このインゴット固定棒5の球形の一端部16が揺動自在に保持されている固定治具6、この固定治具6をインゴット1方向に対してストロークを自在に調整する固定ネジ7が備えられている。上述のように、このインゴット固定棒5の球形の一端部16を固定治具6に揺動自在に保持するとともに、固定ネジ7によりインゴット1の外周との距離を調整するため、インゴット1の外形に応じて、インゴット固定棒5の他端部18はインゴット1の表面と垂直状態で接触し、インゴット1を把持することができる。したがって、インゴット1の外周表面が凹凸となっていてインゴットの外形が円筒形になっていなくても、この押圧装置12a?12dの固定ネジ7を調整することにより、成長軸14の方向を回転軸と一致させることができる。」
エ 段落【0012】?【0013】
「次に、このインゴット切断装置20を用いてインゴット1を切断する方法について、図面を参照して説明する。図2から図6は、インゴット1の成長軸14に直角な方向からみたインゴット切断方法を示す断面図である。インゴットを切断するために、まず、図2に示すように、インゴット1がインゴット切断装置20のベース22に対してほぼ水平方向になるように、2つの支脚2の上に載置した後、インゴット1のトップ1aの中心とボトム1bの中心とを結ぶ線がベース22に対して正確に水平となり、かつブレード3に対して正確に垂直となるように、2つの支脚2を調整する。
次に、インゴット1を正確に載置した後、バッキュームチャック4によりインゴット1を固定し、支脚2を取りはずし、インゴット1を移動して切断位置とブレード3との位置合わせを行う。このバキュームチャック4では、インゴット1を回転させることが困難であるため、図3に示すように、押圧装置12d等(図1参照)によりインゴット1の切断位置のトップ1a側とボトム1b側とが把持する。その後、バキュームチャック4を取りはずし、回転装置8(図1参照)を回転しインゴット1の切断を開始する。切断がインゴット1の中心軸に達する直前でブレード3の回転を止め、バキュームチャック4により再びインゴット1を固定し、続けて中心軸付近を切断し、インゴット1を図4に示すよう2つに切断する。」
オ 段落【0015】
「以上の操作を繰り返すことにより、インゴット1を所望の長さで、しかも成長軸14に対して垂直に切断することができる。」
カ ここで、上記摘記事項イ、及び図面の図2の記載から、インゴット1は真直ではなくて湾曲を有し外形も均一ではなく変動しているものであり、かつ略円柱状の細長いものであることが理解できる。
また、図面の図1を参照すると、回転装置8は、ほぼ円形のものであることが見て取れる。そして、このほぼ円形の回転装置8はチェーン10を介して回転されるものであることから、円形の回転装置8の中心に回転の中心となる中心軸線が存在することは明らかである。そこで図面の図1を見ると、回転装置8の回転中心である中心軸線とほぼ重なる位置にインゴット1の成長軸線14が存在することが見て取れる。また、上記摘記事項ウには、「インゴット1の外周表面が凹凸となっていてインゴットの外形が円筒形になっていなくても、この押圧装置12a?12dの固定ネジ7を調整することにより、成長軸14の方向を回転軸と一致させることができる。」の記載がある。以上2つの点から、インゴット1は、中心軸線を中心として回転自在に回転装置8に装着され、該中心軸線に沿って延在するようになっていることは明らかである。
さらに、図面の図3、図4、及び図6を参照すると、インゴット1を把持する押圧装置12a?12dは、インゴット1の一端部を把持しているのが見て取れる。
回転装置8の回転中心である中心軸線とインゴット1の成長軸線14とがほぼ同じ位置に設けられているところ、摘記事項オの「成長軸14に対して垂直に切断する」の記載があることから、インゴット1は中心軸線に対して実質上垂直な方向に切断されるものであることは明らかである。
図1を参照すると、インゴット1を把持する押圧装置12a?12dは、インゴット1の周方向に間隔をおいて、4つ備えられているのが見て取れる。そして、それぞれの押圧装置12a?12dは、インゴット固定棒5、このインゴット固定棒5の球形の一端部16が揺動自在に保持されている固定治具6、この固定治具6をインゴット1方向に対してストロークを自在に調整する固定ネジ7とから構成されており、固定ネジ7を調整することにより、インゴット固定棒5の他端部18は、インゴット1の周表面に向かう方向及びインゴット1の周表面から離隔する方向に移動するものであることは明らかである。
上記アないしオの摘記事項、及びカの認定事項より、引用例1には、次の事項が記載されていると認める。
「真直ではなくて湾曲を有し外形も均一ではなく変動する略円柱状の細長いインゴット1を切断するためのインゴット切断装置20にして、中心軸線を中心として回転自在に装着され、該中心軸線に沿って延在させめられるインゴット1の一端部を把持する押圧装置12a?12dと、押圧装置12a?12dを有する回転装置8を回転せしめるための駆動モータ9及びチェーン10と、該中心軸線に対して実質上垂直な方向にインゴット1を切断するためのブレード3とを具備し、該押圧装置12a?12dは、インゴット1の周方向に間隔をおいて、インゴット1の周表面に向かう方向及びインゴット1の周表面から離隔する方向に移動自在に配設された4つのインゴット固定棒5、固定治具6と、該インゴット固定棒5の各々をインゴット1の周表面に向けて調整するための固定ネジ7とを含むインゴットの切断装置。」(以下「引用発明1」という。)
(2)-2 引用例2の記載事項
キ 段落【0001】
「【発明の属する技術分野】本発明は、旋削あるいは研削されるワークを支承するときに、回転するワークの振れを吸収するワーク把持装置に関するものである。」
ク 段落【0015】
「この研削盤に装備される本発明のワーク把持装置Aには、図1に示すように、上面が開口した細長い箱形状の載置台2の下面に、2条の凸状のガイドレール1に摺動可能に載置される凹状の摺動部3が設けられている。また、前記載置台2の側壁に設けられた軸受箱4の内部にはベアリングを有する軸受5が設けられている。前記軸受5に回転可能に支承される軸頸部6aを有するねじ杆6は、ガイドレール1に対して直角の軸心を有し、載置台2から突出するねじ杆6の一端部にハンドル7が設けられている。」
ケ 段落【0017】?【0020】
「また、図1に示すように、前記ナット8および9の上面には、それぞれフレーム11および12の下面が固着されている。このフレーム11および12は、対称形に形成された同一構造であるので、フレーム11についてのみ説明し、フレーム12の説明を省略する。フレーム11は、フレーム12に相対する前面が開口する箱形状であり、両側壁に支軸13の両端が固着され、この支軸13にアーム14、15が枢着されている。
前記アーム14は、図3に示すように、一側14aが前方(フレーム12の方向)に傾斜して上方に延び、他側14bが後方に延びる形状を有している。一方、アーム15は、一側15aが前方に傾斜して下方に延び、他側15bが後方に延びる形状を有している。そして、アーム14の一側14aおよびアーム15の一側15aの夫々にローラ軸16が挿通されると共に、前記ローラ軸16にローラ17が回転可能に装着されている。
また、アーム14の他側14bおよびアーム15の他側15bは、図2に示すように、フレーム11の後壁11aに穿設された角孔18、19を貫通している。そして、また、前記角孔18、19の近傍には、それぞれ後壁11aの外面より突出する起立片20が設けられ、起立片20を貫通するねじ孔と締めつけナット21に調整ねじ22が螺合する。この調整ねじ22は、それぞれアーム14およびアーム15の回動量を規制するストッパであり、前記アーム14の他側14bおよびアーム15の他側15bが、夫々の調整ねじ22と当接することにより、前記アーム14、15の回動は阻止される。その結果、前記アーム14、15の間の間隔を調整することができる。
また、フレーム11の後壁11aにねじ孔23が貫通し、このねじ孔23にねじ25が挿通されると共に、締めつけナット24に螺合している。また、ねじ25の先端に取り付けられたばね受け26とアーム14との間、及びばね受け26とアーム15との間に、コイルばねより成る付勢部材27が挿入されている。即ち、コイルばねより成る付勢部材27の一端はばね受け26に当接し、他端は前記アーム14に当接している。同様に、コイルばねより成る付勢部材27の一端はばね受け26に当接し、他端は前記アーム15に当接している。その結果、アーム14は支軸13を中心として図1において時計方向に回動付勢され、アーム15は支軸13を中心として反時計方向に回動付勢される。即ち、両アーム14、15のローラ17は相互に間隔を狭める方向に付勢される。」
コ 段落【0021】?【0024】
「以上のように構成されたワーク把持装置Aは、図4に示すように、研削盤Bのベッドのガイドレール1に取り付けられる。ガイドレール1は、研削盤Bの端面研削ユニットB_(1)および外径研削ユニットB_(2)の案内面であるが、ワーク把持装置Aの案内面として使用される。尚、図4に示すようにワークの一端は、研削盤B主軸ヘッド側に設けられたスクロールチャック28にチャッキングされる。
・・・長さの長いワークW_(2)では一端をチャッキングすると共に、他端側を自動心出し振れ止め装置Aで支承しなければならない。この場合には、ワーク把持装置Aをガイドレール1の上に載置し、左右のフレーム11、12の間隔を広げた状態でガイドレール1上をスライドさせ、ワークW_(2)の他端側(あるいは中間部)を把持し得る位置として位置決めした後に、クランプレバー29によりベッド上に固定する。
次に、ハンドル7を操作してフレーム11、12の間隔を狭め、4つのローラ17をワークW_(2)の外周面に圧接させる。各ローラ17の圧接力は、ねじ25により微調整可能であり、4つのローラ17がワークW_(2)を挟持したときに、ワークW_(2)の他端側(あるいは中間部)が心出しされるように調整しておく。上下のローラ17の間隔は調整ねじ22により加減できるので、ワークW_(2)の直径の大小に係わらず、ワークW_(2)を把持することができる。
前記した4つのローラ17は、ワークW_(2)の右側の上部と下部、ワークW_(2)の左側の上部と下部に圧接している。そして、また、スクロールチャック28と共にワークのW_(2)が回転すると、ワークのW_(2)に圧接する各ローラ17が回転しながら、ワークのW_(2)を支承する。その結果、ワークW_(2)は確実に振れ止めされる。もし、ワークのW_(2)の外周面の1ヵ所に僅かな高さの凸部がある場合、この凸部に当接するローラ17のみが凸部の高さだけ後退する。しかし、他の3つのローラ17は後退することなくワークのW_(2)に圧接しているので、把持能力が失われることはない。」
サ ここで、図面の図1を参照すると、ワークW_(2)の周方向に間隔をおいて4つのローラ17が配置されていることが見て取れる。
上記キないしコの摘記事項、及びサの認定事項より、引用例2には、次の事項が記載されていると認める。
「回転するワークの振れを吸収するワーク把持装置において、一端部がスクロールチャック28にチャッキングされたワークW_(2)の振れを吸収するために、ワークW_(2)の周方向に間隔をおいて回転可能に配設されワークW_(2)の周表面に圧設せしめられる4個のローラ17と該ローラ17をワークW_(2)の周表面に向けて付勢するコイルばねより成る付勢部材27が設けられた研削盤におけるワーク把持装置。」(以下「引用発明2」という。)
(3) 対比
補正発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「インゴット1」は、補正発明の「ポリシリコンロッド」に相当しており、以下同様に、「押圧装置12a?12d」は「把持手段」に、「駆動モータ9及びチェーン10」は「回転駆動手段」に、「ブレード3」は「切断手段」に、「インゴット固定棒5、固定治具6」は「把持片」に、「固定ネジ7」は「把持片偏倚手段」に、「調整する」ことは「偏倚する」ことにそれぞれ相当していることが明らかであるので、両者は次の「切断装置」で一致している。
「真直ではなくて湾曲を有し外径も均一ではなく変動する略円柱状の細長いポリシリコンロッドを切断するための切断装置にして、中心軸線を中心として回転自在に装着され、該中心軸線に沿って延在せしめられるロッドの一端部を把持する把持手段と、該把持手段を回転せしめるための回転駆動手段と、該中心軸線に対して実質上垂直な方向にロッドを切断するための切断手段とを具備し、該把持手段は、ロッドの周方向に間隔をおいて、ロッドの周表面に向かう方向及びロッドの周表面から離隔する方向に移動自在に配設された3個以上の把持片と、該把持片の各々をロッドの周表面に向けて偏倚するための把持片偏倚手段とを含む、切断装置。」
そして、両者は次の点で相違している。
<相違点1>
補正発明では、一端部が該把持手段に把持されたロッドの切断部の振動を抑制するための抑制手段を有し、該抑制手段は、ロッドの周方向に間隔をおいて回転自在に配設されロッドの周表面に当接せしめられる少なくとも3個のローラと、該ローラの少なくとも1個をロッドの周表面に向けて偏倚する偏倚手段とを含むのに対して、引用発明1では、そのような抑制手段について不明な点。
<相違点2>
把持片の各々に関して、補正発明では、「中心軸線方向及び周方向に湾曲せしめられていてロッドの周表面に実質上点接触せしめられる把持面を有し」ているのに対して、引用発明1では、把持面に相当するインゴット固定棒5の他端部がどのような形状になっているのか不明な点。
(4) 相違点の検討
上記相違点について検討する。
<相違点1>について
引用発明2は、一端部がチャッキング、すなわち把持手段に把持された回転するワークの振れを吸収するために、ワークの周方向に間隔をおいて回転可能に配設されワークの周表面に圧設せしめられる4個のローラと該ローラをワークの周表面に向けて付勢するコイルばねより成る付勢部材、すなわち、偏倚する偏倚手段が設けられたワーク把持装置である。ここで、引用発明2において、ワークは回転するものであるから、「ワークの振れを吸収する」ことは「ワークの振動を抑制する」と言えるものであることは明らかである。そうすると、引用発明2は、「一端部が把持手段に把持された回転するワークの振動を抑制するために、ワークの周方向に間隔をおいて回転可能に配設されワークの周表面に圧設せしめられる4個のローラと該ローラをワークの周表面に向けて偏倚する偏倚手段が設けられた研削盤におけるワーク把持装置」である。ここで、引用発明1も、引用発明2も、ともに一端部が回転自在に把持されたワークの加工装置であるから、引用発明2の「一端部が把持手段に把持された回転するワークの振動を抑制するために、ワークの周方向に間隔をおいて回転可能に配設されワークの周表面に圧設せしめられる4個のローラと該ローラをワークの周表面に向けて偏倚する偏倚手段を設ける」という構造を引用発明1に適用し、そのワークであるインゴット1の振動を抑制するために、インゴット1の周方向に間隔をおいて回転可能に4個のローラをインゴット1の周表面に圧設、即ち、当接せしめられるように配置するとともに、該ローラをインゴット1の周表面に向けて偏倚する偏倚手段を含めた抑制手段を設けるようにすることは、引用発明2を引用発明1に適用することにより当業者が容易になし得たものである。
<相違点2>について
ワークを支持する部材の先端を中心軸線方向及び周方向に湾曲せしめられた、すなわち、球面状になった、ワークの周表面に実質上点接触せしめられた把持面とすることは、平成19年3月23日付け拒絶理由通知に引用された実公平7-53848号公報(特に、図面の図7におけるボルト状支持ピン2の先端部を参照。)の他、例えば、特開平7-217616号公報(ボール23、あるいは接触ボール4を参照。)に記載されているように周知の事項であるから、引用発明1においても、そのワークであるインゴット1の押圧装置12a?12dを、インゴット固定棒5や固定治具6に代えて先端が球面状の部材を用いること、すなわち、中心軸線方向及び周方向に湾曲せしめられる形状を有する部材を用い、インゴット1を把持することは、当業者が容易になし得たものである。
<作用・効果>について
作用ないし効果についても、引用発明1、引用発明2、及び上記周知の事項から予測し得る程度のものであって格別のものではない。
したがって、補正発明は、引用発明1、引用発明2、及び上記従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 むすび
以上のとおりであるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、この出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、願書に添付された明細書及び図面の記載からみて、上記第2の1の(1)の補正前の請求項1に示したとおり、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。
2 引用例記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された上記引用例には、上記第2の2の(2)に示したとおりの事項が記載されている。
3 対比・判断
本願発明は、上記第2の2で述べたとおり、補正発明の発明特定事項から、上記限定事項が省かれたものである。
そうすると、上記第2の2の(4)で検討したとおり、補正発明は、引用発明1、引用発明2、及び上記従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、補正発明の発明特定事項から上記限定事項が省かれた本願発明についても、同様の理由により、引用発明1、引用発明2、及び上記従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、引用発明2、及び上記従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2ないし3について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-13 
結審通知日 2009-02-17 
審決日 2009-03-02 
出願番号 特願2002-132355(P2002-132355)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B28D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 栗田 雅弘金澤 俊郎  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 尾家 英樹
鈴木 孝幸
発明の名称 切断装置  
代理人 奥貫 佐知子  
代理人 小野 尚純  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ