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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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不服200520859 | 審決 | 特許 |
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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K |
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管理番号 | 1195985 |
審判番号 | 不服2005-20856 |
総通号数 | 114 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-06-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-10-27 |
確定日 | 2009-04-09 |
事件の表示 | 特願2002- 48740「美白化粧料」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 9月 2日出願公開、特開2003-246709〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯、本願発明 本願は、平成14年2月25日に出願されたものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、願書に添付した明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】(A)ジオスコリア・コンポジータ(Dioscorea composita)から得られる抽出物と、(B)薬効成分として、センブリエキス、ジイソプロピルアミンジクロロアセテート、γ-アミノ酪酸、γ-アミノ-β-ヒドロキシ酪酸及びその塩からなる群より選択される1種又は2種以上とを含有することを特徴とする美白化粧料。」 2.引用例 これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前の刊行物である、特開平9-221439号公報(以下、「引用例A」という。)、特開平8-133959号公報(以下、「引用例B」という。)、特開2000-119160号公報(以下、「引用例C」という。)、特開平10-194954号公報(以下、「引用例D」という。)、及び特開平11-246384号公報(以下、「引用例E」という。)には、次のような技術事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。 [引用例A] (A-1)「【請求項5】式I: 【化3】(構造式略) [式中、R^(1)?R^(4)はそれぞれ独立にHまたは-CORを示し、Rは1?20個の炭素原子を有するアルキル基を示す]で表わされるハイドロカルコン誘導体の製造方法であって、 ジオスコリア・コンポジータを抽出溶媒と接触させて、該抽出溶媒中に前記ハイドロカルコン誘導体を含む抽出物を得る工程を有することを特徴とするハイドロカルコン誘導体の製造方法。 【請求項6】請求項5に記載の製造方法で得られた抽出物を配合したことを特徴とする化粧料。」(特許請求の範囲の請求項5?6、2頁1?2欄) (A-2)「【0007】…ジオスコリア・コンポジータ(Dioscorea composita)より得られる抽出物に高いチロシナーゼ活性阻害効果を見い出し、かつこれら抽出物は皮膚安全性が高く、各種化粧料に配合したときも保存安定性が充分であることを見出した。」(段落【0007】、3頁4欄46?50行) (A-3)「【0019】上記式Iのハイドロカルコン誘導体を有効成分として化粧料を調製する場合、該誘導体としては化学合成されたものが利用できるが、主として中央アメリカやインドで自生または栽培されているヤマノイモ科、ジオスコリア属の植物であるジオスコリア・コンポジータ(Dioscorea composita)から抽出された1,3-ビス(2,4-ジヒトロキシフェニル)プロパン及びその誘導体を用いることができる。 【0020】その抽出物を得るための溶媒としては、一般的には水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3ブチレングリコール等の多価アルコール類、アセトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、ジエチルエーテル等のエーテル類およびベンゼン等の芳香族化合物の一種または二種以上の混合物が使用される。」(段落【0019】【0020】、5頁7欄4?19行) (A-4)「【0027】また、本発明の化粧料には、タール系色素、酸化鉄などの着色顔料、パラベンなどの防腐剤、脂肪酸セッケン、セチル硫酸ナトリウム、N-ステアロイル-L-グルタミン酸ナトリウムなどの陰イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどの非イオン界面活性剤、テトラアルキルアンモニウム塩などの陽イオン界面活性剤、ベタイン型、スルホベタイン型、スルホアミノ酸型、などの両性界面活性剤、レシチン、リゾフォスファチジルコリンなどの天然系界面活性剤、酸化チタンなどの顔料、ジブチルヒドロキシトルエンなどの抗酸化剤、キレート剤、各種ビタミン、水、アルコール、紫外線吸収剤、香料、防腐剤、油分、湿潤剤、保湿剤、増粘剤、各種アミノ酸、各種動植物抽出エキスなどを、本発明の目的を達成する範囲内で適宜配合することができる。さらに、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、コウジ酸、アルブチンといった美白成分も配合することができる。」(段落【0027】、5頁8欄15?34行) (A-5)ジオスコリア・コンポジータの水/エタノール(1:1、容量比)抽出物I、及びジオスコリア・コンポジータの酢酸エチル抽出物IIを製造し、並びにこれらの抽出物を配合した二相型ローション(実施例1?4)、スキンクリーム(実施例5?8)が、チロシナーゼ活性阻害試験、皮膚色明度回復試験、及び美白実用試験において良好な結果を示した旨。(段落【0029】?【0045】、5頁8欄39行?9頁15欄27行) [引用例B] (B-1)「【請求項1】血清除蛋白物、炭素数2から18のα-ヒドロキシカルボン酸、センブリエキス、ビタミンE-ニコチネート、ジイソプロピルアミンジクロロアセテート、γ-アミノ酪酸、γ-アミノ-β-ヒドロキシ酪酸およびその塩からなる群から選択された少なくとも一種と、バラ科ピラカンタ属(Rosaceae Pyracantha)の一種である中国名「火棘」(Pyracantha fortuneana)の果実の溶媒抽出物を含有する皮膚化粧料。」(特許請求の範囲の請求項1、2頁1欄2?10行) (B-2)「【0004】中国名「火棘」の果実は漢方名「赤陽子」として、脾臓を健やかに保つ、消化不良の治療等の薬効を持つことが知られている。また、さらに、これはチロシナーゼ活性阻害効果やメラニン生成抑制効果を持ち、この抽出物を配合した美白用化粧料が提案されている(特開平5-58870号公報)。しかし、これを単独で配合したものは、チロシナーゼ活性阻害効果、メラニン生成抑制効果はみとめられるが、肌荒れ防止効果、角質改善効果、老化防止効果は認められない。このように、色黒の皮膚を予防し、色黒の皮膚を速やかに淡色化し、すぐれた肌荒れ防止効果、角質改善効果、老化防止効果及び美肌効果を発現し、皮膚を健やかに保つことのできる皮膚化粧料はまだ開発されていないというのが実状である。 【0005】…血清除蛋白物、炭素数2から18のα-ヒドロキシカルボン酸、センブリエキス、ビタミンE-ニコチネート、ジイソプロピルアミンジクロロアセテート、γ-アミノ酪酸、γ-アミノ-β-ヒドロキシ酪酸およびその塩から選ばれる1種又は2種以上と、バラ科ピラカンタ属の一種である中国名「火棘」の果実の溶媒抽出物を含有する皮膚化粧料は、<1>表皮に存在するメラニンを速やかに排除し、<2>新たに皮膚内にメラニンが生成することを抑制するなど、優れた美白効果を有し、血行促進作用又は細胞賦活作用を有する成分と火棘からの抽出物中に含まれる保湿成分の相乗作用により、優れた肌荒れ防止効果、角質改善効果、老化防止効果及び美肌効果を発現することを見出し…」(段落【0004】【0005】、2頁1欄35行?同頁2欄12行) (B-3)実施例1?15、比較例1?13が示されているところ、比較例5の火棘抽出物を配合せず、センブリエキス10.0%を配合するスキンクリーム、比較例13の火棘抽出物を1.0%配合し、センブリエキスなどを配合しないスキンクリーム、実施例5の火棘抽出物を0.005%配合し、センブリエキス10.0%を配合するスキンクリームについて、官能試験美白効果(被験者20名中の美白効果が感じられた人数)が順に8,10,17であり、皮膚色明度回復試験の評価(1?5の評価点の20名の平均)が順に2.0,3.3,4.0である旨。(段落【0028】?【0032】、4頁6欄30行?6頁10欄) [引用例C] (C-1)「【請求項1】炭素原子数2から18のα-ヒドロキシカルボン酸、センブリエキス、ビタミンE-ニコチネート、ジイソプロピルアミンジクロロアセテート、γ-アミノ酪酸、γ-アミノ-β-ヒドロキシ酪酸およびその塩からなる群から選択された少なくとも一種と、下記一般式 【化1】 (但し、式中Rは単糖類、二糖類の残基から選ばれる基である。)で表される配糖体を含有することを特徴とする皮膚化粧料。」(特許請求の範囲の請求項1、2頁1欄2?16行) (C-2)「【0004】上記一般式1の配糖体は高い安全性を有するメラニン生成抑制剤として知られており、これを配合した美白用化粧料が提案されている(特開平10-17462号公報)。しかし、単独で配合した場合、十分な効果を得られるまでに長期を有した。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、上記の欠点を解消すべく鋭意検討を行った結果、炭素原子数2から18のα-ヒドロキシカルボン酸、センブリエキス、ビタミンE-ニコチネート、ジイソプロピルアミンジクロロアセテート、γ-アミノ酪酸、γ-アミノ-β-ヒドロキシ酪酸およびその塩からなる群から選択された少なくとも一種、または、米あるいは米の精製残渣である米糠を溶媒で抽出し、その抽出物をさらに酵素で処理してなる分解物と特定の配糖体を含有する皮膚化粧料は、表皮に存在するメラニンを速やかに排除し、新たに皮膚内にメラニンが生成することを抑制するなど、優れた美白効果を有し、さらに優れた肌荒れ防止効果、老化防止効果および美肌効果を発現することを見出し、本発明を完成した。」(段落【0004】【0005】、2頁1欄43行?同頁2欄12行) (C-3)実施例1?10、比較例1?10が示されているところ、比較例5の配糖体を配合せず、センブリエキス3.0%を配合するスキンクリーム、比較例10の配糖体10.0%配合し、センブリエキスなどを配合しないスキンクリーム、実施例5の配糖体を10.0配合し、センブリエキス3.0%を配合するスキンクリームについて、官能試験美白効果(被験者20名中の美白効果が感じられた人数)が順に11,13,18であり、皮膚色明度回復試験の評価(1?5の評価点の20名の平均)が順に2.8,3.5,4.4である旨。(段落【0051】?【0055】、6頁10欄7行?8頁14欄) [引用例D] (D-1)「【請求項1】センブリエキス,ビタミンE-ニコチネート,ジイソプロピルアミンジクロロアセテート,γ-アミノ酪酸,γ-アミノ-β-ヒドロキシ酪酸およびその塩、胎盤抽出液、炭素数2から18であるα-ヒドロキシカルボン酸、メバロン酸、メバロン酸ラクトンからなる群から選択された少なくとも一種と、下記一般式(1)及び(2)で表されるビフェニル化合物から選ばれる少なくとも一種を含有する皮膚化粧料。 【化1】 (但し、R^(1)はCH_(3)、C_(2)H_(5)、C_(3)H_(7)、CH_(2)OH、C_(3)H_(6)OH、CH_(2)CH=CH_(2)の置換基である) 【化2】 (但し、R^(2)は、水素原子もしくは炭素数1から8の直鎖又は分岐鎖状の飽和炭化水素基である)」(特許請求の範囲の請求項1、2頁1欄2?30行) (D-2)「【0004】…特定のビフェニル化合物にはチロシナーゼ活性阻害効果やメラニン生成抑制効果があることが知られている(特開平6-145040号公報、特開平7-25743号公報)。しかし、これを単独で配合した場合も、美白効果は満足できるものではなかった。 【0005】…血行促進作用又は細胞賦活作用を有する成分であるセンブリエキス,ビタミンE-ニコチネート,ジイソプロピルアミンジクロロアセテート,γ-アミノ酪酸,γ-アミノ-β-ヒドロキシ酪酸およびその塩,胎盤抽出液、炭素数2から18であるα-ヒドロキシカルボン酸、メバロン酸、メバロン酸ラクトンから選ばれる少なくとも一種と、特定のビフェニル化合物の少なくとも一種を含有する皮膚化粧料が、紫外線障害によるメラニン生成を抑制すると共にメラニン色素の排泄を促し、相乗的に優れた美白効果を発現し、さらには表皮の乾燥を防ぎ、皮膚の代謝を促進し、紫外線障害による皮膚の老化を防ぐなど、優れた肌荒れ防止効果、老化防止効果及び美肌効果を発現することを見出し…」(段落【0004】【0005】、2頁2欄3?21行) (D-3)実施例1?19、比較例1?21が示されているところ、比較例5のビフェニル化合物を配合せず、センブリエキス10.0%を配合するスキンクリーム、比較例21のビフェニル化合物7を0.5%配合し、センブリエキスなどを配合しないスキンクリーム、実施例5のビフェニル化合物5を3.0%配合し、センブリエキス10.0%配合するスキンクリームについて、官能試験美白効果(被験者20名中の美白効果が感じられた人数)が順に13,12,17であり、皮膚色明度回復試験の評価(1?5の評価点の20名の平均)が順に3.2,3.3,4.0である旨。(段落【0032】?【0037】、5頁8欄4行?7頁12欄) [引用例E] (E-1)「【請求項1】トルメンチラ、センブリ、ジオウ、及びセイヨウハッカからなる群より選ばれる植物の抽出物の一種以上を有効成分とする美白剤。 【請求項2】更にアスコルビン酸もしくはその誘導体又は胎盤抽出物の一種以上を含有する請求項1記載の美白剤。」(特許請求の範囲の請求項1?2、2頁1欄2?7行) (E-2)「【0002】…シミやソバカスは、一般に皮膚の紫外線暴露による刺激、ホルモンの異常又は遺伝的要素等によってメラノサイトが活性化され、その結果、メラノサイトで合成されたメラニン色素が皮膚内に異常沈着して発生する。シミ、ソバカスの治療には、従来、L-アスコルビン酸もしくはその誘導体、ハイドロキノン誘導体、コウジ酸もしくはその誘導体、胎盤抽出物等のメラニン抑制効果を有するものが使用されている。 【0003】…しかしながら、これらの物質はいずれもメラニン抑制効果が微弱であるため、それぞれの化粧料への単独配合では十分な美白効果及びシミ、ソバカス防止効果が得られなかった。… … 【0005】…特定の植物の抽出物を有効成分とする美白剤が、十分な美白効果とシミ、ソバカス防止効果とを示すことを見出し、… 【0006】…本発明は、トルメンチラ、センブリ、ジオウ、及びセイヨウハッカからなる群より選ばれる植物の抽出物の一種以上を有効成分とする美白剤を提供するものである。 【0007】…本発明に使用される植物は、トルメンチラ(Potentilla tormentilla vulgaris L.)、センブリ(Swertia japonica(Schult.)Makino)、ジオウ(Rehmannia glutinosa Libosch.)、及びセイヨウハッカ(Mentha piperita L.)からなる群より選ばれるものである。このうちセンブリは発毛、育毛剤等として、またジオウは発毛、育毛剤、皮膚疾患治療薬、皮膚弾力性回復剤等として知られている。しかしながらこれらの植物が美白効果を有することは全く知られていなかった。」(段落【0002】【0003】【0005】【0006】【0007】、2頁1欄14?27行、同頁32?49行) (E-3)「【0011】本発明においては、更にアスコルビン酸もしくはその誘導体又は胎盤抽出物の一種以上を用いることにより、美白効果を一層向上できる。」(段落【0011】、2頁2欄30?32行) (E-4)実施例1?10,比較例1?7が示されているところ、実施例2のセンブリ抽出物(固形分 1.34w/v%)を1.0重量%配合したクリーム、比較例2のL-アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム1.0重量%単独配合のクリーム、比較例6の牛胎盤抽出物1.0重量%単独配合のクリーム、実施例6,10のセンブリ抽出物(固形分 1.34w/v%)1.0重量%に加えてL-アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム又は牛胎盤抽出物1.0重量%をさらに配合したクリーム、についてUV-B誘導色素斑に対する美白効果試験についての評価点(評価点1?4の20名の平均値)が、順に1.95,1.35,1.35,2.50,2.50である旨。(段落【0019】?【0025】、3頁3欄33行?4頁6欄4行) 3.対比、判断 引用例Aには、前記「2.」の摘示(A-1)からみて、次の発明(以下、「引用例A発明」という。)が記載されていると認められる。 「ジオスコリア・コンポジータを抽出溶媒と接触させて得られる抽出物を配合したことを特徴とする化粧料。」 そこで、本願発明と引用例A発明とを対比する。 (a)各種植物の抽出物を抽出溶媒と接触させて得ることは、通常の技術事項であり、本願明細書には、「ジオスコリア・コンポジータ(Dioscorea composita)から抽出物を得るための溶媒としては、一般的には水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等の多価アルコール類、アセトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、ジエチルエーテル等のエーテル類及びベンゼン等の芳香族化合物の1種又は2種以上の混合物が使用される。」(段落【0013】)と記載され、他方、引用例Aに、「抽出物を得るための溶媒としては、一般的には水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3ブチレングリコール等の多価アルコール類、アセトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、ジエチルエーテル等のエーテル類およびベンゼン等の芳香族化合物の一種または二種以上の混合物が使用される。」(摘示事項(A-3))と記載されていて、両者の抽出溶媒は同一のものである。 (b)本願発明の(B)薬効成分として、「(B)薬効成分として、センブリエキス、ジイソプロピルアミンジクロロアセテート、γ-アミノ酪酸、γ-アミノ-β-ヒドロキシ酪酸及びその塩からなる群より選択される1種又は2種以上」の選択群のうち、「センブリエキス」を選択した場合について、以下、対比・検討する。 そうすると、本願発明と引用例A発明は、 「ジオスコリア・コンポジータから得られる抽出物を含有することを特徴とする化粧料」で一致し、以下の相違点1,2で相違する。 <相違点> 1.化粧料に関し、本願発明では、美白化粧料と特定しているのに対し、引用例A発明では、そのように特定していない点 2.本願発明では、更に薬効成分としてセンブリエキスを含有すると特定しているのに対し、引用例A発明では、そのように特定していない点 そこで、これらの相違点について検討する。 <相違点1>について 引用例Aには、ジオスコリア・コンポジータの水/エタノール(1:1、容量比)抽出物I、及びジオスコリア・コンポジータ酢酸エチル抽出物II、並びにこれらの抽出物を配合した二相型ローション(実施例1?4)、スキンクリーム(実施例5?8)が、チロシナーゼ活性阻害試験、皮膚色明度回復試験、及び美白実用試験において良好な結果を示したことが記載(摘示事項(A-5))されているから、引用例Aにはジオスコリア・コンポジータを抽出溶媒と接触させて得られる抽出物を配合した美白化粧料が実質的に記載されている。 したがって、相違点1は、実質的な相違点ではない。 <相違点2>について ところで、「センブリエキス」について、引用例B?引用例Eでの記載(前記「2.」の摘示を参照)を検討すると、以下の事項が記載されている。 引用例Bには、「火棘」の果実抽出物は、チロシナーゼ活性阻害効果やメラニン生成抑制効果を持ち、この抽出物を配合した美白用化粧料が提案されていること、及び、更にセンブリエキスを配合したものは、美白効果が向上することが記載されている。 引用例Cには、一般式1の配糖体は、高い安全性を有するメラニン生成抑制剤として知られており、これを配合した美白用化粧料が提案されていること、及び、単独で配合した場合、十分な効果を得られるまでに長期を有したが、センブリエキスと一般式1の特定の配糖体を含有する皮膚化粧料は、表皮に存在するメラニンを速やかに排除し、新たに皮膚内にメラニンが生成することを抑制するなど、優れた美白効果を有し、さらに優れた肌荒れ防止効果、老化防止効果および美肌効果を発現することが記載されている。 引用例Dには、特定のビフェニル化合物は、チロシナーゼ活性阻害効果やメラニン生成抑制効果があることが知られている(即ち美白効果が期待される)こと、及び、これを単独で配合した場合も、美白効果は満足できるものではなかったが、センブリエキスと特定のビフェニル化合物の少なくとも一種を含有する皮膚化粧料が、紫外線障害によるメラニン生成を抑制すると共にメラニン色素の排泄を促し、相乗的に優れた美白効果を発現し、さらには表皮の乾燥を防ぎ、皮膚の代謝を促進し、紫外線障害による皮膚の老化を防ぐなど、優れた肌荒れ防止効果、老化防止効果及び美肌効果を発現することが記載されている。 引用例Eには、センブリは発毛、育毛剤等として知られていること(センブリ抽出物が薬効成分であることに相当)、及び「センブリの抽出物を有効成分とする美白剤。」について、「シミ、ソバカスの治療には、従来、L-アスコルビン酸もしくはその誘導体、ハイドロキノン誘導体、コウジ酸もしくはその誘導体、胎盤抽出物等のメラニン抑制効果を有するものが使用されているが、これらの物質はいずれもメラニン抑制効果が微弱であるため、それぞれの化粧料への単独配合では十分な美白効果及びシミ、ソバカス防止効果が得られなかった」が、「センブリの抽出物を有効成分とする美白剤が、十分な美白効果とシミ、ソバカス防止効果とを示すことを見出し、更にアスコルビン酸もしくはその誘導体又は胎盤抽出物の一種以上を用いることにより、美白効果を一層向上できることが記載されている。 これら、引用例B?引用例Eの記載からみて、センブリの抽出物は、薬効成分であって、それ自身が美白成分であるばかりでなく、単独では十分な美白作用を有しない美白成分に配合することにより、表皮に存在するメラニンを速やかに排除し、新たに皮膚内にメラニンが生成することを抑制するなど、優れた美白効果を有すること((摘示事項(B-2))、(C-2))、紫外線障害によるメラニン生成を抑制すると共にメラニン色素の排泄を促し、相乗的に優れた美白効果を有すること(摘示事項(D-2))、及び美白効果を一層向上できること((摘示事項(E-3))が本願出願前に明らかである。 他方、引用例Aには、「本発明の化粧料には、各種植物抽出エキスなどを、本発明の目的を達成する範囲内で適宜配合することができる。さらに、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、コウジ酸、アルブチンといった美白成分も配合することができる。」(摘示事項(A-4))と記載されている。 してみれば、引用例A発明において、上記引用例B乃至引用例Eの記載事項を参酌し、一層の美白効果を期待して、薬効成分としてセンブリエキスを配合することは当業者であれば容易になし得ることである。 以上のとおり、上記相違点にかかる構成は当業者が容易に想到し得る程度のものと認められ、それらの相違点に係る発明特定事項によって格別予想外の作用効果を奏しているとも認められない。 この点に対し、審判請求人は、審判請求理由(平成17年11月25日付けの手続補正書(「(3)本願発明と引用文献との対比」の項)において、化粧料の分野において、複数の成分を組み合わせて、単独で用いた場合に比してより大きい効果を得ようとすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである」ことを認めつつ、実際、組合わせたことによって得られる効果は、単に相加的な効果であったり、また相加的な効果すら得られない場合が殆どであり、特に化粧料に配合される植物抽出物の種類は、非常に多数あり、その中より、期待する効果が得られるものを見出すことは、容易なことではなく、美白成分としてジオスコリア・コンポジータ抽出物を選択し、センブリエキス、ジイソプロピルアミンジクロロアセテート、γ-アミノ酪酸、γ-アミノ-β-ヒドロキシ酪酸及びその塩からなる群より選択される1種又は2種以上と組み合わせた場合に得られる効果は、それぞれ単独で配合した場合に得られる効果と比して極めて大きな効果であり、またジオスコリア・コンポジータ抽出物に代えて、他の美白作用を有する成分を用いたとしても、必ずしも優れた効果が得られるという訳ではないことから、本願発明の効果は、当業者が予想できる範囲を超えるものである旨、及び、ジオスコリア・コンポジータ抽出物に代えて、美白作用を有することが知られていたカミツレ抽出物を用いた比較実験例に示すように、本願発明の効果は、ジオスコリア・コンポジータ抽出物と、センブリエキス、ジイソプロピルアミンジクロロアセテート、γ-アミノ酪酸、γ-アミノ-β-ヒドロキシ酪酸及びその塩からなる群より選択される1種又は2種以上という特定の組合せにより得られる格別顕著なものであり、当業者が予測し得るものではない旨を主張している。 しかし、センブリエキスを各種植物抽出物をはじめとする各種の美白成分と併用することによりその美白作用を高めることが、引用例B?引用例Eにより本願出願前に明らかであることからみて、センブリエキスを併用することの動機付けはあり、その美白効果の向上(相乗効果)も期待されるものであるから、例え、美白効果のあるカミツレ抽出物との併用において向上の程度がいくらか小さい場合の一例があったとしても、既に化粧料の美白成分として用いられているジオスコリア・コンポジータ(Dioscorea composita)から得られる抽出物にセンブリエキスを併用することによる効果の程度を確認することが阻害されるなどの格別の困難性があるとは認められないから、前記請求人の主張は採用できない。 よって、本願発明は、引用例A発明と引用例B乃至引用例Eの記載に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。 4.むすび したがって、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-02-04 |
結審通知日 | 2009-02-10 |
審決日 | 2009-02-23 |
出願番号 | 特願2002-48740(P2002-48740) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小松 円香 |
特許庁審判長 |
川上 美秀 |
特許庁審判官 |
谷口 博 弘實 謙二 |
発明の名称 | 美白化粧料 |
代理人 | 伊藤 健 |