• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200423946 審決 特許
不服200612259 審決 特許

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1195987
審判番号 不服2005-20859  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-10-27 
確定日 2009-04-09 
事件の表示 特願2002- 48737「美白化粧料」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 9月 2日出願公開、特開2003-246722〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本願発明
本願は、平成14年2月25日に出願されたものであって、その請求項1?2に係る発明は、平成17年6月27日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】(A)ジオスコリア・コンポジータ(Dioscorea composita)から得られる抽出物と、(B)甘草(Glycyrrhiza glaba Linne Var.)、モモ(Prunus persica Batsch)、茶(Thea sinensis)、ツバキ(Camelliajaponica L.)、ジオウ(Rehmannia glutinosa Libosch.)、オトギリソウ(Hypericum erectum Thunb.又はHypericum perforatum L.)及びビワ(Eriobotryajaponica)から得られる植物抽出物からなる群より選択される1種又は2種以上とを含有することを特徴とする美白化粧料。」

2.引用例
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前の刊行物である、特開平9-221439号公報(以下、「引用例A」という。)、特開2000-119156号公報(以下、「引用例B」という。)、及び特開平10-194959号公報(以下、「引用例C」という。)には、次のような技術事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。

[引用例A]
(A-1)「【請求項5】式I:
【化3】(構造式略)
[式中、R^(1)?R^(4)はそれぞれ独立にHまたは-CORを示し、Rは1?20個の炭素原子を有するアルキル基を示す]で表わされるハイドロカルコン誘導体の製造方法であって、
ジオスコリア・コンポジータを抽出溶媒と接触させて、該抽出溶媒中に前記ハイドロカルコン誘導体を含む抽出物を得る工程を有することを特徴とするハイドロカルコン誘導体の製造方法。
【請求項6】請求項5に記載の製造方法で得られた抽出物を配合したことを特徴とする化粧料。」(特許請求の範囲の請求項5?6、2頁1?2欄)
(A-2)「【0007】…ジオスコリア・コンポジータ(Dioscorea composita)より得られる抽出物に高いチロシナーゼ活性阻害効果を見い出し、かつこれら抽出物は皮膚安全性が高く、各種化粧料に配合したときも保存安定性が充分であることを見出した。」(段落【0007】、3頁4欄46?50行)
(A-3)「【0019】上記式Iのハイドロカルコン誘導体を有効成分として化粧料を調製する場合、該誘導体としては化学合成されたものが利用できるが、主として中央アメリカやインドで自生または栽培されているヤマノイモ科、ジオスコリア属の植物であるジオスコリア・コンポジータ(Dioscorea composita)から抽出された1,3-ビス(2,4-ジヒトロキシフェニル)プロパン及びその誘導体を用いることができる。
【0020】その抽出物を得るための溶媒としては、一般的には水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3ブチレングリコール等の多価アルコール類、アセトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、ジエチルエーテル等のエーテル類およびベンゼン等の芳香族化合物の一種または二種以上の混合物が使用される。」(段落【0019】【0020】、5頁7欄4?19行)
(A-4)「【0027】また、本発明の化粧料には、タール系色素、酸化鉄などの着色顔料、パラベンなどの防腐剤、脂肪酸セッケン、セチル硫酸ナトリウム、N-ステアロイル-L-グルタミン酸ナトリウムなどの陰イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、多価アルコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどの非イオン界面活性剤、テトラアルキルアンモニウム塩などの陽イオン界面活性剤、ベタイン型、スルホベタイン型、スルホアミノ酸型、などの両性界面活性剤、レシチン、リゾフォスファチジルコリンなどの天然系界面活性剤、酸化チタンなどの顔料、ジブチルヒドロキシトルエンなどの抗酸化剤、キレート剤、各種ビタミン、水、アルコール、紫外線吸収剤、香料、防腐剤、油分、湿潤剤、保湿剤、増粘剤、各種アミノ酸、各種動植物抽出エキスなどを、本発明の目的を達成する範囲内で適宜配合することができる。さらに、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、コウジ酸、アルブチンといった美白成分も配合することができる。」(段落【0027】、5頁8欄15?34行)
(A-5)ジオスコリア・コンポジータの水/エタノール(1:1、容量比)抽出物I、及びジオスコリア・コンポジータの酢酸エチル抽出物IIを製造し、並びにこれらの抽出物を配合した二相型ローション(実施例1?4)、スキンクリーム(実施例5?8)が、チロシナーゼ活性阻害試験、皮膚色明度回復試験、及び美白実用試験において良好な結果を示した旨。(段落【0029】?【0045】、5頁8欄39行?9頁15欄27行)

[引用例B]
(B-1)「【請求項1】次の成分(A)、(B)及び(C);
(A)美白剤
(B)ブクリョウ、ニンジン、オタネニンジン、アルテア、アルニカ、アロエ、イラクサ、ウイキョウ、ウイッチヘーゼル、ウコン、コガネバナ、キハダ、オトギリソウ、イネ、イブキトラノオ、カミツレ、カワラヨモギ、キウイ、キュウリ、スイカズラ、クララ、ブドウ、クチナシ、クレソン、コンフリー、サボンソウ、サボテン、サンザシ、ジオウ、シソ、シャクヤク、シラカバ、スギナ、ボダイジュ、サルビア、センブリ、センキュウ、クワ、ダイズ、タチジャコウソウ、トウキ、トウキンセンカ、ドクダミ、ナツメ、ニワトコ、パセリ、ハトムギ、ブッチャーズブルーム、ヘチマ、ガマ、ホップ、マロニエ、メリッサ、モモ、ユキノシタ、キイチゴ、ラベンダー、レンゲ、バラ、ノイバラ、ローズマリー、カンゾウ、チャ、ユリ、オオムギ、コムギ、アシタバ、アンズ、カラスムギ、トウモロコシ、ゼニアオイ、ムラサキ、トウガラシ、ショウガ、レタス、レモン、マルメロ、オレンジ、イチゴ、ベニバナ、ブナ、ゲンチアナ、リンドウ、ハッカ、ミドリハッカ、セイヨウハッカ、ムクロジ、ユーカリ、ウスベニアオイ、クマザサ、ウスバサイシン、ケイリンサイシン、オドリコソウ、ゴボウ、ニンニク、ハウチマメ、イナゴマメ、マツ、キヅタ、ヤグルマソウ、ワレモコウ、コボタンヅル、シモツケ、アボカド、トウチュウカソウ、カイソウ、グレープフルーツ、プルーン、ライム、ゲンノショウコ、シイタケ、オノニス、トルメンチラ、ユズ、オウレン、ヒノキ、ボタン、オオバジャノヒゲ、オリーブ、ヒマワリ、ホホバ、マカデミアナッツ、メドゥホーム、ツバキ、アーモンド、カカオ、ゴマ、シア、ボラージから選ばれる一種又は二種以上の植物抽出物
(C)抗炎症剤、抗酸化剤から選ばれる一種又は二種以上を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項2】美白剤がアスコルビン酸及びその誘導体並びにそれらの塩、システイン及びその誘導体並びにその塩、グラブリジン、グラブレン、リクイリチン、イソリクイリチン、胎盤抽出物、ハイドロキノン及びその誘導体、レゾルシン及びその誘導体、グルタチオンから選ばれる一種又は二種以上である請求項1記載の皮膚外用剤。
【請求項3】抗炎症剤が、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸及びそれらの誘導体並びにそれらの塩、メフェナム酸、フェニルブタゾン、インドメタシン、イブプロフェン、ケトプロフェン、アラントイン、グアイアズレン、パンテノール及びその誘導体並びにそれらの塩、ε-アミノカプロン酸、ジクロフェナクナトリウム、トラネキサム酸から選ばれる一種又は二種以上である請求項1記載の皮膚外用剤。
【請求項4】抗酸化剤が、ビタミンA類及びそれらの誘導体並びにそれらの塩、ビタミンB類及びそれらの誘導体並びにそれらの塩、ビタミンD類及びそれらの誘導体並びにそれらの塩、ビタミンE類及びそれらの誘導体並びにそれらの塩、ジブチルヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソールから選ばれる一種又は二種以上である請求項1記載の皮膚外用剤。」(特許請求の範囲の請求項1?4、2頁1欄2行?同頁2欄6行)
(B-2)「【0001】…本発明は、皮膚外用剤に関し、更に詳細には美白剤と特定の植物抽出物の一種又は二種以上と、抗炎症剤、抗酸化剤から選ばれる一種又は二種以上の薬効剤とを含有することにより、シミ、ソバカスの改善、皮膚のくすみ改善効果等、優れた美白効果を有する化粧品、外用医薬品等の皮膚外用剤に関するものであ…る。」(段落【0001】、3頁3欄2?11行)
(B-3)実施例16として、パルミチン酸L-アスコルビル(美白剤)とモモ抽出物を配合した洗浄料は、皮膚に適用することにより、くすみのない美しい肌にするものである旨(段落【0084】?【0086】、20頁38欄5行?31行)
(B-4)「【0087】…本発明によれば、美白剤と特定の植物抽出物と、抗炎症剤及び/又は抗酸化剤、…を含有することにより、美白剤の本来有する性能を十分に発揮させることができる。すなわち、色素沈着に高い抑制効果を発揮し、日やけ等による皮膚の黒化、シミ、ソバカスの防止・改善や皮膚のくすみ改善等に有効である。従って、本発明の皮膚外用剤は美容や医療において極めて有用なものである。」(段落【0087】、20頁38欄34?41行)

[引用例C]
(C-1)「【請求項1】オウゴン(Scutellaria baicalensis Georgi(Labiatate))、甘草(Glycyrrhizaglabra Linne及びGlycyrrhiza uralensisFisher(Legminosae))、キダチアロエ〔Aloe arborescens Miller(Liliaceae)〕、茶〔Thea sinesis Linne(Theaceae〕)の実、ツバキ〔Camellia japonica Linne(Theaceae)〕の種子から得られる抽出物、酵母及び/又は酵母抽出物から選ばれる少なくとも1種と、下記一般式(1)及び(2)で表されるビフェニル化合物から選ばれる少なくとも一種を含有する皮膚化粧料。
【化1】

(但し、R^(1) はCH_(3)、C_(2)H_(5)、C_(3)H_(7)、CH_(2)OH、C_(3)H_(6)OH、CH_(2)CH=CH_(2)の置換基である)
【化2】

(但し、R^(2) は水素原子、もしくは炭素数1から8の直鎖又は分岐鎖状の飽和炭化水素基である)」(特許請求の範囲の請求項1、2頁1欄2?35行)
(C-2)「【0004】…あるビフェニル化合物にはチロシナーゼ活性阻害効果やメラニン生成抑制効果があることが知られている(特開平6-145040号公報、特開平7-25743号公報)。しかし、これを単独で配合した場合も、美白効果は満足できるものではなかった。
【0005】そこで本発明者らは鋭意研究した結果、オウゴン、甘草、キダチアロエ、茶の実、ツバキの種子の抽出物、酵母及び/又は酵母抽出物から選ばれる少なくとも1種と、特定のビフェニル化合物の少なくとも1種を含有する皮膚化粧料は、紫外線障害によるメラニン生成を抑制すると共にメラニン色素の排泄を促し、相乗的に優れた美白効果を発現し、さらには表皮の乾燥を防ぎ、皮膚の代謝を促進し、紫外線障害による皮膚の老化を防ぐなど、優れた肌荒れ防止効果、老化防止効果及び美肌効果を発現することを見出し、本発明を完成するに至った。」(段落【0004】、2頁2欄8?23行)
(C-3)試験データにより、比較例2,4,5で甘草エキス、茶の実エキス、ツバキ種子エキスを単独配合し、比較例8,9でビフェニル化合物を単独配合したスキンクリームがある程度の皮膚色明度回復効果、美白効果を有するのに対し、実施例2,4,5,10,12でビフェニル化合物と甘草エキス、茶の実エキス、ツバキ種子エキスとの両者を配合したスキンクリームがより一層の皮膚色明度回復効果、美白効果を有することが示めされている。(段落【0035】?【0041】、5頁8欄5行?7頁12欄表3の次の行)

3.対比、判断
引用例Aには、前記「2.」の摘示(A-1)からみて、次の発明(以下、「引用例A発明」という。)が記載されていると認められる。
「ジオスコリア・コンポジータを抽出溶媒と接触させて得られる抽出物を配合したことを特徴とする化粧料。」

そこで、本願発明と引用例A発明とを対比する。
(a)各種植物の抽出物を抽出溶媒と接触させて得ることは、通常の技術事項であり、本願明細書には、「ジオスコリア・コンポジータ(Dioscorea composita)から抽出物を得るための溶媒としては、一般的には水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等の多価アルコール類、アセトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、ジエチルエーテル等のエーテル類及びベンゼン等の芳香族化合物の1種又は2種以上の混合物が使用される。」(段落【0013】)と記載され、他方、引用例Aに、「抽出物を得るための溶媒としては、一般的には水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3ブチレングリコール等の多価アルコール類、アセトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類、ジエチルエーテル等のエーテル類およびベンゼン等の芳香族化合物の一種または二種以上の混合物が使用される。」(摘示事項(A-3))と記載されていて、両者の抽出溶媒は同一のものである。
(b)本願発明の(B)成分として、「(B)甘草(Glycyrrhiza glaba Linne Var.)、モモ(Prunus persica Batsch)、茶(Thea sinensis)、ツバキ(Camelliajaponica L.)、ジオウ(Rehmannia glutinosa Libosch.)、オトギリソウ(Hypericum erectum Thunb.又はHypericum perforatum L.)及びビワ(Eriobotryajaponica)から得られる植物抽出物からなる群より選択される1種又は2種以上」の選択群のうち、「甘草(Glycyrrhiza glaba Linne Var.)、茶(Thea sinensis)、ツバキ(Camelliajaponica L.)から得られる植物抽出物からなる群より選択される1種又は2種以上」を選択した場合について、以下、対比・検討する。

そうすると、本願発明と引用例A発明は、
「ジオスコリア・コンポジータから得られる抽出物を含有することを特徴とする化粧料」で一致し、以下の相違点1,2で相違する。
<相違点>
1.化粧料に関し、本願発明では、美白化粧料と特定しているのに対し、引用例A発明では、そのように特定していない点
2.本願発明では、更に「甘草、茶、ツバキから得られる植物抽出物からなる群より選択される1種又は2種以上」を含有すると特定しているのに対し、引用例A発明では、そのように特定していない点

そこで、これらの相違点について検討する。

<相違点1>について
引用例Aには、ジオスコリア・コンポジータの水/エタノール(1:1、容量比)抽出物I、及びジオスコリア・コンポジータ酢酸エチル抽出物II、並びにこれらの抽出物を配合した二相型ローション(実施例1?4)、スキンクリーム(実施例5?8)が、チロシナーゼ活性阻害試験、皮膚色明度回復試験、及び美白実用試験において良好な結果を示したことが記載(摘示事項(A-5))されているから、引用例Aにはジオスコリア・コンポジータを抽出溶媒と接触させて得られる抽出物を配合した美白化粧料が実質的に記載されている。
したがって、相違点1は、実質的な相違点ではない。

<相違点2>について
ところで、「甘草、茶、ツバキから得られる植物抽出物からなる群より選択される1種又は2種以上」について、引用例B,引用例Cでの記載(前記「2.」の摘示を参照)を検討すると、以下の事項が記載されている。
引用例Bには、美白剤と、甘草、茶、及びツバキから得られる植物抽出物からなる群より選択される1種又は2種以上と、抗酸化剤を含有することにより、美白剤の本来有する性能を十分に発揮させることができる、即ち、色素沈着に高い抑制効果を発揮し、日やけ等による皮膚の黒化、シミ、ソバカスの防止・改善や皮膚のくすみ改善等に有効であることが記載されている。
引用例Cには、甘草、茶の実、及びツバキの種子から得られる植物抽出物からなる群から選ばれる少なくとも1種と、チロシナーゼ活性阻害効果やメラニン生成抑制効果があることが知られている特定のビフェニル化合物の少なくとも1種を含有する皮膚化粧料は、紫外線障害によるメラニン生成を抑制すると共にメラニン色素の排泄を促し、相乗的に優れた美白効果を発現することが記載されている。

そうすると、前記引用例B,Cの記載事項を合わせ勘案すると、甘草、茶、及びツバキから得られる植物抽出物からなる群より選択される1種又は2種以上と、各種の美白成分と組み合わせることにより、色素沈着に高い抑制効果を発揮し、日やけ等による皮膚の黒化、シミ、ソバカスの防止・改善や皮膚のくすみ改善等に有効であり、紫外線障害によるメラニン生成を抑制すると共にメラニン色素の排泄を促し、相乗的に優れた美白効果を発現することが、本願出願前に明らかである。
ところで、本願明細書には、「本発明に用いられる茶は、ツバキ科(Theaceae)チャ属(Thea)に属する植物で、具体的にはチャ(Thea sinensis)等が挙げられる。その抽出物としては、葉、実(種子の脱脂物が好ましい)等から得られるものが好ましい。…
本発明に用いられるツバキ(Camellia japonica L.)の抽出物としては、葉、実(種子の脱脂物が好ましい)等から得られるものが好ましい。」(段落【0026】【0027】)と記載され、本願発明の茶、又はツバキから得られる植物抽出物は、茶の実の抽出物、及びツバキの種子の抽出物を含むものであるから、引用例Bの「甘草、茶、及びツバキから得られる植物抽出物」や引用例Cの「甘草、茶の実、及びツバキの種子から得られる植物抽出物」と本願発明の「甘草、茶、ツバキから得られる植物抽出物」は、相違するものではない。
なお、本願明細書には、「本発明の美白化粧料には、…酸化防止剤…を、本発明の目的を達成する範囲内で適宜配合することができる。…前記酸化防止剤としては、例えばジブチルヒドロキシトルエン(BHT)…が挙げられる。」(段落【0031】【0045】)と記載されていて、抗酸化剤であるジブチルヒドロキシトルエンを配合してもよいことが記載され、引用例A及び引用例Bにも、「本発明の化粧料には、ジブチルヒドロキシトルエンなどの抗酸化剤を、本発明の目的を達成する範囲内で適宜配合することができる。」(摘示事項(A-4))、及び「抗酸化剤が、ジブチルヒドロキシトルエンである請求項1記載の皮膚外用剤。」(摘示事項(B-1))と記載され、抗酸化剤であるジブチルヒドロキシトルエンを配合してもよいことが記載されているから、BHTなどの酸化防止剤を配合するか否かは、相違点ではない。

一方、引用例Aには、「本発明の化粧料には、各種植物抽出エキスなどを、本発明の目的を達成する範囲内で適宜配合することができる。さらに、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、コウジ酸、アルブチンといった美白成分も配合することができる。」(摘示事項(A-4))と記載されている。
してみれば、引用例A発明において、引用例B及び引用例Cの記載事項を参酌し、一層の美白効果を期待して、甘草、茶、及びツバキから得られる植物抽出物からなる群より選択される1種又は2種以上を配合することは当業者であれば容易になし得ることである。

以上のとおり、上記相違点にかかる構成は、当業者が容易に想到し得る程度のものと認められ、その相違点によって格別予想外の作用効果を奏しているとも認められない。

ところで、審判請求人は、平成17年11月25日付けの審判請求理由に係る手続補正書の、「(3)本願発明と引用文献との対比」において、化粧料の分野において、複数の成分を組み合わせて、単独で用いた場合に比してより大きい効果を得ようとすることは、当業者であれば容易に想到し得ることであるが、実際、組合わせたことによって得られる効果は、単に相加的な効果であったり、また相加的な効果すら得られない場合が殆どであり、特に化粧料に配合される植物抽出物の種類は、非常に多数あり、その中より、期待する効果が得られるものを見出すことは、容易なことではなく、美白成分としてジオスコリア・コンポジータ抽出物を選択し、甘草、モモ、茶、ツバキ、ジオウ、オトギリソウ及びビワから得られる植物抽出物からなる群より選択される1種又は2種以上とを組み合わせた場合に得られる効果は、それぞれ単独で配合した場合に得られる効果と比して極めて大きな効果であり、またジオスコリア・コンポジータ抽出物に代えて、他の美白作用を有する成分を用いたとしても、必ずしも優れた効果が得られるという訳ではないことから、本願発明の効果は、当業者が予想できる範囲を超えるものである旨、及び、ジオスコリア・コンポジータ抽出物に代えて、美白作用を有することが知られていたカミツレ抽出物を用いた比較実験例に示すように、本願発明の効果は、ジオスコリア・コンポジータ抽出物と、甘草、モモ、茶、ツバキ、ジオウ、オトギリソウ及びビワから得られる植物抽出物からなる群より選択される1種又は2種以上という特定の組合せにより得られる格別顕著なものであり、当業者が予測し得るものではない旨を主張している。
しかし、本願発明の甘草、茶及びツバキから得られる植物抽出物からなる群より選択される1種又は2種以上が、各種の美白成分と併用することにより、その美白作用を高めることが、引用例B,Cにより本願出願前に明らかであることからみて、甘草、茶及びツバキから得られる植物抽出物からなる群より選択される1種又は2種以上を併用することの動機付けはあり、その美白効果の向上(相乗効果)も期待されるものであるから、例え、美白効果のあるカミツレ抽出物との併用において向上の程度がいくらか小さい場合の一例があったとしても、既に化粧料の美白成分として用いられているジオスコリア・コンポジータ(Dioscorea composita)から得られる抽出物に甘草、茶及びツバキから得られる植物抽出物からなる群より選択される1種又は2種以上を併用することによる効果の程度を確認することが阻害されるなどの格別の困難性があるとは認められないから、前記請求人の主張は採用できない。

よって、本願発明は、引用例A発明と引用例B,Cの記載に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

4.むすび
したがって、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
それ故、他の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-04 
結審通知日 2009-02-10 
審決日 2009-02-23 
出願番号 特願2002-48737(P2002-48737)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小松 円香  
特許庁審判長 川上 美秀
特許庁審判官 弘實 謙二
谷口 博
発明の名称 美白化粧料  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ