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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1196026
審判番号 不服2006-28417  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-12-20 
確定日 2009-04-09 
事件の表示 平成 8年特許願第 84141号「弾球遊技機の中枠」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年10月21日出願公開、特開平 9-271572〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一.手続の経緯
本願は、平成8年4月5日の出願であって、拒絶理由通知に対応して平成18年9月29日に手続補正書が提出され、その後なされた拒絶査定に対し、同年12月20日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同月28日に手続補正がなされたものである。

第二.平成18年12月28日付の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成18年12月28日付の手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は以下のように補正された。
「一体化されているプラスチック成形品であって、弾球遊技機の外枠に収容されて遊技盤、発射装置及び遊技球払出装置を保持する弾球遊技機の中枠において、
前記弾球遊技機の中枠に取り付けられた前記遊技盤の前面の延長面とほぼ一致する発射レール取付面と、
前記弾球遊技機の中枠の背面側に開口し該背面側から前面側に凹陥し且つ前面側においては前記発射レール取付面よりも前方に突出して形成され、前記発射レールに相対して開口し前記発射装置の打撃部材を通過させる打撃窓を有する発射装置収納部とを
前記一体化されているプラスチック成形品の一部として設けたことにより、
前記発射装置の打撃部材を駆動する駆動機構を前記発射装置収納部に収納可能としたことを特徴とする弾球遊技機の中枠。」(以下「本願補正発明」という。)

2.補正要件(目的)の検討
請求項1についての補正は、発明を特定するために必要な事項である「発射装置収納部」について「前記発射レールに相対し前記発射装置の打撃部材を通過させる打撃窓を有し、前記開口と前記打撃窓のみ開放された」を「前記発射レールに相対して開口し前記発射装置の打撃部材を通過させる打撃窓を有する」とする補正、及び「中枠」について、「前記一体化されているプラスチック成形品の一部として」を新たに付加する補正である。
してみると、前者の補正は、拒絶査定時における不明瞭な記載である旨の指摘に対応する補正であるから、不明瞭な記載の釈明に相当し、後者の補正は、中枠について限定を付加するものであるから特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に相当する。
したがって、本件補正は、平成14年法律第24号による改正前の特許法第17条の2第4項第4号及び第2号に掲げる事項を目的とするものに該当する。
そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3.補正要件(独立特許要件:特許法第29条第2項)の検討
(1)引用刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-38695号公報、及び平成18年8月14日付の拒絶理由通知書において、本願出願前周知技術であることを例示する刊行物として挙げられた文献であるが、「打球発射機構23が表枠3の裏側に配置され」等のコメントが付された特開平5-76641号公報には以下の事項が記載されている。
(A)特開平8-38695号公報(以下、「刊行物A」という。)
(A-1)「【0011】図2に示すようにパチンコ機10の裏面側には、パチンコ機10の各部材を支持すると共に遊技機設置島(以下、単に島という)に装着するための部材でもあるプラスチック製の本体枠44が配されており、上述の前面枠14および皿部材32は本体ヒンジ176a?176dを介して本体枠44と連結されている。この本体枠44には、遊技盤12、役物の作動制御や遊技条件の変更等を実施するためのLSI等の電気部品を組み込んだ制御基盤46、制御基盤46を保護するカバー46a等を支承する裏盤48が組み付けられている。なお図示を省略しているが、遊技盤12の裏面側には、入賞球を誘導するための入賞球通路や入賞口に設置された遊技球検出センサ、役物、ランプ等に接続されたリード線等の周知の部材が配されている。」
(A-2)「【0012】この裏盤48の上端部には島の上部に設置された球供給路(図示略)から供給される遊技球を貯留するプラスチック製の賞球タンク50が設置されている。賞球タンク50には、中央やや左寄りに遊技球の荷重の有無によって遊技球の有無を検知する荷重センサ52が設置されており、賞球タンク50の下部には遊技球が流出可能な賞球流出口54が設けられている。賞球流出口54は、遊技球を整列させながら流下させる透明プラスチック製の賞球誘導樋56を介して、賞球排出装置58に接続されている。また賞球誘導樋56の中間部には荷重センサ60が設置されており、遊技球の誘導状況を検出可能である。」
(A-3)「【0029】このように、本体枠44に保持される裏盤48にて直接に遊技盤12を支えるので、従来のパチンコ機等では本体枠に軸支されて遊技盤を保持すると共に発射ハンドル40等を固定していた木製の前枠が不要となっている。また前枠に固定されて遊技盤を支承するプラスチック製の中枠も不要となっている。すなわち、本実施例の裏盤48は、従来のプラスチック製のいわゆる裏パックと遊技盤を保持する前枠および中枠との機能を備えており、このように構成することで部品点数を削減できる。」
(A-4)「【0030】図6、図7、図8および図10に示すように、裏盤48の下部には遊技球を遊技領域18に発射するための打球槌164および打球槌164を駆動するロータリソレノイド166を備えた発射装置168が収容されている。また、図6、図7、図8および図9に示すように、発射装置168の斜め上方には、発射される遊技球を案内するための発射レール170が配されており、発射レール170の後端部170aに置かれた遊技球を打球槌164の打撃部164aによって打撃することで、遊技球を発射することができる。発射された遊技球は、発射レール170を経て、図6に示すように遊技盤12に固着されているガイドレール172に沿って誘導されて、遊技領域18へ放出される。なお、図6、図7および図9に示すように、発射レール170とガイドレール172との間には、例えば打球槌164による付勢が不足して、遊技領域に到達できなかった遊技球を回収して下受け皿30へと導くためのファール球誘導路174が設けられている。」
(A-5)「【0031】図6、図7、図8および図10に示されるように、このパチンコ機10では、打球槌164とロータリソレノイド166を備える発射装置168および発射レール170の双方が、裏盤48に装着されている。このように両者が共通の部材(裏盤48)の同一の面側に装着されていることから、発射装置168と発射レール170との相対位置の調整は簡単となる。したがって、発射レール170の後端部170aに置かれた遊技球を打球槌164の打撃部164aによって正確に打撃するための芯出し作業には、特別な熟練を要さない。しかも、上述の構成により明らかなように、発射レール170の交換等の補修作業もきわめて簡単である。」
(A-6)図7、図8を参照すると、前記「(A-4)」に記載されている、裏盤48の下部に・・・発射装置168が収容されているにおける「収容」とは、裏盤48の前面側に開口し該前面側から背面側に凹陥して形成された収容部に発射装置168が収納されていることを意味するものである。
(A-7)してみると、刊行物Aには以下の発明(以下、「引用発明」という)が記載されている。
「裏パック、前枠及び中枠の機能を備えパチンコ機の本体枠44に組み付けられて遊技盤12、発射装置168及び賞球排出装置58を保持可能としたパチンコ機の裏盤48において、
前記裏盤48に前記遊技盤12が取り付けられた状態で、発射された遊技球は発射レール170を経て遊技盤12に固着されているガイドレール172に沿って誘導され、
前記パチンコ機の裏盤48の前面側に開口し該前面側から背面側に凹陥して形成され、前記発射レール170の後端部170aに置かれた遊技球を打球槌164の打撃部164aによって打撃することで遊技球を発射することができるように前記発射装置168を収納する収容部を設け、
前記発射装置168の打撃槌164を駆動するロータリソレノイド166を前記収容部に収納可能としたパチンコ機の裏盤48。」

(B)特開平5-76641号公報(以下、「刊行物B」という。)
(B-1)「【0006】【実施例】以下、図面にもとづいて本発明の実施例を説明する。図1において、1はパチンコ機1であって、外枠2に蝶番で開閉可能に止着した表枠3の開口部内にガラス枠4を開閉可能に軸着するとともに、該ガラス枠4の下方に前面板5を開閉可能に軸着し、表枠3の裏側にはガラス枠4のガラスに臨む様に遊技盤6を着脱可能に取付け、この遊技盤6の表面にガイドレール7で区画した遊技部8を形成し、この遊技部8内に釘を無数に打って流路を形成したり、役物9等を取付ける。」
(B-2)「【0019】上記した構成からなる打球発射機構23を表枠3の下部裏面に取付けるには、位置決めボス40を表枠3の位置決め孔内に嵌合して位置決めした後、取付用小孔39内にビスを差し込んでネジ込む。この様にして打球発射機構23を表枠3の下部裏面の所定位置に取付けると、発射レール64の延長線上乃至延長線に沿って可動部材34が位置して可動部材34が前進したときに弾発部33が発射レール64の発射位置65に突入可能となる。」
(B-3)してみると、刊行物Bには、外枠に蝶番で開閉可能に止着され、且つ遊技盤が着脱可能に取り付けられる表枠の裏面に打球発射機構が配設されていることが示されている。

(2)引用発明と本願補正発明との対比
(A)発明特定事項の対応関係
(A-1)引用発明における「パチンコ機」は、本願補正発明における「弾球遊技機」に対応し、以下同様に、「本体枠44」は「外枠」に、「組み付けられて」は「収容されて」に、「賞球排出装置」は「遊技球払出装置」に、「保持可能とした」は「保持する」に、「打球槌164」は「打撃部材」に、「ロータリソレノイド166」は「駆動機構」に、各々対応する。
(A-2)引用発明の「パチンコ機の裏盤48」と、本願補正発明の「弾球遊技機の中枠」とは、「弾球遊技機の取付枠」である点で共通する。
(A-3)引用発明において、「裏盤48に遊技盤12が取り付けられた状態で、発射された遊技球は発射レール170を経て遊技盤12に固着されているガイドレール172に沿って誘導され」ることからみて、引用発明の裏盤48における発射レール170が装着される面(本願補正発明の「発射レール取付面」に相当)とガイドレール172の延長面(本願補正発明の「遊技盤の前面の延長面」に相当)とがほぼ一致することは明らかであるので、引用発明の「パチンコ機の裏盤48」には本願補正発明の「弾球遊技機の中枠に取り付けられた前記遊技盤の前面の延長面とほぼ一致する発射レール取付面」に相当する面が設けられているということができる。
(A-4)引用発明の「発射装置168を収納する収容部」と、本願補正発明の「発射装置収納部」とは、「凹陥状発射装置収納部」である点で共通する。

(B)一致点
弾球遊技機の外枠に収容されて遊技盤、発射装置及び遊技球払出装置を保持する弾球遊技機の取付枠において、
前記弾球遊技機の取付枠に取り付けられた前記遊技盤の前面の延長面とほぼ一致する発射レール取付面と、
凹陥状発射装置収納部とを設け、
前記発射装置の打撃部材を駆動する駆動機構を前記凹陥状発射装置収納部に収納可能としたことを特徴とする弾球遊技機の取付枠。

(C)相違点
(C-1)「弾球遊技機の取付枠」に関して、本願補正発明は、「一体化されているプラスチック成形品」であるのに対し、引用発明は、その材質及び一体化された成形品であるか否かが明らかでない点。
(C-2)「凹陥状発射装置収納部」の構造に関して、本願補正発明は、「中枠の背面側に開口し該背面側から前面側に凹陥し且つ前面側においては前記発射レール取付面よりも前方に突出して形成され、前記発射レールに相対して開口し前記発射装置の打撃部材を通過させる打撃窓を有する」構造であるのに対し、引用発明は、裏盤48の前面側に開口し該前面側から背面側に凹陥しており、打撃窓は備えていない点。

(3)相違点の検討
(A)前記相違点(C-1)について
前記3.(1)(A-3)には、遊技盤を取り付ける中枠、裏パックの構成材料をとしてプラスチックを用いることが、さらに、前記3.(1)(A-1)にも本体枠の構成材料としてプラスチックを用いることが記載されているように、構成材料としてプラスチックを用いるとともに、枠体をプラスチックで一体成形することは弾球遊技機の分野において周知慣用事項であるから、当該相違点は単なる設計的事項である。

(B)前記相違点(C-2)について
発射装置の配置箇所として、遊技盤等を保持する取付枠の裏面側に発射装置を配設することは刊行物Bの前記3.(1)(B-3)に記載されているように、従来より知られている事項であるから、引用発明において発射装置168を収納する収容部を裏盤48の背面側から前面側に凹陥して形成することは、遊技機における部品の配置状況を勘案して弾球遊技機の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が適宜行う程度の設計的事項である。
しかも、発射装置168を収納する収容部を裏盤48の背面側から前面側に凹陥して形成すれば、該収容部の開口が裏盤48の背面側となること、当該開口からの奥行きは、少なくとも打撃部材が遊技盤の前面に設けられている発射レール上の遊技球を打撃できる奥行きを有すること、要するに、前記収容部が「前面側においては前記発射レール取付面よりも前方に突出して形成され」ること、さらに、当該収納部の発射レールに相対している箇所には、少なくとも打球槌164が発射レール上の遊技球を打撃するに際して支障とならないように、打撃部164aが通過する開口が設けられていなければならないこと等は、刊行物Bの前記3.(1)(B-2)や図3の記載から見ても明らかなように、当業者が当然に考慮する設計的事項である。
しかも、騒音発生体がカバーなどにより被覆されているときは、当該被覆されている方向の騒音が低減することは周知の事項であるから、中枠の裏面側に発射装置を配設したことによる効果も当業者にとっては予測の範囲内の事項である。
してみると、当該相違点は、当業者が適宜なし得る程度の事項である。

(C)まとめ
以上のように各相違点は格別のものではなく、しかもこれらの相違点を総合的に判断しても、格別のものとは認められないので、本願補正発明は、引用発明及び刊行物Bに示される事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第三.本願発明について
1.本願発明
平成18年12月28日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成18年9月29日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「一体化されているプラスチック成形品であって、弾球遊技機の外枠に収容されて遊技盤、発射装置及び遊技球払出装置を保持する弾球遊技機の中枠において、
前記弾球遊技機の中枠に取り付けられた前記遊技盤の前面の延長面とほぼ一致する発射レール取付面と、
前記弾球遊技機の中枠の背面側に開口し該背面側から前面側に凹陥し且つ前面側においては前記発射レール取付面よりも前方に突出して形成され、前記発射レールに相対し前記発射装置の打撃部材を通過させる打撃窓を有し、前記開口と前記打撃窓のみ開放された発射装置収納部とを設けたことにより、
前記発射装置の打撃部材を駆動する駆動機構を前記発射装置収納部に収納可能としたことを特徴とする弾球遊技機の中枠。」

2.特許法第29条第2項の検討
(1)引用刊行物記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物、および、その記載事項は、前記「第二.3.(1)」に記載したとおりである。

(2)本願発明の進歩性についての判断
拒絶査定において不明瞭とされた事項の趣旨が事実上判明したことから、本願発明は、実質的には前記「第二」で検討した本願補正発明から「中枠」の限定事項である、「前記一体化されているプラスチック成形品の一部として」との構成を省いたものといえる。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第二.3.(3)」に記載したとおり、引用発明及び刊行物Bに示される事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び刊行物Bに示される事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)まとめ
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び刊行物Bに示される事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

3.むすび
本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
そして、請求項2に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-01-28 
結審通知日 2009-02-03 
審決日 2009-02-17 
出願番号 特願平8-84141
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 納口 慶太  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 森 雅之
河本 明彦
発明の名称 弾球遊技機の中枠  
代理人 足立 勉  

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