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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C09C
管理番号 1196073
審判番号 不服2006-10181  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-05-18 
確定日 2009-04-06 
事件の表示 平成10年特許願第252175号「ハード系ハイストラクチャーカーボンブラック及び該カーボンブラックを配合したゴム組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 3月21日出願公開、特開2000- 80302〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成10年9月7日の出願であって、その手続の経緯は、以下のとおりである。
・平成10年9月11日に手続補正書を提出
・平成18年1月27日付けで拒絶理由を通知
・平成18年3月30日に意見書を提出
・平成18年4月19日付けで拒絶査定
・平成18年5月18日に拒絶査定に対する審判請求
・平成18年6月13日に審判請求書の手続補正書を提出
・平成19年2月27日付けで拒絶理由を通知
・平成19年4月9日に意見書を提出
・平成19年7月31日付けで拒絶理由を通知
・平成19年10月1日に意見書及び手続補正書を提出
・平成20年9月25日付けで審尋を通知(請求人からの回答なし)

第2 本願発明
本願の請求項1?3に係る発明(以下、「本願発明1」?「本願発明3」という。)は、平成10年9月11日付け及び平成19年10月1日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

【請求項1】70≦CTAB≦121、130≦DBP、115≦24M4DBP、DBP-24M4DBP≦40、ΔDst/Dst≦0.8の特性を有するカーボンブラックであって、下記(1)式で算出される相関因子f値が、下記(2)式の範囲にあることを特徴とするハード系ハイストラクチャーカーボンブラック。
(1)f=(Tint/CTAB)・(24M4DBP/Dst)/(N_(2)SA/IA)
(2)1.2≦f≦1.6
但し、CTABはCTAB比表面積(m^(2)/g)、DBPはDBP吸油量(ml/100g)、24M4DBPは圧縮DBP吸油量(ml/100g)、Dstはディスクセントリフュージ装置(DCF)により測定されるカーボンブラックアグリゲートのストークス相当径分布のモード径(nm)、ΔDstは同ストークス相当径分布の半値幅(nm)、Tintは比着色力(%)、N_(2)SAは窒素吸着比表面積(m^(2)/g)、IAはよう素吸着量(mg/g)である。
【請求項2】70≦CTAB≦121、DBP-24M4DBP≦35、ΔDst/Dst≦0.75の特性を有するカーボンブラックである請求項1記載のハード系ハイストラクチャーカーボンブラック。
【請求項3】天然ゴムまたは合成ゴム、もしくはそれらのブレンドゴム100重量部に対し、請求項1または2記載のハード系ハイストラクチャーカーボンブラックを20?150重量部の割合で配合してなるゴム組成物。

第3 当審で通知した拒絶の理由の概要
当審で平成19年7月31日付けで通知した拒絶理由は、「この出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。」という理由を含んでおり、具体的には、次に示す理由Aを含むものである。

理由A:
本願発明1は、「CTAB」、「DBP」、「24M4DBP」、「DBP-24M4DBP」、「ΔDst/Dst」及び「f=(Tint /CTAB)・(24M4DBP/Dst)/(N_(2)SA/IA) 」というパラメータが、それぞれ所定の数値範囲にあるハード系ハイストラクチャーカーボンブラックに係る発明である。
そして、発明の詳細な説明の実施例1には、「CTAB」、「DBP」、「24M4DBP」、「DBP-24M4DBP」、「ΔDst/Dst」及び「f=(Tint /CTAB)・(24M4DBP/Dst)/(N_(2)SA/IA) 」が、それぞれ75、152、118、34、0.66、1.22という特定の数値を示すハード系ハイストラクチャーカーボンブラックが記載されている。同様に、実施例2?8には、各パラメータがそれぞれ特定の数値を示すハード系ハイストラクチャーカーボンブラックがそれぞれ記載されている。
しかしながら、発明の詳細な説明には、本願発明1で規定される各パラメータがそれぞれ所定の数値範囲にあるハード系ハイストラクチャーカーボンブラックが記載されているといえず、さらに、本願発明1で規定されるパラメータが特定の数値範囲のものを一般的にどのようにして入手すればよいのかも明確でない。
すなわち、本願発明1のハード系ハイストラクチャーカーボンブラックについて、明細書の段落【0035】には、
「本発明の特性を備えるハード系ハイストラクチャーカーボンブラックは、炉頭部に接線方向空気供給口と炉軸方向に装着された燃焼バーナを備える燃焼室と、該燃焼室と同軸的に連設され、原料油供給ノズルを装着した多段の狭径反応室、及び広径反応室により構成された反応炉を用い、原料油導入条件、燃料油及び原料油の供給量、反応時間(最終原料油導入位置から反応停止までの燃焼ガスの滞留時間)等を制御することによって製造することができる。」
と抽象的な記載がなされているだけであって、実施例の記載をみても、「CTAB」、「DBP」、「24M4DBP」、「DBP-24M4DBP」、「ΔDst/Dst」及び「f=(Tint /CTAB)・(24M4DBP/Dst)/(N_(2)SA/IA) 」のすべてが所定の数値範囲内にあるようにするために、具体的に開示された製造条件をどのように変えればよいのかなどの一般的な傾向(例えば、各製造条件と各パラメータ値との相関関係等)が何ら明確ではなく、また、これらのパラメータの数値を変更・制御する手段が当業者に自明とも認められない。

第4 当審の判断
そこで、平成19年10月1日付けの手続補正後の発明の詳細な説明の記載が、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に、記載されているか、について検討する。
(平成19年10月1日付けの手続補正後の明細書を、以下、「本願明細書」という。)

1.本願明細書の記載内容の検討
発明の詳細な説明の段落と記載内容とは、次のように対応している。
段落【0001】・・発明の属する技術分野
段落【0002】?【0006】・・従来の技術
段落【0007】?【0010】・・発明が解決しようとする課題
段落【0011】?【0012】・・課題を解決するための手段
段落【0013】?【0035】・・発明の実施の形態
段落【0036】?【0053】・・実施例等
段落【0054】・・発明の効果

これによれば、「実施をすることができる程度に明確かつ十分に」記載されるべき箇所は、「発明の実施の形態」が記載される段落【0013】?【0035】、及び「実施例等」が記載される段落【0036】?【0053】であるといえるので、これらの段落について詳しく検討する。

発明の実施の形態に関する記載について
段落【0013】?【0017】には、本願発明1を特定する事項である、70≦CTAB≦250、130≦DBP、115≦24M4DBP、DBP-24M4DBP≦40、ΔDst/Dst≦0.8について、それぞれのパラメータ及びその数値範囲の技術的意味について説明されているが、どのようにしたら、これらのパラメータがこのような数値範囲のものとなるのかについては説明されていない。
段落【0018】?【0023】には、本願発明1を特定する他のパラメータであるf値について、その技術的意味について説明されているが、どのようにしたら、f値がこのような範囲のものとなるのかについては説明されていない。
段落【0024】?【0033】には、カーボンブラックの各特性の測定方法について記載されているが、どのようにしたらそのような特性を有するものが得られるのかについては、説明されていない。
段落【0034】にはゴム組成物を得ることが記載されているのみであり、段落【0035】には、「本発明の特性を備えるハード系ハイストラクチャーカーボンブラック」は、特定の構成の反応炉を用い、「原料油導入条件、燃料油及び原料油の供給量、反応時間(最終原料油導入位置から反応停止までの燃焼ガスの滞留時間)等を制御することによって製造することができる」とは記載されているものの、原料油導入条件をどのようにするのか、燃料油及び原料油の供給量をどの程度にするのか、反応時間(最終原料油導入位置から反応停止までの燃焼ガスの滞留時間)をどのように制御するのか、については、何ら説明されていない。
そうしてみると、発明の実施の形態に関する段落【0013】?【0035】には、本願発明1を特定する事項であるパラメータ、「CTAB」、「DBP」、「24M4DBP」、「DBP-24M4DBP」、「ΔDst/Dst」及び「f=(Tint /CTAB)・(24M4DBP/Dst)/(N_(2)SA/IA) 」のすべてが所定の数値範囲内にあるようにするために、どのようにすればよいのかについて、何ら具体的に記載されていない。

実施例等に関する記載について
段落【0036】には、「以下、本発明の実施例を比較例と対比して説明する。」と記載され、これに続く段落【0037】には、「実施例1?8、比較例1、3、6、8」のカーボンブラックについて、図3に示した反応炉を用いて製造したことが、段落【0038】には、「比較例2、4、5、7」のカーボンブラックについて、図4に示した反応炉を用いて製造したことが記載され、段落【0039】?【0042】は各カーボンブラックについて、個々の製造条件とその特性が記載され、段落【0043】?【0044】はゴム組成物の作成について記載され、段落【0045】?【0053】には、各カーボンブラックを配合したゴムの特性について、記載されている。
しかしながら、どのような製造条件にすれば各パラメータすべてが所定の数値範囲内にあるようにできるのか、については、何ら説明されていない。
したがって、実施例等に関する段落【0036】?【0053】にも、上記「CTAB」等のパラメータすべてが所定の数値範囲内にあるようにするために、どのような製造条件にすればよいのかについて、記載されていない。

また、他の段落をみても、上記「CTAB」等のパラメータすべてが所定の数値範囲内にあるようにするために、どのような製造条件にすればよいのかについて、何ら具体的に記載されておらず、また、当業者の技術常識であるともいえないから、発明の詳細な説明の記載は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである、ということはできない。

2.請求人の主張の検討
これに対し、請求人は、平成19年10月1日に提出した意見書において、参考図



を示すとともに、「本願明細書の段落0040、表1に記載されている本願発明の条件を充足する実施例1?4の製造条件(燃料油供給量、第1段原料油量、第2段原料油量、反応時間)と、例えばこの度限定したCTAB値との関係をプロットすれば添付した参考図のとおりであり、各製造条件とCTAB値との間にはある傾向(相関関係)が認められます。各製造条件と他のパラメータ値についても同様であり、本願明細書の図3に示される反応炉について、長年にわたる操業経験を有する当業者であれば、上記明細書の段落0035、実施例の記載内容に基づいて、蓄積された操業データとコンピューター制御技術により、CTAB、DBP、24M4DBP、DBP-24M4DBP、ΔDst/Dst及びfのすべてが所定の数値範囲内にあるように具体的製造条件を設定することは容易であり、本願発明1?2で規定されるパラメータが特定の数値範囲のカーボンブラックを製造現場において容易に入手することができます。」と主張する。

しかしながら、次の(1)?(4)の点で、請求人の主張は採用できない。
(1)参考図について、横軸は、単位を考慮しなくてもよい(すなわち、燃料油供給量(Nm^(3)/H)、第1段及び第2段原料油量(Kg/H)及び反応時間(ミリ秒)という単位が全く異なる値であっても同列に取り扱うことができる。)というものであるが、単位も技術的意味も全く異なる製造条件の数値について、数値のみを同列に扱うことができるとは通常考えられず、その点について説明もされていないから、このような参考図を、本願発明1の各パラメータの関係を表す図として採用することはできない。
(2)参考図では、第1段及び第2段それぞれの原料油量(原料油導入条件に相当すると解される。)とCTABとの関係が示されるのみであるが、段落【0035】の記載にあるとおり、原料油の供給量、すなわち、全体としてどの程度の原料油が供給されたのかという原料油の供給量についても、制御すべき製造条件(考慮すべきパラメータ)であると解するのが自然であり、また、燃料燃焼率及び全空気供給量もカーボンブラックを製造する際の反応条件に大きな影響を与える製造条件であることが明らかであるところ、原料油の全供給量とCTABとの関係、燃料燃焼率及び全空気供給量とCTABとの関係については、提出された参考図を考慮しても、依然として明確かつ十分に記載したものであるとはいえない。
(3)上記意見書において、「各製造条件と他のパラメータ値についても同様であ」る旨、すなわち、各製造条件と各パラメータ値との間にある傾向(相関関係)が認められる旨主張しているが、実施例5?8、比較例1、3、6及び8のCTABと、燃料油供給量(Nm^(3)/H)、第1段及び第2段原料油量(Kg/H)及び反応時間(ミリ秒)条件との関係は、実施例1?4のCTABと各製造条件との関係と一致していないと解するのが自然である(例えば、参考図においては、第2段原料油量を小さくするとCTABは小さくなる関係にあるものと解されるが、比較例1や比較例6は、そのような関係にはない。)から、DBP、24M4DBP、DBP-24M4DBP、ΔDst/Dst及びfについて、それぞれ具体的にどのような相関関係が認められるのか、依然として明確でなく、実施例と比較例を検討しても、CTAB等のパラメータすべてが所定の数値範囲内にあるように具体的製造条件を、直ちには設定することができるとは、到底いえない。
(4)上記意見書において、「上記明細書の段落0035、実施例の記載内容に基づいて、蓄積された操業データとコンピューター制御技術により、CTAB、DBP、24M4DBP、DBP-24M4DBP、ΔDst/Dst及びfのすべてが所定の数値範囲内にあるように具体的製造条件を設定することは容易であ」る旨主張している。
しかしながら、明細書の段落【0035】の記載は、平成19年7月31日付けで通知した拒絶理由で指摘したとおり抽象的なものにすぎず、実施例の記載内容についても、上記(1)?(3)で指摘したとおり十分なものということが困難なものである。
しかも、CTAB、DBP、24M4DBP、DBP-24M4DBP、ΔDst/Dst及びfについては、それぞれ独立しているものではなく、相互に影響を与える関係にあるものと解するのが自然である。
そして、fは、6つのパラメータから構成され、さらに、そのうちの2つがDBP-24M4DBP及びΔDst/Dstとも関係を有するものであるから、fを特定の数値範囲内とするためには、実質的に8つのパラメータを考慮しなければならないと解するのが自然である。
そうすると、相互に影響を与える関係にある8つのパラメータ(CTAB、DBP、24M4DBP、ΔDst、Dst、Tint、N_(2)SA及びIA)を、7つの製造条件(燃料油供給量、第1段及び第2段原料油量、反応時間、原料油総量、全空気供給量及び燃料燃焼率)により制御し、fを所定の範囲とするとともに、ほかのパラメータも所定の範囲とすることは、そもそも、これら相互の相関関係が不明又は極めて複雑であることなどからみて、当業者であっても過度の試行錯誤を要するものであると解するのが自然である。

3.まとめ
以上のとおりであるから、発明の詳細な説明の記載は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。

第5 むすび
以上のとおりであって、本願は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないから、その余のことを検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-01-29 
結審通知日 2009-02-04 
審決日 2009-02-17 
出願番号 特願平10-252175
審決分類 P 1 8・ 536- WZ (C09C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 泰之  
特許庁審判長 西川 和子
特許庁審判官 杉江 渉
鈴木 紀子
発明の名称 ハード系ハイストラクチャーカーボンブラック及び該カーボンブラックを配合したゴム組成物  
代理人 赤塚 賢次  
代理人 福田 保夫  
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