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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63B
管理番号 1196074
審判番号 不服2006-11297  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-02 
確定日 2009-04-06 
事件の表示 特願2001-221915「ゴルフクラブヘッドの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 2月 4日出願公開、特開2003- 33454〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年7月23日に出願されたものであって、平成17年11月29日付け拒絶理由通知に応答して平成18年2月2日付けで手続補正がされたが、平成18年4月28日付けで拒絶査定がされ、これを不服として平成18年6月2日付けで審判請求がされるとともに、平成18年6月30日付けで明細書についての手続補正がされたものである。

第2 平成18年6月30日付け明細書についての手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年6月30日付け明細書についての手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正の内容
本件補正における特許請求の範囲についての補正は、
補正前(平成18年2月2日付け手続補正書参照)に
「【請求項1】
正面にフェースを、一側にシャフト取付部を備えたゴルフクラブヘッドの製造方法において、レーザー加工機を用いて前記ゴルフクラブヘッドの表面にフェースライン、番手表示、ロゴマーク等の凹部を形成し、前記凹部は断面形状をV形、U形または台形に形成されたことを特徴とするゴルフクラブヘッドの製造方法。」
とあったものを、
「【請求項1】
正面にはフェース、下部にはソール、一側にはヒールが設けられるとともに、このヒールの上部にはシャフトを連結するシャフト取付部、上部にはトップ、さらに他側にはトウをそれぞれ備えたゴルフクラブヘッドの製造方法において、レーザー加工機を用いてレーザーが往復しながら前記ゴルフクラブヘッドの表面に番手表示、ロゴマーク等の凹部を形成し、前記凹部は断面形状をV形、U形または台形に形成されたことを特徴とするゴルフクラブヘッドの製造方法。」
と補正するものである。

つまり、本件補正は、特許請求の範囲についての以下の補正事項を含む。
〈補正1〉補正前の請求項1におけるゴルフクラブヘッドに関し「正面にフェースを、一側にシャフト取付部を備えたゴルフクラブヘッド」を補正後の請求項1において「正面にはフェース、下部にはソール、一側にはヒールが設けられるとともに、このヒールの上部にはシャフトを連結するシャフト取付部、上部にはトップ、さらに他側にはトウをそれぞれ備えたゴルフクラブヘッド」とする補正。
〈補正2〉補正前の請求項1における凹部に関し「フェースライン、番手表示、ロゴマーク等の凹部を形成し」を補正後の請求項1において「番手表示、ロゴマーク等の凹部」とする補正。
〈補正3〉補正前の請求項1におけるレーザー加工機を用いる凹部の形成に関し補正後の請求項1において「レーザーが往復しながら」と追加する補正。

2.本件補正の目的
〈補正1〉について
補正1は、ゴルフクラブヘッドを特定する事項として「ソール」、「ヒール」、「トップ」及び「トウ」という部位に関する記載とこれらの部位の位置に関する記載を追加するものである。
ここで、これらの追加された発明特定事項は、いずれもゴルフクラブヘッドが通常有している自明な事項に他ならないものである。
したがって、補正1は補正前の請求項1の発明を実質的に変更するものでない。

〈補正2〉について
補正前の請求項1における「フェースライン、番手表示、ロゴマーク等の凹部」という記載からみて、「フェースライン」、「番手表示」及び「ロゴマーク」は「凹部」をもって形成するものを例示するものの、凹部をこれらに限定するものとまでは解釈できないものである。
一方、補正後の請求項1における「番手表示、ロゴマーク等の凹部」という記載からみて、「番手表示」及び「ロゴマーク」は「凹部」をもって形成するものを例示するものの、凹部をこれらに限定するものとまでは解釈できないものである。
また、本願明細書の段落【0017】「レーザー加工機を用いてフェースライン10、番手表示11、ロゴマーク12,13をそれぞれ形成する。フェースライン10を形成するときは、レーザーがフェースライン10の長手方向に往復しながら数ミクロンの幅でヘッド1を削るので、フェースライン(スコアライン)の断面形状はV形、U形または台形等と任意に設定できる。」より、レーザーがフェースラインの長手方向に往復しながら当該フェースライン凹部を形成することが記載されていることからも、上記のように解釈すべきである。
してみれば、補正2は「凹部」の構成を限定しているものとまでは認められないから、補正前の請求項1の発明特定事項を実質的に変更するものでない。

〈補正3〉について
補正前の請求項1における「レーザー加工機を用いて前記ゴルフクラブヘッドの表面に」「凹部を形成し、」を「レーザー加工機を用いてレーザーが往復しながら前記ゴルフクラブヘッドの表面に」「凹部を形成し、」と限定するものである。
したがって、補正3は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的としたものと認める。

以上のとおり、補正1乃至補正3を含む本件補正は、全体として平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的としたものと認められる。

3.独立特許要件について
本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する。

(3-1)本願補正発明の認定
本願補正発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「正面にはフェース、下部にはソール、一側にはヒールが設けられるとともに、このヒールの上部にはシャフトを連結するシャフト取付部、上部にはトップ、さらに他側にはトウをそれぞれ備えたゴルフクラブヘッドの製造方法において、レーザー加工機を用いてレーザーが往復しながら前記ゴルフクラブヘッドの表面に番手表示、ロゴマーク等の凹部を形成し、前記凹部は断面形状をV形、U形または台形に形成されたことを特徴とするゴルフクラブヘッドの製造方法。」

(3-2)刊行物記載の発明
本願の出願前に頒布された刊行物であって、原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-104280号公報(以下、「引用文献1」という。)には、以下の〈ア〉?〈ウ〉の記載が図示とともにある。
〈ア〉「【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。図1は、ゴルフクラブの内、ウッドタイプのヘッドを示す図であり、(a)はヘッドの正面図、(b)は図(a)のA-A線に沿った断面図、そして、(c)は、図(b)のフェースプレートを拡大して示す図である。
【0013】ヘッド1は中空状に構成されており、ステンレス鋼、チタン、チタン合金等の金属材料を、鋳造によって一体成形するか、もしくはソール部、クラウン部等の外殻部材を個別に鍛造し、これを溶接することで一体的に成形されている。ヘッドのフェース部分1aには、凹所1bが形成されており、この部分にフェースプレート2が、溶着、圧入嵌合、接着等、公知の方法によって止着されている。」
〈イ〉「【0022】
図2(a)は、図1(a)のB-B線に沿った断面図であり、図2(b)は、図(a)に示すフェースプレートを拡大した図である。通常、フェースプレート2には、その表面部に、トウ・ヒール方向に沿って溝状のスコアライン2eが形成されている。・・・」
〈ウ〉「【0027】次に、上述したようなスコアラインの形成方法について具体的に説明する。上記スコアラインは、・・レーザ、・・等による彫刻によって刻設することが可能である。この場合、・・また、レーザ、・・で形成すると、スコアラインの底面部を弧状にできるため、応力集中が防止され、繊維の破損等が防止できる。」(下線部は当審が付した)

〈エ〉摘記〈ア〉及び摘記〈イ〉並びに図1より、正面にはフェースプレート2、下部にはソール部、一側にはヒールが設けられるとともに、このヒールの上部にはシャフトを連結するシャフト取付部、上部にはクラウン部、さらに他側にはトウをそれぞれ備えたゴルフクラブヘッドが看取できる。
〈オ〉摘記〈ウ〉の「レーザ・・等による彫刻によって刻設することが可能である。」より、前記「レーザ」は当然レーザ加工機により照射されるレーザと認められる。
〈カ〉摘記〈ア〉乃至摘記〈ウ〉並びに図2(b)及び図3乃至図4より、レーザ加工機を用いてレーザによりゴルフクラブヘッドの表面にスコアラインの凹部を形成し、前記凹部は断面形状をU形または台形に形成されたゴルフクラブヘッドの製造方法が把握できる。

以上より、上記摘記〈ア〉乃至〈ウ〉及び図面を含む引用文献1全体の記載から、引用文献1には、次の発明が記載されていると認めることができる。
「正面にはフェースプレート2、下部にはソール部、一側にはヒールが設けられるとともに、このヒールの上部にはシャフトを連結するシャフト取付部、上部にはクラウン部、さらに他側にはトウをそれぞれ備えたゴルフクラブヘッドの製造方法において、レーザ加工機を用いてレーザにより前記ゴルフクラブヘッドの表面にスコアラインの凹部を形成し、前記凹部は断面形状をU形または台形に形成されたゴルフクラブヘッドの製造方法。」 (以下、「引用発明」という。)

(3-3)対比
a.引用発明における「フェースプレート2」、「ソール部」及び「クラウン部」は、本願補正発明における「フェース」、「ソール」及び「トップ」に相当する。
b.引用発明における「スコアラインの凹部」は、ゴルフクラブヘッドの表面に形成された「凹部」であるから本願補正発明における「凹部」に相当する。
c.引用発明における「レーザ加工機」及び「レーザ」は、本願補正発明における「レーザー加工機」及び「レーザー」に相当する。

してみれば、本願補正発明と引用発明とは、
「正面にはフェース、下部にはソール、一側にはヒールが設けられるとともに、このヒールの上部にはシャフトを連結するシャフト取付部、上部にはトップ、さらに他側にはトウをそれぞれ備えたゴルフクラブヘッドの製造方法において、レーザー加工機を用いてレーザーにより前記ゴルフクラブヘッドの表面に凹部を形成し、前記凹部は断面形状をU形または台形に形成されたゴルフクラブヘッドの製造方法。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
〈相違点1〉
本願補正発明においては、レーザー加工機を用いてレーザーによりゴルフクラブヘッドの表面に凹部を形成する構成として「レーザー加工機を用いてレーザーが往復しながら」と特定されているのに対し、引用発明では、前記特定を有していない点。
〈相違点2〉
本願補正発明においては、レーザー加工機を用いてレーザーにより形成される凹部の断面形状の構成として「V形、U形または台形」と特定されているのに対し、引用発明では、「U形または台形」の断面形状を形成するものであるものの、「V形」に関しては明示がない点。

(3-4)判断
〈相違点1〉について
レーザー加工機を用いてレーザーが往復しながら加工品の表面に凹部を形成することは、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平3-114688号公報、本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭63-192585号公報(特に3頁右下欄10乃至12行)、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平6-234237号公報(特に【0010】及び図3)に記載の如く、周知の技術事項である。
してみれば、引用発明において、レーザー加工機を用いてレーザーによりゴルフクラブヘッドの表面に凹部を形成する構成としてレーザー加工機を用いてレーザーが往復しながらゴルフクラブのヘッドの表面に凹部を形成するようになすことは、当業者が容易になし得ることである。

したがって、相違点1に係る本願補正発明の特定事項は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易になし得ることである。

〈相違点2〉について
本願明細書中の記載を参酌しても凹部に与える断面形状をV形、U形または台形としたことにより、V形とするに比して格別な作用効果が認められるとされるものでない以上、レーザー加工機を用いてレーザーにより形成される凹部の断面形状をどのようにするかは、当業者の設計事項にすぎない。
してみれば、引用発明において、レーザー加工機を用いてレーザーにより形成される凹部の断面形状の構成としてV形、U形または台形となすことは、当業者が適宜になし得る設計事項である。

したがって、相違点2に係る本願補正発明の特定事項は、引用発明に基づいて、当業者が容易になし得ることである。

なお、ゴルフクラブヘッドの表面に形成される凹部として「番手表示、ロゴマーク」は、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平8-299506号公報(特に【0017】レーザー印字・・ロゴマーク」及び図3「符号3 ロゴマーク」)、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2000-217953号公報(特に【0033】「・・図3を参照すると、本発明のクラブヘッド20は、該クラブヘッド20の外面32に形成し、標識し、又は彫刻されたクラブの番号の少なくとも2つの表示28、30を有している。・・」及び図3「符号28、30」並びに本願の出願前に頒布された刊行物である実願昭53-106190号(実開昭55-25015号)マイクロフィルム(特に、図2乃至3、3頁9-11行「フェースライン6上に番手表示をするための刻印8が設けられおり、この刻印8がヒッテングポイントを示している。」)(下線部は当審が付した)に記載の如く、周知の技術事項である。

〈まとめ〉
このように、相違点1乃至相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて、当業者が想到容易な事項であり、この発明特定事項を採用したことによる本願補正発明の効果も当業者が容易に予測し得る程度のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4.本件補正についてのむすび
前記「第2 3.」に記載のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明の認定
平成18年6月30日付け明細書についての手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成18年2月2日付けで補正された特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「正面にフェースを、一側にシャフト取付部を備えたゴルフクラブヘッドの製造方法において、レーザー加工機を用いて前記ゴルフクラブヘッドの表面にフェースライン、番手表示、ロゴマーク等の凹部を形成し、前記凹部は断面形状をV形、U形または台形に形成されたことを特徴とするゴルフクラブヘッドの製造方法。」(以下、「本願発明」という。)

2.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1及びその記載事項は、前記「第2 3.(3-2)」に記載のとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記「第2 3.」で検討した本願補正発明から「レーザーが往復しながら」との事項を削除し、「凹部」の例示として「フェースレイン」との事項を追加するとともに、以下(あ)の下線部の限定を省いたものに相当する。
(あ)「正面にはフェースを、下部にはソール、一側にはヒールが設けられるとともに、このヒールの上部にはシャフトを連結するシャフト取付部、上部にはトップ、さらに他側にはトウをそれぞれ」
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 3.(3-4)」に記載したとおり、引用発明及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶を免れない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-06 
結審通知日 2009-02-09 
審決日 2009-02-23 
出願番号 特願2001-221915(P2001-221915)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63B)
P 1 8・ 121- Z (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 太田 恒明  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 菅野 芳男
上田 正樹
発明の名称 ゴルフクラブヘッドの製造方法  
代理人 牛木 護  

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