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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1196114
審判番号 不服2007-3027  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-01-25 
確定日 2009-04-08 
事件の表示 平成11年特許願第 86533号「基板ホルダ付きリソグラフィー投影装置とその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年3月3日出願公開、特開2000-68198〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1,手続の経緯

本願は、平成11年3月29日(パリ条約による優先権主張1998年3月31日、ヨーロッパ特許庁)の出願であって、平成18年4月17日付け拒絶理由通知がなされ、これに対し、同年7月14日に手続補正がされたが、同年10月25日付けで拒絶査定がなされた。
これに対して、平成19年1月25日に拒絶査定不服審判の請求がされ、同年2月15日付けで手続補正がされたものである。

2.本願発明
平成19年2月15日付け手続補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1を削除し、補正前の特許請求の範囲の請求項3を、新たに請求項1とするものであるから、請求項の削除と認められ、当該補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に適合するものである。
したがって、本願の請求項1乃至8に係る発明は、平成19年2月15日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載から見て、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】 放射の投影ビームを供給する放射システムと、
マスクを保持するマスク・ホルダを備えたマスク・テーブルと、
基板を保持する基板ホルダを備えた基板テーブルと、
前記マスクの照射された部分を前記基板のターゲット部分に映写する投影システムと、を含み、
前記基板ホルダが、突出部のマトリクス配列を備えた面を有するプレートを含み、各突出部が前記面から離れた先端を有し、それにより前記突出部が全て前記面よりも高さHだけ上にある単一の実質的に平らな面上にあるように実施され、前記基板ホルダが、前記面から突出する、前記マトリクス配列を実質的に囲む、実質的に一様な高さhだけ前記面よりも上にある一つの壁をさらに含み、それによりh<Hであり、前記壁の内側の前記面が、前記プレートを貫通して延伸する少なくとも一つの開口を備え、該開口を通じて前記壁で囲まれた領域へアクセス可能である、リソグラフィー投影装置において、
前記マトリクス配列が一連の同心円からなり、それにより、前記突出部が各円に沿って、実質的に規則的な弓形の間隔で配置され、
前記壁が、実質的に円形であって、前記複数の円と同心であり、
前記壁とそれに最も近い前記円との間の半径方向距離xが0.3<x/d<0.6の関係を満足し、ここで、dは前記壁に最も近い二つの円の相互の半径方向間隔であり、
一つの円の一対の隣接する突出部と隣接する円の対応する最も近い一対の隣接する突出部とにより画定される四辺形の領域が、マトリクス分布の前記四辺形の位置に関係なく実質的に一定なサイズを有し、
隣接する円のいずれかの対の相互半径方向間隔が実質的にdに等しいことを特徴とする、リソグラフィー投影装置。」

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平8-37227号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の技術事項が記載されている。

記載事項ア
「【0015】
【実施例】以下、本発明の実施例を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】(実施例1)図1は本発明の一実施例であるウエハチャックが用いられた露光装置を示す概略図、図2はそのウエハチャックと半導体ウエハとを示す斜視図、図3は図2のウエハチャックの平面図、図4は図3のIV-IV線に沿う断面図である。
【0017】図1に示すように、本実施例によるウエハチャック1が用いられた露光装置は、露光光源としてたとえばHgランプ2が用いられている。このHgランプ2からのg線(光)3は楕円ミラー4により収束されてリフレクタ5で屈折され、インテグレータ6に入射されるようになっている。インテグレータ6で所定の面域における照度が均一化されたg線3は、再びリフレクタ7によって屈折されてコンデンサレンズ8で凝縮される。このような照明系を経た後、g線3はレチクル9に形成された回路パターンを取り込んで縮小レンズ10によって縮小され、最後にウエハチャック1に保持された半導体ウエハ11上に投影される。これによってレジストが塗布された半導体ウエハ11上にレチクル9の回路パターンが転写されることになる。
【0018】ここで、図2に示すように、経時変化や熱膨張による変形を防止するためにたとえばセラミックにより形成され、半導体ウエハ11を保持するウエハチャック1は、外周壁12に囲まれた吸引室13がチャック本体14に形成されているものである。図3に示すように、外周壁12は半導体ウエハ11よりもやや小さく形成されて、半導体ウエハ11の裏面に回り込むように塗布されたレジスト液の付着が防止されている。
【0019】外周壁12の上面の4箇所には、所定の間隔をおいて吸気溝12aが形成され、載置された半導体ウエハ11の裏面と外周壁12の上面との間に微小な空間が形成されるようになっている。よって、半導体ウエハ11が載置された状態でも、吸引室13は外部とはこの吸気溝12aを介して連通されていることになる。
【0020】吸引室13内には半導体ウエハ11を裏面から支持する複数本の支持ピン15が設けられている。この支持ピン15は外周壁12と同一の高さとされており、支持ピン15および外周壁12によって半導体ウエハ11が裏面から支持されるようになっている。
【0021】吸引室13からチャック本体14の側面に貫通して、真空ポンプ(図示せず)などの真空源に接続された吸引孔16(図4)が開設されている。したがって、真空引きして吸引室13を負圧にすることによって、支持された半導体ウエハ11がウエハチャック1に吸着保持される。
【0022】このようなウエハチャック1により半導体ウエハ11を吸着した状態を示しているのが図4である。
【0023】図示するように、半導体ウエハ11に覆われた吸引室13を真空ポンプにより真空引きすると、吸引室13と外部との圧力差により半導体ウエハ11の裏面が支持ピン15に密着される。また、これと同時に、外周壁12の上面に形成された吸気溝12aから半導体ウエハ11の裏面に沿って外部の気体が高速で吸引室13内に吸引される。
【0024】このように、半導体ウエハ11の裏面に沿って気体が流れることにより、内平面が支持ピン15に密着されることによって反ろうとする半導体ウエハ11の外周部には、ベンチュリー効果によってこれを阻止しようとする力Fが発生する。したがって、半導体ウエハ11の外周部は、支持ピン15と同一の高さにされた外周壁12に密着されて平坦な状態に保持されることになる。
【0025】よって、本実施例に示すウエハチャック1によれば、保持された半導体ウエハ11の外周部における反りの発生が防止されて完全に平坦な状態になるので、焦点距離が狂うことなく良好な解像度の回路パターンを半導体ウエハ11に転写することが可能になる。これにより、半導体ウエハ11の外周部領域においても良品の半導体チップを得ることができ、歩留まりの向上を図ることが可能になる。」

記載事項イ
「【0026】(実施例2)図5は本発明の他の実施例によるウエハチャックと半導体ウエハとを示す斜視図、図6はそのウエハチャックによる半導体ウエハの吸着保持状態を示す断面図である。
【0027】本実施例のウエハチャック21は、外周壁22が支持ピン15よりも僅かに低く形成されたものであり、この点において、外周壁の上面に吸気溝が形成された実施例1のウエハチャックと相違している。なお、その他の点においては前記実施例1に開示されたウエハチャックと同様であり、従って、同一の部材には同一の符号を付して説明する。
【0028】図6に示すように、本実施例によるウエハチャック21によれば、載置された半導体ウエハ11は支持ピン15によってのみ支持され、外周壁22の上面と半導体ウエハ11との間には微小な空間が形成されることになる。
【0029】したがって、吸引室13を真空引きすると、この吸引室13と外部との圧力差により半導体ウエハ11の裏面が支持ピン15に密着されると同時に、外周壁22の上面と半導体ウエハ11とで形成された空間から外部の気体が高速で吸引室13内に吸引されるようになる。よって、半導体ウエハ11の裏面に沿って気体が流れるベンチュリー効果が発生し、半導体ウエハ11の外周部には反りを阻止しようとする力Fが作用してこれが平坦な状態に保持されることになる。
【0030】このように、本実施例に示すウエハチャック21によっても、保持された半導体ウエハ11の外周部における反りの発生が防止されて完全に平坦な状態に保持されるので、焦点距離が狂うことなく良好な解像度の回路パターンを半導体ウエハ11に転写することが可能になる。
【0031】以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。」

以上の記載から、引用例1には、以下の点がそれぞれ記載されている。

(1)「露光装置」として、「露光光源」としての「Hgランプ2」、回路パターンが形成された「レクチル9」、該「レクチル9」で形成された回路パターンを取り込んで、「半導体ウエハ11」上に縮小投影する「縮小レンズ10」を有する点。

(2)「半導体ウエハ11」を保持する「ウエハチャック21」と、該「ウェハチャック21」が、「吸引室13」、該「吸引室13」の底面から突出した「複数本の支持ピン15」、該「複数本の支持ピン15」を囲む「外周壁22」、及び、該「外周壁22」の内側面に少なくとも1つの「吸引口16」を有する点。

(3)前記「外周壁22」が、前記「支持ピン15」よりも僅かに低く形成されている点。

(4)前記「吸引口16」を通じて、前記「外周壁22」で囲まれた領域へアクセス可能である点。

以上、記載事項ア、イ、及び引用例1の図面と、上記(1)?(4)から、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「露光光源としてのHgランプ2と、
回路パターンが形成されたレクチル9と、
半導体ウエハ11を保持するウエハチャック21と
レクチル9で形成された回路パターンを取り込んで、半導体ウエハ11上に縮小投影する縮小レンズ10と、を含み、
前記ウエハチャック21が、吸引室13を有し、該吸引室13の底面から突出した複数本の支持ピン15と、該複数本の支持ピン15を囲む外周壁22を有し、かつ、外周壁22が、支持ピン15よりも僅かに低く形成されており、
さらに、前記外周壁22の内側面に、少なくとも1つの吸引口16を有し、該吸引口16を通じて、前記外周壁22で囲まれた領域へアクセス可能である露光装置。」

また、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開昭60-9125号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の技術事項が記載されている。

記載事項ウ(第2頁左上欄第1行目乃至右上欄第7行目)
「これを解決するため、ウェハチャック表面を凹凸状にし、凸部の面積の占める割合をウェハに比較して小さくすると良く、方法が種々、考案されている。
第1図は、ウェハを載置する真空保持装置の斜視図である。第2図は第1図の構造体の斜視図。第3図は第2図の縦断面図。以下、図を用いて説明する。円状のベース板1の側面を包被する立上りリム2、立上りリム2の上端に埋込まれたエツジ3、ベース板1に取付けられそして実質上これと垂直になって、複数の一定間隔を置いた先端にテーパを有する円筒状ピン4、ベース板1の中央部には、真空用通路5があり真空ポンプ(図示せず)と連結されている。円筒状ピン4の先端6とエツヂ3の上端7の高さは、面一になる様、機械加工・研摩を施してある。この様な構成において、この面上にウェハ8を載置し、真空用通路5に真空を供給するとウェハ保持装置内の室部9が負圧となりウェハ8は吸着固定される。ウェハに比較して、ウェハの裏面に接する複数個のピンの面積が小さいので、前記異物10をはさむ確率を小さくでき効果的である。ここで注意する点は、ピンとピンとの間隔を必要以上に大きくすると、吸着力によって生ずるウェハの局所たわみが増し、ウェハの平坦度が悪化することである。これで異物に対する問題は解決された訳である。」

3.対比

本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「露光光源としてのHgランプ2」、「回路パターンが形成されたレクチル9」、「半導体ウエハ11を保持するウエハチャック21」、及び「レクチル9で形成された回路パターンを取り込んで、半導体ウエハ11上に縮小投影する縮小レンズ10」は、それぞれ、本願発明の「放射の投影ビームを供給する放射システム」、「マスク」、「基板を保持する基板ホルダ」、及び「前記マスクの照射された部分を前記基板のターゲット部分に映写する投影システム」に相当する。

(2)引用発明の「吸引室13の底面」、「該吸引室13の底面から突出した複数本の支持ピン15」、「複数本の支持ピン15を囲む外周壁22」は、それぞれ、本願発明の「面」、「マトリクス配列」の「突出部」、「マトリクス配列を実質的に囲む」「一つの壁」に相当する。

(3)引用発明の「ウエハチャック21」は、「吸引室13の底面」を含むものであるので、本願発明の「プレート」部を包含するものであると言える。

(4)引用発明の「該吸引室13の底面から突出した複数本の支持ピン15」は、引用例1の図6で示された断面形状から、各支持ピン15はそれぞれ先端部を有し、かつ、全ての支持ピン15の先端面が吸引室13の底面から一定の高さだけ上にあり、単一の実質的に平らな面をなしていること、は明らかであるので、該「複数本の支持ピン15」は、本願発明の「各突出部が前記面から離れた先端を有し、それにより前記突出部が全て前記面よりも高さHだけ上にある単一の実質的に平らな面上にあるように実施され」たものであると言える。

(5)引用発明の「複数本の支持ピン15を囲む外周壁22」は、引用例1の図5及び図6で示されたウエハチャック21の全体形状及び断面形状からみて、吸引室13の底面から、実質的に一様な高さだけ、吸引室13の底面よりも上に突出した一つの壁であることは明らかであるから、本願発明の「前記面から突出する、前記マトリクス配列を実質的に囲む、実質的に一様な高さhだけ前記面よりも上にある一つの壁」に相当すると言える。

(6)上記(4)、(5)より、引用発明の「外周壁22が、支持ピン15よりも僅かに低く形成されており、」は、本願発明の「それによりh<Hであり、」に相当する。

(7)引用発明の「前記外周壁22の内側面に、少なくとも1つの吸引口16を有し、該吸引口16を通じて、前記外周壁22で囲まれた領域へアクセス可能である」と、本願発明の「前記壁の内側の前記面が、前記プレートを貫通して延伸する少なくとも一つの開口を備え、該開口を通じて前記壁で囲まれた領域へアクセス可能である」とは、「前記壁の内側から、前記プレートを貫通して延伸する少なくとも一つの開口を備え、該開口を通じて前記壁で囲まれた領域へアクセス可能である」点で一致する。

(8) 引用発明の「露光装置」は、本願発明の「リソグラフィー投影装置」に相当する。

以上(1)?(8)の対比考察から、引用発明と本願発明とは、
「放射の投影ビームを供給する放射システムと、
マスクと、
基板を保持する基板ホルダと、
前記マスクの照射された部分を前記基板のターゲット部分に映写する投影システムと、を含み、
前記基板ホルダが、突出部のマトリクス配列を備えた面を有するプレートを含み、各突出部が前記面から離れた先端を有し、それにより前記突出部が全て前記面よりも高さHだけ上にある単一の実質的に平らな面上にあるように実施され、前記基板ホルダが、前記面から突出する、前記マトリクス配列を実質的に囲む、実質的に一様な高さhだけ前記面よりも上にある一つの壁をさらに含み、それによりh<Hであり、前記壁の内側から、前記プレートを貫通して延伸する少なくとも一つの開口を備え、該開口を通じて前記壁で囲まれた領域へアクセス可能である、リソグラフィー投影装置。」である点一致し、以下の点で相違する。

相違点1
マスク及び基板ホルダを保持する構造として、本願発明は、それぞれ「マスクテ-ブル」及び「基板テ-ブル」を有するのに対し、引用発明には、その旨、明記されていない点。

相違点2
壁の内側に設けられたプレートを貫通して延伸する少なくとも一つの開口の位置が、本願発明では、「壁の内側の前記(突出部のマトリックス配列を備えた)面」であるのに対して、引用発明では、「外周壁22の内側面」である点。

相違点3
突出部のマトリックス配列構造、及び同配列と壁との配置関係が、本願発明では、「前記マトリクス配列が一連の同心円からなり、それにより、前記突出部が各円に沿って、実質的に規則的な弓形の間隔で配置され、
前記壁が、実質的に円形であって、前記複数の円と同心であり、
前記壁とそれに最も近い前記円との間の半径方向距離xが0.3<x/d<0.6の関係を満足し、ここで、dは前記壁に最も近い二つの円の相互の半径方向間隔であり、
一つの円の一対の隣接する突出部と隣接する円の対応する最も近い一対の隣接する突出部とにより画定される四辺形の領域が、マトリクス分布の前記四辺形の位置に関係なく実質的に一定なサイズを有し、隣接する円のいずれかの対の相互半径方向間隔が実質的にdに等しい」ように設定されているのに対し、引用発明には、そのような設定の限定が記載されていない点。

4.当審の判断

前記相違点について検討する。

(1)相違点1について
半導体露光装置の分野において、マスク及び基板ホルダを固定するためのテ-ブルを各々設けることは、従来周知の構造であるので、引用例1の半導体露光装置においても、これらのテーブルを備えることは、当業者にとって単なる周知手段を採用した程度の事項にすぎない(例えば、特開平8-130179号公報の【図4】を参照)。
したがって、相違点1は実質的なものではない。

(2)相違点2について
引用発明の「開口」は、「開口を通じて前記壁で囲まれた領域へアクセス可能である」という、本願発明の「開口」と同等の機能を有するものであるから、「開口」の位置を、「壁の内側面」に設けるか、「壁の内側の前記(突出部のマトリックス配列を備えた)面」に設けるかは、当業者であれば適宜選択する程度の設計的事項にすぎない。
したがって、相違点2は実質的なものではない。

(3)相違点3について
以下、ア、イの2点に分けて検討する。

ア、突出部のマトリックス配列構造について

引用例2の記載事項ウ及び第2図には、基板保持用の、突出部マトリックス配列構造の周知例として、以下の点が開示されていると認められる(第2図から読み取れるものである)。

・半導体基板を支える複数個のピン(本願発明の「突出部」に相当)のマトリクス配列が、一連の同心円からなり、それにより、前記ピンが各円に沿って、実質的に規則的な弓形の間隔で配置されている点。

・立上りリム(本願発明の「壁」に相当)が、前記複数の円と同心である点。

・一つの円の一対の隣接するピンと隣接する円の対応する最も近い一対の隣接するピンとにより画定される四辺形の領域が、マトリクス分布の前記四辺形の位置に関係なく実質的に一定なサイズを有する点。

・前記隣接する円のいずれかの対の相互半径方向間隔が実質的に等間隔である点。

したがって、同じく基板保持用の突出部のマトリックス配列に関する、引用発明のマトリックス配列構造を、上記周知のマトリックス配列構造に置き換えることは、当業者にとって格別な困難性は認められない。

イ、突出部のマトリックス配列と壁との配置関係について

上記「前記壁とそれに最も近い前記円との間の半径方向距離xが0.3<x/d<0.6の関係を満足し、」という相違部分について、その数値限定が有する技術的な臨界的意義については、本願の当初明細書の段落【0032】、及び図4に記載されたとおり、「ウエハ19の垂直変形△」を「許容範囲」内に治める、という点にある。
(「【0032】実施形態3
図4は、200mmのウエハ19の垂直変形△(単位nm)を、実施形態1で説明したプレート2のウエハ半径r(単位mm)の関数として、壁8から突出部6の最も外側の円12までの半径方向距離xの種々の値について示す。半径rは共通の中心14から測定される。この特定の実施形態では、壁8はr=97.75mmに位置し、dの値は2.54mmである。図4の曲線a?iは、x=1mm(曲線a)から始めて、x=1.4mm(曲線i)まで、0.05mmずつ増加するxの種々の値に対応する。本発明によれば、xのこれらの値は全て、0.39<x/d<0.55の関係を満足する。
【0033】△の最大値は37nm(曲線a)であり、また、△の最小値は約4nm(曲線f)である。図中の△の全ての値は100nmの許容範囲内に充分に収まる(また、大部分は50nmの許容範囲内に収まる)。」)

しかしながら、たとえ本願発明のx/dの値を、上記数値範囲に設定するとしても、基板ウエハの大きさによっては、該ウエハが壁8からどれだけ突出するかが異なるので、上記技術的効果(ウエハ19の垂直変形Δの値が許容範囲内に収まること)を有するものとは、必ずしも言えない。
(つまり、ウエハ端部の垂直変形Δ(たわみ量)は、ウエハ半径rの値(中心14からウエハの最端部までの半径方向の距離)と、中心14から壁8までの半径方向の距離、との差分の長さ(つまり、突起部の支えが存在しない部分の基板端部の長さ)にも依存する(該差分値が大きくなれば、ウエハ端部の垂直変形Δ(たわみ量)も大きくなる)ことは自明であるから、同差分値の設定によっては、ウエハの垂直変形Δ(たわみ量)も「許容範囲」を超えてしまう場合もありうる。)
したがって、x/dの値をどのように設定するかは、当業者にとって単なる設計的事項にすぎない。

よって、相違点3については、引用例1、2に記載された発明、及び周知技術に基いて、当業者は容易に想到する程度のものであると認める。

また、本願発明によってもたらされる効果は引用例1、2の記載及び周知の事項から当業者が予測し得る範囲内のものである。

5.むすび

以上のとおり、本願発明は、当業者からみて、原査定の拒絶の理由に引用された引用例1、2に記載された発明、及び周知の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。

よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-11-11 
結審通知日 2008-11-12 
審決日 2008-11-27 
出願番号 特願平11-86533
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 昌哉  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 越河 勉
村田 尚英
発明の名称 基板ホルダ付きリソグラフィー投影装置とその製造方法  
代理人 大賀 眞司  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 大貫 敏史  

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