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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01H |
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管理番号 | 1196179 |
審判番号 | 不服2005-13959 |
総通号数 | 114 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-06-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-07-21 |
確定日 | 2009-04-23 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第 94290号「プッシュ操作装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年11月10日出願公開、特開平 7-296671号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願の発明 本願は、平成7年3月28日(パリ条約による優先権主張、平成6年4月11日、ドイツ国)の出願であって、その発明は、平成14年3月25日付け、平成16年9月24日付け及び平成20年7月18日付けの手続補正に係る明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至7に記載されたとおりの事項によって特定されるものと認められるが、そのうちの請求項1に係る発明は、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 電動機を制御するためのプッシュ操作装置であって、 ケーシングと、 前記ケーシング内に配置され、軸方向に移動可能な操作部と、 前記ケーシング内に配置され、前記電動機を制御する制御信号を発生するホール・センサと、 前記ホール・センサに対向するように前記操作部の軸方向端部に取り付けられ、該操作部が前記ホール・センサのアクティブ面に垂直な方向に移動操作されることによって軸方向の一極が前記ホール・センサのアクティブ面方向とそれから離れる方向の両方に移動可能である永久磁石と、を備え、 前記永久磁石が前記ホール・センサの方向に移動するときの磁束密度の増加が前記ホール・センサで検出され、それにより前記電動機に供給される前記制御信号の電圧を指数関数的に上昇させることを特徴とするプッシュ操作装置。」(以下「本願発明」という。) 2.引用例とその記載事項 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権の主張の日前である平成2年1月9日に頒布された特開平2-4029号公報(以下「引用例」という。)には、次の(a)?(e)の事項が記載されている (a)「(産業上の利用分野) 本発明はブザー、チャイム、車のクラクション、或いはゲーム機、機械の制御等に利用可能な押ボタンの形状で、出力をリニアな形で取り出せる押ボタン形リニア出力装置に関するものである。」(第1頁右下欄第3?7行)(b)「(発明が解決しようとする課題) 本発明は、押ボタン形式で出力をリニア的に変化可能とするものである。即ち近年機械の制御等では数値制御技術が発達し加工精度が飛躍的に進歩した。ただこの場合にはあくまでプログラムに基づく作業であり、作業中に作業音の考えに基づいて制御を変更する場合は困難な場合があり、手動的に制御することも必要な場合も多い。・・・本発明では、ホール素子等の磁気変換素子を用いて行う・・・この磁気変換素子を用いて出力を出来るだけ直線的に近づけることが、出力装置としての利用価値を高めることになる。 この場合磁界は距離の二乗に反比例して増減する。 従って磁気変換素子に向かって永久磁石を接離したのみでは十分な出力装置は得られない。・・・本発明ではある程度出力を直線的に得ることが出来る出力装置を簡易な構成で得ることとした。」(第1頁右下欄第16行?第2頁左上欄第17行) (c)「(課題を解決するための手段) 本発明は箱体1の基部2に設けたホール素子等よりなる磁気変換素子3の磁気感応面の前方を横切る方向に永久磁石4を移動するように、箱体1上部に進退可能な押片5に連動させたことを特徴とする押ボタン形リニア出力装置・・・である。」(第2頁左上欄第18行?同右上欄第13行) (d)「(作用) 本発明・・・では押片5を箱体1内に押し込むと、押片5の下先端に設けてある永久磁石保持体10も下方に移動し、これに伴って永久磁石保持体10に有する永久磁石4はホール素子等の磁気変換素子の磁気感応面の前方を横切る方向に移動することにより、磁気感応面に鎖交する磁束数の量を、押片5の押し込み量に比例して規則的に増加することになり、その結果出力を直線的に増加させるように作用する。」(第2頁右上欄第14行?同左下欄第5行) 上記(a)?(d)の記載事項を総合すると、引用例には次の発明が記載されているものと認められる。 「機械の制御等に利用可能な押ボタン形リニア出力装置であって、 箱体1の基部2に設けたホール素子等よりなる磁気変換素子3の磁気感応面の前方を横切る方向に永久磁石4が移動するように、箱体1上部に進退可能とした押片5の下先端には永久磁石4を有する永久磁石保持体10設け、 永久磁石4はホール素子等の磁気変換素子の磁気感応面の前方を横切る方向に移動することにより、磁気感応面に鎖交する磁束数の量を、押片5の押し込み量に比例して規則的に増加することになり、その結果出力を直線的に増加させるようにした押ボタン形リニア出力装置。」(以下「引用発明」という。) 3.対比 (1)上記本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明でいう「箱体1」は、本願発明でいう「ケーシング」に、以下同様に、「進退可能な押片5」は「軸方向に移動可能な操作部」に、「ホール素子等よりなる磁気変換素子3」は「ホール・センサ」に、「磁気感応面」は「アクティブ面」に、それぞれ相当する。そして、磁気感応「面」に対する「磁束数の量」の「増加」は、「磁束密度の増加」とみることができるし、ホール素子の「出力」の変化は、永久磁石の一極が当該素子の磁気感応面(アクティブ面)に接近・離隔することに伴って、電圧の変化として現れるものであって、引用発明においてもこれを制御対象に供給する制御信号としていることは本願発明と同様である。また、引用発明も「進退可能な押片5」の押し込み量に比例して、制御信号を変化させるところから、プッシュ操作装置を構成するものといえる。 (2)以上の対比から、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりである。 [一致点] 「制御対象を制御するためのプッシュ操作装置であって、 ケーシングと、 前記ケーシング内に配置され、軸方向に移動可能な操作部と、 前記ケーシング内に配置され、前記制御対象を制御する制御信号を発生するホール・センサと、 前記ホール・センサに対向するように前記操作部の軸方向端部に取り付けられ、該操作部が前記ホール・センサのアクティブ面に対して移動操作されることによって軸方向の一極が前記ホール・センサのアクティブ面に接近する方向とそれから離れる方向の両方に移動可能である永久磁石と、を備え、 前記永久磁石が前記ホール・センサの方向に移動するときの磁束密度の増加が前記ホール・センサで検出され、それにより前記制御対象に供給される前記制御信号の電圧を上昇させるプッシュ操作装置。」である点。 [相違点1] 制御対象が、本願発明では「電動機」とされるのに対して、引用発明では「機械」とするにとどまる点。 [相違点2] 本願発明では、操作部がホール・センサのアクティブ面に垂直な方向に移動操作されることにより、永久磁石は「アクティブ面方向とそれから離れる方向」に移動可能とされて、制御信号の電圧を「指数関数的に」上昇させるのに対し、引用発明では、永久磁石は「磁気感応面(アクティブ面)の前方を横切る方向」に移動可能とされて、制御信号の電圧を「直線的に」上昇させている点。 4.当審の判断 (1)上記の相違点1について検討すると、 電動機は、電気的な制御の対象になる機器類の典型例の一つといえるし、また、引用例(記載事項b)で言及されている「数値制御技術」でも、各種の電動機が常套的に用いられるのであるから、引用発明において、その制御の対象を「電動機」とすることに、何らの困難性も認められない。(なお、この点に関して、欧州特許出願公開第0423673号明細書参照) (2)次に、上記の相違点2について検討すると、 引用例(記載事項b)でも「磁界は距離の二乗に反比例して増減する。 従って磁気変換素子に向かって永久磁石を接離したのみでは十分な出力装置は得られない。・・・」としていることからも明らかなように、ホール素子の出力電圧は、もともと、アクティブ面から永久磁石までの距離に関して、指数関数的に変化するものであることは、一般的によく知られている現象であって、永久磁石がホール・センサのアクティブ面に垂直な方向に移動する場合は、そのような現象が顕著に表れるようになることは明らかである。 そうすると、本願発明でいうように、永久磁石を「アクティブ面方向とそれから離れる方向」に移動可能として、制御信号の電圧を「指数関数的に」上昇させることが、当業者にとって想到困難であるとは到底いえない。 しかも、引用例(記載事項b)では、「本発明ではある程度出力を直線的に得ることが出来る」としているから、本願発明との相違は、結局のところ「程度」の問題に帰するというべきであるし、また、後述するように、制御信号の電圧を「指数関数的に」上昇させることによって、なんらかの格別の効果が期待できるというわけでもなく、当該相違に特段の技術的意義があるとも認められない。 したがって、引用発明に関して、上記相違点2で指摘した本願発明と同様の構成とすることは、当業者が容易になし得る設計事項といえる。 (3)更に、上記相違点1及び2で指摘した構成をあわせ備える本願発明の作用効果も、引用発明及び上記各引用例の記載事項から、当業者が容易に予測できる程度のものであって、格別なものとはいえない。 したがって、本願発明は引用発明及び上記引用例の記載事項から当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.請求人の主張について 請求人は、審判請求の理由(平成17年10月11日付けの手続補正書)や当審で通知した拒絶理由に対する平成20年7月18日付けの意見書において、二次特性を持つ(指数関数的に変化する)ホール・センサの出力は、起重機の電動機の制御に適用すれば、「低速度動作の精度を向上する」ことができる旨を主張している。 しかし、特許請求の範囲においては、「起重機」についての言及は全くないから、上記請求人の主張には根拠がなく、妥当なものとはいえないし、また、仮に上記のような効果があることを一応は認めたとしても、その程度の効果は、当業者であれば上記引用例の記載事項等から当然予測しうるところといえる。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、上記引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-11-27 |
結審通知日 | 2008-11-28 |
審決日 | 2008-12-10 |
出願番号 | 特願平7-94290 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01H)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 仁科 雅弘 |
特許庁審判長 |
川向 和実 |
特許庁審判官 |
渡邉 洋 柴沼 雅樹 |
発明の名称 | プッシュ操作装置 |
代理人 | 奥山 尚一 |
代理人 | 有原 幸一 |
代理人 | 松島 鉄男 |