• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1196181
審判番号 不服2005-16708  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-09-01 
確定日 2009-04-23 
事件の表示 特願2002- 47539「枇杷核エキスを有効成分とするフリーラジカル消去剤」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 9月 2日出願公開、特開2003-246745〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年2月25日に特許出願されたものであって、最初の拒絶理由通知に応答して平成17年5月16日付けで手続補正がなされたが、平成17年7月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年9月1日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成17年9月29日付けで手続補正がなされたものであり、その後、前置報告書を用いた審尋がなされたがそれに対する回答書は提出されなかった。

2.平成17年9月29日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年9月29日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正の概略
本件補正により、特許請求の範囲は、
補正前(平成17年5月16日付け手続補正書参照)の
「【請求項1】 枇杷核を粉砕して得た粉砕物を、エタノール、メタノール、水、ヘキサン、又はこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の溶媒に浸漬して、上清を分取して得られた枇杷核由来エキスを有効成分とするフリーラジカル消去剤。
【請求項2】 前記溶媒が、エタノール、又はメタノールであることを特徴とする請求項l記載のフリーラジカル消去剤。
【請求項3】 枇杷核由来エキスが、リノール酸、リノレン酸、β-シトステロール、β-シトステロール-3-O-モノグリコシド、アミグダリン、ベンズアルデヒド、マンデニトリル、安息香酸からなる群から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1又は2項に記載のフリーラジカル消去剤。
【請求項4】 枇杷核由来エキスが、β-シトステロール及びβ-シトステロール-3-0-モノグリコシドを含有することを特徴とする請求項1?3項のいずれか1項に記載のフリーラジカル消去剤。」から、
補正後(平成17年9月29日付け手続補正書参照)の
「【請求項1】 枇杷核を粉砕して得た粉砕物を、エタノール、メタノール、水、ヘキサン、又はこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の溶媒に浸漬して、上清を分取して得られた枇杷核由来エキスを有効成分とするフリーラジカル消去剤であり、前記枇杷核由来エキスが、β-シトステロール、又はβ-シトステロール-3-O-モノグリコシドを含有するフリーラジカル消去剤。
【請求項2】 前記溶媒が、エタノール、又はメタノールであることを特徴とする請求項l記載のフリーラジカル消去剤。
【請求項3】 枇杷核由来エキスが、リノール酸、リノレン酸、アミグダリン、ベンズアルデヒド、マンデニトリル、安息香酸からなる群から選択される少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1又は2項に記載のフリーラジカル消去剤。
【請求項4】 枇杷核由来エキスが、β-シトステロールを含有することを特徴とする請求項1?3項のいずれか1項に記載のフリーラジカル消去剤。」
と補正された。

上記補正前後の発明特定事項を対比すると、補正後の請求項1?4は、それぞれ補正前の請求項1?4に対応するものと認められる。
そして、補正前の請求項4の「β-シトステロール及びβ-シトステロール-3-0-モノグリコシドを含有する」との発明特定事項が、補正後の請求項4の「β-シトステロールを含有する」との発明特定事項に変更されたことにより、補正前の請求項4の「β-シトステロール-3-0-モノグリコシドを含有する」との発明特定事項が削除された結果、上記2成分を含有するもののみならず、1成分を含有するすべてのエキスを有効成分とするものとなったのであるから、補正後の請求項4は減縮ではなく拡張されたものと言える。
そうすると、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法法第17条の2第4項第2号の規定を満たしておらず、また、同条第4項の他の号に規定する請求項の削除(1号)、誤記の訂正(3号)、明りょうでない記載の釈明(4号)のいずれにも該当しない。

したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項各号の規定を満たしていないため同条第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成17年9月29日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?4に係る発明は、平成17年5月16日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】 枇杷核を粉砕して得た粉砕物を、エタノール、メタノール、水、ヘキサン、又はこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の溶媒に浸漬して、上清を分取して得られた枇杷核由来エキスを有効成分とするフリーラジカル消去剤。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前の刊行物である特開2001-240553号公報(以下、「引用例1」という。)と「Metabolic Brain Disease,2000,Vol.15,No.4,pp.257?265」(以下、「引用例2」という。)、並びに、「Chemical Abs. AN.75:16138」(以下、「引用例3」という。)、特開平5-139987号公報(以下、「引用例4」という。)、特開平9-241637号公報(以下、「引用例5」という。)、特開平7-300412号公報(以下、「引用例6」という。)には、それぞれ、次の技術事項が記載されている。なお、下線は、当審で付した。

[引用例1]
(1-i)「【0012】枇杷核エキスの調製方法
まず、図1を用いて、枇杷核エキスの調製方法について説明する。図1は、枇杷核エキスの調製方法を示す図である。枇杷核を準備する。枇杷核は、必要に応じて洗浄し、乾燥する。乾燥は十分に行なうのが好ましい。後の粉砕を均質に行なうためである。
【0013】次に、枇杷核を粉砕する。粉砕の方法は特に限定されず、ボールミル、ハンマーミル、ローラーミル、ロッドミル、サンプルミル、スタンプミル、ディスインテグレーター、乳鉢、冷却装置付きブレンダーなどの公知の粉砕機を用いることができる。なお、粉砕時における発熱により、枇杷核組成物の分解等が発生することも考えられることより、冷却装置付きブレンダーが好ましい。
【0014】枇杷核を粉砕し粉砕物を得た後、各種溶媒に前記粉砕物を浸漬する。この場合の溶媒は、特に限定されず、所望とする効果に対応して適宜溶媒を設定することができる。溶媒としては、エタノール、メタノール、水、へキサン、酢酸エチル、クロロホルム、アセトンなどの極性、非極性溶媒を問わず挙げることができる。細胞膜透過性が高い枇杷核エキスを得ることができるという観点から、好ましくは、メタノール、エタノール、水等である。
【0015】浸漬は、緩やかな攪拌下で行なうことができる。各種溶媒に前記粉砕物を浸漬して各種溶液を得る。各種溶液について、溶液の状態に応じて攪拌を行い、場合によりそのまま溶液を放置しても良い。攪拌する場合には、特に限定されないが5?10日間攪拌を持続させることができる。
【0016】その後、上清を分取することにより枇杷核エキスを得ることができる。必要に応じて、上清を蒸発乾固する。蒸発乾固は、エバポレータを用いて、55℃?80℃の温浴上で行なうことができる。蒸発乾固することにより、枇杷核エキスを長期間保存することができる。」(段落【0012】?【0016】参照)
(1-ii)「【0017】枇杷核エキスの成分
枇杷核中に含まれる成分は、枇杷核を極性の異なる溶媒を用いて抽出することにより、その物性により振り分けられる。したがって、使用した溶媒により、枇杷核エキスの成分の種類及び含有量は異なる。
【0018】図2は、各種枇杷核エキスの成分を調べるために、各種溶媒を用いて抽出した枇杷核エキスの薄層クロマトグラムを示す。
【0019】この薄層クロマトグラムによれば、溶媒が水であるエキス(以下、水エキスという。)は、原点にのみスポットが認められ、したがって、タンパク質、糖類、アミグダリン等の極性の高い化合物を含有すると考えられる。
【0020】また、溶媒が70%エタノールであるエキス(以下、70%エタノールエキスという。)、及び溶媒がメタノールであるエキス(以下、メタノールエキスという。)は、薄層クロマトグラムにおいて原点のスポットが水エキスに比較して小さく、タンパク質、糖類、アミクダリン等の極性の高い化合物が少ないと考えられる。70%エタノールエキス及びメタノールエキスにおいては、薄層クロマトグラムにてRf値が0.63を示す化合物はリノレン酸、Rf値が0.53を示す化合物は、β-シトステロール、Rf値が0.41を示す化合物はリノール酸、Rf値が0.25を示す化合物はβ-シトステロールモノグリコサイドであることが、構造解析により判明したことにより、これらの化合物を少なくとも含む。また、溶媒がへキサンであるエキス(以下、へキサンエキス)は、薄層クロマトグラムにてRf値が0.71以上の化合物が確認され、極性の低い化合物を多く含むと考えられる。」(段落【0017】?【0020】参照)

[引用例2](英文であるため訳文を示す。)
(2-i)「コレステロール、β-シトステロール、β-シトステロールグルコシド、デヒドロエピアンドロステロンサルフェートおよびメラトニンの試験管内脂質過酸化反応への影響に関する比較研究」(第257頁のタイトル参照)
(2-ii)「鉄(Fe^(2+))の存在下で血小板細胞膜の脂質過酸化反応を評価する試験管の系で、構造的に近いステロイド類であるβ-シトステロール、β-シトステロールグルコシド(植物ステロールおよびステロリン)、コレステロールおよびデヒドロエピアンドロステロンサルフェート(DHEAS)の遊離基捕捉能をメラトニン(効果的な遊離基捕捉剤)と比較した。」(第257頁の抄録の部分の1?5行参照)
(2-iii)「構造的にコレステロースに似た植物ステロールであるβ-シトステロール(BSS)とそのグリコシド(BSSG)も免疫系を調節することが分かっている。」(第258頁19?21行参照)
(2-iv)「考察
遊離基損傷は、不対電子を持つ分子によって引き起こされ、電子を受け取ることができるこのような分子は遊離基捕捉剤と呼ばれる(HalliwelとGutteridge、1984)。これらの分子には、グルコースと同様に酸素のような電子受容体やステロイド分子で見られるような環状構造が含まれる。このことより、本研究で用いられたステロイド分子が脂質過酸化反応を阻害する理由や、ステロールにグルコース分子が結合した構造を持つBSSGがBSS自体より良い遊離基捕捉剤となる理由が説明される。」(第263頁下から16行?下から10行参照)
(2-v)「BSSは、大部分の高等植物中、従って植物由来の食料中にある主な植物ステロールである。ヒトの血清や組織中のBSS濃度は内因性コレステロールより800?1000倍低いが、BSSGはさらに濃度が低いことが分かっている(Pegel、1997)。吸収効率は非常に低いにもかかわらず、それらは免疫系に対する明らかに相乗的な促進作用を示す。本研究の結果より、これらの低血清中濃度では、特にBBSGが存在するとBSSは生体内における遊離基損傷から守ってくれるということが示めされる。」(第264頁13?19参照)

[引用例3](英文抄録のため訳文を示す。)
(3-i)熟したE.japonica(ビワ)の種の子葉と種皮は、80%EtOHで抽出分離され、両抽出物は5つの部分に分別された。幾つかの低分子量フェノール性化合物、即ちクロロゲン酸、イソクロロゲン酸、ネオクロロゲン酸、カフェー酸、(+)カテキン及び(+)ガロカテキンは、ビワ種子に見出された。フリー又はO-グリコシド型のロイコアントシアニンは見出されなかった。会合したポリフェノール性物質の相当量は、ビワ種子の2つの部分に見出された。これらの物質は、ヘテロポリマーであり、ロイコシアニジン、少量のロイコペラルゴニジン、カテキン及びクロロゲン酸からなる。縮合されたポリフェノール性物質は、水又は有機溶媒に不要であり、酸で加水分解することは困難であり、熟したビワま種子に存在すると思われる。フリーのD-フルクトース、D-グルコース及びスクロースは、見出されたが、グリコシド類は無かった。(ABの項参照)

[引用例4]
(4-i)「【0003】従来よりこの種の活性酸素フリーラジカルを消去する活性酸素フリーラジカル消去剤として、大黄(中国産雅黄)が有効であることが知られている(「フリーラジカルと和漢薬」国際医書出版)。また緑茶葉から抽出したカテキンにも活性酸素フリーラジカルを消去する作用のあることが発見されている(「FrangranceJ. 」 フレグランスジャーナル社版)。」(段落【0003】参照)
(4-ii)「【0007】
【作用】本願出願人は、種々の化学物質に関して活性酸素フリーラジカルの消去作用を測定した結果、クロロゲン酸を含むひまわり種子抽出物にも、活性酸素フリーラジカルを消去する作用が有ることを発見した。」(段落【0007】参照)
(4-iii)「【0013】一方ひまわり種子抽出物とは、酸化防止剤(例えば商品名ヘリアント:大日本インキ株式会社製)として一般的に知られているものであり、主要成分としてクロロゲン酸を含有している。上記活性酸素フリーラジカル消去剤を10日または20日間継続して投与したときの、上記腎不全ラットの尿中のメチルグアニジン量を図1に示す。図に示すように比較例2?4の活性酸素フリーラジカル消去剤を投与したラットでは、何れも20日間で尿中のメチルグアニジン量が60μgから35?45μgまで減少しており、これより緑茶葉抽出物,ひまわり種子抽出物,及び大黄水性抽出物は何れもフリーラジカルを消去する作用を有することが判る。・・・(後略)。」(段落【0013】参照)

[引用例5]
(5-i)「【請求項2】 活性酸素ラジカルスカベンジャーがカテキン類、タンニン・ポリフェノール類、アントシアニン類、フラボノイド類およびサポニン類から選ばれる1種または2種以上の物質である、請求項1に記載の組成物。」(【特許請求の範囲】の【請求項2】参照)
(5-ii)「【0040】カテキン類における代表的な成分は、カテキン、カテキンガレート、エピカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレート、ガロカテキン、ガロカテキンガレートの8種類であるが、いずれにおいてもラジカルスカベンジャー作用あるいは抗酸化作用を示すことが確認されている。
【0041】 ・・・中略・・・
【0042】カテキン類およびそれらの関連成分のいずれもが、本発明の活性酸素ラジカルスカベンジャーに包含される。」(段落【0040】?【0042】参照)

[引用例6]
(6-i)「【請求項1】 下記一般式(I)で表される化合物及び/又はその生理的に許容される塩からなる活性酸素消去剤。

ただし、化1中、R_(1)、R_(2)は、それぞれ独立して水素原子、水酸基又は短鎖長アルコキシル基を示し、R_(3)は、水素原子、カルボキシル基、短鎖長アルコキシカルボニル基、ホルミル基、短鎖長アシル基、短鎖長カルボキシアルケニル基、短鎖長アルコキシカルボニルアルケニル基、短鎖長アルケニル基又は短鎖長ヒドロキシアルケニル基を示す。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】参照)
(6-ii)「【0043】
【作用】本発明の活性酸素消去剤として用いる、一般式(I)で表される化合物について、2,6-ジメトキシフェノール、シリンゴ酸、没食子酸、カフェー酸、ピロガロール、グアヤコール、メチルシナペート、シリングアルデヒド、メチルガレート、プロトカテキン酸、アセトシリンゴ、フェルラ酸及びコニフェリルアルコールを用いて、安全性及び活性酸素消去作用に関する試験を行った。」(段落【0043】参照)
(6-iii)「【0047】(3)活性酸素消去作用の測定
化29に示す反応式に基づき、キサンチン-キサンチンオキシダーゼ(XOD)系により活性酸素の一つであるスーパーオキシドアニオン(O_(2)^(-))を発生させ、発生したO_(2)^(-)の生成率を亜硝酸法により測定し、この値をキサンチンオキシダーゼ阻害率値で補正して活性酸素消去作用値を求めた。
【0048】?【0054】 ・・・中略・・・
【0055】更に、上記方法で得られた活性酸素消去活性値を非線形最小自乗法プログラムにかけ、IC_(50)値(M)を算出した。結果を表2に示す。
【0056】【表2】

【0057】この結果から明らかなように、本発明の活性酸素消去剤として用いる上記13種類の化合物は何れもIC_(50)値が極めて低く、低濃度でも優れた活性酸素消去活性を有していることがわかる。」(段落【0047】?【0057】参照)

(2)対比、判断
(2-1)本願発明と引用例1に記載された発明を対比する。
引用例1には、上記「3.(1)」の[引用例1]の摘示の記載からみて、次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。
「枇杷核を粉砕して得た粉砕物を、エタノール、メタノール、水、ヘキサン、又は70%エタノールからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒に浸漬して、上清を分取して得られた枇杷核由来エキス。」

他方、本願発明でも、「エタノール、メタノール、水、ヘキサン、又はこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の溶媒」として、具体的な枇杷核エキスの調製方法において「70%エタノール」を溶媒として用いたことが記載されている(本願明細書段落【0027】参照)。

してみると、両発明は、
「枇杷核を粉砕して得た粉砕物を、70%エタノールから選択される溶媒に浸漬して、上清を分取して得られた枇杷核由来エキス。」
で一致し、次の相違点1で相違する。
<相違点>
1.本願発明では、枇杷核由来エキスを「フリーラジカル消去剤」とするのに対し、引用例1発明では、そのように特定していない点。

そこで、この相違点1について検討する。
引用例1には、該「枇杷核由来エキス」には、少なくとも、「β-シトステロール及びβ-シトステロール-3-0-モノグリコシドを含有する」(摘示(1-ii)の段落【0020】参照)ことが記載されている。
他方、引用例2には、BBSG(β-シトステロールのグリコシド)が存在するとBSS(β-シトステロール)は生体内における遊離基損傷から守ってくれること(摘示(2-v),(2-iii)参照)、及び、「遊離基損傷は、不対電子を持つ分子によって引き起こされ、電子を受け取ることができるこのような分子は遊離基捕捉剤と呼ばれる」(摘示(2-iv)参照)ことが記載されていることからみて、β-シトステロールのグリコシド及びβ-シトステロールの両方が存在すると遊離基捕捉剤、即ちフリーラジカル消去剤となると認められる。
してみると、「β-シトステロール及びβ-シトステロール-3-0-モノグリコシドを含有する」ものである「枇杷核由来エキス」がフリーラジカル消去剤と成り得ることは、当業者が容易に思い至ることであり、そのフリーラジカル消去作用の程度を確認することに格別の創意工夫が必要であったとは認められない。

ここで、本願発明の作用効果について本願明細書の記載を検討する。
実施例1(好中球にfMLP活性酸素産生刺激剤と有効成分を投与し、活性酸素産生抑制率と活性酸素除去率を測定)のデータを示す図3A(枇杷核エキス)と図3B(β-シトステロール)を検討すると、似たような曲線を描いているが、横軸の使用量(単位mg/ml)について言えば、前者は後者よりほぼ1桁多い(前者0?10,後者0?1.2)ことに注意すると、前者が格別優れていると断定することは出来ないし(むしろ、同じ量を用いる場合には枇杷核エキスは劣っているという他ない。)、実施例2(実施例1で活性酸素産生刺激剤としてホルボールミリステートアセテートを用いた場合)の図5A(枇杷核エキス)と図5B(β-シトステロール)、実施例3(実施例1で活性酸素産生刺激剤としてアラキド酸を用いた場合)の図7A(枇杷核エキス)と図7B(β-シトステロール)についても、使用量が1桁異なる点で同様である。
ところで、実施例4のキサンチン・キサンチンオキシターゼによる活性酸素発生系におけるSOD様活性のデータ、及び実施例5の安定ラジカルDPPHに対する消去能のデータでは、枇杷核エキスがβ-シトステロールよりも優れるデータが示されている。しかし、前記実施例1?3を勘案すると、実験系(実験対象)によって作用が異なり、使用対象が特定されていないフリーラジカル消去剤である本願発明に包含される全ての場合にまで格別に優れているということはできない。
また、本願発明では、水を溶媒とした場合の枇杷核エキスも選択肢として包含するものであるので、その場合について検討すると、段落【0019】に記載の如く、図2に示されたクロロホルム:メタノール:水=8:2:0.2の展開溶媒では、原点のみにスポットが認められ、タンパク質、糖類、アミグダリン等の極性の高い化合物物を含有するのに対し、各種試験の対象に用いられている70%エタノールを溶媒として得られるものと著しく異なるものと認められる(図2の展開図を参照)から、水を溶媒とした場合の枇杷核エキスについてはデータも無くフリーラジカル消去作用がどの程度のものか不明であるといえるので、本願発明の全てについて格別優れたフリーラジカル消去作用があるとすることはできない。
そして、本願明細書の他のデータを検討しても、本願発明に包含される全ての場合に渡ってまで、予想外に格別優れていると解することはできない。
なお、請求人は、「素材が天然素材であるため、副作用を生じることなしに、所望の効果を達成することができ」ることを主張するが、かかる主張は根拠がないものであり、また、「農産物の利用範囲の拡大、及び廃棄物の有効利用等」も主張するが、予想を超えるものではない。

したがって、相違点1にかかる本願発明の発明特定事項は、当業者が容易に想到し得たものである。

よって、本願発明は、引用例2の記載を勘案し、引用例1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(2-2)本願発明と引用例3に記載された発明を対比する。
引用例3には、上記「3.(1)」の[引用例3]の摘示の記載からみて、次の発明(以下、「引用例3発明」という。)が記載されていると認められる。
「ビワ種子を子葉部と種皮部に分け、低分子フェノール性化合物を80%エタノールで抽出して得た抽出物。」

ここで、
(a)枇杷核とビワの種子とが同じである旨が本願明細書に説明されている(段落【0007】参照)ことから、「枇杷核」と「ビワ種子」は同じである。
(b)「エタノールで抽出して得た抽出物」は、一般に沈殿物を除いた上清の部分から抽出物を得ていることを勘案し、エタノールの「溶媒に浸漬し、上清を分取して得られた」エキスと言える。
(c)ビワ種子を子葉と種皮に分けて、エタノールで抽出して得た抽出物も、ビワ種子(即ち、枇杷核)由来であるから、「枇杷核由来エキス」と言える。
(d)80%エタノールは、エタノールと水の混合物であることは明らかである(なお、本願発明でも、実施例では70%エタノール、即ちエタノールと水の混合物を用いている。)。

してみると、両発明は、
「枇杷核を、エタノールと水の混合物の溶媒に浸漬して、上清を分取して得られた枇杷核由来エキス。」
で一致し、次の相違点1,2で相違する。
<相違点>
1.本願発明では、枇杷核由来エキスを「フリーラジカル消去剤」とするのに対し、引用例3発明では、そのように特定していない点
2.本願発明では、枇杷核をそのまま粉砕し溶媒浸漬に供しているのに対し、引用例3発明では、粉砕について言及が無く子葉と種皮に分けて分析している点

そこで、これらの相違点について、検討する。
<相違点1>について
引用例3では、ビワ種子を子葉と種皮に分けてエタノール抽出しているが、いずれにもカテキン、クロロゲン酸、コーヒー酸などの低分子量ポリフェノール成分が含有されていることが明らかにされている(摘示(3-i),(3-ii)参照)。
他方、引用例4?6には、上記「3.(1)」の[引用例4]?[引用例6]の摘示の記載からみて、カテキン類、クロロゲン酸、カフェー酸などのポリフェノール成分はフリーラジカル消去作用を有することが明らかにされていると認められる。
してみると、「カテキン、クロロゲン酸、カフエー酸などのポリフェノール成分」を含有する「枇杷核由来エキス」をフリーラジカル消去剤として利用し得ることは、当業者が容易に思い至ることであり、そのフリーラジカル消去作用の程度を確認することに格別の創意工夫が必要であるとは認められない。
したがって、相違点1にかかる本願発明の発明特定事項は、当業者が容易に想到し得たものである。

<相違点2>について
植物エキスを取り出す際に、対象植物を粉砕して抽出処理を行うことは適宜行われていることであるから、粉砕を行って抽出処理することは適宜為し得ることであり、その粉砕によって格別予想外の作用効果を奏しているとも認められない。
ビワ種子の子葉と種皮に含まれる成分がビワ種子(即ち、枇杷核)に含まれることは、明らかであり、引用例3で子葉と種皮に分けて成分を分析しているのは、単にそれぞれの部位に各種フェノール成分がどの程度含まれるか解析しているにすぎないものと認められることを勘案すると、フリーラジカル消去剤としての利用を考える際に、子葉と種皮に分けるまでもなく、枇杷核そのものを使用することは、当業者が容易に採用し得る程度のことと言うべきである。

それゆえ、相違点1,2にかかる本願発明の発明特定事項を合わせ採用することに格別の困難性があるとは認められず、そのフリーラジカル消去作用の程度を確認することに格別の創意工夫が必要であるとは認められない。
そして、本願発明に包含される全ての場合にまで格別優れた効果を奏しているとも認められない。

よって、本願発明は、引用例4?6の記載を勘案し、引用例3発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。それ故、他の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-19 
結審通知日 2009-02-24 
審決日 2009-03-09 
出願番号 特願2002-47539(P2002-47539)
審決分類 P 1 8・ 573- Z (A61K)
P 1 8・ 574- Z (A61K)
P 1 8・ 571- Z (A61K)
P 1 8・ 572- Z (A61K)
P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鶴見 秀紀  
特許庁審判長 川上 美秀
特許庁審判官 穴吹 智子
谷口 博
発明の名称 枇杷核エキスを有効成分とするフリーラジカル消去剤  
代理人 来間 清志  
代理人 冨田 和幸  
代理人 杉村 興作  
代理人 徳永 博  
代理人 岩佐 義幸  
代理人 藤谷 史朗  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ