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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1196192
審判番号 不服2006-13793  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-29 
確定日 2009-04-23 
事件の表示 特願2002- 57307「適応的情報検索システム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 9月12日出願公開、特開2003-256466〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年3月4日の出願であって、平成18年3月7日付けで拒絶理由が通知され、同年5月12日付けで手続補正がなされ、同年5月24日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年6月29日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年7月31日付で手続補正がなされたものである。


2.平成18年7月31日付の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成18年7月31日付の手続補正を却下する。

[理由]
上記手続補正(以下、「本件補正」と呼ぶ。)による補正後の請求項1、2は、それぞれ、
「【請求項1】
問合せの特徴を各要素の値で表した問合せベクトル、及び、検索対象となるコンテンツに付加されたベクトルであってコンテンツの特徴を各要素の値で表した特徴ベクトルを用いて、コンテンツの評価を行うことにより、前記
問合せに対するコンテンツの高速検索を可能にする適応的情報検索システムであって、
前記コンテンツの評価は、前記問合せベクトルと前記特徴ベクトルとを入力変数とするコンテンツの評価値を算出するための評価関数に、問合せに対応する問合せベクトルと、評価対象のコンテンツの特徴ベクトルとを入力し、前記問合せに対するコンテンツの評価値を算出して行われ、
前記評価関数は、前記特徴ベクトルに対する前記問合せベクトルの向きに応じた値を、コンテンツの評価値として算出する関数として構成され、
更に、当該システムは、再問合せに対応するコンテンツの再検索時において、検索結果が正しくなる方向に、前記評価関数に入力する問合せベクトルを修正する更新手段を備えていること
を特徴とする適応的情報検索システム。
【請求項2】
前記評価関数は、入力変数として入力されるベクトルに存在する不定成分を、所定値に設定して、前記コンテンツの評価値を算出する関数として構成され、
更に、当該システムは、
前記更新手段に代えて、
再問合せに対応するコンテンツの再検索時において、検索結果が正しくなる方向に、前記評価関数が不定成分に設定する値を修正する関数更新手段を備えていること
を特徴とする請求項1記載の適応的情報検索システム。」(以下、上記補正後の請求項1に係る発明を「補正発明1」と呼び、同補正後の請求項2に係る発明を「補正発明2」と呼ぶ。)というものであるが、補正発明1における「前記評価関数は、前記特徴ベクトルに対する前記問合せベクトルの向きに応じた値を、コンテンツの評価値として算出する関数として構成され、」なる発明特定事項と、補正発明2における「再問合せに対応するコンテンツの再検索時において、検索結果が正しくなる方向に、前記評価関数が不定成分に設定する値を修正する関数更新手段」なる発明特定事項は、いずれも、本願の出願当初の明細書又は図面(以下、「当初明細書等」と呼ぶ。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであり、当初明細書等に記載された事項の範囲内のものとは認められない。
以下、説明する。
(1)補正発明1の「前記評価関数は、前記特徴ベクトルに対する前記問合せベクトルの向きに応じた値を、コンテンツの評価値として算出する関数として構成され、」なる発明特定事項について
当初明細書等には、本発明特定事項に関連する記載として、審判請求人が、平成18年7月31日付けの審判請求書についての手続補正書(方式)の【本願発明が特許されるべき理由】の「(2)補正の根拠の明示」の「(a)請求項1に関して」の欄で主張するとおり、「内積演算によりコンテンツの評価値を算出する例」についての記載はあるが、それ以外には、本発明特定事項が「当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないもの」に該当することを示す根拠となり得る記載は見当たらない。
そこで、該「内積演算によりコンテンツの評価値を算出する例」についての記載の存在をもって、上記「前記評価関数は、前記特徴ベクトルに対する前記問合せベクトルの向きに応じた値を、コンテンツの評価値として算出する関数として構成され、」なる発明特定事項が「当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないもの」に該当するということができるか否かについて検討するに、当審は、該「内積演算によりコンテンツの評価値を算出する例」についての記載の存在をもっては、上記「前記評価関数は、前記特徴ベクトルに対する前記問合せベクトルの向きに応じた値を、コンテンツの評価値として算出する関数として構成され、」なる発明特定事項が「当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないもの」に該当するということはできないと判断する。
理由は以下のとおりである。
すなわち、上記発明特定事項でいう「ベクトルの向きに応じた値」が「内積」以外の概念をも含んでいることはその文言から明らかであるし、該「ベクトルの向きに応じた値」の「内積」以外の部分については、それをコンテンツの評価値とすることが当初明細書等の記載から自明な事項ともいえないから、該「ベクトルの向きに応じた値」の「内積」以外の部分をコンテンツの評価値とする点は、「当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するもの」である。
(2)補正発明2の「再問合せに対応するコンテンツの再検索時において、検索結果が正しくなる方向に、前記評価関数が不定成分に設定する値を修正する関数更新手段」なる発明特定事項について
当初明細書等には、本発明特定事項に関連する記載として、審判請求人が、平成18年7月31日付けの審判請求書についての手続補正書(方式)の【本願発明が特許されるべき理由】の「(2)補正の根拠の明示」の「(b)請求項2に関して」の欄で主張するとおり、段落[0197][0198][0213]の記載があるが、それ以外には、本発明特定事項が「当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないもの」に該当することを示す根拠となり得る記載は見当たらない。
そこで、該段落[0197][0198][0213]の記載の存在をもって、上記「再問合せに対応するコンテンツの再検索時において、検索結果が正しくなる方向に、前記評価関数が不定成分に設定する値を修正する関数更新手段」なる発明特定事項が「当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないもの」に該当するということができるか否かについて検討するに、当審は、該段落[0197][0198][0213]の記載の存在をもっては、上記「再問合せに対応するコンテンツの再検索時において、検索結果が正しくなる方向に、前記評価関数が不定成分に設定する値を修正する関数更新手段」なる発明特定事項が「当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないもの」に該当するということはできないと判断する。
理由は以下のとおりである。
すなわち、段落[0197][0198][0213]の記載は下に転記するとおりであり、そこには、「入力変数として入力されるベクトルに存在する不定成分を、所定値に設定して、コンテンツの評価値を算出する関数とすること」に関する記載や、「再問合せに対応するコンテンツの再検索時に評価関数の適用基準や評価関数そのものを修正すること」に関する記載はあるものの、「再検索時において、検索結果が正しくなる方向に、前記評価関数が不定成分に設定する値を修正する」ことについての記載はないし、該「再検索時において、検索結果が正しくなる方向に、前記評価関数が不定成分に設定する値を修正する」ことは、当初明細書等の記載から自明な事項ともいえないから、該「再検索時において、検索結果が正しくなる方向に、前記評価関数が不定成分に設定する値を修正する」ことを含む本発明特定事項は、「当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するもの」である。

<段落[0197][0198][0213]の記載の転記>
「【0197】
8.評価関数の修正(図21中のS570)
(1)不定成分を含んだ特徴ベクトルの評価手法
例えば、問合せベクトルQ及びコンテンツの特徴ベクトルCが、次のように不定値を含んでいる場合を考える。
Q=(1, 3,2,8,X1)
C=(3,X2,4,2,X3)
この場合、内積演算を用いたコンテンツの評価値Eは、次に示す如くとなる。
E=A・B=1*3 + 3*X1 + 2*4 + 8*2 + X2*X3
ここで、評価値Eが具体的な数値になるように、次のいずれかの手法を採用する。いずれの手法を採用するかは、所定の条件判断による。」
「【0198】
(審決注:原文中の丸付き数字は、丸括弧付き数字に置換した。)
(1)10段階の平均としてX1=X2=X3=5と一律におく
(2)i番目の成分の平均値Miに置きかえる。即ち、X1=M5、X2=M2、X3=M5とおく。
(3)Xを含む成分は計算しない。即ち、E=1*3 + 3*0 + 2*4 + 8*2 + 0*0=25と計算する。」
「【0213】
3.検索モジュールの修正(図35中のS1130)
検索モジュールについては以下の修正が考えられる。
(1)評価関数の適用基準や評価関数そのものを修正する
(2)意味ネットワークやキーワードテーブルの修正
(3)視点変更の特性を修正する
4.検索対象の修正(図35中のS1120)
検索サイトの変更や同一サイトでも検索するデータベースを変更することに相当する。例えば、あるメーカーの製品情報を検索する場合、古いモデルの情報を蓄積したホームページのURLがそのままになっていることがあるが、それらを新しいモデルの情報を蓄積したホームページのURLに変更する。」

以上のとおりであるから、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


3.本願特許請求の範囲の記載について

(1)本願特許請求の範囲の記載
本願特許請求の範囲の記載は、平成18年5月12日付けの手続補正書の【手続補正1】の欄に記載されたとおりであり、その請求項1の記載は以下のとおりである。
「少なくとも一部がベクトルとして定義される情報である、問合せに対応する問合せ情報、及び、検索対象となるコンテンツに付加される特徴情報を用いて、コンテンツの評価を行うことにより、前記問合せに対するコンテンツの高速検索を可能にする適応的情報検索システムであって、
前記問合せの進展内容に基づき、検索結果の正しさを評価し、以後の検索結果が正しくなる方向に、前記コンテンツの評価に影響を与える格納情報を、修正する更新手段を備えていること
を特徴とする適応的情報検索システム。」

(2)原査定の理由
一方、原査定の拒絶の理由のうち、上記請求項1(出願当初の請求項67に対応)に関連する部分の概要は、次のとおりである。
「本願は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備と認められるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



請求項1の『更新手段』についての記載では、発明が明確でない。」

(3)当審の判断
上記請求項1には、「更新手段」に関して以下の記載がある。
「前記問合せの進展内容に基づき、検索結果の正しさを評価し、以後の検索結果が正しくなる方向に、前記コンテンツの評価に影響を与える格納情報を、修正する更新手段」
該「更新手段」についての記載から、上記請求項1に係る発明が明確といえるか否かについて検討するに、当審は、以下の理由で、明確とはいえないと判断する。
ア.上記「更新手段」に関する記載中の「検索結果の正しさを評価し」は、その記載自体からはもとより、請求項1の記載全体を参酌しても、評価の主体(何が評価するのか)、及び評価の具体的内容(何をどのような尺度で評価するのか)が不明確であり、それに起因して上記「更新手段」に包含される具体的事物の範囲が不明確である(なお、評価の主体については、請求項1の文言上は「適応的情報検索システム」中の「更新手段」であるかのようにも思われるが、検索結果が正しいか否かは検索をするユーザにしか分からないはずであり、該「適応的情報検索システム」中の「更新手段」が「検索結果の正しさ」を評価できるとは考えられない。)。
イ.上記「更新手段」における「検索結果の正しさを評価し」に関係すると思われる記載を発明の詳細な説明中で探しても、段落[0210]に「対話を通じた問合せの進展により、ある時点で検索結果の正しさに対するユーザの評価を得ることができる。」なる記載がある程度であり、該発明の詳細な説明の記載を参酌しても、上記評価の主体や評価の具体的内容は、不明確なままであり、上記「更新手段」に包含される具体的事物の範囲も不明確なままである。
ウ.上記「更新手段」に関する記載中の「前記コンテンツの評価に影響を与える格納情報を、修正する」は、その記載自体からはもとより、請求項1の記載全体を参酌しても、修正の具体的内容(何をどのように修正するのか)が不明確であり、それに起因しても、上記「更新手段」に包含される具体的事物の範囲が不明確である。
エ.上記「更新手段」における「前記コンテンツの評価に影響を与える格納情報を、修正する」に関係すると思われる記載を発明の詳細な説明中で探すと、段落[0207]以下の「<3>システムの更新」の欄に「問合せの修正」「検索対象の修正」「検索モジュールの修正」等に関する記載はあるものの、それらの記載を参酌しても、上記修正の具体的内容は不明確なままであり、上記「更新手段」に包含される具体的事物の範囲も不明確なままである。
オ.一般に、請求項に記載された技術的事項から一の発明が明確に把握できるためには、当該発明の技術的課題を解決するために必要な事項が請求項に記載されることが必要である(知的財産高等裁判所平成18(行ケ)10420号審決取消請求事件判決(平成19年5月10日判決言渡)参照)というべきであるが、上記「更新手段」に関する記載では、技術的課題を解決するために必要な事項が特定できないから、その意味においても、本願の請求項1の記載は、特許を受けようとする発明を明確に規定したものということはできない。

(4)むすび
したがって、原査定の、その他の拒絶の理由を検討するまでもなく、本願は、特許法36条6項に規定する要件を満たしていない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-18 
結審通知日 2009-02-24 
審決日 2009-03-09 
出願番号 特願2002-57307(P2002-57307)
審決分類 P 1 8・ 537- Z (G06F)
P 1 8・ 561- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 和田 財太  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 手島 聖治
田口 英雄
発明の名称 適応的情報検索システム  
代理人 足立 勉  

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