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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E02D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E02D
管理番号 1196229
審判番号 不服2007-19565  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-07-12 
確定日 2009-04-23 
事件の表示 特願2002-355245「斜面補強工法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年7月2日出願公開,特開2004-183444〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は,平成14年12月6日の出願であって,平成19年6月4日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年7月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同年8月10日付けで手続補正がなされたものである。
そして,当審において,平成20年11月7日付けで審査官による前置報告書に基づく審尋がなされたところ,平成21年1月7日付けで回答書が提出されたものである。


第2.平成19年8月10日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成19年8月10日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
【1】補正後の本願発明
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は,次のとおりに補正された。
「孔内に加圧注入した固化材と、該固結材に埋設して残置した補強芯材を兼ねた高強度中空パイプとにより形成した補強部で補強する斜面補強工法において、
先端に削孔ビットを設けた高強度中空パイプと、先端ビット付きのケーシングを使用して削孔を行なう第1工程と、
ケーシングを引き抜きながら孔内に高強度中空パイプを残置し、該残置した高強度中空パイプを通じて孔内の全長に亘って固化材を加圧注入する第2工程と、
削孔に使用したケーシングのすべてを回収する第3工程とにより構成することを特徴とする、
斜面補強工法。」

上記補正は,本願の請求項1に係る発明の「ケーシング」を,「先端ビット付き」のものに限定するものであって,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そこで,本件補正後の上記請求項1に係る発明(以下,「本件補正発明」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて,以下に検討する。


【2】刊行物とその記載内容
刊行物:特開2002-4276号公報

本願出願前に頒布された,上記刊行物には,「大径ロックボルトを用いた地山補強土工法」に関して,図面とともに,次のことが記載されている。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】地盤に穿孔しその孔内にアンカーボルトの挿入およびグラウト材の注入を行い、グラウト材の硬化によりアンカーボルトを地盤中に定着させる地中アンカー工法において、削孔用アウタービットを先端部に備えたケーシングロッドの内部に、削孔用インナービットを先端に有する芯材を予め装着し、該芯材に設けた削孔用インナービットをケーシングロッドの先端内部に装着して、ケーシングロッドの先端部の削孔用アウタービットとの二重ビットに構成し、該二重ビットをケーシングロッドを介して油圧式ロータリーパーカッションドリルハンマーを用いて地盤の所定深度まで貫入削孔した後、芯材に設けた注入ホースから孔先端部から孔口部に向けてスライムを押出ながらからグラウト材を削孔内に充填するとともに、ケーシングロッドの引抜き時に該削孔用アウタービットと削孔用インナービットとの連結を解除し、削孔用インナービットと芯材とを削孔内に残置したままケーシングロッドを引抜き、グラウト材と芯材とから成るアンカー体を地盤中に造成することを特徴とする大径ロックボルトを用いた地山補強土工法。
【請求項2】ケーシングロッドの外径が90mm?216mmからなり、芯材の呼び径が19?51mmの異形もしくは全ネジ鋼棒などの鋼棒であることを特徴とする請求項1記載の大径ロックボルトを用いた地山補強土工法。…」,
「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は土木工事の掘削土留め工、掘削時の仮土留め工、斜面の雨水や地震に対する強化および構造物補強ために用いる大径ロックボルトを用いた補強土工法を、従来よりも高品質で能率的、かつ、経済的な施工方法および装置に関する。」,
「【0024】
【発明の実施の形態】この発明の実施の形態を実施例に基づき図面を参照して説明する。図1はこの発明の地山補強工法の手順を示す図であり、図2はこの工法に用いる芯材を示す図である。図2において、1は…外径90mm?216mmのケーシングロッドであり、先端に削孔用アウタービット3とケーシングロッド1内の断面中心位置に予め装着した芯材2の先端に設けた削孔用インナービット4とで二重ビット5を形成する。
【0025】芯材2は…異形鋼棒もしくは全ネジ鋼棒などの鋼棒を用いるが、実施例では全ネジ鋼棒を用いる。この芯材2にはグラウト材Cを注出する注入ホース6が取付けられている。前記二重ビット5は後述する連結解除装置8によりケーシングロッド1と分離可能に取り付けられており、この様に構成したケーシングロッドをロータリーパーカッションドリル30により、土層または岩盤中G中に打ち込み掘削する。(図1(A))
【0026】途中必要に応じて芯材2と注入ホース6を継ぎ足し(図1(B))、所定深度に…孔の削孔を完了したらグラウト材、例えば、セメントミルクCを芯材2に装着した注入ホース6を通じて先端部から削孔内に充填する。(図1(C))
【0027】孔口部での操作により二重ビット5のインナービット4とケーシングロッド1の削孔用アウタービットと3の連結を解除しケーシングロッド1を引上げる。(図1(D))ケーシングロッド引上げの際削孔用インナービット4と芯材2は削孔H内に残置しアンカー体Aの芯材となる(図1(E))」,
「【0028】図3は芯材の構造を示す斜視図で、芯材2は先端に二重ビット5の連結および解除部材の一つの先端ナット9を有していて、軸身にはグラウト材の注入ホース6がホース固定バンド7により取り付けられている。…」,
「【0031】図7により二重ビット5の連結解除操作について説明すると、図7(A)の様に油圧式ロータリーパーカッションドリルハンマー30を用いて地盤の所定深度までケーシングロッドを貫入掘削後、芯材2に取付けた注入ホース6からグラウト材Cを削孔H内に充填しケーシングロッドを引上げる時、孔口部での操作で芯材2を先端ナット9の移動スペース14分だけ引き上げると、図7(B)に示す様にインナービット4の内壁4bから先端ナット9が離れ、先端ナット9により当接支持されていたビット連結ピン12およびスプリング13が抜け落ちアウタービットとの結合が解かれる。そして図7(C)に示す様に、インナービット4と芯材を削孔H内に残置したままケーシングロッド1は引上げられる。」。
また,【図1】(D)(E),及び,【図9】(C)(D)には,削孔H内の全長に亘ってセメントミルクCを充填することが,記載されている。

上記記載を含む刊行物全体の記載及び当業者の技術常識によれば,刊行物には,次の発明が記載されているものと認められる。
「削孔H内にセメントミルクCと,該セメントミルクCに埋設して残置した鋼棒からなる芯材2とにより形成したアンカー体Aで補強する地山補強土工法において,
先端にインナービット4を設けた鋼棒からなる芯材2と,削孔用アウタービット3付きのケーシングロッド1を使用して削孔を行ない,
削孔H内に鋼棒からなる芯材2を残置し,該残置した鋼棒からなる芯材2に取り付けた注入ホース6を通じて削孔H内の全長に亘ってセメントミルクCを充填するとともに,
削孔に使用したケーシングロッド1を削孔H内から引き上げる,地山補強土工法。」(以下,「刊行物記載の発明」という。)


【3】対比
そこで,本件補正発明と刊行物記載の発明とを対比すると,
刊行物記載の発明の「削孔H」は本件補正発明の「孔」に相当し,以下同様に,「セメントミルクC」は「固化材」或いは「固結材」に,「アンカー体A」は「補強部」に,「地山補強土工法」は「斜面補強工法」に,「インナービット4」は「削孔ビット」に,「削孔用アウタービット3」は「先端ビット」に,「ケーシングロッド1」は「ケーシング」に,「充填」は「注入」に,それぞれ相当し,
また,刊行物記載の発明の「鋼棒からなる芯材2」と,本件補正発明の「補強芯材を兼ねた高強度中空パイプ」とは,「補強芯材」である点で共通するから,
両者は,
「孔内に注入した固化材と,該固結材に埋設して残置した補強芯材とにより形成した補強部で補強する斜面補強工法において,
先端に削孔ビットを設けた補強芯材と,先端ビット付きのケーシングを使用して削孔を行なう第1工程と,
孔内に補強芯材を残置し,孔内の全長に亘って固化材を注入するとともに,削孔に使用したケーシングを孔から引き抜く第2工程とにより構成する,斜面補強工法。」である点で一致し,次の点で相違する。

(相違点1)
第2工程における孔内への固化材の注入について,本件補正発明が,ケーシングを引き抜きながら行なうのに対し,刊行物記載の発明では,ケーシングを引き抜きながら行なうのか定かでない点。
(相違点2)
同じく,第2工程における孔内への固化材の注入について,本件補正発明が,補強芯材(高強度中空パイプ)を通じて行なうのに対し,刊行物記載の発明では,補強芯材(鋼棒からなる芯材2)に取り付けた注入ホース6を通じて行なう点。
(相違点3)
同じく,第2工程における孔内への固化材の注入について,本件補正発明が,加圧注入するのに対し,刊行物記載の発明では,加圧注入するのか定かでない点。
(相違点4)
本件補正発明が,削孔に使用したケーシングのすべてを回収する第3工程を有するのに対し,刊行物記載の発明では,削孔に使用したケーシングを孔内から引き上げるものの,回収するのか定かでない点。


【4】判断
(相違点1について)
上記相違点1を検討する。
本件補正発明と同一技術分野に属する,補強芯材と固化材とからなる補強工法において,ケーシングを引き抜きながら孔内に固化材を注入することは,例えば,特開2002-129899号公報(段落【0026】の記載を参照。),及び,特公昭46-5182号公報(3欄29?32行の記載を参照。)等に記載されているように,従来から周知の技術である。
してみると,刊行物記載の発明に,上記のような周知の技術を採用して,本件補正発明の上記相違点1に係る構成を想到することは,当業者が容易になし得たことである。
(相違点2について)
上記相違点2を検討する。
本件補正発明と同一技術分野に属する,補強芯材と固化材とからなる補強工法において,中空の補強芯材を通じて孔内に固化材を注入することは,例えば,特開2002-129899号公報(段落【0016】の記載を参照。),及び,特開2002-38477号公報(段落【0028】の記載を参照。)等に記載されているように,従来から周知の技術である。
してみると,刊行物記載の発明に,上記のような周知の技術を採用して,本件補正発明の上記相違点2に係る構成を想到することは,当業者が容易になし得たことである。
(相違点3について)
上記相違点3を検討する。
本件補正発明と同一技術分野に属する,補強芯材と固化材とからなる補強工法において,固化材を孔内に加圧注入することは,例えば,特開2001-193064号公報(段落【0028】の記載を参照。),及び,特公昭46-5182号公報(3欄29?36行の記載を参照。)等に記載されているように,従来から周知の技術である。
してみると,刊行物記載の発明に,上記のような周知の技術を採用して,本件補正発明の上記相違点3に係る構成を想到することは,当業者が容易になし得たことである。
(相違点4について)
上記相違点4を検討する。
本件補正発明において,「ケーシングのすべてを回収する」とは,本願出願当初の明細書の【請求項1】,【請求項2】,及び,段落【0006】に,「ケーシングのすべてを(引き抜いて)回収する」と記載され,段落【0015】に,「…引き抜いたケーシング2は、再度、別の箇所の掘削に使用することが出来る。」と記載されているのみであるから,引き抜いたケーシングのすべてを別の掘削箇所で使用するために,一纏めにするという程度の意味と,捉えることができる。
ところで,刊行物記載の発明は,ケーシング(ケーシングロッド1(外径90mm?216mm))を孔(削孔H)内から引き抜く(引き上げる)ものであるところ,このように或る程度外径が大きく且つ再利用可能なものを,引き抜いたまま施工現場に放置するとか破棄するとかは,一般には考え難いことであって,一纏めにして別の掘削箇所でも使用できるようにしようと考える方が,寧ろ,自然のことと思料される。
してみると,刊行物記載の発明において,本件補正発明の上記相違点4に係る構成を想到することは,当業者が容易になし得たことである。

そして,本件補正発明の作用効果は,上記相違点1?4に係る個々の構成によるものであるところ,これらの構成を組み合わせることにより,格別の作用効果を奏するとは認められない。
よって,本件補正発明は,刊行物記載の発明及び周知の技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


【5】むすび
以上のとおり,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について
平成19年8月10日付けの手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明という。)は,平成19年5月16日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。
「斜面を補強芯材で補強する斜面補強工法において、
先端に削孔ビットを設けた高強度中空パイプと、ケーシングを使用して削孔を行ない、
ケーシングを引き抜きながら孔内に残置した高強度中空パイプを通じて孔内の全長に亘って固化材を加圧注入し、
削孔に使用したケーシングのすべてを回収し、
孔内に加圧注入した固化材と、該固結材に埋設して残置した補強芯材を兼ねた高強度中空パイプとにより補強部を形成したことを特徴とする、
斜面補強工法。」

【1】刊行物とその記載内容
原査定に引用され,本願出願前に頒布された,刊行物とその記載内容は,上記「第2.【2】」に記載したとおりである。


【2】対比・判断
本願発明は,上記「第2.」で検討した本件補正発明から,「ケーシング」の限定事項である「先端ビット付きの」との構成を,省いたものである。
そうすると,本願発明の構成要件を全て含み,さらに,他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が,上記「第2.【4】」で説示したとおり,刊行物記載の発明及び周知の技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,刊行物記載の発明及び周知の技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものである。


【3】むすび
以上のとおり,本願発明は,刊行物記載の発明及び周知の技術に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-18 
結審通知日 2009-02-24 
審決日 2009-03-09 
出願番号 特願2002-355245(P2002-355245)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (E02D)
P 1 8・ 121- Z (E02D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 深田 高義草野 顕子  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 関根 裕
宮崎 恭
発明の名称 斜面補強工法  
代理人 山口 朔生  

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