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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1196238 |
審判番号 | 不服2007-25191 |
総通号数 | 114 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-06-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-09-13 |
確定日 | 2009-04-23 |
事件の表示 | 平成11年特許願第 9862号「窒化ガリウム系半導体発光素子および発光装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 9月24日出願公開、特開平11-261109〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、平成9年6月25日に出願した特願平9-169045号(以下「原出願」という。)の一部を新たな特許出願として、平成11年1月18日に出願したものであって、平成19年7月17日付けで手続補正がなされたが、平成19年8月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月13日付けで拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、同年10月15日付けで手続補正(以下「本件補正」という。)がなされたものである。 2 本件補正についての却下の決定 (1)結論 本件補正を却下する。 (2)理由 ア 理由1 (ア)補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲の請求項1につき、補正前の 「透光性基板と、 前記透光性基板の上に設けられ、前記透光性基板よりも光屈折率が大きい窒化ガリウム系半導体からなる発光層と、 前記発光層の上に形成され、第1の層と、前記第1の層とは光屈折率が異なる第2の層とを交互に複数層ずつ積層させた光反射層と、を備え、 前記発光層から放出された光を前記光反射層により反射させて、前記透光性基板を透過させて外部に取り出すことができるように、前記発光層は前記透光性基板と前記光反射層との間に積層されていることを特徴とする窒化ガリウム系半導体発光素子。」 を 「サファイア基板と、 前記サファイア基板の上に設けられ、前記サファイア基板よりも光屈折率が大きくInGaNを含む発光層と、 前記発光層の上に形成され、第1の層と、前記第1の層とは光屈折率が異なる第2の層とを交互に複数層ずつ積層させた光反射層と、を備え、 前記発光層から放出された光を前記光反射層により反射させて、前記サファイア基板を透過させて外部に取り出すことができるように、前記発光層は前記サファイア基板と前記光反射層との間に積層されていることを特徴とする窒化ガリウム系半導体発光素子。」(以下「本願補正発明」という。) に補正する内容を含むものである。 (イ)補正の目的 上記(ア)の補正の内容は、補正前の請求項1の「透光性基板」を「サファイア基板」に、また、「窒化ガリウム系半導体からなる発光層」を「InGaNを含む発光層」に、それぞれ具体的に限定するものであるから、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「平成14年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すると認められる。 (ウ)独立特許要件 本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討する。 a 刊行物の記載 原査定の拒絶の理由に引用された、原出願の出願前に頒布された刊行物である特開平8-32116号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。 (a)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、可視単波長、特に青色領域から紫色領域まで、及び紫外線領域で発光可能な、ダブルヘテロ接合構造を有する窒化ガリウム系化合物半導体による発光素子に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、窒化ガリウム系半導体から成る発光素子として、図1と同様な構造のものがある。この発光素子は、サファイア基板上に窒化ガリウム系化合物半導体をエピタキシャル成長させたものである。これは、層構成としては本発明の層構成と同じであり、発光メカニズムも同じである。この発光素子では、発光層からの発光は、ほぼ等方的であり、使用目的である光取り出し方向には発光される光量の一部しか放射されない。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】つまり、せっかく発光しても必要とする方向に放射される光が限られ、無駄な方向に出ていることを意味し、多方向からの視認性は良いものの、目的方向における発光効率としては低いものとなるという問題がある。 【0004】従って本発明は上記の課題を解決するために成されたものであり、その目的は、窒化ガリウム系半導体発光素子において、発光素子の発光取り出し効率を向上させることである。 【0005】 【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するため本発明の特徴ある構成は、活性層をその禁制帯幅よりも大きな禁制帯幅の層で挟んだダブルヘテロ接合構造を有する窒化ガリウム系化合物半導体から成る発光素子において、該発光素子が積層構造であり、該積層構造に垂直な方向に光を取り出す構成であって、該積層構造に、発光層からの光を反射する反射層もしくは反射防止層のいずれかを有することを特徴とする。 【0006】 【作用および発明の効果】 本発明は上記のように、発光素子の積層構造のいずれかに、発光した光を反射する反射層、もしくは光の透過効率を最もよくする反射防止層を設けるために、光を放射する側と反対側に放射される分が目的方向に放射され、また光を放射する側へ放射された光が反射で減衰することが抑制されて、従来よりも発光素子の光が余分な方向に出なくなり、出力が無駄にならず、発光の効率を向上させることができる。」 (b)「【0007】 【実施例】以下、本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。 (構成)図1は、サファイア基板1を用いて製造した窒化ガリウム系発光素子100の構造を示した模式的断面図である。サファイア基板1の上に、窒化アルミニウム(AlN) 緩衝層2が形成されて、その上に発光素子の最下層として、Siをドープした窒化ガリウム( n ^(+) - GaN ) 層3が形成されている。この窒化ガリウム層3をベースにして、ZnおよびSiドープの半絶縁層もしくは弱いp型となる窒化インジウムガリウム(In_( x) Ga_(1-x) N ) 層4が形成され、その上にクラッド層(活性層の禁制帯幅よりも大きい禁制帯幅を有する層)として窒化アルミガリウム( p - Al_(0.1)Ga_(0.9)N)層5が形成され、さらにその上にp層としてMgドープの窒化ガリウム(GaN) 層6が形成されている。そして、その上にアルミニウム(Al)で第一電極層7が設けられている。また、窒化ガリウム層3の一部で分離溝9で分離された領域に対して接続孔が設けられ、アルミニウム(Al)で第二電極層8が設けられている。なおこの発光素子100の場合、光はサファイア基板1の側(図1の矢印)から取り出される。」 (c)「【0012】(第二実施例)図3は、緩衝層2の上に窒化アルミガリウム( Al_(0.1)Ga_(0.9)N)層31と窒化ガリウム( GaN ) 層32の多層膜を形成して反射層30を形成した場合の発光素子300で、この実施例の場合、光取り出し側は上部の電極側としてある。従って上部電極を透明なITO膜33で形成し、一部コンタクト用としてAl電極7を設けてある。この反射層30は上部の発光領域である4、5から放射された光を上部に反射するよう屈折率を大きくする。そのため、窒化アルミガリウム( Al_(0.1)Ga_(0.9)N)層31と窒化ガリウム( GaN ) 層32の多層構造を多数形成する。窒化アルミガリウム( Al_(0.1)Ga_(0.9)N)の屈折率n_(2 )は2.426 、窒化ガリウム( GaN ) の屈折率n_(1) は2.493 とその差は小さいが、基板のサファイアの屈折率n_(s) が1.78であるので、これを反射の条件の式、 【数 2】 によって求める。それぞれの膜厚は、反射率が高くなるような厚さに設定し、窒化アルミガリウム( Al_(0.1)Ga_(0.9)N)層31は46.37nm 、窒化ガリウム( GaN ) 層32は45.63nm というシミュレーションから得られた最適値を形成目標厚さとしている。 【0013】この反射層30の形成は窒化アルミガリウム( Al_(0.1)Ga_(0.9)N)層31と窒化ガリウム( GaN ) 層32各一組では反射率が不十分であるので、多層構造とする。そこで、基板上の窒化アルミニウム(AlN) 層の形成後、通常の窒化ガリウム系の層形成プロセスを用いて、上記の層を交互に層を重ねていく。その結果、(2) 式からN=30(多重層の数)では反射率が64.40 %となり、N=50では反射率が86.29 %となり、かなりの光量の反射が得られることが判る。」 (d)上記(b)及び(c)の記載を踏まえて図3をみると、サファイア基板1上にAlNバッファ層2、Al_(0.1)Ga_(0.9)N層31とGaN層32を交互に複数層ずつ積層した反射層30、n ^(+) - GaN層3、InGaN層4、p - AlGaN層5、p - GaN層6をこの順に積層し、このp - GaN層6上に上部電極を透明なITO膜33で形成し、ITO膜33上の一部にコンタクト用としてAl電極7を設けるとともに、分離溝で分離された領域に設けられ接続孔に電極8を設けた発光素子が示されているものと認められる。 b 引用発明 上記a(a)ないし(d)によれば、刊行物1には、次の発明が記載されているものと認められる。 「屈折率が1.78であるサファイア基板1上にAlNバッファ層2、屈折率が2.426である Al_(0.1)Ga_(0.9)N層31と屈折率が2.493であるGaN層32を交互に複数層ずつ積層した反射層30、n ^(+) - GaN層3、発光領域であるInGaN層4及びp - AlGaN層5、p - GaN層6をこの順に積層し、このp - GaN層6上に上部電極を透明なITO膜33で形成し、ITO膜33上の一部にコンタクト用としてAl電極7を設けるとともに、分離溝で分離された領域に設けられ接続孔に電極8を設け、反射層30は上部の発光領域である4、5から放射された光を上部に反射するようにし、光取り出し側は上部電極側とした窒化ガリウム系半導体発光素子。」(以下「引用発明1」という。) c 対比 本願補正発明と引用発明1とを対比する。 (a)引用発明1の「サファイア基板1」、「屈折率が2.426である Al_(0.1)Ga_(0.9)N層31と屈折率が2.493であるGaN層32を交互に複数層ずつ積層した反射層30」及び「窒化ガリウム系半導体発光素子」は、本願補正発明の「サファイア基板」、「第1の層と、前記第1の層とは光屈折率が異なる第2の層とを交互に複数層ずつ積層させた光反射層」及び「窒化ガリウム系半導体発光素子」に相当する。 (b)引用発明1の「発光領域であるInGaN層4及びp - AlGaN層5」は、本願補正発明の「InGaNを含む発光層」に相当し、InGaN及びAlGaNの屈折率がサファイアの屈折率より大きいことは技術常識であるから、引用発明1は、本願補正発明の「サファイア基板よりも光屈折率が大きくInGaNを含む発光層」を備えている。 (c)引用発明1は、「反射層30は上部の発光領域である4、5から放射された光を上部に反射するようにし、光取り出し側は上部電極側とした」ものであるから、「『前記発光層から放出された光を前記光反射層により反射させて』、『外部に取り出すことができるように』」した点において、本願補正発明と一致する。 (d)以上によれば、両者は、 「サファイア基板と、 前記サファイア基板の上に設けられ、前記サファイア基板よりも光屈折率が大きくInGaNを含む発光層と、 第1の層と、前記第1の層とは光屈折率が異なる第2の層とを交互に複数層ずつ積層させた光反射層と、を備え 前記発光層から放出された光を前記光反射層により反射させて、外部に取り出すことができるようにした窒化ガリウム系半導体発光素子。」 である点で一致し、 「本願補正発明では、発光層から放出された光をサファイア基板を透過させて外部に取り出すことができるように、前記発光層が前記サファイア基板と前記光反射層との間に積層されているのに対して、引用発明1では、発光層が光反射層の上に設けられ、前記発光層から放出された光を前記光反射層により上部に反射させて、光取り出し側は上部電極側とした点。」(以下「相違点1」という。) で相違するものと認められる。 d 判断 (a)前記a(a)によれば、刊行物1には、発光素子の積層構造のいずれかに、発光した光を反射する反射層を設けて、光を放射する側と反対側に放射される分が目的方向に放射されるようにし、発光の効率を向上させる技術思想が開示されているものと認められる。 (b)そして、サファイア基板を用いた半導体発光素子において、発光層から放出された光を前記サファイア基板を透過させて外部に取り出すことは、原出願の出願前に周知の技術である(前記a(b)のとおり、刊行物1の【0007】にも記載されるところである。)から、引用発明1において、発光層から放出された光をサファイア基板を透過させて外部に取り出すものとすることは、当業者が適宜なし得る程度のことというべきところ、刊行物1に開示された上記(a)の技術思想に基づけば、その際に、光反射層を、発光層に対して光を放出する側と反対側に設け、もって、「発光層が前記サファイア基板と前記光反射層との間に積層されている」とする、相違点1に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が容易になし得る程度のことである。 (c)しかるところ、本願補正発明において、当業者が予測困難なほどの格別顕著な効果が奏されるものとも認められない。 (d)したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであって、本件補正は、平成14年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものである。 イ 理由2 (ア)補正の内容 本件補正は、特許請求の範囲の補正前の請求項5に 「基板と、 前記基板上に設けられ、第1の層と、前記第1の層とは光屈折率が異なる第2の層とを交互に複数層ずつ積層させた第1の光反射層と、 前記第1の光反射層に隣接して積層された窒化ガリウム系半導体からなる発光層と、 前記発光層に隣接して積層され、第1の層と、前記第1の層とは光屈折率が異なる第2の層とを交互に複数層ずつ積層させた第2の光反射層と、を備え、 前記第1の光反射層と前記第2の光反射層とは、それぞれ前記発光層から放出される光を反射するとともに、電流と光とを前記発光層に閉じこめるクラッド層としての役割も兼ねるものとして構成され、 前記発光層から放出された光は、前記第1および第2の光反射層により多重反射されて、前記発光層の側面から外部に取り出すことができるものとして構成されていることを特徴とする窒化ガリウム系発光素子。」 とあるを、新たな請求項3として 「基板と、 前記基板上に設けられ、第1の層と、前記第1の層とは光屈折率が異なる第2の層とを交互に複数層ずつ積層させた第1の光反射層と、 前記第1の光反射層に接するように積層された窒化ガリウム系半導体からなる発光層と、 前記発光層に接するように積層され、第1の層と、前記第1の層とは光屈折率が異なる第2の層とを交互に複数層ずつ積層させた第2の光反射層と、を備え、 前記第1の光反射層と前記第2の光反射層とは、それぞれ前記発光層から放出される光を反射するとともに、電流と光とを前記発光層に閉じこめるクラッド層としての役割も兼ねるものとして構成され、 前記発光層から放出された光は、前記第1および第2の光反射層により多重反射されて、前記発光層の側面から外部に取り出すことができるものとして構成されていることを特徴とする窒化ガリウム系発光素子。」 に補正する内容を含むものである。 (イ)補正の目的 上記(ア)の補正の内容は、補正前の請求項5における「隣接して」を「接するように」に補正するものである。 しかるに、該補正が、平成14年改正前特許法第17条の2第4項第1号ないし第4号に掲げるいずれの事項を目的とするものとも認められないから、本件補正は、同法第17条の2第4項の規定に違反するものである。 ウ 小括 前記ア(ウ)d(d)及び上記イ(イ)のとおり、本件補正は、平成14年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反し、また、同法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3 本願発明について (1)本願発明1 上記のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成19年7月17日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項25に記載された事項によって特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明1」という。)は、前記2(2)ア(ア)において、補正前のものとして示したとおりのものである。 ア 本願発明1についての判断 前記2(2)ア(イ)のとおり、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的としたものと認められる。 しかるところ、前記2(2)ア(ウ)で検討したとおり、本願発明に係る特許請求の範囲を減縮したものである本願補正発明が、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである以上、減縮前の本願発明1も、本願補正発明と同様の理由により、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)本願発明5 同じく、請求項5に係る発明(以下「本願発明5」という。)は、前記2(2)イ(ア)において、補正前のものとして示したとおりのものである。 ア 刊行物の記載 原査定の拒絶の理由に引用され、原出願の出願前に頒布された刊行物である特開平2-170486号公報(以下「刊行物2」という。)には、以下の記載がある。 (ア)「本発明は、半導体多層膜を自然放出光の活性層への帰還のために用い、端面出射型半導体発光装置の低しきい値化、あるいは高効率化を目的とするものである。」(2頁左上欄4行?7行) (イ)「本発明の第2の実施例について第2図により説明する。n型GaAs基板21上に、MOCVD法によりn-Al_(0.2)Ga_(0.8)Asとn-AlAsをそれぞれλ/(4n)(審決注:原文では、「n」の上に「 ̄」が付されているが、表記の都合上、「 ̄」を省略した。)の厚さで交互に10周期積層し、n-多層膜反射鏡22を形成する。その後、GaAs活性層23、そして、p-Al_(0.2)Ga_(0.8)Asとp-AlAsをそれぞれλ/(4n)(審決注:先と同様に、「n」に付された「 ̄」を省略した。)の厚さで交互に10周期積層し、p-多層膜反射鏡24を設け、p-GaAsキャップ層25を形成する。その後、選択拡散により、Zn拡散領域26を形成した後、Ti-Mo-Anを蒸着してp電極27を、AnGeNi-Cr-Anを蒸着してn電極28を設ける。最後に、前端面にSiO_(2)膜をλ/(4n)の厚さは着させることにより無反射コート膜29を形成することで発光ダイオード装置とした。本実施例において高効率の発光ダイオードが得られる。」(2頁左下欄16行?同右下欄12行) イ 引用発明 上記(2)アによれば、刊行物2には、次の発明が記載されているものと認められる。 「n型GaAs基板21上に、n-Al_(0.2)Ga_(0.8)Asとn-AlAsをそれぞれ交互に10周期積層したn-多層膜反射鏡22、GaAs活性層23、p-Al_(0.2)Ga_(0.8)Asとp-AlAsをそれぞれ交互に10周期積層したp-多層膜反射鏡24、p-GaAsキャップ層25を形成し、前端面に無反射コート膜29を形成した端面出射型発光ダイオード装置。」(以下「引用発明2」という。) ウ 対比 本願発明5と引用発明2とを対比する。 (ア)引用発明2の「n型GaAs基板」、「GaAs活性層」及び「発光ダイオード装置」は、それぞれ、本願発明5の「基板」、「半導体からなる発光層」及び「発光素子」に相当する。 (イ)多層膜反射鏡が屈折率の異なる複数の層からなることは技術常識であり、引用発明2のAl_(0.2)Ga_(0.8)AsとAlAsの屈折率が異なることも明らかであるから、引用発明2の「n-Al_(0.2)Ga_(0.8)Asとn-AlAsをそれぞれ交互に10周期積層したn-多層膜反射鏡22」及び「p-Al_(0.2)Ga_(0.8)Asとp-AlAsをそれぞれ交互に10周期積層したp-多層膜反射鏡24」は、本願発明5の「第1の層と、前記第1の層とは光屈折率が異なる第2の層とを交互に複数層ずつ積層させた第1の光反射層」および「第1の層と、前記第1の層とは光屈折率が異なる第2の層とを交互に複数層ずつ積層させた第2の光反射層」に相当する。 (ウ)しかるところ、引用発明2は、「n型GaAs基板21上に、n-Al_(0.2)Ga_(0.8)Asとn-AlAsをそれぞれ交互に10周期積層したn-多層膜反射鏡22、GaAs活性層23、p-Al_(0.2)Ga_(0.8)Asとp-AlAsをそれぞれ交互に10周期積層したp-多層膜反射鏡24、p-GaAsキャップ層25を形成し」たものであるから、n-多層膜反射鏡22及びp-多層膜反射鏡24は、それぞれ、活性層23に隣接して積層されたものである。 よって、引用発明2は、本願発明5の「前記基板上に設けられ、第1の層と、前記第1の層とは光屈折率が異なる第2の層とを交互に複数層ずつ積層させた第1の光反射層と、前記第1の光反射層に接するように積層された窒化ガリウム系半導体からなる発光層と、前記発光層に接するように積層され、第1の層と、前記第1の層とは光屈折率が異なる第2の層とを交互に複数層ずつ積層させた第2の光反射層と、を備え、」との事項を備えるものといえる。 (エ)引用発明2において、活性層23から放出された光は、n-多層膜反射鏡22とp-多層膜反射鏡24により多重反射されることは明らかである。また、引用発明2は、「前端面に無反射コート膜が形成した端面出射型発光ダイオード装置」であるから、引用発明2は、本願発明5の「前記発光層から放出された光は、前記第1および第2の光反射層により多重反射されて、前記発光層の側面から外部に取り出すことができるものとして構成されている」との事項を備えるものといえる。 (オ)以上によれば、両者は、 「基板と、 前記基板上に設けられ、第1の層と、前記第1の層とは光屈折率が異なる第2の層とを交互に複数層ずつ積層させた第1の光反射層と、 前記第1の光反射層に隣接して積層された半導体からなる発光層と、 前記発光層に隣接して積層され、第1の層と、前記第1の層とは光屈折率が異なる第2の層とを交互に複数層ずつ積層させた第2の光反射層と、を備え、 前記第1の光反射層と前記第2の光反射層とは、それぞれ前記発光層から放出される光を反射するものとして構成され、 前記発光層から放出された光は、前記第1および第2の光反射層により多重反射されて、前記発光層の側面から外部に取り出すことができるものとして構成されている発光素子。」 である点で一致し、以下のa及びbの点で相違するものと認められる。 a 本願発明5は、発光層が窒化ガリウム系半導体からなる窒化ガリウム系発光素子であるのに対して、引用発明2は、発光層がGaAsからなる点(以下「相違点2」という。) b 本願発明5では、第1の光反射層と前記第2の光反射層とは、それぞれ前記発光層から放出される光を反射するとともに、電流と光とを前記発光層に閉じこめるクラッド層としての役割も兼ねるものとして構成されているのに対して、引用発明2では、第1の光反射層と前記第2の光反射層が電流と光とを前記発光層に閉じこめるクラッド層としての役割も兼ねるかどうか不明である点(以下「相違点3」という。) エ 相違点についての判断 (ア)相違点2について 半導体発光素子において、発光層が窒化ガリウム系半導体からなる窒化ガリウム系発光素子は、原出願の出願前に周知のものであるから、発光層を、引用発明2のGaAsに代えて窒化ガリウム系半導体とし、相違点2に係る本願発明5の構成とすることは当業者が適宜なし得る程度のことである。 (イ)相違点3について 引用発明2においても、第1の光反射層と第2の光反射層とは、それぞれ、発光層に隣接して積層されているのであるから、引用発明2が端面出射型発光ダイオード装置として機能するためには、引用発明2の第1の光反射層と第2の光反射層も、本願発明5と同様、光を反射するとともに、電流と光とを発光層に閉じこめるクラッド層としての役割も兼ねるようにすべきことは、当業者が当然考慮することであり、このことは、発光層を窒化ガリウム系半導体とする際においても、同様である。 よって、相違点3の本願発明の構成とすることは、当業者が当然考慮する程度の事項にすぎない。 (ウ)したがって、本願発明5は、刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上の検討によれば、本願発明1は、刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 また、本願発明5は、刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-02-24 |
結審通知日 | 2009-02-27 |
審決日 | 2009-03-10 |
出願番号 | 特願平11-9862 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 吉野 三寛 |
特許庁審判長 |
服部 秀男 |
特許庁審判官 |
右田 昌士 稲積 義登 |
発明の名称 | 窒化ガリウム系半導体発光素子および発光装置 |
代理人 | 吉元 弘 |
代理人 | 吉武 賢次 |
代理人 | 橘谷 英俊 |
代理人 | 佐藤 泰和 |
代理人 | 川崎 康 |