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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1196284
審判番号 不服2007-5643  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-02-22 
確定日 2009-04-24 
事件の表示 特願2002- 36932「プラズマエッチング方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 8月29日出願公開、特開2003-243361〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続の経緯・本願発明
本願は、平成14年2月14日の出願であって、その請求項1?5に係る発明は、特許法第17条の2の規定に基づき平成18年8月9日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりのものである

「【請求項1】処理容器内に導入したC_(2)F_(4)を含む処理ガスをプラズマ化し、この処理容器内の被処理体付近の圧力を45?75mTorrに維持しながら、この処理容器内にある被処理体中のSiO_(2)膜を、この膜上にあるレジストパターンを介してプラズマエッチングすることを特徴とするプラズマエッチング方法。」

[2]刊行物の記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用した、本出願前に頒布された刊行物である特開平10-116822号公報(以下、「刊行物1」という。)、同じく頒布された刊行物である、寒川誠二著,「環境共生型・新ガスケミストリーによる高精度シリコン酸化膜エッチング」,応用物理,第70巻,第4号,第433-437頁,2001年4月10日発行(以下、「刊行物2」という。)には、それぞれ下記の事項が記載されている。

(1)刊行物1:特開平2-137666号公報
(1a)「【請求項11】ドライエッチング装置を用いて、被エッチング物をエッチングするようにしたドライエッチング方法において、
少なくとも、エッチング室の内壁の温度を急速に制御するようにした・・・ドライエッチング方法。」(【特許請求の範囲】の【請求項11】)、
(1b)「【0002】【従来の技術】ドライエッチング法においては、プラズマエッチングプロセスが壁との相互作用を無視することができず、特に壁への堆積物のバルクプラズマ中への輸送が、プロセスに大きく影響することは、公知のところである。・・・
【0003】・・・チェンバー内壁に過剰に堆積した堆積物が、エッチングの再現性に影響を与える。
【0004】この現象は、・・・SiO_(2)膜をエッチングする場合においても同様である。すなわち、このSiO_(2)膜のエッチングにおいては、フルオロカーボンポリマー系ガスが用いられるが、選択比確保の鍵を握るフルオロカーボンポリマーの前駆体がチェンバー内壁などに堆積し、これがプラズマと接触することにより、プラズマ中に放出されて放電時のC/F比を狂わせ、微細なコンタクトホールを形成する場合にエッチングが停止してしまうなどの深刻な問題を引き起こしている。」(段落【0002】?【0004】)、
(1c)【0006】・・・この発明の目的は、エッチング時における反応生成物やポリマーの前駆体のエッチング室の内壁への堆積量を制御することができ、パターン太り、エッチングの停止、高テーパ化などを生ずることなく、高選択比で・・・SiO_(2)膜などを高精度で再現性良くエッチングすることができ、微細なパターンや高アスペクト比で微細なコンタクトホールを容易に形成することができる・・・ドライエッチング方法を提供することにある。」(段落【0006】)、
(1d)発明の第2の実施形態として、図3が示されるとともに、
「【0034】・・・この発明の第2の実施形態による・・・ドライエッチング装置は、平行平板型の電極を有するプラズマエッチング装置である。図3はこのドライエッチング装置を示す略線図である。
【0035】図3に示すように、このドライエッチング装置においては、円筒形のチェンバー41内に、ウェーハ42を設置するカソード43とこれに対向するアノード(対向電極)44とが設けられている。チェンバー41にはガス排出口45が設けられており、外部に設けられた排気用真空ポンプ(・・・)に接続され、チェンバー41内のガスを排気することができるようになっている。さらに、チェンバー41にはエッチングガス導入口およびゲートバルブ(・・・)が設けられている。カソード43は、マッチングボックス46を介して高周波電源47と電気的に接続されている。」(段落【0034】【0035】)、
(1e)発明の第2の実施形態として、さらに、図4が示されるとともに、
【0038】・・・図3に示すドライエッチング装置を用いて、以下のようにしてSiO_(2)膜にコンタクトホールを形成する。すなわち、まず、図4Aに示すように、Si基板61上にSiO_(2)膜62を形成した後、その上にレジストパターン63を形成する。次に、このSi基板61を図3に示すドライエッチング装置のカソード43上に設置し、レジストパターン63をマスクとして、以下のようにエッチングを2つのステップに分けて行い、コンタクトホールを形成する。
【0039】すなわち、・・・次に、第1の実施形態と同様にしてSiO_(2)膜62のジャストエッチングを行い、コンタクトホールを形成する。このとき、図4Bに示すように、コンタクトホール64の底部にSiO_(2)膜62の一部を残した状態でエッチングを中断する。この時点で第1のステップは終了する。この第1のステップのジャストエッチングにおいては、例えば、エッチングガスとしてC_(4)F_(8)、CO、ArおよびO_(2)の混合ガスを用い、それらの流量をそれぞれ20sccm、100sccm、150sccm、5sccmとし、圧力を50mTorr、RFパワーを1500W、基板の温度を50℃、壁面の温度を-50℃とする。
・・・・・・
【0042】次に、第2のステップとしてSiO_(2)膜62のオーバーエッチングを行う。この第2のステップのオーバーエッチングにおいては、第1のステップのジャストエッチングにおいてコンタクトホール64の底部に残された部分のSiO_(2)膜62のエッチングを、図4Cに示すように、下地Si基板61の面が露出するまで行う。この第2のステップのオーバーエッチングにおいては、例えば、エッチングガスとして、C_(4)F_(8)、CO、ArおよびO_(2)の混合ガスを用い、それらの流量をそれぞれ20sccm、100sccm、150sccm、5sccmとし、圧力を50mTorr、RFパワーを1500W、基板温度を50℃、壁面温度を200℃とする。」(段落【0038】【0039】【0042】)が記載されている。

(2)刊行物2:寒川誠二著,「環境共生型・新ガスケミストリーによる高精度シリコン酸化膜エッチング」,応用物理,第70巻,第4号,第433-437頁,2001年4月10日発行
(2a)「現在、シリコン酸化膜エッチングに用いられているC_(4)H_(8)などの高分子フロロカーボンガスでは解離過程が複雑なため,多数のラジカル種およびイオン種が生成し,活性種を制御することは難しい.そのため,シリコン酸化膜エッチングにおけるエッチングとポリマーたい積のバランスを最適化することが困難である.また,これらのガスは大気中に放出された場合,大気寿命が長く温暖化係数が高いという問題点も併せもっており・・・地球環境を考えると大幅な排出量削減がもとめられている.」(第433頁左欄13?22行)、
(2b)「高精度酸化膜エッチングを実現するためにはプラズマで生成するCF_(3)/CF_(2)ラジカル密度比率の制御がきわめて重要である.しかし,・・・C_(4)F_(8)などの高分子ガスを用いたエッチングでは,・・・CF_(3),CF_(2)ラジカル比率を独立に制御することは難しい.そのため・・・“エッチングストップ”や・・・“マイクロローディング”が発生するという問題が生じている.これは,C_(4)F_(8)プラズマ中で発生するエッチング種(CF_(3)^(+))とポリマーたい積種(CF_(2))のバランスが悪いことによるだけでなく,多量に生成する高分子ラジカル(C_(x)F_(y))・・・も原因となっている.高分子ラジカル(C_(x)F_(y))もポリマーたい積に寄与しており,・・・コンタクトホール側壁に吸着しやすく,側壁でのポリマーたい積を引き起こすのである.そのとき,・・・高アスペクトコンタクトホールではエッチングが途中でストップする・・・この問題の解決にはCF_(3),CF_(2)ラジカルの選択生成が必要である.」(第434頁左欄22行?右欄10行)、
(2c)図4?図6が示されるとともに、「C-I結合を有するCF_(3)IとC=Cを有するC_(2)F_(4)を選らび検討を行った.・・・C-I結合・・・,C=C結合・・・は結合解離エネルギーがC-F結合・・・より圧倒的に小さいため・・・電子衝突により切断されやすくCF_(3)およびCF_(2)ラジカルの選択的生成が実現できる・・・CF_(3)I/C_(2)F_(4)混合ガス系において混合ガス流量を変化させるだけでCF_(3)/CF_(2)ラジカル比率の制御が可能となる.また,・・・CF_(3)I,C_(2)F_(4)はC_(4)F_(8)ガスに比べると圧倒的に大気寿命の短いガスであり,地球温暖化対策にも対応できるものである.
実際のプラズマ中で従来ガスと新規ガスにおいて生成するCF_(3)およびCF_(2)ラジカル密度の・・・測定結果を図4に示す.・・・C_(2)F_(6)およびC_(4)F_(8)に比べてCF_(3)IガスからはCF_(3)ラジカルが,C_(2)F_(4)からはCF_(2)ラジカルがより選択的に高密度に生成していることが実証されている.・・・図5はCF_(3)I/C_(2)F_(4)混合ガス系において,その混合比率を変化させた場合のラジカルおよびイオンの変化を示したものである.流量比を変化させると,CF_(3)/CF_(2)ラジカルの生成比率を制御できる・・・.また,CF_(3)^(+)の相対密度はCF_(3)ラジカルの密度に対応した変化を示し,CF_(3)^(+)はCF_(3)ラジカルから主に生成されていることが確認された.
これらの条件を用いて,実際の熱シリコン酸化膜およびシリコンと窒化膜のエッチング速度を測定した結果を図6に示した.・・・シリコン酸化膜エッチング速度はCF_(3)I流量に比例して上昇し,下地シリコンおよびシリコン窒素化膜への選択比はC_(2)F_(4)流量に比例して上昇する.・・・CF_(3)I(20%)/C_(2)F_(4)(80%)の混合比率のとき・・・熱シリコン酸化膜エッチング速度が4000A/min以上でシリコンや窒化膜に対してそれぞれ20以上,10以上の選択性が得られた・・・.従来から用いているC_(4)F_(8)/Ar混合ガス系によるエッチング特性よりも大幅に改善され,高速高選択エッチングが実現されている・・・.」(第434頁右欄29行?第436頁左欄1行)が記載されている。

[3]当審の判断
[3-1]刊行物1に記載された発明
(ア)刊行物1の摘記(1a)の請求項11には、「ドライエッチング装置を用いて、被エッチング物をエッチングするようにしたドライエッチング方法において、少なくとも、エッチング室の内壁の温度を急速に制御するようにしたドライエッチング方法。」が記載されている。
(イ)摘記(1d)によれば、上記「ドライエッチング装置」には、図3に示される、「円筒形のチェンバー41内に、ウェーハ42を設置するカソード43とこれに対向するアノード(対向電極)44とが設けられて」いる「平行平板型の電極を有するプラズマエッチング装置」が含まれる。
(ウ)摘記(1e)によれば、上記「平行平板型の電極を有するプラズマエッチング装置」を用いる「ドライエッチング方法」には、「Si基板61上にSiO_(2)膜62を形成した後、その上にレジストパターン63を形成」した「被エッチング物」を「ドライエッチング装置のカソード43上に設置し、レジストパターン63をマスクとして・・・エッチングを2つのステップに分けて行い、コンタクトホールを形成する」実施形態が含まれ、そして、該「2つのステップ」の第1のステップでは、SiO_(2)膜のコンタクトホールを形成するエッチングを、該コンタクトホールの底部にSiO_(2)膜の一部を残した状態まで、例えば、エッチングガスとしてC_(4)F_(8)、CO、ArおよびO_(2)の混合ガスを用い、圧力を50mTorr、壁面の温度を-50℃として行い、次に、第2のステップとして、上記底部に残された部分のSiO_(2)膜のエッチングを、下地Si基板の面が露出するまで、例えば、エッチングガスとして、C_(4)F_(8)、CO、ArおよびO_(2)の混合ガスを用い、圧力を50mTorr、壁面温度を200℃として行うことが記載されている。

上記(ア)?(ウ)の事項を整理すると、刊行物1には、次の「ドライエッチング方法」の発明(以下、「刊行物1記載発明」という。)が記載されていると認められる。

「平行平板型の電極を有するプラズマエッチング装置を用い、Si基板上にSiO_(2)膜を形成した後、その上にレジストパターンを形成し、該Si基板を該プラズマエッチング装置のチェンバー内のカソード上に設置し、レジストパターンをマスクとしてSiO_(2)膜のコンタクトホールを形成するエッチングにおいて、その第1のステップでは、該コンタクトホールの底部にSiO_(2)膜の一部を残した状態まで、エッチングガスとしてC_(4)F_(8)、CO、ArおよびO_(2)の混合ガスを用い、チェンバー内の圧力を50mTorr、壁面の温度を-50℃として行い、次に、その第2のステップでは、該コンタクトホールの底部に残された部分のSiO_(2)膜のエッチングを、下地Si基板の面が露出するまで、エッチングガスとしてC_(4)F_(8)、CO、ArおよびO_(2)の混合ガスを用い、チェンバー内の圧力を50mTorr、壁面温度を200℃として行う、ドライエッチング方法。」

[3-2]本願発明1と刊行物1記載発明との対比
(カ)刊行物1記載発明における「チェンバー」、「エッチングガス」、「Si基板上にSiO_(2)膜を形成した後、その上にレジストパターンを形成し」た「Si基板」、「エッチング」(又は「ドライエッチング」)は、それぞれ本願発明1における「処理容器」、「処理ガス」、「被処理体」、「プラズマエッチング」に相当する。
(キ)刊行物1記載発明において、「平行平板型の電極を有するプラズマエッチング装置を用い、・・・Si基板を該プラズマエッチング装置のチェンバー内のカソード上に設置し、・・・SiO_(2)膜のコンタクトホールを形成するエッチングにおいて、その第1のステップでは、・・・エッチングガス・・・を用い、チェンバー内の圧力を50mTorr・・・として行い、次に、その第2のステップでは、・・・エッチングを、・・・エッチングガス・・・を用い、チェンバー内の圧力を50mTorr・・・として行う」とは、プラズマエッチング装置のチェンバー内にエッチングガスを導入してプラズマ化し、該チェンバー内の圧力を50mTorrに維持しながら、該チェンバー内のSi基板のSiO_(2)膜をプラズマエッチングすることと理解できる。
(ク)刊行物1記載発明における「Si基板上にSiO_(2)膜を形成した後、その上にレジストパターンを形成し、該Si基板を該プラズマエッチング装置のチェンバー内のカソード上に設置し、レジストパターンをマスクとしてSiO_(2)膜のコンタクトホールを形成する」は、本願発明1における「被処理体中のSiO_(2)膜を、この膜上にあるレジストパターンを介してプラズマエッチングする」に相当する。

そうすると、両者は、
「処理容器内に導入した処理ガスをプラズマ化し、圧力を50mTorrに維持しながら、この処理容器内にある被処理体中のSiO_(2)膜を、この膜上にあるレジストパターンを介してプラズマエッチングするプラズマエッチング方法。」の点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:本願発明1では、処理容器内の被処理体付近の圧力を45?75mTorrに維持しているのに対し、刊行物1記載発明では、チェンバー内の圧力を50mTorrに維持している点。
相違点2:プラズマエッチングの処理ガスが、本願発明1では、C_(2)F_(4)を含む処理ガスであるのに対し、刊行物1記載発明では、C_(4)F_(8)、CO、ArおよびO_(2)の混合ガスである点。

[3-3]相違点の検討
(1)相違点1について
刊行物1記載発明において、チェンバー内の圧力を50mTorrに維持していることは、該チェンバー内のカソード上のSi基板付近も含めて50mTorrに維持していることと理解できるので、本願発明における、処理容器内の被処理体付近の圧力を45?75mTorrの範囲内にある50mTorrに維持していることと実質的に相違しない。そして、その範囲を上下45?75mTorrに設定することは、当業者が実験等により適宜に設定できたものと認められる。

(2)相違点2について
刊行物2には、C_(4)H_(8)などの高分子フロロカーボンガスでは、プラズマの活性種を制御してシリコン酸化膜エッチングにおけるエッチングとポリマーたい積のバランスを最適化することは難しく、“エッチングストップ”や“マイクロローディング”が発生し、また,これらのガスは大気寿命が長く温暖化係数が高いという問題点も併せもっているのに対し、CF_(3)I/C_(2)F_(4)混合ガス系では、混合ガス流量を変化させるだけでプラズマのCF_(3)/CF_(2)ラジカル比率を制御でき、C_(4)F_(8)/Ar混合ガス系によるエッチング特性よりも大幅に改善され,シリコン酸化膜の高速高選択プラズマエッチングが実現されるとともに、CF_(3)I,C_(2)F_(4)は、C_(4)F_(8)ガスに比べると圧倒的に大気寿命の短いガスであり,地球温暖化対策にも対応できる旨記載されている(摘記(2a)?(2c)参照)。
そして、上記CF_(3)I/C_(2)F_(4)混合ガスが、シリコン酸化膜エッチングにおけるエッチングとポリマーたい積のバランスを制御できる、シリコン酸化膜のプラズマエッチングのC_(2)F_(4)を含む処理ガスに該当することは明らかであり、シリコン酸化膜のプラズマエッチングにC_(2)F_(4)を含む処理ガスを用いることは、刊行物2に上記のとおり記載されている他、下記の周知例1(原査定の拒絶の理由に引用した特開平4-170026号公報)にも以下のとおり記載されているように、本出願前周知の技術と認められる。

周知例1:特開平4-170026号公報
(周1a)「(1)分子内に少なくとも1個の不飽和結合を有するフルオロカーボン系ガスを含むエッチング・ガスを用いて・・・基板上に形成されたシリコン化合物層のエッチングを行う・・・ドライエッチング方法。」(特許請求の範囲第1項)、
(周1b)「実施例1
本実施例は、本発明の第1の発明を適用し、C_(4)F_(8)ガスを用いて酸化シリコンからなる層間絶縁膜のエッチングを行うことにより・・・コンタクト・ホールを形成した例である。」(第4頁右上欄9?14行)、
(周1c)「なお、以上の三実施例では、フルオロカーボン系ガスとして分子内に1個の二重結合をを有するC_(4)F_(8)およびC_(3)F_(6)を使用したが、本発明ではこれらに限られず・・・広く選択することができる。一例を示せば、C_(2)F_(4),・・・等である。」(第5頁左下欄16行?右下欄4行)と記載されている。

一方、刊行物1には、「チェンバー内壁に過剰に堆積した堆積物が、エッチングの再現性に影響を与える。・・・SiO_(2)膜のエッチングにおいては、フルオロカーボンポリマー系ガスが用いられるが、選択比確保の鍵を握るフルオロカーボンポリマーの前駆体がチェンバー内壁などに堆積し、これがプラズマと接触することにより、プラズマ中に放出されて放電時のC/F比を狂わせ、微細なコンタクトホールを形成する場合にエッチングが停止してしまう」、「この発明の目的は、エッチング時における反応生成物やポリマーの前駆体のエッチング室の内壁への堆積量を制御することができ、パターン太り、エッチングの停止、高テーパ化などを生ずることなく、高選択比で・・・SiO_(2)膜などを高精度で再現性良くエッチングすることができ、微細なパターンや高アスペクト比で微細なコンタクトホールを容易に形成することができる」、「例えば、エッチングガスとしてC_(4)F_(8)、CO、ArおよびO_(2)の混合ガスを用い、」との記載によれば(摘記(1b)?(1d)参照)、この例示された「C_(4)F_(8)、CO、ArおよびO_(2)の混合ガス」に限らず、他のポリマーたい積が生じるフルオロカーボン系ガスを用いても、同様にSiO_(2)膜等を高精度で再現性良くエッチングすることができ、微細なパターンや高アスペクト比で微細なコンタクトホールを容易に形成できることが示唆されているといえる。
そうであれば、刊行物1記載発明において、C_(4)F_(8)、CO、ArおよびO_(2)の混合ガスに代えて、シリコン酸化膜のプラズマエッチング用処理ガスとして周知のC_(2)F_(4)を含み、エッチングとポリマーたい積のバランスを制御でき、C_(4)F_(8)/Ar混合ガス系によるエッチング特性よりも改善され,シリコン酸化膜の高速高選択プラズマエッチングが実現されるとともに、C_(4)F_(8)ガスに比べると圧倒的に大気寿命の短いガスであり,地球温暖化対策にも対応できるCF_(3)I/C_(2)F_(4)混合ガス等の処理ガスを用いることは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。

また、刊行物1記載発明におけるチェンバー内の50mTorr近傍の圧力で、上記処理ガスを用いても同様のプラズマエッチングができることは、刊行物1、2の記載から当業者が普通に予測し得る程度のことであって、格別な効果を奏したものとは認められない。

したがって、本願発明1は、刊行物1、2に記載された発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

[4]むすび
以上のとおりであるから、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、上記のとおり本願発明1が特許を受けることができないため、本願の他の請求項に係る発明について検討するもでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-10 
結審通知日 2009-02-17 
審決日 2009-03-03 
出願番号 特願2002-36932(P2002-36932)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長谷部 智寿  
特許庁審判長 徳永 英男
特許庁審判官 國方 康伸
市川 裕司
発明の名称 プラズマエッチング方法  
代理人 小原 肇  

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