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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04B
管理番号 1196289
審判番号 不服2007-15758  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-06-06 
確定日 2009-04-24 
事件の表示 特願2003-361951「床用目地装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年5月19日出願公開、特開2005-126951〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯・本願発明
本願は,平成15年10月22日の出願であって,平成19年5月22日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年6月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものであり,その請求項1に係る発明は,平成19年3月28日受付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,次のとおりのものと認める。

「目地部を介して設けられた左右の建物の、一方の目地部側の床躯体の目地部の左右方向の寸法のほぼ2倍の部位に固定された、磁石が吸着される金属材製の支持プレートと、この支持プレートと対応する部位の前記他方の建物の目地部側の床躯体に後端部が取付けられ、上部が傾斜面の先端部が該支持プレートのほぼ中央部に支持される他方の目地プレートと、この他方の目地プレートを常時前記支持プレートに吸着固定させる他方の目地プレート吸着固定用磁石と、前記他方の目地プレートの先端部と当接する下面に傾斜面が形成された、前記支持プレートの残りの上面を覆う一方の目地プレートと、この一方の目地プレートを常時前記支持プレートに吸着固定させる一方の目地プレート吸着固定用磁石と、前記一方の目地プレートの後端部に少なくとも2個以上取付けられた支持ピンを上下移動可能に支持する、前記支持プレートの後端部寄りの部位の前記一方の床躯体に形成された少なくとも2個以上の支持ピン支持孔とからなることを特徴とする床用目地装置。」(以下,「本願発明」という。)


【2】引用刊行物及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され,本願出願前に頒布された刊行物である,特開2002-348973号公報(以下,「刊行物」という。)には,「床用目地装置」に関して,次の事項が記載されている。
(1a)「【請求項3】目地部を介して設けられた左右の床躯体の突出する柱や壁面を有する部位の一方の目地部側の床躯体に地震等で目地部が広くなるとスライド移動して目地部を覆うことができるスライド目地プレートと、このスライド目地プレートの収納状態での目地部側端部に下部側が外方に突出する傾斜面の先端部が支持され、後端部が前記左右の床躯体の他方の目地部側の床躯体に固定あるいは前後方向にスライド移動可能に取付けられた固定側目地プレートと、前記スライド目地プレートの収納状態での上部を覆い、地震等で目地部が狭くなると前記固定側目地プレートの押し圧によって上方へ押し上げられる可動目地プレートと、前記目地部が広くなる場合には前記スライド目地プレートの先端部に形成された係合部と自動的に係合し、目地部が狭くなる場合には該係合部との係合が自動的に解除される、前記固定側目地プレートの先端下部に取付けられた係合片と、前記固定側目地プレートの一端部あるいは両端部の目地部を覆う下部側が外方に突出する傾斜面の先端部が、前記一方の目地部側の床躯体に支持され、後端部が前記目地部側の他方の床躯体に固定あるいは前後方向にスライド移動可能に取付けられた前記目地部の幅寸法のほぼ2倍の寸法の端部固定側目地プレートと、地震等で目地部が狭くなると前記端部固定側目地プレートの押し圧によって上方へ押し上げられるように、前記一方の床躯体に取付けられたほぼ前記目地部の幅寸法と同じ寸法の端部可動目地プレートとからなることを特徴とする床用目地装置。」(【特許請求の範囲】)
(1b)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来の床用目地装置は目地プレートの先端部側の他方の床躯体に目地部の2倍の幅寸法の目地プレートの移動空間がなければ目地部の幅寸法の伸縮移動を吸収することができないという欠点があった。」
(1c)「【0008】図1ないし図13に示す本発明の第1の実施の形態において、1は目地部2を介して設けられた左右の床躯体3、3間の目地部2を目地部の幅寸法(H)分の伸縮移動を吸収することができる本発明の床用目地装置で、この床用目地装置1は・・・目地部2を覆う下部側が外方に突出する傾斜面7の先端部が、前記一方の目地部側の床躯体3に形成された端部凹部17に支持され、他端部が前記目地部側の他方の床躯体3の端部支持凹部18に複数本の固定ピン19によって固定された、前記目地部の幅寸法(H)のほぼ2倍の寸法の並列された複数個の端部固定側目地プレート20と、地震等で目地部2が狭くなると前記端部固定側目地プレート20の押し圧によって上方へ押し上げられるように、前記一方の床躯体3に形成された端部凹部17の後端部に形成された複数個のガイド孔21に上下移動可能にガイドされるガイドピン22を有する並列された複数個の端部可動目地プレート23とで構成されている。」
(1d)「【0010】上記構成の床用目地装置1は、平常時は図1に示すように目地部2、凹部5、支持凹部8、端部凹部17および端部支持凹部18を固定側目地プレート10、可動目地プレート13、端部固定側目地プレート20および端部可動目地プレート23によって覆われた状態となっている。
【0011】地震等によって目地部2が広くなった場合には、図8および図9に示すように固定側目地プレート10の先端部が一方の床躯体3より離れるようにスライド移動する。・・・また、端部固定側目地プレート20の先端部も同様に図8および図10に示すようにスライド移動するが、端部固定側目地プレート20の先端部が端部凹部17から外れることがなく、該部に支持される。
【0012】地震等によって目地部2が狭くなった場合、図11および図12に示すように固定側目地プレート10の先端部が可動目地プレート13の下部へ入り込むため、可動目地プレート13が上方へ押し上げられて、その揺れ動きを吸収する。また、端部固定側目地プレート20の先端部が図11および図13に示すように端部可動目地プレート23の下部へ入り込むため、端部可動目地プレート23が上方へ押し上げられて、その揺れ動きを吸収する。」
(1e)上記各記載事項を参照して,図1,3をみると,端部凹部17は,端部固定側目地プレート20の移動空間を確保するために,端部固定側目地プレート20の寸法である「目地部2の幅寸法(H)のほぼ2倍の寸法」と同等程度の寸法の範囲内の部位において,一方の目地部側の床躯体3に形成されていて,端部固定側目地プレート20の先端部が,平常時に該端部凹部17のほぼ中央部に支持されるとともに,端部可動目地プレート23が,該端部凹部17の残りの上面を覆うようになっていることは明らかであり,
また,端部固定側目地プレート20に,上部が傾斜面7の先端部が形成されるとともに,該端部固定側目地プレート20の先端部と当接する端部可動目地プレート23に,下面が傾斜面の先端部が形成されていることは明らかであり,
さらに,端部可動目地プレート23のガイドピン22が,端部凹部17の後端部寄りの部位の床躯体3に形成された複数個のガイド孔21に対応して,複数個取付けられることは明らかである。

これら(1a)?(1e)の記載事項及び図面(特に,図1,3,10,13)の記載等を含む刊行物全体の記載並びに当業者の技術常識によれば,刊行物には,次の発明が記載されているものと認められる。
「目地部2を介して設けられた左右の床躯体3,3の,一方の目地部2側の床躯体3の目地部2の幅寸法(H)のほぼ2倍の寸法の部位に形成された端部凹部17と,この端部凹部17と対応する部位の前記他方の目地部2側の床躯体3に他端部が固定され,上部が傾斜面7の先端部が該端部凹部17のほぼ中央部に支持される端部固定側目地プレート20と,前記端部固定側目地プレート20の先端部と当接する下面に傾斜面が形成された,前記端部凹部17の残りの上面を覆う端部可動目地プレート23と,前記端部可動目地プレート23の後端部に複数個取付けられたガイドピン22を上下移動可能にガイドする,前記端部凹部17の後端部寄りの部位の前記一方の床躯体3に形成された複数個のガイド孔21とからなる床用目地装置。」(以下,「刊行物記載の発明」という。)


【3】対比・判断
1.本願発明と刊行物記載の発明との対比
本願発明と刊行物記載の発明とを対比する。
刊行物記載の発明の「目地部2」が本願発明の「目地部」に相当し,以下同様に,「床躯体3」が「(建物の)床躯体」に,「幅寸法(H)」が「左右方向の寸法」に,「他端部」が「後端部」に,「固定され」が「取付けられ」に,「傾斜面7」が「傾斜面」に,「端部固定側目地プレート20」が「他方の目地プレート」に,「端部可動目地プレート23」が「一方の目地プレート」に,「複数個」が「少なくとも2個以上」に,「ガイドピン22」が「支持ピン」に,「ガイドする」が「支持する」に,「ガイド孔21」が「支持ピン支持孔」に,それぞれ相当する。
また,刊行物記載の発明の「・・・の部位に形成された端部凹部17」と本願発明の「・・・の部位に固定された、磁石が吸着される金属材製の支持プレート」とが「・・・の部位に設けられた支持部」で共通する。

してみると,両者は,
「目地部を介して設けられた左右の建物の,一方の目地部側の床躯体の目地部の左右方向の寸法のほぼ2倍の部位に設けられた支持部と,この支持部と対応する部位の前記他方の建物の目地部側の床躯体に後端部が取付けられ,上部が傾斜面の先端部が該支持部のほぼ中央部に支持される他方の目地プレートと,前記他方の目地プレートの先端部と当接する下面に傾斜面が形成された,前記支持部の残りの上面を覆う一方の目地プレートと,前記一方の目地プレートの後端部に少なくとも2個以上取付けられた支持ピンを上下移動可能に支持する,前記支持部の後端部寄りの部位の前記一方の床躯体に形成された少なくとも2個以上の支持ピン支持孔とからなる床用目地装置。」の点で一致し,
次の点で相違する。
<相違点>
本願発明では,支持部が,磁石が吸着される金属材製の支持プレートであって,一方の目地プレート及び他方の目地プレートを,目地プレート吸着固定用磁石により,上記支持プレートに常時吸着固定させるようにしているのに対して,刊行物記載の発明では,そのようになっていない点。

2.相違点についての検討
そこで,上記相違点について検討する。
一般的に,目地カバー等の支持部に対するバタつき等を防止するために,磁石とそれが吸着される金属材製の板材を用いて,目地カバー等と支持部とを吸着させることは,例えば,原査定の拒絶の理由に周知例として引用された,実願昭58-135928号(実開昭60-41408号)のマイクロフィルム,査定時に周知例として提示された,特開2001-288825号公報等に記載されているように従来から周知の技術といえるものである。
一方,床用目地装置において,目地プレートの支持部に,磁石に着くものであるか否かは別として,ステンレス合金等の金属材製のプレートを設けることも,例えば,原査定の拒絶の理由に周知例として引用された,特開2000-136574号公報(ガイド部材4),特開2001-159199号公報(固定金具9,10)等に記載されているように,従来から周知の技術といえるものである。
そうすると,刊行物記載の発明の目地プレートの支持部に,上記のような,磁石と金属材製の板材とにより目地カバー等の支持部に対するバタつき等を防止するという,一般的な技術を採用し,その際に,目地プレートを支持するための支持プレートとして,磁石が吸着される金属材製のプレートを採用することは,当業者が容易に思いつくことである。
したがって,本願発明の上記相違点に係る構成は,刊行物記載の発明及び周知の技術から,当業者が格別の技術的困難性を要することなく容易になしえたものである。

3.作用効果
そして,本願発明全体の効果も,刊行物記載の発明及び周知の技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものということができない。


【4】むすび
以上のとおり,本願発明は,刊行物記載の発明及び周知の技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから,本願は,拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-09 
結審通知日 2009-02-17 
審決日 2009-03-03 
出願番号 特願2003-361951(P2003-361951)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邉 聡  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 宮崎 恭
草野 顕子
発明の名称 床用目地装置  
代理人 三浦 光康  

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