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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65H |
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管理番号 | 1196579 |
審判番号 | 不服2007-19214 |
総通号数 | 114 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-06-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-07-09 |
確定日 | 2009-04-13 |
事件の表示 | 平成10年特許願第542291号「巻成ロール用の巻戻し装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年10月15日国際公開、WO98/45197号、平成12年9月5日国内公表、特表2000-511504号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成10年3月6日(パリ条約による優先権主張1997年4月3日、ドイツ)を国際出願日とする出願であって、平成19年4月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年7月9日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 そして、その請求項1乃至8に係る発明は、平成19年1月17日付で補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1乃至8に記載された事項によりそれぞれ特定されるものと認められるところ、請求項1の記載は下記の通りである(以下、これによって特定される発明を「本願発明」という。)。 「縦桁(4)と横桁(5,6)とから成る機枠と、該機枠内に支承された、作業幅にわたって横方向に延在する巻戻し桁(7)とを備え、該巻戻し桁に2本の支持腕(19,20)が横方向シフト可能に支承されており、前記の各支持腕がその自由端部において、巻成ロール(2)のスリーブ内へ進入するための案内ヘッド(22)を支持している形式の、巻成ロール(2)用の巻戻し装置において、巻戻し桁(7)が機枠内で、吊上げ駆動装置(17)によって昇降可能に、ロープ(8)のような引張り部材に懸吊されており、支持腕(19,20)が案内ヘッド(22)と共にウェッブ走行方向に振子運動自在であることを特徴とする、巻成ロール用の巻戻し装置。」 2.引用発明 原査定の拒絶の理由に引用された特開昭61-114952号公報(以下、「引用文献」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。 a.(第2頁左上欄第12行?右上欄第7行) 「9)巻き取りロール(11)を収容して向き合う二本の支持桁のうちの少なくとも一本が本質的に水平な軸線(20)を中心に揺動可能である、特許請求の範囲3)?8)のいずれか一に記載の装置。 10)装置または直接連続している何台かの装置が機枠の支台(1)の間で材料シート(13)の走行方向にも走行方向に対して横方向にもロール装入器または取り出し器を有し、支持桁または側面の装入器の方に向けられた支持枠(6)の支持桁(7)が高所回動可能である、特許請求の範囲3)?9)のいずれか一に記載の装置。 11)回動可能な支持桁(7)の回動軸(20)が支台(1)を相互に連結する縦梁(2)の直上で縦梁の片側に回動可能に支承されて且つ反対側で横梁(5)に支承された支持枠(6)に配設されている、特許請求の範囲3)?10)のいずれか一に記載の装置。」 b.(第5頁左上欄第17行?左下欄第16行) 「第10図には巻きほどき装置の変形例を示してある。これは正確にいうと相前後して配列された3台の巻きほどき装置から構成されている。詳細には示してない機枠の支台1には縦桁2を固定してあり、この支台上にはロール4を介して横梁5に支承された支持枠6の横に摺動可能な支承のための軸受3を設けてある。支持枠6には反対側に支持桁7を設けてある。これらの支持桁のうち一本は鎖線で示した移動範囲を経て巻き物11を側面から導入するために水平な回動軸20を中心に回動することができる。支持桁7の自由端部には締め付けスリーブによって棒状部材8とチャック9とを介してストックロール11が回転可能に支承されている。そこから出て行く材料シートは符号13で示してある。材料シート13は図示してない加工機、たとえば横型カッターに通じている。 支持枠6は幅の異なるいろいろな材料シートに合わせることができるように、調節手段、たとえばサーボモータを介してピニオンとラックによって横方向の支持軸上をシート走行方向に対して横方向に移動させることができる。支持桁7をその回動した位置に保持するために解除可能な係止爪37を設けてある。 ストックロールの交換は次のように行なわれる。 支持枠6は、支持桁7が垂直になり、支持桁は、全部巻きほどかれたストックロールがそこに設けられたコンベアに乗るまで下方へ下げられるように回動させられる。空のストックロールの取り外しと除去の後これらの支持桁は再び装入されて鎖線で示した位置に回動させられる。この位置で側面から新しいストックロールが導入され、続いて支持桁が回帰して垂直位置にもどされ、対応する必要な高さに持ち上げられ、こうしてそこにあるチャックが両側から新ストックロールの軸スリーブ中に挿入され、固定される。その後持ち上げ装置の作動によって新ストックロールがその最終位置に到達するまで持ち上げられる。最後に新ストックロールが接着に向けて準備され、公知の態様で予め巻き取ってあった材料シートの端部に連結される。」 上記記載(a)(b)及び図面において、上記引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「縦梁2と横梁5とから成る機枠と、横梁5に2本の支持桁7が横に摺動可能に支承されており、前記の各支持桁7がその自由端部において、ストックロールの軸スリーブ中に挿入するためのチャック9を支持している形式の、ストックロールの巻きほどき装置において、持ち上げ装置によってストックロールが昇降可能であり、支持桁7がチャック9と共に回動運動自在である巻きほどき装置」 3.対比 本願発明と上記引用発明とを対比する。 引用発明の「巻きほどき装置」は、本願発明の「巻戻し装置」に相当し、以下、「ストックロール」は「巻成ロール」、「縦梁2」は「縦桁(4)」、「横梁5」は「横桁(5,6)」、「チャック」は「案内ヘッド」、「支持桁7」は「支持腕(19,20)」にそれぞれ相当する。 そして、引用発明の「2本の支持桁は横方向に摺動可能」とする点は、本願発明の「2本の支持腕が横方向シフト可能」とする点に相当する。 また、本願発明の当初明細書第2頁第23-24行には「ウェッブ走行方向に(つまり機械の縦方向又は長手方向に)振り子運動自在に懸架」と記載されており、この記載及び図面から振り子運動の運動方向である「ウェッブ走行方向」は、「機械の縦方向又は長手方向」であると認められる。そして、引用発明1の「回動運動」の運動方向は、本願発明の「ウェッブ走行方向」と同様であり、運動の結果、ロールを搬送するため空間が形成されるという作用効果も同様であることをかんがみれば、引用発明の「回動運動」は本願発明の「振り子運動」に相当する。 よって、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。 〈一致点〉 「縦桁と横桁とから成る機枠と、2本の支持腕が横方向シフト可能に支承されており、前記の各支持腕がその自由端部において、巻成ロールのスリーブ内へ進入するための案内ヘッドを支持している形式の、巻成ロール用の巻戻し装置において、把持された巻成ロールが昇降可能であり、支持腕が案内ヘッドと共にウェッブ走行方向に振子運動自在である巻成ロール用の巻戻し装置」 [相違点1] 把持された巻成ロールを昇降可能とする構成として、本願発明では「機枠内に支承された、作業幅にわたって横方向に延在する巻戻し桁(7)」を備え、その「巻戻し桁(7)が機枠内で、吊上げ駆動装置(17)によって昇降可能に、ロープ(8)のような引張り部材に懸吊されて」いるのに対し、引用発明では、持ち上げ装置により、把持されたストックロールを昇降可能としている点。 4.判断 (1)相違点1について 引用発明では、被搬送物を昇降可能とする構成として持ち上げ装置を用いているが、一般にロール形状の被搬送物を把持するために昇降可能な桁に支持腕を設け、当該桁をロープのような引張り部材に懸吊し、吊上げ駆動装置により昇降可能とすることは、従来周知の技術手段である(例えば特開昭63-189352号公報、実願平2-2720号(実開平2-108957号)のマイクロフィルム参照)。 そして、当初明細書に記載された「スリーブ位置から比較的大きく変位した場合でも、案内ヘッドは簡単に操作工によって方位修正されてスリーブに整合することができる。」という作用効果も、ロープのような引張り部材に懸吊した上記周知技術自体が有する効果にすぎず(例えば特開昭63-189352号公報参照)、当該効果は巻戻し装置特有の効果でもない。 したがって、引用発明に上記周知技術を適用して、本願発明の相違点1のような構成とすることは、当業者が容易に想到することができたものである。 5.むすび 以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-10-30 |
結審通知日 | 2008-11-14 |
審決日 | 2008-11-26 |
出願番号 | 特願平10-542291 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B65H)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 永石 哲也 |
特許庁審判長 |
石原 正博 |
特許庁審判官 |
村山 禎恒 佐野 健治 |
発明の名称 | 巻成ロール用の巻戻し装置 |
代理人 | アインゼル・フェリックス=ラインハルト |
代理人 | 山崎 利臣 |
代理人 | 矢野 敏雄 |
代理人 | 久野 琢也 |