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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服20051517 審決 特許
不服200710119 審決 特許
不服200417222 審決 特許
無効2008800115 審決 特許
不服200422929 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1196597
審判番号 不服2005-17708  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-09-15 
確定日 2009-04-30 
事件の表示 特願2001-387841「皮膚外用剤組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月 3日出願公開、特開2003-183148〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本願発明
本願は、平成13年12月20日の出願であって、その請求項1?2に係る発明は、平成17年10月17日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】 成分(A)、(B)、(C)及び(D)
(A)一般式(1)
【化1】

(式中、R^(1)及びR^(2)は1個以上の水酸基が置換していてもよい炭素数8?26の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示す。)で表される合成セラミド又は一般式(2)
【化2】

(式中、R^(3)は炭素数10?26の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示し、R^(4)は炭素数9?25の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示す。)で表される合成擬似セラミドの群から選ばれる1種以上
(B)二価以上のポリオールから選ばれる1種以上
(C)消炎作用化合物及び抗炎症作用化合物の群から選ばれる1種以上
(D)ユーカリ抽出液及びアスナロ抽出液から選ばれる1種以上の植物抽出液を含有し、成分(A)/成分(B)の重量比が1/100?100/1である65歳以上の高齢者用の皮膚外用剤組成物。」

2.引用例
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前の刊行物である、特開2000-319171号公報(以下、「引用例1」という。)、特開平9-241144号公報(以下、「引用例2」という。)、及び特開平8-231338号公報(以下、「引用例3」という。)、及び、周知例として提示する「化粧品ハンドブック、平成8年11月1日発行、代表者:関根茂、編集者:蔵多淑子外4名、日光ケミカルズ株式会社外2社、第450頁、448頁、456頁」(以下、「周知例図書1」という。)には、次のような技術事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。

[引用例1]
(1-i)「【請求項1】A成分として殺菌消毒剤0.01?20重量%、B成分として保湿成分0.001?20重量%およびC成分として皮脂類似成分0.05?20重量%を含有することを特徴とする殺菌性皮膚外用剤組成物。
【請求項2】A成分が、アクリノール、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化メチルロザニリン、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、ヨウ素、ヨウ化カリウム、ポピドンヨード、ヨードホルム、マーキュロクロム、アルキルポリアミノエチルグリシン、チメロサール、ブロノポール、レゾルシンおよびヒノキチオールからなる群より選ばれる1種又は2種以上の成分であり、B成分が、グリセリン、ヒアルロン酸およびその塩、ホホバ油、リン脂質、スクワラン、ラノリンおよびその誘導体、尿素、ビタミンA、ビタミンA油、ビタミンEおよびその誘導体、ポリアルキレングリコールおよびその誘導体、高分子多糖類およびその誘導体、アミノ酸およびその誘導体からなる群より選ばれる1種又は2種以上の成分であり、C成分が、スクワレン、コレステロールおよびそのエステル、セラミド、ワックス類、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油およびミンク油からなる群より選ばれる1種又は2種以上の成分である請求項1記載の殺菌性皮膚外用剤組成物。
【請求項3】前記のA、BおよびC成分にさらにD成分として抗炎症剤を0.001?5重量%含有することを特徴とする殺菌性皮膚外用剤組成物。
【請求項4】D成分が、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、ブレトニゾロン、酢酸ブレドニゾロン、吉草酸酢酸ブレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、フルオシノロンアセトニド、グリチルレチン酸およびその誘導体、グリチルリチン酸およびその誘導体、ブフェキサマク、ベンタザック、ウフェナマート、イブプロフェンピコノール、スプロフェンおよびクロタミトンからなる群より選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項3記載の殺菌性皮膚外用剤組成物。」(【特許請求の範囲の請求項1?4】、2頁1欄2?37行)
(1-ii)「【0010】本発明で用いるC成分としては、スクワレン、コレステロールおよびそのエステル、セラミド、ワックス類、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、ミンク油が挙げられる。これらのC成分は、市販品を使用することができる。これらのC成分は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。ここで、例えばコレステロールおよびそのエステルとしては、脂肪酸とのエステルが挙げられる。また、セラミドとしては牛や小麦から抽出されたセラミド類が挙げられる。」(段落【0010】、3頁4欄44行?4頁5欄2行)
(1-iii)「【0011】なお、本発明においては、これらのA、B、C成分にさらにD成分として加ええる抗炎症剤として、例えば、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、ブレトニゾロン、酢酸ブレドニゾロン、吉草酸酢酸ブレドニゾロン、ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、フルオシノロンアセトニド、グリチルレチン酸およびその誘導体、グリチルリチン酸およびその誘導体、ブフェキサマク、ベンタザック、ウフェナマート、イブプロフェンピコノール、スプロフェン、クロタミトンが挙げられる。これらの群から選ばれる1種または2種以上を用いることができる。」(段落【0011】、4頁5欄5?15行)
(1-iv)「【0014】本発明の殺菌性皮膚外用剤の剤型としては、軟膏、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、チック剤、スプレー剤などが挙げられる。本発明の殺菌性皮膚外用剤は、前記の剤型にするためには、必要に応じて各種の添加剤を用いることができる。添加剤として、例えば、基剤、界面活性剤、懸濁剤、粘調剤、着香料、可溶化剤、抗酸化剤、防腐剤などが挙げられる。」(段落【0014】、4頁5欄39?45行)
(1-v)「【0016】【発明の効果】本発明の殺菌性皮膚外用剤は、A成分として殺菌消毒剤0.01?20重量%と、B成分として保湿成分0.001?20重量%およびC成分として皮脂類似成分0.05?20重量%を含むので、黄色ブドウ球菌に対し殺菌効果を有し、皮膚刺激性も低く、皮膚の乾燥化を防ぎ、皮膚バリア機能を健全化し、アトピー性皮膚炎の治療効果も高い。またさらに本発明の殺菌性皮膚外用剤は、前記のA成分、B成分、C成分にさらにD成分として抗炎症剤を0.001?5重量%とを含むので、黄色ブドウ球菌に対し殺菌効果を有し、皮膚刺激性も低く、皮膚の乾燥化を防ぎ、皮膚バリア機能を健全化し、アトピー性皮膚炎の治療効果も高い。なお、本発明による殺菌性皮膚外用剤組成物は、アトピー性皮膚炎への治療効果を有するだけでなく、刺激性が少ないのでスキンケアにも適している。」(段落【0016】、4頁6欄1?15行)
(1-vi)「【0017】
【実施例】本発明を、各作用をもつ薬剤の代表を用いて具体例に基づき更に詳しく説明する。
試験例1(A成分:塩化ベンザルコニウム)
日本クレア(株)より入手した4週齢のアトピー性皮膚炎自然発症マウスであるNC/Jicマウス70匹を表1に示した飼料{(株)オリエンタルバイオ社製}で10週間飼育し、皮膚炎を発症したマウス49匹を得た。それらを各7匹ずつ1-a、1-b、1-c、1-d、1-e、1-fおよび1-gの7群に分け前記飼料で飼育し、表2の殺菌性皮膚外用剤を患部全面に均一に薄く1日2回2週間塗布した。表3の評価・判定基準に従って評価した結果を表4に示した。なお局方親水軟膏の配合組成、ミネラルミックスおよびビタミンミックスは次のものを用いた。
【0018】<局方親水軟膏の配合組成>
組成 ;重量(%)
白色ワセリン ;25
ステアリルアルコール ;20
プロピレングリコール ;12
ポリオキシエチレン(40モル) -
硬化ヒマシ油 ; 4
モノステアリン酸グリセリン ; 1
パラオキシ安息香酸メチル ; 0.1
パラオキシ安息香酸プロピル ; 0.1
精製水 ; 残量
合計 ;100
・・・(後略)。」、及び、殺菌性皮膚外用剤処方の「群1-e」として、A成分の塩化ベンザルコニウム0.1重量%、B成分としてグリセリン5.0重量%、C成分としてセラミド0.5重量%、局方親水軟膏94.4重量%を配合した処方例が示され、評価判定が治療前の2.0から治療後の1.1へ改善したこと。(段落【0017】?【0024】、4頁6欄16行?46頁の表4)
(1-vii)試験例7;(比較試験例のみ)の、殺菌性皮膚外用剤処方の「群7-d」として、A成分のヒノキチオール0.005重量%、B成分のグリセリン0.0005重量%、C成分のセラミド0.01重量%、D成分のブフェキサマク0.0005重量%、局方親水軟膏99.9840重量%を配合した処方例。(段落【0035】【0036】、8頁13欄最下行?9頁15?16欄)

[引用例2]
(2-i)「【0007】…セラミドは表1に示すような各種の天然セラミド…が知られている。
【0008】
【表1】

」(段落【0007】【0008】、3頁4欄20行?4頁5?6欄、表1)

[引用例3]
(3-i)「【0004】本発明は、セラミドの中でも、水分損失を減少させる現象を非常に示し、皮膚のバリア機能を保持または再生可能にするのは、セラミド6であるという発見に基づくものである。」(段落【0004】、2頁2欄24?27行)
(3-ii)「【0006】・・・中略・・・。タイプ1から6のセラミドは、文献(Downing in Arch.Dermatol,Vol.123,1381-1384,1987)に記載されている。タイプ1から6のセラミドは、以下のような構造を有している:
【0007】【化1】

【0008】上記のように、セラミド6は、2つのタイプのフィトスフィンゴシン、すなわち、6Iまたは6IIである。本発明で使用されるセラミド6は、天然由来のセラミドであってもよい。本発明において、セラミド6Iまたは6IIは、単独で、または、混合物として使用され、セラミド6の混合物は一般的には、角質層に存在するセラミドの混合物から抽出することによって得られるものである。」(段落【0006】?【0008】,2頁2欄38行?3頁3欄29行)

[周知例図書1]
(T-i)「

…ヒト皮膚には、図1・5に示す少なくとも6系統のセラミドが存在することが確認されている。」(左欄?右欄、「図1・5 セラミドの構造」、450頁、左欄下から17?15行)
(T-ii)「化粧品に使用されているセラミドとしては、酵母を利用して生成したセラミド、化学合成による疑似セラミド、植物から得られたセラミドなどがある。これらのうち、酵母の利用による生成法では、ヒト皮膚に存在するセラミドとまったく同一の構造を持つセラミドが得られている。現在、セラミド1、セラミド3,セラミド6について製造法が確立されているが、全ての系統のセラミドについて合成が可能とされている。」(450頁右欄下から15?6行)
(T-iii)「非常に多くの種類の動物や植物の部位からの抽出物が、保湿、抗炎症、抗アレルギー、創傷治癒促進などの作用をもつことが知られており、化粧品に使用されている。」(448頁左欄25?29行)
(T-iv)「老化により表皮の皮脂量が減少し、また細胞間脂質も減少し、角質層の水分保持機能が低下する。皮膚はうるおいを失い、かさかさした状態、すなわちドライスキンとなる。」(456頁右欄5?8行)

3.対比、判断
本願発明と引用例1に記載された発明とを対比する。
引用例1には、前記「2.[引用例1]」の摘示、特に摘示(1-i)の請求項1,3からみて、そして、B成分の保湿剤としてグリセリンが挙げられ且つ実施例でも用いられていること(摘示(1-i)の請求項2、(1-vi)参照)及びC成分の皮脂類似成分としてセラミドが挙げられ且つ実施例でも用いられていること(摘示(1-i)の請求項2、(1-vi)参照)を勘案し、次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。
「A成分として殺菌消毒剤0.01?20重量%、B成分としてグリセリンなどの保湿成分0.001?20重量%、C成分としてセラミドなどの皮脂類似成分0.05?20重量%、さらにD成分として抗炎症剤0.001?5重量%を含有する殺菌性皮膚外用剤組成物。」

そして、保湿成分のグリセリンは、本願発明の二価以上のポリオールに相当し、抗炎症剤は、抗炎症作用化合物に相当する。
なお、引用例1発明では殺菌剤を必須成分(A成分)として配合しているのでその点について検討すると、本願明細書には、「本発明の皮膚外用剤組成物には、…殺菌剤を配合することができる。例えば、…塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、グルコン酸クロロヘキシジン等が挙げられる。」(本願明細書【0032】参照)とされていて、これら例示された殺菌剤(下線部のもの)は引用例1にも例示されたものである(摘示事項(1-i)の請求項2参照)ことに鑑み、本願発明も殺菌剤を配合する態様を包含しているものと認められるから、引用例1発明で殺菌剤を配合する点は、両発明の相違点とは言えない。

してみると、両発明は、
「成分(A)、(B)、(C)
(A)セラミド、
(B)二価以上のポリオールであるグリセリン、及び
(C)抗炎症作用化合物を含有する
皮膚外用剤組成物。」
で一致し、以下の相違点1?4で相違する。
<相違点>
1.セラミドに関し、本願発明では、「(A)一般式(1)
【化1】

(式中、R^(1)及びR^(2)は1個以上の水酸基が置換していてもよい炭素数8?26の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を示す。)で表される合成セラミド又は一般式(2)・・・構造式略・・・(式中、・・・中略・・・の炭化水素基を示す。)で表される合成擬似セラミドの群から選ばれる1種以上」と特定しているのに対し、引用例1発明では「セラミド」と記載されているにとどまる点
2.配合成分に関し、本願発明では、「ユーカリ抽出液及びアスナロ抽出液から選ばれる1種以上の植物抽出液」の成分(D)をさらに含有すると特定しているのに対し、引用例1発明では、そのように特定していない点
3.成分割合に関し、本願発明では、「成分(A)/成分(B)の重量比が1/100?100/1である」と特定しているのに対し、引用例1発明ではそのように特定していない点
4.皮膚外用剤組成物に関し、本願発明では、「65歳以上の高齢者用」であると特定しているのに対し、引用例1発明では、そのように特定していない点

そこで、これらの相違点1?4について検討する。
<相違点1>について
引用例1には、「本発明で用いるC成分としては、セラミドが挙げられる。セラミドとしては牛や小麦から抽出されたセラミド類が挙げられる。」(摘示事項(1-ii)参照)と記載されている。
ところで、天然セラミドには、セラミド1?セラミド6IIの7種類のセラミドが存在する。[例えば、摘示事項(2-i)、(3-ii)、又は「周知例図書1」の適示事項(T-i)参照。なお、摘示事項(3-ii)の「タイプ6I」と「タイプ6II」の化学構造式は、その右側部分が明らかに欠落していて、摘示事項(2-i)及び「周知例図書1」の摘示事項(T-i)に記載の「セラミド6I」と「セラミド6II」の化学構造式の誤記と認められる。]このうちセラミド2,セラミド3、セラミド4、セラミド5,及びセラミド6IIは、本願発明の一般式(1)の合成セラミドとはR^(1),及びR^(2)の炭化水素基も重複し、本願発明の一般式(1)の合成セラミドと同一の化合物である。
そして、セラミドを得るための方法として、引用例1に記載されている、牛や小麦から抽出されたセラミド類の他にも、本願明細書に記載の「合成セラミド(発酵法や有機合成等との組み合わせによる)」(段落【0005】)に相当する、「化粧品に使用されているセラミドとしては、酵母を利用して生成したセラミド、化学合成による疑似セラミド、植物から得られたセラミドなどがある。これらのうち、酵母の利用による生成法では、ヒト皮膚に存在するセラミドとまったく同一の構造を持つセラミドが得られている。現在、セラミド1、セラミド3,セラミド6について製造法が確立されているが、全ての系統のセラミドについて合成が可能とされている」(例えば、前記周知図書1の摘示事項(T-ii)参照)ことが本願の出願前に周知の技術事項である。
そうすると、引用例1発明のセラミドとして、本願発明で特定する一般式(1)の合成セラミドを採用することは当業者であれば容易になし得ることである。

<相違点2>について
引用例1には「本発明の殺菌性皮膚外用剤は、前記の剤型にするためには、必要に応じて各種の添加剤を用いることができる。」(摘示事項(1-v)参照)と記載されている。
そして、「非常に多くの種類の動物や植物の部位からの抽出物が、保湿、抗炎症、抗アレルギー、創傷治癒促進などの作用をもつことが知られており、化粧品に使用されている」(例えば、前記周知図書1の摘示事項(T-iii)参照)ことが本願の出願前に周知の技術事項であり、また、ユーカリ抽出液及びアスナロ抽出液は、皮膚外用剤に配合される植物抽出液として本願の出願前に周知のものである[例えば、特開2000-273032号公報(特に特許請求の範囲の請求項1,2、【0006】、表1の本発明品1,2)、特開2001-39848号公報(特に特許請求の範囲の請求項1?3,表1の実施例1?4,実施例6)、及び特開平10-226617号公報(特に特許請求の範囲の請求項1?2,表3の実施例1?2,実施例5)参照]。
他方、本願明細書に記載されている、ユーカリ抽出液及びアスナロ抽出液が配合されていない実施例6と、ユーカリ抽出液及び/又はアスナロ抽出液が配合されている実施例1?5、7?10の試験後の評価項目の数値(段落【0042】?【0045】)をみても、実施例6では、「かさつきが改善する:18,痒みを抑える:16,湿疹を抑える:17,しっとり感:16、及びべたつき感:4」であるのに対して、実施例1?5、7?10では、「かさつきが改善する:17?19,痒みを抑える:15?18,湿疹を抑える:15?18,しっとり感:16?19、及びべたつき感:1?4」であり、両者の間に特段の効果の差異は認められない。
してみれば、引用例1発明において、ユーカリ抽出液及びアスナロ抽出液から選ばれる1種以上の植物抽出液をさらに添加してみることは当業者であれば容易になし得ることである。

<相違点3>について
引用例1では、殺菌性皮膚外用剤処方「群1-e」として、「B成分としてグリセリン5.0重量%、C成分としてセラミド0.5重量%」を配合した処方例が記載されているところ、グリセリンは本願発明の成分(B)であり、セラミドは本願発明の成分(A)に相当するから、その「成分(A)/成分(B)の重量比」は、0.5重量%/5.0重量%、即ち1/10であると言えるので、本願発明で特定する「成分(A)/成分(B)の重量比が1/100?100/1である」との条件を満たしていることは明らかである。
なお、引用例1発明の「B成分としてグリセリンなどの保湿成分0.001?20重量%、C成分としてセラミドなどの皮脂類似成分0.05?20重量%」は、本願発明で好ましいとされている、成分(B)の二価以上のポリオール(グリセリンなど)の含有量0.01?30重量%(本願明細書段落【0023】?【0024】参照)、及び成分(A)のセラミド類の含有量0.005?20重量%(同書段落【0021】参照)とほぼ重なり合っている。
してみると、引用例1発明において、「成分(A)/成分(B)の重量比が1/100?100/1である」割合で成分(A)のセラミドと成分(B)のグリセリンを配合することは、適宜なし得る程度のことと言える。

<相違点4>について
引用例1には、「本発明の殺菌性皮膚外用剤は、皮膚の乾燥化を防ぎ、皮膚バリア機能を健全化し、スキンケアにも適している」(摘示事項(1-v)参照)と記載されていて、皮膚の乾燥化を防ぎ、皮膚バリア機能を健全化し、スキンケア効果を有するものである。そして、高齢者の皮膚は、「老化により表皮の皮脂量が減少し、また細胞間脂質も減少し、角質層の水分保持機能が低下する。皮膚はうるおいを失い、かさかさした状態、すなわちドライスキンとなる」(例えば、前記周知図書1の摘示事項(T-iv)参照)こと、すなわち皮膚のバリア機能が低下し、皮膚が乾燥化することが本願の出願前に周知であるから、皮膚の乾燥化を防ぎ、皮膚バリア機能を健全化し、スキンケアにも適しているという効果は、高齢者用の皮膚外用剤の効果としてふさわしいものでありこそすれ、何等阻害要因となるものではない。
また、本願明細書には、高齢者の年齢について、「試験例1として、皮膚のかさつき、痒み、湿疹等の皮膚症状を抱える65歳以上の高齢者20名のパネラーに一日一回、7日間連続して、皮膚症状のある部位に塗布する使用試験を実施した。」(【0044】)との記載がされているにとどまり、高齢者の年齢として特に「65歳以上」と特定したことに特段の臨界的意義も認められないし、高齢者として65歳以上を想定することは一般的なことにすぎない。
そうすると、引用例1発明において、皮膚外用剤の適用対象として、「65歳以上の高齢者」を対象とすることは当業者であれば容易になし得ることである。

そして、上記相違点1?4にかかる本願発明の発明特定事項を併せ採用することも、当業者が容易に想到し得る程度のものと認められ、それらの採用によって格別予想外の作用効果を奏しているとも認められない。
よって、本願発明は、引用例1発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

ところで、審判請求人は、
(α)審判請求理由(平成17年11月24日付けの手続補正書(方式)の「(3)本願発明と引用文献発明との対比の(viii)参照)において、「試験例として、皮膚のかさつき、痒み、湿疹等の皮膚症状を抱える65歳以上の高齢者にはその改善効果を示さなかった本願明細書記載の比較例2、3の皮膚外用剤組成物を、同様に皮膚のかさつき、痒み、湿疹等の皮膚症状を抱える20歳以上55歳未満の成分パネラー各々20名に1日1回、7日間連続して皮膚症状のある部位に塗布する試験を実施した試験例の結果より、65歳以上の高齢者にはその改善効果を示さなかった比較例2、3の組成物は、20歳以上55歳未満の成人において皮膚のかさつきが改善し、痒み、湿疹を抑える効果があり、しっとり感が認知されたこと。このことは、20歳以上55歳未満の成人に効果のある通常の皮膚外用剤であっても、65歳以上の高齢者に効果があるとは限らないこと、即ち、高齢者用の皮膚外用剤には通常の皮膚外用剤とは異なる性能が要求されることを示すものであり、本願発明は、本願成分(A)、(B)、(C)、及び(D)を含むことにより初めて、65歳以上の高齢者にかさつき改善、痒み及び湿疹の抑制、しっとり感の効果を奏することができ、高齢者用の皮膚外用剤でなく通常の皮膚外用剤等を記載した引用例A1-A9からは、かかる効果は予測し得ない」旨、及び、
(β)平成21年1月9日付けの審尋回答書(「(3)本願発明と引用発明との対比」参照)において、審査で引用された引用例A4(特開平9-165313号公報)と本願発明とを対比して、「引用例A4記載の上記アミド誘導体A、Bを用いた比較例A、Bの組成物は、本願発明の皮膚外用剤組成物(実施例1、7)と比べて、かさつき改善効果、痒み及び湿疹の抑制効果並びにしっとり感の全てにおいて著しく劣っていることが判る」旨を主張する。
しかし、(α)の主張は、成分(B)(二価以上のポリオールから選ばれる1種以上)を含有しない比較例2、及び成分(C)(消炎作用化合物及び抗炎症作用化合物の群から選ばれる1種以上)を含有しない比較例3との対比であり、また(β)の主張は、本願発明の成分(A)(合成セラミド)とは異なる化合物であるアミド誘導体A及びアミド誘導体Bとの対比を行っているものであり、いずれも前提となる成分の組合わせ及び成分自体が引用例1発明とは異なるから、前記請求人の主張は採用できない。

4.むすび
したがって、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
それ故、他の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-24 
結審通知日 2009-03-03 
審決日 2009-03-16 
出願番号 特願2001-387841(P2001-387841)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩下 直人  
特許庁審判長 川上 美秀
特許庁審判官 弘實 謙二
谷口 博
発明の名称 皮膚外用剤組成物  
代理人 的場 ひろみ  
代理人 高野 登志雄  
代理人 山本 博人  
代理人 村田 正樹  
代理人 特許業務法人アルガ特許事務所  
代理人 有賀 三幸  
代理人 中嶋 俊夫  

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