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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1196610
審判番号 不服2006-11683  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-08 
確定日 2009-04-30 
事件の表示 特願2001-206567「弾球遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 1月21日出願公開、特開2003- 19288〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年7月6日の出願であって、平成17年3月14日付の拒絶理由通知に対して平成17年5月19日付で手続補正(以下、「手続補正1」という。)がなされ、これに対し、平成18年4月21日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月8日に拒絶査定不服の審判請求がなされるとともに同年7月7日付けで手続補正(以下、「手続補正2」という。)がなされたものである。
当審では平成20年12月1日付で前記手続補正2を却下するとともに、同日付で拒絶理由(原審において平成17年3月14日付の拒絶理由通知に対する応答として、前記手続補正1がなされたために通知する必要が生じた拒絶理由のみを通知する拒絶理由であって、いわゆる「最後の拒絶理由」である。)を通知して、それに対して平成21年1月28日付で手続補正がなされたものである。

2.平成21年1月28日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年1月28日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
I.本件補正の概略
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、手続補正1により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された
「【請求項1】
1個又は複数個の特別図柄(23a)?(23c)と遊技状態を演出する演出画像(24)とを変化可能に表示する可変表示手段(21)と、球検出手段(14)と、該球検出手段(14)の遊技球の検出を条件に、遊技が遊技者に有利な状態で進行する第1遊技状態と不利な状態で進行する第2遊技状態との何れかを択一的に選択する遊技状態選択手段(36)と、前記球検出手段(14)の遊技球の検出を条件に前記特別図柄(23a)?(23c)を所定時間変動させ、前記遊技状態選択手段(36)が第1遊技状態を選択した場合に前記特別図柄(23a)?(23c)を特別態様で、前記遊技状態選択手段(36)が第2遊技状態を選択した場合に前記特別図柄(23a)?(23c)を非特別態様で夫々停止させる表示制御手段(32)と、前記遊技状態選択手段(36)が前記第1遊技状態を選択した場合に前記特別図柄(23a)?(23c)が前記特別態様となった後に最大所定ラウンド数まで前記第1遊技状態を発生させる第1遊技状態発生手段(37)とを備えた弾球遊技機において、前記表示制御手段(32)は、前記遊技状態選択手段(36)の第1遊技状態の選択に基づいて、多種類の特定表示単位の中から、前記第1遊技状態の各ラウンド毎に前記可変表示手段(21)の演出画像(24)として表示すべき特定表示単位をそのラウンド順に選択する特定表示単位選択部(46)と、前記多種類の特定表示単位のデータを記憶する特定表示単位記憶部(45)と、前記特定表示単位選択部(46)で選択された前記特定表示単位のデータを前記特定表示単位記憶部(45)からラウンド順に読み出して、そのデータに基づいて各ラウンド毎に前記演出画像(24)を制御する特定表示単位制御部(44)とを備えたことを特徴とする弾球遊技機。」から、

「【請求項1】
1個又は複数個の特別図柄(23a)?(23c)と遊技状態を演出する演出画像(24)とを変化可能に表示する可変表示手段(21)と、球検出手段(14)と、該球検出手段(14)の遊技球の検出を条件に、遊技が遊技者に有利な状態で進行する第1遊技状態と不利な状態で進行する第2遊技状態との何れかを択一的に選択する遊技状態選択手段(36)と、前記球検出手段(14)の遊技球の検出を条件に前記特別図柄(23a)?(23c)を所定時間変動させ、前記遊技状態選択手段(36)が第1遊技状態を選択した場合に前記特別図柄(23a)?(23c)を特別態様で、前記遊技状態選択手段(36)が第2遊技状態を選択した場合に前記特別図柄(23a)?(23c)を非特別態様で夫々停止させる表示制御手段(32)と、前記遊技状態選択手段(36)が前記第1遊技状態を選択した場合に前記特別図柄(23a)?(23c)が前記特別態様となった後に最大所定ラウンド数まで前記第1遊技状態を発生させる第1遊技状態発生手段(37)とを備えた弾球遊技機において、前記表示制御手段(32)は、前記遊技状態選択手段(36)が第1遊技状態を選択したときの第1遊技状態コマンドに基づいて、前記所定ラウンド数よりも多い種類の特定表示単位の中から、前記第1遊技状態の各ラウンド毎に前記可変表示手段(21)の演出画像(24)として表示すべき特定表示単位を、同じ特定表示単位が重複しないようにラウンド順に予め選択して記憶する特定表示単位選択部(46)と、前記多種類の特定表示単位のデータを記憶する特定表示単位記憶部(45)と、前記第1遊技状態の各ラウンド毎に、前記特定表示単位選択部(46)で当該ラウンド用として選択された前記特定表示単位のデータを前記特定表示単位記憶部(45)から読み出して、その読み出されたデータに基づいて各ラウンド毎に前記演出画像(24)を制御する特定表示単位制御部(44)とを備えたことを特徴とする弾球遊技機。」へと補正された。

II.補正の適否
本件補正により特許請求の範囲の請求項1にした補正は、
(1)第1遊技状態の各ラウンド毎に前記可変表示手段(21)の演出画像(24)として表示すべき特定表示単位の選択について、「遊技状態選択手段(36)の第1遊技状態の選択」に基づいて行うことを、「遊技状態選択手段(36)が第1遊技状態を選択したときの第1遊技状態コマンド」に基づいて行うものするとともに、それに伴い、「遊技状態選択手段(36)の第1遊技状態の選択」を「遊技状態選択手段(36)が前記第1遊技状態を選択」と記載を改め、
(2)発明を特定するために必要な事項である「特定表示単位」の「種類」について、「多種類」であることを、「所定ラウンド数よりも多い種類」であると限定し、
(3)発明を特定するために必要な事項である「特定表示単位」を「ラウンド順に選択する」ことについて、「同じ特定表示単位が重複しないように」と限定するとともに、
(4)発明を特定するために必要な事項である「特定表示単位選択部(46)」が司る機能について、第1遊技状態の各ラウンド毎に可変表示手段(21)の演出画像(24)として表示すべき特定表示単位を、「そのラウンド順に選択する」から「ラウンド順に予め選択して記憶する」と限定するものである。

[1]新規事項
上記(1)の補正は、第1遊技状態の各ラウンド毎に前記可変表示手段(21)の演出画像(24)として表示すべき特定表示単位の選択について、「遊技状態選択手段(36)が第1遊技状態を選択したときの第1遊技状態コマンド」に基づいて行うものとするが、「遊技状態選択手段(36)が第1遊技状態を選択したときの第1遊技状態コマンド」とは、「遊技状態選択手段(36)が第1遊技状態を選択したとき」に直ちに「第1遊技状態コマンド」が送信されることを前提とした構成であると解釈できる。
これに対し、願書に最初に添付された明細書又は図面(以下、「当初明細書」という。)には、「第1遊技状態コマンド」に関し、以下の事項が記載されている。
ア.段落【0029】
「遊技状態選択手段36は、・・・特別球検出手段14が遊技球を検出することを条件に何れかの乱数値を抽選して、その乱数値が第1遊技状態判定値の場合に第1遊技状態を選択するようになっている。」
イ.段落【0030】
「第1遊技状態発生手段37は、遊技状態選択手段36にて第1遊技状態が選択された場合に、特別可変表示手段21の変動後の特別図柄23a?23cが特別態様となった後に第1遊技状態を発生させ、また遊技球が特定領域15bを通過することを条件(所定条件)に、最大所定ラウンド数(例えば15ラウンド)まで第1遊技状態を継続させるようになっている。」
ウ.段落【0032】
「コマンド送信手段40は、主制御基板31から一方向通信により表示制御基板33へとコマンドを送信するためのもので、遊技状態選択手段36により選択された第1遊技状態及び第2遊技状態の遊技状態コマンド、・・・を表示制御手段32へと送信するようになっている。」
エ.段落【0036】
「特定表示パターン選択部43は、複数の特定表示パターンA?Eの何れか1つを択一的に選択するためのもので、コマンド送信手段40からのコマンドを解析して、第1遊技状態コマンド等に基づいて乱数抽選等により特定表示パターンA?Eの何れかを抽選して、ラウンド数分の複数の特定表示単位A1?A15、B1?B15、C1?C15、D1?D15又はE1?E15を1組として選択するようになっている。」
オ.段落【0064】
「なお、各ラウンド毎に表示すべき特定表示単位Y1?Y15の選択は、この実施形態の場合のように第1遊技状態コマンドを条件に、全てのラウンド分の特定表示単位Y5,Y10・・を予め選択し記憶しておく他、各ラウンド毎にそのラウンドコマンドを条件に選択するようにしても良い。」
上記の事項より、当初明細書には、
・特別球検出手段14が遊技球を検出することを条件に遊技状態選択手段36は、何れかの乱数値を抽選して、その乱数値が第1遊技状態判定値の場合に第1遊技状態を選択すること
・遊技状態選択手段36により選択された第1遊技状態及び第2遊技状態の遊技状態コマンドが、主制御基板31から表示制御基板33へと送信されること
・第1遊技状態コマンドに基づいて、表示制御手段32にて演出画像(24)として表示すべき特定表示単位の選択がなされること
が開示されているといえるものの、当該第1遊技状態コマンドが送信されるタイミングについて、「遊技状態選択手段(36)が第1遊技状態を選択したとき」であることについては記載されていない。
「遊技状態選択手段(36)が第1遊技状態を選択したとき」とは、遊技者に有利な状態である大当りとなるか否かが抽選され、その抽選の結果、いわゆる大当りとなることが決定されるときを意味するが、一般に弾球遊技機の分野において、遊技者に有利な状態である大当りとなるか否かが抽選される時期は、始動入賞した直後であったり、始動入賞を経て保留動作があった後、当該始動入賞に基づく変動を開始する直前であったり等、種々の時期に抽選がなされるものが知られている。そして、当初明細書には、大当りとなるか否かの抽選がなされる時期についても、当該抽選がなされる時期と大当りであることを示す第1遊技状態コマンドが送信される時期との関係についても、記載も示唆もなされていないことから、本件補正は、明細書の中に新たに、「遊技状態選択手段(36)が第1遊技状態を選択したとき」に直ちに「第1遊技状態コマンド」が送信されることを前提とした構成である「遊技状態選択手段(36)が第1遊技状態を選択したときの第1遊技状態コマンド」という新たな技術的事項を導入するものであるから、本件補正は、当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものでないといわなければならない。
したがって、本件補正は、当初明細書に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

[2]特許請求の範囲の限定的減縮
上記(2)乃至(4)の補正は、発明特定事項を限定するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
本件補正は、上記のように、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正事項を含むから、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項第2号において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。
なお、上記[1]に示したとおり、「遊技状態選択手段(36)が第1遊技状態を選択したときの第1遊技状態コマンド」という事項を、「遊技状態選択手段(36)が第1遊技状態を選択したとき」に直ちに「第1遊技状態コマンド」が送信されることを前提とした構成と解釈することは新規事項の追加に当たるので、以下においては、遊技状態選択手段(36)が第1遊技状態を選択したことに基づき送信される第1遊技状態コマンドであることを特定する趣旨と解釈して検討を行う。

[3]独立特許要件(特許法第29条第2項の適用)
【1】引用発明
当審で通知した平成20年12月1日付の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に日本国内で頒布された刊行物である引用文献(特開平9-155024号公報)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(1-1)「【0012】
図1は、本発明に係る遊技機の一例のパチンコ遊技機の遊技盤面の構成を示す正面図である。・・・
【0013】
遊技領域3の中央には、複数種類の識別情報(特別図柄)を可変表示して表示状態が変化可能な可変表示装置4が設けられている。可変表示装置4の下方には、可変入賞球装置8が設けられている。この可変入賞球装置8は、ソレノイド37が励磁状態にされることにより開閉板9が開成して打玉が入賞可能な遊技者にとって有利となる第1の状態と、ソレノイド37が閉成して打玉が入賞不可能な遊技者にとって不利な第2の状態とに変化可能に構成されている。」
(1-2)「【0018】
この可変表示装置4は、たとえばCRT(Cathode Ray Tube) 等で構成されており、識別情報等の画像を表示する可変表示部5が中央部に設けられている。この可変表示部5は、少なくとも左可変表示部、中可変表示部および右可変表示部に3分割されており、すべての可変表示部が一斉に可変開始することにより複数種類の図柄等からなる識別情報が上から下に向かってスクロール表示され、たとえば、左可変表示部、中可変表示部、右可変表示部が一斉に停止制御される。・・・
【0019】
この可変表示装置4が可変停止された状態で、識別情報が、予め定められた特定の識別情報の組合せ(たとえば777)となり、表示結果が予め定められた特定の表示態様となった場合には、特定遊技状態が発生し、可変入賞球装置8が第1の状態に制御されて所定の遊技価値が付与可能な大当り状態となる。・・・」
(1-3)「【0037】
基本回路33は、CRT回路39に表示制御用の指令信号を出力する。CRT回路39は、その指令信号を受けて、CRT表示器41に表示駆動用の信号を出力してCRT表示器41に画像表示を行なわせる。そしてこのCRT表示器41が画像表示することにより可変表示部5に画像が表示される。CRT回路39からCRT表示器41に送信される信号の中には、コマンド信号(コマンドデータ)としてのCD0?CD7と、表示制御通信トリガ信号(割込み信号)であるINTとが含まれる。・・・
【0042】
前述したCRT表示器41は、画像表示制御基板(図示せず)を含む。この画像表示制御基板には、可変表示部5の画像表示制御を行なうための制御回路が形成されている。次に、画像表示制御基板に形成された制御回路を詳細に説明する。
【0043】
図4は、画像表示制御基板に形成された制御回路を示すブロック図である。図4を参照して、この制御回路は、CPU52、ワークRAM(以下、WRAMという)53、ROM54、ビデオカラーエンコーダ(以下、VCEという)55、ビデオディスプレイコントローラ(以下、VDCという)56、ビデオRAM(以下、VRAMという)57,58を含む。CPU52は、コネクタ51およびCRT回路39(図3参照)を介して基本回路33に接続される。CPU52およびVCE55は、コネクタ59を介して可変表示部5(CRT表示器41に含まれる)に接続される。
【0044】
CPU52は、CRT回路39およびコネクタ51を介して基本回路33から画像表示のためのコマンドデータを受取り、ROM54に格納されている画像表示用のプログラムおよびデータに基づいて、WRAM53を作業領域として使用しながら画像表示を行なう。その手順は次のとおりである。CPU52は、受取ったコマンドに応答してROM54から画像表示用のデータ(動画像表示用の動画像データが含まれる)を読出し、そのデータをVDC56に与える。・・・」
(1-4)「【0046】
・・・ランダムカウンタは、以下に示すように6種類あり、それぞれのランダムカウンタは、前述した基本回路33によりカウント動作される。
【0047】
C RND1は、大当り状態(特定遊技状態)を発生させるか否かを事前決定するために用いられ、「0」からカウントアップしてその上限(304,326または368)までカウントアップし、再度0からカウントアップし直すように構成されている。このC RND1のカウント上限値は、設定1,設定2,設定3によりそれぞれ相違しており、設定1では「304」、設定2では「326」、設定3では「368」となっている。・・・
【0057】
次に、ランダムカウンタの値により大当りを発生させるか否かを事前に決定するための手順を、大当り発生確率の設定1,設定2,設定3に分けて説明する。図7は、設定1の場合にランダムカウンタの値により大当りを発生させるか否かを事前に決定するための手順を示すフローチャートである。打玉が始動口7に入賞して始動玉検出器26により検出されれば、その時点におけるWC RND1の値を抽出し、その抽出値が「7」のときに大当りを発生させることが事前決定される。その場合、WC RND Cの抽出値により、大当りとなる図柄が決定される。
【0058】
一方、WC RND1の抽出値が「7」以外のときには、外れが事前決定される。その場合には、WC RND Lの抽出値により左可変表示部の予定停止図柄が決定され、WC RND Cの値により中可変表示部の予定停止図柄が決定され、WC RND Rの抽出値により右可変表示部の予定停止図柄が決定される。
【0059】
なお、これら3つの予定停止図柄を決定した際に、その決定内容がたとえばぞろめとなり大当りを発生させるための図柄の組合せが偶然一致した場合には、WC RND Cの抽出値に「1」を加算して強制的に外れの図柄となるように制御する。但し、3つの予定停止図柄が、「7・8,7,7・8」の場合の大当り図柄と一致した場合には、WC RND Cの抽出値に「2」を加算して強制的に外れの図柄となるように制御する。
・・・
【0063】
次に、設定2の場合を説明する。・・・設定2の場合が設定1の場合と異なるのは次の点である。まず、WC RND1の上限値が異なる。さらに、高確率状態のときに大当りを発生させるWC RND1の抽出値が異なる。すなわち、高確率状態のときには、WC RND1の抽出値が、7,71,151,277,307,313のときに大当りを発生させることが事前決定され、それ以外のときに外れが事前決定される。・・・
【0065】
設定3が、設定1,設定2と異なるのは次の点である。まず、WC RND1の上限値(368)が異なる。さらに、高確率状態のときに大当りを発生させることが事前決定されるWC RND1の抽出値が異なる。すなわち、高確率状態のときには、WC RND1の抽出値が、7,71,151,277,307,313,359のときに大当りを発生させることが事前決定され、それ以外のときに外れが事前決定される。・・・」
(1-5)「【0071】
このパチンコ遊技機においては、大当り状態になった場合には、繰返し継続制御が最大16回行なわれる。すなわち、繰返し継続制御は、1?16ラウンド実行され得る。このような繰返し継続制御の各ラウンド中においては、可変表示装置4の可変表示部5に動画像が表示される。それらの動画像の各々は、ストーリー性を有するものである。
【0072】
次に、繰返し継続制御の各ラウンドにおける動画像表示(以下、ラウンド表示という)の種類を説明する。・・・
【0073】
図14に示されるように、1,2,6,7,8,11,12,13,16の各ラウンドにおいては、通常ラウンド表示が実行される。この通常ラウンド表示とは、基本回路33から画像表示制御基板のCPU52へ与えられる予め決まったコマンドに対応して実行されるラウンド表示であり、たとえば、ラウンド回数の情報および所定の動画像が表示される。また、3,4,5,9,10,14,15の各ラウンドにおいては、割込みギャグの表示が実行される。ここで、割込ギャグの表示は前述のようにWC RND GAGによりランダムに選択される動画像であり、基本回路33により決定され、対応するコマンドを画像表示制御基板のCPU52へ与える。それに応じ実行されるラウンド表示である。
【0074】
次に、割込ギャグの種類決定用の乱数の抽出値と、割込ギャグの表示を指示するギャグ表示コマンドとの関係について説明する。この遊技機においては、基本回路33から画像表示制御基板のCPU52へ与えられるコマンドデータによって、割込ギャグの表示内容が指示される。そのような割込ギャグの表示を指令するための表示コマンドは、次に示すギャグ表示コマンド決定テーブルを参照して決定される。
・・・
【0076】
割込ギャグの画像は、たとえば10種類用意されている。すなわち、ROM54には、10種類の割込ギャグの画像データが記憶されている。・・・」
(1-6)「【0104】
次に、図18のS41の大入賞口開放後処理の内容を詳細に説明する。図19は、大入賞口開放後処理の処理手順を示すフローチャートである。
・・・
【0108】
次に、S56により、選択画面表示時期であるか否かの判断がなされる。ここで、選択画面表示時期とは、前述した割込ギャグの画像(画面)を選択的に表示させる時期(ラウンド)をいう。すなわち、S56では、遊技の状態が割込ギャグを表示するラウンドに該当する時期であるか否かが判断される。S56で、選択画面表示時期ではないと判断された場合は、後述するS58へ進む。一方、S56で、選択画面表示時期であると判断された場合は、S57に進み、ギャグ表示コマンド決定テーブル(図15参照)を参照し、WC RND GAGの抽出値に対応する表示コマンドをセットする処理がなされる。
【0109】
次に、S58に進み、S57でセットされた表示コマンドが、所定期間中に選択されたものであるか否かの判断がなされる。・・・一方、S58で、表示コマンドが所定期間中に選択されたものであると判断された場合は、S59へ進み、WC RND GAGの抽出値に「1」を加算する処理がなされ、その後処理は、S57へ戻る。すなわち、S58,S59の処理によって、S57でセットされた表示コマンドが、所定期間中に既にセットされたものである場合には、同じ内容の割込ギャグの画像表示を避けるために、WC RND GAGの値を更新(+1)し、別の表示コマンドを新たに選択する処理が行なわれるのである。このような処理が行なわれることにより、同じ種類の割込ギャグが短い期間中に再度表示されることを防ぎ、遊技者を飽きさせないようにすることができる。」
(1-7)「【0123】
なお、この実施の形態においては、割込ギャグの表示をするラウンドを一部のラウンドに限ったが、これに限らず、割込ギャグは、全てのラウンドにおいて表示するようにしてもよい。」
(1-8)「【0127】
なお、繰返し継続制御等の遊技制御と、動画像の選択表示制御とは、別々の制御手段(基本回路33,CPU52)で行なうようにしてもよく、また、同じ制御手段で行なうようにしてもよい。同じ制御手段で制御する場合は、たとえば、基本回路33で両方の制御を行なうようにしてもよい。」

また、上記(1-7)に「割込ギャグの表示をするラウンドを一部のラウンドに限ったが、これに限らず、割込ギャグは、全てのラウンドにおいて表示するようにしてもよい。」と摘記したとおり、全てのラウンドにおいて割込ギャグを表示することが記載され、また、上記(1-8)に「繰返し継続制御等の遊技制御と、動画像の選択表示制御とは、別々の制御手段(基本回路33,CPU52)で行なうようにしてもよく」と摘記したとおり、動画像の選択表示制御を、(画像表示制御基板の)CPU52で行う実施例が開示されているので、これらの実施例を元に以下の認定を行う。
上記の記載(1-1)?(1-8)及び図面によれば、引用文献には以下の発明が記載されていると認められる。
「少なくとも左可変表示部、中可変表示部および右可変表示部に3分割され、前記各可変表示部で可変表示される識別情報と大当り状態になった場合に繰返し継続制御が最大16ラウンド実行され得るものであって、その各ラウンド中において割込ギャグの画像が表示される可変表示装置4と、始動玉検出器26と、該始動玉検出器26により打玉が検出されれば、その時点におけるランダムカウンタWC RND1の値を抽出することによって、大当り状態である可変入賞球装置8の開閉板9が開成して打玉が入賞可能な遊技者にとって有利となる第1の状態と、外れである可変入賞球装置8の開閉板9が閉成して打玉が入賞不可能な遊技者にとって不利な第2の状態とのいずれかを事前決定する基本回路33と、前記始動玉検出器26により打玉が検出されれば、前記各可変表示部で複数種類の識別情報を可変表示して、前記基本回路33が大当りを発生させることを事前決定した場合に大当りとなる図柄が決定され、識別情報が予め定められた特定の識別情報である777の組合せという特定の表示態様となるように、前記基本回路33が外れを事前決定した場合に識別情報が大当りを発生させるための図柄の組合せと一致しないように夫々停止させる制御を行う画像表示制御基板に形成された制御回路と、前記基本回路33が大当りを発生させることを事前決定した場合に前記識別情報が予め定められた特定の識別情報である777の組合せという前記特定の表示態様となった後に大当り状態である第1の状態が最大16ラウンド実行され得る繰返し継続制御を行うパチンコ遊技機において、前記画像表示制御基板に形成された制御回路は、前記基本回路33が大当りを発生させることを事前決定した場合に、全てのラウンドにおいて割込ギャグの画像を表示するものであって、複数の種類の割込ギャグの画像の中から、前記大当り状態である第1の状態の各ラウンド毎に前記可変表示装置4の大当り状態である第1の状態の繰返し継続制御における動画像として表示する割込ギャグの画像を、各ラウンド毎にギャグ表示コマンド決定テーブルを参照することにより表示する割込ギャグの画像を決定し、その際、所定期間中に同じ種類の割込ギャグの画像が再度表示されることのないように処理を行い、前記複数の種類の割込ギャグの画像のデータを格納する画像表示制御基板のROM54と、前記大当り状態である第1の状態の各ラウンド毎に、前記決定された割込ギャグの画像を画像表示制御基板のROM54から読み出して、その読み出された割込ギャグの画像をビデオディスプレイコントローラに送ることにより各ラウンド毎の割込ギャグの画像の表示を行う画像表示制御基板のCPU52とを備えた、パチンコ遊技機。」(以下、「引用発明」という。)

【2】対比
引用発明は、上記【1】に示した如くのものである。
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「識別情報」は本願補正発明の「特別図柄」に相当し、引用発明の「特別図柄(識別情報)」は「左可変表示部、中可変表示部および右可変表示部に3分割され、前記各可変表示部で可変表示される」から、これを、「複数個の」と言い換えることができる。引用発明の「割込ギャグの画像」は本願補正発明の「演出画像」及び「特定表示単位」のいずれにも相当し、同様に、「可変表示装置4」は「可変表示手段」に、「始動玉検出器26」は「球検出手段」に、「打玉が検出されれば」は「遊技球の検出を条件に」に、「可変表示して」は「変動させ」に、「大当り状態である可変入賞球装置8の開閉板9が開成して打玉が入賞可能な遊技者にとって有利となる第1の状態」は「遊技が遊技者に有利な状態で進行する第1遊技状態」に、「外れである可変入賞球装置8の開閉板9が閉成して打玉が入賞不可能な遊技者にとって不利な第2の状態」は「不利な状態で進行する第2遊技状態」に、「いずれかを」は「何れかを択一的に」に、「事前決定」は「選択」に、「基本回路33」は「遊技状態選択手段」に、「識別情報が予め定められた特定の識別情報である777の組合せという特定の表示態様」は「特別図柄を特別態様」に、「識別情報が大当りを発生させるための図柄の組合せと一致しないよう」は「特別図柄を非特別態様」に、「画像表示制御基板に形成された制御回路」は「表示制御手段」に、「大当りを発生させることを事前決定」は「第1遊技状態を選択」に、「識別情報が予め定められた特定の識別情報である777の組合せという(前記)特定の表示態様」は「特別態様」に、「大当り状態である第1の状態」は「第1遊技状態」に、「最大16ラウンド」は「最大所定ラウンド数」に、「パチンコ遊技機」は「弾球遊技機」に、「格納」は「記憶」に、「画像表示制御基板のROM54」は「特定表示単位記憶部」に、「表示を行う」は「制御する」に、「画像表示制御基板のCPU52」は「特定表示単位制御部」にそれぞれ相当しており、さらに引用発明について以下のことがいえる。

(1)引用発明の「演出画像(割込ギャグの画像)」は、「大当り状態になった場合・・・の各ラウンド中に」表示されるものであるから、これを、「遊技状態を演出する演出画像」と言い換えることができる。

(2)引用発明の「可変表示手段(「可変表示装置4)」には、「特別図柄(識別情報)」と「演出画像(ギャグの画像)」とを表示するものであるが、前者の「特別図柄(識別情報)」は可変表示のときに表示され、後者の「演出画像(ギャグの画像)」は大当り状態になった場合の各ラウンド中に表示されるものである。そして、弾球遊技機において、可変表示が行われた結果所定の図柄の組合せとなって大当りが発生すると、大当り状態となって各ラウンドが進行していくことは技術常識であって、前者の可変表示のときに表示される「特別図柄(識別情報)」と後者の大当り状態になった場合の各ラウンド中に表示される「演出画像(ギャグの画像)」とは、同時に表示されることなく切り替えて表示されることが通常であるから、引用発明は、本願補正発明の如く両者を「変化可能に表示する」ものといえる。

(3)引用発明は、「球検出手段(始動玉検出器26)の遊技球の検出を条件に特別図柄(識別情報)を変動させ(可変表示して)」るから、所定時間であるかどうかは別にして、本願補正発明の「球検出手段の遊技球の検出を条件に(前記)特別図柄を所定時間変動させ」に共通する。

(4)引用発明は、「最大所定ラウンド数(最大16ラウンド)まで第1遊技状態(大当り状態である第1の状態)を発生させる」繰返し継続制御を行うものであるから、その制御を行うための制御手段を備えていることは明らかであって、その制御手段を「第1遊技状態発生手段」と称することができる。

(5)引用発明の「画像表示制御基板に形成された制御回路」は、「大当り状態である第1の状態の各ラウンド毎に」「表示する特定表示単位(割込ギャグの画像)を、各ラウンド毎にギャグ表示コマンド決定テーブルを参照することにより表示する割込ギャグの画像を決定」するものであるから、本願補正発明の「特定表示単位選択部」に相当する機能を奏するものといえる。

(6)本願補正発明の「遊技状態選択手段(36)が第1遊技状態を選択したときの第1遊技状態コマンド」という事項について、上記[2]に記載のとおり、「遊技状態選択手段(36)が第1遊技状態を選択したとき」に直ちに「第1遊技状態コマンド」が送信されることを前提とした構成と解釈することは新規事項の追加に当たるので、遊技状態選択手段が第1遊技状態を選択したことに基づき送信される第1遊技状態コマンドであることを特定する趣旨と解釈して以下の検討を行う。
引用発明の「演出画像(割込ギャグの画像)」が表示されるのは、「遊技状態選択手段(基本回路33)が第1遊技状態を選択(大当りを発生させることを事前決定)した場合」であり、「表示制御手段(画像表示制御基板に形成された制御回路)」が、各ラウンド毎に表示する「特定表示単位(割込ギャグの画像)」を決定するのは、「各ラウンド毎」である。
したがって、引用発明が「特定表示単位(割込ギャグの画像)」の選択を行うことは、遊技状態選択手段が第1遊技状態を選択したことに基づいているから、その選択が、遊技状態選択手段が第1遊技状態を選択したことに基づいて行われるという限度で、本願補正発明の「遊技状態選択手段が第1遊技状態を選択したときの第1遊技状態コマンドに基づいて」に共通する。

(7)引用発明の「特定表示単位(割込ギャグの画像)」は、「複数の種類の特定表示単位(割込ギャグの画像)の中から」決定される。
引用発明の「特定表示単位(割込ギャグの画像)」の選択は、「所定期間中に同じ種類の割込ギャグの画像が再度表示されることのないように処理を行い」、そのような処理を行う目的は、上記【1】(1-6)に摘記した「同じ種類の割込ギャグが短い期間中に再度表示されることを防ぎ、遊技者を飽きさせない」ことである。
上記【1】(1-7)に摘記したとおり「割込ギャグは、全てのラウンドにおいて表示する」場合の実施例を元に引用発明を認定しているので、上記【1】(1-5)に摘記した3,4,5,9,10,14,15の各ラウンドにおいて割込ギャグの画像表示が実行される場合、すなわち、大当り状態である第1の状態が最大16ラウンド実行され得る中で、その内7ラウンドで割込ギャグの画像が表示される別の実施例を引用発明の認定には含めていないが、この実施例では、7ラウンドの割込ギャグの画像表示に対し、そのラウンド数より多い10種類の割込ギャグが用意されている。そして、前記割込ギャグの画像が表示される7ラウンドのうち、もっとも長く連続する区間は第3?5ラウンドの3つのラウンドであるが、この3つの連続するラウンドにおいて「同じ種類の割込ギャグの画像が再度表示されることのないように」するのであれば、10種類もの割込ギャグを用意する必要はない。
7ラウンドの割込ギャグの画像表示に対し、そのラウンド数より多い10種類の割込ギャグが用意されていることの目的が、「同じ種類の割込ギャグが短い期間中に再度表示されることを防ぎ、遊技者を飽きさせない」であることを考慮すると、1回の大当り状態である第1の状態が実行され得る最大16ラウンドを「所定期間中」として、その間、「同じ種類の割込ギャグの画像が再度表示されることのないように」することがきわめて自然である。
したがって、「割込ギャグは、全てのラウンドにおいて表示する」場合の実施例を元にその認定を行っている引用発明において、「所定期間中に同じ種類の割込ギャグの画像が再度表示されることのないように処理を行」うことは、最大ラウンド数よりも多い種類の「特定表示単位(割込ギャグの画像)」の中から、同じ「特定表示単位(割込ギャグの画像)」が重複しないように選択するという構成を採用するに等しいから、本願補正発明の「第1遊技状態の各ラウンド毎に前記可変表示手段の演出画像として表示すべき特定表示単位を、同じ特定表示単位が重複しないように」選択する点は、引用発明との一致点であると認める。
なお、仮に、一致点でないとしても、前記の如く、引用文献には、7ラウンドの割込ギャグの画像表示に対し、そのラウンド数より多い10種類の割込ギャグが用意されていることが開示されているから、上記構成は、設計事項に留まる。

(8)引用発明の「特定表示単位制御部(画像表示制御基板のCPU52)」は、各ラウンド毎の「特定表示単位(割込ギャグの画像)」の表示を、「その読み出された割込ギャグの画像をビデオディスプレイコントローラに送ることにより」行うから、これを、「その読み出されたデータに基づいて」と言い換えることができる。

【3】一致点・相違点
上記【2】に記載した事項より、本願補正発明と引用発明とは以下の点で一致し、また、相違していると認められる。

一致点;
1個又は複数個の特別図柄と遊技状態を演出する演出画像とを変化可能に表示する可変表示手段と、球検出手段と、該球検出手段の遊技球の検出を条件に、遊技が遊技者に有利な状態で進行する第1遊技状態と不利な状態で進行する第2遊技状態との何れかを択一的に選択する遊技状態選択手段と、前記球検出手段の遊技球の検出を条件に前記特別図柄を変動させ、前記遊技状態選択手段が第1遊技状態を選択した場合に前記特別図柄を特別態様で、前記遊技状態選択手段が第2遊技状態を選択した場合に前記特別図柄を非特別態様で夫々停止させる表示制御手段と、前記遊技状態選択手段が前記第1遊技状態を選択した場合に前記特別図柄が前記特別態様となった後に最大所定ラウンド数まで前記第1遊技状態を発生させる第1遊技状態発生手段とを備えた弾球遊技機において、前記表示制御手段は、前記遊技状態選択手段が第1遊技状態を選択したことに基づいて、前記所定ラウンド数よりも多い種類の特定表示単位の中から、前記第1遊技状態の各ラウンド毎に前記可変表示手段の演出画像として表示すべき特定表示単位を、同じ特定表示単位が重複しないように選択する特定表示単位選択部と、前記多種類の特定表示単位のデータを記憶する特定表示単位記憶部と、前記第1遊技状態の各ラウンド毎に、前記特定表示単位選択部で当該ラウンド用として選択された前記特定表示単位のデータを前記特定表示単位記憶部から読み出して、その読み出されたデータに基づいて各ラウンド毎に前記演出画像を制御する特定表示単位制御部とを備えた、弾球遊技機、である点。

相違点;
(A)特別図柄の変動について、本願補正発明が「所定時間」変動させるのに対し、引用文献には、その変動の変動時間が「所定時間」であることが明記されていない点。

(B)特定表示単位選択部が、第1遊技状態の各ラウンド毎に演出画像として表示すべき特定表示単位の選択を行う契機について、本願補正発明が、「遊技状態選択手段が第1遊技状態を選択したときの第1遊技状態コマンドに基づいて」行うのに対し、引用発明はそのような構成を備えるものではない点。

(C)特定表示単位選択部が行う第1遊技状態の各ラウンド毎に演出画像として表示すべき特定表示単位の表示順の決定について、本願補正発明が、「ラウンド順に予め選択して記憶する」のに対し、引用発明は、「各ラウンド毎にギャグ表示コマンド決定テーブルを参照することにより表示する割込ギャグの画像を決定」するものであって、各ラウンド毎にその選択を行うものである点。

【4】判断
(1)相違点(A)について。
弾球遊技機に代表される遊技機分野において、図柄が変動を開始してから、その後、所定時間後に図柄の停止を行うことは従来周知の技術であり、例えば、特開平8-155108号公報、特開平6-277346号公報に記載されるとおりである。
したがって、引用発明の図柄を、「所定時間」変動させるものとすることは、単なる周知技術の付加にすぎず、上記相違点(A)に係る本願発明の構成を採用することは当業者が想到容易である。

(2)相違点(C)について。
検討の都合上、先に、相違点(C)について検討を行う。
ディスクプレイヤー等に記録された音楽や映像等各種プログラムをランダムな順序で再生するシャッフル再生を行う際に、その再生順を最初に一括処理で予め選択し記憶することは、従来周知の技術であり、例えば、特開平10-149609号公報、特開平3-198279号公報〔第3頁右上欄第12行-同左下欄第19行、第2図を参照。〕、特開平5-81828号公報に記載されるとおりである。
したがって、引用発明の特定表示単位選択部が行う第1遊技状態の各ラウンド毎に演出画像として表示すべき特定表示単位の表示順の決定を最初に一括処理で予め選択し記憶するものとすることは、単なる周知技術の付加にすぎない。そして、引用発明の各ラウンド毎の「特定表示単位(割込ギャグの画像)」の表示順を予め選択し記憶することは、「ラウンド順に」予め選択し記憶する構成を採用するに等しいから、上記相違点(C)に係る本願発明の構成を採用することは当業者が想到容易である。

(3)相違点(B)について。
主制御手段から表示制御を司る副制御手段に対しコマンドが送信される遊技機分野において、主制御手段が大当り状態を選択したことに基づき送信されるコマンドに基づいて、表示制御を司る副制御手段が表示制御を行うことは従来周知の技術であり、例えば、特開平6-210058号公報、特開2001-170300号公報に記載されるとおりである。そして、上記(2)において、相違点(C)について先に検討したとおり、引用発明の各ラウンド毎の「特定表示単位(割込ギャグの画像)」を、ラウンド順に予め選択し記憶することは、当業者が想到容易であり、表示制御を司る副制御手段である「特定表示単位制御部(画像表示制御基板のCPU52)」が、前記各ラウンド毎の「特定表示単位(割込ギャグの画像)」を、ラウンド順に予め選択し記憶する契機として、上記周知技術を採用して、主制御手段である「遊技状態選択手段(基本回路33)」が大当り状態を選択したことに基づき送信されるコマンドに基づいて行う構成とすることに格別の困難性は認められない。
したがって、上記相違点(B)に係る本願発明の構成を採用することは当業者が想到容易である。

【5】むすび
相違点(A)?(C)に係る本願補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

[4]独立特許要件についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
[1]本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成21年1月28日付の手続補正が上記のとおり却下されているので、前記手続補正1により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
1個又は複数個の特別図柄(23a)?(23c)と遊技状態を演出する演出画像(24)とを変化可能に表示する可変表示手段(21)と、球検出手段(14)と、該球検出手段(14)の遊技球の検出を条件に、遊技が遊技者に有利な状態で進行する第1遊技状態と不利な状態で進行する第2遊技状態との何れかを択一的に選択する遊技状態選択手段(36)と、前記球検出手段(14)の遊技球の検出を条件に前記特別図柄(23a)?(23c)を所定時間変動させ、前記遊技状態選択手段(36)が第1遊技状態を選択した場合に前記特別図柄(23a)?(23c)を特別態様で、前記遊技状態選択手段(36)が第2遊技状態を選択した場合に前記特別図柄(23a)?(23c)を非特別態様で夫々停止させる表示制御手段(32)と、前記遊技状態選択手段(36)が前記第1遊技状態を選択した場合に前記特別図柄(23a)?(23c)が前記特別態様となった後に最大所定ラウンド数まで前記第1遊技状態を発生させる第1遊技状態発生手段(37)とを備えた弾球遊技機において、前記表示制御手段(32)は、前記遊技状態選択手段(36)の第1遊技状態の選択に基づいて、多種類の特定表示単位の中から、前記第1遊技状態の各ラウンド毎に前記可変表示手段(21)の演出画像(24)として表示すべき特定表示単位をそのラウンド順に選択する特定表示単位選択部(46)と、前記多種類の特定表示単位のデータを記憶する特定表示単位記憶部(45)と、前記特定表示単位選択部(46)で選択された前記特定表示単位のデータを前記特定表示単位記憶部(45)からラウンド順に読み出して、そのデータに基づいて各ラウンド毎に前記演出画像(24)を制御する特定表示単位制御部(44)とを備えたことを特徴とする弾球遊技機。」(以下、「本願発明」という。)

[2]特許法第29条第2項の適用
【1】引用発明
当審で通知した平成20年12月1日付の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に日本国内で頒布された刊行物である引用文献(特開平9-155024号公報)の記載事項及び引用発明は、前記2.II.[3]【1】に記載したとおりである。

【2】対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、
(1)新規事項を含む「遊技状態選択手段(36)が第1遊技状態を選択したときの第1遊技状態コマンド」という記載を「遊技状態選択手段(36)の第1遊技状態の選択」という記載に戻すとともに、それに伴い「遊技状態選択手段(36)が前記第1遊技状態を選択」という記載を「遊技状態選択手段(36)の第1遊技状態の選択」という記載に戻し、
(2)発明を特定するために必要な事項である「特定表示単位」の「種類」について、「所定ラウンド数よりも多い種類」という限定事項を省き「多種類」であるとし、
(3)発明を特定するために必要な事項である「特定表示単位」を「ラウンド順に選択する」ことについて、「同じ特定表示単位が重複しないように」という限定事項を省き、
(4)発明を特定するために必要な事項である「特定表示単位選択部(46)」が司る機能について、第1遊技状態の各ラウンド毎に可変表示手段(21)の演出画像(24)として表示すべき特定表示単位を、「ラウンド順に予め選択して記憶する」という限定事項を省き、「そのラウンド順に選択する」とするものである。

ここで、上記(1)の点について、引用発明の「演出画像(割込ギャグの画像)」が表示されるのは、「遊技状態選択手段(基本回路33)が第1遊技状態を選択(大当りを発生させることを事前決定)した場合」であり、「表示制御手段(画像表示制御基板に形成された制御回路)」が、各ラウンド毎に表示する「特定表示単位(割込ギャグの画像)」を決定するのは、「各ラウンド毎」であるから、引用発明が「特定表示単位(割込ギャグの画像)」の選択を行うことは、遊技状態選択手段が第1遊技状態を選択したことに基づいているといえる。したがって、この点は、本願発明と引用発明との一致点となるから、前記 2.II.[3]【3】に記載した相違点(B)は無くなる。
上記(2)乃至(4)の点は、本願補正発明から限定事項を省き、本願発明をより広義な概念で特定するものである。
そうすると、本願発明の構成要素を実質的に全て含み、さらに、他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.II.[3]に説示したように、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

【3】むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-24 
結審通知日 2009-03-03 
審決日 2009-03-16 
出願番号 特願2001-206567(P2001-206567)
審決分類 P 1 8・ 561- WZ (A63F)
P 1 8・ 575- WZ (A63F)
P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西村 仁志  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 森 雅之
▲吉▼川 康史
発明の名称 弾球遊技機  
代理人 谷藤 孝司  

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