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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C09D
管理番号 1196626
審判番号 不服2006-20340  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-09-13 
確定日 2009-04-30 
事件の表示 特願2002-273324「建材用エマルション塗料」拒絶査定不服審判事件〔平成16年4月8日出願公開、特開2004-107518〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年9月19日の出願であって、平成18年5月9日付けの拒絶理由通知に対して、同年7月18日に意見書及び手続補正書が提出され、その後、同年8月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月13日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年10月12日に手続補正書が提出され、平成20年6月30日付けの当審における審尋に対して、同年8月25日に回答書が提出され、また、同月27日に手続補足書が提出されたものである。

2.本件補正について
2.1 本件補正
平成18年10月12日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の、
「【請求項1】 アルカリ可溶性モノマーユニットと、
式(I)で表される基を側鎖に有する会合性モノマーユニット
【化1】
-(R^(1)-O)_(n)-X-R^(2) (I)
(式中、R^(1)はメチレン基、エチレン基、プロピレン基またはブチレン基であり、nは10?300であり、Xは-C(=O)-または-C(=O)NH-であり、R^(2)は炭素数6?30の炭化水素基である)と、を含むこと、ならびに
厚膜の形成に用いられること、
を特徴とする建材用エマルション塗料。
【請求項2】 前記アルカリ可溶性モノマーユニットは、カルボキシル基、スルホ基もしくはリン酸基、またはこれらの塩を有することを特徴とする請求項1に記載の建材用エマルション塗料。
【請求項3】 前記アルカリ可溶性モノマーユニットは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロキシプロピオン酸、シトラコン酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、モノ(2-メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート、モノ(2-アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシ-3-クロロプロピルホスフェートおよび2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルホスフェート、並びにこれらの塩からなる群より選択される1種以上のモノマーに由来することを特徴とする請求項2に記載の建材用エマルション塗料。
【請求項4】 前記塩は、ナトリウム塩、カリウム塩またはアンモニウム塩であることを特徴とする請求項3に記載の建材用エマルション塗料。
【請求項5】 前記会合性モノマーユニットは、下記式(II):
【化2】

(式中、n、XおよびR^(2)は前記定義通りである)で表されることを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の建材用エマルション塗料。
【請求項6】 サグテスターを用いて塗装され、80℃で3分間乾燥された際の限界膜厚が375μm以上であること、および
粘度が100?1000mPa・sであることを特徴とする請求項1?5のいずれかに記載の建材用エマルション塗料。
【請求項7】 乾燥時の厚みが5?1000μmである厚膜の形成に適用されることを特徴とする請求項1?6のいずれかに記載の建材用エマルション塗料。」
を、
「【請求項1】 アルカリ可溶性モノマーユニットと、
式(I)で表される基を側鎖に有する会合性モノマーユニット
【化1】
-(R^(1)-O)_(n)-X-R^(2) (I)
(式中、R^(1)はメチレン基、エチレン基、プロピレン基またはブチレン基であり、nは10?300であり、Xは-C(=O)-または-C(=O)NH-であり、R^(2)は炭素数6?30の炭化水素基である)と、を含むこと、ならびに
乾燥時の厚みが5?1000μmである厚膜の形成に用いられること、
を特徴とする建材用エマルション塗料。
【請求項2】 前記アルカリ可溶性モノマーユニットは、カルボキシル基、スルホ基もしくはリン酸基、またはこれらの塩を有することを特徴とする請求項1に記載の建材用エマルション塗料。
【請求項3】 前記アルカリ可溶性モノマーユニットは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロキシプロピオン酸、シトラコン酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、モノ(2-メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート、モノ(2-アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシ-3-クロロプロピルホスフェートおよび2-(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルホスフェート、並びにこれらの塩からなる群より選択される1種以上のモノマーに由来することを特徴とする請求項2に記載の建材用エマルション塗料。
【請求項4】 前記塩は、ナトリウム塩、カリウム塩またはアンモニウム塩であることを特徴とする請求項3に記載の建材用エマルション塗料。
【請求項5】 前記会合性モノマーユニットは、下記式(II):
【化2】

(式中、n、XおよびR^(2)は前記定義通りである)で表されることを特徴とする請求項1?4のいずれかに記載の建材用エマルション塗料。
【請求項6】 サグテスターを用いて塗装され、80℃で3分間乾燥された際の限界膜厚が375μm以上であること、および
粘度が100?1000mPa・sであることを特徴とする請求項1?5のいずれかに記載の建材用エマルション塗料。」と、
補正するものである。

2.2 補正の適否(新規事項の有無及び補正の目的)について
上記請求項1?6に係る補正は、補正前の請求項1?6を削除し、請求項1?6を引用して記載されている補正前の請求項7を訂正後の請求項としたものであるから請求項を削除するものであり、また、願書に最初に添付した明細書の記載からみて新規事項を追加するものではない。
したがって、上記補正は、特許法第17条の2第3項の規定に適合するものであり、また、同補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除を目的とするものに該当するものであって、同条第4項の規定に適合するものであるから、本件補正を認める。

3.本願発明について
3.1 本願発明
以上のとおりであるから、本願発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その請求項1に係る発明は、下記のとおりである。
「アルカリ可溶性モノマーユニットと、
式(I)で表される基を側鎖に有する会合性モノマーユニット
【化1】
-(R^(1)-O)_(n)-X-R^(2) (I)
(式中、R^(1)はメチレン基、エチレン基、プロピレン基またはブチレン基であり、nは10?300であり、Xは-C(=O)-または-C(=O)NH-であり、R^(2)は炭素数6?30の炭化水素基である)と、を含むこと、ならびに
乾燥時の厚みが5?1000μmである厚膜の形成に用いられること、
を特徴とする建材用エマルション塗料。」(以下、「本願発明1」という。)

3.2 原査定の理由
拒絶査定における拒絶の理由(平成18年5月9日付けの「理由1」)は、本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物1(特開2001-240630号公報)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないという理由を含むものである。

3.3 刊行物の記載事項
(a)原査定で引用された引用文献1である
「特開2001-240630号公報」(以下、「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。

(a-1)「【請求項1】 下記一般式(1)で示される反応性重合体からなるアルケニルエーテル単量体と、酸性単量体および/またはその塩とを含む単量体成分を重合させてなる共重合体。
【化1】



(但し、nは平均値で10?300、Rは炭化水素基であり、Xは-C(O)-または-C(O)NH-である。)
【請求項2】 前記重合がエマルション重合である、請求項1記載の共重合体。
【請求項3】 前記共重合体がアルカリ可溶性増粘剤として使用される、請求項1または2記載の共重合体。」(特許請求の範囲、請求項1?3)
(a-2)「【発明の属する技術分野】本発明は、アルカリ溶液に可溶で、溶解した際にその粘性を高めることのできる、新規な共重合体に関する。また、本発明は、重合することにより、アルカリ溶液に可溶で、溶解した際にその粘性を高めることのできる重合体となり得る新規な反応性重合体に関する。」(段落【0001】)
(a-3)「【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明が解決しようとする課題は、アルカリ溶液に可溶で、溶解した際にその粘性を飛躍的に高めることのできる、新規な共重合体を提供することにある。」(段落【0003】)
(a-4)「【発明の実施の形態】本発明にかかる反応性重合体は、一般式(1)で示されるものであり、(3-メチル-3-ブテニル)基と、R(炭化水素基)とが、2価のオキシエチレン基を介して結合してなる単量体である。この単量体を重合して得られる重合体は、R(炭化水素基)からなる疎水性基同士が強く会合するため、アルカリ溶液に溶解した際に、その粘性を飛躍的に高めることができる。一般式(1)におけるRは、炭化水素基であり、炭素数6?30の炭化水素基が好ましく、たとえば、オクチル基、ノニル基、ドデシル基、オクタデシル基等のアルキル基;フェニル基、ナフチル基、アントリル基等のアリール基;ノニルフェニル基、ドデシルフェニル基等のアルキルアリール基;シクロオクチル基、コレスタニル基、ラノスタニル基等の多環式アルキル基を挙げることができ、これらの1種または2種以上が用いられる。これらの中でも、炭素数8?30の炭化水素基が好ましく、炭素数8?30のアルキル基がより好ましく、炭素数12?20のアルキル基がより好ましく、炭素数16?20のアルキル基がさらに好ましく、炭素数18のアルキル基が最も好ましい。」(段落【0007】)
(a-5)「一般式(1)で示されるアルケニルエーテル単量体の配合割合は、全単量体に対して0.01?4モル%であることが好ましく、より好ましくは0.04?1モル%である。前記配合割合が0.01モル%未満の場合は、本発明の共重合体の疎水性基の量が不足し、アルカリ溶液に溶解した際に、その粘性を高める効果が低くなる。一方、4モル%を超える量を使用すると、エマルション重合によって共重合体を製造することが困難になる上、同一重合体内での疎水性基同士の会合が増加し、粘性を高める効果が低下する。本発明の共重合体は、酸性単量体および/またはその塩を共重合していることにより、アルカリ可溶性となり得る。」(段落【0011】)
(a-6)「本発明の共重合体は、分子内に酸性基を有し、アルカリ溶液に可溶である。そしてアルカリ溶液に溶解後、一般式(1)で示されるアルケニルエーテル単量体に由来するRからなる疎水性基同士が強く会合することによって、溶液の増粘性が高まる。このような性質を利用して、本発明の共重合体は、たとえば、建築・建材用塗料、粘着剤、印刷インキ、紙塗被剤、ベントナイト安定液等の増粘剤や、合成保水剤、コンクリート用分離低減剤等に配合して利用することができる。」(段落【0023】)

3.4 刊行物1に記載された発明
刊行物1には、「下記一般式(1)で示される反応性重合体からなるアルケニルエーテル単量体と、酸性単量体および/またはその塩とを含む単量体成分を重合させてなる共重合体。
【化1】

(但し、nは平均値で10?300、Rは炭化水素基であり、Xは-C(O)-または-C(O)NH-である。)」(摘記(a-1))との記載があり、「一般式(1)におけるRは、炭化水素基であり、炭素数6?30の炭化水素基が好ましく、」(摘記(a-4))との記載がある。
また、同刊行物には、「本発明の共重合体は、分子内に酸性基を有し、アルカリ溶液に可溶である。そしてアルカリ溶液に溶解後、一般式(1)で示されるアルケニルエーテル単量体に由来するRからなる疎水性基同士が強く会合することによって、溶液の増粘性が高まる。このような性質を利用して、本発明の共重合体は、たとえば、建築・建材用塗料、・・・等に配合して利用することができる。」(摘記(a-6))との記載があるから、(摘記(a-1))に記載された「下記一般式(1)で示される反応性重合体からなるアルケニルエーテル単量体と、酸性単量体および/またはその塩とを含む単量体成分を重合させた共重合体」は、建築・建材用塗料として利用できるものである。
以上のことから、刊行物1には、
「下記一般式(1)で示される反応性重合体からなるアルケニルエーテル単量体と、酸性単量体および/またはその塩とを含む単量体成分を重合させてなる共重合体
【化1】



(但し、nは平均値で10?300、Rは炭素数6?30の炭化水素基であり、Xは-C(O)-または-C(O)NH-である。)を含む建材用塗料。」(以下、「引用発明」という。)という発明が記載されている。

3.5 対比
まず、本願特許請求の範囲の請求項1に記載された「アルカリ可溶性モノマーユニットと、式(I)で表される基を側鎖に有する会合性モノマーユニット・・・と、を含むこと」の技術的意味について検討する。
同請求項には、上記の記載はあるものの、アルカリ可溶性モノマーユニットと式(I)で表される基を側鎖に有する会合性モノマーユニットとを含む共重合体であるとの規定はなされていない。しかしながら、本願明細書には「本発明は、アルカリ可溶性モノマーユニットおよび会合性モノマーユニットを有する重合体を増粘剤として含む、建材用エマルション塗料である。」(段落【0012】)との記載があり、アルカリ可溶性モノマーユニットと会合性モノマーユニットとが一つの重合体に含まれているものと解されるから、請求項1に記載された「アルカリ可溶性モノマーユニットと、式(I)で表される基を側鎖に有する会合性モノマーユニット・・・と、を含むこと」とは、これらのモノマーユニットを含む共重合体であると認められる。
そこで、本願発明と引用発明とを対比する。
刊行物1には、「本発明が解決しようとする課題は、アルカリ溶液に可溶で、溶解した際にその粘性を飛躍的に高めることのできる、新規な共重合体を提供する」(摘記(a-3))との記載、及び、「本発明の共重合体は、酸性単量体および/またはその塩を共重合していることにより、アルカリ可溶性となり得る。」(摘記(a-5))との記載があるから、引用発明の「共重合体」における酸性単量体および/またはその塩とを含む単量体成分が重合した部分は、本願発明の「アルカリ可溶性モノマーユニット」に相当する。
次に、引用発明の「下記一般式(1)で示される反応性重合体からなるアルケニルエーテル単量体」は、置換基として、
-CH_(2)CH_(2)-O-(CH_(2)CH_(2)O)_(n)-X-R
を側鎖に有する単量体であり、そして、nが平均値で10?300、すなわち、側鎖に-CH_(2)CH_(2)O-が平均値で11?301結合したものであり、Xが-C(O)-または-C(O)NH-であり、Rは炭素数6?30の炭化水素基である。
また、刊行物1には、「本発明にかかる反応性重合体は、一般式(1)で示されるものであり、(3-メチル-3-ブテニル)基と、R(炭化水素基)とが、2価のオキシエチレン基を介して結合してなる単量体である。この単量体を重合して得られる重合体は、R(炭化水素基)からなる疎水性基同士が強く会合するため、アルカリ溶液に溶解した際に、その粘性を飛躍的に高めることができる。」(摘記(a-4))との記載があり、一般式(1)で示される反応性重合体を重合して得られる重合体が会合するのであるから、引用発明の一般式(1)で示される反応性重合体からなるアルケニルエーテル単量体成分が重合した部分は、本願発明の会合性モノマーユニットに相当する。
そして、引用発明の一般式(1)で示される反応性重合体からなるアルケニルエーテル単量体成分が重合した部分と本願発明の会合性モノマーユニットとについて、引用発明の「-CH_(2)CH_(2)O-」は、本願発明の「R^(1)」がエチレン基であるものに相当し、引用発明においては、側鎖に「-CH_(2)CH_(2)O-」が一つ分多く結合しているから、引用発明の「n」は、平均値が10?299の範囲で本願発明の「n」に一致し、引用発明の「R」は、本願発明の「R^(2)」に相当する。
そうすると、両者は、
「アルカリ可溶性モノマーユニットと、
式(I)で表される基を側鎖に有する会合性モノマーユニット
【化1】
-(R^(1)-O)_(n)-X-R^(2) (I)
(式中、R^(1)はエチレン基であり、nは11?300であり、Xは-C(=O)-または-C(=O)NH-であり、R^(2)は炭素数6?30の炭化水素基である)と、を含む建材用塗料。」
で一致し、次の点で一応相違する。

(ア)前者では「乾燥時の厚みが5?1000μmである厚膜の形成に用いられる」と特定されているのに対し、後者では、乾燥時の厚みについて特定されていない点

(イ)塗料の種類について、前者では「エマルション塗料」と特定されているのに対し、後者では特定されていない点

3.6 相違点についての判断

(a)相違点(イ)について
まず、相違点(イ)について検討する。
刊行物1には、「本発明の共重合体は、分子内に酸性基を有し、アルカリ溶液に可溶である。そしてアルカリ溶液に溶解後、一般式(1)で示されるアルケニルエーテル単量体に由来するRからなる疎水性基同士が強く会合することによって、溶液の増粘性が高まる。このような性質を利用して、本発明の共重合体は、たとえば、建築・建材用塗料、粘着剤、印刷インキ、紙塗被剤、ベントナイト安定液等の増粘剤や、合成保水剤、コンクリート用分離低減剤等に配合して利用することができる。」(摘記(a-6))との記載がある。
この記載によれば、引用発明の共重合体は、アルカリ溶液に溶解するもので、Rからなる疎水性基同士が強く会合することによって、溶液の増粘性が高まる、すなわち、親水性の溶媒の中で疎水性基同士が強く会合すると解されるから、引用発明の共重合体が増粘剤として適用される塗料は、一般的には水系塗料である。水系塗料については、「塗装の事典」(株式会社朝倉書店、1985年12月1日発行、初版第4刷)の25頁11行?同頁下から4行に、
「1.2.13 水系塗料
・・・
水系塗料は通常エマルション塗料と水溶性樹脂塗料(コロイダルディスパーションを含む)に大別することができる.
・・・
これらの樹脂分散形態による特性の比較を表1.7に示す。


とあって、水系塗料で増粘剤を必要と塗料はエマルション塗料であること、及び、本願出願時、建材用塗料として、水性エマルション塗料は、代表的なものであること(たとえば、上記「塗装の事典」の435頁下から2行?436頁2行には、「建築塗装では塗装対象の種類が多いので、これに用いられる塗料もさまざまで,うるしと焼付け塗料のほかは多少にかかわらず現場施工で使用されている.それらのうちでもっとも一般に用いられているのは,木材面および金属面用の合成樹脂調合ペイントと,壁面用の酢酸ビニル系ならびにアクリル系のエマルションペイントである.」との記載があり、また、「塗装用語辞典」(技報堂出版株式会社、1993年1月20日発行、1版1刷)の第55頁右欄下から10行?下から2行には、「エマルション塗料・・・一般に,水に不溶な樹脂や乾性油あるいはワニスを水中に分散させた懸濁液をビヒクルとする塗料.乳化重合によって製造したポリマー(合成ラテックス)をビヒクルとするものを一般にエマルション塗料と呼び,酢酸ビニル系,アクリル系等があり,建築物内外装用によく使用されている.」との記載がある。)からみて、引用発明の建材用塗料はエマルション塗料であるといえる。
そうであれば、相違点(イ)は実質的な相違ではない。

(b)相違点(ア)について
刊行物1には、建材用塗料として使用した場合の乾燥時の厚みについての記載はない。
しかしながら、「(a)相違点(イ)について」で検討したとおり、引用発明の建材用塗料は、エマルション塗料であると認められるところ、建材用エマルション塗料を塗装したときの乾燥時の厚みについては、
(1)特開2001-187858号公報に、「本発明は、各種建築物の内・外壁や天井などの内装若しくは外装の化粧塗装に適した水性塗料に関する。」(段落【0001】)として、「塗膜の厚さとして少なくとも500μm・・・の厚さを挙げることができるが、コスト、塗装作業性及び成膜性、並びに調湿性等といった塗膜の物性や機能等に鑑みれば、通常0.1?3mm、・・・の範囲を例示することができる。」(段落【0050】)とあり、また、同公報には、実験例1において、実施例1で調製したアクリル樹脂エマルジョンを含有する塗料をエアレススプレーで吹き付け、通風乾燥によって固化させて塗膜厚0.5mmのパネルを作成した旨の記載があり(段落【0071】)、
(2)特開2001-122709号公報の実施例1?5に、スレート板に、着色顔料入りアクリル系エマルジョン下塗塗料をエアースプレー塗装し、乾燥し下塗膜厚50μmの塗板としたものに、次いで、アクリル系樹脂に増粘剤等を添加したアクリル系エマルジョンを含む水系透明防藻塗料を上記の下塗塗装を施したスレート板の上から塗装・乾燥し、上塗膜厚30μmの塗装板(総合膜厚80μm)を得たこと(段落【0042】?【0046】)が記載されており、
(3)特開2002-12816号公報に、「乳化重合型アクリル重合体水性分散体を主成分とする水性塗料組成物」(請求項1)において、「本発明の水性塗料組成物は、通常、上記基材に対して、乾燥膜厚で5?350μmとなるように塗装することができ、より好ましくは、20?300μmである。」(段落【0058】)とあり、同公報の実施例1には、増粘剤を添加した塗料を乾燥膜厚で50μmとなるよう塗装したこと(段落【0071】)が記載されており、また、
(4)特開2002-226764号公報に、実施例1?9として、フッ素系共重合体の水性分散液に増粘剤等を配合したクリア塗料を乾燥膜厚40μmとなるように塗布することが記載されている(段落【0138】?【0165】)。
上記各公報に記載された事項からみて、エマルション塗料が塗布された場合における塗料の乾燥時の厚みは5?数100μmであって、通常は数10μm?数100μm程度であるから、乾燥時の厚みが5?1000μmであることが特に大きな厚みを有する厚膜であるとすることはできず、引用発明の建材用塗料は、塗布した際の塗料の乾燥時の厚みが5?1000μmである厚膜の形成に用いられるといえる。
そうであれば、相違点(ア)も実質的な相違ではない。

3.7 まとめ
以上のとおりであるから、本願発明1は、本願出願前に頒布された引用例1に記載された発明である。

4. むすび
したがって、本願発明1は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないので、本願は、その余の請求項に係る発明を検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-26 
結審通知日 2009-03-03 
審決日 2009-03-16 
出願番号 特願2002-273324(P2002-273324)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C09D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 滝口 尚良  
特許庁審判長 原 健司
特許庁審判官 坂崎 恵美子
鈴木 紀子
発明の名称 建材用エマルション塗料  
代理人 八田 幹雄  
代理人 奈良 泰男  
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