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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01Q
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01Q
管理番号 1196640
審判番号 不服2007-3052  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-01-25 
確定日 2009-04-30 
事件の表示 特願2001-198977「アンテナ素子、無線通信装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 1月17日出願公開、特開2003- 17930〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件は、平成13年6月29日の出願であって、平成18年9月28日付け拒絶理由通知に対して、同年12月4日付けで手続補正がされたが、同年12月20日付けで拒絶査定され、これに対し、平成19年1月25日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同年2月26日付けで手続補正がされたものである。

第2 補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成19年2月26日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は補正前の特許請求の範囲の請求項2に記載された発明を、

「線状の導体からなり始端に導線により電力が供給される第一導線と、この第一導線の終端に直角に接続されている短絡導線と、この短絡導線の終端に直角に接続されて前記第一導線と平行に位置する第二導線と、誘電体と磁性体との少なくとも一方からなり前記第一導線と前記短絡導線と前記第二導線からなる導体線路が外面に形成されている多面体形状の素子基体と、を具備しているアンテナ素子であって、
前記第一導線と前記第二導線とが前記素子基体の複数の外面に連続して形成されており、
前記素子基体の外面の、前記第一導線と前記第二導線との間、および前記導体線路に対面する部分には、前記導体線路以外に導体が形成されていないアンテナ素子。」

という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。

2.新規事項の有無、補正の目的要件について
本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の特許請求の範囲の請求項2に記載された「第一導線」に関し、「導線により」と限定を付加し、「導線により電力が供給される」と記載して、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第17条の2第3項(新規事項)及び第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。

3.独立特許要件について
本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

(1)補正後の発明
上記「1.補正後の本願発明」の項で認定したとおりである。

(2)引用発明
原審の拒絶理由に引用された特開平10-173425号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、移動体通信機器等に用いられる表面実装型アンテナ、その表面実装型アンテナを用いたアンテナ装置、および通信機に関する。」(2頁1欄、段落1)

ロ.「【0025】図9は表面実装型アンテナの斜視図であり、図1に示したものとは異なり、この例では接地電極3を設けず、給電電極2と放射電極1の開放端とを対向させて、そのギャップ部分から給電するようにしている。すなわち1a,1b,1c,1d,1e,1f,1gで示す各電極を誘電体基体11に形成して放射電極1を構成し、2a,2b,2cで示す電極を給電電極2として構成するとともに、電極1gと2cの先端部を対向させている。
【0026】図10は図9に示した表面実装型アンテナの等価回路図である。ここでインダクタLは図9に示した放射電極1のインダクタンス成分、C11は放射電極の開放端付近と接地間との静電容量、C12は給電電極2と放射電極1との間のギャップ部分の静電容量である。このような構造の表面実装型アンテナにおいても、放射電極1のインダクタンスにより共振周波数が定まるので、図9に示したように放射電極1を折り返し形状とすることによって全体の小型化および低周波化が図れる。
【0027】次に、給電電極と放射電極のギャップ部分から給電する他の表面実装型アンテナの例を第9?第12の実施形態として図11?図14に示す。
【0028】図11に示す例では、放射電極1と給電電極2とのギャップを誘電体基体11の図における左手前の端面に形成している。」(4頁5?6欄、段落25?28)

上記引用例の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記摘記事項ロ.の【0025】、【0028】の記載、及び図11によれば、表面実装型アンテナは、給電電極2a,2b及びギャップ部分1hと、線状の導体からなり始端に電力が供給される放射電極の部分(ギャップ部分1hの端部,1g,1f,底面の1fに接続する1eの直線部)を具備し、これらの放射電極の部分をまとめて電極Aと称することは任意である。
また、この電極Aの終端に直角に接続されている放射電極の部分(底面の1eの直線部)を具備し、この放射電極の部分を電極Bと称することは任意である。
また、この電極Bの終端に直角に接続されて電極Aと平行に位置する放射電極の部分(1dに接続する底面の1eの直線部,1d,1c,1b,1a)を具備し、これらの放射電極の部分をまとめて電極Cと称することは任意である。
また、表面実装型アンテナは、六面体形状の誘電体基体11を具備し、誘電体基体11には、電極Aと電極Bと電極Cからなる放射電極が外面に形成されている。
また、図11によれば、電極Aと電極Cは、誘電体基板11の複数の外面に連続して形成されていること、誘電体基体11の外面の、電極Aと電極Cとの間には、放射電極以外に導体が形成されていないことがみてとれる。

したがって、上記引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。

「給電電極2a,2b及びギャップ部分1hと、線状の導体からなり始端に電力が供給される電極Aと、この電極Aの終端に直角に接続されている電極Bと、この電極Bの終端に直角に接続されて前記電極Aと平行に位置する電極Cと、前記電極Aと前記電極Bと前記電極Cからなる放射電極が外面に形成されている六面体形状の誘電体基体11と、を具備している表面実装型アンテナであって、
前記電極Aと前記電極Cとが前記誘電体基体11の複数の外面に連続して形成されており、
前記誘電体基体11の外面の、前記電極Aと前記電極Cとの間には、前記放射電極以外に導体が形成されていない表面実装型アンテナ。」

(3)対比・判断
補正後の発明と引用発明とを対比する。
a.引用発明の「電極A」、「電極B」、「電極C」及び「放射電極」は、補正後の発明の「第一導線」、「短絡導線」、「第二導線」及び「導体線路」に対応する構成であり、これらの間に実質的な差異はない。
b.引用発明の「六面体」は、多面体である。
c.引用発明の「誘電体基体11」は、誘電体からなる素子基体である。
d.引用発明の「表面実装型アンテナ」は、アンテナ素子の一種である。

したがって、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)

「線状の導体からなり始端に電力が供給される第一導線と、この第一導線の終端に直角に接続されている短絡導線と、この短絡導線の終端に直角に接続されて前記第一導線と平行に位置する第二導線と、誘電体と磁性体との少なくとも一方からなり前記第一導線と前記短絡導線と前記第二導線からなる導体線路が外面に形成されている多面体形状の素子基体と、を具備しているアンテナ素子であって、
前記第一導線と前記第二導線とが前記素子基体の複数の外面に連続して形成されており、
前記素子基体の外面の、前記第一導線と前記第二導線との間には、前記導体線路以外に導体が形成されていないアンテナ素子。」

(相違点1)

「第一導線」に関し、補正後の発明は、「導線により」電力が給電されるのに対し、引用発明は、給電電極2a,2b及びギャップ部分1hにより電力が供給される点。

(相違点2)

「素子基体の外面」の「導体線路以外に導体が形成されていない」配置に関し、補正後の発明は、「導体線路に対面する部分には」、導体線路以外に導体が形成されていないのに対し、引用発明は、給電電極2a,2bが形成されている点。

そこで、上記相違点1及び2について検討する。

アンテナ素子において、放射導体に導線により電力を供給することは、例えば、特開平6-53733号公報(段落13、15、図2、3)、特開平10-247806号公報(段落19、図1)、特開平10-173434号公報(段落15、図1)に開示されるように周知技術であり、引用発明に周知技術を採用することに特段の阻害要因は見あたらないから、引用発明の給電電極2a,2b及びギャップ部分1hに換え、周知技術の導線を用い、補正後の発明のように「導線により」電力が給電されるようにすることは当業者が容易に成し得ることであり、その際、給電電極2a,2bは、導線に置き換えられ、導体線路のみとなるから、「導体線路に対面する部分には」、導体線路以外に導体が形成されていないことは当然である。

そして、補正後の発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が容易に予測できる範囲のものである。

以上のとおり、補正後の発明は引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.結語
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成19年2月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年12月4日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項2に記載された以下のとおりのものと認める。

「線状の導体からなり始端に電力が供給される第一導線と、この第一導線の終端に直角に接続されている短絡導線と、この短絡導線の終端に直角に接続されて前記第一導線と平行に位置する第二導線と、誘電体と磁性体との少なくとも一方からなり前記第一導線と前記短絡導線と前記第二導線からなる導体線路が外面に形成されている多面体形状の素子基体と、を具備しているアンテナ素子であって、
前記第一導線と前記第二導線とが前記素子基体の複数の外面に連続して形成されており、
前記素子基体の外面の、前記第一導線と前記第二導線との間、および前記導体線路に対面する部分には、前記導体線路以外に導体が形成されていないアンテナ素子。」

2.引用発明
引用発明は、上記「第2 補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(2)引用発明」の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は上記補正後の発明から当該本件補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に当該本件補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2 補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2009-02-27 
結審通知日 2009-03-03 
審決日 2009-03-16 
出願番号 特願2001-198977(P2001-198977)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01Q)
P 1 8・ 121- Z (H01Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮崎 賢司鈴木 圭一郎  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 萩原 義則
小宮 慎司
発明の名称 アンテナ素子、無線通信装置  
代理人 谷澤 靖久  
代理人 木村 明隆  
代理人 机 昌彦  

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