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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E21D 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 E21D |
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管理番号 | 1196650 |
審判番号 | 不服2007-10449 |
総通号数 | 114 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-06-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-04-12 |
確定日 | 2009-04-30 |
事件の表示 | 特願2003- 20034「セグメント」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 8月19日出願公開、特開2004-232258〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
【1】手続の経緯 本願は、平成15年1月29日の出願であって、平成19年3月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年5月9日付けで手続補正がなされたものである。 その後、平成20年9月5日付けで審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、同年11月14日付けで回答書が提出されたものである。 【2】平成19年5月9日付けの手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成19年5月9日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] [1]補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、以下のように補正された。 「一対のピース間およびリング間接合面を備えた複数の曲板状セグメントピースから構成され、前記ピース間接合面同士が相互に接合するようにトンネル掘削面の周方向に沿って隣接配置して、隣接するセグメントピース間を相互に連結してリング体を組立て、掘削の進行に伴って、前記リング間接合面同士が相互に接合するように、前記セグメントピースをトンネル軸方向に沿って順次隣接設置し、隣接するリング体間を相互に連結して、トンネル掘削面の内側に筒状に構築される鋼殻を有しない鉄筋コンクリート製の一次覆工用セグメントにおいて、 前記セグメントピースは、コンクリートの打設により形成される曲板状セグメントピース本体を備え、 前記セグメントピース本体は、せん断強度と引張り強度とを増加させる鋼繊維からなる補強繊維が混入された繊維補強高流動コンクリートで形成し、前記セグメントピース本体には、主筋のみを埋設することを特徴とするセグメント。」 上記補正は、本願の請求項1に係る発明の「鉄筋コンクリート製の一次覆工用セグメント」を「鋼殻を有しない」と限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とする。 そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かについて、以下検討する。 [2]引用刊行物 刊行物1:矢郷隆浩 外4名,「鋼繊維補強コンクリートを用いたトンネル覆工板の開発(1)」,土木学会第56回年次学術講演会 講演概要集 第6部,社団法人土木学会,平成13年9月1日発行,第1版第1刷,28-29頁 原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された上記刊行物1には、図面とともに、以下のことが記載されている。 (1a) 「1.はじめに 近年,建築工事におけるコスト縮減は重要な課題となっており,トンネル工事に用いる覆工板についても,その本体および継手構造の簡素化に関する研究が多数進められている.このような状況を踏まえ,筆者らは,RC構造に変わるものとして高流動コンクリートと鋼繊維補強コンクリートを組み合わせたプレキャストのトンネル覆工板(以下,SFRC板と呼ぶ)を考えた.この覆工板は,山岳トンネルではTBMライナー,また都市トンネルでは自立性の高い良好な地盤中のセグメントをその適用対象としており,二次製品であるトンネル覆工板の製造コスト縮減を念頭において開発している.本報告は,SFRC板の概要およびSFRCの強度特性について述べたものである.」(第28頁第8?14行) (1b) 「2.SFRC板の概要 SFRC板は,鉄筋を使用しないため鉄筋籠の組立・運搬に要する労務費および機械設備が不要なことが大きな特徴である.また鉄筋籠の製造,保管に必要なスペースが不要なためトンネル覆工板の現地生産に適しており,この場合,運搬費を削減することが可能になる.継手構造は、前述の通り良好な地盤を対象としているので,側方からの地盤反力を最大限利用できるようナックルジョイントなどのヒンジに近い簡略なものを想定している. 使用するSFRCは,硬化後に覆工板に必要な強度特性や耐久性を持つことに加え,フレッシュ時に自己充填性と材料分離に対する抵抗性を持つような配合を検討している.すなわち,SFRC板の製造には、締固めや表面仕上げが不要であり,かつ製造に使用する型枠や機械設備の簡素化が可能な高流動コンクリートを採用した.」(第28頁第15?22行) 上記記載事項(1a)?(1b)及び当業者の技術常識によれば、刊行物1には、以下の発明が記載されていると認められる。 「鉄筋を使用しない、高流動コンクリートと鋼繊維補強コンクリートを組み合わせたプレキャストのトンネル覆工板。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。) [3]対比 本願補正発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、刊行物1記載の発明の「トンネル覆工板」について、上記記載事項(1a)によれば、「トンネル覆工板」の適用対象として「セグメント」を挙げていることから、刊行物1記載の発明の「トンネル覆工板」は本願補正発明の「セグメント」に相当する。 また、一般に、コンクリート製のセグメント(トンネル覆工板)は、「一対のピース間およびリング間接合面を備えた複数の曲板状セグメントピースから構成され、前記ピース間接合面同士が相互に接合するようにトンネル掘削面の周方向に沿って隣接配置して、隣接するセグメントピース間を相互に連結してリング体を組立て、掘削の進行に伴って、前記リング間接合面同士が相互に接合するように、前記セグメントピースをトンネル軸方向に沿って順次隣接設置し、隣接するリング体間を相互に連結して、トンネル掘削面の内側に筒状に構築されるコンクリート製の一次覆工用セグメントにおいて、前記セグメントピースは、コンクリートの打設により形成される曲板状セグメントピース本体を備え」たものであるから、刊行物1記載の発明も同様の構成を備えることは明らかであり、さらに、上記記載事項(1a)の「RC構造に変わるものとして高流動コンクリートと鋼繊維補強コンクリートを組み合わせたプレキャストのトンネル覆工板」等の記載から、刊行物1記載の発明のセグメント(トンネル覆工板)はコンクリートのみからなるものであり、鋼殻を有しないことは明らかである。 また、鋼繊維からなる繊維補強コンクリートがせん断強度と引張り強度とを増加させることは従来周知である(例えば、特開平9-310448号公報(【0028】参照)等参照)。 そうすると、両者は、 「一対のピース間およびリング間接合面を備えた複数の曲板状セグメントピースから構成され、前記ピース間接合面同士が相互に接合するようにトンネル掘削面の周方向に沿って隣接配置して、隣接するセグメントピース間を相互に連結してリング体を組立て、掘削の進行に伴って、前記リング間接合面同士が相互に接合するように、前記セグメントピースをトンネル軸方向に沿って順次隣接設置し、隣接するリング体間を相互に連結して、トンネル掘削面の内側に筒状に構築される鋼殻を有しないコンクリート製の一次覆工用セグメントにおいて、 前記セグメントピースは、コンクリートの打設により形成される曲板状セグメントピース本体を備え、 前記セグメントピース本体は、せん断強度と引張り強度とを増加させる鋼繊維からなる補強繊維が混入された繊維補強高流動コンクリートで形成したセグメント。」 の点で一致し、次の点で相違している。 <相違点> 本願補正発明の「コンクリート製のセグメント」が「鉄筋コンクリート製」であり、「セグメントピース本体には、主筋のみを埋設する」ように構成したものであるのに対し、刊行物1記載の発明のコンクリート製のセグメント(トンネル覆工板)が鉄筋を使用しないものである点。 [4]判断 刊行物1記載の発明のコンクリート製のセグメント(トンネル覆工板)は、鉄筋を使用しないものであるが、対象とするトンネルの用途(例.圧力水管か否か)や地盤条件に応じて、強度を持たせたい場合には、セグメントピースに、鋼繊維のみならず、鉄筋をも埋設することは、当業者であれば容易に想到し得るものである。また、鋼繊維の混入率が低い場合、鉄筋をも埋設して強度を持たせることは、当業者であれば容易に想到し得るものである。 そして、鋼繊維からなる繊維補強コンクリートと鉄筋を併用する場合、トンネル等の覆工コンクリート層に鋼繊維からなる繊維補強コンクリート(スチールファイバー混入コンクリート)を採用することにより、鉄筋量を減少させることは従来周知であり(例えば、特開平6-73997号公報(【0037】参照)等参照)、さらに、トンネル等のコンクリート構造物に鋼繊維を混入することにより配力筋(帯鉄筋)を廃し主筋(主鉄筋)のみにすることは従来周知である(例えば、特開平9-310448号公報等参照)。 してみると、刊行物1記載の発明において、セグメントピース本体に主筋のみを埋設し、上記相違点の本願補正発明に係る構成を採用することは、当業者であれば必要に応じて適宜なし得るものであり、格別の顕著性はない。 そして、本願補正発明の効果も、刊行物1記載の発明及び周知技術から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものということができない。 したがって、本願補正発明は、刊行物1記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 [5]むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。 【3】本願発明について 平成19年5月9日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年12月22日付けの手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 (本願発明) 「一対のピース間およびリング間接合面を備えた複数の曲板状セグメントピースから構成され、前記ピース間接合面同士が相互に接合するようにトンネル掘削面の周方向に沿って隣接配置して、隣接するセグメントピース間を相互に連結してリング体を組立て、掘削の進行に伴って、前記リング間接合面同士が相互に接合するように、前記セグメントピースをトンネル軸方向に沿って順次隣接設置し、隣接するリング体間を相互に連結して、トンネル掘削面の内側に筒状に構築される鉄筋コンクリート製の一次覆工用セグメントにおいて、 前記セグメントピースは、コンクリートの打設により形成される曲板状セグメントピース本体を備え、 前記セグメントピース本体は、せん断強度と引張り強度とを増加させる鋼繊維からなる補強繊維が混入された繊維補強高流動コンクリートで形成し、前記セグメントピース本体には、主筋のみを埋設することを特徴とするセグメント。」 [1]引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1の記載事項は、前記【2】[2]に記載したとおりである。 [2]対比・判断 本願発明は、前記【2】で検討した本願補正発明から「鉄筋コンクリート製の一次覆工用セグメント」の限定事項である「鋼殻を有しない」との構成を省いたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記【2】[4]に記載したとおり、刊行物1記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 [3]むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物1記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-02-16 |
結審通知日 | 2009-02-24 |
審決日 | 2009-03-09 |
出願番号 | 特願2003-20034(P2003-20034) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(E21D)
P 1 8・ 121- Z (E21D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 桐山 愛世、土屋 真理子 |
特許庁審判長 |
石川 好文 |
特許庁審判官 |
家田 政明 山口 由木 |
発明の名称 | セグメント |
代理人 | 松本 雅利 |
代理人 | 松本 雅利 |
代理人 | 松本 雅利 |