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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1196657
審判番号 不服2007-15012  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-05-24 
確定日 2009-04-30 
事件の表示 特願2002-119595「3D-CADシステムとPDMシステムとの連携システム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月 7日出願公開、特開2003-316834〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は,平成14年 4月22日の出願であって,平成19年4月16日付けで拒絶査定がされ,これに対し,同年5月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに,同年6月25日付けで手続補正がなされたものである。

第2 手続補正の却下
1 補正却下の決定の結論
平成19年6月25日付けの手続補正を却下する。

2 理由
(1) 補正後の本願発明
本件補正後の本願の発明は,平成19年6月25日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載されたものと認められるところ,その請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)は,次のとおりのものである。

「【請求項1】
親子関係に基づく部品構成ツリーデータおよび部品形状データを含む3D-CADデータを形成する3D-CADシステムと,ツリー状に繋がる部品名称からなる製品構成表を格納するPDMシステムとの連携システムにおいて,
新規3D-CADデータについては前記3D-CADシステムから部品構成ツリーのデータを付属させた部品名称を含む3D-CADデータを取り込み,取り込んだ3D-CADデータから前記部品構成ツリーのデータを付属させた部品名称を抽出して製品構成表のデータを生成し,生成した製品構成表のデータを前記PDMシステムに入力可能なデータ形式に変換して前記PDMシステムに出力する製品構成表作成システムを設けたことを特徴とする3D-CADシステムとPDMシステムとの連携システム。」

本件補正は,平成19年3月19日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「製品構成表作成システム」における一連の処理に「新規3D-CADデータについては」との限定を付加したものであり,かつ,補正後の請求項1に記載された発明は,補正前の請求項1に記載された発明と,産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下,「平成18年改正前特許法」という。)第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,本件補正後の特許請求の範囲の請求項に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2) 引用例
原査定の拒絶の理由として引用された特開2001-331535号公報(以下,「引用例1」という。)には,次の事項が図面と共に開示されている。(記載箇所は段落番号等で表示)

ア 「【0002】
【従来の技術】従来,設計部門で作成される図面の部品表データ(品目欄データ)は,部品表データ管理システムにより一元的に管理され,専用GUI(GraphicalUser Interface)より入力するだけで,図面に自動的に貼付け,生産管理システムへのリンクなどが実現されている。
【0003】しかし,3次元設計が普及する昨今,一つの製品の一部(サブアセンブリ)は3次元CAD(Computer Aided Design)を利用した3次元設計を実施し,それ以外の部分は従来からの2次元CADによる2次元設計と図面作成が実施されている。
【0004】このような,3次元CADと2次元CAD混在の環境の中で,2次元CADによる設計部分のみが従来の部品表データ管理システムにより管理されていた。他方で3次元CADによる設計部分は,自動出力される部品表データ(BOM)を参照し,机上で品目の過不足を考慮していた。そして,生産管理システムなどへの手配指示は,人手により帳票へ転記入力で実施されていた。あるいは,3次元CADの2次元図面化機能を利用して従来通り,2次元図面を作成し,その図面上に部品表データを同様に人手で作成していた。そして,自動的にその部品表データから手配情報として自動抽出する機能を利用し運用されていた。
【0005】しかし,いづれにしても,利用するCAD毎に部品表管理とその手配指示も別々に実施し,人手による作業効率の悪さ,重複手配や手配漏れ,品質の劣化(転記ミス・漏れ)などの問題があった。」

イ 「【0018】上記3D部品表データ編集部に入力される部品表データは,部品の親子関係を示す階層ツリー構造をしており,上記3D部品表データ編集部は,入力した部品表データの階層ツリー構造に含まれる部品データであって,手配する部品としては不要な部品データを削除することと,入力した部品表データの階層ツリー構造に含まれない部品データであって,手配する必要がある部品データを追加することのいずれか一方をすることを特徴とする。」

ウ 「【0036】3D部品表データ編集部12は,3次元CADシステム5で作成された部品表データを入力し,部品表データを表示する部品表データツリー表示部6によるユーザインターフェイスを介して,ユーザの指示通りに部品表データを編集するように構成されている。ユーザインターフェイス部3内の部品表データツリー表示部6は,部品表データを階層ツリー表示にて編集するためのブラウザ表示を実現するように構成されている。なお,3次元CADシステム5で作成された部品表データには,各構成部品の重量を示すマスプロパティ属性が付属している。
【0037】3次元CADシステムで作成された部品表データは,3次元CADシステム内でモデル設計されたアセンブリのツリー構造(階層ツリー構造)を元に作成されている。図2に,3次元CADシステムでモデル設計されたアセンブリの階層ツリー構造の一例を示す。図2において,例えば,最上層の「ASM000.ASM」部は,ひとつ下層の「ASM10.ASM」部と「ASM20.ASM」部より構成されていることを示している。そして,「ASM10.ASM」部は,部品「APITEST01.PRT」,「ASM01.ASM」部,「ASM02.ASM」部より構成されていることを示している。
【0038】図3に,3次元CADシステムでモデル設計されたアセンブリの階層ツリー構造を元に,3次元CADシステムで作成された部品表データの一例を示す。3次元CADで作成された部品表データは,3次元CAD設計に依存した面があり,手配データとしてそのまま利用することはできない。このため,3D部品表データ編集部は,ユーザがアセンブリを構成する一部の仮想部品で手配する部品としては不要な部品を削除したり,あるいはアセンブリを構成していないが手配する部品として必要な部品を追加したりすることができるように構成されている。
【0039】図4に,3D部品表データ編集部12において,3次元CADシステムで作成された部品表データを編集するイメージを示す。例えば,トップダウンに3次元設計をする場合に仮レイアウトや仮親決めなどの目的でよく利用される仮想部品を手配不要との理由から削除することや,大規模アセンブリになればなるほど省略される場合の多いネジやボルト・ナットなどの子部品を手配指示のために部品表データに追加する編集を行うことができる。
【0040】3D部品表データ・データベース21は,3D部品表データ編集部13において編集中の部品表データを記憶するものである。」

エ 「【0043】部品表データ統合部14は,3D部品表データ編集部12で編集した部品表データと2D部品表データ編集部13で編集した部品表データを,部品表データツリー表示部6によるユーザインターフェイスを介して,ユーザの指示通りに製品単位で統合し,統合部品表データを作成できるように構成されている。」

オ 「【0047】統合部品表データ・データベース23は,部品表データ統合部14において編集中の統合部品表データを記憶するものである。
【0048】次に,手配指示部15は,部品表データ統合部14において製品単位で統合した統合部品表データを生産管理システム26へ出力し,下流工程へ部品手配の指示ができるように構成されている。さらに,納期などの手配事情に合わせて手配のタイミングを部品毎に設定することができるように構成されている。このように製品単位で統合された統合部品表データに基づいて手配するので,過不足なく手配することができる。
【0049】手配状況管理データベース24は,手配指示部15によって手配指示された内容,例えば,手配指示日,予定納期などを記憶する。また,手配状況管理データベース24は,生産管理システム26から入力した実際の手配状況を示す実際の納入日を記憶する。
【0050】手配進捗状況管理部16は,手配状況管理データベースに記憶されている予定納期と実際の納入日を比較して,手配指示時点での納品計画と手配遅れなどの納品実績を突き合わせることができるように構成されている。」

カ 「【0063】次に,統合部品表データ履歴データベース25は,上述したコスト積算部18によるコスト積算結果や,マスプロパティ計算部19による重量計算結果を記憶するとともに,過去に統合した統合部品表データを記憶する。
【0064】統合部品表データ履歴検索部20は,統合部品表データ履歴データベース25に記憶されている過去に統合した統合部品表データを検索するように構成されている。このように構成することにより,過去に統合した統合部品表データを流用することができるので,過去の統合部品表データとほぼ同様の統合部品表データを作成する場合,作業の軽減を図ることができる。」

キ 図1には,部品表データ結合装置1の外部に,3次元CADシステム5が設けられているとともに,これら部品表データ結合装置1と3次元CADシステム5が有機的に関係しあい,全体としてまとまった機能を発揮しているから,これらを合わせてシステムと呼称することができる。

前掲アないしキの記載及び図面によると,引用例1には,

「3次元CADシステムと,
3D部品表データ編集部,3D部品表データ・データベース,部品表データ統合部,統合部品表データ・データベース,手配指示部,手配状況管理データベース,統合部品表データ履歴データベース,前記統合部品表データ履歴検索部を含む部品表データ統合装置とから構成されるシステムであって,
前記3D部品表データ編集部は,前記3次元CADシステムで作成された部品表データを入力し,部品表データに対し,例えば,トップダウンに3次元設計をする場合に仮想部品を手配不要との理由から削除することや,省略される場合の多いネジやボルトなどの子部品を手配指示のために部品表データに追加する編集を行うものであって,入力される部品表データは,部品の親子関係を示す階層ツリー構造をしており,例えば,最上層の「ASM000.ASM」部は,ひとつ下層の「ASM10.ASM」部と「ASM20.ASM」部より構成されるものであって,「ASM10.ASM」は製品の一部(サブアセンブリ)を表し,「ASM10.ASM」部は,部品「APITEST01.PRT」,「ASM01.ASM」部,「ASM02.ASM」部より構成されているものであり,
前記3D部品表データ・データベースは,前記3D部品表データ編集部において編集中の部品表データを記憶するものであり,
前記部品表データ統合部は,前記3D部品表データ編集部で編集した部品表データと2D部品表データ編集部で編集した部品表データを統合し,統合部品表データを作成し,
前記統合部品表データ・データベースは,前記部品表データ統合部において編集中の統合部品表データを記憶し,
前記手配指示部は,前記部品表データ統合部において統合した統合部品表データを生産管理システムへ出力し,部品手配の指示を行い,
前記手配状況管理データベースは,前記手配指示部で指示された内容や,実際の手配状況を示す実際の納入日を記憶し,
前記統合部品表データ履歴データベースは,過去に統合した統合部品表データを記憶し,
前記統合部品表データ履歴検索部は,前記統合部品表データ履歴検索部統合部品表データ履歴データベースに記憶されている過去に統合した統合部品表データを検索することで,過去に統合した統合部品表データを流用することができる
システム。」

の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

同じく,原査定の拒絶の理由で引用された「勝山恒吉 他,三次元CADデータ管理システム,三菱電機技報,2001年2月25日,第75巻,第2号,p.30-33」(以下,「引用例2」という。)には次の事項が図面と共に開示されている。(記載箇所は頁数及び行数等で表示)

ク 「2.1.2 部品表データの下流展開
従来の二次元CAD設計では, 図面作成時にその部品情報を品目欄に記載し,同時にそのデータを電子的に設計基準情報データベース又は生産管理システムヘ入力する仕組み(当社ではDIDS(Direct Input Drawing System)という。)を利用してきた。三次元CADでは,モデリング時点で部品の親子ツリー(モデルツリー)ができるため,その部品構成情報(B0M)を下流に展開することができる。したがって,このB0Mデータを生産管理システムヘ流す仕組みが必要となる。
2.1.3 三次元モデル(ビュ-)の活用
製品の三次元モデル表示は,直感的に構造をイメージすることができ,デザインレビューや工作現場,資材,品質管理,営業,保守など様々な部門において,その活用が期待できる。そのためのツールとして,設計以外の部門においては,CADツールよりもはるかに安価な三次元ビューアを利用することにより,三次元モデルを容易に操作でき閲覧することができる。三次元ビューア利用の前提としては,それ専用のビューデータを用意しておく必要がある。したがって,三次元CAD設計の成果物である“最新で正の三次元モデル”をビューデータに変換しておき,閲覧要求があった際に即座に表示させるための仕組みが必要となる。」(第31頁左欄第26行ないし右欄第14行)

ケ 「(3)三次元データ管理
PPDMと呼び,三次元CADユーザー以外の人を対象に,三次元データ(ビューデータ,手配データ(B0M),メタデータ)を管理・活用する機能を提供する。」(第31頁右欄第38行ないし第41行)

前掲ク及びケの記載及び図面によると,引用例2には,

「3次元CADシステムから生産管理システムに対して,親子ツリーを部品構成情報として送るとともに,三次元ビューアにて三次元モデルを操作・閲覧するためのビューデータを入力すること」

が記載されていると認められる。

(3) 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「部品の親子関係を示す階層ツリー構造」をしている「部品表データ」は,本願補正発明の「親子関係に基づく部品構成ツリーデータ」に相当する。
引用発明において,データを「作成」することは,本願補正発明における,データを「形成」することに相当する。
引用発明の「3次元CADシステム」は,本願補正発明の「3D-CADシステム」に相当する。
したがって,引用発明の「部品表データ」を「作成」する「3次元CADシステム」は,本願補正発明の「親子関係に基づく部品構成ツリーデータ」「を形成する3D-CADシステム」に相当する。

引用発明の「3D部品表データ編集部」は,入力された部品表データに対し,仮想部品を削除することや,子部品を追加する編集を行うものであるが,編集が行われない製品の一部(サブアセンブリ)や部品に関しては,その名称や階層ツリー構造は,そのまま引き継がれ,「3D部品表データ・データベース」に格納されることは明らかである。つまり,「3次元CADシステムで作成された部品表データ」と,「3D部品表データ・データベース」に記憶される「部品表データ」とは,編集が行われない部品に関しては,その名称や階層ツリー構造に違いはないといえる。
したがって,引用発明における,3次元CADシステムで作成された「部品表データ」の「ASM01」や「APITEST01」などは,製品の一部(サブアセンブリ)や部品を表す名称といえるから,本願補正発明の「部品名称」に相当するものである。
また,引用発明の「部品表データ」は「部品の親子関係を示す階層ツリー構造」をしているものであるから,引用発明における「階層ツリー構造」をしている「部品表データ」の「ASM01」や「APITEST01」などの部品を表す名称は,本願補正発明の「ツリー状に繋がる部品名称」に相当する。
そして,引用発明の「3D部品表データ・データベース」に記憶される当該「部品表データ」は,本願補正発明の「ツリー状に繋がる部品名称からなる製品構成表」に相当する。
引用発明の「部品表データ統合装置」は,編集を行った前記「部品表データ」を「3D部品表データ・データベース」に記憶するものであるから,本願補正発明の「ツリー状に繋がる部品名称からなる製品構成表を格納する」機能を有している。
また,引用発明は,「部品表データ」を「3D部品表データ・データベース」に記憶した後,当該「部品表データ」と2D部品表データと統合した統合部品表データを用いて部品手配の指示などを行うものであるから,「部品表データ結合装置」が,PDM機能つまり製品情報管理という機能を有しているものといえる。
したがって,引用発明における「部品表データ統合装置」における「3D部品表データ・データベース」以降の各手段と,本願補正発明の「PDMシステム」とは,「ツリー状に繋がる部品名称からなる製品構成表を格納するPDM」機能を備えたものである点で共通する。

引用発明の「部品表データ統合装置」は,独立した「PDMシステム」ではなく,自装置内にPDM機能と他の機能とを含んだ装置であり,「3次元CADシステム」で作成された部品表データを編集・記憶し,PDM機能で利用するものであるから,引用発明と本願補正発明とは,「3D-CADシステム」と,前記「PDM」機能とが「連携」した「システム」である点で共通する。

引用発明は,「3次元CADシステムで作成された部品表データ」を「3D部品表データ編集部」に入力し,「3D部品表データ編集部」において「3次元CADシステムで作成された部品表データ」を編集し,「3D部品表データ・データベースに記憶」するものであって,当該「部品表データ」と2D部品表データと統合した統合部品表データを,統合部品表データ履歴データベースに記憶し,過去の統合部品表データを検索して流用することができるように構成されていることから,前記「3次元CADシステムで作成された部品表データ」を「3D部品表データ編集部」に入力するような処理は,新規なデータに対して行われる処理であるといえる。
引用発明の「3D部品表データ編集部」は,「階層ツリー構造」をしている「部品表データ」を取り込み,その「APITEST01」などの部品の名前を抽出して編集処理を行い,「3D部品表データ・データベース」へ記憶するための「部品表データ」を生成しているものといえる。
したがって,引用発明の「部品表データ統合装置」における「3D部品表データ編集部」と,本願補正発明の「製品構成表作成システム」とは,「新規3D-CADデータについては3D-CADシステムから部品構成ツリーのデータを付属させた部品名称を含むデータを取り込み,取り込んだデータから前記部品構成ツリーのデータを付属させた部品名称を抽出して製品構成表のデータを生成」する機能の点で共通する。

以上を踏まえると,両者の一致点,相違点は以下のとおりである。

【一致点】
親子関係に基づく部品構成ツリーデータを形成する3D-CADシステムと,ツリー状に繋がる部品名称からなる製品構成表を格納するPDM機能との連携システムにおいて,
新規3D-CADデータについては前記3D-CADシステムから部品構成ツリーのデータを付属させた部品名称を含むデータを取り込み,取り込んだデータから前記部品構成ツリーのデータを付属させた部品名称を抽出して製品構成表のデータを生成し,生成した製品構成表のデータをPDM機能に出力する機能を設けた3D-CADシステムとPDM機能との連携システム。

【相違点】
a 3D-CADシステムが形成し,取り込まれるデータとして,本願補正発明は,部品構成ツリーデータおよび「部品形状データを含む3D-CADデータ」であるのに対して,引用発明は,部品表データのみで,他のデータについては特定されていない点。

b PDM機能,及び新規3D-CADデータについては・・・生成した製品構成表のデータをPDM機能に出力する機能を,本願補正発明は,それぞれ独立した「PDMシステム」及び「製品構成表作成システム」として構成し,「製品構成表作成システム」から「PDMシステム」へ製品構成表のデータを出力する際に,「PDMシステムに入力可能なデータ形式に変換して前記PDMシステムに出力する」のに対して,引用発明は,前記2つの機能を「部品表データ結合装置」内の手段として構成し,記憶する際,データ形式の変換を行っていない点。

(4) 当審の判断
まず,上記相違点aについて検討する。
前記「(2)」で認定したように,引用例2には,3次元CADシステムから生産管理システムに対して,親子ツリーを部品構成情報として送るとともに,三次元ビューアにて三次元モデルを操作・閲覧するためのビューデータを入力することが記載されており,引用発明において,3次元CADシステムが形成するデータとして,親子ツリーである部品構成情報及びビューデータとを含む3D-CADデータを採用することは,当業者が容易に想到し得た事項である。

次に,上記相違点bについて検討する。
引用発明の「部品表データ結合装置」は,当該装置内に2つの機能を有するものであるが,各機能を分離し,PDMシステム及び製品構成表作成システムとして,独立したシステムとして構成することは,システム設計時に,当業者が適宜採用し得る事項である。なお,異なるシステムにデータを出力する際に,相手システムのデータ形式が一致していれば変換をせず,一致していなければ変換をすることは当然のことであって,相手システムのデータ形式に合わせて変換することは,設計的事項に他ならない。

そして,これら相違点を総合的に考慮してみても当業者が推考し難い格別のものであるとすることはできず,本願補正発明の奏する効果を検討してみても,引用例1及び2に記載された発明から想定される範囲を越えるものではない。

なお,審判請求人は,平成19年6月25日付け手続補正書における審判請求の理由の中で「引用例1,2は,CAD上の個々部品の部品データ(製品全体のデータでない)についてCADの外に設置した部品表データ統合装置でツリー状の部品構成を作るようになっており,どの部品同士が結びつき製品をなしているのかを部品表データ統合装置に別情報で与えなければ,製品全体のツリー状の部品構成を作成できないので,作業の効率が上がりません。また,部品構成とCADデータとを1対1で対応させて管理できません。」と主張しているが,引用例2には,前記「(2) イ」にあるように,「3D部品表データ編集部に入力される部品表データは,部品の親子関係を示す階層ツリー構造をして」いることが明記されており,「どの部品同士が結びつき製品をなしているのかを部品表データ統合装置に別情報で与えなければ,製品全体のツリー状の部品構成を作成できない」との主張は採用できない。また,「3D部品表データ編集部」が「不要な部品データを削除すること」や「手配する必要がある部品データを追加すること」はあるものの,それらが製品情報管理を行う上で不要な部品データであれば管理する必要はなく,CADデータにはなくとも製品情報管理を行う上で必要な部品データであれば管理する必要があるものであって,単純に,常に「部品構成とCADデータとを1対1で対応させて管理」する必然性自体存在しないから,当該点についての出願人の主張は採用できない。

したがって,本願補正発明は,引用例1及び2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5) むすび
以上のとおり,本件補正は,平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成19年6月25日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成19年3月19日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。

「【請求項1】
親子関係に基づく部品構成ツリーデータおよび部品形状データを含む3D-CADデータを形成する3D-CADシステムと,ツリー状に繋がる部品名称からなる製品構成表を格納するPDMシステムとの連携システムにおいて,
前記3D-CADシステムから部品構成ツリーのデータを付属させた部品名称を含む3D-CADデータを取り込み,取り込んだ3D-CADデータから前記部品構成ツリーのデータを付属させた部品名称を抽出して製品構成表のデータを生成し,生成した製品構成表のデータを前記PDMシステムに入力可能なデータ形式に変換して前記PDMシステムに出力する製品構成表作成システムを設けたことを特徴とする3D-CADシステムとPDMシステムとの連携システム。」

2 引用例
引用例1及び2,その記載事項は,前記「第2 2 (2)」で認定したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は,前記「第2」で検討した本願補正発明から前記「第2 2 (1)」に記載した限定事項を省いたものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項をすべて含み,さらに発明特定事項を限定したものに相当する本願補正発明が前記「第2 2 (3)」,「第2 2 (4)」に記載したとおり,引用例1,2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,引用例1及び2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明することができたものである。

4 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用例1及び2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-24 
結審通知日 2009-03-03 
審決日 2009-03-19 
出願番号 特願2002-119595(P2002-119595)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加舎 理紅子  
特許庁審判長 板橋 通孝
特許庁審判官 千葉 輝久
廣川 浩
発明の名称 3D-CADシステムとPDMシステムとの連携システム  
代理人 吉岡 宏嗣  

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