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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F |
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管理番号 | 1196683 |
審判番号 | 不服2006-20407 |
総通号数 | 114 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-06-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-09-14 |
確定日 | 2009-04-27 |
事件の表示 | 特願2001-163567「遊技機、遊技機用プログラム、及び遊技機用プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成14年12月10日出願公開、特開2002-355363〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願の経緯概要は下記のとおりである。 特許出願及び審査請求 平成13年5月31日 拒絶理由 平成18年4月7日 手続補正 平成18年5月29日 拒絶査定 平成18年8月14日 審判請求 平成18年9月14日 手続補正 平成18年10月11日 拒絶理由及び補正却下 平成20年11月26日 手続補正 平成21年1月23日 第2 平成21年1月23日付の手続補正についての補正却下の決定 [結論] 平成21年1月23日付の手続補正を却下する。 [理由] 1.平成21年1月23日付の手続補正における特許請求の範囲の記載について 平成21年1月23日付の手続補正(以下「本件補正」という。)における特許請求の範囲の請求項1は以下のとおりである。 「【請求項1】 周囲に複数の図柄を表示した回転リールと、 乱数を用いて当選図柄の抽選を行うための当選抽選手段と、 貯留したメダル数を減じてメダル投入に代えるためのベットスイッチと、 メダルの投入若しくは前記ベットスイッチを介した投入を条件に、前記回転リールの回転を開始させるためのスタートスイッチとを備え、 前記当選抽選手段の抽選結果が当選である場合に前記回転リールの当選図柄が所定の停止位置で停止することを条件として入賞して遊技者に利益を付与するように設定された遊技機において、 前記遊技機により実施される遊技は、前記当選図柄の組合せからなる当選役として、複数の種類を有し、 前記遊技機は、 前記当選抽選手段の当選抽選に関する情報を報知するための報知装置と、 前記報知装置により、前記当選抽選手段の当選抽選に関する情報の報知を行うか否かの抽選を行うための報知抽選手段と、 前記報知抽選手段の前記当選役に対応した報知抽選確率を変更するための報知抽選確率変更手段とを備え、 前記遊技機により実施される遊技は、前記報知装置による報知の対象が異なる複数の報知モードを備え、 メダルの投入若しくは前記ベットスイッチを介した投入の前に前記報知モードを前記スタートスイッチの操作により、選択するものの変更が可能であり、 メダルの投入若しくは前記ベットスイッチを介した投入によって、前記報知モードの変更ができなくなり、その後の前記スタートスイッチの操作により、前記当選抽選手段及び前記報知抽選手段の抽選が行われて、その抽選の結果、前記報知モード内での報知の有無及び報知の種類が決定されることを特徴とする遊技機。」 2.平成18年5月29日付の手続補正における特許請求の範囲の記載について 審判請求時に伴って平成18年10月11日付で行われた手続補正は平成20年11月26日付で却下されており、その前の特許請求の範囲の記載は平成18年5月29日付の手続補正におけるものであって、その請求項1は以下のとおりである。 「【請求項1】 周囲に複数の図柄を表示した回転リールと、 乱数を用いて当選図柄の抽選を行うための当選抽選手段と、 貯留したメダル数を減じてメダル投入に代えるためのベットスイッチと、 メダルの投入若しくは前記ベットスイッチを介した投入を条件に、前記回転リールの回転を開始させるためのスタートスイッチとを備え、 前記当選抽選手段の抽選結果が当選である場合に前記回転リールの当選図柄が所定の停止位置で停止することを条件として入賞して遊技者に利益を付与するように設定された遊技機において、 前記遊技機により実施される遊技は、前記当選図柄の組合せからなる当選役として、複数の種類を有し、 前記遊技機は、 前記当選抽選手段の当選抽選に関する情報を報知するための報知装置と、 前記報知装置により、前記当選抽選手段の当選抽選に関する情報の報知を行うか否かの抽選を行うための報知抽選手段と、 前記報知抽選手段の前記当選役に対応した報知抽選確率を変更するための報知抽選確率変更手段とを備え、 前記遊技機により実施される遊技は、前記報知装置による報知の対象が異なる複数の報知モードを備え、 メダルの投入若しくは前記ベットスイッチを介した投入の前に前記報知モードを選択し、 前記報知モードの確定は、メダルの投入若しくは前記ベットスイッチを介した投入によって、遊技の進行と共に行われることを特徴とする遊技機。」 3.本件補正についての検討 本件補正は、平成18年5月29日付の手続補正における請求項1に対して以下の点の変更を加えたものである。 (a)「前記報知モードを選択」という記載について、「前記報知モードを前記スタートスイッチの操作により、選択するものの変更が可能」という記載に変更 (b)「前記報知モードの確定は、メダルの投入若しくは前記ベットスイッチを介した投入によって、遊技の進行と共に行われる」という記載について、「メダルの投入若しくは前記ベットスイッチを介した投入によって、前記報知モードの変更ができなくなり、その後の前記スタートスイッチの操作により、前記当選抽選手段及び前記報知抽選手段の抽選が行われて、その抽選の結果、前記報知モード内での報知の有無及び報知の種類が決定される」という記載に変更 これについて以下検討する。 (a)の補正事項は、「選択」について「スタートスイッチの操作」によるものである点を限定し、さらに「変更が可能」である点も限定したものである。 (b)の補正事項は、補正前の「報知モードの確定」は「遊技の進行と共に行われる」という記載を、「報知モードの変更ができなくなり、その後の前記スタートスイッチの操作により、前記当選抽選手段及び前記報知抽選手段の抽選が行われて、その抽選の結果、前記報知モード内での報知の有無及び報知の種類が決定される」と変更したものであり、補正後の「報知モードの変更ができなくなり」という記載は補正前の「報知モードの確定」という記載と実質的な変更はなく、また、補正後の「その後の前記スタートスイッチの操作により、…抽選が行われて、その抽選の結果、…が決定される」という記載は、補正前の「遊技の進行」を具体的に表したものであるから、とすれば、補正後の「その後の…決定される」という記載は補正後の「報知モードの変更ができなくなり」という記載と合わせて、補正前の「報知モードの確定」は「遊技の進行と共に行われる」という記載を、具体的に限定したものと認められる。 よって、請求項1にかかる補正は特許請求の範囲の限定的減縮に相当すると判断することができる。 そこで、平成21年1月23日付の手続補正における特許請求の範囲の請求項1(以下「本願補正発明」という。)が独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討する。 4.引用例 平成20年11月26日付の当審拒絶理由において引用された「ドンちゃん2,パチスロ攻略マガジンドラゴン,株式会社双葉社,2000年12月21日発行,2001vol.22,4?5ページ 」(以下、「引用文献1」という。)には、図面と共に以下の技術事項が記載されている。 ・記事本文には「リール下部には…7.77インチのワイド液晶モニタを搭載」(4ページ中央)、「ドンちゃん2の液晶予告の概要は御覧の通りで、個別演出、共通演出、そして通常演出…と、まさに濃密。これでもかとばかりにプレイヤーを煽りたてる要素が満載である。これらに加え、出目、フラッシュ、遅れ(?)までもが絡むとあらば、ゲーム消化に息付く暇もなさそうだ。」(5ページ中央)という記載がある。 ・「リール配列」の欄には、「左」「中」「右」の3つのリールに表示される複数の図柄が表示されている。(4ページ左上) ・「役の構成」という欄には、「15枚+BIGBONUS」に相当する図柄の組み合わせや、「15枚」「10枚」「2枚」「リプレイ」等に相当する図柄の組み合わせが、複数記載されている。(4ページ中央左) ・「ボーナス抽選確率表」という欄には、例えば「設定」が「1」のとき、「BIG」が「1/297」である等、設定に応じた「BIG」や「REG」の抽選確率が示されている。(5ページ中央右) ・「液晶メニューで好きなドンちゃんを選べ!」という欄には「赤・青・緑…液晶では選んだドンちゃんによって予告演出が変化するぞ。」という記載があり、またその画像には、「選べ!ドンちゃん」というタイトルの下に、四角枠で囲まれた緑色の服を着たキャラクター(ドンちゃん)と、左右に移動可能であることを示唆する左右方向への矢印と、下部には「○ボタン・決定」「×ボタン・戻る」という文字表示もある。(4ページ右下) ・「選んだドンちゃんで演出が変化する!個別演出」という欄の中には、「緑ドンちゃんのスイカ割り!」、「青ドンちゃんの金魚すくい!」、「赤ドンちゃんの酔っぱらい!」という3つの個別演出が存在することが示されており、そして、「緑ドンちゃんのスイカ割り!」の欄には「緑ドンちゃんがスイカ割りに挑戦。ステージは2種類で、スイカを割れば15枚orボーナス、パイナップルを割れば10枚役orボーナス…らしい」という記載と、画像には「期待大!」として「スイカ割りorパイナップル」、「期待小」として「スイカ割りor爆弾」という記載がある。また、「青ドンちゃんの金魚すくい!」の欄には「青ドンちゃんがバンジー落下、見事金魚を捕まえれば小役orボーナス…か? 金魚の色は小役に対応しており、また、落下中の表情にも期待度の変化があるぞ。」という記載があり、また「赤ドンちゃんの酔っぱらい!」という欄には「赤ドンちゃんがストリートファイト。相手を倒せばボーナス確定か? サイドのちょうちんがライフゲージとなっており、攻撃パターンも複数存在。」という記載と、画像には「ドンちゃんの表情にも秘密が…!?」という記載もある。(4ページ下部) ・「全てのドンちゃんで出現する!共通演出」という欄には、複数の報知の例が記載されている。(5ページ下部) また、「ドンちゃん2」はパチスロ機であって、パチスロ機における技術常識を加味すれば、引用文献1から以下の点も云える。 ・「リール配列」は「回転リール」におけるものであるので、図柄が回転リールの「周囲」に配されることになることは当然である。 ・「ボーナス抽選確率表」という欄の記載から、ボーナスについては抽選が行われるものであるが、「役の構成」の欄においては「BONUS」以外の役も記載されており、それらも同様に抽選が行われることも当然である。 ・引用文献1の4ページ上部に「ドンちゃん2」の正面画像が表示されており、当該画像の略中段の左から2番目の濃色の丸状のスイッチがスタートスイッチ、その左上の略楕円状に見えるスイッチがベットスイッチであると推認できる。そしてベットスイッチが「貯留したメダル数を減じてメダル投入に代える」ものであること、またスタートスイッチが「メダルの投入若しくはベットスイッチを介した投入を条件に、回転リールの回転を開始させる」ものであることも、パチスロ機における常識事項である。 ・また「役の構成」における「…枚」との表示において、「枚」とは払い出されるメダル枚数を意味することは常識であり、とすれば「役の構成」の欄に示されている図柄の組み合わせが「所定の停止位置で停止する」ことが「入賞」の条件であって、「入賞」によってメダルの払い出しが行われることも、当分野における常識によれば当然のことである。 ・引用文献1には「選んだドンちゃんによって予告演出が変化」という記載があり、さらに「スイカを割れば15枚orボーナス、パイナップルを割れば10枚役orボーナス…らしい」、「見事金魚を捕まえれば小役orボーナス…か?」、「相手を倒せばボーナス確定か?」という記載が「予告演出」を指すことは明らかであり、これらの「予告演出」は抽選に関する情報の報知であって、またそれらの報知は「液晶モニタ」で行われる。 ・「液晶メニューで好きなドンちゃんを選べ!」という欄における「赤・青・緑…選んだドンちゃん」とは、「選んだドンちゃんで演出が変化する!個別演出」という欄における「緑ドンちゃんのスイカ割り!」、「青ドンちゃんの金魚すくい!」、「赤ドンちゃんの酔っぱらい!」という個別演出の「緑ドンちゃん」、「青ドンちゃん」、「赤ドンちゃん」を指すことは明らかであり、それぞれの個別演出における「スイカを割れば15枚orボーナス、パイナップルを割れば10枚役orボーナス…らしい」、「見事金魚を捕まえれば小役orボーナス…か? 金魚の色は小役に対応」、「相手を倒せばボーナス確定か?」という記載から、「緑ドンちゃん」では「15枚orボーナス」又は「10枚役orボーナス」を報知の対象とし、「青ドンちゃん」では「小役orボーナス」を報知の対象とし、「赤ドンちゃん」では「ボーナス」を報知の対象としているから、報知の対象が互いに異なっていると云える。 ・「液晶メニューで好きなドンちゃんを選べ!」という欄における「赤・青・緑…液晶では選んだドンちゃんによって予告演出が変化するぞ。」という記載、及びその画像における「四角枠で囲まれた緑色の服を着たキャラクター(ドンちゃん)と、左右に移動可能であることを示唆する左右方向への矢印と、下部には「○ボタン・決定」「×ボタン・戻る」という文字表示」という内容から、遊技者が「緑ドンちゃん」、「青ドンちゃん」、「赤ドンちゃん」のいずれかを選択可能であり、また引用文献1の4ページ上部の「ドンちゃん2」の正面画像における中央左にある十字スイッチ等によって選択が行われるものと推認できる。 そして、スタートスイッチによって回転リールが回転し、役が抽選され、回転リールが停止されることが、パチスロ機により実施される「遊技」に相当することは当然であるから、上記引用文献1における記載事項及び図面を総合的に勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「周囲に複数の図柄を表示した回転リールと、 役の抽選を行うための抽選手段と、 貯留したメダル数を減じてメダル投入に代えるためのベットスイッチと、 メダルの投入若しくは前記ベットスイッチを介した投入を条件に、前記回転リールの回転を開始させるためのスタートスイッチとを備え、 役を構成する前記回転リールの図柄が所定の停止位置で停止することを条件として入賞してメダルを払い出すように設定されたパチスロ機において、 前記パチスロ機により実施される遊技は、前記役を構成する図柄の組み合わせは複数の種類を有し、 前記パチスロ機は、 前記抽選手段の抽選に関する情報を報知するための液晶モニタを備え、 前記パチスロ機により実施される遊技は、前記液晶モニタによる報知の対象が異なる「緑ドンちゃん」、「青ドンちゃん」、「赤ドンちゃん」による個別演出を備え、 前記「緑ドンちゃん」、「青ドンちゃん」、「赤ドンちゃん」による個別演出を遊技者が選択可能としたパチスロ機。」 5.対比 ここで、本願補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明における「パチスロ機」は本願補正発明の「遊技機」に相当し、以下同様に、「役」は「当選役」に、「役を構成する図柄」は「当選図柄」に、「抽選手段」は「当選抽選手段」に、「メダルを払い出す」は「遊技者に利益を付与する」に、「液晶モニタ」は「報知装置」に、それぞれ相当する。 また、引用発明について、次のことも云える。 ・パチスロ機において、抽選が「乱数」を用いて行われることは技術常識である。 ・「役」に該当する図柄の組み合わせが「所定の停止位置で停止する」ためには、役に関する抽選における結果が「当選である場合」であることも、パチスロ機における技術常識に過ぎない。 ・報知は「抽選手段の抽選に関する情報」を伝えるものであるから、役の抽選結果に従って行われることは当然のことである。さらに、引用文献1における「期待大」、「期待小」、「期待度の変化」等の記載から、遊技者にとっての「期待」が、報知に応じて異なることが理解できるから、報知は役の抽選結果のみならず、何らかの所定の選択の結果行われるものであると判断できる。とすれば、報知の選択(報知の有無や種類)を何らかの手段で決定しなくてはならず、その決定を抽選で行うことは例を挙げるまでもなく技術常識であるから、その抽選手段も備えていると判断することができる。 ・引用発明においては「緑ドンちゃん」、「青ドンちゃん」、「赤ドンちゃん」による個別演出の他に、共通演出が行われるものである。共通演出は「全てのドンちゃんで出現する」のであって、「全てのドンちゃん」とは「緑ドンちゃん」、「青ドンちゃん」、「赤ドンちゃん」を指すから、遊技者が「緑ドンちゃん」、「青ドンちゃん」、「赤ドンちゃん」のいずれを選択しても、「各個別演出における報知」と「共通演出における報知」という複数の報知のいずれも出現し得るものであり、実際に行われる報知の種類はそれらから役の抽選結果等に応じて決定されることになる。よって、遊技者による「「緑ドンちゃん」、「青ドンちゃん」、「赤ドンちゃん」による個別演出」の選択とは、複数の「報知モード」の選択に相当する。 よって、両者は、 「周囲に複数の図柄を表示した回転リールと、 乱数を用いて当選図柄の抽選を行うための当選抽選手段と、 貯留したメダル数を減じてメダル投入に代えるためのベットスイッチと、 メダルの投入若しくは前記ベットスイッチを介した投入を条件に、前記回転リールの回転を開始させるためのスタートスイッチとを備え、 前記当選抽選手段の抽選結果が当選である場合に前記回転リールの当選図柄が所定の停止位置で停止することを条件として入賞して遊技者に利益を付与するように設定された遊技機において、 前記遊技機により実施される遊技は、前記当選図柄の組合せからなる当選役として、複数の種類を有し、 前記遊技機は、 前記当選抽選手段の当選抽選に関する情報を報知するための報知装置と、 前記報知装置により、前記当選抽選手段の当選抽選に関する情報の報知を行うか否かの抽選を行うための報知抽選手段を備え、 前記遊技機により実施される遊技は、前記報知装置による報知の対象が異なる複数の報知モードを備え、 前記報知モードを選択可能であり、 前記スタートスイッチの操作により、前記当選抽選手段の抽選が行われて、その抽選及び前記報知抽選手段の結果、前記報知モード内での報知の有無及び報知の種類が決定される遊技機。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 本願補正発明においては、「報知抽選手段」における「当選役に対応した報知抽選確率」を変更しているのに対して、引用発明においては報知モードを選択することによって報知対象となる役を変更しているものの、それによって役に対応した報知の確率が変更されているかどうか不明である点。 [相違点2] 本願補正発明においては、「メダルの投入若しくは前記ベットスイッチを介した投入の前」に、「スタートスイッチの操作」によって「報知モードを選択する」ものの「変更が可能」であり、「メダルの投入若しくは前記ベットスイッチを介した投入」によって「報知モードの変更ができなく」なり、「その後」のスタートスイッチの操作によって報知の有無及び報知の種類が決定されるのに対して、引用発明においてはこのような構成を採用していない点。 [相違点3] 本願補正発明においては、スタートスイッチの操作によって「当選抽選手段及び報知抽選手段」の抽選が行われるのに対して、引用発明においてはスタートスイッチの操作によって当選抽選手段の抽選が行われるものの、報知抽選手段については不明である点。 6.判断 上記相違点について検討する。 [相違点1について] 各報知モードにおける報知内容を具体的にどのように設定するかは当業者が適宜決定できることであるが、平成20年11月26日付の当審拒絶理由において引用された「タイムクロス,パチスロ攻略マガジンドラゴン,株式会社双葉社,2000年9月21日発行,2000年vol.19,12?16ページ」(以下「引用文献2」という。)においては、「原始時代」、「古代エジプト」、「大航海時代」、「未来都市」の各ステージ(報知モードに相当)を有し、各ステージにおける「液晶イベント発生」の割合は、ボーナス成立時については「原始時代」1/1、「古代エジプト」1/1.5、「大航海時代」1/1.7、「未来都市」1/1.5であり、また「ボーナス確定の表示が出る割合」も「原始時代」が100%であるのに対して、他のステージは20%であるから、各ステージに応じてボーナス成立時におけるボーナス報知の確率が異なっているものである。 そして、報知の確率を、ボーナスのみならず小役についても異なるようにさせることも適宜設計できることであり、引用発明に引用文献2に記載された技術(以下「引用文献2記載の技術」という。)を適用して、報知モードに応じて「当選役に対応した報知抽選確率」が異なるようにすること、すなわち報知モードの変更によって「当選役に対応した報知抽選確率」を変更することは、当業者にとって容易に想到できたことである。 [相違点2について] 平成20年11月26日付の当審拒絶理由において引用された特開2001-87461号公報(以下「引用文献3」という。)には「上述したスタートレバー106、1BETスイッチ108、スピンスイッチ109、最大BETスイッチ110などのスイッチは、上述した本来の機能(スロットマシンとしての機能)の他、キャラクタ参加端末モードや観客端末モードにおいては、液晶ディスプレイ105に表示されているメニュー画面における選択肢の選択操作などの操作子としても用いられる。」(段落【0125】)という記載があり、スタートレバー(「スタートスイッチ」に相当)を、スロットマシンとしての本来の機能の他、液晶ディスプレイに表示されているメニュー画面における選択肢の選択操作などの操作子として用いることができる点の開示がある(以下「引用文献3記載の技術」という。)。 引用発明においては、遊技者が報知モードの選択においては十字スイッチ等を用いるものと推認でき、またどのようなタイミングで選択操作可能であるのかは不明であるが、引用文献1における「液晶メニューで好きなドンちゃんを選べ!」という画面も参照すれば、「緑ドンちゃん」、「青ドンちゃん」、「赤ドンちゃん」を選択する画面は「メニュー画面」に相当するものであり、報知モードの選択に引用文献3記載の技術を適用することは当業者にとって容易に想到できることであり、そして、引用文献3記載の技術は、「スロットマシンとしての本来の機能」の他としてスタートスイッチを採用するものであるから、スタートスイッチが本来の機能を果たすべきタイミングでは操作子として用いられないこともまた当然想到できることである。 そして、スタートスイッチにおける本来の機能とは、回転リールの回転を開始させると共に、遊技における役の抽選を行うことは技術常識であり、また、その本来の機能を果たすべきタイミングが「メダルの投入若しくは前記ベットスイッチを介した投入」の後であることも、パチスロ機における技術常識である。 とすれば、「メダルの投入若しくは前記ベットスイッチを介した投入」の後は、本来の機能を果たすべきタイミングとなったのであるから、スタートスイッチはもはや操作子としては用いることはできず、その結果、遊技モードの選択操作もできなくなることは必然的なことであり、そしてその後のスタートスイッチの本来の機能の発揮によって遊技にかかる抽選が行われることとなる。 また、報知の抽選は役の抽選結果に従う必要があるから、遊技者が報知モードを選択するとすれば、役の抽選時(すなわち本来の機能としてのスタートスイッチの操作時)より前に行わなくてはならないが、それ以前であればどのタイミングにおいて遊技モードの選択操作を可能としても構わないのであるから、「メダルの投入若しくは前記ベットスイッチを介した投入の前」においてスタートスイッチによって報知モードを選択操作可能とすることも、当然設計できる範囲のことに過ぎない。 よって、引用発明に引用文献3記載の技術を適用して、スタートスイッチを報知モードの選択操作の操作子として採用すれば、「メダルの投入若しくは前記ベットスイッチを介した投入の前」にスタートスイッチの操作によって報知モードを選択し、「メダルの投入若しくは前記ベットスイッチを介した投入」によって選択操作ができなくなり、その後のスタートスイッチの操作によって報知の有無や種類が決定されることとなるものである。 なお、本願補正発明においては、スタートスイッチの操作によって「報知モードを選択する」ものの「変更が可能」とあるが、変更を受け付けるか否かは、遊技者の選択操作にあたっての操作性に係る問題であるから当業者の設計事項に過ぎず、そして遊技を開始する前の段階であれば変更可能とすることは何ら差し支えないから、「変更可能」とすることも適宜設計できることである。 よって、相違点2にかかる構成は、引用発明及び引用文献3記載の技術から、当業者が容易に想到できたものである。 [相違点3について] 報知は、役の抽選結果に従う必要があり、その一方回転リールの停止前に行わなければ報知としての意味がないから、報知の抽選は、役を抽選した直後に行う必要があることは当然のことに過ぎず、役の抽選を行うスタートスイッチの操作に基づいて報知に関する抽選も行うことは、当業者にとって設計事項に過ぎないことである。 よって、引用発明から相違点3にかかる構成とすることは当業者にとって容易に想到できたことである。 そうすると、相違点1?3にかかる本願補正発明の構成は、引用発明、引用文献2記載の技術、引用文献3記載の技術から当業者が容易に想到できた範囲のものというべきである。 そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明、引用文献2記載の技術、引用文献3記載の技術から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって、本願補正発明は、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 7.むすび したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1.本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1にかかる発明は、上記「第2[理由]2.」に平成18年5月29日付の手続補正における特許請求の範囲の請求項1として記載したとおりのもの(以下「本願発明」という。)である。 2.引用例 原査定の拒絶の理由において引用された引用文献1及びその記載事項は、上記「第2[理由]4.」に記載したとおりのものである。 3.対比・判断 上記「第2[理由]3.」において検討したように、本願発明は本願補正発明から限定を解除したものである。 そうすると、本願補正発明が、上記「第2[理由]6.」の通り、平成20年11月26日付の当審拒絶理由において引用された引用文献に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該限定を解除した本願発明も、同様の理由により、当該引用文献に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 第4 むすび 以上のとおり、平成21年1月23日付の補正は却下され、そして、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、請求項2以下について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-02-24 |
結審通知日 | 2009-02-26 |
審決日 | 2009-03-12 |
出願番号 | 特願2001-163567(P2001-163567) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A63F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 酒井 保 |
特許庁審判長 |
津田 俊明 |
特許庁審判官 |
池谷 香次郎 森 雅之 |
発明の名称 | 遊技機、遊技機用プログラム、及び遊技機用プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体 |
代理人 | 黒田 博道 |