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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C10L
管理番号 1196702
審判番号 不服2004-25546  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-12-15 
確定日 2009-05-01 
事件の表示 特願2000-362410「ガスハイドレートの輸送・利用方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 6月 4日出願公開、特開2002-161288〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成12年11月29日の出願であって、平成16年8月11日付けで拒絶理由が通知され、同年10月15日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年11月12日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年12月15日に拒絶査定不服審判が請求がされるとともに同日に手続補正書(2通)が提出され、その後、平成19年5月22日付けで審尋がされ、同年7月26日に回答書が提出され、平成20年6月10日付けで平成16年12月15日付けの手続補正(2件)が却下されるとともに拒絶理由が通知され、同年8月7日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2 本願発明
本願の発明は、平成16年10月15日付け及び平成20年8月7日付けの手続補正により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明は以下のとおりである。
「国内貯蔵基地に貯蔵されたメタンハイドレートを、魔法瓶、保冷密閉容器及び圧力容器のいずれかに入れ、自己保存効果を利用して保冷車で車両輸送することにより小口消費先へ輸送した後、各小口消費先にてメタンハイドレートをガスと水とに分解し、分解で発生した水及び分解に使用した水を各小口消費先の風呂、洗面、トイレの少なくともいずれかの水として使用することを特徴とするガスハイドレートの輸送・利用方法。」(以下、「本願発明」という。)

3 当審の拒絶理由の概要
当審で通知した拒絶理由の概要は、補正前の請求項1?5に係る発明は、その出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、並びに、明細書の記載が、特許法第36条第6項第2号及び同条第4項に規定する要件を満たしていない、というものである。
そして、以下の引用刊行物1?5が引用された。

引用刊行物1:特開2000-304196号公報
引用刊行物2:特開2000-256226号公報
引用刊行物3:特開平11-343645号公報
引用刊行物4:特開平6-33707号公報
引用刊行物5:特開平10-238698号公報

4 対比・判断
(1)引用文献の記載事項
当審で通知した拒絶理由で引用された引用刊行物1?3には、以下の事項が記載されている。
a 引用刊行物1(特開2000-304196号公報)
a-1 「天然ガスハイドレートを輸送する方法において、輸送容器内に水を収容し、その水を冷却すると共に上記輸送容器に天然ガスを吹き込んで天然ガスハイドレートを生成し、その輸送容器を消費地まで輸送した後、その輸送容器を加熱して天然ガスを再ガス化することを特徴とする天然ガスハイドレート輸送方法。」(特許請求の範囲請求項1)
a-2 「従来、天然ガスハイドレートを輸送するには、スラリー状或いは粉体状に加工した後、船舶やローリ車に設けられ密閉されたタンクに積み替えて行うようになっていた。」(段落【0004】)
a-3 「輸送容器1ごと天然ガスハイドレートを輸送トラック9に積載する。・・・輸送トラック9で消費地まで直接輸送して、その場で、・・・輸送容器1頂部の天然ガス払出し口5に、利用設備に接続された天然ガス払出しライン14を接続する。そして、加熱装置11によって、輸送容器1の底部を加熱し、天然ガスを再ガス化させる。」(段落【0030】?【0033】)

b 引用刊行物2(特開2000-256226号公報)
b-1 「【請求項1】 ハイドレート生成容器内で水とハイドレート形成物質とを水和反応させてハイドレートを製造する方法において、前記ハイドレート生成容器内の水相にハイドレート形成物質を気泡として供給するとともに、生成されて水相の液面近傍に浮かぶハイドレート層を水とともに回収することを特徴とするハイドレートの製造方法。
【請求項2】 前記回収したハイドレートより水分を除去することによりスラリー状にし、このスラリー状のハイドレートの雰囲気を断熱膨張的に減圧することにより、各ハイドレートの表面に氷皮を形成する請求項1記載のハイドレートの製造方法。」(請求項1、2)
b-2 「【発明の属する技術分野】本発明は、ハイドレート形成物質(例えばメタン)と水とを反応させて高濃度のハイドレートを効率よく製造する方法およびその製造装置に関する。」(段落【0001】)
b-3 「請求項2の発明は、回収したハイドレートより水分を除去することにより、ハイドレートの表面に氷皮を形成するために適切な水分を含んだスラリー状にし、このスラリー状のハイドレートの雰囲気を断熱膨張的に減圧することにより、各ハイドレートの表面に氷皮を形成することが好ましい。」(段落【0012】)
b-4 「前記スラリー状のメタンハイドレートを減圧容器40内に搬送し、ここで断熱膨張的に数atmまで減圧することにより、ハイドレートの圧力および温度をハイドレート生成条件下に維持しつつ、図8に示すように、メタンハイドレートMHの表面に氷皮Cを形成し、メタンハイドレートMHを安定化させる。このメタンハイドレートをコンベア41により搬送し、必要に応じて乾燥および冷却工程を経る。」(段落【0039】)
b-5 「請求項2の発明のように、回収したハイドレートより水分の大部分を除去することにより、ハイドレートの表面に氷皮を形成するために適当な水分を含むスラリー状にし、このスラリー状のハイドレートの雰囲気を断熱膨張的に減圧することにより、各ハイドレートの表面に氷皮を形成し、安定化させることができる。」(段落【0042】)

c 引用刊行物3(特開平11-343645号公報)
c-1 「家屋において雨水などを貯留して生活用水に利用するための雨水等の回収機構であって、雨水などを貯留する貯水槽と、屋根および雨樋を介して収集した雨水を前記貯水槽に導入する管路と、浴室の排水を前記貯水槽に導入する管路と、前記貯水槽から便器洗浄水、洗濯水または散水用水の供給口に至る供給管路とを備え、前記貯水槽には、貯留した水における雑菌の繁殖を抑制するための抗菌手段が付設されていることを特徴とする雨水等の回収機構。」(特許請求の範囲請求項1)
c-2 「【従来の技術】昨今、水資源の有効利用および渇水時の水の確保の目的から、貯水槽に雨水を回収し、空調用の冷却水、防火用水、トイレ用水に利用するシステムが検討されている。斯かる雨水の利用システムにおいては、土壌成分や枯葉などの異物を除去するため、初期に収集する雨水を貯留しない様に排除する手段が設けられている。」(段落【0002】)

(2)引用発明
引用刊行物1には、天然ガスハイドレートの輸送について、従来技術として、「従来、天然ガスハイドレートを輸送するには、スラリー状或いは粉体状に加工した後、船舶やローリ車に設けられ密閉されたタンクに積み替えて行うようになっていた。」(摘記a-2)と記載されている。ここで、粉体状のガスハイドレートをタンクに積みローリー車で輸送するのは車両輸送であるから、本願の出願時にガスハイドレートをタンクに積み車両輸送することは、すでに従来技術とされていた技術である。また、同刊行物には、「輸送容器1ごと天然ガスハイドレートを輸送トラック9に積載する」(摘記a-3)こと、すなわち車両輸送すること、及び、「輸送トラック9で消費地まで直接輸送して、その場で、・・・輸送容器1の底部を加熱し、天然ガスを再ガス化させる。」(同)と、ガスハイドレートを消費地で再ガス化することが記載されている。そして、ガスハイドレートの再ガス化は、ガスハイドレートをガスと水とに分解するものであることは周知である。
以上の記載及び認定からすると、引用刊行物1には、
「天然ガスハイドレートを、輸送容器により車両輸送した後、消費先にてガスハイドレートをガスと水とに分解して利用するガスハイドレートの輸送・利用方法」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

(3)本願発明と引用発明との対比
ここで、本願発明と引用発明を対比すると、両者は、
「ガスハイドレートを、車両輸送した後、消費地にてガスハイドレートをガスと水とに分解して利用するガスハイドレートの輸送・利用方法」
である点で一致し、
(i)本願発明では、ガスハイドレートが「メタンガスハイドレート」であるのに対し、引用発明では、「天然ガスハイドレート」である点(相違点1)
(ii)本願発明は、ガスハイドレートを国内貯蔵基地から小口消費先に輸送するものであるのに対し、引用発明は、出発地・消費地の限定がなされていない点(相違点2)
(iii)本願発明では、輸送にあたり「自己保存効果を利用」しているのに対し、引用発明では、自己保存効果の利用について記載されていない点(相違点3)
(iv)本願発明では、輸送にあたり、魔法瓶、保冷密閉容器及び圧力容器のいずれかに入れ保冷車で車両輸送するものであるのに対し、引用発明は、単に輸送容器により車両輸送するものである点(相違点4)
(v)本願発明では、「分解で発生する水及び分解に使用する水を各小口消費先の風呂、洗面、トイレ等の少なくともいずれかの水として使用する」のに対し、引用発明では、水の利用について記載されていない点(相違点5)
で相違している。

(4)相違点1?5についての判断
ア 相違点1について
引用刊行物2によるまでもなく、メタンがハイドレートを形成することが知られており、また、メタンは天然ガスの成分でもあるから、引用発明における「天然ガスハイドレート」に代えて「メタンガスハイドレート」を採用することは格別の創意を要するものではない。
イ 相違点2について
物を輸送するのは、生産地若しくは集積地から集積地若しくは消費地に移すことを目的とするのが通常であり、集積地には貯蔵基地が含まれ、消費地には消費先が含まれる。そして、消費先を、「一般家庭、中小企業等」(本願明細書段落【0008】)の小口消費先に限定することに格別の意義は認められない。また、車両輸送を前提とすれば、輸送は、通常、国内と解して差し支えない。そうしてみると、輸送を国内貯蔵基地から小口消費先とすることは、当業者が適宜選択し得る程度のことにすぎない。
ウ 相違点3について
引用刊行物2には、メタンハイドレートの表面に氷皮を形成することが記載されており(摘記b-1?3)、さらに、「前記スラリー状のメタンハイドレートを減圧容器40内に搬送し、ここで断熱膨張的に数atmまで減圧することにより、ハイドレートの圧力および温度をハイドレート生成条件下に維持しつつ、図8に示すように、メタンハイドレートMHの表面に氷皮Cを形成し、メタンハイドレートMHを安定化させる。」(摘記b-4)、「請求項2の発明のように、回収したハイドレートより水分の大部分を除去することにより、ハイドレートの表面に氷皮を形成するために適当な水分を含むスラリー状にし、このスラリー状のハイドレートの雰囲気を断熱膨張的に減圧することにより、各ハイドレートの表面に氷皮を形成し、安定化させることができる。」(摘記b-5)と記載され、氷皮の形成によりメタンハイドレートが安定化されることが示されている。引用刊行物2におけるこの安定化は、「MHを常圧に晒すと、・・・表面の水は凍って氷の膜となる。・・・内側のMHへの熱の流入が遮断され、常圧でも内部のMHは安定する。」(本願明細書段落【0003】)という本願発明におけるメタンハイドレート(MH)の「自己保存効果」と同じものである。そして、このような安定化されたメタンハイドレートを採用すれば、輸送の設備がより簡略化され、また、輸送が効率よく行えることは明らかであるので、メタンハイドレートを「自己保存効果を利用」して輸送を行うことは、当業者が容易に想到し得ることである。
エ 相違点4について
メタンハイドレートの安定化は表面の氷の膜によるものであるから、輸送にあたりこの氷が溶けないような温度条件を選択することは当業者にとって当然といえる技術事項であり、また、輸送中の分解、外部へのガスの流出は好ましくないものであるから、密閉若しくは加圧状態とすること、及び、「魔法瓶、保冷密閉容器及び圧力容器」を車両輸送する際には、車両として「保冷車」を使用することも当業者が容易に想到し得る技術事項であるといえる。したがって、輸送容器として、「魔法瓶、保冷密閉容器及び圧力容器のいずれか」を採用すること、及び、車両輸送する際、「保冷車で車両輸送」することは、当業者が適宜なし得る手段の選択にすぎない。
オ 相違点5について
引用刊行物3には、雨水等の回収機構が記載されており(摘記c-1)、従来の技術として、「昨今、水資源の有効利用・・・の目的から、貯水槽に雨水を回収し、空調用の冷却水、防火用水、トイレ用水に利用するシステムが検討されている。」(摘記c-2)と記載されている。そして、引用刊行物3のこの記載によるまでもなく、利用可能な水の有効活用を検討することは、当業者にしてみれば極めて自然な発想である。そうしてみると、引用発明において、消費地でガスハイドレートをガスと水とに分解することにより水が副産物として生成するのであるから、得られる水をトイレ用水等として有効活用を図ることは、当業者が容易に着想し得ることであり何らの困難性もない。

(5)効果について
本願発明は、ガスハイドレートの状態で運搬し、小口消費先で分解してガスを消費するとともに、発生する水を有効利用することができ、また、ガス輸送と比べて高いエネルギー効率で輸送することができるという効果を奏するもの(本願明細書段落【0017】)であるが、このような効果が、引用刊行物の記載から当業者が予期し得ない格別なものであるとすることができない。

(6)まとめ
以上のことからすれば、本願発明は、本願の出願前に頒布された引用文献1?3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたといえるものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許をすることができないものであるから、本願は、請求項2?4に係る発明を検討するまでもなく、拒絶すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-02-17 
結審通知日 2009-02-24 
審決日 2009-03-10 
出願番号 特願2000-362410(P2000-362410)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C10L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 近藤 政克  
特許庁審判長 原 健司
特許庁審判官 坂崎 恵美子
鈴木 紀子
発明の名称 ガスハイドレートの輸送・利用方法  
代理人 塩出 真一  
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