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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60R
管理番号 1196719
審判番号 不服2007-19658  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-07-12 
確定日 2009-05-01 
事件の表示 特願2000- 64393号「自動車用頚部保護具」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月 6日出願公開、特開2001-310695号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成12年3月9日(優先権主張 平成12年2月23日)の出願であって、平成19年6月4日付けで拒絶査定がされ、これに対して、同年7月12日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。そして、その各請求項に係る発明は、平成19年3月29日の手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項2】 自動車の座席の背もたれ部と関連して設けられている膨出部が座席に着座する搭乗者の、主として頚部に当接するようになっている頚部保護具と、搭乗者の頭部が当接するようになっているヘッドレストとが一体化されている自動車用頚部保護具であって、
前記膨出部と前記ヘッドレストは、所定の衝撃力で破壊される非復元性材料の発泡のスチロールから構成されていることを特徴とする自動車用頚部保護具。」

2.引用例の記載内容
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用された、本件特許出願前に頒布された刊行物である、特開平8-47434号公報(以下「引用例」という。)には、次の技術事項が記載されている。
・「【0001】
【産業上の利用分野】 本発明は座部と背もたれと頭部支えを備えた特に乗り物用のシートに関し、主としてシートの首部支持手段に関する。」

・「【0006】
【実施例】 本発明は、添付の図面を参照して、幾つかの実施例に基づいて説明される。図面では、同じ構成部品には同じ参照番号が指定されている。
【0007】 乗り物シート1(図1)は座部2と背もたれ3と頭部支え4とを備えている。さらにシート1は、乗り物の前方向と後方向にシート1を移動させる調節機構5と、背もたれ3と座部2との間の角度を調節する回転グリップ6と、背もたれ3の堅苦しさを調節する回転グリップ7と、背もたれ3の方向に傾けたり回転グリップ6で調節された位置を確保することができるロック機構8とを備えている。
【0008】 頭部支え4は、枕9を備え、通常堅いプラスチック発泡材から製造され、フレーム10によって支持される。フレーム10は、背もたれ3のフレーム12に固定されたブラケット11に高さ調節可能に締め付けられている。
【0009】 首部支持手段13は枕本体14と固定手段15(図2)とを備える。示された実施例では、固定手段は2つのサスペンションブラケット16によって形成され、その形状とサイズはシート1の頭部支え4の形状とサイズに適合される。固定手段15は、首部支持手段13がシート1の背もたれ3と頭部支え4との間に位置するように取り付られる。枕本体14の形状は、取り付け位置において枕本体1の少なくとも一部が背もたれ3と頭部支え4とによって定まる主平面の前方に突き出るように選定される。枕本体14の輪郭形状は平均的ユーザの首と肩の輪郭に対応するように選定される。」

・「【0011】 図3にさらに示されるように、首部支持手段13は頭部支え4の前にあり、首部支持手段13の上部突出部21は、変形可能な、例えば圧縮可能な材料から通常造られ、後方への加速の場合にユーザの頭部18を緩衝して、大部分の加速エネルギーを吸収し、頭部損傷も防止される (通常、頭部支え4は、比較的堅い材料で造られ、頭部支え4は平均的なユーザが座って頭部18が頭部支え4の前方数cmになるように背もたれ3へ接続される。それによって、後方への加速の場合には頭部支え4によって緩衝される前に、頭部18は相当な距離を移動する)。
【0012】 通常、枕本体14は弾性的あるいは塑性的に変形可能な材料、例えば軟質発泡プラスチックから製造され、そして形状維持キャリア22、例えばポリエステルのような堅いプラスチックあるいは金属から造られた板に接続される(図4)。枕本体14は、接着剤あるいは他の適当な方法でキャリア22に固定され、エネルギー吸収要素として機能し、ユーザの首19が大きな負荷に晒されるのを防止する。キャリア22は上部凹部23を備え、それによって後方への加速の場合にはユーザの頭部は頭部支えまで移動できる。・・・
【0013】 今までに示された首部支持手段13の二つの実施例は、乗り物の既存のシート1と組み合わせて使用するのに特に適している。しかしながら、新たに造るシートにおいては頭部支え4と一つの一体化した部品41として首部支持手段13を形成することも可能である(図5)。・・・」

・「【0019】 図6の実施例のように図10の実施例においては、首部支持13は頭部支持(「頭部支え」の誤記)4との一体部品41として形成される。・・・」

これら記載事項及び図面に記載された事項を総合すれば、引用例において次のことが明らかである。
・「首部支持手段13」が、「自動車の座席の背もたれと関連して設けられ」ていること。
・「首部支持手段13」は、「頭部支え4」とともに、これを「一体部品41」として形成され得ること。そして、この「一体部品41」は、【図10】によれば、その上部分が乗員の頭部、中程の突出した部分が首を保護するものであること。

すると、引用例には、実質的に次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「自動車の座席の背もたれと関連して設けられた、乗員の頭部及び首を保護する一体部品41であって、
前記一体部品41は、弾性的あるいは塑性的に変形可能な材料から構成されている自動車用一体部品41。」

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「一体部品41」は、「頭部支え4」と「首部支持手段13」とが一体化されているものであって、その上部分が乗員の頭部を保護するようになっており、中程の突出した部分が首を保護するようになっているのであるから、「一体部品41」が、本願発明の「自動車用頚部保護具」に相当するとともに、その上部分が、本願発明の「座席に着座する搭乗者の頭部が当接するようになっているヘッドレスト」に、中程の突出した部分を含む下部分全体が、本願発明の「膨出部が座席に着座する搭乗者の、主として頚部に当接するようになっている頚部保護具」にそれぞれ相当しているといえる。
すると、本願発明と引用発明との一致点と相違点は次のとおりである。

(1)一致点
「自動車の座席の背もたれ部と関連して設けられている膨出部が座席に着座する搭乗者の、主として頚部に当接するようになっている頚部保護具と、搭乗者の頭部が当接するようになっているヘッドレストとが一体化されている自動車用頚部保護具。」

(2)相違点
「膨出部」と「ヘッドレスト」が、本願発明では、「所定の衝撃力で破壊される非復元性材料の発泡のスチロールから構成されている」のに対して、引用発明は、「弾性的あるいは塑性的に変形可能な材料から構成されている」点。

(3)相違点についての検討・判断
原審査定時に周知例として挙げた特開平8-56773号公報には、首及び後頭部を保護する枕本体(1)について発泡スチロールが使われるとの記載(【0009】)がある。また、同周知例である特開昭61-119293号公報には、ヘッドレストに関するがやはり発泡スチロールが使われる旨の記載(2頁右下欄)がある。
さらに、車両における乗員保護のための装備として例えば、特開平3-200420号公報には、車両用扉に関し、扉縁取パネル組立体14を発泡スチレンフォームで構成し、「エネルギ吸収つぶれ可能な手段」(「請求項5」など)とするものが記載されている。また、特開平8-192720号公報には、シートベルトの肩アンカに関し、衝撃吸収材として「ウレタンや発泡スチロール等のような変形可能で、かつエネルギ吸収能力の高いものが望ましい」(【0009】など)との記載がある。また、特開平7-187008号公報には、自動車の天井の衝撃吸収構造としての緩衝体につき、硬質ウレタン発泡体、発泡スチロールなどを使用し「衝撃によって弾性変形または脆性破壊あるいは塑性変形し、そのエネルギーを極めて効率よく吸収緩和」(【0013】)するとの記載がある。これら以外にも、特開昭48-93035号公報には、ステアリングハンドルの衝撃緩衝装置として、「自動車等の衝突時に塑性変形を生じることにより、人体に傷害を与える程度の反力を生じることなく衝撃エネルギーを吸収する」(1頁左下欄)ものとして、「硬質発泡ウレタンや硬質発泡スチロールなど」(2頁右上欄)が挙げられている。
以上挙げた従来技術等を考慮すると、車両事故等における衝撃吸収材として、発泡スチロールは周知の材料であったといえ、この材料によれば、ある程度以上の衝撃力によって塑性変形を起こし、反力は生じなくなり、また破壊することとなるということが当業者の技術常識であったといえる。
そうすると、引用発明において、その一体部品41の材料として、衝撃吸収性を考慮して、所定の衝撃力で破壊される非復元性材料の発泡スチロールを採用することは、当業者にとって容易想到ということができる。

そして、本願発明の効果も、引用例に記載された発明及び周知の技術が有する効果の総和を超えるものではなく、当業者が予測し得た範囲内のものである。
したがって、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願は拒絶されるべきものであるから、他の請求項に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-01-16 
結審通知日 2009-02-10 
審決日 2009-02-23 
出願番号 特願2000-64393(P2000-64393)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 則夫西本 浩司  
特許庁審判長 川向 和実
特許庁審判官 渡邉 洋
柴沼 雅樹
発明の名称 自動車用頚部保護具  
代理人 杉谷 嘉昭  

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