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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 取り消して特許、登録 C09D
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C09D
管理番号 1196754
審判番号 不服2006-23121  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-10-12 
確定日 2009-05-28 
事件の表示 平成7年特許願第37150号「インクジェット記録用インク」拒絶査定不服審判事件〔平成8年9月10日出願公開、特開平8-231908、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、平成7年2月24日の特許出願であって、平成16年11月16日付けで拒絶理由が通知され、平成17年1月13日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成18年9月12日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年10月12日に拒絶査定に対する審判請求がされるとともに、同年11月10日付けで手続補正書が提出され、平成20年7月31日付けで審尋が通知されたところ、同年9月29日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成18年11月10日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成18年11月10日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正
平成18年11月10日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正前の請求項1(平成17年1月13日付けの手続補正により補正されたもの)の「記録剤として有機顔料の水系微分散体を用いたインクジェット記録用インクにおいて、比重0.9?1.05、平均粒子径0.2?1.0μmで、かつ乳化剤を用いない乳化手段により得られたビカット軟化点が40?100℃の範囲である合成樹脂微粒子を0.5?15重量%含有することを特徴とするインクジェット記録用インク。」を、
「記録剤として有機顔料の水系微分散体を用いたインクジェット記録用インクにおいて、比重0.9?1.05、平均粒子径0.2?1.0μmで、かつ乳化剤を用いない乳化手段により得られたビカット軟化点が40?100℃の範囲である合成樹脂微粒子(カチオン性エマルジョンを除く)を0.5?15重量%、有機顔料を0.3?15重量%、および水溶性有機化合物を含有することを特徴とするインクジェット記録用インク。」とする補正を含むものである。

2 補正の適否
そこで、上記補正が、平成6年法律第116号改正附則第6条によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「平成6年改正前特許法」という。)第17条の2第3項に掲げる事項を目的とするものであるか否かについて検討する。
上記補正は、本件補正前の請求項1におけるインクジェット記録用インクに、「水溶性有機化合物」を含有することを追加する補正を含むものであるが、該補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明(以下、「補正前発明」という。)の構成に欠くことのできない事項として示されていた成分のいずれかをさらに限定したものではなく、新たに含有する成分を追加したものである。
よって、該補正は、補正前発明と産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である発明の構成に欠くことができない事項の範囲内において、その補正前発明の構成に欠くことができない事項の全部又は一部を限定するものということはできないから、上記補正は、平成6年改正前特許法第17条の2第3項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものとはいえない。
さらに、該補正が請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれをも目的とするものといえないことは、明らかである。
したがって、該補正を含む上記補正は、平成6年改正前特許法第17条の2第3項に掲げる事項のいずれを目的とするものともいうことはできない。

3 補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、上記補正は、平成6年改正前特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、その余のことを検討するまでもなく、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明の認定
平成18年11月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?8に係る発明は、平成17年1月13日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?8に記載されたとおりのものであると認める(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明8」といい、これらを併せて「本願発明」という。)。

2 原査定の拒絶の理由の概要
本願発明についての原査定の拒絶の理由の概要は、「この出願の請求項1?8に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の引用文献1?4に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない」というものである。


1.特開平3-172362号公報
2.特開昭63-254176号公報
3.特開平4-185672号公報
4.特開平3-160069号公報

3 原査定の拒絶の理由についての検討
そこで、本願発明1についての原査定の拒絶の理由について検討するに、上記引用文献1?4のいずれにも、記録剤として有機顔料の水系微分散体を用いたインクジェット記録用インクにおいて、「比重0.9?1.05、平均粒子径0.2?1.0μmで、かつ乳化剤を用いない乳化手段により得られたビカット軟化点が40?100℃の範囲である合成樹脂微粒子」を含有する点について記載も示唆もされていない。
そして、本願明細書の段落【0021】に、「本発明においては樹脂の比重と分散粒子径が同時に規定されるがこれらを両立することによって初めて保存安定性と記録品位の両立がなされるものである。さらにこの条件を満たした上で特定の軟化温度を有し、他のインク添加成分によりその物性が大きく影響されない特性を実現することによりノズル目詰まりに対する信頼性が確保されるのである。」と記載され、さらに、本願明細書の段落【0018】に、「乳化重合法により得られる樹脂微粒子を用いる場合ソープフリー乳化重合等の乳化剤を用いない手法により得られるものを使用することが好ましい。乳化剤等はインクジェット記録用インクとしての諸性能に好ましからざる影響を与えることが多いからである」と記載されているように、本願発明1は、上記特定の物性を有する合成樹脂微粒子を含有することにより、保存安定性と記録品位が優れ、ノズルの目詰まりを防止できるという効果を奏するものであり、さらに、合成樹脂微粒子を乳化剤を用いない乳化手段によって得たことにより、乳化剤によるインク物性への悪影響を防止することができるという効果を奏するものである。
よって、本願発明1は、引用文献1?4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、本願発明2?8は、本願発明1の構成に欠くことのできない事項をさらに特定したものであるから、上記と同様の理由により、引用文献1?4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

4 むすび
以上のとおり、本願については、原査定の拒絶理由を検討しても、その理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2009-05-12 
出願番号 特願平7-37150
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C09D)
P 1 8・ 572- WY (C09D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小柳 正之山田 泰之  
特許庁審判長 西川 和子
特許庁審判官 松本 直子
唐木 以知良
発明の名称 インクジェット記録用インク  

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