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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09F |
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管理番号 | 1196761 |
審判番号 | 不服2005-10198 |
総通号数 | 114 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-06-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-05-30 |
確定日 | 2009-05-07 |
事件の表示 | 特願2002-561238「擬似ネオン発光のための照明装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月 8日国際公開、WO02/61328、平成16年 8月26日国内公表、特表2004-526185〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2001年12月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年1月31日、米国、2001年10月18日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成17年2月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月30日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで明細書についての手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。 第2 平成17年5月30日付けの手続補正について 1.本件補正の内容 最初に、補正前後の請求項の対応関係について検討する。 補正前後の請求項記載を対比すると、補正後の請求項1?31はいずれも「擬似ネオン発光のための照明装置」に係るものであるから、補正前の「擬似ネオン発光する照明装置を形成する方法」に係る請求項26?32は、削除されたものと解される。 また、補正前の請求項17、19は、一見して、補正後の請求項1?31のいずれも対応しないことから、これらも削除されたものと解される。 さらに、補正前の請求項20と補正後の請求項18とは、引用請求項の番号が異なるものの、同様の表現がされていることからして、両者が対応することは明らかであることからして、元々、補正前の請求項20と同一のものであった補正前の請求項21は、補正後の請求項には対応するものが存在しないので、これも削除されたと解される。 補正後の請求項のうち残るについては、その表現振りからみて、補正前の請求項1?16が補正後の請求項1?16に、補正前の請求項18が補正後の請求項17に、補正前の請求項20が補正後の請求項18に、補正前の請求項22が補正後の請求項19に、及び、補正前の請求項23?25が補正後の請求項20?22に対応することは明らかである。 そして、補正後の請求項17?22では引用する補正前の対応請求項が削除されたことに伴い引用する請求項番号が補正されている。 そして、現実に特定表現に係る記載の補正がなされた請求項は、補正後の請求項1、15、16、及び17であって、以下のとおりである。 <補正前の請求項1、15、16、及び17> 「【請求項1】 所定の長さと、側方の受光面と、所定の周幅を有して湾曲した側方の光射出面とを有し、この光射出面から出る光の光強度パターンが前記所定の長さに沿って延びた長軸を有するパターンとなって前記受光面に入った光を散乱させる、導光特性と光散乱特性との両方を有する材料で形成されたロッド形状の部材と、 前記光射出面での光強度パターンが前記受光面の全周幅に渡って延びた短軸を有するのに充分な距離だけ離間して前記受光面側に配置され、かつ受光面に沿って延びた細長い光源と 中に前記光源が収容され、前記受光面に沿って延び、各々が内側光反射面と外側光吸収面とを備えた1対の側壁を有するハウジングと、 前記ハウジング内に配置され、前記光源を外部電源に接続する電気接続部材とを具備する擬似ネオン発光のための照明装置。 【請求項15】 前記光源は、複数の発光ダイオードで構成されており、また、これら発光ダイオードは、各々の頂点が導光体の受光面と隣接しており、起立した位置でアラインメントされたダイオード用ハウジングを夫々有する請求項3の照明装置。 【請求項16】 前記光源は、複数の発光ダイオードで構成されており、これら発光ダイオードは、前記導光体の長手方向に対して傾斜されたダイオード用ハウジングを有する請求項3の照明装置。 【請求項17】 前記光源は、複数の発光ダイオードで構成されており、これら発光ダイオードは、前記受光面に対して逆にされた位置でアラインメントされているハウジングを夫々有する請求項3の照明装置。」 <補正後の請求項1、15、16、及び17> 「【請求項1】 一定の長さと、側方の受光面と、一定の周幅を有して湾曲した側方の光射出面とを有し、この光射出面から出る光の光強度パターンが前記一定の長さに沿って延びた長軸を有するパターンとなって前記受光面に入った光を散乱させる、導光特性と光散乱特性との両方を有する材料で形成されたロッド形状の部材と、 前記光射出面での光強度パターンが前記受光面の全周幅に渡って延びた短軸を有する距離だけ離間して前記受光面側に配置され、かつ受光面に沿って受光面とは離間して延び、この受光面に向って光を射出する細長い光源と 中に前記光源が収容され、前記受光面に沿って延び、各々が内側光反射面と外側光吸収面とを備えた1対の側壁を有し、内側光反射面に入射した光を集めて前記受光面へ向わせる、ハウジングと、 前記ハウジング内に配置され、前記光源を外部電源に接続する電気接続部材とを具備する擬似ネオン発光のための照明装置。 【請求項15】 前記光源は、複数の発光ダイオードで構成されており、また、これら発光ダイオードは、各々の頂点がロッド形状の部材の受光面と隣接しており、起立した位置でアラインメントされたダイオード用ハウジングを夫々有する請求項3の照明装置。 【請求項16】 前記光源は、複数の発光ダイオードで構成されており、これら発光ダイオードは、前記ロッド形状の部材の長手方向に対して傾斜されたダイオード用ハウジングを有する請求項3の照明装置。 【請求項17】 一定の長さと、湾曲した前面と受光側面とを有し、この受光側面に入った光が前記前面で前記一定の長さに沿って延びた長軸を有する光強度パターンの光に散乱させる、導光特性と光散乱特性との両方を有する材料で形成された光伝送部材と、 前記受光側面と当接し、互いに離間した側壁を有し、前記光伝送部材の所定の長さに沿って延びた空間を規定し、前記側壁は、内側光反射面と光吸収表面とを有し、内側光反射面に入射した光を集めて前記受光面へ向わせるハウジングと、 前記空間内に収容され、前記一定の長さに沿って延びた複数の点光源とを具備し、これら点光源は、光を前記受光面に向って直接射出し、前記前面から集められて射出される光分布パターンの強度が均一に見えるように、点光源の各々からの光強度パターンを隣接した光強度パターンとオーバラップするように前記湾曲した前面から離れて位置されている、照明装置。」(補正された箇所には、当審で下線を付した。) 2.本件補正の補正目的の適否について 原審における平成16年6月22日付け拒絶理由通知における理由1は、本願の特許請求の範囲に係る記載が、如何なる範囲の事項を技術的に特定するのか明確でないこと、曖昧な表現が用いられているで、発明の構成が明確でないこと、他の請求項を引用する請求項記載において特定される部材・部位が引用される請求項に記載がないこと、等について指摘するものであり、この指摘に応えて提出された平成16年12月22日付け手続補正による補正を参照しても、なお、明りようでないと、平成17年3月1日付けの拒絶査定において指摘がなされていた。 補正後の請求項1及び17において「一定の」とした補正、及び補正前の請求項1では「充分な距離だけ」を補正後の請求項1において「距離だけ」とした補正は、補正前の請求項1及び17の表現で特定する内容が明らかでないとした指摘に応えてされたものと解される。 また、補正後の請求項1及び17において「ハウジング」について、「内側光反射面に入射した光を集めて前記受光面へ向わせる」とする補正は、補正前の請求項1及び17における表現でも伺えるところではあるも、ハウジングの果たす役割を明確化すべくされたものと解される。 さらに、補正後の請求項1及び17において「光源」について、「受光面に沿って受光面とは離間して延び、この受光面に向って光を射出する」或いは「光を前記受光面に向って直接射出し、」とする補正も、補正前の請求項1及び17における表現でも伺えるところではあるも、光源から射出される光がいずれの方向に向かうかを明らかにすべくされたと解される。 このように、少なくとも、補正前後における表現の補正は、概ね補正前のものでは発明の構成が明確でないとする前記拒絶理由通知及び拒絶査定の指摘に対してなされたものであり、これらの補正を含む本件補正は、明りようでない記載の釈明を目的とするものと認められる。 3.まとめ したがって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定を満たすものであるから、当該補正を認める。 第3 本件審判請求についての判断 1.本願発明の認定 前記のように本件補正は適法なものであるから、本願の請求項1?22に係る発明は、平成17年5月30日付けで補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?22に記載された事項によって特定されるとおりのものと認める。 このうち、本願の請求項1に係る発明は、前記「第2 平成17年5月30日付けの手続補正について」の「1.本件補正の内容」における<・補正前の請求項1、15、16、及び17>の請求項1に掲げたものであって(記載は省略する)、以下、「本願発明」という。 2.引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された各刊行物には、以下の記載がある。 (2-1)刊行物1:特開2000-307152号公報 【特許請求の範囲】 「【請求項1】発光ダイオードを光源として、均一な面発光を得ることができる表示用光源装置において、 型枠と、該型枠内に配設する発光ダイオードと、該発光ダイオードの頭部に対向する位置に配置する反射材と、前記発光ダイオードおよび反射材を埋没させるように前記型枠内に充填する透光性樹脂と、該透光性樹脂の上面側に積層させる光分散樹脂とを有し、 前記型枠は、その上面側が開口し、底面および側面の内側が光反射効率の高い高反射性材料で覆われ、 前記発光ダイオードは、その頭部が前記型枠の開口に向かう上向きの状態で前記型枠内に配設され、 前記反射材は、前記発光ダイオードの頭部より照射される指向角の狭い高輝度の光束を、該光束の中心より全周方向へ広角に反射させる状態で、前記型枠内の発光ダイオードの頭部に対向する位置に配置され、 前記透光性樹脂は、前記型枠内にて前記発光ダイオードの上方に位置する反射材を総て覆い得る位置まで前記型枠内に充填され、 前記光分散樹脂は、前記型枠の上面側を覆う状態で、前記透光性樹脂の上面側に積層されることを特徴とする表示用光源装置。」 段落【0002】「【従来の技術】従来、この種の表示用光源装置は、広告看板のバックライトや各種情報を報知する電光表示板等、様々な用途に活用されており、これらの光源には一般に蛍光灯やネオンサイン管等が用いられていた。 段落【0003】「また、光源の1つとして発光ダイオードも知られており、これは主にディスプレイや表示用として使用されるほか、各種装置類に組み付けられて電源の入切や作動状態を示すパイロットランプとして多く使用されていた。」 段落【0004】「【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述したような従来の技術では、光源が蛍光灯やネオンサイン管の場合、発光ダイオードに比べれば耐久時間が短いため、交換作業が面倒であり、コストも嵩むという問題があった。」 段落【0005】「また、蛍光灯等は放電的発光であるために点灯消灯時間が遅く、また、光電変換効率が比較的低いため消費電力が大きいという問題もあった。また、長尺化や薄型化が難しく形状の自由度が著しく制限されていた。さらには、衝撃にも弱く破損し易いという実用上の問題もあった。」 段落【0006】「一方、発光ダイオードを利用した表示用光源装置では、蛍光灯等と比べて長寿命であり、視認性や輝度も極めて高く、放電的発光でないため点灯消灯時間が早く、光電変換効率が高いため消費電力が少なく、耐衝撃性にも優れる等の利点もあるが、次のような問題があった。」 段落【0007】「すなわち、発光ダイオードは特性上、高輝度の光束を得られるのだがその指向角が非常に狭いため、たとえ高密度にマトリクス状に並べた場合でも、広告看板のバックライトとして使用すると、光束の当たる部分と当たらない部分とで、光の明暗が生じてしまい均一な面発光を得ることが困難であった。」 段落【0008】「本発明は、以上のような従来技術が有する問題点に着目してなされたもので、発光ダイオードの優れた特性を備えると共に、光の不均一な明暗が生じることがなく、少ない消費電力でも高輝度で均一な面発光を得ることができる表示用光源装置を提供することを目的としている。」 前記段落【0002】?【0008】を参照するに、刊行物1に記載される表示用光源装置は、蛍光灯やネオンサイン管からなる光源に係る不都合を解消すべく、光源として耐久時間が長い等優れ得た特定を備える発光ダイオードを用いて、光の不均一な明暗が生じることがなく、少ない消費電力でも高輝度で均一な面発光を得ることが目的とされるものである。 また、前記段落【0007】の記載によれば、発光ダイオードを単に高密度に並べたとしても、光束の当たる部分と当たらない部分とで、光の明暗が生じてしまい均一な面発光が得られないことが解決課題として上げられている。 段落【0034】「透光性樹脂40は、前記型枠11内にて前記発光ダイオード20の上方に位置する反射材30をも総て覆い得る位置まで前記型枠内11に充填されている。透光性樹脂40は具体的には、無色透明のエポキシ樹脂等を用いるとよい。」 段落【0035】「光分散樹脂50は、前記型枠11の上面側を覆う状態で、前記透光性樹脂40の上面側に積層されている。光分散樹脂50は具体的には、透光性樹脂中に光分散材と前記発光ダイオード20の発光色と同系色の着色剤とを混合して成る。」 段落【0036】「ここで透光性樹脂は、前述した透光性樹脂40と同様にエポキシ樹脂を用いればよい。また光分散材とは、酸化チタンや酸化マグネシウム等が該当する。また着色剤には、発光ダイオード20の発光色と同系色の蛍光色素を用いればより鮮やかな発光色を得ることができる。」 前記実施の形態に係る【0034】?【0036】を参照するに、型枠11内には、無色透明のエポキシ樹脂等を用いた透光性樹脂40が充填されており、当該型枠11の上面側を覆う状態に、透光性樹脂中に酸化チタンや酸化マグネシウム等の光分散材を混合して成る光分散樹脂50が積層した構成が採用されている。 段落【0042】「図3,2において、発光ダイオード20が点灯すると、その頭部21より照射される指向角の狭い高輝度の光束は、反射材30によって光束の中心より全周方向へ広角に屈折反射して、型枠11の底面側等へ広域にわたり分散する。また、反射材30の中心には貫通孔31が穿設されているため、光分散樹脂50に反射材30の影が少しでも生じることを防ぐことができる。」 段落【0043】「型枠11の底面や側面の内側は高反射性材料12で覆われているため、型枠11内で様々な方向へと反射した光は、透光性樹脂40を通過する間に平均化されるよう満遍なく拡散する。ここで光は透光性樹脂40内を通るので、空気中を通過する場合に比べて輝度が低下することもなく、透光性樹脂40の全域が拡散光源領域となる。」 段落【0044】「型枠11内の光は開口した上面側へと向かうが、光分散樹脂50を通ることで均等に配光され、この光分散樹脂50の上面全体より外部へと照射される。光分散樹脂50では、光が様々な方向へと細かく乱反射されることで、光の通過滞在時間が長くなる。」 段落【0045】「それにより、型枠11の開口を覆う光分散樹脂50の表面より、高輝度で均一な面発光を得ることができる。また、光分散樹脂50には、前記発光ダイオード20の発光色と同系色の着色剤が混合されているため、より明瞭で鮮やかな光を得ることができる。」 段落【0042】?【0045】を参照するに、刊行物1に記載される表示用光源装置においては、型枠11の底面や側面の内側が高反射性材料12で覆われているために、型枠11内で様々な方向に光が反射して、透光性樹脂40を通過する間に平均化されて満遍なく拡散され、さらに、型枠11内の光は開口した上面側へ向かい、光分散樹脂50を通ることで均等に配光され、外部へ照射されることが把握できる。 してみれば、当該刊行物1には、前記特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「刊行物1記載発明」という。)が記載されている。 (2-2)刊行物2:実願昭60-47911号(実開昭60-165583号)のマイクロフィルム 【実用新案登録請求の範囲】 「(1)多数の発光体素子を列状に配して複数の導電線に接続し、透光性の可撓被包体にて全体を被包せしめた発光表示体において、該可撓被包体の発光面側と反対側に反射面を形成すると共に、該可撓被包袋の適所に平坦な取付面を形成したことを特徴とする、折曲可能な発光表示体。」 ア.1頁12?15行「(産業上の利用分野) 本考案は、例えば看板等の所謂アイキッチャー用の装飾灯やネオンサインなどに好適に使用される折曲可能な発光表示体に関する。」 イ.6頁7行?7頁8行「これら発光体素子1及び導電線2,2’は、可撓被包体3によって被包され、目的とする発光表示体が構成されている。この可撓被包体3は、軟質のポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコンゴム等よりなる透光性の柔軟な棒状体で、この実施例では、該被包体3の発光面31が平坦面に形成されて取付面34を兼用した構成とされている。そして、該被包体3の発光面31と反対側はほぼ放物面に形成され、この放物面に沿って、発光体素子1からの光を反射する反射面32が形成されている。この反射面32は、光反射性が高い例えば銀色や白色等の柔軟な塗膜を形成し得る塗料を外被包体3の放物面に塗布したり、或いは、アルミ蒸着を直接施したり、またその蒸着フィルムを貼り合わせたりすることによって形成されるもので、この実施例では該反射面32が外部に露出しているが、第3図のように柔軟な合成樹脂の保護被膜33で被覆して損傷しないように構成してもよい。また、場合によっては可撓被包体3内に光拡散剤等を混入して光拡散性を付与するように構成してもよい。」 ア記載から、刊行物2に記載される発光表示体は、ネオンサインへの使用が意図されており、折り曲げ可能な構成とされていることが把握できる。 また、ア記載に加えてイ記載を参照するに、当該発光表示体は、発光体素子1及び導電線2,2’を可撓被包体3によって被包された透光性の柔軟な棒状体とされている。 ウ.7頁9行?8頁2行「第4図(イ)、(ロ)、(ハ)はいずれも本考案の他の実施例を示す概略断面図で、同図(イ)に示すものは三角形の断面を有する可撓被包体3aの一面が発光面31a兼用の取付面34aとされ、他の二面に沿って反射面32aが形成されている。また同図(ロ)に示すものは、ほぼ半楕円形の断面を有する可撓被包体3bのほぼ放物面が発光面31bとされ、反対側の平坦面に沿って取付面34b兼用の反射面32bが形成されている。又同図(ハ)に示すものは、可撓被包体3cのほぼ半円状湾曲面が発光面31cとされ、反対側の折曲面に沿って反射面32cが形成されており、この反射面32cの中央部が平坦な取付面34cを兼用している。」 エ.9頁8?15行「しかも、発光体素子1からの光は可撓被包体3(3a、3b、3c)の発光面31(31a,31b,31c)を通って外部に直接放射されるのみならず、反射面32(32a,32b,32c)で反射された反射光も発光面を通って放射されるため、発光効率が大幅に向上し、看板等のアイキャッチャーやネオンサイン等の用途に充分な明るさを得ることが可能となる。」 ウ記載によれば、実施例に係る第4図(ロ)では、可撓被包体3bに半楕円形の断面とされた放物面発光面31bが形成されており、同第4図(ハ)では、可撓被包体3cにほぼ半円状湾曲面をなす断面からなる発光面31cが形成されている。 また、エ記載によれば、実施例に係る各可撓被包体3(3a、3b、3c)の発光面31(31a,31b,31c)から外部へ放射される光は、直接放射だけでなく、各反射面32(32a,32b,32c)で反射された反射光もあることが把握できる。 (2-3)刊行物3:実願昭60-133266号(実開昭62-41185号)のマイクロフィルム 【実用新案登録請求の範囲】 「(1)発光色の異なる発光体素子を逆並列接続すると共に、この逆並列接続した発光素子群を直列接続し、少なくとも発光面側を透光性とした可撓被包体にて被包して成る多色棒状発光表示体。」 オ.1頁10?13行「(産業上の利用分野) 本考案は、ディスプレイの装飾灯やネオンサイン等に好適に使用される折曲可能な多色棒状発光表示体に関する。」 カ.6頁7?13行「この可撓被包体1は、例えば軟質のポリ塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコンゴム等からなる透光性の棒状の被包体で、この実施例では6?15mm程度の径を有する可撓被包体1を想定し、その全体を透光性とし、望ましくは光拡散材等の配合によって光拡散性を高めるように構成してある。」 3.本願発明と刊行物1記載発明との対比 刊行物1記載発明の「型枠内に充填する透光性樹脂と、該透光性樹脂の上面側に積層させる光分散樹脂」から成る構成のうち透光性樹脂は、前記段落【0034】?【0036】を参照するに、光源である発光ダイオードを全て覆うように型枠に充填されており、他方、光分散樹脂は、型枠の上面側を覆う状態で、前記の透光性樹脂の上面側に積層されている。 すると、当該「光分散樹脂」は、発光ダイオードから「透光性樹脂」を介して射出される光を散乱して外部に放射するものであって、導光特性と光散乱特性との両方を有する材料から成る部材として構成されている。 そして、当該刊行物1記載発明の前記「光分散樹脂」構成は、同刊行物1の特許請求の範囲における請求項5の記載及び図1を参酌すれば、一定の長さを有し、当該一定の長さに沿って伸びた長軸を有するパターンとなって光を散乱させるものである。 よって、当該刊行物1記載発明の「光分散樹脂」は、本願発明の「一定の長さを有し、前記一定の長さに沿って延びた長軸を有するパターンとなって光を散乱させる、導光特性と光散乱特性との両方を有する材料で形成された(ロッド形状の)部材」と、前記対比した限りにおいて相当関係にある。 また、刊行物1記載発明の「型枠」は、光源である発光ダイオードが収容されており、その底面および側面の内側が光反射効率の高い高反射性材料で覆われた構成となっていることから、当該「発光ダイオード」及び「型枠」は、本願発明の「光源」及び「中に光源が収容され、各々が内側光反射面を備えた1対の側壁を有し入射した光を集めて外方へ向わせる、ハウジング」と相当関係にある。 そして、刊行物1記載発明は、「表示用光源装置」とあるが、前記に摘示した段落【0002】?【0008】にみられるように、発光ダイオードの優れた特性を備えると共に、光の不均一な明暗が生じることがなく、少ない消費電力でも高輝度で均一な面発光を得るものであって、従来の技術としてのネオンサイン管に代えて用いることが想定されていることから、当該、「表示用光源装置」を「擬似ネオン発光のための照明装置」と称し得る。 また、刊行物1記載発明の「表示用光源装置」においても、光源へ電気供給が行われなければ光放射できず、光源を電源に接続する電気接続部材を当然に備えており、また、電源への電気供給には何らかの内部電源或いは外部電源を要するものであって、通常、外部電源を想定することが一般的であることからして、本願発明の「前記ハウジング内に配置され、前記光源を外部電源に接続する電気接続部材」を備えているものを十分想定し得る。 してみれば、刊行物1記載発明と本願発明とは以下の点で一致しており、他方、以下の点でひとまず相違している。 <一致点> 一定の長さを有し、前記一定の長さに沿って延びた長軸を有するパターンとなって光を散乱させる、導光特性と光散乱特性との両方を有する材料で形成された部材と、 光源と 中に前記光源が収容され、各々が内側光反射面を備えた1対の側壁を有し、内側光反射面に入射した光を集めて外方へ向わせる、ハウジングと、 前記ハウジング内に配置され、前記光源を外部電源に接続する電気接続部材とを具備する擬似ネオン発光のための照明装置。 <相違点1> 一定の長さを有し、前記一定の長さに沿って延びた長軸を有するパターンとなって光を散乱させる、導光特性と光散乱特性との両方を有する材料で形成された部材に関して、本願発明においては、「一定の長さと、側方の受光面と、一定の周幅を有して湾曲した側方の光射出面とを有し、この光射出面から出る光の光強度パターンが前記一定の長さに沿って延びた長軸を有するパターンとなって前記受光面に入った光を散乱させる、導光特性と光散乱特性との両方を有する材料で形成されたロッド形状の部材」と、その形状、光の入射・放射及び光強度パターンを特定したものとされているのに対して、刊行物1記載発明が前記特定を備えるか定かでない点。 <相違点2> 光源に関して、本願発明においては、「前記光射出面での光強度パターンが前記受光面の全周幅に渡って延びた短軸を有する距離だけ離間して前記受光面側に配置され、かつ受光面に沿って受光面とは離間して延び、この受光面に向って光を射出する細長い光源」との特定がなされているのに対して、刊行物1記載発明が前記特定を備えるか定かでない点。 <相違点3> ハウジングに関して、本願発明においては、「前記受光面に沿って延び、各々が内側光反射面と外側光吸収面とを備えた1対の側壁を有し、内側光反射面に入射した光を集めて前記受光面へ向わせる」との特定がなされているのに対して、刊行物1記載発明が前記特定を備えるか定かでない点。 4.当審の判断 (4-1)相違点1について 本願発明における「受光面」及び「光射出面」について、これらがどの面を指すものであるかについて、請求項1記載のみからは定かでないので、詳細な説明を参照する。 段落【0010】には、「【課題を解決するための手段】本発明は、一方の側面から入射した光を優先的に散乱する導光特性を有する材料の成形ロッドを利用し、ロッドの他方の側面(光射出面)により射出される結果の光強度パターンが、ロッドの長手方向に沿って細長くなるように、される。光源が、光射出面に近接して配置され、かつこれに沿って延びており、ロッドの長手方向に沿う長軸並びに光射出面の全周幅を実質的にカバーする幅を有する短軸を有する細長い光強度パターンを形成するのに充分な距離だけ前記光照射面から離間されている。好ましい構成において、前記光源は、所定の距離だけ互いに離間した複数の点光源の連なりである。この所定の距離は、通常の上並びに側方から見たときに、面の周り並びに光射出面に沿って細長くオーバラップした光強度パターンを形成するために集光強度パターンが実質的に全光射出面上方で均一となるように、各点光源によりロッドへと射出された光のマッピングを可能にするような距離である。」との記載がある。 よって、当該記載によれば、「受光面」とは、「成形ロッド」すなわち本願発明の「ロッド状部材」へ光源から光が入射する面であって、「光射出面」とは、同「成形ロッド」から光が外方へ射出する面である。 他方、刊行物1記載発明においては、【請求項1】記載にあるように、型枠に充填された透光性樹脂内に配置された光源である発光ダイオードから射出された光は、「光散乱樹脂」の下面から内部に入り、当該「光散乱樹脂」の上面から外部へ照射されるものであることが明らかである。 また、刊行物1の段落【0042】?【0045】記載を参照するに、型枠内の発光ダイオードから射出した光は、透光性樹脂を通過する間に平均化されて満遍なく拡散され、さらに、「光分散樹脂」を通ることで、均等に配光された光が外部へ照射されることからして、刊行物1記載発明における「光分散樹脂」も、実質的には、本願発明の相違点1に係る「一定の長さと、側方の受光面と、一定の周幅を有して湾曲した側方の光射出面とを有し、この光射出面から出る光の光強度パターンが前記一定の長さに沿って延びた長軸を有するパターンとなって前記受光面に入った光を散乱させる、導光特性と光散乱特性との両方を有する材料で形成されたロッド形状の部材」の「湾曲した側方の光射出面を有する」以外の構成を備えているといい得る。 そこで、相違点1の残る構成であるロッド状部材が、「湾曲した側方の光射出面を有する」点について検討する。 前記の刊行物2には、刊行物1記載発明と同様に、例えば看板等の装飾灯やネオンサインなどに好適に使用される折曲可能な発光表示体に関するものであって、「擬似ネオン発光のための照明装置」と称し得るものである。 また、前記ウ記載にあるように、当該刊行物2の発光表示体における可撓被包体3bは、放物面発光面31bを有しており、当該構成により直接放射だけでなく、各反射面32(32a,32b,32c)で反射された光をも外部に放射するものである。 ここで、湾曲した面構成とする技術的意味について検討するに、このような湾曲した面構成であれば、単に平らな面構成に比較して、内部から放射される光を横方向へも放射できるものとなり、横方向からの視認性を向上させ得ることは、本願出願前に周知の技術(実願平1-102895号(実開平3-41954号)のマイクロフィルム、実願昭53-170242号(実開昭55-87574号)のマイクロフィルム等参照)である。 してみるに、相違点1に係る構成であるロッド状部材を、「湾曲した側方の光射出面を有する」ものとすることは、当業者であれば用途要請に応じて、本願出願前に周知の技術を適宜に採用したに過ぎない。 よって、当該構成は当業者にとり容易想到なものである。 (4-2)相違点2について 前記相違点1で検討したように、刊行物1記載発明の「光分散樹脂」は、発光ダイオードが配設された「透光性樹脂」の上側に位置していることから、この「光分散樹脂」の「受光面」は、光源である発光ダイオードから離間しており、当該発光ダイオードは前記受光面に向かって光を射出する細長い光源を形成しているといえる。 また、刊行物1記載発明における「光分散樹脂」は、光源である発光ダイオードから射出された光を均等に配光とし外部へ照射するものである。 そして、このように均等な配光がされることから、前記の長軸方向のみならず、短軸方向にも均等に配光されているといえる。 してみるに、刊行物1記載発明の「光源」である発光ダイオードは、実質的に本願発明の「前記光射出面での光強度パターンが前記受光面の全周幅に渡って延びた短軸を有する距離だけ離間して前記受光面側に配置され、かつ受光面に沿って受光面とは離間して延び、この受光面に向って光を射出する細長い光源」を形成しているといえるから、上記相違点2に係る構成は実質的な相違を形成するものとはいえない。 (4-3)相違点3について 前記相違点1で検討したように、本願発明の「受光面」とは、「成形ロッド」すなわち本願発明の「ロッド状部材」へ光源から光が入射する面であって、「光照射面」とは、同「成形ロッド」から光が外方へ射出する面である。 してみるに、相違点3に抽出した「前記受光面に沿って延び、各々が内側光反射面を備えた1対の側壁を有し、内側光反射面に入射した光を集めて前記受光面へ向わせる」との特定は、既に刊行物1記載発明が備えているものといえる。 そこで残る「前記受光面に沿って延び、各々が外側光吸収面とを備えた1対の側壁」なる構成について検討する。 当該「外側光吸収面」について、具体的にどのような面であるかについて、請求項1記載のみからは定かでないので、詳細な説明を参照する。 段落【0014】には、「見る者の観点から、ハウジング14の視覚の外観は、導光体12の発光面13については目立たないことが望ましい。かくして、ハウジングの外側の面は、光を吸収して、見る者に暗く見えることが好ましい。」との記載がある。 当該記載の「導光体12の発光面13については目立たないことが望ましい。」自体の意味するところは明らかでないものの、後者の「ハウジングの外側の面は、光を吸収して、見る者に暗く見えることが好ましい。」との記載から、本願発明における「外側光吸収面」とは、ハウジングの外側の面であって、見る者の観点から目立たないものとすべく、光を吸収するものにされていることが把握できる。 してみるに、見る者の観点に立って、適宜の構成を備えるようにすることは、当業者が用途要請に応じて適宜になし得ることであるから、相違点3に係る構成を刊行物1記載発明に施すことは、当業者が適宜になし得た程度のことである。 (4-4)まとめ 上記に検討したとおり、相違点1?相違点3に係る構成は、実質的相違を形成しないか、当業者であれば想到容易なものであって、それらを寄せ集めたとしても、それらにより得られる作用効果も、当業者であれば、容易に推察可能なものでしかない。 よって、本願発明は、刊行物1記載発明及び刊行物1の記載及び従来周知の構成に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は刊行物1記載発明及び刊行物1の記載及び従来周知の構成に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 そして、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-11-25 |
結審通知日 | 2008-12-02 |
審決日 | 2008-12-15 |
出願番号 | 特願2002-561238(P2002-561238) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G09F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 秋山 斉昭 |
特許庁審判長 |
酒井 進 |
特許庁審判官 |
菅野 芳男 佐藤 宙子 |
発明の名称 | 擬似ネオン発光のための照明装置 |
代理人 | 橋本 良郎 |
代理人 | 峰 隆司 |
代理人 | 福原 淑弘 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 鈴江 武彦 |
代理人 | 白根 俊郎 |
代理人 | 中村 誠 |
代理人 | 河野 哲 |
代理人 | 村松 貞男 |
代理人 | 風間 鉄也 |