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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) D04H
管理番号 1196769
審判番号 不服2005-19538  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-10-11 
確定日 2009-05-07 
事件の表示 特願2001-503724「吹き飛ばし可能な断熱材」拒絶査定不服審判事件〔平成12年12月21日国際公開、WO00/77287、平成15年1月21日国内公表、特表2003-502516〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、2000年6月12日(パリ条約による優先権主張、1999年6月14日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成16年5月18日付け、及び平成17年6月17日付けで手続補正がされ、平成17年7月8日付けで拒絶査定がされ、これに対して、平成17年10月11日に拒絶査定に対する審判請求がされ、当審において平成20年3月17日付けで拒絶理由通知がされ、同年6月18日付けで意見書及び誤訳訂正書が提出されたものである。

第2 本願発明
この出願の発明は、平成20年6月18日付けの誤訳訂正書の特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定されるものであり、請求項1の記載は下記のとおりである。
「バット、ウェブ、バットの一部、及びウェブの一部から構成される群から選ばれる1種以上の材料から成り、その材料が1回以上細断されてランダムな形状をとり吹き飛ばし可能なクラスターになっている、吹き飛ばし可能な断熱材材料であって、そのクラスターが、繊維間の複数の接触点で相互に結合し合ったランダムな形状の繊維から構成され、当該吹き飛ばし可能な断熱材材料は、前記クラスターと、吹き飛ばし可能な天然の断熱材材料との混合物の形態である、吹き飛ばし可能な断熱材材料。」(以下、「本願発明1」という。)

第3 当審において通知した拒絶の理由
当審において通知した拒絶の理由は、この出願の発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1、2及び4に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。

刊行物1:特開昭62- 33856号公報
刊行物2:特開昭58- 81075号公報
刊行物4:特開昭63-243358号公報

第4 当審の判断
当審は、平成20年6月18日付けの誤訳訂正によっても訂正後の本願発明1は、依然として、その出願前日本国内又は外国において頒布された上記の刊行物に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、と考える。
その理由は、以下のとおりである。

1 刊行物の記載事項
(1) 刊行物1
刊行物1には、以下の事項が記載されている。
1a 「本発明は、一般にポリエステルフアイバーフイルと呼ばれる、ポリエステル繊維詰物材料の改良に関し、…。ポリエステルフアイバーフイルは、枕、たとえば掛け布及び寝袋のようなその他の寝具、衣類…のための安価な材料として、よく受け入れられており、…。フアイバーフイルは一般に、種々の長さに切断したステープルの形態にあるポリ(エチレンテレフタレート)繊維から成っている。」(2頁右上欄12行?2頁左下欄4行)
1b 「約10乃至約60mmの切断長さを有し且つ…、ランダムに配置させた、からみ合った、らせん状に縮れたポリエステルフアイバーフイルから実質的に成る、1?15mmの平均寸法の…フアイバーボール」(特許請求の範囲の請求項1)
1c 「鳥の綿毛及び/又は羽毛と均密にブレンドした特許請求の範囲第1項記載のフアイバーボールのブレンド物」(特許請求の範囲の請求項9)
1d 「本発明のフアイバーボールを他の材料、たとえば、鳥の綿毛又は羽毛のような天然製品、その他の繊維又は不織布片と緊密にブレンドすることによって、この分野において公知のように、潤滑性を与えることができる。」(6頁右下欄下から5行?7頁左上欄1行)
1e 「本発明のフアイバーボールを吹込みによって容易に枕中に移し且つ詰めることができるという事実は、綿毛又は類似の材料を吹き流すための装置を有しているものと思われる枕の製造者には大きな利益となり」(11頁右下欄11?16行)

(2) 刊行物2
刊行物2には、以下の事項が記載されている。
2a 「本発明の繊維(A)及び(B)並びに低融点合成繊維を配合した詰綿材料は通常の方法で混綿配合することができる。配合した詰綿材料はウエッブ状としてばかりでなく、ランダム繊維塊、例えば…、或いは機械、風力、又は人力で1?10mm程度の繊維塊に分離し必要に応じてさらに丸めて使用することが出来る」(4頁左上欄9?16行)
2b 「尚、繊維塊として用いる場合にウェッブ状で融着した後、これを繊維塊に分割してもよい。」(4頁右上欄4?6行)

(3) 刊行物4
刊行物4には、以下の事項が記載されている。
4a 「(a)…3から12ミクロンの直径を有する合成重合体マイクロ繊維及び(b)…12ミクロン以下でない直径を有する合成重合体マクロ繊維、のアセンブリを含む構造体において、繊維の少なくともあるものがその接触点で結合され、…、この結合が未結合アセンブリと比較して構造体の熱絶縁性の顕著な損失なしに行なわれること、を特徴とする凝集性繊維構造体の形で合成繊維熱絶縁体材料。」(1頁左下欄?右下欄、特許請求の範囲の請求項2)
4b 「本発明は合成ダウンに関しそして低密度アセンブリで微細繊維の使用により得られる軽量熱絶縁システムに特に関連する。」(1頁右下欄11?13行)
4c 「本発明の別の具体例では、このアセンブリはクラスター又はボールの形である。手により又は市販の機械、例えば自動ダイシング、タンブリング又はボールローリング機を使用してこのクラスターを製造できる。本発明に従つたバツト又はクラスターは天然ダウンの密度に比較し得る密度、即ち16kg/m^(2)(1.0ポンド/立方フイート)以下のオーダーの密度を達成できる。
クラスター形では、本発明の絶縁体材料は驚くほどに圧縮荷重から極めて良好な回復を供する。
更に、現今のダウン処理装置に適合できるので、性能と処理の見地の両方からこれが存立できる合成ダウン置換材料を表わす。
クラスターの形の本発明に従つた熱絶縁性材料は繊維のより不規則な配向を享受する傾向を示す。
かくして、より大きな圧縮回復とより均一な性質を供する。更にこれらのクラスターは確立したダウン取扱い及び充填機械で取扱うことができる利点を享受する。」(4頁左上欄15行?4頁右上欄13行)
4d 「例1…。この混合した繊維を均一に混和しかつオープンした後に、カードラツプ(カード化機からの出力ウエブ)を合わせてバツトを形成した。」(5頁左下欄17行?右下欄14行)
4e 「例2 …のポリエステルマイクロ繊維を最初にワイヤクロースドカード化機でオープンした。このオープンした繊維を次にスコアし、乾燥しそしてシリコーン仕上げで処理して潤滑性と撥水性を付与した。次にこのマイクロ繊維を…のポリエステル結合剤繊維と組合わせかつ均一に混和した。…混合した繊維を均一に混和しかつオープンした後に、カードラップ(カード化機の出力)をクラスターに分離した。これらのクラスターは…多少球状であつた。手の操作により実験室でクラスター形成が得られたが、クラスター又はボールにカード化繊維を変換する少なくとも二つの商業的方法が公知である。最終処理工程は160℃(320°F)の温度で5分間ダウン状クラスターの炉露出でありマイクロ繊維と結合剤マクロ繊維の間にそして結合剤マクロ繊維の間に熱可塑性結合が得られた。」(6頁左上欄2行?6頁右上欄8行)
4f 「本例で製造した絶縁体を使用してジヤケツト、寝袋及びキルトを製作した。すべてが絶縁体としてダウンを使用するものと等価の又はより良好な熱絶縁性能を有しかつ保持することが判つた。」(6頁左下欄18行?6頁右下欄1行)

2 刊行物4に記載された発明
刊行物4には、「…3から12ミクロンの直径を有する合成重合体マイクロ繊維及び…12ミクロン以下でない直径を有する合成重合体マクロ繊維、のアセンブリを含む構造体において、繊維の少なくともあるものがその接触点で結合され、…、この結合が未結合アセンブリと比較して構造体の熱絶縁性の顕著な損失なしに行われること、を特徴とする凝集性繊維構造体の形で合成繊維熱絶縁体材料」(摘示4a)などについて記載され、その「合成繊維熱絶縁体材料」には「クラスター」の形の態様があること(摘示4c、4e)、その「クラスター」は、「カードラツプ(カード化機の出力)」(摘示4e)、すなわち、カード化機からの出力ウェブ、を「分離」(摘示4e)することにより製造されるものであるから、カード化機からの出力ウェブを細かく分割して製造されるものであると認められる。
また、この「クラスター」は、「ダウン取扱い及び充填機械で取扱うことができる」(摘示4c)ものであるとされるが、ダウンの充填機械は吹き飛ばしによることが普通であるから、この「クラスター」は、吹き飛ばし可能なものであると認められる。
そうすると、刊行物4には、
「3から12ミクロンの直径を有する繊維及び12ミクロン以下でない直径の繊維のアセンブリを含む構造体において、該構造体は、繊維の少なくともあるものがその接触点で結合された凝集性繊維構造体の形であって、該凝集性繊維構造体はカード化機からの出力ウェブを細かく分割して製造した、吹き飛ばし可能なクラスターの形である、合成繊維熱絶縁体材料」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

3 対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明における「カード化機からの出力ウェブ」は、本願発明1の「バット、ウェブ、バットの一部、及びウェブの一部から構成される群から選ばれる1種以上の材料」に包含されるものであり、引用発明の「細かく分割して製造」することも本願発明1の「1回以上細断」することも、ともに上記材料を1回以上細分することにより製造することといえる。さらに、引用発明の「繊維の少なくともあるものがその接触点で結合」されたものは、「最終処理工程は160℃(…)の温度で5分間ダウン状クラスターの炉露出でありマイクロ繊維と結合剤マクロ繊維の間にそして結合剤マクロ繊維の間に熱可塑性結合が得られた。」(摘示4e)と記載されているとおり、本願発明1でいう「繊維間の複数の接触点で相互に結合」していることと同じことを表しているものと認められる。そして、引用発明の「熱絶縁体材料」も本願発明1の「断熱材材料」も、ともに「寝袋」(前者、摘示4f。後者、段落【0002】)などに使用する「合成ダウン」(摘示4b)、すなわち、鳥の綿毛の代用物として開発されたものであり、本願発明1の「羽毛様品質を有する」材料(段落【0002】)と同じであるから、表現は異なるものの、両者は同じものであるといえる。
そうすると、両者は、
「バット、ウェブ、バットの一部、及びウェブの一部から構成される群から選ばれる1種以上の材料から成り、その材料を1回以上細分することにより製造された吹き飛ばし可能なクラスターであり、そのクラスターが、繊維間の複数の接触点で相互に結合し合った繊維から構成された、断熱材材料」
の点で一致し、下記の点で相違していると認められる。
(i) クラスターが、本願発明1は、「細断されて」「ランダムな形状」をとるものであって「ランダムな形状の繊維から構成され」ているものであるのに対して、引用発明は、「細かく分割して製造した」ものであるが、「細断されて」「ランダムな形状」をとるものであるのか、「ランダムな形状の繊維から構成され」ているのか、は明らかでない点
(ii) 断熱材材料が、本願発明1は「吹き飛ばし可能な天然の断熱材材料を有する混合物の形態」をとる「吹き飛ばし可能」なものであるのに対して、引用発明の「合成繊維熱絶縁体材料」はそのようなものであるかは明らかではない点

4 相違点についての判断
そこで、これらの相違点について検討する。
(1) 相違点(i)について
ア 相違点(i)についての判断に先立ち、相違点(i)に係る本願発明1の特定事項である、「細断されてランダムな形状をとり」における「細断」及び「ランダムな形状」の意味が明確ではないので、発明の詳細な説明及び図面の記載を参酌すると、発明の詳細な説明には、「細断」の結果得られたクラスターの性状及び「細断」に用いる機械の例について、
「…次いで、そのバットは、機械的に細断されて、従来の装置によって吹き飛ばすことのできる小さいクラスターになる。それらクラスターの幾分ランダムな形状のおかげで一層優れたパッキング(packing, ぎっしり詰めること)が可能となり、一層均一に充填されることとなる。…」(段落【0012】)
「それらクラスターは、…軽量のカードスライバ(card sliver)で作ることができる。…そのスライバは、先ず、…繊維集合体を結合させる。加熱管の出口で、そのスライバは、ギロキン型短繊維裁断機の入口側に引き伸ばされる。切り口で繊維溶融による緻密化の影響(densifying effects)を受けることなく、クリーンカット(clean cut,スパッと切れた切り口)が達成される。」(段落【0014】)
などと、記載されている。
しかし、「細断」とはどのようなものをいうのか、明確に定義されてはいない。
また、発明の詳細な説明においては、「細断」に関連し、「裁断」(段落【0014】)、「切断」(段落【0015】)などの用語もみられ、「細断」と「切断」とは同じように用いられているようでもあり(段落【0014】、【0017】と段落【0015】)、使い分けられているようでもある(段落【0018】の「結合繊維の含有量を変えて、クラスターの細断性、切断性、密着性及び性能特性を微調整すること」の記載)が、使い分けられているとしても、これらの用語がどのように相違し、使い分けられているのか、明らかではない。
ところで、本願発明1において「細断」するのは、「従来技術のクラスターは、しばしば、そして通常、スピードが遅く、長たらしいバッチ法で、手作業により作られている」(段落【0010】)ことを改良するためであると認められるから、本願発明1における「細断」とは、少なくとも手作業でするものではなく、具体的に挙げられている、切り口で繊維溶融による緻密化の影響を受けることなく、クリーンカットするギロキン(注:「ギロチン」のことと解される。)型短繊維裁断機による切断することを含むものである、ということができる。そして、上記切断の結果得られたクラスターは、本願発明1における「細断」によるのであるから、本願発明1における「ランダムな形状」のクラスターに包含されるということができる。
また、相違点(i)に係る本願発明1の特定事項である、「ランダムな形状の繊維から構成され」における「ランダムな形状」についても、その意味が明確ではないので、発明の詳細な説明及び図面の記載を参酌すると、「ランダム」の用語は、発明の詳細な説明において上で示した段落【0012】においてのみ用いられ、他にはない。ただ、図1?4によれば、繊維が不規則に絡み合っていることが認められ、図1によれば、クラスター表面に繊維端が不規則に存在していることが認められる。
以上によっても、クラスターの繊維の「ランダムな形状」の意味するところは必ずしも明確ではないが、あえていえば、繊維が不規則に絡み合った形状であること、及び又は、繊維端がクラスターの外表面に不規則に存在する形状であること、を意味すると解することができる。

イ 引用発明のクラスターは、カード化機からの出力ウェブを細かく分割して製造するものであるところ、その機械には、「自動ダイシング」等の機械が包含される(摘示4c)。この「自動ダイシング」機械とは、原料材を自動的にさいころ(立方体)状の製品にする機械と認められるから、通常、切断刃によりさいころ状となるように原料材をクリーンカットするものであると解される。
上記アのとおり、本願発明1でいう「細断」され「ランダムな形状」のクラスターは、クリーンカットするギロチン型短繊維裁断機による切断により得られるものを含むと認められるところ、引用発明における「自動ダイシング」機械による切断は、クリーンカットする繊維裁断機による切断であるから、上記切断と同等と認められ、したがって、それによって形成されたクラスターは、本願発明1でいう「細断」され「ランダムな形状」のクラスターと同等とのものいうことができ、その切断されたカット面も本願発明1と同等の繊維端がクラスターの外表面に不規則に存在する形状であるということができる。
また、引用発明の「径の異なる2種の合成重合体繊維のアセンブリを含む構造体」は、2種の合成重合体繊維を混合したものであるから、繊維が不規則に絡み合った形状のものであることは、自明のことである。
そうすると、引用発明においてその分割を自動ダイシング機械によって形成したクラスターは、「細断されて」「ランダムな形状」をとるものであって、「ランダムな形状の繊維から構成され」ているものと同等であると認められる。
したがって、相違点(i)は、両者の実質的な相違点であるということはできない。
さらに、本願発明1のクラスターと引用発明の上記機械によって製造されたクラスターとが、仮に「ランダムな形状」、「ランダムな形状の繊維から構成され」において相違があるとしても、刊行物4には、熱絶縁性材料はバットより「繊維のより不規則な配向」が大きいクラスターが「より大きな圧縮回復とより均一な性質を供する。」及び「確立したダウン取扱い及び充填機械で取扱うことができる」(摘示4c)と記載され、「繊維のより不規則な配向」が大きいことが好ましいことが示唆されているのであるから、引用発明において、「ランダムな形状の繊維」から構成されるものとすることは、当業者が容易に想到し得ることであるし、詰め物等に用いる繊維塊(クラスター)として、「ウエッブ状に融着した後、これを繊維塊に分割」(刊行物2摘記2a、2b)すること等により「ランダムな形状」としたものは普通に知られているものである(例えば、上記刊行物2摘記2a、2b参照)から、引用発明のクラスターを「ランダムな形状」のものとすることも当業者が適宜なし得ることである。
そして、本願明細書等を検討しても、この点によって本願発明1が格別顕著な効果を奏するものと認めるに足るものはない。

ウ 請求人の主張
(ア) 請求人は、平成20年6月18日付けの意見書において、本願発明1で規定する「繊維間の複数の接触点で相互に結合し合ったランダムな形状の繊維」は、各刊行物には示唆されていない、と主張する(4.(II)(2))。
しかし、引用発明のクラスターも本願発明1で規定する「繊維間の複数の接触点で相互に結合し合ったランダムな形状の繊維」であるか、また、引用発明のクラスターにおいてそのような繊維のものとすることは容易想到であることは、上記イで示したとおりである。

(イ) また、請求人は、同意見書において、
『特許請求の範囲に記載の細断は、ランダムな形状を生じさせる。既に結合されたバット又はウェブを細断することで、結合構造が崩壊(…)し、これにより、結合された繊維間の複数の接触点においてランダムな裂け目(…)が生じる(図面に記載の通り)。フリーな繊維の得たランダムな形状及び粗い表面は、切断に由来する変形領域を有することなく(…)交絡(…)をする傾向にあって、この領域は、圧縮後の回復能に影響を及ぼすものである』(3.(2)(c))、
及び
『細断により、特許請求の範囲に記載の「ランダムな形状をとり吹き飛ばし可能なクラスターになっている、吹き飛ばし可能な断熱材材料であって、そのクラスターが、繊維間の複数の接触点で相互に結合し合ったランダムな形状の繊維から構成され」ることが達成されるのである。…刊行物4…「自動ダイシング、タンブリング又はボールローリング」…は、本願請求項に記載のランダム形状の吹き飛ばし可能なクラスターを製造しない。例えば、ダイシングは、明りょうな切り口(…)を用いた正方形のクラスターを製造する。しかしながら、細断は、本願図1?4及び本願明細書段落番号0017の通り、ランダムな形状を製造する。このように、切断と細断とは、異なる特性を生じさせる。…切断の結果と、細断の結果とは、一般的な差異がある。繊維材料の技術分野において、回復(…)の能力及び交絡(…)の能力は、本質的な特性であって、断熱材材料にあっては、顕著である。これらの能力は、他のもののうち、バット(又はウェブ)が分離される方法により、決定される。この選択は、高度に意図的なもの(…)である。切断することにより、バットの圧縮が起こる。斯かる圧縮は、斯かる切断片の周囲の切断領域における局所的な交絡による永続的な変形を惹起する。つまり、各切断片は、周囲の片と交絡する傾向に乏しく、且つ圧縮後の回復も乏しい。さらに、各片は、多かれ少なかれ同一の幾何学的形状を有する。一方、バットを細断することにより、個々のクラスターの斯かる変形は起こらず、クラスターは、交絡する傾向のあるフリーな繊維の粗い表面を有するランダムな形状を有する。さらに、回復の能力に影響を及ぼす可能性のある変形領域がない。また、…ランダム形状により、より均一な充填をもたらす良好な梱包が可能となる。…また、クラスターの密度を高くする傾向にあるタンブリングやローリングと比較して、細断は、より大きな充填力(…)を伴ったより開口された構造を提供する。細断された構造には、より多くの空気がトラップされ、より高い断熱効果が提供される。同じ重量の材料に関し、細断された材料は、より多くの容量を提供する』(4.(II)(2)?(6))、
と主張している。
しかし、引用発明のクラスターも本願発明1のクラスターであるか、引用発明において本願発明1のクラスターとすることが容易想到なものであることは、上記イのとおりである。
また、本願発明1のクラスターについては上記アで検討したとおりであり、発明の詳細な説明及び図面の記載によっては、請求人が主張する「細断」の「切断」との差違や、「細断」の作用効果を把握することはできないし、他に請求人が主張する上記作用効果が存することを示す具体的根拠は何ら示されていないから、上記請求人の主張は根拠がない主張であり、採用することができない。

(2)相違点(ii)について
引用発明の「合成繊維熱絶縁体材料」は、「3 本願発明1と引用発明との対比」で記載したとおり、そもそも、「合成ダウン」(摘示4b)、すなわち、鳥の綿毛の代用物として開発されたものであり、このような鳥の綿毛の代用物である繊維塊を詰物などに用いるに際しては、鳥の綿毛との混合物とすることは、慣用されていることである(必要であれば、刊行物1摘示1c、1d、1e参照。)。
そして、鳥の綿毛は吹き飛ばし可能なものであることは周知のことであり、引用発明のクラスターも吹き飛ばし可能なものと認められるから、それと天然の断熱材材料である鳥の綿毛との混合物とした「合成繊維熱絶縁体材料」もまた、吹き飛ばし可能であると認められる。
そうすると、引用発明の「合成繊維熱絶縁体材料」を「吹き飛ばし可能な天然の断熱材材料を有する混合物の形態」とすることも、当業者にとって格別困難なことということはできない。
そして、本願明細書等を検討しても、この点によって本願発明1が格別顕著な効果を奏するものとは認められない。

5 まとめ
以上のとおりであるから、本願発明1は、本願出願前に頒布された刊行物1及び4(又は、さらに刊行物2)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明1は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余について言及するまでもなく、この出願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-02 
結審通知日 2008-12-03 
審決日 2008-12-16 
出願番号 特願2001-503724(P2001-503724)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (D04H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平井 裕彰  
特許庁審判長 柳 和子
特許庁審判官 坂崎 恵美子
鈴木 紀子
発明の名称 吹き飛ばし可能な断熱材  
代理人 山下 穣平  
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