• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1196807
審判番号 不服2006-20528  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-09-14 
確定日 2009-05-07 
事件の表示 平成 8年特許願第294036号「遠隔医療システムおよびこれに用いる端末装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 5月29日出願公開、特開平10-143573〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成8年11月6日の特許出願であって、平成18年4月20日付けで拒絶理由が通知され、同年6月26日付けで手続補正書が提出され、同年8月8日付けで拒絶査定され、これに対して同年9月14日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。


2.本願発明
本願の請求項7に係る発明は、平成18年6月26日付け手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項7に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下「本願発明」という)。

「【請求項7】
被検体の生体情報を計測するための生体情報計測装置を備えるとともに医療施設外の遠隔地に設置可能であり、通信ネットワークを介して前記医療施設と接続され診断に供する遠隔医療に用いる端末装置において、
前記生体情報計測装置を制御し、これにより計測された生体情報における異常値を検出するためのプログラムを受信する受信手段と、
前記プログラムを実行することにより検出された異常値を含む第1の診断結果を前記通信ネットワークを介して出力することで前記医療施設における診断に供するための第1の診断手段とを具備することを特徴とする遠隔医療に用いる端末装置。」


3.引用例
(1)引用例1について
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-38435号公報(以下、「引用例1」という)には、下記の事項が記載されている。

(あ)「【0022】
【実施例】以下、本発明の実施例の詳細を図面に基づいて説明する。図1乃至図4は、本発明の在宅健康管理システムの一実施例を示すものである。同図に示すように、在宅健康管理システムは複数の端末装置100及び診断検査装置300と、これら端末装置100及び診断検査装置300間でやりとりされるデータの集中管理を司る中央処理装置200とで構成されるものであり、端末装置100はクライアント側に相当し、診断検査装置300は個人開業医、病院、試験センタ等に相当するものである。
【0023】端末装置100には、図5乃至図8に示すような携帯用の計測器120が設けられており、計測器120の心電センサー123,124や血圧センサー125からなる生体計測部101によって計測された心電図や脈拍の計測データは、図2の記憶部137に記憶される。また、計測器120には、外部入力が可能な入力端子121,122が設けられており、これらの端子から図示省略の血圧計によるの血圧計測データや心電計による心電計測データを入力すると、これらの計測データも記憶部137に記憶されるようになっている。」

(い)「【0026】更に、計測器120には、心電ボタン126、心拍ボタン127、血圧ボタン128、送信ボタン129、受信ボタン130、データ確認ボタン131、表示器132が設けられており、心電ボタン126、心拍ボタン127、血圧ボタン128のいずれかを押した後、データ確認ボタン131を押すことによって入力データの確認が行われる。
【0027】また、送信ボタン129を押すことにより、計測データが送信部104を介しモデム105により変調された後、図1に示すように、PSTN(Public Switching Telephone Network)アダプタやAir I/F(電波インターフェース)や音響カプラ等の通信端末400及びPSTN,CATV,PHP(Personal Handy Phone)或はNCC等の通信ネットワーク500を通して中央処理装置200側に送信される。NCCを使うときは通信端末400は介在しない。受信ボタン130を押した場合には、中央処理装置200側から通信ネットワーク500、通信端末400を通して送信される診断結果等の情報を受信することができる。」

(う)「【0033】診断処理部207は、記憶部206に記憶されている計測データを適当な形にまとめるか、あるいはそのままの状態で第1送信部209を介しモデム210によって変調させた後、個人開業医、病院、試験センタ等に相当する診断検査装置300側にPSTN、CATV、FAX、電子メール等の通信ネットワーク600を通して送信する。
【0034】すなわち、心電、心拍、血圧等の検査診断を行うことができる個人開業医、病院、試験センタ等のリストが予め記憶部206に記憶されており、これらの中から計測データの送信先を選択し、選択した個人開業医、病院、試験センタ等の識別情報を付加した形で送信される。診断検査装置300側においては、図4に示すように、中央処理装置200側から送信された計測データをモデム301によって復調した後、受信部302によって受信し、診断検査部303にて診断検査を行う。この場合、中央処理装置200側から送信される計測データには、個々の履歴データ等も含まれていてもよい。」

よって、上記(あ)乃至(う)及び関連する図面から、引用例1には、
「通信ネットワークを介して中央処理装置に接続された端末装置において、
端末装置には生体計測部を有する計測器が設けられ、
生体計測部によって計測された計測データは、通信ネットワークを介して中央処理装置に送信され、中央処理装置に送信された前記計測データは、通信ネットワークを介して病院に送信されて診断検査に用いられる在宅健康管理に用いる端末装置。」
の発明(以下、「引用発明1」という)が記載されている。

(2)引用例2について
また、原査定の拒絶の理由に引用された特公平3-49499号公報(以下、「引用例2」という)には、下記の事項が記載されている。

(え)「(産業上の利用分野)
本発明は、個々の患者から検出される生体情報についての各医療データを医療機関等において集中管理するために使用される装置に関し、特に在宅療養患者等から検出される夫々の医療データの集中管理のために医療機関等のデータ処理装置に電話回線を介して接続され所要の医療データを自動的に送出するための装置に関するものである。」(公報第1頁右欄16行?23行)

(お)「送信器1に接続された心電図計3、電子体温計4、血圧計5の各端子が患者に取付けられ、これらにより検出され電気信号に変換された医療データを送信器1側のRAM21に予め記憶された正常値と比較し(ステツプ33)、この医療データが正常値と異なると判定したときに、この異常データは送信器1側の変調回路34(第3図)とアンテナ6(第1図)を介して受信器2側に送信される。受信器2側に送信された異常データはアンテナ10(第1図)、受信回路35(第4図)を介してA-D変換器32(第4図)にはいり、ここでデイジタル信号に変換されCPU26(第4図)内に送られる。CPU26(第4図)は、この異常データが本当に異常かどうかチエツクし(ステツプ36,37,38)、異常であると判定した場合には、心電図計ランプ12、体温計ランプ13、血圧計ランプ14を点灯し(ステツプ39)、この異常データを再度送信器1側に送信する(ステツプ40)。
異常データを送信器1側で受信すると(ステツプ41)、異常に対応する確認ランプ(心電図計ランプ、体温計ランプ、血圧計ランプ)が点灯し(ステツプ42)、同時に警告ブザー22(第3図)が吹鳴する(ステツプ43)。確認スイツチ18(第3図)が作動されると警告ブザー22の吹鳴が止まる(ステツプ44,45)。送信器1側ではこの異常データを再度検証し(ステツプ46)、緊急を要する状態である場合には緊急発信スイツチ16(第3図)が作動し(ステツプ47)、RAM21(第3図)内に蓄積された緊急時データがサンプリングされ(ステツプ48)、この緊急時データが受信器2側に送信され(ステツプ49)、受信器側の警告ブザー28(第4図)が吹鳴する(ステツプ50)と同時に電話回線を介して自動的に医療機関に通報される(ステツプ51,52)。警告ブザー28(第4図)はしばらくすると確認スイツチ27(第4図)が作動し、自動的に止まる(ステツプ53,54)。」(公報第3頁右欄10行?第4頁左欄4行)

(か)「この結果、医療機関にこれらの異常データが通報されると、医療機関ではこの異常データを検討し、患者の受入れ準備をすすめると共に、患者が重症の場合には救急車の手配をする等、迅速に対応することができる。」(公報第4頁左欄19行?23行)

よって、上記(え)乃至(か)及び関連する図面から、引用例2には、
「血圧計等の計器が接続された送信器と検出された医療データを送信器から受信する受信器が在宅療養患者の家に備えられ、受信器は送信器から受信した医療データが異常データであるかを判定し、異常データである場合には電話回線を介して該異常データを医療機関に通報する装置。」
の発明(以下、「引用発明2」という)が記載されている。


4.対比
(1)本願発明と引用発明1との対応関係について
引用発明1の「病院」は、本願発明の「医療施設」に相当している。
引用発明1の「計測器」は、上記(あ)に
「計測器120の心電センサー123,124や血圧センサー125からなる生体計測部101によって計測された心電図や脈拍の計測データは、図2の記憶部137に記憶される。」
と記載されていることから、人体を被検体として心電図や脈拍などの生体情報を計測するものであると解されるので、本願発明の「被検体の生体情報を計測するための生体情報計測装置」に相当している。
引用発明1の「端末装置」は、通信ネットワークを介して病院に接続されていることは自明であるから、本願発明の「医療施設外の遠隔地に設置可能」な物である。
引用発明1では、端末装置で得られた計測データに基づいて病院において診断検査が行われることから、引用発明1の「在宅健康管理に用いる端末装置」は、本願発明の「遠隔医療に用いる端末装置」に相当している。

(2)本願発明と引用発明1の一致点について
上記の対応関係から、本願発明と引用発明1は、
「被検体の生体情報を計測するための生体情報計測装置を備えるとともに医療施設外の遠隔地に設置可能であり、通信ネットワークを介して前記医療施設と接続され診断に供する遠隔医療に用いる端末装置」
の点で一致している。

(3)本願発明と引用発明1の相違点について
本願発明は、「前記生体情報計測装置を制御し、これにより計測された生体情報における異常値を検出するためのプログラムを受信する受信手段と、
前記プログラムを実行することにより検出された異常値を含む第1の診断結果を前記通信ネットワークを介して出力することで前記医療施設における診断に供するための第1の診断手段」を有しているのに対し、引用発明1はそのような構成は有していない点で、両者は相違する。

5.当審の判断
(1)引用発明1の計測器がプログラムにより制御されているかについて
引用例1の上記(い)には、計測器に設けられたデータ確認ボタンを押すことによって入力データの確認が行われる点、及び、計測器に設けられた送信ボタンを押すことにより、計測データが通信ネットワークを通して中央処理装置側に送信される点が記載されている。これらのユーザにより指示された動作を端末装置が実施するためには、何らかのプログラムに基づいて処理が行われていることは一般的なことであるから、引用例1には端末装置内に記憶されているプログラムにより計測器が制御されていることの記載はないが、引用発明1においても端末装置内に記憶されているプログラムにより計測器が制御されているとすることは、当業者が適宜なし得たものである。

(2)ネットワークに接続された機器のプログラムダウンロードについて
当該技術分野において、ネットワークで接続されプログラムを内蔵した機器で機器に内蔵したプログラムの更新等を行うために、ネットワークの接続先の機器からプログラムをダウンロードする程度のことは、例えば、原査定の備考欄に記載した特開平7-162424号公報、特開平1-134666号公報に記載されているように、周知な技術に過ぎない。
また、そのためにプログラムを受信する受信手段を設けることは普通のことである。

(3)異常値の検出と、第1の診断結果の送信について
当該技術分野に属する引用発明2に、
「血圧計等の計器が接続された送信器と検出された医療データを送信器から受信する受信器が在宅療養患者の家に備えられ、受信器は送信器から受信した医療データが異常データであるかを判定し、異常データである場合には電話回線を介して該異常データを医療機関に通報する装置。」
が記載されているのは、上述した「3.引用例(2)引用例2について」のとおりである。
そして、引用発明2の「異常データ」は、本願発明の「異常値」及び「第1の診断結果」と異なることはない(本願発明の「第1の診断結果」は、「異常値を含む」こと以外に特段限定はない)。引用発明2の「医療データ」、「電話回線」、「医療機関」は、本願発明の「生体情報」、「通信ネットワーク」、「医療施設」と同義な技術事項である。
そして、引用発明2の異常値を検出する構成は、実質的に医療施設における診断に供するための「診断手段」の構成といえる。

(4)引用発明1に対して相違点の構成を設けることについて
引用例1の段落37には、中央処理装置に記憶された診断結果データを通信ネットワークを通して対応する端末装置へ送信することが記載されている。そして、引用発明1のようなプログラムを内蔵した機器に対して、プログラムの更新等を行うために通信ネットワークを介してプログラムをダウンロードすることは、上述したように当該技術分野において周知な技術であるといえるから、引用発明1において中央処理装置にプログラムを記憶させておき、記憶されているプログラムを端末装置側にダウンロードできるようにプログラムを受信する受信手段を設けることは、当業者が格別困難なくなし得ることである。
また、引用発明1の端末装置において、異常値を検出して第1の診断結果として医療施設に送信することは、当該技術分野に属する引用発明2に基づいて当業者が格別困難なくなし得たものである。
してみると、引用発明1の端末装置に引用発明2及び上記周知な技術を適用して、相違点である、
「前記生体情報計測装置を制御し、これにより計測された生体情報における異常値を検出するためのプログラムを受信する受信手段と、
前記プログラムを実行することにより検出された異常値を含む第1の診断結果を前記通信ネットワークを介して出力することで前記医療施設における診断に供するための第1の診断手段」
を設けることは、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)本願発明の作用効果について
また、本願発明の作用効果は、引用発明1及び引用発明2、上記周知な技術から当業者が予測できる範囲のものであり、格別のものとすることはできない。


6.むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が上記引用発明1及び引用発明2、上記周知な技術に基いて容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について、検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-03-12 
結審通知日 2009-03-13 
審決日 2009-03-24 
出願番号 特願平8-294036
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松田 直也  
特許庁審判長 田口 英雄
特許庁審判官 菅原 浩二
飯田 清司
発明の名称 遠隔医療システムおよびこれに用いる端末装置  
代理人 堀口 浩  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ