• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200625545 審決 特許
不服20051624 審決 特許
不服200721854 審決 特許
不服200513958 審決 特許
不服200627219 審決 特許

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C07K
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 C07K
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 C07K
審判 査定不服 特37条出願の単一性 特許、登録しない。 C07K
管理番号 1196857
審判番号 不服2005-10192  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-05-30 
確定日 2009-05-08 
事件の表示 特願2001-502467「ニューロメジンBおよびソマトスタチンレセプターアゴニスト」拒絶査定不服審判事件〔平成12年12月14日国際公開、WO00/75186、平成15年 1月14日国内公表、特表2003-501443〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成12年6月5日(パリ条約による優先権主張 1999年6月4日、米国)に国際出願された出願であって、平成14年2月18日付で手続補正がなされ、平成17年2月25日付で拒絶査定がなされ、これに対して同年5月30日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同年6月29日付で特許請求の範囲について補正され、これに対して、当審より平成20年5月9日付で補正却下の決定がなされるとともに,拒絶理由が通知され,さらにこれに対して同年11月12日付で意見書が提出されるとともに,特許請求の範囲の手続補正がなされたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1?3に係る発明は,平成20年11月12日付手続補正書の特許請求の範囲1?3に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】
式(II):
【化1】


ここで、
AA1、AA2、AA3、AA4、AA5、AA6、AA7、およびAA8のそれぞれのα-窒素は、独立して、(C1-4)アルキル、(C3-4)アルケニル、(C3-4)アルキニル、または(C1-6)アルキル-C(O)-により場合により置換されていてもよく;
AA1は存在せずまたはR11、PipまたはProのD-またはL-異性体であるか、またはCpa、Dip、Nal、Pal、Phe、およびAc-Pheからなる群から選択される芳香族α-アミノ酸のD-またはL-異性体であり;
AA2はTyr、Pal、Phe、4-NO2-Phe、Trpであるか、または存在せず;
AA3はCysまたはPenのD-またはL-異性体であり;
AA4はD-Trpであり;
AA5はLys、Orn、またはシス-4-Achaであり;
AA6はCysまたはPenのD-またはL-異性体であり;
AA7はA3c、A4c、A5c、A6c、Abu、Aic、β-Ala、Gaba、Nle、Phe、Pro、Sar、Thr、Thr(Bzl)、Tyr、Valであるか、または存在せず;そして
AA8はR11、Thr、Tyr、Nalであるか、または存在しない;
R1およびR2はそれぞれ、独立して、Hであるか、または存在せず;
R5は-NR7R8であり、
ここでR7およびR8のそれぞれは、独立して、Hであり;
R11は、独立してそれぞれの場合につき、以下の式:
【化2】(略)
のD-またはL-アミノ酸であり、
ここでmおよびnのそれぞれは、独立して、1、2、または3であり、そしてpは0、1、または
2であり;
R12は、独立してそれぞれの場合につき、以下の式:
【化3】(略)
の場合により置換された部分であり;
X1はH、(C1-6)アルキル、またはArg、Leu、Gln、Lys、Tyr、His、Thr、Trp、Phe、Val、Ala、Lys、またはHisの側鎖基に対応する部分であり;
X2およびX3のそれぞれは、独立して、H、ハロゲン、(C1-12)アルキル、フェニル、フェニル-(C1-6)アルキル、であり;そして
X4はH、OH、またはNH2であり;
ただし:
少なくとも6つのアミノ酸残基が存在し;
AA3およびAA6は、ジスルフィド結合により連結されており;
式(II)の前記化合物は以下の式:
D-Phe-Tyr-シクロ(D-Cys-D-Trp-Lys-Cys)-Abu-Thr-NH2;
Ac-Phe-Tyr-シクロ(D-Cys-D-Trp-Lys-Cys)-Abu-Thr-NH2;
L-4-NO2-Phe-Tyr-シクロ(D-Cys-D-Trp-Lys-Cys)-Abu-Thr-NH2;
Ac-L-4-NO2-Phe-Tyr-シクロ(D-Cys-D-Trp-Lys-Cys)-Abu-Thr-NH2;
Hca-Tyr-シクロ(D-Cys-D-Trp-Lys-Cys)-Abu-Thr-NH2;
D-Dip-Tyr-シクロ(Cys-D-Trp-Lys-D-Cys)-Val-Nal-NH2;
D-4-NO2-Phe-Phe(4-O-Bzl)-シクロ(D-Cys-D-Trp-Lys-Cys)Cha-Nal-NH2;または
D-4-NO2-Phe-シクロ(D-Cys-Phe(4-O-Bzl)-D-Trp-Lys-Cys)-Val-Tyr-NH2ではない;
の化合物またはその医薬的に許容可能な塩。
【請求項2】
式(III):
【化4】




ここで、
AA1、AA2、AA3、AA3b、AA4、AA5、AA6、AA7、AA7b、およびAA8のそれぞれのα-窒素は、独立して、(C1-4)アルキル、(C3-4)アルケニル、(C3-4)アルキニル、または(C1-6)アルキル-C(O)-により場合により置換されていてもよく;
AA1はR11、Aic、Hca、Pro、Ser(Bzl)であるか、またはCpa、Nal、Ac-Nal、Phe、Ac-Phe、4-NO2-Phe、およびAc-4-NO2-Pheからなる群から選択される芳香族α-アミノ酸のD-またはL-異性体であり;
AA2はPal、Tyrであるか、または存在せず;
AA3はCysまたはPenのD-またはL-異性体あり;
AA3bはR11、Pal、4-Pal、Trp、Tyr、Phe(4-O-Bzl)、またはPheであり、ここでR11は(T)aegであり;
AA4はD-Trpであり;
AA5はLys、N-Me-Lys、Orn、またはシス-4-Achaであり;
AA6はCysまたはPenのD-またはL-異性体であり;
AA7はR11、A5c、Abu、Ser(Bzl)、Thr、Thr(Bzl)、Phe(4-O-Bzl)、Gabaであるか、または存在せず;
AA7bはNal、X0-Pheであるかまたは存在せず;そして
AA8はTyrであるかまたは存在しない;
R1およびR2のそれぞれは、独立して、Hであり;
R5は-NR7R8であり;
ここでR7およびR8のそれぞれは、独立して、Hであり;
R11は、独立してそれぞれの場合につき、以下の式:
【化5】(略)
のD-またはL-アミノ酸であり、
ここでmおよびnのそれぞれは、独立して、1、2、または3であり、そしてpは0、1、または
2であり;
R12は、独立してそれぞれの場合につき、以下の式:
【化6】(略)
の場合により置換された部分であり;
X1はH、(C1-6)アルキル、またはArg、Leu、Gln、Lys、Tyr、His、Thr、Trp、Phe、Val、Ala、Lys、またはHisの側鎖基に対応する部分であり;
X2およびX3のそれぞれは、独立して、H、ハロゲン、(C1-12)アルキル、フェニル、フェニル-(C1-6)アルキルであり;そして
X4はH、OH、またはNH2であり;
ただし:
少なくとも6つのアミノ酸残基が存在し;
AA3およびAA6は、ジスルフィド結合により連結されており;
式(III)の前記化合物は以下の式:
D-Phe-Tyr-シクロ(D-Cys-D-Trp-Lys-Cys)-Abu-Thr-NH2;
Ac-Phe-Tyr-シクロ(D-Cys-D-Trp-Lys-Cys)-Abu-Thr-NH2;
L-4-NO2-Phe-Tyr-シクロ(D-Cys-D-Trp-Lys-Cys)-Abu-Thr-NH2;
Ac-L-4-NO2-Phe-Tyr-シクロ(D-Cys-D-Trp-Lys-Cys)-Abu-Thr-NH2;
Hca-Tyr-シクロ(D-Cys-D-Trp-Lys-Cys)-Abu-Thr-NH2;
D-Dip-Tyr-シクロ(Cys-D-Trp-Lys-D-Cys)-Val-Nal-NH2;
D-4-NO2-Phe-Phe(4-O-Bzl)-シクロ(D-Cys-D-Trp-Lys-Cys)Cha-Nal-NH2;または
D-4-NO2-Phe-シクロ(D-Cys-Phe(4-O-Bzl)-D-Trp-Lys-Cys)-Val-Tyr-NH2ではない;
の化合物であるか、またはその医薬的に許容可能な塩。

【請求項3】
式(IV):
【化7】





ここで、
AA1はCpa、Nal、Pal、Phe、Tyrであるか、または存在せず;
AA2はPhe、Tyr、Trp、またはR11であり;
AA3はD-Trpであり;
AA4はLys、N-Me-Lys、またはシス-4-Achaであり;
AA5はPal、Phe(4-O-Bzl)、Aic、Gaba、A5cであるか、または存在せず;
AA6はThr、Nal、またはD-またはL-Pheであり;
AA7は存在せず;そして
AA8はR11である;
R1はHであり;
R11は、独立してそれぞれの場合につき、以下の式:
【化8】(略)
のD-またはL-アミノ酸であり、
ここでmおよびnのそれぞれは、独立して、1、2、または3であり、そしてpは0、1、または
2であり;
R12は、独立してそれぞれの場合につき、以下の式:
【化9】(略) の場合により置換された部分であり;
X1はH、(C1-6)アルキル、またはArg、Leu、Gln、Lys、Tyr、His、Thr、Trp、Phe、Val、Ala、Lys、またはHisの側鎖基に対応する部分であり;
X2およびX3のそれぞれは、独立して、H、ハロゲン、(C1-12)アルキル、フェニル、フェニル-(C1-6)アルキル、であり;そして
X4はH、OH、またはNH2であり;
ただし:
少なくとも6つのアミノ酸残基が存在し;
AA1とAA8は、ジスルフィド結合により連結されており;そして
AA1が存在しない場合、AA2とAA8が一緒に結合を形成する;
の化合物、またはその医薬的に許容可能な塩。」


第3 特許法第29条第2項について
1.本願の請求項2に係る発明(以下,「本願発明2」という。)について(1)引用例
本出願の優先日前に頒布された刊行物である引用例1(Biochem Biophys Res Commun 191(2) p.681-687 (1993))には、以下の記載がなされている。
(i)最近の結果は、ソマトスタチン類似体が様々な内分泌腫瘍におけるインビトロとインビボの両方の成長阻害活性を有することを示している(7,8,9)。
我々はここに、選択的な抗腫瘍活性を有するソマトスタチンアナログの開発をもたらす潜在的なD-Phe-シクロ(Cys-Tyr-D-Trp-Lys-Val-Cys)-Thr-NH2アナログ(10)の新規な誘導体の構造-活性研究の結果を報告する。(第682頁第3-11行)

(ii)「表1 新規なソマトスタチンアナログの構造
4 D-PHE-シクロ(CYS-TYR-D-TRP-LYS-CYS)-THR-NH2」(表1)

(iii)「このコードネームTT-232のユニークなアナログ(D-PHE-シクロ(CYS-TYR-D-TRP-LYS-CYS)-THR-NH2)は、最高のチロシンキナーゼ阻害活性を有していることが見いだされ、アナログ間の抗腫瘍効果を比較した際にも同様の結果が得られた。」(第686頁下から第16-12行)

(2)対比・判断
本願発明2は非常に様々な化合物に関するものであるが、その一態様として、AA1がPheであり,AA2が存在せず,AA3がCys,AA3bがTyr,AA4がD-Trp,AA5がLys,AA6がCysおよびAA7がThrの場合である「Phe-シクロ(Cys-Tyr-D-Trp-Lys-Cys)-Thr-AA7b-AA8-NH2」と示される化合物を含むものである(以下、当該化合物に係る発明を「本願発明2‘」という。)。

本願発明2‘と引用例1に記載される発明を対比すると、両者は、
「Phe-シクロ(Cys-Tyr-D-Trp-Lys-Cys)-Thr」を有する化合物に関する発明である点で一致するものであり、
本願発明2‘は、Phe-シクロ(Cys-Tyr-D-Trp-Lys-Cys)-Thr-AA7b-AA8-NH2という構造を有し、かつPheについてはD体が選択肢の一つであるのに対して、引用例1に記載された発明は、D-Phe-シクロ(Cys-Tyr-D-Trp-Lys-Cys)-Thr-NH2という構造を有する化合物である点で相違するものである。

ソマトスタチンアナログを製造することは、本出願の優先日前広く行われているところ、引用例1において抗腫瘍効果が高いことが確認されているD-PHE-シクロ(CYS-TYR-D-TRP-LYS-CYS)-THR-NH2構造を参考に、様々な類似構造を有する化合物を製造し、その活性等を確認することは、当業者が引用例1に記載された発明および周知技術に基づいて容易に想到し得るものである。特に,本願発明2’におけるAA7bとAA8のアミノ酸残基はその定義によれば,それぞれ存在しなくてもよいものであり,かつ,PheがD-Pheである場合を含むものであるから,本願発明2’は,引用例1に記載される発明をその態様として明らかに包含するものである。
本願発明2‘と類似構造を有する様々な化合物に関する発明である本願発明2についても同様に、当業者が引用例1に記載された発明および周知技術に基づいて容易に想到し得るものである。
そして,これらの様々な化合物により,上記引用例に記載された発明および周知技術から予測しえない有利な効果が奏されたということもできない。
平成17年1月27日付けで提出された手続補足書には、様々なペプチドのソマトスタチン受容体に対するKi値が記載されているものの、本願発明2はこれらの具体的な化合物以外の様々な構造を有する化合物に関するものである。加えて、上記手続補足書には引用例1に記載される化合物に非常に類似した構造を有する化合物についてもKi値が記載されており、それらの数値を参酌しても、手続補足書に具体的に示される様々な化合物についてすら、引用例1に記載された発明および周知技術から予測しえない有利な効果を奏するものであるということはできない。なお、本願は「ニューロメジンBおよびソマトスタチンレセプターアゴニスト」という表題の発明であるが、上記手続補足書においても、具体的な化合物がニューロメジンB受容体に対して結合するものであることが開示されていたともいえない。
そして,当該事項についても当審の拒絶理由通知において指摘したものの,請求人からは,意見書において何ら具体的な反論はなされていない。

2.本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)について
(1)引用例
本出願の優先日前に頒布された刊行物である引用例1に記載された事項は、上記「1.(1)」で指摘のとおりである。

(2)対比・判断
本願発明1は様々な化合物に関する発明であるが、その一態様として、AA1が存在せず,AA2がPhe,AA3がCys,AA4がD-Trp,AA5がLys,AA6がCys,AA7がThrであり,AA8が存在しない場合である「PHE-シクロ(CYS-D-TRP-LYS-CYS)-THR-NH2」と示される化合物を含むものである(以下、当該化合物に係る発明を「本願発明1‘」という。)。

本願発明1‘と引用例1に記載された発明を対比すると、両者は、
「Phe-Cys」および「D-Trp-Lys-Cys-Thr-NH2」という配列を有し,CysとCysが-S-S結合により結合した環状構造を有する化合物に関する発明である点で一致するものであり、 本願発明1‘は、「Phe-Cys」と「D-Trp-Lys-Cys-Thr-NH2」が直接結合し、かつPheについてはL体かD体かの規定はされていないのに対して、引用例1に記載された発明は、「D-Phe-Cys」と「D-Trp-Lys-Val-Cys-Thr-NH2」がTyrを介して結合している化合物である点で相違するものである。

Cys-Cys間に様々なアミノ酸数および配列を有し、環状構造を有するソマトスタチンアナログを製造することは、本出願の優先日前広く行われているところ、引用例1に抗腫瘍効果が高いことが確認されているD-PHE-シクロ(CYS-TYR-D-TRP-LYS-CYS)-THR-NH2構造を参考に、様々な類似構造を有する化合物を製造し、その活性等を確認することは、当業者が引用例1に記載された発明および周知技術に基づいて容易に想到し得るものである。
本願発明1‘と類似構造を有する様々な化合物に関する発明である本願発明1についても同様に、当業者が引用例1に記載された発明および周知技術に基づいて容易に想到し得るものである。
そして,これらの様々な化合物により,上記引用例に記載された発明および周知技術から予測しえない有利な効果が奏されたということもできない。
平成17年1月27日付けで提出された手続補足書には、様々なペプチドのソマトスタチン受容体に対するKi値が記載されているものの、本願補正発明1はこれらの具体的な化合物以外の様々な構造を有する化合物に関するものである。加えて、上記手続補足書には引用例1に記載される化合物に非常に類似した構造を有する化合物についてもKi値が記載されており、それらの数値を参酌しても、手続補足書に具体的に示される様々な化合物についてすら、引用例1に記載された発明および周知技術から予測しえない有利な効果を奏するものであるということはできない。なお、本願は「ニューロメジンBおよびソマトスタチンレセプターアゴニスト」という表題の発明であるが、上記手続補足書においても、具体的な化合物がニューロメジンB受容体に対して結合するものであることが開示されていたともいえない。
そして,当該事項についても当審の拒絶理由通知において指摘したものの,請求人からは,意見書において何ら具体的な反論はなされていない。

3.本願の請求項3に係る発明(以下,「本願発明3」という。)について
(1)引用例
本出願の優先日前に頒布された刊行物である引用例2(特表昭60-501505号公報)には、「ソマトスタチン拮抗作用を示す環式ペンタペプチド及びこのものによる哺乳動物の処置」との表題の下、以下の記載がなされている。
(i)「次のテトラデカペプチド配列 H-Ala-Gly-Cys-Lys-Asn-Phe-Phe-Try(Trpの誤記であると認められる)-Lys-Thr-Phe-Thr-Ser-Cys-OHを有する哺乳動物のソマトスタチンは下垂体からの生長ホルモンならびに膵入口細胞からのインシュリンおよびグルカゴンの放出を抑制する。」(公報第3頁左上欄第8-13行)

(ii)「従って、哺乳動物において生長ホルモン、インシュリン及びグルカゴンの放出を増加させるに有効な新規なソマトスタチン拮抗剤を提供することが本発明の目的である。
驚くべきことに、この目的はシクロ[Pro-Phe-D-Trp-Lys-Thr(Bzl)]、および誘導体ならびにその製薬上許容し得る塩を合成することにより達成された。」(公報第3頁右上欄第7-12行)

(2)対比・判断
本願発明3は様々な化合物に関する発明であるが、その一態様として、AA1がPhe,AA2がPhe,AA3がD-Trp,AA4がLys,AA6がThrであり,AA5とAA7が存在しない場合である「シクロ(PHE-PHE-D-TRP-LYS-THR-AA8)」と示される化合物を含むものである(以下、当該化合物に係る発明を「本願発明3‘」という。)。

本願発明3‘と引用例2に記載された発明を対比すると、両者は、
「Phe-D-Trp-Lys-Thr」という配列を有する化合物に関する発明である点で一致するものであり、
本願発明3‘は、当該配列のN末端にPheが結合し、C末端にAA8が結合し、N末端のPheとAA8で環状形成しているのに対して、引用例2に記載された発明は、当該配列のN末端にProが結合し、ThrにBzl基が結合し、ProとThr(Bzl)で環状形成しているものである点で相違する。

ソマトスタチンの配列に基づいて、様々な環状構造を有するソマトスタチンアナログを製造することは、本出願の優先日前広く行われているところ、引用例2においてソマトスタチン拮抗作用が確認されているアミノ酸配列を参考に、様々な類似構造を有する化合物を製造し、その活性等を確認することは、当業者が引用例2に記載された発明および周知技術に基づいて容易に想到し得るものである。特に、「PHE-PHE-TRP-LYS-THR」という配列は、天然のソマトスタチンの部分配列であり、引用例2のProに換えてPheを結合させてC末端側の残基と環を形成させることに格別の困難性を見いだすことはできない。
本願発明3‘と類似構造を有する様々な化合物に関する発明である本願発明3についても同様に、当業者が引用例2に記載された発明および周知技術に基づいて容易に想到し得るものである。
そして,これらの様々な化合物により,上記引用例に記載された発明および周知技術から予測しえない有利な効果が奏されたということもできない。
平成17年1月27日付けで提出された手続補足書に記載されるペプチドのうちで、本願発明3に包含されるものは、c(Phe-Phe-D-Trp-Lys-Thr-(T)aeg)のみであり、本願発明3はこれ以外の様々な構造を有する化合物に関するものである。手続補足書をみても、当該化合物に関するKi値が引用例2に記載された発明および周知技術から予測しえない有利な効果を奏するものであるということはできず、さらに請求項5に包含される様々な化合物について、引用例2に記載された発明および周知技術から予測しえない有利な効果が奏されたとはいえない。なお、本願は「ニューロメジンBおよびソマトスタチンレセプターアゴニスト」という表題の発明であるが、上記手続補足書においても、具体的な化合物がニューロメジンB受容体に対して結合するものであることが開示されていたともいえない。
そして,当該事項についても当審の拒絶理由通知において指摘したものの,請求人からは,意見書において何ら具体的な反論はなされていない。

4.小括
以上のとおりであるから、本願発明1および2は、引用例1に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易になしえたものである。また、本願発明3は、引用例2に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易になしえたものである。


第3 特許法第36条第4項,特許法第36条第6項第1号の要件について
請求項1に記載される化合物は、AA3-AA4-AA5-AA6との環状ペプチド部分においてもCWKC以外の配列を包含するものであり,さらに当該部分以外のたとえばAA1、AA2、AA7,AA8等において非常に様々な配列を有するものである。
本願の発明の詳細な説明には、CWKCという部分構造を有する化合物は必ずソマトスタチン受容体に結合するものであることが開示されていたとは認められず、仮に平成17年1月27日付けで提出された手続補足書から、CWKCという部分を有する化合物はソマトスタチン受容体と結合する可能性が示唆されたとしても、そのような短鎖ペプチドの周囲に様々なアミノ酸残基が結合することによって、受容体の結合領域とCWKCという部分が十分に結合しえないことは当然考えられる。したがって,CWKCという配列を有していればソマトスタチン受容体に結合するものであるとはいえない。 ましてや請求項1は,上記手続補足書で記載される具体的な化合物以外を包含するものであるから,これらの化合物について,発明の詳細な説明に加え、手続補足書の記載を参酌しても、これらの化合物がどのような機能を有するものかは不明である。
すると、請求項1に記載される様々な化合物がどのような機能を有するものであるか不明であり、これらの化合物を使用できる程度に、技術的に意味のある特定の用途が開示されていたとはいえない。
したがって、本願の請求項1に係る発明ついて、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に発明の詳細な説明に記載されていない。
本願の請求項2および請求項3に係る発明についても同様に,当業者が実施できる程度に明確かつ十分に発明の詳細な説明に記載されていない。

また、同様の理由により、本願の請求項1?3に係る発明は,発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えているものであるから,発明の詳細な説明に記載されたものでもない。


第4 特許法第36条第6項第2号について
本願の請求項1?3に係る発明は、様々な表記で示されるアミノ酸以外の残基をその骨格とするものであるが、発明の詳細な説明にはそれらの表記について具体的な定義がなされておらず、これらの請求項に記載される化合物が具体的にいかなるものであるか不明である。
なお,当該不明な点に関しては,当審の拒絶理由において,「これらの表記が本出願時の技術常識である場合には、意見書等にそのことを示す一般文献等を添付することにより説明されたい。」と指摘したものの,請求人からは具体的な反論は何らなされていない。
以上のとおりであるから,本願は特許法第36条第6項第2号の規定を満たすものではない。


第5 特許法第37条について
本願の請求項1,2および3に係る発明は,環状構造を有するソマトスタチンアナログであるという点でのみ共通するものである。
そして,本願優先日前に,上記「第2 1.2.」で指摘のとおり,環状構造を有するマトスタチンアナログは知られており,また,ソマトスタチン受容体とニューロメジン受容体に結合する化合物も知られていた以上(要すれば、Mol Pharmacol、44(4) p.841-850 (1993)参照),これらの各請求項に係る発明は,いずれを特定発明としても,出願日前に未解決であった課題を共通とするものでも、解決しようとする課題に対応する新規な事項を共通とするものでもない
よって、本願は特許法第37条のいずれの規定を満たすものでもない。

第6 付記
請求人は平成20年11月12日付意見書において,「今回の拒絶理由通知が最初の拒絶理由通知であることから,今回提出する手続補正書の内容には特許法第17条の2第4項および第5項に規定される補正の制限は適用されないことに鑑み,平成17年6月29日付手続補正書の内容に基づいて,補正却下の理由として提示された特許法第29条第2項および第36条第4項に関する独立特許要件の判断を拒絶理由通知の内容とみなして,平成17年6月29日付手続補正書との関係で手続補正書および本意見書を作成いたします。具体的には,本意見書と同時に提出する手続補正書において,平成17年6月29日付手続補正書の原請求項1,3および5を削除し,原請求項2,4,6?13をそれぞれ請求項1?10としました。」と主張する。
しかしながら,平成17年6月29日付手続補正書は,平成20年5月9日付で補正却下されており,当該却下された補正前の平成14年2月18日付手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載された請求項に係る発明について,当審は平成20年5月9日付で拒絶理由を通知している。
請求人が対応すべくは当該拒絶理由において指摘された事項であるにもかかわらず,平成17年6月29日手続補正書で補正却下の対象となった請求項に対応する請求項のみを削除するという請求人の上記対応はその趣旨が不明である。しかも,請求人は上記意見書において,当審の拒絶理由で通知された事項について,具体的な反論を何ら行っておらず,上記意見書および同日付の手続補正により,当審の拒絶理由が解消されたとはいえないことは明らかである。

また,【請求項1】の【化3】の化学構造式は,【化2】の化学構造式と同一であるが,そのような構造を有する化合物は,当初明細書等に記載されていたものではない。

第7 むすび
以上のとおりであるから,本願の請求項1?3に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり,また,本願は,特許法第37条,第36条第4項ならびに同条第6項第1号および第2号の規定を満たすものではないから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-12-10 
結審通知日 2008-12-11 
審決日 2008-12-24 
出願番号 特願2001-502467(P2001-502467)
審決分類 P 1 8・ 64- Z (C07K)
P 1 8・ 537- Z (C07K)
P 1 8・ 536- Z (C07K)
P 1 8・ 121- Z (C07K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 恵理子六笠 紀子  
特許庁審判長 種村 慈樹
特許庁審判官 鵜飼 健
光本 美奈子
発明の名称 ニューロメジンBおよびソマトスタチンレセプターアゴニスト  
代理人 千葉 昭男  
代理人 富田 博行  
代理人 深澤 憲広  
代理人 社本 一夫  
代理人 増井 忠弐  
代理人 小林 泰  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ