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審決分類 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 A01G
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A01G
審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 A01G
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 A01G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01G
管理番号 1196898
審判番号 不服2007-19075  
総通号数 114 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-06-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-07-06 
確定日 2009-05-07 
事件の表示 平成10年特許願第263030号「栽培作物選出・土壌改良提示方法とその装置及びそのプログラムを記録した記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 3月28日出願公開、特開2000- 83476〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成10年9月17日の出願であって、平成19年6月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年8月3日付けで手続補正がなされたものである。
その後、平成20年11月7日付けで審判請求人に前置報告書の内容を示し意見を求めるための審尋を行ったところ、平成21年1月13日付けで回答書が提出されたものである。

【2】平成19年8月3日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成19年8月3日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
[1]補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、以下のように補正された。
「栽培作物の品種毎に栽培に適する土壌条件を格納した栽培条件データベースと、前記栽培作物を栽培するための土壌の重量を計測して重量データを得る手段と、栽培しようとする作物の品種を指定する栽培作物指定手段とを備え、
栽培しようとする作物の品種が指定されていない場合には、分析データ記憶手段に記憶された土壌成分の分析結果に基づいてその土壌に適した栽培作物を好適作物選出手段によって前記栽培条件データベースから選出して出力するとともに、前記選出した作物を栽培するために適する土壌にするための土壌改良施策を前記栽培条件データベースを利用して抽出・生成し、
栽培しようとする作物の品種が指定された場合には、土壌改良施策抽出手段によって土壌成分の分析結果及び前記土壌の重量データと指定された作物の品種とに基づいて指定された作物を栽培するために適する土壌にするための肥料種類及び量を求め、土壌改良施策を前記栽培条件データベースを利用して抽出・生成することを特徴とする栽培作物選出・土壌改良提示方法。」

[2]判断
本件補正後の請求項1における「前記栽培作物を栽培するための土壌の重量を計測して重量データを得る手段」、「前記土壌の重量データ」、「(肥料)量」という記載は、土壌の重量に関する構成であるが、本件補正前の請求項1には、土壌の重量に関する構成についての記載も、土壌の重量を含むような上位概念についての記載もなく、土壌の重量に基づいて肥料量を求めることについての記載もないから、本件補正は、特許請求の範囲の変更に該当し、特許法第17条の2第4項に掲げる何れの事項(請求項の削除、特許請求の範囲の限定的減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明)にも該当しない。

[3]むすび
したがって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

【3】本願発明について
平成19年8月3日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年1月4日付けの手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

(本願発明)
「栽培作物の品種毎に栽培に適する土壌条件を格納した栽培条件データベースと、栽培しようとする作物の品種を指定する栽培作物指定手段とを備え、
栽培しようとする作物の品種が指定されていない場合には、分析データ記憶手段に記憶された土壌成分の分析結果に基づいてその土壌に適した栽培作物を前記栽培条件データベースから選出して出力するとともに、前記選出した作物を栽培するために適する土壌にするための土壌改良施策を前記栽培条件データベースを利用して抽出・生成し、
栽培しようとする作物の品種が指定された場合には、土壌成分の分析結果と指定された作物の品種とに基づいて指定された作物を栽培するために適する土壌にするための土壌改良施策を前記栽培条件データベースを利用して抽出・生成することを特徴とする栽培作物選出・土壌改良提示方法。」

[1]引用刊行物

刊行物:特開平9-178735号公報

原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された上記刊行物には、図面とともに、以下のことが記載されている。

(ア)
「【発明の属する技術分野】本発明は、農業などの分野で用いられる土壌の分析・診断システムに係り、特に、土壌中の可給態成分(養分)を自動的に抽出・濾過し、各種の可給態成分を分析し、土壌の実態に合わせた施肥管理を行うため、土壌の受付登録から可給態成分の取り出し、分析、分析結果の整理、及び、施肥設計までの各部を有機的に結合した土壌の分析・診断システムに関するものである。」(段落【0001】)

(イ)
「【従来の技術】土壌中の可給態成分を分析し、適正な施肥を行うことは、限られた耕作面積の中で安定して安全な農作物を最大限に収穫することからも重要である。従来、この土壌分析における分析項目としては、CaO(石灰)、MgO(苦土)、K_(2)O(カリ)、P_(2)O_(5)(リン酸)、NO_(3)-N(亜硝酸窒素)、NH_(4)-N(アンモニア窒素)などの可給態成分や、Cu(銅)、Zn(亜鉛)、Fe(鉄)、Mn(マンガン)、Ni(ニッケル)、Cd(カドミウム)などの微量元素があり、さらに、pH(水素イオン濃度)、EC(電気伝導度)の測定がある。
図2にこの作業工程のブロック図を示す。土壌の受付登録を行う受付工程11と、土壌中の可給態成分を取り出す前処理工程12と、可給態成分を分析する分析工程13と、分析結果を受付検体ごとに、土性、作物、などを考慮して実施する診断・施肥設計工程14よりなっている。受付工程11では、受付日付、分析すべき項目、土壌の種類、対象作物などを明らかにしておく(受付登録15)。前処理工程12では、受け付けた畑、水田などの土壌を乾燥(16)し、土壌中の成分の均一化と微細化及び木屑、岩石などを除去する粉砕・分級(17)を行う。また、この検体を各分析項目に対応して規定の量を計量(18)し、規定の抽出液を規定量添加し、可給態成分を土壌から分離する。即ち、可給態成分を抽出するため土壌と抽出液を混合して振とう(19)し、濾過(20)を行い、土壌と抽出液を分離する。分析工程13では、原子吸光光度計や分光光度計などの分析装置群A(21)にて、抽出液中の各成分の濃度を求める。なお、pH、ECは、土壌が混合している状態で分析装置群B(22)のpH計、EC計で分析する。診断・施肥設計工程14では、受付した土壌ごとに土壌成分の適正域を作物ごと、栽培立地ごとに登録した診断基準データや、資材名と成分含有率を苦土、リン酸、加里、石灰に分類して登録した土壌改良資材データなどに照らし合わせ、受付した土壌について、その分析結果より診断・施肥設計23を行っている。なお、これら一連の作業内容の中で、土壌中の可給態成分の分析結果から、その過不足を判断し土壌に加える肥料の量を決定する作業について、特開平3-273162号公報には、この作業時間を短縮するため、分析結果より土壌などの所定の成分の最適値などを保持しているデータベースと比較し、診断することが記載されている。」(段落【0002】,【0003】)

(ウ)
「分析・診断しようとする複数の土壌について、受付番号、受付日付、氏名、圃場名、住所、作物名、土性、分析項目等を入力あるいは選択し、受付登録作業を受付登録用端末装置1にて行う。その時、分析項目に対応した前処理作業をまとめて行う検体を明らかにするデータを同時に作る。
前処理の最初の作業は土壌を乾燥し、土壌中の成分の微細化のため粉砕し、以降の計量から濾過までの作業を自動的に行うため、清浄化した所定の容器に入れる。土壌の計量、可給態成分の抽出作業は分析対象成分の違いにより土壌の量や抽出液の種類、抽出液量が異なるため容器にいれた土壌を前処理法の違いによりいくつかに取り分ける。例えば、CaO、MgO、K_(2)Oの可給態成分分析は同一の前処理方法であり、容器にいれた土壌を1g取り出し、抽出液として酢酸アンモニウムを使い10ml入れるという条件であり、一つの前処理群として扱う。」(段落【0013】,【0014】)

(エ)
「前処理が終了すると、前処理用端末装置2に完了情報を入力し、通信網10を介して分析用端末装置4で分析可能な前処理群を選択し、必要な分析計を分析装置類6より選択する。たとえば、前記したCaO、MgO、K_(2)Oの可給態成分分析であれば分析装置類6の中の自動化学分析装置を、Cu、Zn、Feなどの微量元素であれば原子吸光光度計を、pHであればpH計を、ECであればEC計を選択し、分析装置類6の各種分析計に付属して設置したオートハンドラー5に試料液の入った濾過用容器24bをセットする。その後、自動的に分析し、その分析結果を分析装置類6と接続した分析用端末装置4にて、前記データベース8に記録した土壌の計量値および抽出液の実測データを通信網10を介して取り出し、分析成分の濃度を計算する。分析後、この結果を通信網10を介してデータベース8内に記録する。
診断・施肥設計作業は全ての分析項目が終了している土壌を診断用端末装置7にて確認し、その土壌についての分析用端末装置4から診断用端末装置7に送られた分析結果データと、診断用端末装置7に接続保存されている作物、栽培立地ごとに登録された診断基準データや土壌改良資材データなどのデータベース8をもとにして行う。例えば、分析値が診断基準データから分析成分の目標値に達していない成分について、リン酸の改善を行ってから石灰、苦土、加里の必要量を自動的に計算する。そして、受付・登録用端末装置1で受付した項目と、診断・施肥設計結果を診断用端末装置7の画面に集約して表示および出力装置9にて出力する。」(段落【0017】,【0018】)

上記記載事項(ア)?(エ)及び図面の記載並びに当業者の技術常識によれば、刊行物には、以下の発明が記載されていると認められる。

「受付した土壌ごとに土壌成分の適正域を作物ごと、栽培立地ごとに登録した診断基準データや、資材名と成分含有率を苦土、リン酸、加里、石灰に分類して登録した土壌改良資材データなどを格納したデータベース8と、対象作物名などを入力する受付登録用端末装置1とを備え、
土壌中の可給態成分の分析結果と対象作物とに基づいて対象作物を栽培するために適する土壌にするための診断・施肥設計を前記データベース8を利用して行う診断・施肥設計結果の表示方法。」(以下、「刊行物記載の発明」という。)

[2]対比
本願発明と刊行物記載の発明とを対比すると、その機能及び作用からみて、刊行物記載の発明の「対象作物名などを入力する受付登録用端末装置1」、「土壌中の可給態成分の分析結果」、「対象作物」、「診断・施肥設計」、「診断・施肥設計結果の表示方法」は、それぞれ、本願発明の「栽培しようとする作物の品種を指定する栽培作物指定手段」、「土壌成分の分析結果」、「指定された作物(の品種)」、「土壌改良施策」、「土壌改良提示方法」に相当する。
また、刊行物記載の発明の「受付した土壌ごとに土壌成分の適正域を作物ごと、栽培立地ごとに登録した診断基準データや、資材名と成分含有率を苦土、リン酸、加里、石灰に分類して登録した土壌改良資材データなどを格納したデータベース8」は、土壌成分とそれに適した作物との対応関係をデータベース化したものであるので、本願発明の「栽培作物の品種毎に栽培に適する土壌条件を格納した栽培条件データベース」に相当する。

そうすると、両者は、
「栽培作物の品種毎に栽培に適する土壌条件を格納した栽培条件データベースと、栽培しようとする作物の品種を指定する栽培作物指定手段とを備え、
栽培しようとする作物の品種が指定された場合には、土壌成分の分析結果と指定された作物の品種とに基づいて指定された作物を栽培するために適する土壌にするための土壌改良施策を前記栽培条件データベースを利用して抽出・生成する土壌改良提示方法。」である点で一致し、次の点で相違している。

〈相違点〉
本願発明が、「栽培しようとする作物の品種が指定されていない場合には、分析データ記憶手段に記憶された土壌成分の分析結果に基づいてその土壌に適した栽培作物を前記栽培条件データベースから選出して出力するとともに、前記選出した作物を栽培するために適する土壌にするための土壌改良施策を前記栽培条件データベースを利用して抽出・生成」する「栽培作物選出・土壌改良提示方法」であるのに対し、刊行物記載の発明では、このような構成を有していない「土壌改良提示方法」である点。

[3]判断
上記相違点について検討する。
一般に、ある土壌で作物を栽培しようとする場合、その土壌に適した栽培作物を選択することは、きわめて普通に行われていることである。
そして、刊行物記載の発明は、指定された作物の栽培に適した土壌成分にするための土壌改良施策を、データベースを利用して抽出するものであり、該データベースにおいて栽培作物と土壌成分との対応関係が明らかである以上、該データベースを利用して、指定された作物の栽培に適した土壌成分にするための土壌改良施策を抽出するほかに、受付した土壌についての分析された土壌成分のデータに基づいてその土壌に適した特定の栽培作物を選出することは、当業者であれば容易に想到し得るものである。
その際に、選出した作物を育成するにはどのような栄養素が必要かを割り出すなど、さらに最適な土壌とするために、選出した作物の栽培に適した土壌改良施策をも抽出・生成することは、当業者であれば当然考慮し得る事項にすぎない。
してみると、刊行物記載の発明において、上記相違点に係る構成を採用して、本願発明のように構成することは、当業者ならば容易に想到し得るものであり、格別の顕著性はない。

そして、本願発明の効果も、刊行物記載の発明から当業者が予測し得る範囲のものであって格別なものということができない。

[4]むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-03-09 
結審通知日 2009-03-10 
審決日 2009-03-24 
出願番号 特願平10-263030
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01G)
P 1 8・ 571- Z (A01G)
P 1 8・ 573- Z (A01G)
P 1 8・ 574- Z (A01G)
P 1 8・ 572- Z (A01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 昌哉  
特許庁審判長 石川 好文
特許庁審判官 草野 顕子
山口 由木
発明の名称 栽培作物選出・土壌改良提示方法とその装置及びそのプログラムを記録した記録媒体  
代理人 井上 浩  
代理人 井上 浩  

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