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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65G 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65G |
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管理番号 | 1196917 |
審判番号 | 不服2008-1844 |
総通号数 | 114 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-06-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-01-24 |
確定日 | 2009-05-07 |
事件の表示 | 平成11年特許願第296415号「基板処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年12月12日出願公開、特開2000-344342〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件出願は、平成11年10月19日(優先権主張 平成11年3月26日)の特許出願であって、同18年8月28日付けで拒絶の理由が通知され、その指定期間内の同18年10月23日に意見書の提出とともに明細書について手続補正がされ、その後、同19年3月27日付けで最後の拒絶の理由が通知され、その指定期間内の同19年5月21日に意見書の提出とともに明細書について手続補正がされたが、同19年12月17日付けで、前記同19年5月21日付けの手続補正を却下するとともに拒絶をすべき旨の査定がされた。 これに対して、同20年1月24日に本件審判の請求がされ、同20年2月15日付けで明細書について再度手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。 第2 本件補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1 補正の内容の概要 本件補正は、特許請求の範囲について補正をするとともにそれに関連して発明の詳細な説明の一部を補正するものであって、補正前後の請求項1の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。 (1)補正前の請求項1(平成18年10月23日付け手続補正書参照) 「【請求項1】 基板を搬送し、当該基板に所定の処理を行う基板処理装置であって、 基板を搬送する搬送手段と、 基板に前記所定の処理を行う処理部と、 前記搬送手段の動作条件を示すレシピを記憶する記憶部と、 前記搬送手段の動作を制御する制御手段と、 を備え、 前記制御手段は、前記搬送手段が前記レシピに基づく動作を行う場合には前記レシピに記述された個別的動作速度を、前記搬送手段が前記レシピに基づくものではない動作を行う場合には前記搬送手段について予め付与された基準動作速度を、前記搬送手段の動作速度として選択し、当該動作速度にて前記搬送手段が動作するように前記搬送手段を制御することを特徴とする基板処理装置。」 (2)補正後の請求項1 「【請求項1】 基板を搬送し、当該基板に所定の処理を行う基板処理装置であって、 処理液を貯留し、基板を当該処理液中に浸漬することによって浸漬処理を行う処理槽と、 前記処理槽に対して基板を昇降させることによって当該基板を前記処理液中に浸漬しまたは前記処理液から離脱させるリフターと、 前記リフターの動作条件を示すレシピを記憶する記憶部と、 前記リフターの動作を制御する制御手段と、 を備え、 前記制御手段は、前記リフターが薬液中に基板を浸漬させるために降下を行う場合には前記レシピに記述された個別的動作速度を、前記リフターが所定の待機位置まで待避する動作を行う場合には前記リフターについて予め付与された基準動作速度を、前記リフターの動作速度として選択し、当該動作速度にて前記リフターが動作するように前記リフターを制御することを特徴とする基板処理装置。」 2 補正の適否 上記特許請求の範囲についての補正は、処理部が「処理液を貯留し、基板を当該処理液中に浸漬することによって浸漬処理を行う処理槽」であり、搬送手段が「前記処理槽に対して基板を昇降させることによって当該基板を前記処理液中に浸漬しまたは前記処理液から離脱させるリフター」であることを限定し、「搬送手段が前記レシピに基づく動作を行う場合」が「リフターが薬液中に基板を浸漬させるために降下を行う場合」であり、「搬送手段が前記レシピに基づくものではない動作」が「前記リフターが所定の待機位置まで待避する動作」であることを限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とすることが明らかである。 そこで、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、本件補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、前記1(2)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められる。 (2)引用刊行物 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平6-163492号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。 ア 刊行物1の記載内容 (ア)段落【0001】?【0002】 「【産業上の利用分野】本発明は、半導体製造分野で使用するシリコンウェーハを対象としたウェーハの湿式自動洗浄システムに関する。 【従来の技術】頭記したウェーハの湿式自動洗浄システムとして、多槽浸漬式のウエットステーションが知られている。この多槽浸漬式のウエットステーションは、ウェーハ洗浄処理工程に対応して交互に並ぶ薬液槽, 純水槽と、これら洗浄槽の配列に沿ってウェーハを槽間搬送する搬送ロボット(水平,上下の二軸直角座標形ロボット)と、搬送ロボットの制御部との組合わせからなり、前段の処理工程から搬入されたウェーハを指定の洗浄プロセスフローにしたがって槽間搬送しながら洗浄処理するものであり、その代表的な洗浄方法としてRCA洗浄法がある。」 (イ)段落【0010】?【0011】 「【実施例】以下本発明の実施例を図1,図2に基づいて説明する。まず、図1において、1はウエットステーションのローダ部、2はアンローダ部であり、ローダ部1とアンローダ部2との間には、ローダ部側から順にアンモニア薬液槽3,純水槽4,フッ酸薬液槽5,純水槽6,硫酸薬液槽7,純水槽8,乾燥槽9が一列に並んで配備されている。また、これら洗浄槽の配列に沿ってその上方には搬送ロボット10が装備されている。この搬送ロボット10はウェーハ11,ないしウェーハを収容したキャリアを把持するメカニカルハンド10aを搭載しており、各洗浄槽の並ぶ方向に沿って移動しつつ、メカニカルハンド10を昇降操作してウェーハ11の槽間搬送を行う直角座標形ロボットであり、制御部12からの指令に基づいて洗浄プロセスを遂行するようにウェーハの槽間搬送を行う。 また、図2は前記制御部12の構成を表す図であり、シーケンサ13,位置決めモジュール14,サーボアンプ15,およびシーケンサ13に対して洗浄プロセスフローのパターン,槽間の各搬送ポジションにおける移動速度などのプログラムデータの入力,並びに運転指令などを与える操作盤(コンピュータ)16などから構成されている。」 (ウ)段落【0012】?【0013】 「かかる構成で、前段の処理行程からウエットステーションに搬入されたウェーハ11はローダ部1で搬送ロボット10に移載され、続いて指定された洗浄プロセスフローにしたがって図示矢印で表すようにウェーハを薬液槽,純水槽に交互に浸漬するように槽間搬送して洗浄処理を行った後、乾燥行程を経てアンローダ部2に送出される。ここで、槽間搬送の各搬送ポジションに対して図中に表示した矢印のうち、実線矢印は標準速度V_(S) 、点線矢印は高速度V_(H) 、鎖線矢印は低速度V_(L )によるウェーハの搬送行程を表しており、この搬送パターンにしたがって搬送ロボット10が運転制御される。すなわち、フッ酸薬液槽5から次の純水槽6へ槽間搬送するポジションでは、ウェーハ搬送速度が標準速度V_(S) に比べて速い高速度V_(H) に設定されており、また純水槽4,あるいは6から硫酸薬液槽7への槽間搬送ポジションでは、純水槽4,6からのウェーハ引上げ速度が低速度V_(L) に設定されている。 なお、前記の速度設定データはあらかじめ操作盤16からシーケンサ13に入力して格納されており、ウェーハの洗浄処理ごとに指定された洗浄プロセスフローと組み合わせて位置決めモジュール14に与えられ、このデータに基づいてロボット10が運転制御される。」 イ 引用発明 上記摘記事項(ウ)からみて、刊行物1において、標準速度、低速度、高速度等の速度設定データを記憶する記憶部を備えることは自明である。 そこで、これらの記載事項を技術常識を勘案しながら本件補正発明に照らして整理すると、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「ウェーハを搬送し、当該ウェーハに所定の処理を行うウェーハの湿式自動洗浄システムであって、 薬液又は純水を貯留し、ウェーハを当該薬液又は純水中に浸漬することによって浸漬処理を行う薬液槽又は純水槽と、 前記薬液槽又は純水槽に対してウェーハを昇降させることによって当該ウェーハを前記薬液又は純水中に浸漬しまたは前記薬液又は純水から離脱させる搬送ロボット10と、 前記搬送ロボット10の速度設定データを記憶する記憶部と、 前記搬送ロボット10の動作を制御する制御部12と、 を備え、 前記制御部12は、フッ酸薬液槽5から次の純水槽6へ槽間搬送するポジションでは、ウェーハ搬送速度が標準速度V_(S) に比べて速い高速度V_(H) を、また純水槽4あるいは6から硫酸薬液槽7へ槽間搬送するポジションでは、純水槽4,6からのウェーハ引上げ速度が低速度V_(L)を、前記搬送ロボット10の動作速度として選択し、当該動作速度にて前記搬送ロボット10が動作するように前記搬送ロボット10を制御するウェーハの湿式自動洗浄システム。」 (3)対比 本件補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「ウェーハ」は、本件補正発明にの「基板」に相当し、以下同様に「薬液又は純水」は「処理液」に、「薬液槽又は純水槽」は「処理槽」に、「搬送ロボット10」は「リフター」に、「制御部12」は「制御手段」にそれぞれ相当することが明らかである。 そして、引用発明における「搬送ロボット10の速度設定データを記憶する」ことは、リフターの動作条件を記憶するという限りで本件補正発明における「リフターの動作条件を示すレシピを記憶する」ことと共通している。 また、引用発明における「フッ酸薬液槽5から次の純水槽6へ槽間搬送するポジションでは、ウェーハ搬送速度が標準速度V_(S) に比べて速い高速度V_(H) を、また純水槽4あるいは6から硫酸薬液槽7へ槽間搬送するポジションでは、純水槽4,6からのウェーハ引上げ速度が低速度V_(L)を、前記搬送ロボット10の動作速度として選択」することは、リフターの動作に対応した動作速度をリフターの動作速度として選択するという限りで、本件補正発明における「前記リフターが薬液中に基板を浸漬させるために降下を行う場合には前記レシピに記述された個別的動作速度を、前記リフターが所定の待機位置まで待避する動作を行う場合には前記リフターについて予め付与された基準動作速度を、前記リフターの動作速度として選択」することと共通している。 したがって、両者の一致点及び相違点は、次のとおりと認められる。 [一致点] 「基板を搬送し、当該基板に所定の処理を行う基板処理装置であって、 処理液を貯留し、基板を当該処理液中に浸漬することによって浸漬処理を行う処理槽と、 前記処理槽に対して基板を昇降させることによって当該基板を前記処理液中に浸漬しまたは前記処理液から離脱させるリフターと、 前記リフターの動作条件を記憶する記憶部と、 前記リフターの動作を制御する制御手段と、 を備え、 前記制御手段は、前記リフターの動作に対応した動作速度をリフターの動作速度として選択し、当該動作速度にて前記リフターが動作するように前記リフターを制御することを特徴とする基板処理装置。」である点。 [相違点] 本件補正発明では、記憶部が、リフターの動作条件を示すレシピを記憶し、前記リフターが薬液中に基板を浸漬させるために降下を行う場合には前記レシピに記述された個別的動作速度を、前記リフターが所定の待機位置まで待避する動作を行う場合には前記リフターについて予め付与された基準動作速度を、前記リフターの動作速度として選択するのに対して、引用発明では、そのように特定されていない点。 (4)相違点についての検討 基板に対して処理を行うに当たり、基板搬送手段の動作条件を示すレシピを記憶して、記憶したレシピに基づいて基板搬送手段の制御を行うことは、原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-199960号公報にも記載されているように従来周知の事項にすぎない。 刊行物1においても、搬送ロボットは指定されたプロセスフローに従って運転制御されるものであり、引用発明においてリフターの動作条件を示すレシピを記憶することに格別困難性はない。 また、引用発明において、制御部12は、フッ酸薬液槽5から次の純水槽6へ槽間搬送するポジションでは、ウェーハ搬送速度が標準速度V_(S )に比べて速い高速度V_(H )を搬送ロボット10の動作速度として選択している。すなわち、リフターが処理液中に基板を浸漬させるために降下を行う場合には、記憶された所定の速度を動作速度として選択している。そして、基板に対して処理を行うに当たり、基板搬送手段の動作条件を示すレシピを記憶して、記憶したレシピに基づいて基板搬送手段の制御を行うことは上記のとおり従来周知の事項にすぎず、薬液中に基板を浸漬させるために降下を行う場合にレシピに記述された個別的動作速度を選択することは当業者が容易になし得たことである。 さらに、引用発明においても、所定の待機位置を有することは自明であり、待避動作は基板の処理に直接関係するものではないから、リフターが所定の待機位置まで待避する動作を行う場合に、前記リフターについて予め付与された基準動作速度を選択することも当業者が必要に応じて適宜設定することのできた事項にすぎない。 本件補正発明の作用効果についてみても、引用発明及び上記従来周知の事項から当業者であれば十分予測できる範囲内のものであって格別顕著なものとはいえない。 したがって、本件補正発明は、引用発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成20年2月15日付けの補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1乃至3に係る発明は、平成18年10月23日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2の1(1)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められる。 2 引用刊行物 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載内容は、前記第2の2(2)に示したとおりである。 3 対比・検討 本願発明は、前記第2の2で検討した本件補正発明から前記限定事項を削除したものである。 そうすると、本願発明を特定する事項の全てを含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が前記第2の2(4)で示したとおり、引用発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、本件出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく本件出願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-03-03 |
結審通知日 | 2009-03-10 |
審決日 | 2009-03-25 |
出願番号 | 特願平11-296415 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B65G)
P 1 8・ 121- Z (B65G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 植村 森平、八木 誠 |
特許庁審判長 |
前田 幸雄 |
特許庁審判官 |
佐々木 一浩 鈴木 孝幸 |
発明の名称 | 基板処理装置 |
代理人 | 有田 貴弘 |
代理人 | 吉竹 英俊 |