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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B |
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管理番号 | 1196920 |
審判番号 | 不服2008-6108 |
総通号数 | 114 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-06-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-03-12 |
確定日 | 2009-05-07 |
事件の表示 | 平成10年特許願第 32408号「染料系偏光板」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 8月10日出願公開、特開平11-218611〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯及び本願発明 本願は、平成10年1月30日の出願であって、平成19年12月27日付けで手続補正がなされ、平成20年2月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成20年3月12日に審判請求がなされるとともに、平成20年4月9日付けで手続補正がなされたものである。 本願の特許請求の範囲の請求項1乃至3に係る発明は、平成20年4月9日付けの手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その請求項1乃至3に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項2に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。 なお、請求項2では、「上記化合物群1から少なくとも2種、…」と記載されているが、「上記」とは、請求項1の記載を指すことは明らかであり、また、引用例記載事項との対比の便から、以下のとおり、請求項1の記載をそのまま引用して認定した。 「遊離酸の形で下記式(化合物群1) 【化1】 (式中、Aはメチル基を持つこともあるベンゼン環を、Rはアミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基又はフェニルアミノ基をそれぞれ表す。)で表される染料又はその銅錯塩染料(化合物群1)から少なくとも2種、及び該化合物群の吸収波長領域と異なる吸収特性を有する他の有機染料を少なくとも1種類以上有することを特徴とする染料系偏光膜。」 【補正の目的】 平成20年4月9日付けの補正は、その補正前の請求項2の「化合物群1」において、「(HO_(3)S)_(1?2)?A?」(その補正前の請求項1参照)を「(HO_(3)S)_(1?2)?A?N=N?」と補正し、また「化合物及びその塩又はその銅錯塩化合物」(その補正前の請求項1参照)を「染料又はその銅錯塩染料」と補正をするものであって、この補正は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第3号の誤記の訂正を目的とするものに該当する。 2.引用例 これに対して、原査定の拒絶理由に引用された特開平3-12606号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。 水溶性アゾ染料及びこれを含有する偏光膜に関するもので、 記載事項ア.特許請求の範囲 「1.遊離酸として式(1) 〔式(1)においてAはメチル基を持つこともあるベンゼン環又はナフタリン環を、Rはアミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基又はフェニルアミノ基をそれぞれ表す。〕で表される水溶性染料またはこの銅錯塩染料 2.特許請求の範囲第1項記載の式(1)の水溶性染料またはこの銅錯塩染料を含有する偏光膜」 記載事項イ.3頁左下欄16行?同右下欄5行 「式(1)で表される水溶性染料又はその銅錯塩染料は単独で又はそれら同志で混合して使用することが出来る他、更にはこれらの染料と他の染料と配合することにより種々の色相に染色された高偏光率の偏光膜を製造する事ができる。特に多用されるグレー又はブラック用の配合成分として式(1)で表される水溶性染料又はその銅錯塩染料を使用した場合すぐれた偏光能及び好ましい吸収特性を示す偏光膜がえられる。又その熱に対する安定性がすぐれている。」 上記ア.及びイ.の記載事項からして、引用例には、 「遊離酸として式(1) 〔式(1)においてAはメチル基を持つこともあるベンゼン環を、Rはアミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基又はフェニルアミノ基をそれぞれ表す。〕で表される水溶性染料またはこの銅錯塩染料を含有する偏光膜であって、 式(1)で表される水溶性染料又はその銅錯塩染料は単独で又はそれら同志で混合して使用し、更にはこれらの染料と他の染料と配合することにより種々の色相に染色され、特に多用されるグレー又はブラック用の配合成分として式(1)で表される水溶性染料又はその銅錯塩染料を使用した偏光膜。」 の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 3.対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (a)引用発明の対象である「水溶性染料またはこの銅錯塩染料を含有する偏光膜」は、本願発明の対象である「染料系偏光膜」に相当する。 (b)引用発明の、 「遊離酸として式(1) 〔式(1)においてAはメチル基を持つこともあるベンゼン環を、Rはアミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基又はフェニルアミノ基をそれぞれ表す。〕で表される水溶性染料またはこの銅錯塩染料」は、 本願発明の、 「遊離酸の形で下記式(化合物群1) 【化1】 (式中、Aはメチル基を持つこともあるベンゼン環を、Rはアミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基又はフェニルアミノ基をそれぞれ表す。)で表される染料又はその銅錯塩染料(化合物群1)」に相当する。 (c)引用発明は、「式(1)で表される水溶性染料又はその銅錯塩染料と他の染料と配合することにより種々の色相に染色され、特に多用されるグレー又はブラック用の配合成分として式(1)で表される水溶性染料又はその銅錯塩染料を使用した偏光膜」に関するものであるから、引用発明における「式(1)で表される水溶性染料又はその銅錯塩染料と配合される他の染料」は、式(1)で表される水溶性染料又はその銅錯塩染料の吸収波長領域と異なる吸収特性を有するものと認められる。 よって、引用発明の「式(1)で表される水溶性染料又はその銅錯塩染料と配合される他の染料」は、本願発明との対比において「化合物群1の吸収波長領域と異なる吸収特性を有する他の染料」に相当するといえる。 また、引用発明の上記他の染料は、種々の色相に染色するものであるから、少なくとも1種類以上含むものと認められる。 (a)?(c)に記載したことからして、本願発明と引用発明との両者は、 「遊離酸の形で下記式(化合物群1) 【化1】 (式中、Aはメチル基を持つこともあるベンゼン環を、Rはアミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基又はフェニルアミノ基をそれぞれ表す。)で表される染料又はその銅錯塩染料(化合物群1)、及び該化合物群の吸収波長領域と異なる吸収特性を有する他の染料を少なくとも1種類以上有する染料系偏光膜。」 である点で一致し、次の相違点が存在する。 相違点(1); 化合物群1の水溶性染料又はその銅錯塩染料について、本願発明は、少なくとも2種含むのに対して、引用例には、少なくとも2種含むことについての明確な記載がない点、 相違点(2); 化合物群1の吸収波長領域と異なる吸収特性を有する他の染料が、本願発明は有機染料であるのに対して、引用例には、他の染料が有機染料であることの記載がない点。 4.当審の判断 上記相違点(1)、(2)について検討する。 相違点(1)について; 引用発明は、化合物群1の水溶性染料又はその銅錯塩染料はそれら同志で混合して使用するのであるから、化合物群1の水溶性染料又はその銅錯塩染料を少なくとも2種含むようにすることは、当業者が容易になし得ることであり、相違点(1)に係る本願発明の発明特定事項は格別のことではない。 相違点(2)について; 染料系偏光膜製造の際に用いる染料として、有機染料を用いることは周知の技術である。 よって、化合物群1の吸収波長領域と異なる吸収特性を有する他の染料として有機染料を用いることは、当業者が容易になし得ることであり、相違点(2)に係る本願発明の発明特定事項は格別のことではない。 本願発明の作用効果についても、引用発明から予測しうる範囲内のものである。請求人は、審判請求書の請求の理由において、効果について主張しているが、本審決で認定した本願発明の効果が格別のものであることを示すものではない。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-03-06 |
結審通知日 | 2009-03-09 |
審決日 | 2009-03-23 |
出願番号 | 特願平10-32408 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G02B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 井上 信 |
特許庁審判長 |
末政 清滋 |
特許庁審判官 |
安田 明央 秋月 美紀子 |
発明の名称 | 染料系偏光板 |