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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16C 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16C |
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管理番号 | 1196922 |
審判番号 | 不服2008-7540 |
総通号数 | 114 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-06-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-03-27 |
確定日 | 2009-05-07 |
事件の表示 | 特願2003- 39462「複列ころ軸受ならびに複列ころ軸受の潤滑構造」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 9月 9日出願公開、特開2004-251308〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
【1】手続の経緯 本願は、平成15年2月18日の出願であって、平成20年2月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年3月27日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。 【2】平成20年3月27日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成20年3月27日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正後の本願発明 平成20年3月27日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、 「【請求項1】 中心軸に外装される複列ころ軸受であって、 内径部分に軸方向に並ぶ二つの外輪軌道面を有するとともに前記二つの外輪軌道面の間に径方向内向きに鍔が設けられる単一の外輪と、 外径部分に前記外輪の各軌道面に対応する単一の内輪軌道面をそれぞれ有するとともに前記内輪軌道面の軸方向外方に径方向外向きの鍔が設けられる二つの内輪と、 前記外輪軌道面と二つの内輪軌道面との間に二列で介装される複数のころと、 前記外輪の軸方向両端部に取り付けられて前記二つの内輪の外径部分において軸方向外端部に対して接触される二つのシールと、 前記二列で介装される複数のころを各列ごとに保持し、この保持するころの軸方向内方端よりも軸方向内方から前記ころの軸方向外方端よりも軸方向内方までの範囲に配設される二つの保持器と、を有し、 前記二つの外輪軌道面はそれぞれ前記複数のころよりも軸方向外方まで形成され、 前記二つの保持器は前記外輪の前記内向きの鍔の径方向内方で軸方向に離隔して配設され、 前記各内輪の外径部分において前記シール接触領域よりも軸方向内側である前記内輪の鍔には、前記中心軸側から供給され空気により搬送される潤滑油を導入するための給油孔が前記複数のころよりも軸方向外方まで形成された外輪軌道面の径方向内方に設けられており、 前記各内輪の突き合せ部分には、軸受内部に存在する潤滑油を前記中心軸側へ排出するための排油孔が設けられ、 前記外輪の前記内向きの鍔に径方向に重なる範囲における前記二つの保持器と前記外輪の内向きの鍔との間隔が前記二つの保持器と前記内輪の突き合わせ部分との間隔よりも小さく形成されている、複列ころ軸受。」 と補正された。(なお、下線は補正箇所を示す。) 前記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「二つの保持器」と「外輪の内向きの鍔」との間隔及び「二つの保持器」と「内輪の突き合わせ部分」との間隔について、「前記外輪の前記内向きの鍔に径方向に重なる範囲における前記二つの保持器と前記外輪の内向きの鍔との間隔が前記二つの保持器と前記内輪の突き合わせ部分との間隔よりも小さく形成されている」との限定を付加するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下で検討する。 2.引用刊行物とその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物のうちの実願昭56-88696号(実開昭57-200728号)のマイクロフィルム(以下「刊行物」という。)には、「外輪回転軸受の潤滑装置」に関して、図面第1図?第4図とともに次の事項が記載されている。 ア 「外輪回転軸受とは、固定軸に取り付けられた内輪に、転動体であるころ、玉を介して外輪が回転可能に取り付けられてなるものである。かゝる形式の軸受において、内外輪の軌道面への潤滑油(ミストも含む)の供給及び排出は種々の方法によつて行なわれている。」(明細書第2ページ第12?17行) イ 「第1図に示したのは、圧延機用の複列ローラ軸受に本考案が適用された実施例である。第1図において、固定軸1には一対の内軸2a、3a(審決注:正しくは「内輪2a、2b」である。)が並んで嵌合されており、各内輪と単一の外輪4との間にはそれぞれ保持器6によつて複数個のころ31、32が介在されている。 固定軸1には潤滑油の供給路11及び排出路12が何れも軸方向に一本づつあけられているとともに、半径方向に複数本の給油路13、14及び排油路15があけられている。給油路13、14は給油装置に、排油路15は排油装置(何れも図示しない)にそれぞれ接続されている。そして、内輪内周面の後述する給油孔23a、23bの位置に周溝25a、25bが形成され、また後述する排油孔24の内周側に面取り部27a、27bが形成されている。さらに周溝25a、25bと面取り部27a、27bからそれぞれ軸方向に若干離れた内周面位置にOリング7を備えたOリング溝26a、26bが形成されており、内輪と固定軸との間を密封し、潤滑油の外部へのもれが防止されている。各内輪2a、3a(審決注:正しくは「内輪2a、2b」である。以下同様。)には給油路13、14に対応して内輪本体部21a、21bと内輪つば部22a、22bとの隅部である内輪つば部の根元部に通ずる前記給油孔23a、23bがあけられており、その開口部には周溝状の逃げ部23c、23dを備えている。また、両内輪2a、3a間には排油路15に対応して前記排油孔24があけられている。さらに内輪2a、2bのつば部22a、22bと外輪4との間には、シール33、34が、そのリツプ部を内輪つば部22a、22bに摺接させて取り付けてある。 以上の構成になる潤滑装置において、潤滑油は供給路11及び給油路13、14並びに給油孔23a、23bを通して内輪つば部22a、22bの根元部に給油される。そして潤滑油は、軸受各部を潤滑した後、排油孔24、排油路15及び排出路12から排油される。 本実施例によれば、給油孔23a、23bが内輪つば部22a、22bの根元部に開口して形成されているので、この部分に潤滑油が十分にゆきわたることになり、内輪軌道面ところ間の潤滑性が向上して高速回転での冷却性も改良され、特に内輪つばの端面及びころ端面の発熱やかじり、焼付き等の発生を良好に防止される。」(明細書第4ページ第17行?第7頁第6行) ウ 図面第1図の記載によれば、単一の外輪4は、内径部分に軸方向に並ぶ二つの外輪軌道面を有するとともに前記二つの外輪軌道面の間に径方向内向きに鍔が設けられることが看取される。 エ また、図面第1図の記載によれば、一対の内輪2a、2bは、外径部分に前記外輪4の各軌道面に対応する単一の内輪軌道面をそれぞれ有するとともに前記内輪軌道面の軸方向外方に径方向外向きの内輪つば部22a、22bが設けられることが看取される。 オ 更に、図面第1図の記載によれば、複数個のころ31、32は、前記外輪軌道面と二つの内輪軌道面との間に二列で介装されることが看取される。 カ 更に、図面第1図の記載によれば、二つのシール33、34は、前記外輪4の軸方向両端部に取り付けられて前記二つの内輪2a,2b(のつば部22a、22b)の外径部分において軸方向外端部に対して接触されることが看取される。 キ 更に、図面第1図の記載によれば、一つの保持器6は、二列で介装される複数個のころ31、32を各列ごとに保持することが看取される。 ク 更に、図面第1図の記載によれば、前記二つの外輪軌道面はそれぞれ前記複数個のころ31、32よりも軸方向外方まで形成されることが看取される。 ケ 更に、図面第1図の記載によれば、前記各内輪2a、2bの外径部分において前記シール接触領域よりも軸方向内側である前記内輪つば部22a、22bの根元部に通ずる、前記固定軸1側から供給される潤滑油を導入するための給油孔23a、23bが設けられていることが看取される。 コ 更に、図面第1図の記載によれば、前記各内輪2a、2bの突き合せ部分には、軸受内部に存在する潤滑油を前記固定軸1側へ排出するための排油孔24が設けられていることが看取される。 サ 更に、図面第1図の記載によれば、前記外輪4の前記内向きの鍔に径方向に重なる範囲における前記一つの保持器6と前記外輪4の内向きの鍔との間隔が前記一つの保持器6と前記内輪2a、2bの突き合わせ部分との間隔よりも小さく形成されていることが看取される。(なお、前記一つの保持器6と前記外輪4の内向きの鍔とに間隔があること(すなわち、両者が接触していないこと)は、図面第1図の下半部の記載や第2図、第3図の記載からも明らかである。) 前記記載事項ア?サ及び図面第1図の記載を総合すると、刊行物には、 「固定軸1に外装される複列ローラ軸受であって、 内径部分に軸方向に並ぶ二つの外輪軌道面を有するとともに前記二つの外輪軌道面の間に径方向内向きに鍔が設けられる単一の外輪4と、 外径部分に前記外輪4の各軌道面に対応する単一の内輪軌道面をそれぞれ有するとともに前記内輪軌道面の軸方向外方に径方向外向きの内輪つば部22a、22bが設けられる二つの内輪2a、2bと、 前記外輪軌道面と二つの内輪軌道面との間に二列で介装される複数のころ31、32と、 前記外輪4の軸方向両端部に取り付けられて前記二つの内輪2a、2bの外径部分において軸方向外端部に対して接触される二つのシール33、34と、 前記二列で介装される複数のころ31、32を各列ごとに保持する一つの保持器6と、を有し、 前記二つの外輪軌道面はそれぞれ前記複数のころ31、32よりも軸方向外方まで形成され、 前記各内輪2a、2bの外径部分において前記シール接触領域よりも軸方向内側である前記内輪つば部22a、22bの根元部に通ずる、前記固定軸1側から供給される潤滑油を導入するための給油孔23a、23bが設けられており、 前記各内輪2a、2bの突き合せ部分には、軸受内部に存在する潤滑油を前記固定軸1へ排出するための排油孔24が設けられ、 前記外輪4の前記内向きの鍔に径方向に重なる範囲における前記一つの保持器6と前記外輪4の内向きの鍔との間隔が前記一つの保持器6と前記内輪2a、2bの突き合わせ部分との間隔よりも小さく形成されている、複列ローラ軸受。」 の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 3.発明の対比 本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「固定軸1」は本願補正発明の「中心軸」に相当し、以下同様に、「複列ローラ軸受」は「複列ころ軸受」に、「単一の外輪4」は「単一の外輪」に、「径方向外向きの内輪つば部22a、22b」は「径方向外向きの鍔」に、「二つの内輪2a、2b」は「二つの内輪」に、「二列で介装される複数のころ31、32」は「二列で介装される複数のころ」に、「二つのシール33、34」は「二つのシール」に、「排油孔24」は「排油孔」に、それぞれ相当する。 また、引用発明の「一つの保持器6」及び本願補正発明の「二つの保持器」は、どちらも、二列で介装される複数のころを各列ごとに保持する「保持器」である点では同じである。 更に、刊行物の記載事項アに「潤滑油(ミストも含む)」とあることから、引用発明の「潤滑油」は、本願補正発明の「空気により搬送される潤滑油」を含むものである。 更に、引用発明の「給油孔23a、23b」及び本願補正発明の「給油孔」は、設置箇所は異なるものの、どちらも、各内輪の外径部分においてシール接触領域よりも軸方向内側に設けられる、中心軸側から供給される潤滑油を導入するための「給油孔」である点では同じである。 よって、本願補正発明と引用発明とは、 [一致点] 「中心軸に外装される複列ころ軸受であって、 内径部分に軸方向に並ぶ二つの外輪軌道面を有するとともに前記二つの外輪軌道面の間に径方向内向きに鍔が設けられる単一の外輪と、 外径部分に前記外輪の各軌道面に対応する単一の内輪軌道面をそれぞれ有するとともに前記内輪軌道面の軸方向外方に径方向外向きの鍔が設けられる二つの内輪と、 前記外輪軌道面と二つの内輪軌道面との間に二列で介装される複数のころと、 前記外輪の軸方向両端部に取り付けられて前記二つの内輪の外径部分において軸方向外端部に対して接触される二つのシールと、 前記二列で介装される複数のころを各列ごとに保持する保持器と、を有し、 前記二つの外輪軌道面はそれぞれ前記複数のころよりも軸方向外方まで形成され、 前記各内輪の外径部分において前記シール接触領域よりも軸方向内側には、前記中心軸側から供給され空気により搬送される潤滑油を導入するための給油孔が設けられており、 前記各内輪の突き合せ部分には、軸受内部に存在する潤滑油を前記中心軸側へ排出するための排油孔が設けられ、 前記外輪の前記内向きの鍔に径方向に重なる範囲における前記保持器と前記外輪の内向きの鍔との間隔が前記保持器と前記内輪の突き合わせ部分との間隔よりも小さく形成されている、複列ころ軸受。」 である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点1] 「保持器」が、本願補正発明では、「保持するころの軸方向内方端よりも軸方向内方から前記ころの軸方向外方端よりも軸方向内方までの範囲に配設される二つの保持器」であって、「二つの保持器は外輪の内向きの鍔の径方向内方で軸方向に離隔して配設され」ているものであるのに対して、引用発明では、「一つの保持器6」であって、軸方向に離隔して配設されるものではない点。 [相違点2] 「給油孔」が、本願補正発明では、「内輪の鍔」に、「複数のころよりも軸方向外方まで形成された外輪軌道面の径方向内方」に設けられているものであるのに対して、引用発明では、「内輪つば部22a、22bの根元部に通ずる」ように設けられているものである点。 4.当審の判断 そこで、前記各相違点について以下で検討する。 (1)相違点1について 刊行物の図面第2図及び第3図には、それぞれ、二列で介装される複数のころを各列ごとに保持する「保持器」を、「二つの保持器6、6」として、当該「二つの保持器6、6」を「外輪4の内向きの鍔の径方向内方で軸方向に離隔して配設され」るものとすることが記載されているし、また、「二つの保持器」を、「保持するころの軸方向内方端よりも軸方向内方から前記ころの軸方向外方端よりも軸方向内方までの範囲に配設される」ものとすることは周知の技術である(例えば、実願平4-35604号(実開平5-87326号)のCD-ROMの明細書の段落【0007】及び【図1】の記載、実願昭53-122196号(実開昭55-40212号)のマイクロフィルムの明細書第2ページ第6?12行及び図面第1図の記載、参照)から、引用発明の「一つの保持器6」に代えて「二つの保持器」として、前記相違点1に係る本願補正発明の「二つの保持器」と同様の構成のものとすることは、当業者が容易に想到することができたものである。 (2)相違点2について 給油孔を内輪のどの部分に設けるかは、潤滑油が必要とされる部分に応じて当業者が適宜設定し得る事項であるし、また、内輪の鍔に給油孔を設けることは周知の技術である(例えば、特開平6-213238号公報の段落【0038】、【0039】及び【図10】?【図13】の記載、特開平7-12135号公報の段落【0006】、【0007】及び【図11】の記載、参照)。 そうすると、引用発明の「給油孔23a、23b」を、複数のころ31、32よりも軸方向外方まで形成された外輪軌道面の径方向内方の内輪つば部22a、22bに設けることは格別困難なことではなく、引用発明の「給油孔23a、23b」を「内輪つば部22a、22bの根元部に通ずる」ように設けることに代えて、前記相違点2に係る本願補正発明の「給油孔」と同様の構成のものとすることは、当業者が容易に想到することができたものである。 (3)作用効果について そして、本願補正発明が奏する作用効果は、請求人(出願人)が主張する「複列ころ軸受へ空気により搬送されて供給された潤滑油が軸受内の外輪軌道側や内輪軌道側にバランス良く円滑に供給されるとともに、過剰に潤滑油が供給されないように適度にその供給の規制も行いつつ、潤滑油が外輪軌道面と保持器との間を良好に流動して排油できる」(平成20年6月11日付けの手続補正書の「請求の理由」、参照)という作用効果も含めて、引用発明、刊行物の前記記載事項及び前記各周知の技術から予測される程度のものであって、格別なものとはいえない。 したがって、本願補正発明は、刊行物に記載された発明及び前記各周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5.むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 【3】本願発明について 1.本願発明 平成20年3月27日付けの手続補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成19年10月26日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「【請求項1】 中心軸に外装される複列ころ軸受であって、 内径部分に軸方向に並ぶ二つの外輪軌道面を有するとともに前記二つの外輪軌道面の間に径方向内向きに鍔が設けられる単一の外輪と、 外径部分に前記外輪の各軌道面に対応する単一の内輪軌道面をそれぞれ有するとともに前記内輪軌道面の軸方向外方に径方向外向きの鍔が設けられる二つの内輪と、 前記外輪軌道面と二つの内輪軌道面との間に二列で介装される複数のころと、 前記外輪の軸方向両端部に取り付けられて前記二つの内輪の外径部分において軸方向外端部に対して接触される二つのシールと、 前記二列で介装される複数のころを各列ごとに保持し、この保持するころの軸方向内方端よりも軸方向内方から前記ころの軸方向外方端よりも軸方向内方までの範囲に配設される二つの保持器と、を有し、 前記二つの外輪軌道面はそれぞれ前記複数のころよりも軸方向外方まで形成され、 前記二つの保持器は前記外輪の前記内向きの鍔の径方向内方で軸方向に離隔して配設され、 前記各内輪の外径部分において前記シール接触領域よりも軸方向内側である前記内輪の鍔には、前記中心軸側から供給され空気により搬送される潤滑油を導入するための給油孔が前記複数のころよりも軸方向外方まで形成された外輪軌道面の径方向内方に設けられており、 前記各内輪の突き合せ部分には、軸受内部に存在する潤滑油を前記中心軸側へ排出するための排油孔が設けられている、複列ころ軸受。」 2.引用刊行物とその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物とその記載事項は、前記【2】2.に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、前記【2】で検討した本願補正発明から、「二つの保持器」と「外輪の内向きの鍔」との間隔及び「二つの保持器」と「内輪の突き合わせ部分」との間隔についての限定事項である「前記外輪の前記内向きの鍔に径方向に重なる範囲における前記二つの保持器と前記外輪の内向きの鍔との間隔が前記二つの保持器と前記内輪の突き合わせ部分との間隔よりも小さく形成されている」との事項を省いたものである。 そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が、前記【2】4.に記載したとおり、刊行物に記載された発明及び前記各周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物に記載された発明及び前記各周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物に記載された発明及び前記各周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項2及び3に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-03-05 |
結審通知日 | 2009-03-10 |
審決日 | 2009-03-24 |
出願番号 | 特願2003-39462(P2003-39462) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F16C)
P 1 8・ 575- Z (F16C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 西堀 宏之、岡▲さき▼ 潤 |
特許庁審判長 |
溝渕 良一 |
特許庁審判官 |
藤村 聖子 川上 益喜 |
発明の名称 | 複列ころ軸受ならびに複列ころ軸受の潤滑構造 |
代理人 | 岡田 和秀 |