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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  G01N
管理番号 1197406
審判番号 無効2007-800212  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-10-02 
確定日 2008-10-27 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3076013号発明「画像生成ATR分光装置及びスペクトル吸収画像を得る方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3076013号の請求項1乃至18に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3076013号の請求項1乃至18に係る発明についての出願は、平成10年8月14日(パリ条約による優先権主張1997年8月15日、米国)に出願され、平成12年6月9日にその発明について特許権の設定登録がされた。その後、請求人から本件特許無効審判の請求があったところ、被請求人は、平成20年1月21日に訂正請求書及び答弁書を提出した。これに対し、請求人は、同年2月26日に弁駁書を提出し、さらに、被請求人は、同年5月29日に上申書を提出したものである。

2.訂正請求について
2-1.訂正請求の内容
平成20年1月21日付け訂正請求書によると、当該訂正の内容は、本件特許の明細書を、訂正請求書に添付した全文訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであり、訂正の内容は以下のa乃至gのとおりである。(下線部は、訂正箇所である。)

(訂正事項a)請求項1において、「2次元フォーカルプレーンアレイ検出器」とあるのを、「複数の画素を含む2次元フォーカルプレーンアレイ(FPA)検出器」と訂正する。

(訂正事項b)請求項1において、「前記2次元フォーカルプレーンアレイ検出器と前記光源との間を伝わる光を捕捉し、捕捉された光のスペクトル選択変調を実行するように結合された波長選択素子とを有することを特徴とする画像生成減衰全反射(ATR)分光装置」とあるのを、「前記2次元フォーカルプレーンアレイ検出器と前記光源との間を伝わる光を捕捉し、捕捉された光のスペクトル選択変調を実行するように結合された波長選択素子とを有しており、
前記接触領域からの前記反射光は、前記接触領域の別々の点から反射された前記反射光のそれぞれの部分を含んでおり、前記反射光の前記それぞれの部分は集光されて、前記2次元フォーカルプレーンアレイ(FPA)検出器のそれぞれの画素上に結像され、前記サンプルの空間的に分解された吸収スペクトルを得ることができるように構成されている、ことを特徴とする、画像生成減衰全反射(ATR)分光装置」と訂正する。

(訂正事項c)請求項8において、「反射光を結像させるように、配置された第2光学系」とあるのを、「反射光を結像させるように配置されていて、前記接触領域のそれぞれの別々の点から反射された光を、前記2次元フォーカルプレーンアレイ検出器の別々の画素上に結像させるように構成された第2光学系」と訂正する。

(訂正事項d)請求項15において、「前記接触領域から反射光を集光する段階と、
前記接触領域からの前記反射された前記光を、検出器の2次元アレイ上に結像させる段階と、」とあるのを、「前記接触領域からの反射光を集光する段階とを含み、前記反射光は、前記接触領域の別々の点から反射された前記反射光のそれぞれの部分を含んでおり、
前記方法は、さらに、前記接触領域からの前記反射光を、検出器の2次元アレイ上に結像させて、前記接触領域の別々の点から反射された前記反射光の前記それぞれの部分を、前記検出器の2次元アレイのそれぞれの別々の画素上に結像させる段階と、」と訂正する。

(訂正事項e)請求項15において、「検出器の前記2次元アレイ」とあるのを、「前記検出器の2次元アレイ」と訂正する。

(訂正事項f)請求項18において、「前面」とあるのを、「凸面状前面」と訂正する。

(訂正事項g)請求項18において、「前記結像光学素子が、前記反射光を前記2次元フォーカルプレーンアレイ検出器上に結像させるように構成されており」とあるのを、「前記結像光学素子が、前記反射光を前記2次元フォーカルプレーンアレイ検出器上に結像させて、前記接触領域のそれぞれの別々の点から反射されて集光された光を、前記2次元フォーカルプレーンアレイ検出器のそれぞれの別々の画素上に結像させるように構成されており」と訂正する。

2-2.訂正の可否について

(訂正事項a)
この訂正は、請求項1における2次元フォーカルプレーンアレイ検出器について、「複数の画素を含む」と限定すると共に、「フォーカルプレーンアレイ」の記載を「フォーカルプレーンアレイ(FPA)」という記載にするものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして、特許明細書の段落【0008】には「フォーカルプレーンアレイ検出器32は、別々の位置で、入射光の強度を測定するための検出器の2次元アレイを備えている。...本発明の一実施形態においては、光起電性モードで作動される64×64画素を有する水銀テルル化カドミウム(MCT)検出器アレイが使用され、好ましい結果を得た。...他の実施形態においては、光起電性モードで作動される128×128画素を有するアンチモン化インジウム(InSb)検出アレイが使用され、好ましい結果を得た。」と記載され、段落【0010】には「フォーカルプレーンアレイ検出器32の各画素は、その画素に入射する光の強度の時間変化を表す信号を提供する。」と記載されており、「FPA」は「フォーカルプレーンアレイ」の略語であることは自明といえるから、上記訂正は特許明細書に記載した事項の範囲内における訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(訂正事項b)
この訂正は、請求項1における接触領域からの反射光について、「前記接触領域からの前記反射光は、前記接触領域の別々の点から反射された前記反射光のそれぞれの部分を含んで」いるものに限定し、前記接触領域から反射光を集光し、前記反射光を前記2次元フォーカルプレーンアレイ検出器上に結像させるための手段について、「前記反射光の前記それぞれの部分は集光されて、前記2次元フォーカルプレーンアレイ(FPA)検出器のそれぞれの画素上に結像され」とその機能を限定し、2次元フォーカルプレーンアレイ検出器について、「前記サンプルの空間的に分解された吸収スペクトルを得ることができるように構成されている」ものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして、特許明細書の段落【0007】には「しかしながら、IREがサンプル18に接触しているときは、入力ビーム24からいくらかの赤外線エネルギーがエバネセット結合を介して、サンプル18に吸収される。接触領域20の各位置で、吸収されたエネルギーの量は、その位置のサンプル中の分子構造及び/又は分子種に対応する。したがって、反射光は、サンプル18の空間的に分解された吸収スペクトルを得ることのできる情報を含んでいる。」と記載され、段落【0008】には「集光及び結像光学素子28(レンズとして図式的に示される)は、反射光30を集光し、それを、二次元フォーカルプレーンアレイ検出器32上に結像させる。フォーカルプレーンアレイ検出器32は、別々の位置で、入射光の強度を測定するための検出器の2次元アレイを備えている。それゆえ、フォーカルプレーンアレイ検出器32は、接触領域20の別々の点から反射光の強度情報を与える。」と記載されていることから、上記訂正は特許明細書に記載した事項の範囲内における訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
さらに、訂正事項bのうち、「前記接触領域の別々の点から反射された前記反射光のそれぞれの部分を含んでおり」とした点は、上記の通り特許明細書の段落【0007】に記載した事項の範囲内のものであり、請求人が弁駁書(第3頁)で主張するような、特許法第36条第6項第1号違反となるものとは認められない。また、訂正事項bのうち、「前記反射光の前記それぞれの部分は集光されて、前記2次元フォーカルプレーンアレイ(FPA)検出器のそれぞれの画素上に結像され」とした点は、上記の通り、反射光を2次元フォーカルプレーンアレイ検出器上に結像させるための手段についての機能を限定したものであって、上記の通り特許明細書の段落【0007】に記載した事項の範囲内のものであり、当該事項から、当業者であればその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていると認められるから、請求人が弁駁書(第3頁)で主張するような、特許法第36条第4項及び第6項第1号及び第2号違反となるものとは認められない。

(訂正事項c)
この訂正は、請求項8における第2光学系について、「前記接触領域のそれぞれの別々の点から反射された光を、前記2次元フォーカルプレーンアレイ検出器の別々の画素上に結像させるように構成された」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして、特許明細書の段落【0008】には「集光及び結像光学素子28(レンズとして図式的に示される)は、反射光30を集光し、それを、二次元フォーカルプレーンアレイ検出器32上に結像させる。フォーカルプレーンアレイ検出器32は、別々の位置で、入射光の強度を測定するための検出器の2次元アレイを備えている。それゆえ、フォーカルプレーンアレイ検出器32は、接触領域20の別々の点から反射光の強度情報を与える。」と記載されていることから、上記訂正は特許明細書に記載した事項の範囲内における訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(訂正事項d)
この訂正は、請求項15における「前記接触領域から反射光を集光する段階」について「前記反射光は、前記接触領域の別々の点から反射された前記反射光のそれぞれの部分を含んでおり」と限定し、「前記接触領域からの前記反射された前記光を、検出器の2次元アレイ上に結像させる段階」について「前記接触領域の別々の点から反射された前記反射光の前記それぞれの部分を、前記検出器の2次元アレイのそれぞれの別々の画素上に結像させる」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして、特許明細書の段落【0008】には「集光及び結像光学素子28(レンズとして図式的に示される)は、反射光30を集光し、それを、二次元フォーカルプレーンアレイ検出器32上に結像させる。フォーカルプレーンアレイ検出器32は、別々の位置で、入射光の強度を測定するための検出器の2次元アレイを備えている。それゆえ、フォーカルプレーンアレイ検出器32は、接触領域20の別々の点から反射光の強度情報を与える。」と記載されていることから、上記訂正は特許明細書に記載した事項の範囲内における訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(訂正事項e)
この訂正は、請求項15における「検出器の前記2次元アレイ」と記載されていたのを、「前記検出器の2次元アレイ」と記載するものであって、誤記の訂正を目的とするものに該当する。そして、特許明細書の請求項15には「前記接触領域からの前記反射された前記光を、検出器の2次元アレイ上に結像させる段階と」と記載されていることから、上記訂正は特許明細書に記載した事項の範囲内における訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(訂正事項f)
この訂正は、請求項18における内部反射素子(IRE)に関し、「前面」とあるのを、「凸面状前面」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして、特許明細書の段落【0014】には「図3A及び3Bは、それぞれ、本発明にかかるATR結晶体(すなわちIRE10)の具体的実施形態の底面図及び側面図である。...IRE10は前面14と後面12を含み、前面14と後面12の各々は、球形の曲率を有している。」と記載され、「本発明にかかるATR結晶体(すなわちIRE10)の具体的実施形態の側面図」を示す図3Bには、IREの前面が凸面状となっていることが記載されていることから、上記訂正は特許明細書に記載した事項の範囲内における訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(訂正事項g)
この訂正は、請求項18における結像光学素子について、「前記接触領域のそれぞれの別々の点から反射されて集光された光を、前記2次元フォーカルプレーンアレイ検出器のそれぞれの別々の画素上に結像させる」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして、特許明細書の段落【0008】には「集光及び結像光学素子28(レンズとして図式的に示される)は、反射光30を集光し、それを、二次元フォーカルプレーンアレイ検出器32上に結像させる。フォーカルプレーンアレイ検出器32は、別々の位置で、入射光の強度を測定するための検出器の2次元アレイを備えている。それゆえ、フォーカルプレーンアレイ検出器32は、接触領域20の別々の点から反射光の強度情報を与える。」と記載されていることから、上記訂正は特許明細書に記載した事項の範囲内における訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

したがって、平成20年1月21日付け訂正は、特許法第36条第4項あるいは第6項第1号または第2号の規定に違反するものではなく、同法134条の2ただし書き並びに同条5項の規定によって準用する同法126条3項及び4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.本件特許発明
上記のように訂正を認めるので、本件特許発明は、全文訂正明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。(以下、訂正後の請求項1乃至18に係る発明を「本件特許発明1」乃至「本件特許発明18」という。)

「【請求項1】 光源と、
前面と後面とを有し、前記前面が検査中のサンプルと係合する接触領域を含んだ内部反射素子(IRE)と、
複数の画素を含む2次元フォーカルプレーンアレイ(FPA)検出器と、
前記前面での前記入力ビームの入射角が前記IREに対する臨界角以上となるように、前記IREの前記後面を介して、前記光源からの光を前記接触領域に差し向け、かつ、集光するための手段と、
前記接触領域から反射光を集光し、前記反射光を前記2次元フォーカルプレーンアレイ検出器上に結像させるための手段と、
前記2次元フォーカルプレーンアレイ検出器と前記光源との間を伝わる光を捕捉し、捕捉された光のスペクトル選択変調を実行するように結合された波長選択素子とを有しており、
前記接触領域からの前記反射光は、前記接触領域の別々の点から反射された前記反射光のそれぞれの部分を含んでおり、前記反射光の前記それぞれの部分は集光されて、前記2次元フォーカルプレーンアレイ(FPA)検出器のそれぞれの画素上に結像され、前記サンプルの空間的に分解された吸収スペクトルを得ることができるように構成されている、ことを特徴とする、画像生成減衰全反射(ATR)分光装置。
【請求項2】 前記2次元フォーカルプレーンアレイ検出器に結合されており、前記2次元フォーカルプレーンアレイ検出器から画像情報を得るための信号処理装置をさらに備えた請求項1に記載の画像生成ATR分光装置。
【請求項3】 光を差し向け、かつ、集光するための前記手段が、一つまたはそれ以上のレンズ素子からなり、
前記反射光を集光し、反射光を結像させるための前記手段が、一つまたはそれ以上のレンズ素子からなる請求項1に記載の画像生成ATR分光装置。
【請求項4】 光を差し向け、集光するための前記手段が、一つまたはそれ以上の反射素子からなり、
前記反射光を集光し、反射光を結像させるための前記手段が、一つまたはそれ以上の反射素子からなる請求項1に記載の画像生成ATR分光装置。
【請求項5】 前記IREの前記後面は凸面状であり、球の曲率を有し、前記曲率の中心が前記IREの前記前面に位置する請求項1に記載の画像生成ATR分光装置。
【請求項6】 前記IREの前記前面は凸面状であり、球の曲率を有し、前記曲率の半径が後面半径よりも実質的に長い請求項1に記載の画像生成ATR分光装置。
【請求項7】 前記スペクトル選択素子が、前記光源と前記IREの間に配置され、光のスペクトル多重入射ビームを生成して、前記IREに供給する干渉計により構成された請求項1に記載の画像生成ATR分光装置。
【請求項8】 光源と、
前面と後面とを有し、前記前面が検査中のサンプルと係合する接触領域を含んだ内部反射素子(IRE)と、
2次元フォーカルプレーンアレイ検出器と、
前記前面における前記入力ビームの入射角が前記IREの臨界角以上になるように、前記IREの前記後面を介して、前記接触領域の方に、前記入力ビームを差し向けるように配置された第1光学系と、
前記接触領域から反射光を集光し、前記2次元フォーカルプレーンアレイ検出器上に、反射光を結像させるように配置されていて、前記接触領域のそれぞれの別々の点から反射された光を、前記2次元フォーカルプレーンアレイ検出器の別々の画素上に結像させるように構成された第2光学系と、
前記光源と前記2次元フォーカルプレーンアレイ検出器の間を伝わる光を捕捉し、捕捉された光のスペクトル選択変調を実行するように結合された干渉計と、を有することを特徴とする画像生成減衰全反射(ATR)分光装置。
【請求項9】 前記干渉計が、ビーム・スプリッタと、少なくとも一つの固定ミラーと、少なくとも一つの可動ミラーとを含んでいる請求項8に記載の画像生成ATR分光装置。
【請求項10】 前記光源が、広帯域赤外線光源からなる請求項8に記載の画像生成ATR分光装置。
【請求項11】 前記第1光学系が、一つまたはそれ以上のレンズ素子からなり、
前記第2光学系が、一つまたはそれ以上のレンズ素子からなる請求項8に記載の画像生成ATR分光装置。
【請求項12】 前記第1光学系が、一つまたはそれ以上の反射素子からなり、
前記第2光学系が、一つまたはそれ以上の反射素子からなる請求項8に記載の画像生成ATR分光装置。
【請求項13】 前記IREの前記後面が、凸面状で球の曲率を有し、前記曲率の中心が前記IREの前記前面に位置する請求項8に記載の画像生成ATR分光装置。
【請求項14】 前記IREの前記前面が、凸面状であり、かつ球の曲率を有し、前記曲率の半径が、後面の半径よりも実質的に長い請求項13に記載の画像生成ATR分光装置。
【請求項15】 サンプルのスペクトル吸収画像を得る方法であって、
サンプルの一部分にわたり、かつ前記サンプルに接触して、ATR結晶体を配置させて、前記ATR結晶体と前記サンプルの間の接触領域を定める段階と、
光源から発する光のビームを、前記ATR結晶体を介して、前記ATR結晶体の臨界角以上の入射角度で、前記接触領域に差し向けることにより、前記接触領域を照射する段階と、
前記接触領域からの反射光を集光する段階とを含み、前記反射光は、前記接触領域の別々の点から反射された前記反射光のそれぞれの部分を含んでおり、
前記方法は、さらに、前記接触領域からの前記反射光を、検出器の2次元アレイ上に結像させて、前記接触領域の別々の点から反射された前記反射光の前記それぞれの部分を、前記検出器の2次元アレイのそれぞれの別々の画素上に結像させる段階と、
前記光源と前記検出器の2次元アレイとの間に、波長選択素子を置いて、前記接触領域の異なった位置におけるスペクトル情報を与える段階と、
を含む、サンプルのスペクトル吸収画像を得る方法。
【請求項16】 検出器の前記二次元アレイにより収集されたデータをスペクトル吸収画像に変換する段階を更に含む、請求項15に記載のサンプルのスペクトル吸収画像を得る方法。
【請求項17】 前記変換する段階が、前記2次元アレイ検出器から強度情報を検索し、前記強度情報のフーリエ変換表現を演算することにより、データを変換する、請求項16に記載のサンプルのスペクトル吸収画像を得る方法。
【請求項18】 光源と、
凸面状前面と後面とを有し、前記前面が検査中のサンプルと係合する接触領域を含んだ内部反射素子(IRE)と、
2次元フォーカルプレーンアレイ検出器と、
前記IREが焦点に位置する顕微鏡対物レンズと、
光の前記入力ビームを、前記顕微鏡対物レンズに差し向けるための手段と、
結像光学素子とを有し、
前記顕微鏡対物レンズが、前記IREの前記後面を介して、前記接触領域に向けて、前記光の入力ビームの焦点を合わせ、反射光を集光し、反射光を、前記結像光学素子に差し向けるように、位置決めされ、かつ構成されており、
前記結像光学素子が、前記反射光を前記2次元フォーカルプレーンアレイ検出器上に結像させて、前記接触領域のそれぞれの別々の点から反射されて集光された光を、前記2次元フォーカルプレーンアレイ検出器のそれぞれの別々の画素上に結像させるように構成されており、
さらに、前記光源と前記2次元フォーカルプレーンアレイ検出器の間を伝わる光を捕捉し、捕捉された光のスペクトル選択変調を実行するように結合された干渉計を備えたことを特徴とする、
画像生成減衰全反射(ATR)超小型分光装置。」

4.無効審判請求人の主張の概要

これに対して、請求人は、証拠方法として甲第1号証乃至甲第18号証を提出し、以下の無効理由1乃至5を主張し、本件特許発明1乃至18を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めている。(無効審判請求書、弁駁書)

(無効理由1)
本件特許発明1及び本件特許発明8は、甲第1号証に記載された発明と実質的に同一の発明であるから、特許法29条1項3号又は2項の規定により特許を受けることができない。
本件特許発明2乃至7、9乃至14は甲第1号証に記載された発明及び甲第1乃至第6、第13乃至第17号証に示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

(無効理由2)
本件特許発明1及び本件特許発明8は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明並びに甲第14号証の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
本件特許発明2乃至7、9乃至14は甲第1号証に記載された発明及び甲第1乃至第6、第13乃至第17号証に示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

(無効理由3)
本件特許発明1及び本件特許発明8は、甲第3号証又は甲第4号証に記載された発明及び甲第2、5又は6号証に示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
本件特許発明2乃至7、9乃至14は甲第1号証に記載された発明及び甲第1乃至第6、第13乃至第17号証に示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

(無効理由4)
本件特許発明15は、甲第1乃至第6、第13乃至第15及び第18号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
本件特許発明16及び17は、甲第1乃至第6、第13及び第18号証に示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

(無効理由5)
本件特許発明18は、甲第1乃至第6号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

5.被請求人の主張の概要
甲第1号証は、ATR分光法のための画像形成アレイの使用とはまったく関係が無く、また本件特許を無効にするような組み合わせの根拠になり得ない。証拠として示されている従来文献の種々の教示を組み合わせるような示唆を提供している文献は、存在していない。よって、本件特許に係る発明は、甲第1号証に記載されたものと同一ではなく、また甲第1号証から甲第18号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることはできなかったものである。そして、「特許第3076013号を無効にする審判の請求を棄却する。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めている。(答弁書)

6.甲各号証記載の発明(下線は当審にて付加した)
6-1.甲第3号証
甲第3号証(特開平6-58869号公報)には、次の記載がある。

(ア)「【0008】
【実施例】以下、図面に基づき本発明の好適な実施例を説明する。図1には本発明の一実施例にかかる全反射測定装置の概略構成が示されており、前記従来技術と対応する部分には符合100を加えて示し説明を省略する。同図に示す全反射測定顕微鏡は、カセグレン鏡120とATRプリズム112を備えている。即ち、前記カセグレン鏡120は、中心部に穴122aが形成された凹面鏡よりなるカセグレン主鏡122と、前記カセグレン主鏡122よりも径の小さい凸面鏡よりなるカセグレン副鏡124とを、中心軸Cを一致させて対向配置している。
【0009】一方、全反射プリズム112は、図2に拡大して示されるように略円錐状に形成され、その先端部が平頭面112aを形成している。前記カセグレン主鏡122は主鏡保持部材126に接着固定され、一方カセグレン副鏡124は副鏡保持部材128により光路を妨げないように保持されている。そして、主鏡保持部材126は外枠130に上下動自在に螺合されており、任意の螺合位置で固定ネジ131を締めつけることにより固定可能である。また前記副鏡保持部材128は同じく外枠130に対し光軸調整ネジ132によって保持されており、該光軸調節ネジ132を調整することにより、カセグレン副鏡をその光軸と直交する面上で位置調整することができる。
【0010】従って、前記外枠130と主鏡保持部材126の螺合状態を変更することにより主鏡122と副鏡124の相対距離を変更し、更に光軸調整ネジ132を調整することにより主鏡122と副鏡124の光軸を一致させることが出来る。一方、前記プリズム112は、コーン状保持枠134の先端部に、該プリズム112の平頭面を表出した状態で接着固定されており、該コーン状保持枠134はホルダー136に調整ネジ138によって光軸と直交する平面上で位置変更可能に保持されている。該ホルダー136は前記外枠130に上下動自在に螺合されており、位置決めネジ140を絞めつけることにより、任意の上下位置でプリズム112を位置決めすることができる。本実施例にかかる全反射測定装置は概略以上のように構成され、次にその作用について説明する。【0011】まず、カセグレン鏡120及びプリズム112の位置決めを行ったのち、図3に示す様にプリズム112の平頭面112aを、シャーレ142上に採取した被測定液110に僅かに浸漬させる。そして、図1において赤外光源150から出射された光束をマイケルソン干渉計152に導光して赤外干渉光を生成し、これを固定鏡154で反射させて入射光156を形成する。そして該入射光156はカセグレン副鏡124、カセグレン主鏡122及びプリズム112を介して被測定液110上に照射され、該被測定液110とプリズム112の臨界面からの全反射光158が形成される。該全反射光158は、固定鏡160で反射されてMCT検出器162でその光強度が検出され、その検出信号が信号処理装置164に供給される。一方レーザー166から出射されたレーザー光をマイケルソン干渉計152に導光し、レーザー干渉光を生成してその光強度をホトダイオード168で検出し、その検出信号をサンプリング信号として信号処理装置164に供給する。該信号処理装置164は、このサンプリング信号に同期して、MCT検出器162からの光強度信号を読取り、公知の信号処理を行って赤外吸収スペクトルを求め、これをレコーダー170に出力させる。
【0012】従って、従来のように多量の被測定液をセル等に注入する必要なく、該被測定液の全反射測定を行うことが可能となる。尚、前記カセグレン副鏡124下部にはマスク172が設けられ、該マスク172はプリズム112の全反射の臨界角より小さい入射角の光線を遮光する。以上説明した全反射測定装置において、被測定液の屈折率を1.4程度と想定し、またプリズム112として屈折率が大きいゲルマニウムを用いた場合、全反射の臨界角は20.5度となる。そして、カセグレン鏡120のNAをそれぞれ約10度大きくとると、該カセグレン鏡120の開口角は60度となるため、プリズムの円錐角も60度に設定した。この結果曲率半径が3mmのプリズム112を円錐角60度に形成し、その先端部分を直径0.3mm程度の平坦な面とすることにより、優れた全反射測定能を得ることが出来た。尚、本実施例に係る全反射測定装置は、顕微鏡上で用いられているので、サンプルステージ上に前記シャーレ142を載置し、該サンプルステージを昇降してプリズム112の先端に被測定液を浸漬させるのみで、該被測定液の全反射測定を行うことができる。」

(イ)「本発明の第1実施例に係る全反射測定装置の概略構成図」である図1を参照すると、全反射プリズム112から出射される全反射光158は、カセグレン主鏡122、カセグレン副鏡124及び固定鏡160を介してMCT検出器162に集光させられている。

(ウ)「図1に示した全反射測定装置に用いられるプリズムの説明図」である図2を参照すると、全反射プリズム112は、略円錐状に形成され、その先端部が平頭面112aを形成しており、その円錐状の基部側の面が凸曲面を形成している。

以上の記載から、甲第3号証には、「赤外光源150と、
その先端部が平頭面112aを形成しており、その基部が凸曲面を形成しており、該平頭面112aが被測定液110に浸漬されるようになっている全反射プリズム112と、
MCT検出器162と、
前記赤外光源からの光を固定鏡154で反射させて入射光156を形成し、該入射光156が被測定液110とプリズム112の臨界面で全反射されるように、プリズム112を介して該入射光156を被測定液110上に照射するカセグレン副鏡124及びカセグレン主鏡122と、
該プリズム112の臨界面からの全反射光158をMCT検出器162に集光させるカセグレン主鏡122、カセグレン副鏡124及び固定鏡160と、
前記赤外光源150から出射された光束から赤外干渉光を生成するマイケルソン干渉計152と、
MCT検出器162からの光強度信号を読取り、公知の信号処理を行って赤外吸収スペクトルを求める信号処理装置とを有する全反射測定装置。」(以下、「甲第3号証に記載された発明1」という。)及び「プリズム112の平頭面112aを、シャーレ142上に採取した被測定液110に僅かに浸漬させ、
光源からの入射光156はカセグレン副鏡124、カセグレン主鏡122及びプリズム112を介して被測定液110上に照射され、該被測定液110とプリズム112の臨界面からの全反射光158が形成され、
該プリズム112の臨界面からの全反射光158は、カセグレン主鏡122、カセグレン副鏡124及び固定鏡160によってMCT検出器162に集光され、
該MCT検出器162でその光強度が検出され、その検出信号が信号処理装置164に供給され、公知の信号処理を行って赤外吸収スペクトルを求められ、
赤外光源150から出射された光束はマイケルソン干渉計152に導光して赤外干渉光を生成されている、
全反射測定方法。」(以下、「甲第3号証に記載された発明2」という。)が記載されているものと認められる。

6-2.甲第2号証
甲第2号証(米国特許第5377003号明細書)には、次の記載がある(訳文は、請求人が甲第2号証に添付して提出した部分訳による)。

(エ)「図1を参照してイメージング分光顕微鏡の形での本発明の好ましい実施例を説明する。分光顕微鏡は、一般的に1つの光源10、音響光学同調フィルタ14、顕微鏡4、フォーカルプレーンアレイ検出器46、シングルポイント検出器44を含んでいる。顕微鏡は本発明の図示の実施例ではオリンパスBH-2金属顕微鏡を使用できる。この顕微鏡は10X(N.A.0.30)プランアクロマチックレンズ32と2.5Xプロゼクションアイピース40、42とを有している。アイピース40はフォーカルプレーンアレイ検出器46に対する集光、倍率及びプレゼンテーションのために使用されている。アイピース42はビデオカメラ50に対する集光、倍率、プレゼンテーションのために使用されている。光源10は標準50Wの石英タングステンハロゲン光源を使用することができる。」(第7欄37行目から52行目。)

(オ)「本発明において使用されるフォーカルプレーンアレイ検出器はこの技術分野でよく知られている。本発明の実施例のフォーカルプレーンアレイ検出器46はシリコン電化結合素子(CCDs)でSpex製のスペクトラムワンを使用することができる。CCDsの2次元アレイ(576×384ピクセル)を使用して、フォーカルプレーンアレイ検出器46は多数の個別の位置での入射光の強度を測定でき、受信した情報を記憶又は分析のためにコンピュータ又は類似の装置に転送することができる。」(第8欄38行目から48行目)

(カ)「図1は本発明の有利な実施例を用いて光の進行光路を示す。光は光源10で発生された広帯域の波長を含んでおりコリメーション光学レンズを通過する。コリメーション光学レンズ12は光を偏向し相互に平行な光とし、平行光を音響光学同調フィルタ14に指向させる。音響光学同調フィルタ14は選択された波長のコリメートされた光をフィルタするために使用される。波長又は波長のレンジはコンピュータ制御によりユーザによって選択される。(制御システムについては後で詳述する。)選択された波長の光が、音響光学同調フィルタ14によって放射された後、空間フィルタ16を通過する。空間フィルタ16は広帯域の光の零次ビームをブロックし、選択された波長の光を通過させる。
ここで空間的にフィルタされた光の光路は動作の所望のモードによって決定される。操作者は透過又は反射のどちらかを、サンプルの厚さ又は体積に依存してまたはその他を考慮して予め決定する。
反射の場合、エピ-照射が使用され、ほとんどモノクロマチックにスペクトル的にフィルタされた光はミラー18によって方向変換され、固定ミラー20に向かって反射される。それから固定ミラー20によって反射された光は集光レンズ22を通過する。集光レンズ22はサンプル35内の各点でサンプルに達する光の強度が均一になるように光の強度を保証する。集光レンズ22を通過した後、光は50/50ビームスプリッタによってXYステージ26の方向に反射される。このXYステージはサンプル35を支持するガラス顕微鏡スライドを保持している。それから光はサンプル35に反射されて、光を拡大する対物レンズ32を通過する。この点で光の強度はサンプル35の吸収特性及び体積に依存する。...
反射の場合、光がサンプル35に当たった後、光はビームスプリッタ24を通過する。透過の場合、ビームスプリッタ24は退避され、光は変化しないで方向変換ミラー25に向かう。反射による場合も透過の場合も、ここで光の光路は所望の動作モードによって再び決定される。オペレータはフォーカルプレーンアレイ検出器46を使用するスペクトルイメージングか、検出器44を使用するシングルポイント検出器かのどちらかを予め決定する。
スペクトルイメージングの場合、光は方向変換ミラー25によってシングルポイント検出器44からレンズ36に向かうように反射される。レンズ36は集光された光の中間像を形成する。集光ビームスプリッタ38でスプリットされる。ビームスプリッタ38は光を2つの同一の2.5Xプロゼクションアイピース40と42とに向かうようにする。アイピース40と42は付加的に拡大しフラットなフィールドのスペクトルイメージをそれぞれフォーカルプレーンアレイ検出器46とビデオカメラ50に供給する。ビデオカメラ50は、フォーカルプレーンアレイ検出器と同焦点であり、図示しないビデオモニタと協働してサンプルをフォーカスし、位置決めする。フォーカルプレーンアレイ検出器46は電荷結合素子CCDsの動作を改善するために液体窒素を使って冷却されている。」(第8欄55行目から第9欄61行目。)

(キ)「1.近赤外線吸収顕微鏡に使用するのに適したイメージング高級スペクトルフィルタを使用するスペクトル分析イメージング装置において、
広帯域光の光源と
前記広帯域光を音響光学同調フィルタに指向するためのコリメーション手段とを有し、前記音響光学同調フィルタは、フィルタに対して選択された周波数の入力信号を供給することによって光学的に同調可能なタイプであり、
音響光学同調フィルタに入力信号を供給するため、広帯域光の近赤外線波長を、音響同調フィルタによってフィルタし、音響光学同調フィルタを通過するように選択するため、音響光学フィルタと作動接続された手段を有し、
フィルタされた光を分析すべき対象物に指向させる手段を有し、前記フィルタされた光を前記対象物に当てることに応答して前記対象物内でそれぞれ複数の空間位置を透過した光又は複数の空間位置から反射した光を、2次元アレイの電荷結合素子からなるフォーカルプレーンアレイ検出器に指向させる手段を有し、前記フォーカルプレーンアレイ検出器の前記電荷結合素子(CCD)はそれぞれ複数の空間的位置からの透過光又は反射光の強度を測定するスペクトル分光イメージング装置。」(第16欄19行目から44行目。)

以上の記載から、甲第2号証には「イメージング分光顕微鏡として、光源からの光をサンプルに照射し、サンプルからの反射光を対物レンズを介して、レンズ36により集光された光の中間像を形成し、アイピースによってフラットなフィールドのスペクトルイメージをフォーカルプレーンアレイ検出器に供給し、該フォーカルプレーンアレイ検出器は対象物内でそれぞれ複数の空間位置から反射した光の強度を測定するスペクトル分光イメージング分光顕微鏡。」(以下、「甲第2号証に記載された発明1」という。)及び「イメージング分光顕微鏡において、光源からの光をサンプルに照射し、サンプルからの反射光を対物レンズを介して、レンズ36により集光された光の中間像を形成し、アイピースによってフラットなフィールドのスペクトルイメージをフォーカルプレーンアレイ検出器に供給し、該フォーカルプレーンアレイ検出器は対象物内でそれぞれ複数の空間位置から反射した光の強度を測定するスペクトル分光イメージング分光方法。」(以下、「甲第2号証に記載された発明2」という。)が記載されているものと認められる。

6-3.甲第4号証
甲第4号証(特開平7-12717号公報)には、次の記載がある。

(ク)「【0011】
【実施例】以下、図面に基づき本発明の好適な実施例を説明する。図1には本発明の一実施例にかかる全反射測定顕微鏡の概略構成が示されており、前記従来技術と対応する部分には符号100を加えて示し説明を省略する。同図に示す全反射測定顕微鏡は、カセグレン鏡120と半球状のプリズム112を備えている。
【0012】前記カセグレン鏡120は、中心部に孔122aが形成された凹面鏡よりなるカセグレン主鏡122と、前記カセグレン主鏡122よりも径の小さい凸面鏡よりなるカセグレン副鏡124とを、中心軸Cを一致させて対向配置している。前記プリズム112は略半球形であって、その凸面を前記カセグレン主鏡122に対向させ、その中心軸をカセグレン鏡120の中心軸Cに一致させ、その中心点をカセグレン鏡120による光収束位置に一致させて配置可能とされている。
【0013】そして、被測定物110上の測定点を目視観察する場合には、図中一点鎖線に示すようにプリズム112を上昇させ、可視光源126から出射された光束を、光路内外に回転移動可能な可動鏡128及び固定鏡130で反射させて入射光132を形成する。そして、該入射光132はカセグレン副鏡124、カセグレン主鏡122を介して被測定物110上に直接集光し、該被測定物110からの反射光はカセグレン主鏡122、カセグレン副鏡124に反射されて出射光134となる。該出射光134は固定鏡136、光路内外に回転移動可能な可動鏡138で反射させて接眼レンズ140に導く。」

6-4.甲第14号証
甲第14号証(特開平5-10872号公報)には、次の記載がある。

(ケ)「【0018】図4は本発明の一実施例にかかる顕微赤外ATR測定装置の構成を示す。図4において、1はゲルマニウム半球プリズム、2は試料、3a,3bは回転角およびあおり角を調整できる平面鏡である。4a,4b,4cは凹面鏡、5a,5b,5cは凸面鏡で、4aと5a、4bと5b,4cと5cとでそれぞれカセグレイン光学系を形成している。6は入射スリット、8はハーフミラー、9は赤外光用撮像素子、10はモニタである。11は赤外光光源で、本実施例の場合、スペクトル測定用の光源11は試料観察用の光源7を兼ねている。12はMCT検出器である。13は試料台であり、紙面に対して上下、左右および垂直方向の3つの方向に自由に動かすことができる。14はプリズムを保持する側枠、15は凹面鏡である。
...
【0020】光源7を兼ねる光源11より出射された光はまた、凹面鏡および平面鏡から構成される図示しない別の光学系によって図4の紙面後方よりハーフミラー8に導かれ、カセグレイン光学系4c,5cによって集光されてプリズム1の底面上に焦点を結ぶ。焦点下に位置させられた試料2で反射した光は、カセグレイン光学系4c,5cおよびハーフミラー8を経て赤外光用撮像素子9に導かれる。撮像素子9の信号はモニタ10に送られ、したがって、モニタ10上で試料を観察することができる。」

6-5.甲第17号証
甲第17号証(特開平5-322745号公報)には、次の記載がある。

(コ)「【0001】
【技術分野】本発明は、一般に、内反射体(IRE:internal reflection element)に関連し、かつ特に、分析されている固体あるいは液体の小さい部分との接触を保証するよう湾曲面を有することが好ましい内反射体に関連している。
【0002】
【背景技術】内反射分光学(IRS:internal reflection spectroscopy)は固体および液体を分析する分析技術として受け入れられている。生産品質制御あるいは品質保証法として、液体、ペースト、マル(mull)等のIRS 分析は全く広く採用されている。液体サンプルにIRS を使用する流行はスペクトラ・テクニック・サークル(Spectra-Tech Circle) セルおよび水平減衰全反射(horizontal ATR)(接触子TM[ContactorTM ])アクセサリの受け入れと共に増大している。スペクトラ・テクニック・サークル・セルは米国特許第4,595,833 号に開示されている。スペクトラ・テクニックの水平ATR アクセサリは米国特許第4,730,833 号に開示されている。」

(サ)「【0016】
【実施例】図面をさらに詳しく参照し、最初に図1を参照すると、単一内反射体(SIRE)は一般に1で示された基体(body)からなっている。IRE 基体は結晶であることが好ましい。例示されているように、この基体は一般に半球上部2を含んでいる。反対側に対面する切頭半球部3はそれと共に一体に形成されている。切頭半球部3は湾曲凸サンプル接触面4を規定する。一方では任意の寸法の湾曲サンプル接触面はIRS 分析を改善するものと信じられているが、出願人のサンプル接触面は通常直径として250 ミクロン以下に保持され、好ましくは直径として100 ミクロン以下に保持される。ここで使用されたような術語「非常に小さい接触面(very samll contacting surface)」は直径として250 ミクロン以下の円形面、あるいはそれに匹敵する面積の他の面形態を意味している。
【0017】半球部2の半径R_(1) はソースの光学的特性とIRS 分光分析用にそれと共に使用された検出器光学系とに整合するように選択されている。通常、R_(1) の中心は必然的ではないがサンプル面の中心にある。典型的なIRS 光学系の一例は放射エネルギーソースを用いており、IRE と放射エネルギー検出器は譲受け人が以前に出願した米国特許出願番号第07/622,852号に記述され、これは参考のためにここに記述する。半径R_(1) は「内部反射分光学」なる本の頁98に開示された式を使用して選択でき、あるいはソースと検出器の既知の他の光学的特性の使用により選択できる。
...
【0019】米国特許出願番号第07/622,852号に例示されたIRS 対物系で使用される場合、R_(1) は約3mmであり、R_(2) は約 12.85mmである。半径R_(2) がその対物に特にクリティカルではないものの、それはサンプルの「平坦領域」に局所的に接触するために十分小さくなければならないが、しかし曲率が入射放射(impinging radiation)の入射角に著しく影響するほど小さくてはならない。ここで使用された術語「半球(hemisphere) 」は全 180°の円弧を要求せず、かつIRE の主要部分を構成する上部となるのに十分な任意の円弧を囲むことを意図している。」

以上の記載から、甲第17号証には「内反射分光学に用いられる内反射体(IRE)として、基体からなり、この基体は半球上部2を含み、反対側に対面する切頭半球部3はそれと共に一体に形成されており、切頭半球部3は湾曲凸サンプル接触面4を規定し、半球部2の半径R_(1) の中心はサンプル面の中心にある内反射体。」(以下、「甲第17号証に記載された発明」という。)が記載されているものと認められる。

7.本件特許発明1について
7-1.対比
本件特許発明1と甲第3号証に記載された発明1とを対比する。
甲第3号証に記載された発明1の「赤外光源150」は、本件特許発明1の「光源」に相当する。
また、甲第3号証に記載された発明1の「全反射プリズム112」に関し、その「平頭面112a」及び「凸曲面」は、本件特許発明1の「内部反射素子(IRE)」における「前面」及び「後面」に相当するものであり、甲第3号証に記載された発明1の「全反射プリズム112」は「平頭面112aが被測定液110に浸漬され」ることから、その浸漬され、被測定液と接触している平頭面112aの領域は、本件特許発明1の「内部反射素子(IRE)」における「前記前面が検査中のサンプルと係合する接触領域」に相当するものであるから、甲第3号証に記載された発明1の「その先端部が平頭面112aを形成しており、その基部が凸曲面を形成しており、該平頭面112aが被測定液110に浸漬されるようになっている全反射プリズム112」は、本件特許発明1の「前面と後面とを有し、前記前面が検査中のサンプルと係合する接触領域を含んだ内部反射素子(IRE)」に相当する。
そして、甲第3号証に記載された発明1の、入射光156を被測定液110上に照射する「カセグレン副鏡124及びカセグレン主鏡122」は、赤外光源からの光が、被測定液110とプリズム112の臨界面で全反射されるようにプリズム112を介して被測定液110上に照射させるものであるから、本件特許発明1の「前記前面での前記入力ビームの入射角が前記IREに対する臨界角以上となるように、前記IREの前記後面を介して、前記光源からの光を前記接触領域に差し向け、かつ、集光するための手段」に相当する。
さらに、甲第3号証に記載された発明1の「前記赤外光源150から出射された光束から赤外干渉光を生成するマイケルソン干渉計152」は、後の信号処理装置による信号処理によって赤外吸収スペクトルを求めるために、光源を変調するためのものであるから、本件特許発明1の、検出器と「前記光源との間を伝わる光を捕捉し、捕捉された光のスペクトル選択変調を実行するように結合された波長選択素子」に相当する。
また、甲第3号証に記載された発明1の「MCT検出器162」と、本件特許発明1の「複数の画素を含む2次元フォーカルプレーンアレイ(FPA)検出器」とは、吸収スペクトルを得るための「検出器」である点で共通している。
そして、甲第3号証に記載された発明1の「プリズム112の臨界面からの全反射光158をMCT検出器162に集光させるカセグレン主鏡122、カセグレン副鏡124」は、該全反射光が被測定液と接触している平頭面112aの領域から発せられることは明らかであるから、本件特許発明1の「前記接触領域から反射光を集光し、前記反射光を前記2次元フォーカルプレーンアレイ検出器上に結像させるための手段」と、「前記接触領域から反射光を集光し、前記反射光を検出器上に集光させるための手段」である点で共通している。
また、甲第3号証に記載された発明1の「全反射測定装置」と、本件特許発明1の「画像生成減衰全反射(ATR)分光装置」とは、「全反射(ATR)測定装置」である点で共通している。
そうすると、本件特許発明1と甲第3号証に記載された発明1とは、
「光源と、前面と後面とを有し、前記前面が検査中のサンプルと係合する接触領域を含んだ内部反射素子(IRE)と、検出器と、前記前面での前記入力ビームの入射角が前記IREに対する臨界角以上となるように、前記IREの前記後面を介して、前記光源からの光を前記接触領域に差し向け、かつ、集光するための手段と、前記接触領域から反射光を集光し、前記反射光を前記検出器上に集光させるための手段と、前記検出器と前記光源との間を伝わる光を捕捉し、捕捉された光のスペクトル選択変調を実行するように結合された波長選択素子とを有する、減衰全反射(ATR)分光装置。」
である点で一致し、次の点で相違している。

(相違点1)本件特許発明1では、検出器として「複数の画素を含む2次元フォーカルプレーンアレイ(FPA)検出器」を用いているのに対し、甲第3号証に記載された発明1では「MCT検出器」を用いている点。

(相違点2)接触領域から反射光を集光し、前記反射光を検出器上に集光させるための手段が、本件特許発明1では「2次元フォーカルプレーンアレイ検出器上に結像させ」ているのに対し、甲第3号証に記載された発明1では「MCT検出器に集光させ」ている点。

(相違点3)本件特許発明1では、「前記接触領域からの前記反射光は、前記接触領域の別々の点から反射された前記反射光のそれぞれの部分を含んでおり、前記反射光の前記それぞれの部分は集光されて、前記2次元フォーカルプレーンアレイ(FPA)検出器のそれぞれの画素上に結像され、前記サンプルの空間的に分解された吸収スペクトルを得ることができるように構成されている」のに対し、甲第3号証に記載された発明1ではそのような構成は備えていない点。

(相違点4)本件特許発明1は「画像生成減衰全反射(ATR)分光装置」であるのに対し、甲第3号証に記載された発明1は「全反射測定装置」であって、画像生成をするものではない点。

7-2.判断
上記相違点について判断する。

相違点1について。
甲第2号証には、イメージング分光顕微鏡として、対象物内でそれぞれ複数の空間位置から反射した光の強度をフォーカルプレーンアレイ検出器によって測定することが記載されている。
ここで、甲第3号証に記載された発明1は赤外吸収スペクトルを求める全反射測定装置であり、甲第2号証に記載された発明1はスペクトル分光イメージング分光顕微鏡であって、いずれも測定対象試料からの反射光に基づくスペクトル分光を行う装置として、同一の技術分野に属するものである。
そして、試料の測定を高速、広範囲に行うことが測定装置において一般的な課題であること、また単一の検出器によって測定するより、複数の検出器で同時に測定を行う方が、高速、広範囲に測定できることは、当業者であれば当然に有していた知識である。
してみると、甲第3号証に記載された発明1の全反射測定装置においても、上記の一般的な課題を有することは明らかであり、その課題の解決のために、単一の検出器に代えて複数の検出器を用いようとすることは、当業者であれば容易に想到し得たものであるから、甲第3号証に記載された発明1のMCT検出器に代えて、同一の技術分野に属する甲第2号証に記載された発明1のフォーカルプレーンアレイ検出器を用いて測定を行おうとすることは、当業者であれば容易に想到し得たものである。

相違点2について。
上記相違点1について示した点に鑑みれば、相違点2は、接触領域から反射光を集光し、前記反射光を検出器上に集光させるための手段が、本件特許発明1では「結像させ」ているのに対し、甲第3号証に記載された発明1では「集光させ」ている点となる。
ここで、甲第3号証に記載された発明1で「集光させ」ているのは、「カセグレン主鏡122、カセグレン副鏡124」からなるカセグレン光学系である。この点に関して、甲第4号証について摘記事項(ク)にカセグレン鏡を介して目視観察を行うことが記載され、また、甲第14号証について摘記事項(ケ)にカセグレン光学系を介して試料を観察することが記載されるように、カセグレン光学系が結像して集光を行うことは、周知の技術である。
そうすると、甲第3号証に記載された発明1の「カセグレン主鏡122、カセグレン副鏡124」が「プリズム112の臨界面からの全反射光158を」「集光させる」ことは、全反射光を結像して集光させていることに相当するのは明らかである。
してみると、相違点2は実質的に相違するものではない。

相違点3について。
上記相違点2について示したように、甲第3号証に記載された発明1は、全反射光を結像して検出器に集光しているものである。
ここで、甲第2号証には、摘記事項(キ)に「複数の空間位置から反射した光を、2次元アレイの電荷結合素子からなるフォーカルプレーンアレイ検出器に指向させる手段を有し、前記フォーカルプレーンアレイ検出器の前記電荷結合素子(CCD)はそれぞれ複数の空間的位置からの...反射光の強度を測定する」と記載されるように、サンプルの複数の空間的位置からの反射光を、フォーカルプレーンアレイ検出器で測定することが示されている。
そうすると、相違点1について示したように、甲第3号証に記載された発明1のMCT検出器に代えて、甲第2号証に記載された発明1のフォーカルプレーンアレイ検出器を用いて測定を行った場合、接触領域からの全反射光が結像して検出器に集光されるのであるから、「前記接触領域からの前記反射光は、前記接触領域の別々の点から反射された前記反射光のそれぞれの部分を含んでおり、前記反射光の前記それぞれの部分は集光されて、前記2次元フォーカルプレーンアレイ(FPA)検出器のそれぞれの画素上に結像され」ることは明らかである。
そして、甲第3号証に記載された発明1及び甲第2号証に記載された発明1のいずれも測定対象試料からの反射光に基づくスペクトル分光を行う装置であるから、上記のような構成によって測定を行うことで、「前記サンプルの空間的に分解された吸収スペクトルを得ることができる」ことは明らかである。

相違点4について。
以上、相違点1乃至3について示した点に鑑みれば、接触領域の別々の点から反射された反射光のそれぞれの部分を2次元フォーカルプレーンアレイ検出器のそれぞれの画素上に結像されるように構成することは容易であるから、甲第3号証に記載された発明1及び甲第2号証に記載された発明1から、画像生成をする全反射測定装置を構成することは、当業者であれば容易に想到し得たものである。

そして、本件特許発明1の作用効果も、甲第3号証に記載された発明1、甲第2号証に記載された発明1及び周知技術から当業者であれば予測できる範囲のものである。

7-3.まとめ
上記のとおり、本件特許発明1は、甲第3号証に記載された発明1、甲第2号証に記載された発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

7-4.被請求人の主張の検討
被請求人は答弁書(第30乃至36頁)において、「請求項1?18の発明は、他の先行技術(甲第2号証?甲第18号証)に対して有効であること」を主張している。この点について検討する。

7-4-1.「(2-3-1-5)画像形成フーリエ変換赤外線分光法(FT-IR)とATR顕微鏡の組み合わせは自明でなかったこと」
上記「7-2.判断」で相違点1について示したように、甲第3号証に記載された発明1と甲第2号証に記載された発明1とは同一の技術分野に属するものであり、また甲第1号証に依拠せずとも、当業者であれば組み合わせの動機付けは有していたものである。
また、ねじ回しの例示による主張(答弁書31頁(い))は、本件とどのような関わりがあるのか不明であり、組み合わせの動機付けがないとの根拠として参酌するに足りるものではない。
さらに、ATR分光装置の収差に関する主張(答弁書31頁(う))に関して、本件特許明細書には、【0014】段落にIREの形状と光学収差量とについての記載はあるものの、ATR分光装置の収差に関して何ら記載しておらず、またフォーカルプレーンアレイ検出器を用いることでATR分光装置の収差の悪影響を受けないことについては一切記載されておらず、被請求人の主張を参酌することはできない。
そして、検出器上の光の空間分布とサンプルの空間分布との相関性(答弁書32頁(え))について、上記「7-2.判断」で相違点3について示したように、甲第3号証に記載された発明1と甲第2号証に記載された発明1との組み合わせにより、接触領域の別々の点から反射された反射光のそれぞれの部分は、2次元フォーカルプレーンアレイ(FPA)検出器のそれぞれの画素上に結像されるものであるから、被請求人が主張するような作用効果は当業者であれば予測できる範囲のものである。

7-4-2.「(2-3-1-6)甲第7号証から甲第10号証について」
被請求人は、甲第7号証から甲第10号証には二次元アレイ検出器を用いた減衰全反射(ATR)分光法に関する技術を開示していない旨主張している。
しかし、上記「7-2.判断」で示したように、甲第7乃至第10号証を参照せずとも、当業者であれば甲第3号証に記載された発明1、甲第2号証に記載された発明1及び周知技術に基づいて本件特許発明1を想到し得たものであり、また、甲第7乃至第10号証がこの様な組み合わせを阻害する理由を示しているものとも認められない。

7-4-3.被請求人の平成20年5月29日付け上申書における主張
被請求人は、平成20年5月29日付け上申書(第10頁(3-3)(い))において、ATR分光法は、収差が大きいので、イメージングFT-IRをATR測定法に組み込む動機付けを否定するものである旨、主張している。しかし、上記「7-2.判断」で相違点2について示したように、甲第3号証に記載された発明1のカセグレン光学系は結像して集光するものであるから、収差の大小にかかわらず、そのような結像光学系を1点での光の検出ではなく、像としての光の検出に適用しようとすることが、当業者にとって特段困難であったとは認められず、そして、上記相違点1について示したように、甲第3号証に記載された発明1のMCT検出器に代えて、甲第2号証に記載された発明1のフォーカルプレーンアレイ検出器を用いて測定を行おうとすることが、当業者において想到困難であったとは認められない。

8.本件特許発明2について
本件特許発明2は本件特許発明1を引用し、「前記2次元フォーカルプレーンアレイ検出器に結合されており、前記2次元フォーカルプレーンアレイ検出器から画像情報を得るための信号処理装置をさらに備えた」との限定を付したものである。
この点について、甲第2号証の摘記事項(オ)に、「フォーカルプレーンアレイ検出器46は多数の個別の位置での入射光の強度を測定でき、受信した情報を記憶又は分析のためにコンピュータ又は類似の装置に転送することができる」と記載されている。このような「コンピュータ又は類似の装置」は、本件特許発明2の「信号処理装置」に相当するものであり、上記本件特許発明1について示したように、甲第3号証に記載された発明1と甲第2号証に記載された発明1との組み合わせを考える際、このような「コンピュータ又は類似の装置」もあわせて甲第3号証に記載された発明1に組み合わせることは、当業者であれば容易に想到し得たものである。
そうすると、本件特許発明2は、甲第3号証に記載された発明1、甲第2号証に記載された発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

9.本件特許発明3について
本件特許発明3は本件特許発明1を引用し、「光を差し向け、かつ、集光するための前記手段が、一つまたはそれ以上のレンズ素子からなり、前記反射光を集光し、反射光を結像させるための前記手段が、一つまたはそれ以上のレンズ素子からなる」との限定を付したものである。
この点について、甲第2号証の摘記事項(エ)に「この顕微鏡は10X(N.A.0.30)プランアクロマチックレンズ32と2.5Xプロゼクションアイピース40、42とを有している」と、また摘記事項(カ)に「それから固定ミラー20によって反射された光は集光レンズ22を通過する。集光レンズ22はサンプル35内の各点でサンプルに達する光の強度が均一になるように光の強度を保証する。集光レンズ22を通過した後、光は50/50ビームスプリッタによってXYステージ26の方向に反射される。...それから光はサンプル35に反射されて、光を拡大する対物レンズ32を通過する。
...
スペクトルイメージングの場合、光は方向変換ミラー25によってシングルポイント検出器44からレンズ36に向かうように反射される。レンズ36は集光された光の中間像を形成する。」と、それぞれ記載されるように、サンプルに光を照射するために集光レンズ22と対物レンズ32を、サンプルからの反射光を集光して像を形成するために対物レンズ32とレンズ36とを用いることが示されている。
甲第3号証に記載された発明1においては、入射光及び反射光に対してカセグレン光学系を適用しているが、光学系をどのように設計するかは当業者において適宜のものを採用すべきであって、甲第3号証に記載された発明1におけるカセグレン光学系に代えて、甲第2号証に示されるようなレンズを用いた光学系を採用して、本件特許発明3とすることは、当業者であれば容易に為し得たものである。

10.本件特許発明4について
本件特許発明4は本件特許発明1を引用し、「光を差し向け、集光するための前記手段が、一つまたはそれ以上の反射素子からなり、前記反射光を集光し、反射光を結像させるための前記手段が、一つまたはそれ以上の反射素子からなる」との限定を付したものである。
この点について、甲第3号証に記載された発明1における「カセグレン主鏡122、カセグレン副鏡124」は、反射素子からなるものである。
そうすると、本件特許発明4は、甲第3号証に記載された発明1、甲第2号証に記載された発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

11.本件特許発明5について
11-1.当審の判断
本件特許発明5は本件特許発明1を引用し、「前記IREの前記後面は凸面状であり、球の曲率を有し、前記曲率の中心が前記IREの前記前面に位置する」との限定を付したものである。
この点について、甲第17号証に記載された発明は「内反射分光学に用いられる内反射体(IRE)として、基体からなり、この基体は半球上部2を含み、反対側に対面する切頭半球部3はそれと共に一体に形成されており、切頭半球部3は湾曲凸サンプル接触面4を規定し、半球部2の半径R_(1) の中心はサンプル面の中心にある内反射体」であって、このようなIREは、半球上部が凸面状であり球の曲率を有し、その曲率の中心が半球上部と反対側に対面する切頭半球部の接触面にあるものであるから、本願特許発明5による限定を有するIREに相当する。
そして、このようなIREは内反射分光学に用いられるものであるから、全反射測定を行う際に用いられるものである。
そうすると、甲第3号証に記載された発明1における全反射プリズムとして、甲第17号証に記載された発明のIREを採用することは、当業者において適宜に為し得たものである。
してみると、本件特許発明5は、甲第3号証に記載された発明1、甲第2号証に記載された発明1、甲第17号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

11-2.被請求人の主張の検討
被請求人は答弁書(第36乃至37頁)において、甲第17号証の発明を甲第1号証の発明と組み合わせることについては無理がある旨、主張している。この点について、甲第17号証に記載された発明と甲第3号証に記載された発明1との組み合わせに対する主張として検討する。
まず、被請求人は甲第17号証に記載されたIREの前面形状に関して主張しているが、本件特許発明5はIREの前面形状について何ら規定するものではなく、当該主張は本件特許発明5の構成に基づくものではない。
また、被請求人は、甲第17号証に記載されたIREの前面形状が凸面状であるので、サンプルを走査するものである甲第1号証の発明とは組み合わせられない旨及び甲第17号証に記載されたIREを甲第1号証に記載されている顕微鏡に使用しても、検出器の前に位置決めされたピンホール又はスリットにより、接触領域の別々の部分から反射された光を検出できない旨、主張しているが、上記「7.本件特許発明1について」で示したように、甲第3号証に記載された発明1と甲第2号証に記載された発明1とを組み合わせることで、接触領域からの全反射光を結像して検出できるのであるから、サンプルを走査する必然性はなくまた接触領域の別々の部分から反射された光を検出できるものとなるから、被請求人の主張は失当である。
以上のとおり、被請求人の主張について、参酌すべき理由はない。

12.本件特許発明6について
12-1.当審の判断
本件特許発明6は本件特許発明1を引用し、「前記IREの前記前面は凸面状であり、球の曲率を有し、前記曲率の半径が後面半径よりも実質的に長い」との限定を付したものである。
この点について、甲第17号証には、上記「11.本件特許発明5について」で示した点に加えて、摘記事項(サ)に「R_(1) は約3mmであり、R_(2) は約 12.85mmである」例が示されている。このような形状のIREは、本願特許発明6による限定を有するIREに相当する。
してみると、上記「11.本件特許発明5について」で示したのと同様、本件特許発明6は、甲第3号証に記載された発明1、甲第2号証に記載された発明1、甲第17号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

12-2.被請求人の主張の検討
被請求人は答弁書(第37乃至38頁)において、甲第17号証の発明を甲第1号証の発明と組み合わせることについては無理がある旨、主張している。この点について、甲第17号証に記載された発明と甲第3号証に記載された発明1との組み合わせに対する主張として検討すると、上記「11-2.被請求人の主張の検討」にて示したとおりであり、被請求人の主張は失当である。
また、甲第17号証に記載された発明を、甲第3号証に記載された発明1と組み合わせることを阻害する理由があるとも認められない。
以上のとおり、被請求人の主張について、参酌すべき理由はない。

13.本件特許発明7について
本件特許発明7は本件特許発明1を引用し、「前記スペクトル選択素子が、前記光源と前記IREの間に配置され、光のスペクトル多重入射ビームを生成して、前記IREに供給する干渉計により構成された」との限定を付したものである。
この点について、甲第3号証に記載された発明1は「前記赤外光源150から出射された光束から赤外干渉光を生成するマイケルソン干渉計152」を有しており、このマイケルソン干渉計は、本件特許発明7における干渉計に相当するものである。
そうすると、本件特許発明7は、甲第3号証に記載された発明1、甲第2号証に記載された発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

14.本件特許発明8について
14-1.対比
本件特許発明8と甲第3号証に記載された発明1とを対比する。
上記「7-1.対比」にて、本件特許発明1と甲第3号証に記載された発明1とを対比した際に考慮した点に鑑みると、甲第3号証に記載された発明1の「赤外光源150」、「その先端部が平頭面112aを形成しており、その基部が凸曲面を形成しており、該平頭面112aが被測定液110に浸漬されるようになっている全反射プリズム112」、「カセグレン副鏡124及びカセグレン主鏡122」及び「前記赤外光源150から出射された光束から赤外干渉光を生成するマイケルソン干渉計152」は、それぞれ本件特許発明8の「光源」、「前面と後面とを有し、前記前面が検査中のサンプルと係合する接触領域を含んだ内部反射素子(IRE)」、「前記前面における前記入力ビームの入射角が前記IREの臨界角以上になるように、前記IREの前記後面を介して、前記接触領域の方に、前記入力ビームを差し向けるように配置された第1光学系」及び「前記光源と」検出器「の間を伝わる光を捕捉し、捕捉された光のスペクトル選択変調を実行するように結合された干渉計」に相当する。
また、甲第3号証に記載された発明1の「MCT検出器162」と、本件特許発明8の「2次元フォーカルプレーンアレイ検出器」とは、吸収スペクトルを得るための「検出器」である点で共通している。
そして、甲第3号証に記載された発明1の「プリズム112の臨界面からの全反射光158をMCT検出器162に集光させるカセグレン主鏡122、カセグレン副鏡124」は、該全反射光が被測定液と接触している平頭面112aの領域から発せられることは明らかであるから、本件特許発明8の「前記接触領域から反射光を集光し、前記2次元フォーカルプレーンアレイ検出器上に、反射光を結像させるように配置されていて、前記接触領域のそれぞれの別々の点から反射された光を、前記2次元フォーカルプレーンアレイ検出器の別々の画素上に結像させるように構成された第2光学系」と、「前記接触領域から反射光を集光し、前記反射光を検出器上に集光させるための手段」である点で共通している。
また、甲第3号証に記載された発明1の「全反射測定装置」と、本件特許発明8の「画像生成減衰全反射(ATR)分光装置」とは、「全反射(ATR)測定装置」である点で共通している。
そうすると、本件特許発明8と甲第3号証に記載された発明1とは、
「光源と、前面と後面とを有し、前記前面が検査中のサンプルと係合する接触領域を含んだ内部反射素子(IRE)と、検出器と、前記前面における前記入力ビームの入射角が前記IREの臨界角以上になるように、前記IREの前記後面を介して、前記接触領域の方に、前記入力ビームを差し向けるように配置された第1光学系と、前記接触領域から反射光を集光し、前記反射光を検出器上に集光させるための手段と、前記光源と前記検出器の間を伝わる光を捕捉し、捕捉された光のスペクトル選択変調を実行するように結合された干渉計と、を有する、減衰全反射(ATR)分光装置。」
である点で一致し、次の点で相違している。

(相違点1)本件特許発明8では、検出器として「2次元フォーカルプレーンアレイ検出器」を用いているのに対し、甲第3号証に記載された発明1では「MCT検出器」を用いている点。

(相違点2)接触領域から反射光を集光し、前記反射光を検出器上に集光させるための手段が、本件特許発明8では「2次元フォーカルプレーンアレイ検出器上に、反射光を結像させるように配置されていて、前記接触領域のそれぞれの別々の点から反射された光を、前記2次元フォーカルプレーンアレイ検出器の別々の画素上に結像させるように構成された第2光学系」であるのに対し、甲第3号証に記載された発明1では「MCT検出器に集光させ」るものである点。

(相違点3)本件特許発明8は「画像生成減衰全反射(ATR)分光装置」であるのに対し、甲第3号証に記載された発明1は「全反射測定装置」であって、画像生成をするものではない点。

14-2.判断
上記相違点について判断する。

相違点1について。
上記「7-2.判断」にて、本件特許発明1に関して相違点1について示したのと同様に、甲第3号証に記載された発明1のMCT検出器に代えて、同一の技術分野に属する甲第2号証に記載された発明1のフォーカルプレーンアレイ検出器を用いて測定を行おうとすることは、当業者であれば容易に想到し得たものである。

相違点2について。
上記「7-2.判断」にて、本件特許発明1に関して相違点2及び3について示した点を考慮すると、まず甲第3号証に記載された発明1で「集光させ」ていることは、実質的に全反射光を結像して集光させているものである。
また、相違点1について示したように、甲第3号証に記載された発明1のMCT検出器に代えて、甲第2号証に記載された発明1のフォーカルプレーンアレイ検出器を用いて測定を行った場合、接触領域からの全反射光が結像して検出器に集光されるのであるから、甲第3号証に記載された発明1の「プリズム112の臨界面からの全反射光158をMCT検出器162に集光させるカセグレン主鏡122、カセグレン副鏡124」が「2次元フォーカルプレーンアレイ検出器上に、反射光を結像させるように配置されていて、前記接触領域のそれぞれの別々の点から反射された光を、前記2次元フォーカルプレーンアレイ検出器の別々の画素上に結像させるように構成され」ることは明らかである。

相違点3について。
以上、相違点1及び2について示した点に鑑みれば、甲第3号証に記載された発明1及び甲第2号証に記載された発明1から、画像生成をする全反射測定装置を構成することは、当業者であれば容易に想到し得たものである。

14-3.まとめ
上記のとおり、本件特許発明8は、甲第3号証に記載された発明1、甲第2号証に記載された発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

14-4.被請求人の主張の検討
被請求人は答弁書(第39頁)において、本件特許発明8は、上記相違点2として示した点が甲第1号証から甲第6号証に示されていない旨主張している。
この点については、上記「14-2.判断」にて、相違点2について示したとおりであり、被請求人の主張について、参酌すべき理由はない。

15.本件特許発明9について
本件特許発明9は本件特許発明8を引用し、「前記干渉計が、ビーム・スプリッタと、少なくとも一つの固定ミラーと、少なくとも一つの可動ミラーとを含んでいる」との限定を付したものである。
この点について、甲第3号証に記載された発明1は「マイケルソン干渉計152」を備えている。マイケルソン干渉計が、ビームスプリッタと、固定ミラーと、可動ミラーとから構成されることは、当業者には明らかである。
そうすると、本件特許発明9は、甲第3号証に記載された発明1、甲第2号証に記載された発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

16.本件特許発明10について
本件特許発明10は本件特許発明8を引用し、「前記光源が、広帯域赤外線光源からなる」との限定を付したものである。
この点について、甲第3号証に記載された発明1は「赤外光源150」を用いている。また、甲第3号証に記載された発明1は「前記赤外光源150から出射された光束から赤外干渉光を生成するマイケルソン干渉計152」を用いて赤外干渉光を生成し、「MCT検出器162からの光強度信号を読取り、公知の信号処理を行って赤外吸収スペクトルを求める信号処理装置」によって赤外吸収スペクトルを求めており、このような手法はFT-IRとして当業者に周知の技術であって、その際に用いられる赤外光源は一般に広帯域のものである。すると、甲第3号証に記載された発明1の赤外光源は、広帯域赤外線光源であることは、当業者には明らかである。
そうすると、本件特許発明10は、甲第3号証に記載された発明1、甲第2号証に記載された発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

17.本件特許発明11について
本件特許発明11は本件特許発明8を引用し、「前記第1光学系が、一つまたはそれ以上のレンズ素子からなり、前記第2光学系が、一つまたはそれ以上のレンズ素子からなる」との限定を付したものである。
この点については、上記「9.本件特許発明3について」にて示したのと同様に、甲第3号証に記載された発明1におけるカセグレン光学系に代えて、甲第2号証に示されるようなレンズを用いた光学系を採用して、本件特許発明11とすることは、当業者であれば容易に為し得たものである。

18.本件特許発明12について
本件特許発明12は本件特許発明8を引用し、「前記第1光学系が、一つまたはそれ以上の反射素子からなり、前記第2光学系が、一つまたはそれ以上の反射素子からなる」との限定を付したものである。
この点については、上記「10.本件特許発明4について」にて示したのと同様に、甲第3号証に記載された発明1における「カセグレン主鏡122、カセグレン副鏡124」は、反射素子からなるものであって、本件特許発明12は、甲第3号証に記載された発明1、甲第2号証に記載された発明1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

19.本件特許発明13について
本件特許発明13は本件特許発明8を引用し、「前記IREの前記後面が、凸面状で球の曲率を有し、前記曲率の中心が前記IREの前記前面に位置する」との限定を付したものである。
この点については、上記「11.本件特許発明5について 11-1.当審の判断」にて示したのと同様に、甲第3号証に記載された発明1における全反射プリズムとして、甲第17号証に記載された発明のIREを採用することは、当業者において適宜に為し得たものであって、本件特許発明13は、甲第3号証に記載された発明1、甲第2号証に記載された発明1、甲第17号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

20.本件特許発明14について
20-1.当審の判断
本件特許発明14は本件特許発明13を引用し、「前記IREの前記前面が、凸面状であり、かつ球の曲率を有し、前記曲率の半径が、後面の半径よりも実質的に長い」との限定を付したものである。
この点については、上記「12.本件特許発明6について 12-1.当審の判断」にて示したのと同様に、本件特許発明14は、甲第3号証に記載された発明1、甲第2号証に記載された発明1、甲第17号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

20-2.被請求人の主張の検討
被請求人は答弁書(第40頁)において、本願特許発明14はIREの前面が凸面状である点を主張している。
しかし、この点については、上記「20-1.当審の判断」で示したとおりであり、被請求人の主張について、参酌すべき理由はない。

21.本件特許発明15について
21-1.対比
本件特許発明15と甲第3号証に記載された発明2とを対比する。
甲第3号証に記載された発明2の「プリズム112」及び「被測定液110」は、本件特許発明15の「ATR結晶体」及び「サンプル」に相当するものであり、甲第3号証に記載された発明2において、プリズム112の平頭面112aを被測定液110に僅かに浸漬させることで、プリズムと被測定液との間の接触領域が定められることは明らかであるから、甲第3号証に記載された発明2の「プリズム112の平頭面112aを、シャーレ142上に採取した被測定液110に僅かに浸漬させ」ることは、本件特許発明15の「サンプルの一部分にわたり、かつ前記サンプルに接触して、ATR結晶体を配置させて、前記ATR結晶体と前記サンプルの間の接触領域を定める段階」に相当する。
また、甲第3号証に記載された発明2の「該被測定液110とプリズム112の臨界面からの全反射光158が形成され」るように「光源からの入射光156」を「被測定液110上に照射」することは、プリズムの臨界角以上の入射角度で入射角度を臨界面に照射していることは明らかであるから、甲第3号証に記載された発明2の「光源からの入射光156はカセグレン副鏡124、カセグレン主鏡122及びプリズム112を介して被測定液110上に照射され、該被測定液110とプリズム112の臨界面からの全反射光158が形成され」ることは、本件特許発明15の「光源から発する光のビームを、前記ATR結晶体を介して、前記ATR結晶体の臨界角以上の入射角度で、前記接触領域に差し向けることにより、前記接触領域を照射する段階」に相当する。
そして、甲第3号証に記載された発明2において「該プリズム112の臨界面からの全反射光158は、カセグレン主鏡122、カセグレン副鏡124及び固定鏡160によってMCT検出器162に集光され」ることは、「該プリズム112の臨界面からの全反射光158」を集光する段階と、該集光した光を「MCT検出器162に集光」する段階を含むものであり、甲第3号証に記載された発明2の「MCT検出器162」と、本件特許発明2の「検出器の2次元アレイ」とは、「検出器」である点で共通しているから、この前者の段階は、本件特許発明15の「前記接触領域からの反射光を集光する段階」に相当し、後者の段階は、本件特許発明15の「前記接触領域からの前記反射光を、検出器の2次元アレイ上に結像させて、前記接触領域の別々の点から反射された前記反射光の前記それぞれの部分を、前記検出器の2次元アレイのそれぞれの別々の画素上に結像させる段階」と、「前記接触領域からの反射光を、検出器に集光させる段階」である点で共通している。
さらに、甲第3号証に記載された発明2において「赤外光源150から出射された光束はマイケルソン干渉計152に導光して赤外干渉光を生成されている」ことは、「該MCT検出器162でその光強度が検出され、その検出信号が信号処理装置164に供給され、公知の信号処理を行って赤外吸収スペクトルを求められ」ることと共に、被測定液の赤外吸収スペクトルを求めるためのものであり、該「マイケルソン干渉計152」は、本件特許発明15の「波長選択素子」に相当するものであるから、甲第3号証に記載された発明2の「赤外光源150から出射された光束はマイケルソン干渉計152に導光して赤外干渉光を生成されている」ことは、本件特許発明15の「前記光源と前記検出器の2次元アレイとの間に、波長選択素子を置いて、前記接触領域の異なった位置におけるスペクトル情報を与える段階」と、「前記光源と前記検出器との間に、波長選択素子を置いて、前記接触領域のスペクトル情報を与える段階」である点で共通している。
また、甲第3号証に記載された発明2の「全反射測定方法」は、被測定液の赤外吸収スペクトルを求めるためのものであるから、本件特許発明15の「サンプルのスペクトル吸収画像を得る方法」と、「サンプルのスペクトル吸収を得る方法」である点で共通している。
そうすると、本件特許発明15と甲第3号証に記載された発明2とは、
「サンプルのスペクトル吸収を得る方法であって、
サンプルの一部分にわたり、かつ前記サンプルに接触して、ATR結晶体を配置させて、前記ATR結晶体と前記サンプルの間の接触領域を定める段階と、
光源から発する光のビームを、前記ATR結晶体を介して、前記ATR結晶体の臨界角以上の入射角度で、前記接触領域に差し向けることにより、前記接触領域を照射する段階と、
前記接触領域からの反射光を集光する段階と、
前記接触領域からの反射光を、検出器に集光させる段階と、
前記光源と前記検出器との間に、波長選択素子を置いて、前記接触領域のスペクトル情報を与える段階と、
を含む、サンプルのスペクトル吸収を得る方法。」
である点で一致し、次の点で相違している。

(相違点1)本件特許発明15では、検出を行うために「検出器の2次元アレイ」を用いているのに対し、甲第3号証に記載された発明2では「MCT検出器」を用いている点。

(相違点2)「接触領域からの反射光を集光する段階」が、本件特許発明15では「前記反射光は、前記接触領域の別々の点から反射された前記反射光のそれぞれの部分を含んで」いるのに対し、甲第3号証に記載された発明2ではそのような特定はされていない点。

(相違点3)「前記接触領域からの反射光を、検出器に集光させる段階」が、本件特許発明15では「前記接触領域からの前記反射光を、検出器の2次元アレイ上に結像させて、前記接触領域の別々の点から反射された前記反射光の前記それぞれの部分を、前記検出器の2次元アレイのそれぞれの別々の画素上に結像させる段階」であるのに対し、甲第3号証に記載された発明2ではそのような特定はされていない点。

(相違点4)「前記光源と前記検出器との間に、波長選択素子を置いて、前記接触領域のスペクトル情報を与える段階」について、本件特許発明15では検出器が「検出器の2次元アレイ」であって、前記接触領域の「異なった位置における」スペクトル情報を与えるものであるのに対し、甲第3号証に記載された発明2では検出器はMCT検出器であり、スペクトル情報についての特定はされていない点。

(相違点5)本件特許発明15は「サンプルのスペクトル吸収画像を得る方法」であるのに対し、甲第3号証に記載された発明2にはスペクトル吸収画像を得ることについては記載されていない点。

21-2.判断
上記相違点について判断する。

相違点1について。
甲第2号証に記載された発明2は、イメージング分光方法として、対象物内でそれぞれ複数の空間位置から反射した光の強度をフォーカルプレーンアレイ検出器によって測定するものである。このフォーカルプレーンアレイ検出器が、検出器の2次元アレイであることは、当業者には明らかである。
そして、「7-2.判断」で相違点1について示したのと同様の趣旨により、甲第3号証に記載された発明2のMCT検出器を用いて検出することに代えて、同一の技術分野に属する甲第2号証に記載された発明2の検出器の2次元アレイを用いて検出を行おうとすることは、当業者であれば容易に想到し得たものである。

相違点2及び3について。
「7-2.判断」で相違点2及び3について示した点に鑑みれば、上記相違点1について示したように、甲第3号証に記載された発明2のMCT検出器を用いて検出することに代えて、甲第2号証に記載された発明2の2次元アレイを用いて検出を行った場合、接触領域からの全反射光が結像して2次元アレイに集光されることとなるから、「前記反射光は、前記接触領域の別々の点から反射された前記反射光のそれぞれの部分を含んで」いるものとなり、「前記接触領域からの前記反射光を、検出器の2次元アレイ上に結像させて、前記接触領域の別々の点から反射された前記反射光の前記それぞれの部分を、前記検出器の2次元アレイのそれぞれの別々の画素上に結像させる」ものとなることは明らかである。

相違点4について。
上記相違点2及び3について示したのと同様に、甲第3号証に記載された発明2のMCT検出器を用いて検出することに代えて、甲第2号証に記載された発明2の2次元アレイを用いて検出を行った場合、前記接触領域の異なった位置におけるスペクトル情報を与えるものとなることは明らかである。

相違点5について。
以上、相違点1乃至4について示した点に鑑みれば、接触領域の別々の点から反射された反射光のそれぞれの部分を、検出器の2次元アレイのそれぞれの別々の画素上に結像させるように構成することは容易であるから、甲第3号証に記載された発明2及び甲第2号証に記載された発明2から、サンプルのスペクトル吸収画像を得る方法を構成することは、当業者であれば容易に想到し得たものである。

そして、本件特許発明15の作用効果も、甲第3号証に記載された発明2、甲第2号証に記載された発明2及び周知技術から当業者であれば予測できる範囲のものである。

21-3.まとめ
上記のとおり、本件特許発明15は、甲第3号証に記載された発明2、甲第2号証に記載された発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

21-4.被請求人の主張の検討
被請求人は答弁書(第40乃至44頁)において、本件特許発明15は甲第1乃至第6、第13乃至第16及び第18号証などに記載された発明を参酌しても、容易に発明をすることができない旨、主張している。この点について検討する。
しかし、当該主張は甲第1号証及び甲第18号証に基づくものであって、上記の判断を左右するものではなく、また、甲第1号証及び甲第18号証が上記の判断における組み合わせを阻害する理由を示しているものとも認められないことから、被請求人の主張を参酌すべき理由はない。

22.本件特許発明16について
本件特許発明16は本件特許発明15を引用し、「検出器の前記二次元アレイにより収集されたデータをスペクトル吸収画像に変換する段階を更に含む」との限定を付したものである。
この点について、甲第3号証に記載された発明2は「MCT検出器162でその光強度が検出され、その検出信号が信号処理装置164に供給され、公知の信号処理を行って赤外吸収スペクトルを求められ」るものであり、検出器により収集されたデータをスペクトル吸収に変換することは行われている。そして、上記「21-2.判断」で相違点1について示したように、甲第3号証に記載された発明2のMCT検出器を用いて検出することに代えて、甲第2号証に記載された発明2の検出器の2次元アレイを用いて検出を行おうとした際、検出器からの信号処理も検出器に応じたものとすることは当業者であれば当然に配慮すべき事項であり、検出器の2次元アレイで検出した信号を処理する際、その処理結果を画像に変換することは、当業者であれば適宜に為し得たものである。
そうすると、本件特許発明16は、甲第3号証に記載された発明2、甲第2号証に記載された発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

23.本件特許発明17について
本件特許発明17は本件特許発明16を引用し、「前記変換する段階が、前記2次元アレイ検出器から強度情報を検索し、前記強度情報のフーリエ変換表現を演算することにより、データを変換する」との限定を付したものである。
この点について、甲第3号証に記載された発明2は、「赤外光源150から出射された光束はマイケルソン干渉計152に導光して赤外干渉光を生成されて」おり、「MCT検出器162でその光強度が検出され、その検出信号が信号処理装置164に供給され、公知の信号処理を行って赤外吸収スペクトルを求められ」るものであって、この様な手法はFT-IRとして当業者に周知の技術であって、検出器からの信号を、フーリエ変換によってスペクトルに変換するものである。
そして、上記「21-2.判断」で相違点1について示したように、甲第3号証に記載された発明2のMCT検出器を用いて検出することに代えて、甲第2号証に記載された発明2の検出器の2次元アレイを用いて検出を行おうとした際、検出器からの信号処理も検出器に応じたものとすることは当業者であれば当然に配慮すべき事項であり、検出器の2次元アレイで検出した信号を、フーリエ変換によってスペクトルに変換することは、当業者であれば適宜に為し得たものである。
そうすると、本件特許発明17は、甲第3号証に記載された発明2、甲第2号証に記載された発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

24.本件特許発明18について
24-1.対比
本件特許発明18と甲第3号証に記載された発明1とを対比する。
上記「7-1.対比」にて、本件特許発明1と甲第3号証に記載された発明1とを対比した際に考慮した点に鑑みると、甲第3号証に記載された発明1の「赤外光源150」及び「前記赤外光源150から出射された光束から赤外干渉光を生成するマイケルソン干渉計152」は、それぞれ本件特許発明18の「光源」及び「前記光源と」検出器「の間を伝わる光を捕捉し、捕捉された光のスペクトル選択変調を実行するように結合された干渉計」に相当する。
また、甲第3号証に記載された発明1の「その先端部が平頭面112aを形成しており、その基部が凸曲面を形成しており、該平頭面112aが被測定液110に浸漬されるようになっている全反射プリズム112」は、本件特許発明18の「凸面状前面と後面とを有し、前記前面が検査中のサンプルと係合する接触領域を含んだ内部反射素子(IRE)」と、「前面と後面とを有し、前記前面が検査中のサンプルと係合する接触領域を含んだ内部反射素子(IRE)」である点で共通し、甲第3号証に記載された発明1の「MCT検出器162」と、本件特許発明18の「2次元フォーカルプレーンアレイ検出器」とは、吸収スペクトルを得るための「検出器」である点で共通している。
そして、甲第3号証に記載された発明1の「カセグレン副鏡124及びカセグレン主鏡122」は、プリズム112を介して該入射光156を被測定液110上に照射し、かつプリズム112の臨界面からの全反射光158をMCT検出器162に集光させるためのものであるから、本件特許発明18の「前記IREが焦点に位置する顕微鏡対物レンズ」であって、「前記顕微鏡対物レンズが、前記IREの前記後面を介して、前記接触領域に向けて、前記光の入力ビームの焦点を合わせ、反射光を集光」するように「位置決めされ、かつ構成されて」いるものに相当し、また、甲第3号証に記載された発明1の「固定鏡154」は、本件特許発明18の「光の前記入力ビームを、前記顕微鏡対物レンズに差し向けるための手段」に相当する。
さらに、甲第3号証に記載された発明1の「全反射測定装置」と、本件特許発明18の「画像生成減衰全反射(ATR)超小型分光装置」とは、「全反射(ATR)測定装置」である点で共通している。
そうすると、本件特許発明18と甲第3号証に記載された発明1とは、
「光源と、前面と後面とを有し、前記前面が検査中のサンプルと係合する接触領域を含んだ内部反射素子(IRE)と、検出器と、前記IREが焦点に位置する顕微鏡対物レンズと、光の前記入力ビームを、前記顕微鏡対物レンズに差し向けるための手段とを有し、前記顕微鏡対物レンズが、前記IREの前記後面を介して、前記接触領域に向けて、前記光の入力ビームの焦点を合わせ、反射光を集光するように、位置決めされ、かつ構成されており、さらに、前記光源と前記検出器の間を伝わる光を捕捉し、捕捉された光のスペクトル選択変調を実行するように結合された干渉計を備えた、減衰全反射(ATR)分光装置。」である点で一致し、次の点で相違している。

(相違点1)内部反射素子(IRE)が、本件特許発明18では「凸面状前面」を有するのに対し、甲第3号証に記載された発明1ではその先端部が平頭面112aを形成している点。

(相違点2)本件特許発明18では、検出器として「2次元フォーカルプレーンアレイ検出器」を用いているのに対し、甲第3号証に記載された発明1では「MCT検出器」を用いている点。

(相違点3)本件特許発明18では、「結像光学素子」を有し、顕微鏡対物レンズが、「反射光を、前記結像光学素子に差し向けるように」位置決めされ、かつ構成されると共に、「前記結像光学素子が、前記反射光を前記2次元フォーカルプレーンアレイ検出器上に結像させて、前記接触領域のそれぞれの別々の点から反射されて集光された光を、前記2次元フォーカルプレーンアレイ検出器のそれぞれの別々の画素上に結像させるように構成されて」いるのに対し、甲第3号証に記載された発明1では結像光学素子について明記されていない点。

(相違点4)本件特許発明1は「画像生成減衰全反射(ATR)超小型分光装置」であるのに対し、甲第3号証に記載された発明1は「全反射測定装置」であって、画像生成をするものではなく、超小型についても記載がない点。

24-2.判断
上記相違点について判断する。

相違点1について。
上記「12.本件特許発明6について 12-1.当審の判断」にて示したように、IREの前面が凸面状であるようなものは、甲第17号証に記載されている。そして、甲第3号証に記載された発明1における全反射プリズムとして、このようなIREを採用することは、当業者において適宜に為し得たものである。

相違点2について。
上記「7-2.判断」にて、本件特許発明1に関して相違点1について示したのと同様に、甲第3号証に記載された発明1のMCT検出器に代えて、同一の技術分野に属する甲第2号証に記載された発明1のフォーカルプレーンアレイ検出器を用いて測定を行おうとすることは、当業者であれば容易に想到し得たものである。

相違点3について。
上記「7-2.判断」にて、本件特許発明1に関して相違点2について示したように、甲第3号証に記載された発明1の「カセグレン主鏡122、カセグレン副鏡124」は、全反射光を結像して検出器上に集光させているものである。このように、甲第3号証に記載された発明1では結像する手段を既に有していることから、結像光学素子について特に記載はしていないが、甲第2号証の摘記事項(カ)に「それから固定ミラー20によって反射された光は集光レンズ22を通過する。集光レンズ22はサンプル35内の各点でサンプルに達する光の強度が均一になるように光の強度を保証する。集光レンズ22を通過した後、光は50/50ビームスプリッタによってXYステージ26の方向に反射される。...それから光はサンプル35に反射されて、光を拡大する対物レンズ32を通過する。
...
スペクトルイメージングの場合、光は方向変換ミラー25によってシングルポイント検出器44からレンズ36に向かうように反射される。レンズ36は集光された光の中間像を形成する。」と記載されるように、サンプルからの反射光を集光して像を形成するために、対物レンズ32とレンズ36とを用いることは、当業者であれば必要に応じて為し得た程度のものであり、甲第3号証に記載された発明1において、像を形成するような光学素子を備えるような光学系を採用することは、当業者において適宜に為し得たものである。
そして、そのような光学系を構成した際に、上記「7-2.判断」にて、本件特許発明1に関して相違点3について示した点に鑑みれば、上記相違点2について示したように、甲第3号証に記載された発明1のMCT検出器に代えて、甲第2号証に記載された発明1のフォーカルプレーンアレイ検出器を用いて測定を行った場合、接触領域からの全反射光が結像して検出器に集光されるのであるから、「前記結像光学素子が、前記反射光を前記2次元フォーカルプレーンアレイ検出器上に結像させて、前記接触領域のそれぞれの別々の点から反射されて集光された光を、前記2次元フォーカルプレーンアレイ検出器のそれぞれの別々の画素上に結像させるように構成され」るものとなることは明らかである。

相違点4について。
以上、相違点1乃至3について示した点に鑑みれば、接触領域のそれぞれの別々の点から反射されて集光された光を、2次元フォーカルプレーンアレイ検出器のそれぞれの別々の画素上に結像させるように構成することは容易であるから、甲第3号証に記載された発明1及び甲第2号証に記載された発明1から、画像生成をする全反射測定装置を構成することは、当業者であれば容易に想到し得たものである。
また、「超小型」の点について、本件特許明細書を参照しても、「画像生成ATRの超小型分光計」などの表現において登場するのみであって、具体的にどのような技術的限定を行うかなどについては記載がない。
一方、甲第3号証の摘記事項(ア)には「曲率半径が3mmのプリズム112を円錐角60度に形成し、その先端部分を直径0.3mm程度の平坦な面とする」ことが記載されており、甲第17号証の摘記事項(サ)には、単一内反射体(SIRE)として、「出願人のサンプル接触面は通常直径として250 ミクロン以下に保持され、好ましくは直径として100 ミクロン以下に保持される」ことが記載されるように、これらの全反射測定装置は、直径0.数ミリ程度の領域を測定対象とするものであり、通常「超小型」と称することができる程度の大きさである。
してみると、甲第3号証に記載された発明1及び甲第2号証に記載された発明1から構成した画像生成全反射測定装置を、超小型と称することは、当業者において適宜に為し得たものである。

24-3.まとめ
上記のとおり、本件特許発明18は、甲第3号証に記載された発明1、甲第2号証に記載された発明1、甲第17号証に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

24-4.被請求人の主張の検討
被請求人は答弁書(第44乃至46頁)において、本件特許発明18は、甲第1乃至第6号証に記載された発明に基づいて、容易に発明をすることができない旨、主張している。以下、被請求人の主張する各点について検討する。
「(あ)凸面状前面について」は、上記相違点1について示したとおりである。
「(い)反射光を集光した光に関する情報の保存について」は、上記相違点3について示したとおりである。
「(う)甲第1号証について」は、上記の判断を左右するものではなく、また、甲第1号証が上記の判断における組み合わせを阻害する理由を示しているものとも認められない。
そうすると、被請求人の主張を参酌すべき理由はない。

25.むすび
以上のとおりであるから、本件特許発明1乃至4、7乃至12は、甲第3号証に記載された発明1、甲第2号証に記載された発明1及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明5、6、13、14及び18は、甲第3号証に記載された発明1、甲第2号証に記載された発明1、甲第17号証に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許発明15乃至17は、甲第3号証に記載された発明2、甲第2号証に記載された発明2及び周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものであるから、本件特許は、特許法29条2項の規定に違反してなされたものであり、同法123条1項2号に該当し、無効とすべきものである。

審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
画像生成ATR分光装置及びスペクトル吸収画像を得る方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】光源と、
前面と後面とを有し、前記前面が検査中のサンプルと係合する接触領域を含んだ内部反射素子(IRE)と、
複数の画素を含む2次元フォーカルプレーンアレイ(FPA)検出器と、
前記前面での前記入力ビームの入射角が前記IREに対する臨界角以上となるように、前記IREの前記後面を介して、前記光源からの光を前記接触領域に差し向け、かつ、集光するための手段と、
前記接触領域から反射光を集光し、前記反射光を前記2次元フォーカルプレーンアレイ検出器上に結像させるための手段と、
前記2次元フォーカルプレーンアレイ検出器と前記光源との間を伝わる光を捕捉し、捕捉された光のスペクトル選択変調を実行するように結合された波長選択素子とを有しており、
前記接触領域からの前記反射光は、前記接触領域の別々の点から反射された前記反射光のそれぞれの部分を含んでおり、前記反射光の前記それぞれの部分は集光されて、前記2次元フォーカルプレーンアレイ(FPA)検出器のそれぞれの画素上に結像され、前記サンプルの空間的に分解された吸収スペクトルを得ることができるように構成されている、ことを特徴とする、画像生成減衰全反射(ATR)分光装置。
【請求項2】前記2次元フォーカルプレーンアレイ検出器に結合されており、前記2次元フォーカルプレーンアレイ検出器から画像情報を得るための信号処理装置をさらに備えた請求項1に記載の画像生成ATR分光装置。
【請求項3】光を差し向け、かつ、集光するための前記手段が、一つまたはそれ以上のレンズ素子からなり、
前記反射光を集光し、反射光を結像させるための前記手段が、一つまたはそれ以上のレンズ素子からなる請求項1に記載の画像生成ATR分光装置。
【請求項4】光を差し向け、集光するための前記手段が、一つまたはそれ以上の反射素子からなり、
前記反射光を集光し、反射光を結像させるための前記手段が、一つまたはそれ以上の反射素子からなる請求項1に記載の画像生成ATR分光装置。
【請求項5】前記IREの前記後面は凸面状であり、球の曲率を有し、前記曲率の中心が前記IREの前記前面に位置する請求項1に記載の画像生成ATR分光装置。
【請求項6】前記IREの前記前面は凸面状であり、球の曲率を有し、前記曲率の半径が後面半径よりも実質的に長い請求項1に記載の画像生成ATR分光装置。
【請求項7】前記スペクトル選択素子が、前記光源と前記IREの間に配置され、光のスペクトル多重入射ビームを生成して、前記IREに供給する干渉計により構成された請求項1に記載の画像生成ATR分光装置。
【請求項8】光源と、
前面と後面とを有し、前記前面が検査中のサンプルと係合する接触領域を含んだ内部反射素子(IRE)と、
2次元フォーカルプレーンアレイ検出器と、
前記前面における前記入力ビームの入射角が前記IREの臨界角以上になるように、前記IREの前記後面を介して、前記接触領域の方に、前記入力ビームを差し向けるように配置された第1光学系と、
前記接触領域から反射光を集光し、前記2次元フォーカルプレーンアレイ検出器上に、反射光を結像させるように配置されていて、前記接触領域のそれぞれの別々の点から反射された光を、前記2次元フォーカルプレーンアレイ検出器の別々の画素上に結像させるように構成された第2光学系と、
前記光源と前記2次元フォーカルプレーンアレイ検出器の間を伝わる光を捕捉し、捕捉された光のスペクトル選択変調を実行するように結合された干渉計と、
を有することを特徴とする画像生成減衰全反射(ATR)分光装置。
【請求項9】前記干渉計が、ビーム・スプリッタと、少なくとも一つの固定ミラーと、少なくとも一つの可動ミラーとを含んでいる請求項8に記載の画像生成ATR分光装置。
【請求項10】前記光源が、広帯域赤外線光源からなる請求項8に記載の画像生成ATR分光装置。
【請求項11】前記第1光学系が、一つまたはそれ以上のレンズ素子からなり、
前記第2光学系が、一つまたはそれ以上のレンズ素子からなる請求項8に記載の画像生成ATR分光装置。
【請求項12】前記第1光学系が、一つまたはそれ以上の反射素子からなり、
前記第2光学系が、一つまたはそれ以上の反射素子からなる請求項8に記載の画像生成ATR分光装置。
【請求項13】前記IREの前記後面が、凸面状で球の曲率を有し、前記曲率の中心が前記IREの前記前面に位置する請求項8に記載の画像生成ATR分光装置。
【請求項14】前記IREの前記前面が、凸面状であり、かつ球の曲率を有し、前記曲率の半径が、後面の半径よりも実質的に長い請求項13に記載の画像生成ATR分光装置。
【請求項15】サンプルのスペクトル吸収画像を得る方法であって、
サンプルの一部分にわたり、かつ前記サンプルに接触して、ATR結晶体を配置させて、前記ATR結晶体と前記サンプルの間の接触領域を定める段階と、
光源から発する光のビームを、前記ATR結晶体を介して、前記ATR結晶体の臨界角以上の入射角度で、前記接触領域に差し向けることにより、前記接触領域を照射する段階と、
前記接触領域からの反射光を集光する段階とを含み、前記反射光は、前記接触領域の別々の点から反射された前記反射光のそれぞれの部分を含んでおり、
前記方法は、さらに、前記接触領域からの前記反射光を、検出器の2次元アレイ上に結像させて、前記接触領域の別々の点から反射された前記反射光の前記それぞれの部分を、前記検出器の2次元アレイのそれぞれの別々の画素上に結像させる段階と、
前記光源と前記検出器の2次元アレイとの間に、波長選択素子を置いて、前記接触領域の異なった位置におけるスペクトル情報を与える段階と、
を含む、サンプルのスペクトル吸収画像を得る方法。
【請求項16】検出器の前記二次元アレイにより収集されたデータをスペクトル吸収画像に変換する段階を更に含む、請求項15に記載のサンプルのスペクトル吸収画像を得る方法。
【請求項17】前記変換する段階が、前記2次元アレイ検出器から強度情報を検索し、前記強度情報のフーリエ変換表現を演算することにより、データを変換する、請求項16に記載のサンプルのスペクトル吸収画像を得る方法。
【請求項18】光源と、
凸面状前面と後面とを有し、前記前面が検査中のサンプルと係合する接触領域を含んだ内部反射素子(IRE)と、
2次元フォーカルプレーンアレイ検出器と、
前記IREが焦点に位置する顕微鏡対物レンズと、
光の前記入力ビームを、前記顕微鏡対物レンズに差し向けるための手段と、
結像光学素子とを有し、
前記顕微鏡対物レンズが、前記IREの前記後面を介して、前記接触領域に向けて、前記光の入力ビームの焦点を合わせ、反射光を集光し、反射光を、前記結像光学素子に差し向けるように、位置決めされ、かつ構成されており、
前記結像光学素子が、前記反射光を前記2次元フォーカルプレーンアレイ検出器上に結像させて、前記接触領域のそれぞれの別々の点から反射されて集光された光を、前記2次元フォーカルプレーンアレイ検出器のそれぞれの別々の画素上に結像させるように構成されており、
さらに、前記光源と前記2次元フォーカルプレーンアレイ検出器の間を伝わる光を捕捉し、捕捉された光のスペクトル選択変調を実行するように結合された干渉計を備えたことを特徴とする、
画像生成減衰全反射(ATR)超小型分光装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像生成ATR分光装置およびスペクトル吸収画像の取得方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
減衰全(内部)反射(ATR)分光法は、直接吸収測定では非常に不明瞭なサンプルから吸収スペクトルを収集するのに広く使用される。ATR結晶体の一面は、検査中のサンプルに接触して置かれる。光の入射ビームは、ATR結晶体を介して、指向され、その結果、入射ビームはATR結晶体と検査中のサンプルの間の境界で全て内部で反射される。入射光のエネルギーのいくらかは、エバネセント結合を介して、検査中のサンプルにより吸収される。吸収量は検査中のサンプル内の分子構造及び/又は分子種を表す。したがって、反射光は、検査中のサンプルのための吸収スペクトルを得ることのできる情報を含んでいる。
ATR分光法を実施するためのシステムの例は、米国特許第3,393,603号、同4,602,869号および同5,093,580号明細書を含んでいる。これらのシステムは、典型的には、単一素子からなる検出器を使用することに限定され、したがって、一度に、検査中のサンプルの小さい領域しか分析することができない。従って、サンプル中の分子種の空間的分布を解析するために、たとえば、集光・検出光学素子によって画定された視野を通して、XYステージ上でサンプルを移動させ、あるいは、サンプルに対してATRを移動させるなどのある種の物理的走査が必要とされる。
【0003】
このようにして、サンプルを走査することは、ある欠点と欠陥を伴う。詳細には、走査を行うのに要求される可動部品の数は、そのようなシステムの速度と信頼性を制限する。さらに、ほとんどのFTIR(フーリエ変換赤外線)分光装置により得られるS/N比は、各点で、いくつかの測定をおこない、平均化することを要求する。数多くの平均化の要求は、そのようなシステムを本質的に遅くする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、画像生成ATR分光装置のためのシステム、装置および方法を提供するものであり、従来の非画像生成ATR技術を用いて、同量のデータを収集するシステムに比して、より高い速度とより優れた空間的分解能が得られることを特徴とするものである。
本発明のある実施態様によれば、装置は、光の入力ビームを与える光源と、ATR結晶体と、フォーカルプレーンアレイ検出器と、入力ビームがATR結晶体の前面で全て内部的に反射されるように、ATR結晶体を介して、入力ビームを差し向け、かつ、集光させる少なくとも1つの光学素子とを含み、少なくとも1つの光学素子が反射光を集光し、フォーカルプレーンアレイ検出器上に、反射光を結像させるように構成されている。干渉計などの波長選択装置は光学列内に配置される。具体的な実施態様では、波長選択装置は光源とATR結晶体との間に配置される。干渉計に基づく実施態様では、結果はスペクトル多重入力ビームである。ATR結晶体は十分大きいので、二次元フォーカルプレーンアレイ検出器と組み合わせることにより、本発明は従来、設計されたものに対して、短い時間で、サンプルの大きな領域の空間的に分解された吸収スペクトルを収集することができる。
【0005】
本発明の他の実施態様によれば、ATR結晶体と、フォーカルプレーンアレイ検出器と、波長選択装置と、顕微鏡対物レンズと、結像光学素子とを含む画像生成ATR超小型分光装置が提供される。本発明のこの実施態様においては、顕微鏡対物レンズは、ATR結晶体を介して、入力ビームをサンプルに差し向け、反射光を集光して、結像光学素子に差し向ける反射式光学素子を含んでいる。
本発明が、さらにどのような特徴および利点を有しているかは、以下の明細書の記載と図面を参照すれば、明らかになるであろう。
【0006】
【発明の実施の形態】
図1は本発明にかかる画像生成ATR分光装置のシステムダイアグラムである。具体的な実施形態は、波長選択素子として、マイケルソン干渉計を使用するフーリエ変換分光装置に基づいている。分散型分光器に基づく実施形態は、波長選択素子として、回折格子またはプリズムを使用する。画像生成分光装置の主要構成素子は内部反射素子(IRE)10で、その断面が示されている。IRE10は、後面12と前面14とを有し、前面14は、接触領域20において、サンプル18と接触している。IRE10の詳細は後述する。
干渉計22は、広帯域赤外線のスペクトルで多重化された入力ビーム24を生じさせる。干渉計22はビーム・スプリッタと、少なくとも一つの固定ミラーと、少なくとも一つの可動ミラー(マイケルソン干渉計)とを含むものが望ましい。本発明の一実施形態では、カルフォルニア州、ハーキュレスのバイオ・ラッド・ラボラトリ社から入手可能なFTS-6000分光装置が使用された。当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなしに、他の干渉計を使用してもよいことが認識されるであろう。たとえば、音響光学的同調フィルタを組み込む分光装置、ファブリ・ペロー走査干渉計、或いは(上記したように)走査回折格子装置を使用してもよい。
【0007】
焦点合わせ光学素子26(レンズとして模式的に示されている)は、入力ビーム24の入射角が、IRE10の臨界角(すなわち、光がIRE10の前面14で内部的に全反射される角度)以上になるように、IRE10の後面12を介して、接触領域20に入力ビーム24を焦点合わせする。この構成においては、IRE10がサンプル18に接触していないときは、入力ビーム24の実質的に全てのエネルギーが反射される。しかしながら、IREがサンプル18に接触しているときは、入力ビーム24からいくらかの赤外線エネルギーがエバネセット結合を介して、サンプル18に吸収される。接触領域20の各位置で、吸収されたエネルギーの量は、その位置のサンプル中の分子構造及び/又は分子種に対応する。したがって、反射光は、サンプル18の空間的に分解された吸収スペクトルを得ることのできる情報を含んでいる。
【0008】
集光及び結像光学素子28(レンズとして図式的に示される)は、反射光30を集光し、それを、二次元フォーカルプレーンアレイ検出器32上に結像させる。フォーカルプレーンアレイ検出器32は、別々の位置で、入射光の強度を測定するための検出器の2次元アレイを備えている。それゆえ、フォーカルプレーンアレイ検出器32は、接触領域20の別々の点から反射光の強度情報を与える。
本発明の一実施形態においては、光起電性モードで作動される64×64画素を有する水銀テルル化カドミウム(MCT)検出器アレイが使用され、好ましい結果を得た。カルフォルニア州ゴレタのサンタバーバラリサーチセンターによって製造された特定のフォーカルプレーン検出器アレイであるモデルJ108は、2.3μmから10μmまでのスペクトル応答と、85%よりも大きいフィルファクタで、61μmの画素中心間隔を有している。他の実施形態においては、光起電性モードで作動される128×128画素を有するアンチモン化インジウム(InSb)検出アレイが使用され、好ましい結果を得た。同じ業者からの特定の検出器アレイであるモデルSYS128-01は、1.0μmから5.5μmまでのスペクトル応答と、85%より大きいフィルファクタで、50μmの画素中心間隔を有している。関心スペクトル域が1.5μm未満の波長に制限されるならば、電荷結合素子(CCD)のアレイを使用することができる。
【0009】
当業者であれば、所望のスペクトル情報の波長にしたがって、他のフォーカルプレーンアレイ検出器32を用いることができることを認識するであろう。たとえば、フォーカルプレーンアレイ検出器32を、フォーカルプレーンアレイ検出器32は白金珪化物検出器、シリコン検出器、イリジウム珪化物検出器あるいは関心周波数で望ましい特性を示す他の材料から作られた検出器によって、構成してもよい。
同様に、光学列は、赤外スペクトルの関連した部分に、適切に調整される。多くの場合、光学素子は反射光学素子である。したがって、光学素子26と集光・結像光学素子28は、単一素子からなるレンズで模式的に示されているが、当業者は、本発明の適用範囲から逸脱することなく、これらの単一素子からなるレンズに代えて、複合レンズ、複合ミラー、あるいは、それらの組み合わせを用いることができることを認識するであろう。
【0010】
フォーカルプレーンアレイ検出器32の各画素は、その画素に入射する光の強度の時間変化を表す信号を提供する。周知のように、マイケルソン干渉計は可動ミラーと固定ミラーを有し、入力光は、その一部分が可動ミラーに入射し、他の一部分が固定ミラーに入射するように、分割される。これらのビーム部分は、再び結合されて、2つのビームの間の光学干渉により、赤外線ビームの各周波数成分の強度を、成分の光学的周波数とミラーの位置との関数として、変化させる。
検出器の出力は、これらの成分の重ね合わせを表し、規則的な距離間隔でサンプリングされるときは、そのフーリエ変換が所望されたスペクトルを生ずるインターフェログラムを提供する。したがって、フォーカルプレーンアレイ検出器32の各画素は、インターフェログラムを生じさせる信号を提供することになる。
【0011】
信号処理器34は、フォーカルプレーンアレイ検出器32によって得られた強度情報を検索し、それを、スペクトル画像データに変換する。本発明の一実施形態において、信号処理器34は、AD変換器(図示せず)、ディジタルコンピュータ(図示せず)などの信号調整電子機器を備えている。ディジタルコンピュータは、たとえば、インターフェログラムの高速フーリエ変換(FFT)を演算することによって、強度情報の二次元離散フーリエ変換(DFT)を演算し、所望のスペクトル画像データを得る。ディジタルコンピュータはまた、これらに限られないが、強度情報やスペクトル画像データなどを含む種々の情報を記憶するメモリを備えている。次いで、スペクトル画像データをメモリから検索し、公知の分光技術、計量化学技術および画像処理技術を用いて、さらに、処理されてもよい。全開示内容を、ここに、すべての目的のために援用するカルベロ(Curbelo)に付与された米国特許第5,262,635号明細書は、さらに、フーリエ変換分光計ならびに実行される信号調整および信号処理のいくつかに関する情報を提供する。
【0012】
図2は、本発明の具体的な実施形態にかかる画像生成ATRの超小型分光計のシステムダイアグラムである。図1に示されるのと同一素子には、同一符号が付されている。干渉計22は、光の入力ビーム24を生じさせる。ミラー光学素子36は、入力ビーム24を反射顕微鏡対物レンズ38に差し向ける。入力ビーム24の入射角がIRE10の臨界角以上となるように、顕微鏡対物レンズ38は、入力ビーム24を、IRE10を介して、サンプル18の接触領域20に焦点合わせする。顕微鏡対物レンズ38のミラー面の異なった部分は、反射光30を集光し、結像光学素子40に差し向ける。結像光学素子40は、上述のように、フォーカルプレーンアレイ検出器32上に、反射光30を結像させる。
顕微鏡対物レンズ38は、当該技術分野で周知形態の反射式光学素子で、主凹面ミラー42と副凸面ミラー44とを有し、各々は共通の軸線を中心に回転対称である。各ミラーの半分の一方は入射する光の焦点を合わせるために使用され、各ミラーの半分の他方は、サンプルと相互作用した後の光を集光するために使用される。詳細には、副ミラー44が部分44aおよび44bを有し、主ミラー42は部分42aおよび42bを有している。
【0013】
光(入力ビーム24)は、ミラー光学素子36により反射され、副ミラーおよび主ミラーの部分44aおよび42aのそれぞれに入射し、上述のように、光の入力ビーム24は、IRE10を介して、接触領域20に向けて、その焦点が合わせられる。主ミラーおよび副ミラーの部分42bおよび44bは、サンプルから反射光を集光し、それを結像光学素子40に差し向ける。
結像光学素子40は単一素子からなるレンズとして図示されている。しかしながら、当業者であれば、結像光学素子40は複合レンズ、複合ミラー、またはそれらの組み合わせであってもよいことを認識するであろう。本発明の一実施形態においては、結像光学素子40は、また、拡大作用とひずみの補正/除去作用とを行うレンズである。レンズには、現在のアレイ検出器が感度を有している全波長域をカバーする種々の赤外線透過材料が利用可能である。典型的なレンズ材料は、セレン化亜鉛、シリコン及びゲルマニウムである。
【0014】
図3A及び3Bは、それぞれ、本発明にかかるATR結晶体(すなわちIRE10)の具体的実施形態の底面図及び側面図である。IRE10は多くの材料から作られる。例えば、本発明のある実施形態において、IRE10はゲルマニウムから作られる。他の実施形態においては、シリコン、セレン化亜鉛またはダイヤモンドからIRE10を作ることができる。
具体的な実施態様において、IRE10は0.132インチの直径を有している。IRE10は前面14と後面12を含み、前面14と後面12の各々は、球形の曲率を有している。後面12の曲率中心は前面14に位置している(すなわち、IRE10の厚みは後面12の曲率半径に等しい)。この構成は、入力ビーム24と後面12で反射光30の屈折を最小にし、それによって、システムにおける光学収差量を減少させる。
【0015】
発明の具体的な実施形態において、IRE10の深さは0.068インチで、前面14の曲率半径は0.138インチ、後面12の曲率半径は0.068インチである。後面12の曲率半径の中心は、0.001インチの公差で、前面14の中心に位置させられる。前面14の頂部は、半径方向に0.001インチの公差内で、後面半径の中心の軸線方向に0.002インチの公差内にある。表面の数字は0.00005インチ又はヘリウムネオンレーザ基準で測定した場合には二波長よりもよい。
図4は、本発明の画像生成ATRの超小型分光装置により得られたエポキシ樹脂ファイバーのスプールのスペクトル画像である。図5と図6は、図4の画像の中の2個の別々の点からのスペクトル測定値である。水銀カドミウムテルル化物アレイが、これらのデータを収集するのに使用された。これらは単一ビームデータであり、バックグラウンドデータに対して、正規化されていない。図4は、およそ400ミクロン平方の領域にわたる950cm^(-1)のスペクトル等高線を示している。右上フィールドの不規則な領域は、周囲の領域より明るく照らされており、画素は飽和状態にある。
【0016】
図5および図6は、図4の範囲内の二つの点からの単一ビームスペクトルである。図5は行26、列28の画素からのスペクトル応答を示す。図6は列32、列28の画素からのスペクトル応答を示す。これら画素に結像されたサンプル領域は60ミクロンにより分離される。図5は、1200?1400cm^(-1)帯域において、サンプルによる吸収が図6よりも多いことを示している。
単一画素ATRの空間的分解能は接触領域に等しい。顕微鏡ATRでは、これは典型的に幅方向に100μmである。本発明の画像生成超小型ATRにおいては、MCTアレイで10μmの分解能が達成され、InSbアレイで5μmの分解能が達成される。
要するに、本発明の画像生成ATR分光装置は、従来の非画像生成ATRシステムを使用して、同量のデータを集めるシステムに比して、より高速でかつより優れた空間的分解能を提供し得ることが判明した。
【0017】
以上、本発明の好ましい実施形態につき、完全に説明を加えたが、当業者であれば、種々の代替手段、変更及び同等物を使用しうることを認識するであろう。たとえば、干渉計からの出力が顕微鏡へ入力される場合につき上述した構成は、本発明が、汎用目的の分光計とともに使用することができ、専用分光計を必要としないという利点を有している。しかしながら、もし、非変調赤外線源がサンプルを照らし、干渉計(変調器)が出力経路に位置していても、本発明は作動するであろう。したがって、上述の説明は、添附のクレームによって画定される発明の範囲を制限するものとして理解されるべきものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】
図1は、本発明にかかる画像生成ATR分光装置のシステムダイアグラムである。
【図2】
図2は、本発明の具体的な実施形態にかかる画像生成ATRの超小型分光計のダイアグラムである。
【図3A】
図3Aは、本発明にかかるATR結晶体(すなわちIRE10)の具体的実施形態の底面図及び側面図である。
【図3B】
図3Bは、本発明にかかるATR結晶体(すなわちIRE10)の具体的実施形態の底面図及び側面図である。
【図4】
図4は、本発明の画像生成ATRの超小型分光装置により得られたエポキシ樹脂ファイバーのスプールのスペクトル画像である。
【図5】
図5は、図4の画像の中の2個の別々の点のうちの一方のスペクトル測定値である。
【図6】
図6は、図4の画像の中の2個の別々の点のうちの他方のスペクトル測定値である。
【符号の説明】
10 IRE(内部反射体)
12 後面
14 前面
20 接触領域
22 干渉計
24 入力ビーム
26 レンズ(指向・集光手段)
28 レンズ(集光・画像生成手段)
30 光
32 フォーカルプレーンアレイ検出器
38 顕微鏡対物レンズ
40 結像光学素子
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2008-06-04 
結審通知日 2008-06-06 
審決日 2008-06-17 
出願番号 特願平10-229721
審決分類 P 1 113・ 121- ZA (G01N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鈴木 俊光  
特許庁審判長 高橋 泰史
特許庁審判官 田邉 英治
後藤 時男
登録日 2000-06-09 
登録番号 特許第3076013号(P3076013)
発明の名称 画像生成ATR分光装置及びスペクトル吸収画像を得る方法  
代理人 久野 琢也  
代理人 山崎 利臣  
代理人 町田 健一  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 渡辺 光  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 星 公弘  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 渡辺 光  
代理人 井野 砂里  
代理人 渡邊 誠  
代理人 北村 博  
代理人 井野 砂里  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 北村 博  
代理人 村社 厚夫  
代理人 渡邊 誠  
代理人 村社 厚夫  

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