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審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2010800145 審決 特許
無効2008800195 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F15B
審判 全部無効 2項進歩性  F15B
管理番号 1197408
審判番号 無効2006-80215  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2006-10-23 
確定日 2009-04-24 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3621082号発明「旋回式クランプ」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3621082号に係る発明についての出願は、平成14年10月2日(優先権主張平成13年11月13日、平成13年12月18日、平成14年4月3日)に特許出願されたものであって、平成16年11月26日に特許権の設定登録がされたものである。
これに対して、平成18年10月23日付けで、パスカルエンジニアリング株式会社(以下、「請求人」という。)より無効審判の請求がなされ、被請求人から平成18年12月21日付けで答弁書及び訂正請求書が提出され、請求人から平成19年2月13日付けで弁駁書が提出され、請求人から平成19年5月17日に口頭審理陳述要領書(第1回)及び口頭審理陳述要領書(第2回)が提出され、被請求人から同じく平成19年5月17日に口頭審理陳述要領書(第1回)、口頭審理陳述要領書(第2回)、及び上申書が提出され、平成19年5月17日に口頭審理が行われ、さらに、請求人から平成19年6月15日付けで上申書が提出され、被請求人が訂正請求を行ったことに起因して審判請求書が弁駁書により実質的に補正されたので、被請求人から平成19年6月15日付けで答弁書及び訂正請求書が提出されたものである。

2.訂正の適否
被請求人は、平成19年6月15日付け訂正請求書により、本件特許明細書の訂正を請求しているので、まず、この訂正の可否について検討する。

2-1.訂正の内容
上記訂正請求書の訂正の内容は、本件特許の明細書を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであり、その訂正の内容は、以下のとおりである。
(C1) 訂正事項1(請求項1の訂正)
請求項1を以下の(1a)?(1e)のように訂正する。
(1a) 旧第1段落の第1読点部分である「ハウジング(3)内に軸心回りに回転可能に挿入されると共に軸心方向の一端から他端へクランプ移動されるクランプロッド(5)と、」の記載部分を新第1段落に改め、その記載部分を下記のように訂正する。
「ハウジング(3)内にほぼ90度の旋回角度で軸心回りに回転可能に挿入されると共に軸心方向の一端から他端へクランプ移動されるクランプロッド(5)であって、片持ちアーム(6)を固定する部分と、上記ハウジング(3)の一端側の第1端壁(3a)に緊密に嵌合支持されるようにロッド本体(5a)に設けた第1摺動部分(11)と、上記ハウジング(3)の筒孔(4)に挿入したピストン(15)を介して駆動される入力部(14)と、上記ハウジング(3)の他端側の第2端壁(3b)に緊密に嵌合支持されるように上記のロッド本体(5a)から他端方向へ一体に突出されると共に周方向へほぼ等間隔に並べた3つ又は4つのガイド溝(26)を外周部に形成した第2摺動部分(12)とを、上記の軸心方向へ順に設けたクランプロッド(5)と、」
(1b) 旧第1段落の第2および第3読点部分である「そのクランプロッド(5)の外周部に形成された周方向へ複数のガイド溝(26)と、これらガイド溝(26)にそれぞれ嵌合するように上記ハウジング(3)に支持した複数の係合具(29)とを備え、」の記載を新第2段落に改め、その記載のうちの「そのクランプロッド(5)の外周部に形成された周方向へ複数のガイド溝(26)と、これらガイド溝(26)に」を、「そのクランプロッド(5)の上記の第2摺動部分(12)に設けた3つ又は4つのガイド溝(26)に」と訂正する。
(1c) 旧第1段落と旧第2段落との間に、下記内容を加えて、新第3段落とする。
「上記ピストン(15)の外周に嵌着した封止具(15a)の両端方向の外側で同上ピストン(15)の外周面と上記ハウジング(3)の上記の筒孔(4)との間に比較的に大きな嵌合隙間を形成することにより、上記ピストン(15)の両端方向の外方に配置された上記の第1摺動部分(11)と第2摺動部分(12)との2箇所で上記クランプロッド(5)を上記ハウジング(3)に緊密に嵌合支持させて同上クランプロッド(5)が傾くのを防止するように構成し、」
(1d) 旧第2段落の文頭の「上記の各ガイド溝(26)を、」を、「上記の第2摺動部分(12)に設けた上記3つ又は4つのガイド溝(26)を、それぞれ、」に訂正する。
(1e) 旧第3段落の文頭に、下記内容を加える。
「前記の第2端壁(3b)に緊密に嵌合支持されると共に上記の3つ又は4つのガイド溝(26)が設けられた上記の第2摺動部分(12)について、その第2摺動部分(12)の外周面を展開した状態における上記の旋回溝(27)の傾斜角度(A)を10度から30度の範囲内に設定し、かつ、」
(C2) 訂正事項2(請求項3の訂正)
請求項3を以下の(2a)?(2e)のように訂正する。
(2a) 旧第1段落の第1読点部分である「ハウジング(3)内に軸心回りに回転可能に挿入されると共に軸心方向の一端から他端へクランプ移動されるクランプロッド(5)と、」の記載部分を新第1段落に改め、その記載部分を下記のように訂正する。
「ハウジング(3)内にほぼ90度の旋回角度で軸心回りに回転可能に挿入されると共に軸心方向の一端から他端へクランプ移動されるクランプロッド(5)であって、片持ちアーム(6)を固定する部分と、上記ハウジング(3)の一端側の第1端壁(3a)に緊密に嵌合支持されるようにロッド本体(5a)に設けた第1摺動部分(11)と、上記ハウジング(3)の筒孔(4)に挿入したピストン(15)を介して駆動される入力部(14)と、上記ハウジング(3)の他端側の第2端壁(3b)に緊密に嵌合支持されるように上記のロッド本体(5a)から他端方向へ一体に突出されると共に周方向へほぼ等間隔に並べた3つ又は4つのガイド溝(26)を外周部に形成した第2摺動部分(12)とを、上記の軸心方向へ順に設けたクランプロッド(5)と、」
(2b) 旧第1段落の第2および第3読点部分である「そのクランプロッド(5)の外周部に形成された周方向へ複数のガイド溝(26)と、これらガイド溝(26)にそれぞれ嵌合するように上記ハウジング(3)に支持した複数の係合ボール(29)とを備え、」の記載を新第2段落に改め、その記載のうちの「そのクランプロッド(5)の外周部に形成された周方向へ複数のガイド溝(26)と、これらガイド溝(26)に」を、「そのクランプロッド(5)の上記の第2摺動部分(12)に設けた3つ又は4つのガイド溝(26)に」と訂正する。
(2c) 旧第1段落と旧第2段落との間に、下記内容を加えて、新第3段落とする。
「上記ピストン(15)の外周に嵌着した封止具(15a)の両端方向の外側で同上ピストン(15)の外周面と上記ハウジング(3)の上記の筒孔(4)との間に比較的に大きな嵌合隙間を形成することにより、上記ピストン(15)の両端方向の外方に配置された上記の第1摺動部分(11)と第2摺動部分(12)との2箇所で上記クランプロッド(5)を上記ハウジング(3)に緊密に嵌合支持させて同上クランプロッド(5)が傾くのを防止するように構成し、」
(2d) 旧第2段落の文頭の「上記の各ガイド溝(26)を、」を、「上記の第2摺動部分(12)に設けた上記3つ又は4つのガイド溝(26)を、それぞれ、」に訂正する。
(2e) 旧第3段落の文頭に、下記内容を加える。
「前記の第2端壁(3b)に緊密に嵌合支持されると共に上記の3つ又は4つのガイド溝(26)が設けられた上記の第2摺動部分(12)について、その第2摺動部分(12)の外周面を展開した状態における上記の旋回溝(27)の傾斜角度(A)を10度から30度の範囲内に設定し、かつ、」
(C3) 訂正事項3(請求項5の訂正)
請求項5は、その第2読点部分の「少なくとも3つ」を「3つ」に訂正する。
(C4) 訂正事項4(請求項6の訂正)
請求項6は、その第2読点部分である「前記のガイド溝(26)を前記クランプロッド(5)の周方向へほぼ等間隔に配置した、」の記載が新請求項1又は3に含まれたことに伴い、その第2読点部分に代えて、「前記ピストン(15)を前記クランプロッド(5)と一体に形成した、」を加える。
(C5) 訂正事項5(請求項8の訂正)
請求項8は、その第1読点部分の「請求項1から7」を、「請求項1から5」に訂正する。
(C6) 訂正事項6
明細書の段落番号0004において、第1段落の「図1から図6」を、「図1から図5」に訂正する。
(C7) 訂正事項7
明細書の同上の段落番号0004において、第2段落から第4段落を以下の(7a)?(7e)のように訂正する。
(7a) 旧第2段落の第1読点部分の「ハウジング3内に・・・クランプロッド5と、」を下記のように訂正する。
「ハウジング3内にほぼ90度の旋回角度で軸心回りに回転可能に挿入されると共に軸心方向の一端から他端へクランプ移動されるクランプロッド5であって、片持ちアーム6を固定する部分と、上記ハウジング3の一端側の第1端壁3aに緊密に嵌合支持されるようにロッド本体5aに設けた第1摺動部分11と、上記ハウジング3の筒孔4に挿入したピストン15を介して駆動される入力部14と、上記ハウジング3の他端側の第2端壁3bに緊密に嵌合支持されるように上記のロッド本体5aから他端方向へ一体に突出されると共に周方向へほぼ等間隔に並べた3つ又は4つのガイド溝26を外周部に形成した第2摺動部分12とを、上記の軸心方向へ順に設けたクランプロッド5と、」
(7b) 旧第2段落の第2読点部分から第3読点部分の「そのクランプロッド5の外周部に形成された周方向へ複数のガイド溝26と、これらガイド溝26に」を、「そのクランプロッド5の上記の第2摺動部分12に設けた3つ又は4つのガイド溝26に」と訂正する。
(7c) 旧第2段落と旧第3段落との間に、下記内容を加える。
「上記ピストン15の外周に嵌着した封止具15aの両端方向の外側で同上ピストン15の外周面と上記ハウジング3の上記の筒孔4との間に比較的に大きな嵌合隙間を形成することにより、上記ピストン15の両端方向の外方に配置された上記の第1摺動部分11と第2摺動部分12との2箇所で上記クランプロッド5を上記ハウジング3に緊密に嵌合支持させて同上クランプロッド5が傾くのを防止するように構成し、」
(7d) 旧第3段落の文頭の「上記の各ガイド溝26を、」を、「上記の第2摺動部分12に設けた上記3つ又は4つのガイド溝26を、それぞれ、」に訂正する。
(7e) 旧第4段落の文頭に、下記内容を加える。
「前記の第2端壁3bに緊密に嵌合支持されると共に上記の3つ又は4つのガイド溝26が設けられた上記の第2摺動部分12について、その第2摺動部分12の外周面を展開した状態における上記の旋回溝27の傾斜角度Aを10度から30度の範囲内に設定し、かつ、」
(C8) 訂正事項8
明細書の段落番号0007において、第1段落の「図1から図6」を、「図1から図5」に訂正する。
(C9) 訂正事項9
明細書の同上の段落番号0007において、第2段落から第4段落を以下の(9a)?(9e)のように訂正する。
(9a) 旧第2段落の第1読点部分の「ハウジング3内に・・・クランプロッド5と、」を下記のように訂正する。
「ハウジング3内にほぼ90度の旋回角度で軸心回りに回転可能に挿入されると共に軸心方向の一端から他端へクランプ移動されるクランプロッド5であって、片持ちアーム6を固定する部分と、上記ハウジング3の一端側の第1端壁3aに緊密に嵌合支持されるようにロッド本体5aに設けた第1摺動部分11と、上記ハウジング3の筒孔4に挿入したピストン15を介して駆動される入力部14と、上記ハウジング3の他端側の第2端壁3bに緊密に嵌合支持されるように上記のロッド本体5aから他端方向へ一体に突出されると共に周方向へほぼ等間隔に並べた3つ又は4つのガイド溝26を外周部に形成した第2摺動部分12とを、上記の軸心方向へ順に設けたクランプロッド5と、」
(9b) 旧第2段落の第2読点部分から第3読点部分の「そのクランプロッド5の外周部に形成された周方向へ複数のガイド溝26と、これらガイド溝26に」を、「そのクランプロッド5の上記の第2摺動部分12に設けた3つ又は4つのガイド溝26に」と訂正する。
(9c) 旧第2段落と旧第3段落との間に、下記内容を加える。
「上記ピストン15の外周に嵌着した封止具15aの両端方向の外側で同上ピストン15の外周面と上記ハウジング3の上記の筒孔4との間に比較的に大きな嵌合隙間を形成することにより、上記ピストン15の両端方向の外方に配置された上記の第1摺動部分11と第2摺動部分12との2箇所で上記クランプロッド5を上記ハウジング3に緊密に嵌合支持させて同上クランプロッド5が傾くのを防止するように構成し、」
(9d) 旧第3段落の文頭の「上記の各ガイド溝26を、」を、「上記の第2摺動部分12に設けた上記3つ又は4つのガイド溝26を、それぞれ、」に訂正する。
(9e) 旧第4段落の文頭に、下記内容を加える。
「前記の第2端壁3bに緊密に嵌合支持されると共に上記の3つ又は4つのガイド溝26が設けられた上記の第2摺動部分12について、その第2摺動部分12の外周面を展開した状態における上記の旋回溝27の傾斜角度Aを10度から30度の範囲内に設定し、かつ、」
(C10) 訂正事項10
明細書の段落番号0010において、「請求項5の発明に示すように、」の後の「前記のガイド溝を少なくとも3つ設けると、前記クランプロッドを周方向でほぼ均等に支持すると共に前記の旋回溝の傾斜角度を小さくするために好ましい。」の記載を、「前記のガイド溝を3つ設けることが好ましい。」に訂正する。
(C11) 訂正事項11
明細書の段落番号0011において、「請求項6の発明に示すように、」の後の「前記ガイド溝を前記クランプロッドの周方向へほぼ等間隔に配置することが、上記クランプロッドをさらに均等に支持するうえで好適である。」の記載に代えて、「前記ピストン15を前記クランプロッド5と一体に形成してもよい。」の記載を加える。
(C12) 訂正事項12
明細書の段落番号0012において、第2段落の第2読点部分の「若しくは図6」を削除する。
(C13) 訂正事項13
明細書の段落番号0013において、第1段落の第2読点部分の「請求項1から7」を、「請求項1から5」に訂正する。
(C14) 訂正事項14
明細書の段落番号0034の第1文の「第2変形例」を、「比較例」に改める。
(C15) 訂正事項15
明細書の段落番号0059の第2段落において、旧第1文(前記クランプロッド5の・・・可能である。)を削除すると共に、旧第2文の文頭の「また、」を削除する。
(C16) 訂正事項16
明細書の段落番号0060の最終文において、「・60度・45度」の記載を削除する。
(C17) 訂正事項17
図面の簡単な説明の図6の説明において、「第2変形例」を「比較例」に改める。

2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項ごとに順に検討する。
(D1)訂正事項1について
訂正事項1に係る訂正は、旧請求項1を、下記[1]?[4]の4点で減縮するものである。
[1] クランプロッド(5)は、ほぼ90度の旋回角度で軸心回りに回転可能とされる。
[2] 上記クランプロッド(5)には、片持ちアーム(6)を固定する部分と、ハウジング(3)の一端側の第1端壁(3a)に緊密に嵌合支持されるようにロッド本体(5a)に設けた第1摺動部分(11)と、上記ハウジング(3)の筒孔(4)に挿入したピストン(15)を介して駆動される入力部(14)と、上記ハウジング(3)の他端側の第2端壁(3b)に緊密に嵌合支持されるように上記のロッド本体(5a)から他端方向へ一体に突出されると共に周方向へほぼ等間隔に並べた3つ又は4つのガイド溝(26)を外周部に形成した第2摺動部分(12)とを、軸心方向へ順に設ける。
[3] 上記ピストン(15)の外周に嵌着した封止具(15a)の両端方向の外側で同上ピストン(15)の外周面と上記ハウジング(3)の上記の筒孔(4)との間に比較的に大きな嵌合隙間を形成することにより、上記ピストン(15)の両端方向の外方に配置された上記の第1摺動部分(11)と第2摺動部分(12)との2箇所で上記クランプロッド(5)を上記ハウジング(3)に緊密に嵌合支持させて同上クランプロッド(5)が傾くのを防止するように構成する。
[4] 上記の第2摺動部分(12)の外周面を展開した状態における旋回溝(27)の傾斜角度(A)を10度から30度の範囲内に設定する。
(D1-1)上記[1]項の訂正(クランプロッドの旋回角度がほぼ90度であること)について
願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。なお、図面には訂正はない。)の第1実施形態(図1から図4)の記載部分には、「図4は、上記の下摺動部分12の外周面の拡大展開図である。上記の下摺動部分12の外周面に3つのガイド溝26が周方向へほぼ等間隔に設けられる。上記の各ガイド溝26は、・・・螺旋状の旋回溝27と直進溝28とを上向きに連ねて構成される。上記の複数の旋回溝27が相互に平行状に配置されると共に、上記の複数の直進溝28も相互に平行状に配置されている。」との記載がある(段落【0019】の最終文から【0020】の第3文)。また、「・・・、そのクランプロッド5は、前記の旋回溝27に沿って平面視で時計回りの方向へ旋回しながら下降し、・・・」と記載され(段落【0024】の第4文)、「・・・、上記クランプロッド5を90度旋回させる場合には、・・・」と記載され(段落【0025】の最終文)、「・・・、上記クランプロッド5が、前記の旋回溝27に沿って平面視で反時計回りの方向へ旋回しながら上昇して、・・・」と記載されている(段落【0026】の最終文)。そして、図4において、クランプロッド5には3つのガイド溝26が周方向へほぼ等間隔に設けられているのであるから、直進溝28がほぼ120度の角度ごとに配置されていることが明らかである。また、図4の寸法関係をそのままみると、隣り合う直進溝28・28の軸心間の周方向距離に対して、螺旋状の旋回溝27と係合ボール29からなる旋回機構による旋回角度に相当する周方向の距離は略3/4であり、これによれば、旋回角度はほぼ90度ということになる。
また、本件明細書には、第2実施形態に係る図10に関し、以下のように記載されている。「図10は、上記クランプ2のクランプロッド5に設けた下摺動部分12の拡大展開図である。」と記載され(本件明細書の段落【0038】の最終文)、「上記の下摺動部分12の外周面に4つのガイド溝26が周方向へほぼ等間隔に設けられる。」と記載されている(段落【0040】の第1文)。このため、図10を見れば、4つの直進溝28がほぼ90度の角度ごとに配置されていることが明らかであり、図10では旋回角度がほぼ90度であると認められる。
さらには、本件明細書には、「また、上記クランプロッド5の旋回角度は、例えば90度・60度・45度などの所望の角度に設定できることは勿論である。」との記載がある(段落【0060】の最終文)。
(D1-2)前記[2]項の訂正(クランプロッドの構造)について
(D1-2-1)「クランプロッド(5)には、片持ちアーム(6)を固定する部分が設けられる」旨の根拠について
本件明細書の段落【0015】の第3文には、「そのクランプロッド5の上端部分にアーム6がナット7によって所望の旋回位置に固定され、そのアーム6の先端部分に押ボルト8が固定される。」との記載がある。そして、図1・図7・図11・図14の各図を見れば、クランプロッド5の上部に上記アーム6が片持ち梁の状態で固定されていることが明らかである。
(D1-2-2)「クランプロッド(5)には、ハウジング(3)の一端側の第1端壁(3a)に緊密に嵌合支持されるようにロッド本体(5a)に設けた第1摺動部分(11)が設けられる」旨の根拠について
本件明細書の段落【0015】の第2段落には、「上記のハウジング3の上端壁(第1端壁)3aに、上記クランプロッド5のロッド本体5aに設けた上摺動部分(第1摺動部分)11が摺動自在で保密状に支持される。・・・・上記の上摺動部分11と下摺動部分12とは、それぞれ、上記の上端壁3aと下端壁3bとに緊密に嵌合されている。」との記載がある。
(D1-2-3)「クランプロッド(5)には、上記ハウジング(3)の筒孔(4)に挿入したピストン(15)を介して駆動される入力部(14)が設けられる。」旨の根拠について
本件明細書の段落【0016】には、「上記クランプロッド5を駆動する手段は次のように構成されている。前記の上摺動部分11と下摺動部分12との間で上記クランプロッド5にフランジ状の入力部14が設けられる。また、上記クランプロッド5に環状のピストン15が封止具16を介して上下移動自在で保密状に外嵌され、そのピストン15が上記の入力部14に上側から対面される。そして、上記のピストン15が別の封止具15aを介して前記の筒孔4内に保密状に挿入される。」との記載がある。また、段落【0044】には、「この図12の第1変形例は、上記の図11の構造とは次の点で異なる。前記ピストン15は前記クランプロッド5と一体に形成される。」との記載がある。そして、上記の図12を見れば、入力部(14)がピストン(15)を介して駆動されることが明らかである。この点は、図13?図15の記載についても同様である。
(D1-2-4)「クランプロッド(5)には、上記ハウジング(3)の他端側の第2端壁(3b)に緊密に嵌合支持されるように上記のロッド本体(5a)から他端方向へ一体に突出されると共に周方向へほぼ等間隔に並べた3つ又は4つのガイド溝(26)を外周部に形成した第2摺動部分(12)が設けられる」旨の根拠について
本件明細書の段落【0015】の第2段落には、「・・・さらに、上記のハウジング3の下端壁(第2端壁)3bの一部を構成する支持筒13には、上記ロッド本体5aから下向きに突出させた下摺動部分(第2摺動部分)12が摺動自在に支持される。上記の上摺動部分11と下摺動部分12とは、それぞれ、上記の上端壁3aと下端壁3bとに緊密に嵌合されている。」との記載がある。
また、段落【0020】の第1文には、図4に関する記載として、「上記の下摺動部分12の外周面に3つのガイド溝26が周方向へほぼ等間隔に設けられる。」との記載がある。さらには、段落【0040】の第1文には、図10に関する記載として、「上記の下摺動部分12の外周面に4つのガイド溝26が周方向へほぼ等間隔に設けられる。」との記載がある。そして、図4又は図10の記載を見れば、上記3つ又は4つのガイド溝26が周方向へほぼ等間隔に並べられていることが明らかである。
しかも、上記の第2摺動部分(12)が上記クランプロッド(5)の一部としてロッド本体(5a)から分離不能に一体に突出されていることは、図1と図7及び図11?図15の各図を見れば明らかであり、特には、図13中のクランプロッド5の断面部分(ハッチング部分)を見れば明らかである。
(D1-2-5)「上記クランプロッド(5)には、上記の片持ちアーム(6)を固定する部分と上記の第1摺動部分(11)と上記の入力部(14)と上記の第2摺動部分(12)とを、軸心方向へ順に設ける」旨の根拠について
本件明細書の段落【0015】には、「そのクランプロッド5の上端部分にアーム6がナット7によって所望の旋回位置に固定され、・・・上記のハウジング3の上端壁(第1端壁)3aに、上記クランプロッド5のロッド本体5aに設けた上摺動部分(第1摺動部分)11が摺動自在で保密状に支持される。さらに、上記のハウジング3の下端壁(第2端壁)3bの一部を構成する支持筒13には、上記ロッド本体5aから下向きに突出させた下摺動部分(第2摺動部分)12が摺動自在に支持される。」との記載がある。また、段落【0016】の第2文には、「前記の上摺動部分11と下摺動部分12との間で上記クランプロッド5にフランジ状の入力部14が設けられる。」との記載がある。そして、図1・図7・図11・図14を見れば、上記クランプロッド5に、片持ちアーム6を固定する部分と第1摺動部分11と入力部14と第2摺動部分12とを軸心方向へ順に設けていることが明らかである。
(D1-3)前記[3]項の訂正(クランプロッドの傾き防止の構造)について
本件明細書の段落【0031】の第1段落には、「前記ピストン15の両端方向の外側で前記クランプロッド5に上摺動部分(第1摺動部分)11と下摺動部分(第2摺動部分)12とを設けたので、上記ピストン15の嵌合隙間の存在にもかかわらず、軸心方向へ離れた二つの摺動部分11・12によって上記クランプロッド5が傾くのを防止できる。従って、上記クランプロッド5を上記ハウジング3によって確実かつ高精度にガイドできる。」との記載がある。また、段落【0015】の第2段落の最終文には、「上記の上摺動部分11と下摺動部分12とは、それぞれ、上記の上端壁3aと下端壁3bとに緊密に嵌合されている。」との記載がある。
しかも、段落【0039】の最終段落には、図7に関する記載として、「上記ピストン15の外周に嵌着した前記の別の封止具15aの上下の両外側では、そのピストン15の外周面と前記の筒孔4との間に比較的に大きな嵌合隙間が形成されている。これにより、上記のクランプロッド5は、前記の上摺動部分11と下摺動部分12との上下の2箇所で前記ハウジング3に円滑かつ精度良く支持される。」との記載がある。そして、上記の図7を見れば、上記ピストン15の外周面と筒孔4との間に比較的に大きな嵌合隙間が形成されていることが明示されている。
さらには、段落【0046】の第1段落の第1文には、図12に関する記載として、「前記の図11と同様に、前記ピストン15の外周面と前記の筒孔4の上半部分との間に比較的に大きな嵌合隙間が形成されている。」との記載がある。そして、上記の図11・図12を見れば、ピストン15の外周面と筒孔4との間に比較的に大きな嵌合隙間が形成されていることが明示されている。この点については、図13・図14・図15の該当部分を見ても明らかである。
なお、請求人は、この[3]項の訂正後の請求項1は、第1摺動部分と第2摺動部分の2箇所でクランプロッドをハウジングに緊密に嵌合させることでクランプロッドの傾きを防止するものとなっているから、他の傾き防止手段は不要と解される。したがって、[3]項の訂正は、特許請求の範囲に新たな構成を付加していることで一見すると特許請求の範囲の減縮に当たるものであるが、その訂正によって、訂正前(複数の係合具で均等に支持して傾きを防止する)と訂正後(第1と第2摺動部分のみで傾きを防止する)とで発明の同一性が失われているため、実質上特許請求の範囲を変更する訂正に該当する旨、主張している。しかし、複数の係合具でほぼ均等に支持するという事項に加え、第1摺動部分と第2摺動部分との2箇所で緊密に嵌合支持するという事項により、クランプロッドの傾きを確実に防止し得ることは当業者に明らかであり、発明の同一性が失われているということはできない。
(D1-4)前記[4]項の訂正(旋回溝の傾斜角度が10度から30度の範囲内であること)について
本件明細書の第1実施形態の記載部分には、「上記クランプロッド5の下摺動部分12と上記の支持筒13の内壁13aの上部とにわたって旋回機構が設けられる。その旋回機構は、上記の図1と、図2から図4に示すように、次のように構成されている。その図2は、上記の旋回機構の平面視の断面図である。また、図3は、上記の図1中の要部の拡大図であって、上記の図2中のIII-III線矢視断面図に相当する図である。図4は、上記の下摺動部分12の外周面の拡大展開図である。
上記の下摺動部分12の外周面に3つのガイド溝26が周方向へほぼ等間隔に設けられる。上記の各ガイド溝26は、断面視で弓形の溝からなり、螺旋状の旋回溝27と直進溝28とを上向きに連ねて構成される。上記の複数の旋回溝27が相互に平行状に配置されると共に、上記の複数の直進溝28も相互に平行状に配置されている。上記の隣り合うガイド溝26・26のうちの図4中の右方の旋回溝27の下部と左方の旋回溝27の上部との間で隔壁の厚さが最小となっており、その隔壁の最小厚さMが、上記ガイド溝26の溝幅Wよりも小さい値に設定される。また、その旋回溝27の傾斜角度Aが約11度から約25度の範囲内の小さな値に設定されている。なお、例示したバネ力によるクランプにおいては、旋回ストロークを小さくするために、上記の傾斜角度Aを約11度から約20度の範囲内の値にすることが好ましい。
このように上記の螺旋状の旋回溝27の傾斜角度Aを小さくしたので、その旋回溝27のリードが大幅に短くなる。このため、上記クランプロッド5の旋回用ストロークが小さくなる。」との記載がある(段落【0019】?【0020】)。
そして、第1実施形態の第1変形例について、「図5は、上記の第1実施形態の第1変形例を示し、前記の図4に類似する部分図である。この図5では、隣り合う旋回溝27・27の隔壁の最小厚さMが前記の図4よりも小さい値に設定され、その最小厚さMの部分で前記の隣り合う切削面34・34がオーバーラップされている。また、この図5では、上記の旋回溝27の傾斜角度Aを、上記の図4よりも小さい範囲内(約11度から約15度)の値に設定してある。」(段落【0033】)、及び「なお、前記の螺旋状に形成した旋回溝27の傾斜角度Aは、10度から30度の範囲内であることが好ましく、11度から20度の範囲内であることがさらに好ましい。」(段落【0036】)と記載されている。
以上より、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(D2)訂正事項2について
前記(C2)の訂正事項2に係る訂正は、旧請求項3を減縮するものであって、上述した訂正事項1(請求項1)に係る訂正と実質的に同一である。
したがって、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(D3)訂正事項3について
前記(C3)の訂正事項3は、請求項5において、「少なくとも3つ」を「3つ」に限定したのであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としている。
したがって、訂正事項3は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(D4)訂正事項4について
前記(C4)の訂正事項4は、請求項6において、「前記ピストン(15)を前記クランプロッド(5)と一体に形成した」ことに限定したのであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としている。そして、当初明細書の段落【0044】の第3段落の第1文には「前記ピストン15は前記クランプロッド5と一体に形成される。」と記載されている。
したがって、訂正事項4は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(D5)訂正事項5について
前記(C5)の訂正事項5は、請求項8で引用する請求項を、「請求項1から7」から「請求項1から5」に訂正したのであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としている。
したがって、訂正事項5は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(D6)訂正事項6・8・12・14・15・16・17について
これらの訂正事項は、訂正事項1、3の訂正に伴い、訂正後の請求項1・3に含まれなくなった図面や明細書の記載を削除したり比較例として整理するものであって、特許請求の範囲の記載と明細書の発明の詳細な説明ないし図面の記載とを整合させるためのものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
また、これらの訂正事項は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(D7)訂正事項7・9・10・11・13について
これらの訂正事項は、前記の請求項1・3・5・6の訂正(訂正事項1・2・3・4)に対応させて、発明の詳細な説明の対応部分を形式的に訂正したものであって、特許請求の範囲の記載と明細書の発明の詳細な説明ないし図面の記載とを整合させるためのものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
また、これらの訂正事項は、願書に最初に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

2-3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書の規定、及び同条第5項において準用する特許法第126条第3項、及び第4項の規定に適合するので、適法な訂正であると認める。

3.本件発明
上記のとおり、平成19年6月15日付け訂正請求書による明細書の訂正は適法であると認められるので、本件の請求項1?8に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」?「本件発明8」という。)は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1?8に記載された次のとおりのものである。なお、平成18年12月21日付けの訂正請求は、特許法第134条の2第4項の規定により取り下げられたものとみなす。
【請求項1】 ハウジング(3)内にほぼ90度の旋回角度で軸心回りに回転可能に挿入されると共に軸心方向の一端から他端へクランプ移動されるクランプロッド(5)であって、片持ちアーム(6)を固定する部分と、上記ハウジング(3)の一端側の第1端壁(3a)に緊密に嵌合支持されるようにロッド本体(5a)に設けた第1摺動部分(11)と、上記ハウジング(3)の筒孔(4)に挿入したピストン(15)を介して駆動される入力部(14)と、上記ハウジング(3)の他端側の第2端壁(3b)に緊密に嵌合支持されるように上記のロッド本体(5a)から他端方向へ一体に突出されると共に周方向へほぼ等間隔に並べた3つ又は4つのガイド溝(26)を外周部に形成した第2摺動部分(12)とを、上記の軸心方向へ順に設けたクランプロッド(5)と、
そのクランプロッド(5)の上記の第2摺動部分(12)に設けた3つ又は4つのガイド溝(26)にそれぞれ嵌合するように上記ハウジング(3)に支持した複数の係合具(29)とを備え、
上記ピストン(15)の外周に嵌着した封止具(15a)の両端方向の外側で同上ピストン(15)の外周面と上記ハウジング(3)の上記の筒孔(4)との間に比較的に大きな嵌合隙間を形成することにより、上記ピストン(15)の両端方向の外方に配置された上記の第1摺動部分(11)と第2摺動部分(12)との2箇所で上記クランプロッド(5)を上記ハウジング(3)に緊密に嵌合支持させて同上クランプロッド(5)が傾くのを防止するように構成し、
上記の第2摺動部分(12)に設けた上記3つ又は4つのガイド溝(26)を、それぞれ、上記の軸心方向の他端から一端へ連ねて設けた旋回溝(27)と直進溝(28)とによって構成し、上記の複数の旋回溝(27)を相互に平行状に配置すると共に上記の複数の直進溝(28)を相互に平行状に配置し、
前記の第2端壁(3b)に緊密に嵌合支持されると共に上記の3つ又は4つのガイド溝(26)が設けられた上記の第2摺動部分(12)について、その第2摺動部分(12)の外周面を展開した状態における上記の旋回溝(27)の傾斜角度(A)を10度から30度の範囲内に設定し、かつ、上記の隣り合うガイド溝(26)(26)の隔壁の最小厚さ(T)を、同上のガイド溝(26)の溝幅(W)よりも小さい値に設定した、ことを特徴とする旋回式クランプ。
【請求項2】 請求項1の旋回式クランプにおいて、
前記の各係合具(29)をボールによって構成した、ことを特徴とする旋回式クランプ。
【請求項3】 ハウジング(3)内にほぼ90度の旋回角度で軸心回りに回転可能に挿入されると共に軸心方向の一端から他端へクランプ移動されるクランプロッド(5)であって、片持ちアーム(6)を固定する部分と、上記ハウジング(3)の一端側の第1端壁(3a)に緊密に嵌合支持されるようにロッド本体(5a)に設けた第1摺動部分(11)と、上記ハウジング(3)の筒孔(4)に挿入したピストン(15)を介して駆動される入力部(14)と、上記ハウジング(3)の他端側の第2端壁(3b)に緊密に嵌合支持されるように上記のロッド本体(5a)から他端方向へ一体に突出されると共に周方向へほぼ等間隔に並べた3つ又は4つのガイド溝(26)を外周部に形成した第2摺動部分(12)とを、上記の軸心方向へ順に設けたクランプロッド(5)と、
そのクランプロッド(5)の上記の第2摺動部分(12)に設けた3つ又は4つのガイド溝(26)にそれぞれ嵌合するように上記ハウジング(3)に支持した複数の係合ボール(29)とを備え、
上記ピストン(15)の外周に嵌着した封止具(15a)の両端方向の外側で同上ピストン(15)の外周面と上記ハウジング(3)の上記の筒孔(4)との間に比較的に大きな嵌合隙間を形成することにより、上記ピストン(15)の両端方向の外方に配置された上記の第1摺動部分(11)と第2摺動部分(12)との2箇所で上記クランプロッド(5)を上記ハウジング(3)に緊密に嵌合支持させて同上クランプロッド(5)が傾くのを防止するように構成し、
上記の第2摺動部分(12)に設けた上記3つ又は4つのガイド溝(26)を、それぞれ、上記の軸心方向の他端から一端へ連ねて設けた旋回溝(27)と直進溝(28)とによって構成し、上記の複数の旋回溝(27)を相互に平行状に配置すると共に上記の複数の直進溝(28)を相互に平行状に配置し、
前記の第2端壁(3b)に緊密に嵌合支持されると共に上記の3つ又は4つのガイド溝(26)が設けられた上記の第2摺動部分(12)について、その第2摺動部分(12)の外周面を展開した状態における上記の旋回溝(27)の傾斜角度(A)を10度から30度の範囲内に設定し、かつ、上記の隣り合うガイド溝(26)(26)の隔壁の最小厚さ(T)を、上記の係合ボール(29)の直径(D)よりも小さい値に設定した、ことを特徴とする旋回式クランプ。
【請求項4】 請求項2または3の旋回式クランプにおいて、
前記の係合ボール(29)を前記ハウジング(3)に設けた貫通孔(31)に回転自在に支持すると共に、上記の複数の係合ボール(29)にわたってスリーブ(35)を回転自在に外嵌した、ことを特徴とする旋回式クランプ。
【請求項5】 請求項1から4のいずれかの旋回式クランプにおいて、
前記のガイド溝(26)を3つ設けた、ことを特徴とする旋回式クランプ。
【請求項6】 請求項1から5のいずれかの旋回式クランプにおいて、
前記ピストン(15)を前記クランプロッド(5)と一体に形成した、ことを特徴とする旋回式クランプ。
【請求項7】 請求項1から6のいずれかの旋回式クランプにおいて、
前記クランプロッド(5)の他端部に前記の複数のガイド溝(26)を設け、各ガイド溝(26)の前記の旋回溝(27)の他端部に、前記の係合具または係合ボール(29)を受け止めるストッパー壁(45)を設け、そのストッパー壁(45)の受け止め面(45a)を上記の係合具または係合ボール(29)に嵌合させた、ことを特徴とする旋回式クランプ。
【請求項8】 請求項1から5のいずれかの旋回式クランプにおいて、
前記のハウジング(3)内に環状のピストン(15)を軸心方向へ移動可能に挿入し、そのピストン(15)内に前記クランプロッド(5)を挿入し、これらピストン(15)とクランプロッド(5)との間にラジアルベアリング(24)を配置した、ことを特徴とする旋回式クランプ。

4.請求人の主張及び証拠
請求人は、甲第1号証?甲第28号証、及び検甲第1号証の証拠方法を提出するとともに、本件特許には、概略、以下の無効理由がある旨主張している。

4-1.無効理由
(1).弁駁書における主張
請求人が弁駁書において主張する無効理由は概略、以下のとおりである。
なお、以下の無効理由はいずれも、平成18年12月21日付け訂正請求書により訂正された明細書に対する主張である。また、A、B、C等の記号は、請求人が弁駁書において各請求項に記載された事項を分説する際に付したものである。
【無効理由(1-1)】
訂正発明1、3と、甲8に示された発明とは、構成要件C、E(又はE3)において一致し、構成要件A、B(又はB3)、Dにおいて、本件訂正発明1,3は、ガイド溝が3つ又は4つ形成されるのに対し、甲8の「V形溝」は2つしか形成されない点において相違する。甲第13号証(特開平8-33932号公報)及び甲第14号証(特開2001-198754号公報)には、クランプロッドの外周にガイド溝を周方向へほぼ等間隔に3本又は4本形成することが記載されている。即ち、甲第13号証には、クランプロッド20の外周に周方向へ等間隔に3本のカム溝51を形成することが記載されている(段落【0027】)。また、甲第14号証には、ロッド部材66に複数(例えば、2つ)の螺旋溝67を設けることが記載されており(段落【0048】)、螺旋溝67を3本又は4本にすることは当然に予定されていると言うべきである。そもそも、ガイド溝の数をどのようにするかについては、当業者が適宜選択し得ることに過ぎない。
従って、本件訂正発明1、3は、甲8(検甲1)、甲13、甲14を組合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。
【無効理由(1-2)】
訂正発明1、3と、甲21に示された発明とは、構成要件Cにおいて一致し、構成要件A、B(又はB3)、D、E(又はE3)において相違する。
新たに提出する甲第25号証(米国特許第4620695号明細書)には、ハウジング(シリンダ17)の下端壁に緊密に嵌合支持される第2摺動部分(サブピストン31)の外周に係合具(ガイドピン33)が嵌合する複数のガイド溝(カム溝33b)を形成することが記載されている(構成要件Aの相違点に対応)。
同様に、新たに提出する甲第26号証(実願昭46-24405号(実開平47-18875号)のマイクロフィルム)には、ハウジング(シリンダa)の上端壁に緊密に嵌合された第1摺動部分(ロッドf)と、ハウジング(シリンダa)の筒孔に挿入したピストンbと、ハウジング(シリンダa)の下端壁に緊密に嵌合された第2摺動部(ロッドc)とが軸心方向に並ぶように一体に設けられた旋回式クランプにおいて、第2摺動部分(ロッドc)の外周に係合具(ピンe)が嵌合するガイド溝(ラセン溝d)を形成することが記載されている(構成要件Aの相違点に対応)。
なお、「第2摺動部にガイド溝を形成すること」は、甲8(検甲1)、甲14、甲22にも示される如く、旋回式クランプの分野において、周知技術である。さらに、「ガイド溝を3つ又は4つにする」ことも、甲13、甲14に記載されているように、旋回式クランプの分野において、周知技術である。
また、本件訂正発明の構成要件B及びB3、D、E及びE3は、「ガイド溝が3つ又は4つ形成される」ことを除いて、すべて甲8(検甲1)に示されている。ガイド溝の数をどのようにするかは、当業者が適宜選択し得ることにすぎない。さらに、甲13の図2には、「クランプロッド20に(3本)形成された隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さは、隣り合う一方の螺旋溝51bの下端部を他方の螺旋溝51bの上端部の近傍に位置させることによって形成され、かつ、当該最小厚さ(T)は、ガイド溝の溝幅(W)よりも小さい(構成要件Eに対応)、又は、係合ボールの直径(D)よりも小さい(構成要件E3に対応)」ことが示されている。
そもそも、ガイド溝の溝幅や間隔、及び旋回溝の傾斜角度をどうするかは、当業者が適宜選択し得る設計的事項にすぎない。
さらに、甲25では、ロッドの周方向に180度ずれた位置に2本のガイド溝が形成されているが、これをロッドの周方向にほぼ90度ずつずれた位置に4本のガイド溝を形成するように変更することで、「ロッドに形成された隣り合う旋回溝の隔壁の最小厚さは、隣り合う一方の旋回溝の下端部を他方の旋回溝の上端部の近傍に位置させることによって形成される」こと(構成要件E及びE3に対応)になるのは、明らかである。上述したとおり、ガイド溝の本数をどのようにするかは、当業者が適宜選択し得る程度のことである。
従って、訂正発明1、3は、甲21、甲8(検甲1)、甲13、甲14、甲25、甲26を組合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。
【無効理由(1-3)】
訂正発明1、3と、甲26に示された発明とは、構成要件Cにおいて一致し、構成要件A、B(又はB3)、D、E(又はE3)において相違する。
「クランプロッドに片持ちアームを固定する」(構成要件Aの相違点に対応)ことは、甲8(検甲1)、甲14及びその他の各甲号証(甲15,甲17?甲25等)に記載されているように、旋回式クランプの分野において、周知技術である。
「ガイド溝を3つ又は4つにする」(構成要件A、B、B3の相違点に対応)ことは、甲13、甲14に記載されているように、旋回式クランプの分野において、周知技術である。
また、本件訂正発明と甲21との対比において説明したとおり、本件訂正発明の構成要件D、E及びE3に対応する事項は、甲8(検甲1)や甲13に示されている。
以上、訂正発明1、3は、甲26、甲8(検甲1)、甲13、甲14を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。
【無効理由(1-4)】
今回の訂正では、請求項2,5,7,8の内容は実質的に変更されていない(訂正明細書第2頁?第3頁)。従って、訂正発明2,5,7,8は、本件審判請求書第50頁?第57頁に記載の理由により、進歩性が認められないものである。
【無効理由(1-5)】
今回の訂正では、請求項4の内容は実質的に変更されていない(訂正明細書第3頁)。従って、訂正発明4は、本件審判請求書第50頁?第54頁に記載の理由により、進歩性が認められないものである。
【無効理由(1-6)】
訂正発明6は、本件発明1,3と同様に、甲8(検甲1),甲21,甲13,甲14,甲25,甲26等を組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。
【無効理由(1-7)】
「旋回式クランプ装置をコンパクトに造ること」については、「近傍」の訂正では不十分で、傾斜角度を限定しない限り、記載不備は免れない。また隣接するガイド溝の隔壁の厚さをガイド溝の幅または係合ボールの直径というパラメータで限定していることの技術的意義は依然として不明である。したがって、訂正後においても、記載不備の無効理由(特許法第36条第6項第1号又は第2号違反)は解消していない。

(2).審判請求書における主張
請求人が審判請求書において主張する無効理由は概略、以下のとおりである。請求人は、口頭審理陳述要領書(第1回)において、特許法第29条第1項各号を根拠条文とする無効理由は主張しない旨、陳述した。
なお、以下の無効理由はいずれも、訂正前の特許査定時の明細書に対する主張である。また、A、B、C等の記号は、請求人が審判請求書において各請求項に記載された事項を分説する際に付したものである。
【無効理由(2-1)】
本件発明1は、検甲第1号証に示される発明、及び/又は、甲第13号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。また、本件発明1は、検甲第1号証に示される発明、及び/又は、甲第13号証に記載された発明と、甲第14、15、19?21号証に記載された発明とに基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。
従って、本件発明1は、特許法第29条第2項に規定される進歩性を有しない発明であり、特許を受けることができないものである。
【無効理由(2-2)】
本件発明3は、検甲第1号証に示される発明、及び/又は、甲第13号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。また、本件発明3は、検甲第1号証に示される発明、及び/又は、甲第13号証に記載された発明と、甲第14、15、19?21号証に記載された発明とに基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。
従って、本件発明3は、特許法第29条第2項に規定される進歩性を有しない発明であり、特許を受けることができないものである。
【無効理由(2-3)】
本件発明2は、検甲第1号証に示される発明、及び、甲13?15、19?21号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
【無効理由(2-4)】
本件発明4は、検甲第1号証に示される発明、及び、甲13?16、19?21号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
【無効理由(2-5)】
本件発明5は、検甲第1号証に示される発明、及び、甲13?15、19?21号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
【無効理由(2-6)】
本件発明6は、検甲第1号証に示される発明、及び、甲13?15、19?21号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
【無効理由(2-7)】
本件発明7は、検甲第1号証に示される発明、及び、甲13?15、19?21号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
【無効理由(2-8)】
本件発明8は、検甲第1号証に示される発明、及び、甲13?15、17?21号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
【無効理由(2-9)】
明細書の請求項1及び請求項3においては、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段(「クランプロッドを周方向でほぼ均等に支持すること」、及び、「旋回溝の傾斜角度を小さくすること」)が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲(「クランプロッドの傾きを防止できること」、及び、「旋回式クランプ装置をコンパクトに作ること」)を超えて特許を請求することになり、本件発明1及び本件発明3は、発明の詳細な説明に記載されたものでは無いものを含むものになっている。また、「クランプロッドを周方向でほぼ均等に支持すること」は、本件明細書の請求項2、4、5、7、8においても反映されておらず、「旋回溝の傾斜角度を小さくすること」は、明細書の請求項2、4?8においても反映されていない。即ち、本件発明2及び本件発明4?8についても、本件発明1及び本件発明3と同様に、発明の詳細な説明に記載されたものでは無いものを含むものになっている。
従って、本件特許の請求項1?8の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
【無効理由(2-10)】
本件発明1、3は、特許請求の範囲を画した請求項1及び3の文言上、(イ)「複数のガイド溝」に関し、「ほぼ等間隔」の限定がなされておらず、ほぼ等間隔でない発明も包含するのに対し、明細書の発明の詳細な説明の記載においては、専ら、均等に配置した技術的意義及び実施例等が記載され、ほぼ等間隔でない発明については記載されていない。また、(ロ)「旋回溝」に関し、その傾斜角度の限定がなされておらず、傾斜角度が大きな発明も包含するのに対し、発明の詳細な説明の記載においては、専ら、傾斜角度が小さいものの技術的意義及び実施例等が記載され、傾斜角度が大きな発明については記載されていない。
そうすると、本件発明1、3(請求項1又は3を引用する従属項に係る発明も含む)は、発明の詳細な説明に記載されていない発明を含んでいること明らかであり、明細書の特許請求の範囲は、特許法36条6項1号の規定に違反する
【無効理由(2-11)】
請求項1及び請求項3においては、「隣り合うガイド溝の隔壁の最小厚さを、同上のガイド溝の溝幅よりも小さい値に設定したこと」(構成F)、及び、「隣り合うガイド溝の隔壁の最小厚さを、係合ボールの直径よりも小さい値に設定したこと」(構成F')の技術的意義を理解することができず、また、それらの構成が得られる具体的な物を想定することができない。従って、本件発明1及び本件発明3は明確でない。本件発明2及び本件発明4?8についても、上記の構成(本件発明1の構成F及び本件発明3の構成F')の技術的意義を明確にし、それらの構成が得られる具体的な物を想定させることを可能にする構成を有しない。
従って、本件特許の請求項1?8の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
【無効理由(2-12)】
上記「構成F」又は「構成F'」において、「ガイド溝の溝幅」又は「係合ボールの直径」により、「隣接するガイド溝の隔壁の最小厚さ」を限定する技術的意味は、特許請求の範囲の記載から明確であるとはいえないし、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、これが明確になるといえない。
したがって、特許請求の範囲の記載は、特許法36条6項2号所定の要件に合致しない。

4-2.証拠方法
甲第1号証 請求人のCTF型クランプ装置のユーザである森川産業株式会社の社員による証明書
甲第2号証 甲第1号証の証明者の陳述書
甲第3号証 上記CTF型クランプ装置に関する事実実験公正証書の正本
甲第4号証 請求人のCTF型クランプ装置が組み込まれた生産設備を森川産業株式会社に納入した株式会社サンテックの社員による証明書
甲第5号証 請求人のCTF型クランプ装置が記載された製品カタログ
甲第6号証 請求人の製品カタログを製作した有限会社ストーンズの代表取締役による証明書
甲第7号証 甲第6号証の証明者の陳述書
甲第8号証 日刊工業新聞社発行「機械設計」第44巻第3号に掲載された請求人のCTF型クランプ装置の広告
甲第9号証 請求人のCTF型クランプ装置のユーザである株式会社ソミック石川の社員による証明書
甲第10号証 甲第9号証の証明者の陳述書
甲第11号証 請求人のCTF型クランプ装置のユーザである株式会社ホリキリの社員による証明書
甲第12号証 甲第11号証の証明者の陳述書
甲第13号証 特開平8-33932号公報
甲第14号証 特開2001-198754号公報
甲第15号証 特開平7-266171号公報
甲第16号証 特開2001-280440号公報
甲第17号証 特開平9-280211号公報
甲第18号証 特開平9-277132号公報
甲第19号証 実公昭60-18267号公報
甲第20号証 特開昭60-123238号公報
甲第21号証 特開平10-34469号公報
甲第22号証 米国特許第5820118号明細書
甲第22-1号証 甲第22号証抄訳
甲第23号証 特開2001-107914号公報
甲第24号証 特開2003-194015号公報
甲第25号証 米国特許第4620695号明細書
甲第25-1号証 甲第25号証抄訳
甲第26号証 実願昭46-24405号(実開平47-18875号)のマイクロフィルム
甲第27号証 特開平10-141324号公報
甲第28号証 特開平10-109239号公報
検甲第1号証 CTF型クランプ装置(型式:CTF1.6M-LP-MCTA3440)の現物(甲第3号証に示す通り、平成18年8月31日付で封印したもの)

5.被請求人の主張
被請求人は、請求人の主張はいずれも失当であるから、本件無効審判は理由がないとの審決を求める旨主張している。

6.当審の判断
上記の無効理由ごとにその順に検討する。

【無効理由(1-1)】について
本件発明1と本件発明3について無効理由を主張しているので、順に検討する。
(1)本件発明1について
(1-1)本無効理由で主張されている甲各号証に記載された発明
(a)甲第8号証の記載事項について、甲第8号証に係るCTF型クランプ装置と同型式のCTF型クランプ装置(型式:CTF1.6M-LP-MCTA3440)の現物である検甲第1号証に関する事実実験公正証書の正本である甲第3号証を参照して検討すると、甲第8号証には下記の発明(以下、「甲第8号証発明」という。)が示されていると認められる。
「ハウジング内に軸心回りに回転可能に挿入されると共に軸心方向の一端から他端へクランプ移動されるピストン及びカムが設けられ、
ピストンは、片持ちアームであるクランプヘッドを固定する部分と、上記ハウジングの上側の端壁に支持される摺動部分と、入力部とを有し、カムは、上記ハウジングの下側の端壁に支持されるように上記ピストンから下方向へ突出するようにピストンに固定されると共に周方向へほぼ等間隔に並べた2つのV形溝を外周部に形成した摺動部分を有し、クランプヘッドを固定する部分、ピストンの摺動部分、入力部、及び、カムの摺動部分は、上側から下側へこの順に設けられ、
カムの摺動部分に設けた2つのV形溝にそれぞれ嵌合するように上記ハウジングに支持した2つの鋼球が設けられ、
ピストンの入力部の外周には封止具が嵌着され、封止具の上下では、ピストンの外周面と上記ハウジングの筒孔との間に、封止具とハウジングの筒孔との間の隙間に対して比較的に大きな隙間が形成されており、
カムに設けた2つのV形溝を、それぞれ、下側から上側に連ねて設けた正弦波形溝と直進溝とによって構成し、2つの正弦波形溝を相互に平行状に配置すると共に、2つの直進溝を相互に平行状に配置し、
下側の端壁に支持されると共に上記の2つのV形溝が設けられたカムの摺動部分について、その摺動部分の外周面を展開した状態における上記の正弦波形溝の傾斜角度を所定角度に設定したクランプ。」
(b)甲第13号証には、下記の事項が図面とともに記載されている。
(あ)「【実施例】以下、本発明の実施例について、図面を参照しつつ説明する。本実施例は、プレス機械の金型2(クランプ対象物)を基盤3に固定する為のクランプロッドツイスト型クランプ装置に本発明を適用した場合の例である。図1、図2に示すように、クランプロッドツイスト型クランプ装置(以下、クランプ装置と略称する)は、クランプ本体10と、クランプロッド20と、このクランプロッド20を上下方向に所定ストローク進退駆動する為の複動型エアシリンダ30と、最大限進出駆動された駆動ロッド20を、下方にクランプ駆動する為のクランプ駆動用の単動型油圧シリンダ40と、クランプロッド20の進出終期と退入初期にクランプロッド20を軸心回りに約90度ツイストさせるツイスト機構50と、油圧シリンダ40のピストン部材42が回動しないように規制する回動規制機構60と、クランプロッド20の進出限位置と退入限位置とを検出する検出部70等で構成されている。
最初に、前記クランプ本体10について詳細に説明する。このクランプ本体10は、必要に応じて基盤3に図示外のボルト等で固定されるが、このクランプ本体10は、油圧シリンダ40のシリンダ本体としての上部本体11と、この上部本体11の下端部に複数のボルト14により固定された中段本体13と、この中段本体13の下端部に、6本のボルト15で固定された下部本体12であってエアシリンダ30のシリンダ本体としての下部本体12と、この下部本体12の下端を塞ぐ底蓋16等で構成されている。
次に、前記クランプロッド20について詳細に説明する。このクランプロッド20の上端部には、平面視略小判形で側面視略T形のクランプ出力部21が一体形成され、このクランプロッド20は、油圧シリンダ40のピストン部材42の軸孔を挿通して延び、クランプロッド20の下端部は、エアシリンダ30のピストン32に螺合にて固着されている。」(段落【0019】?【0021】参照)
(い)「次に、ツイスト機構50と、回動規制機構60について説明する。このツイスト機構50は、クランプロッド20の外周面に形成された3本のカム溝51と、これらカム溝51に夫々係合し且つピストン部材42に保持された鋼球からなる3つのカム体52と、これらカム体52をピストン部材42に保持させる為のリテーナープレート53等で構成されている。前記3本のカム溝51は、図5,図6に示すように、クランプロッド20の外周部の円周3等分に、断面V形に形成されている。各カム溝51は、クランプロッド20の軸方向に延び且つ図1の第1ストロークH1と等しい長さの縦溝51aと、この縦溝51aの下端に連なり第2ストロークH2と等しい高さに亙り且つクランプロッド20の外周面の90度円弧分に相当する螺旋状の螺旋溝51bとで形成されている。」(段落【0027】参照)
以上の記載事項及び図面からみて、甲第13号証には下記の発明(以下、「甲第13号証発明」という。)が記載されていると認められる。
「クランプ本体10内に軸心回りに回転可能に挿入されると共に軸心方向の一端から他端へクランプ移動されるクランプロッド20と、
そのクランプロッド20の外周部に形成された周方向に並ぶ3本のカム溝51と、
これらカム溝51にそれぞれ嵌合するように上記クランプ本体10に支持した3つの鋼球からなるカム体52とを備え、
上記の各カム溝51を、上記の軸心方向の下端から上端へ連ねて設けた90度円弧分に相当する螺旋溝51bと縦溝51aとによって構成し、複数の螺旋溝51bを相互に平行状に配置すると共に複数の縦溝51aを相互に平行状に配置したクランプロッドツイスト型クランプ装置。」
なお、クランプロッド20の下端部はエアシリンダ30のピストン32に螺合にて固着されている。また、図2をみると、隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さがカム溝51の溝幅よりも小さい値に設定されており、また、隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さがカム体52の直径よりも小さい値に設定されているようにも見られる。しかし、図2等はその発明の実施例を表わすいわば模式図であって、図2の記載から直ちにその各部の寸法関係をこのように精確に、ないし一義的に導き出すことは不適切である。また、甲第13号証には上記のとおり、「前記3本のカム溝51は、図5,図6に示すように、クランプロッド20の外周部の円周3等分に、断面V形に形成されている。各カム溝51は、クランプロッド20の軸方向に延び且つ図1の第1ストロークH1と等しい長さの縦溝51aと、この縦溝51aの下端に連なり第2ストロークH2と等しい高さに亙り且つクランプロッド20の外周面の90度円弧分に相当する螺旋状の螺旋溝51bとで形成されている。」と記載されており、したがって、螺旋溝51bの先端部とそれに隣接するカム溝51の最近端部との間には周方向に約30度の間隔があり、カム溝51の配置や幅について図6の記載を合わせ考えると、隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さがカム溝51の溝幅よりも小さい値に設定されていること、また、隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さがカム体52の直径よりも小さい値に設定されていることが記載されていると認めることはできない。また、そのように設定することの示唆もない。
(c)甲第14号証には、下記の事項が図面とともに記載されている。
(か)「図4に示すように、水平旋回型の油圧式クランプ装置4は、ベース板2に上下方向向き(ベース板2の板厚方向向き)に組み込んで構成されたシリンダ本体50と、シリンダ本体50から上方へ延びるピストンロッド52とこのピストンロッド52の先端部に固定的に連結された旋回アーム53を有する出力部材51と、ベース板2の表面にボルト(図示略)により固定解除可能に固定され且つピストンロッド52を進退移動可能にガイドするガイド部材54と、ガイド部材54に一体形成されたシリンダ本体50のロッド側シリンダエンド壁61と、シリンダ本体50に設けられピストンロッド52の進退に同期してピストンロッド52を約90度水平に往復旋回させる旋回機構65を備えている。
シリンダ本体50のシリンダ孔4aはベース板2に直接形成され、このシリンダ孔4aの上端部がガイド部材54により塞がれ、そのガイド部材54の下端部のうちシリンダ孔4aに挿入された部分とその周辺部がロッド側シリンダエンド壁61を形成している。シリンダ本体50は、ロッド側シリンダエンド壁61と、ベース板2のうちのシリンダ孔4aを形成する周壁部分で構成されたシリンダ側壁62と、ベース板2の下端部に固定されてシリンダ孔4aの下端部を塞ぐヘッド側シリンダエンド壁63を有する。
シリンダ孔4aのうちの両シリンダエンド壁61,63の間に、ピストンロッドロッド52の下端部のピストン60が上下摺動自在に内嵌されている。ピストン60とロッド側シリンダエンド壁61の間に油室64aが形成され、ピストン60とヘッド側シリンダエンド壁63の間に油室64bが形成されている。油室64aにクランプ側油路10が接続され、油室64bにアンクランプ側油路11が接続されている。尚、58a?58fはシール部材である。
旋回機構65は、ピストンロッド52の下部に回動不能に内嵌固着されてピストン60から下方へ延びるロッド部材66と、このロッド部材66に90度捩じれるように上下方向に形成された複数(例えば、2つ)の螺旋溝67と、ヘッド側シリンダエンド壁63の上端部に固着された保持部材68と、この保持部材68に回動可能に保持されて複数の螺旋溝67に夫々係合する複数(例えば、2つ)のボール69を有する。」(段落【0045】?【0048】参照)
甲第14号証の記載事項及び図面からみて、甲第14号証には、下記の発明(以下、「甲第14号証発明」という。)が記載されていると認められる。
「ハウジング内に軸心回りに回転可能に挿入されると共に軸心方向の上端から下端へクランプ移動されるピストンロッド52、及びピストン52の下部に回動不能に内嵌固着されたロッド部材66とを有し、ロッド部材66の外径寸法はピストンロッド52の外径寸法よりも小さく設定されており、
ロッド部材66の外周部に形成された周方向への複数(例えば、2つ)の螺旋溝67、及び螺旋溝67それぞれ係合する複数のボール69とを有し、
ハウジングのガイド部材54はピストンロッド52を昇降移動可能にガイドすると共に、ハウジングの保持部材68は複数のボール69を回動可能に保持し、
ピストンロッド52とロッド部材66との間でピストン60を設けて、そのピストン60がピストンロッド52及びロッド部材66を保持部材68へ向けてクランプ駆動するワーク固定用クランプシステム。」
ロッド部材66と、ヘッド側シリンダエンド壁63、及びその上端部に固着された保持部材68との嵌め合い程度については特に記載はない。
(1-2)対比
本件発明1と甲第8号証発明とを対比すると、後者の「カムが固定されているピストン」は前者の「クランプロッド」に相当し、以下、同様に、「上側」は「一端側」に、「下側」は「他端側」に、「ピストン」の「摺動部分」は「第1摺動部分」に、「カム」の「摺動部分」は「第2摺動部分」に、「V形溝」は「ガイド溝」に、「鋼球」は「係合具」に、「正弦波形溝」は「旋回溝」にそれぞれ相当するから、本件発明1の用語に倣って整理すると、両者は、
「ハウジング内に軸心回りに回転可能に挿入されると共に軸心方向の一端から他端へクランプ移動されるクランプロッドであって、片持ちアームを固定する部分と、上記ハウジングの一端側の第1端壁に支持される第1摺動部分と、入力部と、上記ハウジングの他端側の第2端壁に支持されるように突出されると共に周方向へほぼ等間隔に並べたガイド溝を外周部に形成した第2摺動部分とを、上記の軸心方向へ順に設けたクランプロッドと、
そのクランプロッドの第2摺動部分に設けたガイド溝にそれぞれ嵌合するように上記ハウジングに支持した複数の係合具とを備え、
外周に嵌着した封止具の両端方向の外側で比較的に大きな隙間を形成し、
上記の第2摺動部分に設けたガイド溝を、それぞれ、上記の軸心方向の他端から一端へ連ねて設けた旋回溝と直進溝とによって構成し、上記の複数の旋回溝を相互に平行状に配置すると共に上記の複数の直進溝を相互に平行状に配置し、
前記の第2端壁に支持されると共に上記のガイド溝が設けられた上記の第2摺動部分について、その第2摺動部分の外周面を展開した状態における上記の旋回溝の傾斜角度(A)を所定角度に設定した旋回式クランプ。」である点で、一致し、次の点で相違する。
[相違点1]
本件発明1は、「クランプロッド(5)」が「上記ハウジング(3)の一端側の第1端壁(3a)に緊密に嵌合支持されるようにロッド本体(5a)に設けた第1摺動部分(11)」、及び「上記ハウジング(3)の他端側の第2端壁(3b)に緊密に嵌合支持されるように上記のロッド本体(5a)から他端方向へ一体に突出される」「第2摺動部分(12)」を有しているのに対し、甲第8号証発明は、ピストンがハウジングの上側の端壁に支持される摺動部分を有し、カムがハウジングの下側の端壁に支持されるようにピストンから下方向へ突出するようにピストンに固定される摺動部分を有しているものの、いずれも緊密に嵌合支持されているかどうか、不明確であるとともに、クランプロッドがピストンとカムとから成り、ピストンにカムが固定されている点。
[相違点2]
本件発明1は、クランプロッド(5)が「3つ又は4つのガイド溝(26)」を備え、また「ほぼ90度の旋回角度」であるのに対し、甲第8号証発明は、ピストン及びカムが「2つのV形溝」を備え、またその旋回角度が不明確である点。
[相違点3]
本件発明1は、「上記ハウジング(3)の筒孔(4)に挿入したピストン(15)を介して駆動される入力部(14)」を備えているのに対し、甲第8号証発明は、このような「ピストン(15)」を備えておらず、ピストン形状をなす入力部がピストンと一体である点。
[相違点4]
本件発明1は、「上記ピストン(15)の外周に嵌着した封止具(15a)の両端方向の外側で同上ピストン(15)の外周面と上記ハウジング(3)の上記の筒孔(4)との間に比較的に大きな嵌合隙間を形成することにより、上記ピストン(15)の両端方向の外方に配置された上記の第1摺動部分(11)と第2摺動部分(12)との2箇所で上記クランプロッド(5)を上記ハウジング(3)に緊密に嵌合支持させて同上クランプロッド(5)が傾くのを防止するように構成し、」という事項を備えるのに対し、甲第8号証発明は、「ピストンの入力部の外周には封止具が嵌着され、封止具の上下では、ピストンの外周面と上記ハウジングの筒孔との間に、封止具とハウジングの筒孔との間の隙間に対して比較的に大きな隙間が形成されており、」という事項を具備するものの、ピストンの摺動部分とカムの摺動部分との2箇所でカムが固定されたピストンをハウジングに緊密に嵌合支持させてカムが固定されたピストンが傾くのを防止するように構成されているかどうか、不明確である点。
[相違点5]
本件発明1は、「旋回溝(27)の傾斜角度(A)を10度から30度の範囲内に設定し、」という事項を備えるのに対し、甲第8号証発明は、正弦波形溝の傾斜角度がそのような範囲内に設定されているかどうか、不明確である点。
[相違点6]
本件発明1は、「上記の隣り合うガイド溝(26)(26)の隔壁の最小厚さ(T)を、同上のガイド溝(26)の溝幅(W)よりも小さい値に設定した」という事項を備えるのに対し、甲第8号証発明は、そのような事項を備えているかどうか、不明確である点。
(1-3)判断
[相違点1]について
まず、「緊密に嵌合支持」の意義について、請求人は、「緊密に嵌合支持」の用語の技術的意義を一義的に明確に理解することができず、「緊密に嵌合支持される」の程度は限定されていない。一方、甲第8号証発明の「カム」もハウジングに隙間無く嵌合されている。ここで、仮に「カム」とハウジングとの間に微小な隙間が形成されているとしても、本件発明1における「緊密に嵌合」の程度は限定されていないのであるから、この点において、甲第8号証発明と本件発明1との相違点を論じることができない。したがって、甲8発明の「カム」もハウジングの下端壁に「緊密に嵌合」しているというべきであると、概ね以上のとおり主張している。
確かに、「緊密に嵌合支持」という記載によってハウジング(3)の第1端壁(3a)、第2端壁(3b)とクランプロッド(5)のロッド本体(5a)の第1摺動部分(11)、第2摺動部分(12)との隙間の数量を一義的に決定することはできないが、クランクロッド(5)の摺動時にそれが傾くことが望ましくないこと等の当業者の技術常識を考慮すると、「緊密に嵌合支持」とは、クランプロッド(5)がハウジング(3)に対して円滑に摺動し得るという機能を確保しつつ、用途等に応じていくらかの違いはあるものの両者間の隙間を可及的に小さくするという前提に立って、所要の寸法公差や製造技術等の制約のもとで不可避な程度の隙間をもって支持されていることをいうと理解される。そのように理解した場合、ある嵌合支持構造について「緊密に嵌合支持」されているものか否かを区別できる蓋然性が相当程度にあることは明らかであって、「緊密」の意義が明確でないこと、あるいは「緊密に嵌合」の程度が限定されていないことをもって任意の嵌合支持構造がすべて「緊密に嵌合支持」されているとか、逆にすべて「緊密に嵌合支持」されていないとすることは、当業者の技術常識からみて妥当ではない。
このような理解のもとで甲第8号証発明を検討すると、甲第8号証に係るCTF型クランプ装置と同型式のCTF型クランプ装置(型式:CTF1.6M-LP-MCTA3440)の現物である検甲第1号証に関する事実実験公正証書の正本である甲第3号証によれば、甲第3号証の別紙3に示されているように、カム(CAM L)の摺動部分は寸法公差(+0,-0.1)で普通仕上げ(▽記号が2つ)が施されているにすぎないこと等からすると、甲第8号証発明のカムの摺動部分が、上記の意味でハウジングに緊密に嵌合支持されているということはできない。
ただ、甲第8号証発明のピストン及びカムをどこでハウジングに緊密に嵌合支持するかは設計的事項であるとすれば、カムの摺動部分をハウジングに緊密に嵌合支持するように構成することはそのような設計的事項であるということも可能であるので、この点について検討する。甲第8号証をみると、甲第8号証発明のピストンとカムの固定部構造は、ネジによってカムをピストンの縦孔の内周面に押圧するという構造であって、カムがピストンの縦孔の全体にわたって強固に固定される構造ではないから、ピストンとカムの摺動時にその固定部に作用する力や発生する撓み等を考慮すると、ピストンとカムとのハウジングに対する支持態様としては、ハウジングの上側の端壁に支持されるピストンの摺動部分と、カムの摺動部分とでハウジングに対して緊密に嵌合支持するという設計より、ハウジングの上側の端壁に支持されるピストンの摺動部分と、ピストンの入力部の外周部とにおいてハウジングに対して緊密に嵌合支持支持するという設計の方がはるかに好適であることは明らかであり、後者に代えて前者を採用することが設計的事項にすぎないということはできない。
次に、甲第8号証発明はクランプロッドがピストンとカムとから成り、ピストンにカムが固定されているものであり、これが「一体に突出されている」にあたるかどうかについて検討する。まず、「一体に突出されている」という事項の意義について、被請求人は平成19年6月15日付け訂正請求書(第14頁第11?15行)において、「しかも、上記の第2摺動部分(12)が上記クランプロッド(5)の一部としてロッド本体(5a)から分離不能に一体に突出されていることは、本件図面の図1と図7及び図11?図15の各図を見れば明らかであり、特には、図13中のクランプロッド5の断面部分(ハッチング部分)を見れば一目瞭然である。」と主張し、また、同日付け答弁書(第19頁第21行?第20頁第15行)において、「この点は、本件明細書の「ピストン15とクランプロッド5との関係」についての以下の記載によって裏付けられる。本発明の第3実施形態を示す図11では、ピストン15とクランプロッド5とは分離可能な別の部材であることが明確に図示されている。そして、段落番号0044の第2文には、第3実施形態の第1変形例を示す図12の説明として、「前記ピストン15は前記クランプロッド5と一体に形成される」と記載され、段落番号0049の第1文には、第3実施形態の第2変形例を示す図13の説明として、「前記ピストン15は前記クランプロッド5と一体に形成されている」と記載されている。また、段落番号0058の最終文には、「前記ピストン15を上記クランプロッド5と一体に形成することに代えて、そのピストン15を上記クランプロッド5とは別体に形成してもよい。」と記載されている。このように、本件明細書では、ピストン15とクランプロッド5との関係において、「一体」の用語は、ピストン15とクランプロッド5とが分離可能な別の部材である場合には用いず、上記ピストン15とクランプロッド5とが分離できない同一体である場合だけに用いている。従って、本件特許における「一体」の用語は、ピストン15とクランプロッド5との上記関係と同様に、クランプロッド5のロッド本体5aと第2摺動部分12との関係においても「分離できない同一体」を意味していると考えるのが自然である。よって、本件訂正発明における「第2摺動部分12がロッド本体5aから他端方向へ一体に突出される」とは、上記ロッド本体5aから第2摺動部分12が分離できない同一体として突出されていることを意味していることが明らかである。」と主張している。これらの主張、及びその引用する明細書及び図面の記載事項に鑑みると、「一体に突出されている」とはロッド本体5aから第2摺動部分12が分離できない同一体として突出されていることをいい、ロッド本体5aと第2摺動部分12とが別部材であり、それらが一体的に連結されているものを含まないとするのが相当である。したがって、甲第8号証発明はカムの摺動部分がピストンから一体に突出されているとはいえないが、ただ、広く機械装置において構成部品を最初から単一のものとして製作するか、別部品を固定して製作するかは、部品構成の簡素化や製作工程の作業性等に鑑みて適宜設計する事項にすぎない。したがって、甲第8号証発明のピストンとカムとから成るクランプロッドを分離できない同一体とすることは設計的事項にすぎないということができる。このように設計変更すれば、ピストンとカムとの固定部に関する上記の問題はほぼ解消されるから、ハウジングの上側の端壁に支持されるピストンの摺動部分と、ピストンの入力部の外周部とにおいてハウジングに対して緊密に嵌合支持するという設計に代えて、ハウジングの上側の端壁に支持される第1摺動部分と、ハウジングの下側の端壁に支持される第2摺動部分とで緊密に嵌合支持するという設計を採用すれば、一応、相違点1に係る本件発明1の事項に想到し得るとも認められる。しかし、このような設計の採用は、ピストンとカムとから成るクランプロッドを最初から単一のものとして製作することに起因するものであって、発明創作にあたってのこのような両者の因果的連関に留意すると、両者をそれぞれ単なる設計的事項にすぎないとするのは、両者を相互に無関係な別個の事項とみることに帰着し、妥当でない。
また、甲第13号証及び甲第14号証には、相違点1に係る本件発明1の上記事項については記載も示唆もなく、さらに、他に、相違点1に係る本件発明1の上記事項は当業者が容易に想到し得たものであるとする理由も見出せない。
[相違点2]について
甲第13号証発明は、3本のカム溝51を形成し、それぞれを軸心方向の他端から一端へ連ねて設けた旋回溝と直進溝とによって構成し、複数の旋回溝を相互に平行状に配置すると共に複数の直進溝を相互に平行状に配置するという事項を備えている。甲第13号証発明のカム溝51は甲第8号証のV形溝に相当し、またその螺旋溝51bによる旋回角度はほぼ90度ということができるから、甲第8号証発明においてそれぞれ旋回溝と直進溝を備えた3つのカム溝を設け、その旋回角度をほぼ90度とすることは甲第13号証発明の上記事項を採用することにより当業者が容易に想到し得たものと認められる。
なお、甲第8号証に係るCTF型クランプ装置と同型式のCTF型クランプ装置(型式:CTF1.6M-LP-MCTA3440)の現物である検甲第1号証に関する事実実験公正証書の正本である甲第3号証によれば、甲第3号証の別紙6にはクランプヘッドがクランプ時に90度スイングすることが記載されており、旋回角度がほぼ90度である点については、甲第8号証発明も実質的にそのような事項を具備していると認められる。
[相違点3]について
甲第8号証発明において、入力部に相当するピストンを別個に設けるかどうかは、適宜設計する事項にすぎない。
[相違点4]について
甲第8号証発明が、「上記ピストン(15)の両端方向の外方に配置された上記の第1摺動部分(11)と第2摺動部分(12)との2箇所で上記クランプロッド(5)を上記ハウジング(3)に緊密に嵌合支持させ」るという事項を具備していないこと、及びそれが甲第8号証発明、甲第13号証発明、及び甲第14号証発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるといえないことは上記「[相違点1]について」に述べたとおりであり、したがって、相違点4に係る本件発明1の事項についても同様に、甲第8号証発明、甲第13号証発明、及び甲第14号証発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
[相違点5]について
本件発明1は、「旋回溝(27)の傾斜角度(A)を10度から30度の範囲内に設定し、」という事項を備え、このように上記の螺旋状の旋回溝27の傾斜角度Aを小さくしたので、その旋回溝27のリードが大幅に短くなり、このため、上記クランプロッド5の旋回用ストロークが小さくなるという効果を奏する。
「旋回溝(27)の傾斜角度(A)を10度から30度の範囲内に設定し、」という事項を備えることにより、クランプロッド5の旋回用ストロークを小さくしたものは、甲第13号証、及び甲第14号証に記載されていない。この点に関して、請求人は審判請求書において、甲第19号証?甲第21号証に基づいて、「スイング式のクランプ装置における旋回中のストロークを小さくすること」は本件特許の出願時において周知の技術的課題であること、及び、甲第21号証の図1には傾斜角度が約15度である旋回溝36が示されており、「クランプロッドの外周部に形成される旋回溝の傾斜角度を15度程度にすること」は、本件特許の出願時において周知技術であることが分かる旨、主張する。しかし、甲第21号証の図1は発明の実施形態を表わすいわば模式図であって、図1の記載からその各部の寸法関係をこのように精確に、ないし一義的に導き出すことは不適切である。そして、甲第8号証発明の旋回溝が正弦波形溝であること、本件発明1は、「旋回溝(27)の傾斜角度(A)を10度から30度の範囲内に設定し、」という事項を備えることにより、クランプロッド5の旋回用ストロークを小さくするという格別の効果を奏することを合わせ考えると、本件発明1の「旋回溝(27)の傾斜角度(A)を10度から30度の範囲内に設定し、」という上記事項が、甲第8号証発明、甲第13号証発明、甲第14号証発明、及び甲第19?21号証の記載事項に基づいて当業者が容易に想到しえたものであるとはいえない。
[相違点6]について
甲第8号証に係るCTF型クランプ装置と同型式のCTF型クランプ装置(型式:CTF1.6M-LP-MCTA3440)の現物である検甲第1号証に関する事実実験公正証書の正本である甲第3号証によれば、2本のV形溝間の隔壁の最小厚さはV形溝の溝幅よりも小さくなっており、したがって、甲第8号証発明は実質的にみて、2本のV形溝間の隔壁の最小厚さをV形溝の溝幅よりも小さい値に設定したという事項を具備していると認められる。
甲第8号証発明においてそれぞれ旋回溝と直進溝を備えた3つのカム溝を設け、その旋回角度をほぼ90度とすることが甲第13号証発明の上記事項を採用することにより当業者が容易に想到し得たものと認められることは、上記「[相違点2]について」に述べたとおりであるが、甲第13号証に、隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さがカム溝51の溝幅よりも小さい値に設定されていること、また、隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さがカム体52の直径よりも小さい値に設定されていることの記載も示唆もないことは上記のとおりである。そして、隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さとカム溝51の溝幅、ないしカム体52の直径との大小関係は、カム溝51の溝幅、ないしカム体52そのものの大きさのほか、旋回角度にもよると考えられるが、カム溝51の溝幅、ないしカム体52の大きさにはクランプ装置の構造簡素化や円滑な動作等の観点から相応の上限があり、隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さがカム溝51の溝幅よりも小さい値に設定され、あるいは隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さがカム体52の直径よりも小さい値に設定されるほど、カム溝51の溝幅、ないしカム体52を大きくすることが単なる設計的事項であるとする根拠は見出せない。また、螺旋溝51bの傾斜角度が不明確であることを考慮すると、旋回角度を大きくすれば、直ちに、隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さがカム溝51の溝幅よりも小さい値に設定され、あるいは隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さがカム体52の直径よりも小さい値に設定されるということはできない。
したがって、甲第8号証発明に甲第13号証発明の上記事項を採用したものにおいて、隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さがカム溝51の溝幅よりも小さい値に設定されていることが当業者が容易に想到し得たものであるということはできない。
(1-4)結び
以上により、本件発明1が甲第8号証、甲第13号証、及び甲第14号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものであるということはできない。したがって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

(2)本件発明3について
(2-1)対比
本件発明3は、本件発明1においてその「係合具」を「係合ボール」とし、同じく「同上のガイド溝(26)の溝幅(W)」を「上記の係合ボール(29)の直径(D)」と置換したものに相当する。
本件発明3と甲第8号証発明とを比較すると、甲第8号証の「鋼球」が本件発明3の「係合ボール(29)」に相当するほかは上記「(1-2)対比」に述べたとおりであり、本件発明3の用語に倣って整理すると、両者は、
「ハウジング内に軸心回りに回転可能に挿入されると共に軸心方向の一端から他端へクランプ移動されるクランプロッドであって、片持ちアームを固定する部分と、上記ハウジングの一端側の第1端壁に支持される第1摺動部分と、入力部と、上記ハウジングの他端側の第2端壁に支持されるように突出されると共に周方向へほぼ等間隔に並べたガイド溝を外周部に形成した第2摺動部分とを、上記の軸心方向へ順に設けたクランプロッドと、
そのクランプロッドの第2摺動部分に設けたガイド溝にそれぞれ嵌合するように上記ハウジングに支持した複数の係合ボールとを備え、
外周に嵌着した封止具の両端方向の外側で比較的に大きな隙間を形成し、
上記の第2摺動部分に設けたガイド溝を、それぞれ、上記の軸心方向の他端から一端へ連ねて設けた旋回溝と直進溝とによって構成し、上記の複数の旋回溝を相互に平行状に配置すると共に上記の複数の直進溝を相互に平行状に配置し、
前記の第2端壁に支持されると共に上記のガイド溝が設けられた上記の第2摺動部分について、その第2摺動部分の外周面を展開した状態における上記の旋回溝の傾斜角度(A)を所定角度に設定した旋回式クランプ。」である点で、一致し、上記[相違点1]?[相違点5]のほか、次の点で相違する。
[相違点6]
本件発明3は、「上記の隣り合うガイド溝(26)(26)の隔壁の最小厚さ(T)を、上記の係合ボール(29)の直径(D)よりも小さい値に設定した」という事項を備えるのに対し、甲第8号証発明は、そのような事項を備えているかどうか、不明確である点。
(2-2)判断
[相違点1]?[相違点5]については、本件発明1について検討したとおりである。
[相違点6]について
甲第8号証に係るCTF型クランプ装置と同型式のCTF型クランプ装置(型式:CTF1.6M-LP-MCTA3440)の現物である検甲第1号証に関する事実実験公正証書の正本である甲第3号証によれば、2本のV形溝間の隔壁の最小厚さは鋼球の直径よりも小さくなっており、したがって、甲第8号証発明は実質的にみて、2本のV形溝間の隔壁の最小厚さを鋼球の直径よりも小さい値に設定したという事項を具備していると認められる。
甲第8号証発明においてそれぞれ旋回溝と直進溝を備えた3つのカム溝を設け、その旋回角度をほぼ90度とすることが甲第13号証発明の上記事項を採用することにより当業者が容易に想到し得たものと認められることは、上記「[相違点2]について」に述べたとおりであるが、甲第13号証に、隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さがカム溝51の溝幅よりも小さい値に設定されていること、また、隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さがカム体52の直径よりも小さい値に設定されていることの記載も示唆もないことは上記のとおりである。そして、隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さとカム溝51の溝幅、ないしカム体52の直径との大小関係は、カム溝51の溝幅、ないしカム体52そのものの大きさのほか、旋回角度にもよると考えられるが、カム溝51の溝幅、ないしカム体52の大きさにはクランプ装置の構造簡素化や円滑な動作等の観点から相応の上限があり、隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さがカム溝51の溝幅よりも小さい値に設定され、あるいは隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さがカム体52の直径よりも小さい値に設定されるほど、カム溝51の溝幅、ないしカム体52を大きくすることが単なる設計的事項であるとする根拠は見出せない。また、螺旋溝51bの傾斜角度が不明確であることを考慮すると、旋回角度を大きくすれば、直ちに、隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さがカム溝51の溝幅よりも小さい値に設定され、あるいは隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さがカム体52の直径よりも小さい値に設定されるということはできない。
したがって、甲第8号証発明に甲第13号証発明の上記事項を採用したものにおいて、隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さがカム体52の直径よりも小さい値に設定されていることが当業者が容易に想到し得たものであるということはできない。
(2-3)結び
以上により、本件発明3が甲第8号証、甲第13号証、及び甲第14号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものであるということはできない。したがって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

【無効理由(1-2)】について
本件発明1と本件発明3について無効理由を主張しているので、順に検討する。
(1)本件発明1について
(1-1)甲第21号証
甲第21号証には、下記の事項が図面とともに記載されている。
(あ)「【発明の属する技術分野】この発明は、クランプロッドを退避位置からアンクランプ位置へ旋回させた後でクランプ位置へ直進移動させる形式のクランプ装置に関する。」(段落【0001】参照)
(い)「上記のハウジング3の上端壁(第1端壁)3aにガイド用ブッシュ10が装着され、そのブッシュ10に上記クランプロッド5の上摺動部分(第1摺動部分)11が摺動自在に支持される。さらに、同上ハウジング3の下端壁(第2端壁)3bにガイド筒13が設けられ、そのガイド筒13に同上クランプロッド5の下摺動部分(第2摺動部分)12が摺動自在に支持される。
上記の上摺動部分11と下摺動部分12との間で上記クランプロッド5にピストン15が設けられ、そのピストン15が前記ガイド孔4に軸心方向へ移動可能で保密状に挿入される。なお、上記ピストン15は、クランプロッド5と一体に形成してあるが別体に形成することも可能である。」(段落【0009】?【0010】参照)
(う)「次に、前記の変換機構34の具体的な構造を図5から図8によって説明する。図5は、前記クランプロッド5に設けた旋回部分26の立面図である。図6は、前記スリーブ27を示す図であって、図6(A)は平面図、図6(B)は、上記の図6(A)中のB-B線矢視断面図である。図7は、上記の図6(A)中のVII線に沿って上記スリーブ27を切断して、その切断面を内側から見た展開図である。図8は、上記の旋回部分26の展開図であって、上記の図7に対応する図である。
図5及び図8に示すように、上記の旋回部分26は、アーク状に凹入形成した旋回溝36を備える。その旋回溝36は、上記の旋回部分26の外周面にほぼ1ピッチ分だけ螺旋状に形成した第1溝部分37と、その第1溝部分37の始端と終端とをほぼ軸心方向へ連通させる第2溝部分38とによって構成される。
図6と図7に示すように、前記スリーブ27は操作用溝40を備える。その操作用溝40は、上記の第1溝部分37に対応させて螺旋状に形成した旋回操作用溝部分41と、上記の第2溝部分38に対応させて周方向へ延びるように形成した逃がし溝部分42とからなる。図6(A)に示すように、その逃がし溝部分42の周方向の長さは、クランプロッド5の旋回角度θ(ここでは約90度)に対応した長さに形成されている。同上の図8(および前記の図1)に示すように、前記の旋回溝36と上記の操作用溝40との間に鋼製の転動用ボールが44が多数充填されている。
上記構成の変換機構34の作動を、上記の図8を参照しながら図9によって説明する。図9(A)の退避状態では、前記スリーブ27に対してクランプロッド5が二点鎖線図の退避位置Zに上昇され、上記クランプロッド5の旋回部分26が平面視で反時計回りの方向へ旋回されている。上記スリーブ27に対して上記クランプロッド5を下降させると、図9(B)に示すように、上記の旋回部分26が旋回操作用溝部分41に沿って平面視で時計回りの方向へ旋回下降され、これと同時に、多数のボール44が平面視で時計回りの方向へ循環される。これにより、上記クランプロッド5が一点鎖線図のアンクランプ位置Yへ切換えられる。なお、上記クランプロッド5は、上記とはほぼ逆の手順で図9(B)のアンクランプ位置Yから図9(A)の退避位置Zへ切換えられる。」(段落【0017】?【0020】参照)
(え)「変換機構34は、転動ボール式に構成したので、旋回時の摩擦抵抗が小さい。このため、円滑に旋回させることと旋回溝36のリードを小さくすることとを両立できる。その結果、旋回ストロークSを小さくでき、クランプ装置2の上下方向の設置スペースが小さくなる。」(段落【0024】参照)
(お)「【発明の効果】本発明は、上記のように構成され作用することから次の効果を奏する。
(請求項1の発明)請求項1の発明は次の効果を奏する。ハウジングの第1端壁にクランプロッドの第1摺動部分を支持すると共に同上ハウジングの第2端壁にクランプロッドの第2摺動部分を支持し、これら2つの摺動部分の間に設けた旋回部分に旋回操作用スリーブを外嵌したので、上記の旋回部分およびスリーブに要求される係合隙間とは関係なく上記クランプロッドを二箇所で精密にガイドできるうえ、そのガイド間隔が大きい。このため、上記クランプロッドの有効ガイド長さが大きくなり、クランプ作動時の直進性を向上させてクランピングを正確に行える。」(段落【0026】参照)
以上の記載事項及び図面からみて、甲第21号証には、下記の発明(以下、「甲第21号証発明」という。)が記載されているものと認められる。
「ハウジング3内に約90度の旋回角度で摺動自在に支持されるクランプロッド5であって、アーム6を固定する上端部分と、ハウジング3の上端壁(第1端壁)3aにガイド用ブッシュ10が装着され、そのブッシュ10に摺動自在に支持される第1摺動部分11と、ハウジング3のガイド孔4に保密状に挿入されたピストン15と、ハウジング3の下端壁(第2端壁)3bにガイド筒13が設けられ、そのガイド孔筒に摺動自在に支持されるように下端方向へ一体に突出した第2摺動部分12とを、軸心方向へ順に設けたクランプロッド5と、
そのクランプロッド5のピストン15と下摺動部分12との間に設けた旋回部分26に旋回溝36をアーク状に凹入形成し、旋回溝36と旋回操作用スリーブ27の操作用溝40との間に多数充填された転動用ボール44とを備え、
ピストン15の外周に嵌着した封止具の両端方向の外側でピストン15の外周面とハウジング3のガイド孔4との間に比較的に大きな嵌合隙間を形成するように構成し、
旋回溝36は、旋回部分26の外周面にほぼ1ピッチ分だけ螺旋状に形成した第1溝部分37と、その第1溝部分37の始端と終端とをほぼ軸心方向へ連通させる第2溝部分38とによって構成され、
第1溝部分37の傾斜角度を所定角度に設定した旋回式クランプ。」
(1-2)対比
本件発明1と甲第21号証発明とを対比すると、後者の「ピストン15」は前者の「入力部(14)」に相当し、以下、同様に、「アーム6」は「片持ちアーム(6)」に、「ガイド孔13」は「筒孔(4)」に、「旋回溝36」は「ガイド溝(26)」に、「充填」は「嵌合」に、「転動用ボール44」は「係合具(29)」にそれぞれ相当するから、本件発明1の用語に倣って整理すると、両者は、
「ハウジング内にほぼ90度の旋回角度で軸心回りに回転可能に挿入されると共に軸心方向の一端から他端へクランプ移動されるクランプロッドであって、片持ちアームを固定する部分と、上記ハウジングの一端側の第1端壁に支持されるようにロッド本体に設けた第1摺動部分と、入力部と、上記ハウジングの他端側の第2端壁に支持されるように上記のロッド本体から他端方向へ一体に突出した第2摺動部分とを、上記の軸心方向へ順に設けたクランプロッドと、
そのクランプロッドに設けたガイド溝に嵌合するように支持された複数の係合具とを備え、
上記ピストンの外周に嵌着した封止具の両端方向の外側で同上ピストンの外周面と上記ハウジングの上記の筒孔との間に比較的に大きな嵌合隙間を形成するように構成し、
ガイド溝の旋回溝の傾斜角度を所定角度に設定した旋回式クランプ。」である点で、一致し、次の点で相違する。
[相違点1]
本件発明1は、「クランプロッド(5)」が「上記ハウジング(3)の一端側の第1端壁(3a)に緊密に嵌合支持されるようにロッド本体(5a)に設けた第1摺動部分(11)」、及び「上記ハウジング(3)の他端側の第2端壁(3b)に緊密に嵌合支持されるように上記のロッド本体(5a)から他端方向へ一体に突出される」「第2摺動部分(12)」を有しているのに対し、甲第21号証発明は、ハウジング3の上端壁(第1端壁)3aに摺動自在に支持される第1摺動部分11と、ハウジング3の下端壁(第2端壁)3bに摺動自在に支持されるように下端方向へ一体に突出した第2摺動部分12を備えているものの、ハウジング3に緊密に嵌合支持されているかどうか、不明確である点。
[相違点2]
本件発明1は、「第2摺動部分(12)」に「上記ハウジング(3)の他端側の第2端壁(3b)に緊密に嵌合支持されるように上記のロッド本体(5a)から他端方向へ一体に突出されると共に周方向へほぼ等間隔に並べた3つ又は4つのガイド溝(26)を外周部に形成」し、「そのクランプロッド(5)の上記の第2摺動部分(12)に設けた3つ又は4つのガイド溝(26)にそれぞれ嵌合するように上記ハウジング(3)に支持した複数の係合具(29)とを備え、」ているのに対し、甲第21号証発明は、「そのクランプロッド5のピストン15と下摺動部分12との間に設けた旋回部分26に旋回溝36をアーク状に凹入形成し、旋回溝36と旋回操作用スリーブ27の操作用溝40との間に多数充填された転動用ボール44とを備え、」ている点。
[相違点3]
本件発明1は、「上記ハウジング(3)の筒孔(4)に挿入したピストン(15)を介して駆動される入力部(14)」を備えているのに対し、甲第8号証発明は、入力部にあたるピストン15がクランプロッド5と一体である点。
[相違点4]
本件発明1は、「上記ピストン(15)の外周に嵌着した封止具(15a)の両端方向の外側で同上ピストン(15)の外周面と上記ハウジング(3)の上記の筒孔(4)との間に比較的に大きな嵌合隙間を形成することにより、上記ピストン(15)の両端方向の外方に配置された上記の第1摺動部分(11)と第2摺動部分(12)との2箇所で上記クランプロッド(5)を上記ハウジング(3)に緊密に嵌合支持させて同上クランプロッド(5)が傾くのを防止するように構成し、」ているのに対し、甲第21号証発明は、「ピストン15の外周に嵌着した封止具の両端方向の外側でピストン15の外周面とハウジング3のガイド孔4との間に比較的に大きな嵌合隙間を形成するように構成し、」ているものの、それにより、ピストン15の両端方向の外方に配置された第1摺動部分11と第2摺動部分12との2箇所でクランプロッド5をハウジング3に緊密に嵌合支持させてクランプロッド5が傾くのを防止するように構成しているかどうか、不明確である点。
[相違点5]
本件発明1は、「上記の第2摺動部分(12)に設けた上記3つ又は4つのガイド溝(26)を、それぞれ、上記の軸心方向の他端から一端へ連ねて設けた旋回溝(27)と直進溝(28)とによって構成し、上記の複数の旋回溝(27)を相互に平行状に配置すると共に上記の複数の直進溝(28)を相互に平行状に配置し、」ているのに対し、甲第21号証発明は、旋回溝36は、旋回部分26の外周面にほぼ1ピッチ分だけ螺旋状に形成した第1溝部分37と、その第1溝部分37の始端と終端とをほぼ軸心方向へ連通させる第2溝部分38とによって構成されている点。
[相違点6]
本件発明1は、「旋回溝(27)の傾斜角度(A)を10度から30度の範囲内に設定し、」という事項を備えるのに対し、甲第21号証発明は、旋回溝36の傾斜角度がそのような範囲内に設定されているかどうか、不明確である点。
[相違点7]
本件発明1は、「上記の隣り合うガイド溝(26)(26)の隔壁の最小厚さ(T)を、同上のガイド溝(26)の溝幅(W)よりも小さい値に設定した」のに対し、甲第21号証発明は隣り合う旋回溝36の隔壁を有していない点。
(1-3)判断
[相違点1]について
まず、「緊密に嵌合支持」の意義については、上記「【無効理由(1-1)】について」の「(1-3)判断 [相違点1]について」に述べたとおりである。
上記(お)に摘記したように、甲第21号証には、「ハウジングの第1端壁にクランプロッドの第1摺動部分を支持すると共に同上ハウジングの第2端壁にクランプロッドの第2摺動部分を支持し、これら2つの摺動部分の間に設けた旋回部分に旋回操作用スリーブを外嵌したので、上記の旋回部分およびスリーブに要求される係合隙間とは関係なく上記クランプロッドを二箇所で精密にガイドできるうえ、そのガイド間隔が大きい。」と記載されている。この「精密にガイド」は本件発明1の「緊密に嵌合支持」に相当するから、甲第21号証発明は実質的に、ハウジング3の上端壁(第1端壁)3aに摺動自在に支持される第1摺動部分11と、ハウジング3の下端壁(第2端壁)3bに摺動自在に支持されるように下端方向へ一体に突出した第2摺動部分12とが、それぞれハウジング3に緊密に嵌合支持されているものと認められる。
[相違点2]について
第2摺動部分に相当する部分にガイド溝を形成したものは、甲第25号証、甲第26号証のほか、甲第8号証(検甲第1号証)、甲第14号証、甲第22号証にも記載されている。甲第21号証発明にこの事項を採用することにより、一応、相違点2に係る本件発明1の事項に想到し得ると認められる。しかし、上記(お)に摘記したように、甲第21号証には、「ハウジングの第1端壁にクランプロッドの第1摺動部分を支持すると共に同上ハウジングの第2端壁にクランプロッドの第2摺動部分を支持し、これら2つの摺動部分の間に設けた旋回部分に旋回操作用スリーブを外嵌したので、上記の旋回部分およびスリーブに要求される係合隙間とは関係なく上記クランプロッドを二箇所で精密にガイドできるうえ、そのガイド間隔が大きい。」と記載されている。すなわち、甲第21号証発明においてクランプロッドを二箇所で精密にガイドできるのは、2つの摺動部分の間に設けた旋回部分26に旋回操作用スリーブ27を外嵌したことによるとされている。甲第21号証発明のこのような因果的関係に留意すると、第2摺動部分12に旋回溝36を設けるために旋回部分26と旋回操作用スリーブ27を第2摺動部分12に設けることは、甲第21号証発明における課題解決のための構想の核心部分に相反するものであり、これを当業者が容易に想到し得たものということはできない。
[相違点3]について
甲第21号証発明において、入力部に相当するピストン15を別個に設けるかどうかは、適宜設計する事項にすぎない。
[相違点4]について
甲第21号証発明が実質的に、ハウジング3の上端壁(第1端壁)3aに摺動自在に支持される第1摺動部分11と、ハウジング3の下端壁(第2端壁)3bに摺動自在に支持されるように下端方向へ一体に突出した第2摺動部分12とが、それぞれ緊密に嵌合支持されているものと認められることは、上記「[相違点1]について」に述べたとおりであり、したがって、甲第21号証発明は実質的に、それにより、ピストン15の両端方向の外方に配置された第1摺動部分11と第2摺動部分12との2箇所でクランプロッド5をハウジング3に緊密に嵌合支持させてクランプロッド5が傾くのを防止するように構成されているものと認められる。
[相違点5]について
甲第13号証には、3本のカム溝51を形成し、それぞれを軸心方向の他端から一端へ連ねて設けた旋回溝と直進溝とによって構成し、複数の旋回溝を相互に平行状に配置すると共に複数の直進溝を相互に平行状に配置したものが記載されている。したがって、甲第21号証発明において、3つのカム溝を設け、それぞれを軸心方向の他端から一端へ連ねて設けた旋回溝と直進溝とによって構成し、複数の旋回溝を相互に平行状に配置すると共に複数の直進溝を相互に平行状に配置することは、甲第13号証の上記事項を採用することにより当業者が容易に想到し得たものと認められる。
甲第21号証発明の旋回溝36の形状・構造については上記のとおりであるが、第2摺動部分12に旋回溝36を設けるために旋回部分26と旋回操作用スリーブ27を第2摺動部分12に設けることが、当業者が容易に想到し得たものということはできないことは、上記「[相違点2]について」に述べたとおりである。
[相違点6]について
本件発明1は、「旋回溝(27)の傾斜角度(A)を10度から30度の範囲内に設定し、」という事項を備え、このように上記の螺旋状の旋回溝27の傾斜角度Aを小さくしたので、その旋回溝27のリードが大幅に短くなり、このため、上記クランプロッド5の旋回用ストロークが小さくなるという効果を奏する。
「旋回溝(27)の傾斜角度(A)を10度から30度の範囲内に設定し、」という事項を備えることにより、クランプロッド5の旋回用ストロークを小さくしたものは、甲第8号証、甲第13号証、甲第14号証、甲第25号証、及び甲第26号証に記載されていない。この点に関して、請求人は審判請求書において、甲第19号証?甲第21号証に基づいて、「スイング式のクランプ装置における旋回中のストロークを小さくすること」は本件特許の出願時において周知の技術的課題であること、及び、甲第21号証の図1には傾斜角度が約15度である旋回溝36が示されており、「クランプロッドの外周部に形成される旋回溝の傾斜角度を15度程度にすること」は、本件特許の出願時において周知技術であることが分かる旨、主張する。しかし、甲第21号証の図1は発明の実施形態を表わすいわば模式図であって、図1の記載からその各部の寸法関係をこのように精確に、ないし一義的に導き出すことは不適切である。そして、甲第21号証発明の旋回溝が、旋回部分26の外周面にほぼ1ピッチ分だけ螺旋状に形成した第1溝部分37と、その第1溝部分37の始端と終端とをほぼ軸心方向へ連通させる第2溝部分38とによって構成されていること、本件発明1は、「旋回溝(27)の傾斜角度(A)を10度から30度の範囲内に設定し、」という事項を備えることにより、クランプロッド5の旋回用ストロークを小さくするという格別の効果を奏することを合わせ考えると、甲第21号証発明において、旋回溝36に代えて3つのカム溝を設けた上で、さらにそのカム溝の傾斜角度を10度から30度の範囲内に設定することが、甲第21号証発明、及び上記各甲号証の記載事項に基づいて当業者が容易に想到しえたものであるということはできない。
[相違点7]について
甲第21号証発明にそれぞれ旋回溝と直進溝からなる3つのカム溝を設けることが、甲第13号証の上記事項を採用することにより当業者が容易に想到し得たものと認められることは、上記「[相違点5について]」に述べたとおりであるが、甲第13号証に、隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さがカム溝51の溝幅よりも小さい値に設定されていること、また、隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さがカム体52の直径よりも小さい値に設定されていることの記載も示唆もないことは上記のとおりである。そして、隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さとカム溝51の溝幅、ないしカム体52の直径との大小関係は、カム溝51の溝幅、ないしカム体52そのものの大きさのほか、旋回角度にもよると考えられるが、カム溝51の溝幅、ないしカム体52の大きさにはクランプ装置の構造簡素化や円滑な動作等の観点から相応の上限があり、隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さがカム溝51の溝幅よりも小さい値に設定され、あるいは隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さがカム体52の直径よりも小さい値に設定されるほど、カム溝51の溝幅、ないしカム体52を大きくすることが単なる設計的事項であるとする根拠は見出せない。また、螺旋溝51bの傾斜角度が不明確であることを考慮すると、旋回角度を大きくすれば、直ちに、隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さがカム溝51の溝幅よりも小さい値に設定され、あるいは隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さがカム体52の直径よりも小さい値に設定されるということはできない。
ここで、甲第8号証に係るCTF型クランプ装置と同型式のCTF型クランプ装置(型式:CTF1.6M-LP-MCTA3440)の現物である検甲第1号証に関する事実実験公正証書の正本である甲第3号証によれば、2本のV形溝間の隔壁の最小厚さはV形溝の溝幅よりも小さくなっており、したがって、甲第8号証発明は実質的にみて、2本のV形溝間の隔壁の最小厚さをV形溝の溝幅よりも小さい値に設定したという事項を具備していると認められる。しかし、甲第8号証に記載されたV形溝は2本であって、直線溝と正弦波形溝と直線溝からなるのに対し、甲第13号証に記載されたカム溝は3本であって、螺旋溝と縦溝からなり、両者の溝の形状や配置がかなり異なっていることを考慮すると、甲第21号証発明に甲第13号証の上記事項を採用してそれぞれ旋回溝と直進溝からなる3つのカム溝51を設けるものにおいて、甲第8号証発明が実質的にみて2本のV形溝間の隔壁の最小厚さをV形溝の溝幅よりも小さい値に設定したという事項を具備していることに基づいて、隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さをカム溝51の溝幅よりも小さい値に設定することが当業者が容易に想到し得たものであるとするのは、その理由づけが甚だ迂遠であって論拠に乏しいといわざるを得ない。
(1-4)結び
以上により、本件発明1が甲第21号証、甲第8号証、甲第13号証、甲第14号証、甲第25号証、及び甲第26号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものであるということはできない。したがって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

(2)本件発明3について
(2-1)対比
本件発明3は、本件発明1においてその「係合具」を「係合ボール」とし、同じく「同上のガイド溝(26)の溝幅(W)」を「上記の係合ボール(29)の直径(D)」と置換したものに相当する。
本件発明3と甲第21号証発明とを比較すると、甲第21号証の「転動用ボール44」が本件発明3の「係合ボール(29)」に相当するほかは上記「(1-2)対比」に述べたとおりであり、本件発明3の用語に倣って整理すると、両者は、
「ハウジング内にほぼ90度の旋回角度で軸心回りに回転可能に挿入されると共に軸心方向の一端から他端へクランプ移動されるクランプロッドであって、片持ちアームを固定する部分と、上記ハウジングの一端側の第1端壁に支持されるようにロッド本体に設けた第1摺動部分と、入力部と、上記ハウジングの他端側の第2端壁に支持されるように上記のロッド本体から他端方向へ一体に突出した第2摺動部分とを、上記の軸心方向へ順に設けたクランプロッドと、
そのクランプロッドに設けたガイド溝に嵌合するように支持された複数の係合ボールとを備え、
上記ピストンの外周に嵌着した封止具の両端方向の外側で同上ピストンの外周面と上記ハウジングの上記の筒孔との間に比較的に大きな嵌合隙間を形成するように構成し、
ガイド溝の旋回溝の傾斜角度を所定角度に設定した旋回式クランプ。」である点で、一致し、上記[相違点1]?[相違点6]のほか、次の点で相違する。
[相違点7]
本件発明3は、「上記の隣り合うガイド溝(26)(26)の隔壁の最小厚さ(T)を、上記の係合ボール(29)の直径(D)よりも小さい値に設定した」という事項を備えるのに対し、甲第21号証発明は、そのような事項を備えているかどうか、不明確である点。
(2-2)判断
[相違点1]?[相違点6]については、本件発明1について検討したとおりである。
[相違点7]について
甲第21号証発明にそれぞれ旋回溝と直進溝からなる3つのカム溝を設けることが、甲第13号証の上記事項を採用することにより当業者が容易に想到し得たものと認められることは、上記「[相違点5について]」に述べたとおりであるが、甲第13号証に、隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さがカム溝51の溝幅よりも小さい値に設定されていること、また、隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さがカム体52の直径よりも小さい値に設定されていることの記載も示唆もないことは上記のとおりである。そして、隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さとカム溝51の溝幅、ないしカム体52の直径との大小関係は、カム溝51の溝幅、ないしカム体52そのものの大きさのほか、旋回角度にもよると考えられるが、カム溝51の溝幅、ないしカム体52の大きさにはクランプ装置の構造簡素化や円滑な動作等の観点から相応の上限があり、隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さがカム溝51の溝幅よりも小さい値に設定され、あるいは隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さがカム体52の直径よりも小さい値に設定されるほど、カム溝51の溝幅、ないしカム体52を大きくすることが単なる設計的事項であるとする根拠は見出せない。また、螺旋溝51bの傾斜角度が不明確であることを考慮すると、旋回角度を大きくすれば、直ちに、隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さがカム溝51の溝幅よりも小さい値に設定され、あるいは隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さがカム体52の直径よりも小さい値に設定されるということはできない。
ここで、甲第8号証に係るCTF型クランプ装置と同型式のCTF型クランプ装置(型式:CTF1.6M-LP-MCTA3440)の現物である検甲第1号証に関する事実実験公正証書の正本である甲第3号証によれば、2本のV形溝間の隔壁の最小厚さは鋼球の直径よりも小さくなっており、したがって、甲第8号証発明は実質的にみて、2本のV形溝間の隔壁の最小厚さを鋼球の直径よりも小さい値に設定したという事項を具備していると認められる。しかし、甲第8号証に記載されたV形溝は2本であって、直線溝と正弦波形溝と直線溝からなるのに対し、甲第13号証に記載されたカム溝は3本であって、螺旋溝と縦溝からなり、両者の溝の形状や配置がかなり異なっていることを考慮すると、甲第21号証発明に甲第13号証の上記事項を採用してそれぞれ旋回溝と直進溝からなる3つのカム溝51を設けるものにおいて、甲第8号証発明が実質的にみて2本のV形溝間の隔壁の最小厚さを鋼球の直径よりも小さい値に設定したという事項を具備していることに基づいて、隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さをカム体52の直径よりも小さい値に設定することが当業者が容易に想到し得たものであるとするのは、その理由づけが甚だ迂遠であって論拠に乏しいといわざるを得ない。
(2-3)結び
以上により、本件発明3が甲第21号証、甲第8号証、甲第13号証、甲第14号証、甲第25号証、及び甲第26号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものであるということはできない。したがって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

【無効理由(1-3)】について
本件発明1と本件発明3について無効理由を主張しているので、順に検討する。
(1)本件発明1について
(1-1)甲第26号証
甲第26号証には、下記の事項が図面とともに記載されている。
(あ)「従来のこの種の液圧クランプ装置は第1図に示すようになつていて、シリンダa内に嵌挿したピストンbの一方のロッドcに回転用のラセン溝dが加工してあり、これにシリンダaに固定されたピンeを嵌合して、ピストンaの移動によりこのピストンaを回転させてピストンaの移動によりこのピストンaを回転させてピストンaの他方のロッドfに固着したクランパgを回転してそのままワークhをクランプするようにしている。」(明細書第2頁第2?9行参照)
以上の記載事項及び図面からみて、甲第26号証には、下記の発明(以下、「甲第26号証発明」という。)が記載されているものと認められる。
「シリンダa内に軸心回りに回転可能に挿入されると共に軸心方向の一端から他端へクランプ移動されるクランプロッド(一方のロッドc、ピストンb、及び他方のロッドfからなる)であって、クランパgを固定する部分と、シリンダaの一端側の第1端壁に支持されるように他方のロッドfに設けた第1摺動部分と、シリンダa内に嵌挿したピストンbと、シリンダaの他端側の第2端壁に支持されるように一体に突出されると共にラセン溝dを外周部に形成した一方のロッドcの第2摺動部分とを、軸心方向へ順に設けたクランプロッドと、
そのクランプロッドの第2摺動部分にラセン溝dに嵌合するようにシリンダaに支持したピンeとを備え、
第2摺動部分に設けたラセン溝dを軸心方向の他端から一端へ連ねて設けた旋回溝によって構成し
ピストンbの外周に嵌着した封止具の両端方向の外側でピストンの外周面とシリンダaとの間に比較的に大きな嵌合隙間を形成し、
ラセン溝の傾斜角度を所定角度に設定した液圧クランプ。」
(1-2)対比
本件発明1と甲第26号証発明とを対比すると、後者の「シリンダa」は前者の「ハウジング」に相当し、以下、同様に、「クランパg」は「アーム」に、「ピストンb」は「入力部」に、「ラセン溝d」は「ガイド溝」に、「ピンe」は「係合具」に、「液圧クランプ」は「旋回式クランプ」にそれぞれ相当するから、本件発明1の用語に倣って整理すると、両者は、
「ハウジング内に軸心回りに回転可能に挿入されると共に軸心方向の一端から他端へクランプ移動されるクランプロッドであって、アームを固定する部分と、上記ハウジングの一端側の第1端壁に支持されるようにロッド本体に設けた第1摺動部分と、入力部と、上記ハウジングの他端側の第2端壁に支持されるように上記のロッド本体から他端方向へ一体に突出されると共にガイド溝を外周部に形成した第2摺動部分とを、上記の軸心方向へ順に設けたクランプロッドと、
そのクランプロッドの上記の第2摺動部分に設けたガイド溝に嵌合するように上記ハウジングに支持した係合具とを備え、
上記の第2摺動部分に設けたガイド溝を軸心方向の他端から一端へ連ねて設けた旋回溝によって構成し、
前記の第2端壁(3b)に支持されると共に上記のガイド溝が設けられた上記の第2摺動部分について、その第2摺動部分の外周面を展開した状態における上記の旋回溝の傾斜角度を所定角度に設定した旋回式クランプ。」である点で、一致し、次の点で相違する。
[相違点1]
本件発明1は、「クランプロッド(5)」が「上記ハウジング(3)の一端側の第1端壁(3a)に緊密に嵌合支持されるようにロッド本体(5a)に設けた第1摺動部分(11)」、及び「上記ハウジング(3)の他端側の第2端壁(3b)に緊密に嵌合支持されるように上記のロッド本体(5a)から他端方向へ一体に突出される」「第2摺動部分(12)」を有しているのに対し、甲第26号証発明は、シリンダaの第1端壁に支持される第1摺動部分と、シリンダaの第2端壁に摺動自在に支持されるように下端方向へ一体に突出した第2摺動部分を備えているものの、シリンダaに緊密に嵌合支持されているかどうか、不明確である点。
[相違点2]
本件発明1は、クランプロッド(5)が「3つ又は4つのガイド溝(26)」を備え、また「ほぼ90度の旋回角度」であるのに対し、甲第26号証発明は、ラセン溝dが甲第26号証の第1図では1つであり、またその旋回角度が不明確である点。
[相違点3]
本件発明1は「片持ちアーム(6)」であるのに対し、甲第26号証発明は、クランパgが片持ちアームではない点。
[相違点4]
本件発明1は、「上記ハウジング(3)の筒孔(4)に挿入したピストン(15)を介して駆動される入力部(14)」を備えているのに対し、甲第26号証発明は、このような「ピストン(15)」を備えておらず、入力部にあたるピストンbがクランプロッドと一体である点。
[相違点5]
本件発明1は、「上記ピストン(15)の外周に嵌着した封止具(15a)の両端方向の外側で同上ピストン(15)の外周面と上記ハウジング(3)の上記の筒孔(4)との間に比較的に大きな嵌合隙間を形成することにより、上記ピストン(15)の両端方向の外方に配置された上記の第1摺動部分(11)と第2摺動部分(12)との2箇所で上記クランプロッド(5)を上記ハウジング(3)に緊密に嵌合支持させて同上クランプロッド(5)が傾くのを防止するように構成し、」ているのに対し、甲第26号証発明は、甲第26号証の第1図を参照すると、ピストンbの外周に封止具が嵌着されているものの、封止具の両端方向の外側でピストンbの外周面とシリンダaとの間に比較的に大きな嵌合隙間を形成するという事項を備えていない点。
[相違点6]
本件発明1は、「ガイド溝(26)」を、「上記の軸心方向の他端から一端へ連ねて設けた旋回溝(27)と直進溝(28)とによって構成し、上記の複数の旋回溝(27)を相互に平行状に配置すると共に上記の複数の直進溝(28)を相互に平行状に配置し、」ているのに対し、甲第26号証は、ラセン溝dが旋回溝を備えているものの、直進溝を備えていない点。
[相違点7]
本件発明1は、「旋回溝(27)の傾斜角度(A)を10度から30度の範囲内に設定し、」たのに対し、甲第26号証発明は、旋回溝の傾斜角度がそのような範囲内に設定されているかどうか、不明確である点。
[相違点8]
本件発明1は、「上記の隣り合うガイド溝(26)(26)の隔壁の最小厚さ(T)を、同上のガイド溝(26)の溝幅(W)よりも小さい値に設定した」のに対し、甲第26号証発明は隣り合う旋回溝の隔壁を有していない点。
(1-3)判断
[相違点1]について
まず、「緊密に嵌合支持」の意義については、上記「【無効理由(1-1)】について」の「(1-3)判断 [相違点1]について」に述べたとおりである。
次に、甲第21号証発明が実質的に「ハウジング3の上端壁(第1端壁)3aに摺動自在に支持される第1摺動部分11と、ハウジング3の下端壁(第2端壁)3bに摺動自在に支持されるように下端方向へ一体に突出した第2摺動部分12とが、それぞれハウジング3に緊密に嵌合支持されているものと認められる。」ことは、上記「【無効理由(1-2)】について」の「(1-3)判断 [相違点1]について」に述べたとおりであり、甲第26号証発明において、シリンダaの第1端壁に支持される第1摺動部分と、シリンダaの第2端壁に摺動自在に支持されるように下端方向へ一体に突出した第2摺動部分とが、それぞれシリンダaに緊密に嵌合支持されるようにすることは、甲第21号証発明の上記事項を採用することにより当業者が容易に想到し得たものということもできるように思われる。しかし、甲第21号証発明においてクランプロッドを二箇所で精密にガイドできるのは、2つの摺動部分の間に設けた旋回部分26に旋回操作用スリーブ27を外嵌したことによるとされているのは、上記のとおりであり、甲第26号証発明において、ラセン溝dを外周部に形成した一方のロッドcの第2摺動部分をシリンダaに緊密に嵌合支持させることは、甲第21号証発明の核心部分に相反するものであり、これを当業者が容易に想到し得たものであるということはできない。
[相違点2]について
甲第13号証発明は、クランプロッド20の外周部に3本のカム溝51を形成し、また、90度円弧分に相当する螺旋溝51bを備えている。またその螺旋溝51bによる旋回角度はほぼ90度ということができるから、甲第26号証発明において、ラセン溝を3本とし、その旋回角度をほぼ90度とすることは、甲第13号証発明の上記事項を採用することにより当業者が容易に想到し得たものと認められる。
[相違点3]について
甲第26号証発明クランパgを片持ちアームとすることは適宜設計する事項にすぎない。
[相違点4]について
甲第26号証発明において、入力部に相当するピストンbを別個に設けるかどうかは、適宜設計する事項にすぎない。
[相違点5]について
甲第21号証発明は、「ピストン15の外周に嵌着した封止具の両端方向の外側でピストン15の外周面とハウジング3のガイド孔4との間に比較的に大きな嵌合隙間を形成するように構成し、」ている。甲第26号証発明において、ピストンbの外周に嵌着した封止具の両端方向の外側でピストンbの外周面とシリンダaとの間に比較的に大きな嵌合隙間を形成するように構成することは、甲第21号証発明の上記事項を採用することにより当業者が容易に想到し得たものと認められる。
ピストンbの外周に嵌着した封止具の点は上記のとおりであるが、甲第26号証発明において、ラセン溝dを外周部に形成した一方のロッドcの第2摺動部分をシリンダaに緊密に嵌合支持させることが当業者が容易に想到し得たものであるということはできないことは、上記「[相違点1]について」に述べたとおりであり、したがって、それにより、ピストbの両端方向の外方に配置された第1摺動部分と第2摺動部分との2箇所でクランプロッドをシリンダaに緊密に嵌合支持させてクランプロッドが傾くのを防止するように構成することが当業者が容易に想到し得たものであるということはできない。
[相違点6]について
甲第13号証には、3本のカム溝51を形成し、それぞれを軸心方向の他端から一端へ連ねて設けた旋回溝と直進溝とによって構成し、複数の旋回溝を相互に平行状に配置すると共に複数の直進溝を相互に平行状に配置したものが記載されている。したがって、甲第26号証発明において、3つのカム溝を設け、それぞれを軸心方向の他端から一端へ連ねて設けた旋回溝と直進溝とによって構成し、複数の旋回溝を相互に平行状に配置すると共に複数の直進溝を相互に平行状に配置することは、甲第13号証の上記事項を採用することにより当業者が容易に想到し得たものと認められる。
[相違点7]について
本件発明1は、「旋回溝(27)の傾斜角度(A)を10度から30度の範囲内に設定し、」という事項を備え、このように上記の螺旋状の旋回溝27の傾斜角度Aを小さくしたので、その旋回溝27のリードが大幅に短くなり、このため、上記クランプロッド5の旋回用ストロークが小さくなるという効果を奏する。
「旋回溝(27)の傾斜角度(A)を10度から30度の範囲内に設定し、」という事項を備えることにより、クランプロッド5の旋回用ストロークを小さくしたものは、甲第8号証、甲第13号証、及び甲第14号証に記載されていない。この点に関して、請求人は審判請求書において、甲第19号証?甲第21号証に基づいて、「スイング式のクランプ装置における旋回中のストロークを小さくすること」は本件特許の出願時において周知の技術的課題であること、及び、甲第21号証の図1には傾斜角度が約15度である旋回溝36が示されており、「クランプロッドの外周部に形成される旋回溝の傾斜角度を15度程度にすること」は、本件特許の出願時において周知技術であることが分かる旨、主張する。しかし、甲第21号証の図1は発明の実施形態を表わすいわば模式図であって、図1の記載からその各部の寸法関係をこのように精確に、ないし一義的に導き出すことは不適切である。そして、本件発明1は、「旋回溝(27)の傾斜角度(A)を10度から30度の範囲内に設定し、」という事項を備えることにより、クランプロッド5の旋回用ストロークを小さくするという格別の効果を奏することを合わせ考えると、甲第26号証発明において、ラセン溝dに代えて3つのカム溝を設けた上で、さらにそのカム溝の傾斜角度を10度から30度の範囲内に設定することが、甲第26号証発明、及び上記各甲号証の記載事項に基づいて当業者が容易に想到しえたものであるということはできない。
[相違点8]について
甲第26号証発明にそれぞれ旋回溝と直進溝からなる3つのカム溝を設けることが、甲第13号証の上記事項を採用することにより当業者が容易に想到し得たものと認められることは、上記「[相違点2]について」、及び「[相違点6]について」に述べたとおりであるが、甲第13号証に、隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さがカム溝51の溝幅よりも小さい値に設定されていること、また、隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さがカム体52の直径よりも小さい値に設定されていることの記載も示唆もないことは上記のとおりである。そして、隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さとカム溝51の溝幅、ないしカム体52の直径との大小関係は、カム溝51の溝幅、ないしカム体52そのものの大きさのほか、旋回角度にもよると考えられるが、カム溝51の溝幅、ないしカム体52の大きさにはクランプ装置の構造簡素化や円滑な動作等の観点から相応の上限があり、隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さがカム溝51の溝幅よりも小さい値に設定され、あるいは隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さがカム体52の直径よりも小さい値に設定されるほど、カム溝51の溝幅、ないしカム体52を大きくすることが単なる設計的事項であるとする根拠は見出せない。また、螺旋溝51bの傾斜角度が不明確であることを考慮すると、旋回角度を大きくすれば、直ちに、隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さがカム溝51の溝幅よりも小さい値に設定され、あるいは隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さがカム体52の直径よりも小さい値に設定されるということはできない。
ここで、甲第8号証に係るCTF型クランプ装置と同型式のCTF型クランプ装置(型式:CTF1.6M-LP-MCTA3440)の現物である検甲第1号証に関する事実実験公正証書の正本である甲第3号証によれば、2本のV形溝間の隔壁の最小厚さはV形溝の溝幅よりも小さくなっており、したがって、甲第8号証発明は実質的にみて、2本のV形溝間の隔壁の最小厚さをV形溝の溝幅よりも小さい値に設定したという事項を具備していると認められる。しかし、甲第8号証に記載されたV形溝は2本であって、直線溝と正弦波形溝と直線溝からなるのに対し、甲第13号証に記載されたカム溝は3本であって、螺旋溝と縦溝からなり、両者の溝の形状や配置がかなり異なっていることを考慮すると、甲第21号証発明に甲第13号証の上記事項を採用してそれぞれ旋回溝と直進溝からなる3つのカム溝51を設けるものにおいて、甲第8号証発明が実質的にみて2本のV形溝間の隔壁の最小厚さをV形溝の溝幅よりも小さい値に設定したという事項を具備していることに基づいて、隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さをカム溝51の溝幅よりも小さい値に設定することが当業者が容易に想到し得たものであるとするのは、その理由づけが甚だ迂遠であって論拠に乏しいといわざるを得ない。
(1-4)結び
以上により、本件発明1が甲第26号証、甲第8号証、甲第13号証、及び甲第14号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものであるということはできない。したがって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

(2)本件発明3について
(2-1)対比
本件発明3は、本件発明1においてその「係合具」を「係合ボール」とし、同じく「同上のガイド溝(26)の溝幅(W)」を「上記の係合ボール(29)の直径(D)」と置換したものに相当する。
本件発明3と甲第26号証発明とを比較すると、甲第26号証の「ピンe」が本件発明1の「係合具」に相当するとしたことを除いて、それ以外は上記「(1-2)対比」に述べたとおりであり、本件発明3の用語に倣って整理すると、両者は、
「ハウジング内に軸心回りに回転可能に挿入されると共に軸心方向の一端から他端へクランプ移動されるクランプロッドであって、片持ちアームを固定する部分と、上記ハウジングの一端側の第1端壁に支持される第1摺動部分と、入力部と、上記ハウジングの他端側の第2端壁に支持されるように突出されると共に周方向へほぼ等間隔に並べたガイド溝を外周部に形成した第2摺動部分とを、上記の軸心方向へ順に設けたクランプロッドと、
外周に嵌着した封止具の両端方向の外側で比較的に大きな隙間を形成し、
上記の第2摺動部分に設けたガイド溝を、それぞれ、上記の軸心方向の他端から一端へ連ねて設けた旋回溝と直進溝とによって構成し、上記の複数の旋回溝を相互に平行状に配置すると共に上記の複数の直進溝を相互に平行状に配置し、
前記の第2端壁に支持されると共に上記のガイド溝が設けられた上記の第2摺動部分について、その第2摺動部分の外周面を展開した状態における上記の旋回溝の傾斜角度(A)を所定角度に設定した旋回式クランプ。」である点で、一致し、上記[相違点1]?[相違点7]のほか、次の点で相違する。
[相違点8]
本件発明3は、「ガイド溝(26)」に「嵌合するように上記ハウジング(3)に支持した複数の係合ボール(29)とを備え、」ているのに対し、甲第26号証発明は、「ラセン溝dに嵌合するようにシリンダaに支持したピンe」を備えている点。
[相違点9]
本件発明3は、「上記の隣り合うガイド溝(26)(26)の隔壁の最小厚さ(T)を、上記の係合ボール(29)の直径(D)よりも小さい値に設定した」という事項を備えるのに対し、甲第8号証発明は、そのような事項を備えているかどうか、不明確である点。
(2-2)判断
[相違点1]?[相違点7]については、本件発明1について検討したとおりである。
[相違点8]について
甲第13号証には、カム溝51に鋼球からなるカム体52を係合したものが記載されており、甲第26号証発明のピンeをボール状のものとすることは、甲第13号証の上記事項を採用することにより当業者が容易に想到し得たものと認められる。
[相違点9]について
甲第26号証発明にそれぞれ旋回溝と直進溝からなる3つのカム溝を設けることが、甲第13号証の上記事項を採用することにより当業者が容易に想到し得たものと認められることは、上記「[相違点2]について」、及び「[相違点6]について」に述べたとおりであるが、甲第13号証に、隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さがカム溝51の溝幅よりも小さい値に設定されていること、また、隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さがカム体52の直径よりも小さい値に設定されていることの記載も示唆もないことは上記のとおりである。そして、隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さとカム溝51の溝幅、ないしカム体52の直径との大小関係は、カム溝51の溝幅、ないしカム体52そのものの大きさのほか、旋回角度にもよると考えられるが、カム溝51の溝幅、ないしカム体52の大きさにはクランプ装置の構造簡素化や円滑な動作等の観点から相応の上限があり、隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さがカム溝51の溝幅よりも小さい値に設定され、あるいは隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さがカム体52の直径よりも小さい値に設定されるほど、カム溝51の溝幅、ないしカム体52を大きくすることが単なる設計的事項であるとする根拠は見出せない。また、螺旋溝51bの傾斜角度が不明確であることを考慮すると、旋回角度を大きくすれば、直ちに、隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さがカム溝51の溝幅よりも小さい値に設定され、あるいは隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さがカム体52の直径よりも小さい値に設定されるということはできない。
ここで、甲第8号証に係るCTF型クランプ装置と同型式のCTF型クランプ装置(型式:CTF1.6M-LP-MCTA3440)の現物である検甲第1号証に関する事実実験公正証書の正本である甲第3号証によれば、2本のV形溝間の隔壁の最小厚さは鋼球の直径よりも小さくなっており、したがって、甲第8号証発明は実質的にみて、2本のV形溝間の隔壁の最小厚さを鋼球の直径よりも小さい値に設定したという事項を具備していると認められる。しかし、甲第8号証に記載されたV形溝は2本であって、直線溝と正弦波形溝と直線溝からなるのに対し、甲第13号証に記載されたカム溝は3本であって、螺旋溝と縦溝からなり、両者の溝の形状や配置がかなり異なっていることを考慮すると、甲第21号証発明に甲第13号証の上記事項を採用してそれぞれ旋回溝と直進溝からなる3つのカム溝51を設けるものにおいて、甲第8号証発明が実質的にみて2本のV形溝間の隔壁の最小厚さをV形溝の溝幅よりも小さい値に設定したという事項を具備していることに基づいて、隣り合うカム溝51の隔壁の最小厚さをカム体52の溝幅よりも小さい値に設定することが当業者が容易に想到し得たものであるとするのは、その理由づけが甚だ迂遠であって論拠に乏しいといわざるを得ない。
(2-3)結び
以上により、本件発明3が甲第26号証、甲第8号証、甲第13号証、及び甲第14号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものであるということはできない。したがって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

【無効理由(1-4)】について
請求項2、請求項5、請求項7、及び請求項8はいずれもその先行する請求項を引用する引用形式であり、引用されている請求項のうち、いずれも独立形式の請求項1、及び請求項3に係る発明が【無効理由(1-1)】、【無効理由(1-2)】、及び【無効理由(1-3)】に係る各甲号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものであるということはできないことは上記「【無効理由(1-1)】について」、「【無効理由(1-2)】について」、及び「【無効理由(1-3)】について」のとおりである。
そして、本無効理由に係る証拠方法は【無効理由(1-1)】、【無効理由(1-2)】、及び【無効理由(1-3)】に係る証拠方法と実質的に同じか、または引用形式の各請求項において特に追加した事項に対するものであるから、結局、請求項2、請求項5、請求項7、及び請求項8に係る発明が本無効理由に係る各甲号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものであるということはできないことは明らかである。したがって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

【無効理由(1-5)】について
請求項4は請求項2または3を引用する引用形式であり、引用されている請求項2、及び請求項3に係る発明が【無効理由(1-1)】、【無効理由(1-2)】、【無効理由(1-3)】、及び【無効理由(1-4)】に係る各甲号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるということはできないことは上記「【無効理由(1-1)】について」、「【無効理由(1-2)】について」、「【無効理由(1-3)】について」、及び「【無効理由(1-4)】について」のとおりである。
そして、本無効理由に係る証拠方法は【無効理由(1-1)】、【無効理由(1-2)】、【無効理由(1-3)】、及び【無効理由(1-4)】に係る証拠方法と実質的に同じか、または引用形式の各請求項において特に追加した事項に対するものであるから、結局、請求項4に係る発明が本無効理由に係る各甲号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるということはできないことは明らかである。したがって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

【無効理由(1-6)】について
請求項6は請求項1から5を引用する引用形式であり、引用されている請求項1?請求項5に係る発明が【無効理由(1-1)】、【無効理由(1-2)】、【無効理由(1-3)】、【無効理由(1-4)】、及び【無効理由(1-5)】に係る各甲号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるということはできないことは上記「【無効理由(1-1)】について」、「【無効理由(1-2)】について」、「【無効理由(1-3)】について」、「【無効理由(1-4)】について」、及び「【無効理由(1-5)】について」のとおりである。
そして、本無効理由に係る証拠方法は【無効理由(1-1)】、【無効理由(1-2)】、【無効理由(1-3)】、【無効理由(1-4)】及び【無効理由(1-5)】に係る証拠方法と実質的に同じか、または引用形式の各請求項において特に追加した事項に対するものであるから、請求項6に係る発明が本無効理由に係る各甲号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるということはできないことは明らかである。したがって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

【無効理由(1-7)】について
平成19年6月15日付け訂正請求書による訂正後の本件発明1?8は旋回溝(27)の傾斜角度を10度から30度の範囲内に限定するとともに、「近傍」という事項が削除されている。
また、隣り合うガイド溝の隔壁の最小厚さを、そのガイド溝の溝幅ないし係合ボールの直径よりも小さい値に設定するという事項により、旋回溝の傾斜角度を小さい値に設定することが可能となるともに、旋回溝(27)の傾斜角度を10度から30度の範囲内という小さな値に設定するから、クランプロッドの旋回角度としてほぼ90度という大きな値を確保しながらも、クランプロッドの旋回に必要なストロークが過大になるのを防止でき、旋回式クランプをコンパクトに造れるという作用効果を奏し得るものと認められ、上記事項の技術的意義が不明であるということはできない。
したがって、本願の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号又は第2号の要件に違反しているものではない。

【無効理由(2-1)】、【無効理由(2-2)】について
本件発明1、及び本件発明3が、甲第8号証、甲第13号証、及び甲第14号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということができないことは、上記「【無効理由(1-1)】について」において述べたとおりである。
ここで、検甲第1号証は、甲第8号証に係るCTF型クランプ装置と同型式のCTF型クランプ装置(型式:CTF1.6M-LP-MCTA3440)の現物であり、甲第8号証は検甲第1号証に関する事実実験公正証書の正本である甲第3号証の別紙5と実質的に同じものであることに鑑みると、検甲第1号証に示される発明は甲第8号証発明と実質的に同じであると認められる。なお、請求人は弁駁書において、「検甲1号証は、訂正前の発明に関する主引例であったが、訂正発明に関しては甲第8号証がより適切な主引例となる。」と主張している。
また、甲第15号証の記載事項は、本件発明1、3との関係では甲第14号証の記載事項と実質的に同様である。さらに、甲第19?21号証については、上記「【無効理由(1-1)】について」の「(1-3)判断」の「[相違点5]について」で考慮している。
したがって、本件発明1、及び本件発明3は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

【無効理由(2-3)】?【無効理由(2-8)】について
請求項2、請求項4?8はいずれもその先行する請求項を引用する引用形式であり、引用されている請求項のうち、いずれも独立形式の請求項1、及び請求項3に係る発明が【無効理由(2-1)】、及び【無効理由(2-2)】に係る各甲号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものであるということはできないことは上記「【無効理由(2-1)】について」、及び「【無効理由(2-2)】について」のとおりである。
そして、本無効理由に係る証拠方法は【無効理由(2-1)】、及び【無効理由(2-2)】に係る証拠方法と実質的に同じか、または引用形式の各請求項において特に追加した事項に対するものであるから、結局、請求項2、請求項4?8に係る発明が本無効理由に係る各甲号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものであるということはできないことは明らかである。したがって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。

【無効理由(2-9)】について
平成19年6月15日付け訂正請求書による訂正後の請求項1には、「周方向へほぼ等間隔に並べた3つ又は4つのガイド溝(26)を外周部に形成した第2摺動部分(12)」、及び「そのクランプロッド(5)の上記の第2摺動部分(12)に設けた3つ又は4つのガイド溝(26)にそれぞれ嵌合するように上記ハウジング(3)に支持した複数の係合具(29)」という事項が記載されており、これにより、本件発明1はクランプおよびアンクランプ駆動時にクランプロッドの傾きを防止できると認められる。同じく、訂正後の請求項3には、「周方向へほぼ等間隔に並べた3つ又は4つのガイド溝(26)を外周部に形成した第2摺動部分(12)」、及び「そのクランプロッド(5)の上記の第2摺動部分(12)に設けた3つ又は4つのガイド溝(26)にそれぞれ嵌合するように上記ハウジング(3)に支持した複数の係合ボール(29)」という事項が記載されており、これにより、本件発明3はクランプおよびアンクランプ駆動時にクランプロッドの傾きを防止できると認められる。
平成19年6月15日付け訂正請求書による訂正後の請求項1には、「その第2摺動部分(12)の外周面を展開した状態における上記の旋回溝(27)の傾斜角度(A)を10度から30度の範囲内に設定し、かつ、上記の隣り合うガイド溝(26)(26)の隔壁の最小厚さ(T)を、同上のガイド溝(26)の溝幅(W)よりも小さい値に設定した」という事項が記載されており、これにより、本件発明1はクランプロッドの旋回に必要なストロークを小さくして、旋回式クランプをコンパクトに造れるものと認められる。同じく訂正後の請求項3には、「その第2摺動部分(12)の外周面を展開した状態における上記の旋回溝(27)の傾斜角度(A)を10度から30度の範囲内に設定し、かつ、上記の隣り合うガイド溝(26)(26)の隔壁の最小厚さ(T)を、上記の係合ボール(29)の直径(D)よりも小さい値に設定した」という事項が記載されており、これにより、本件発明3はクランプロッドの旋回に必要なストロークを小さくして、旋回式クランプをコンパクトに造れるものと認められる。
また、請求項2、4?8は請求項1、または3のすくなくともいずれかを引用している。
したがって、本願の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号の要件に違反しているものではない。

【無効理由(2-10)】について
本件発明1、及び本件発明3において、「複数のガイド溝」に関し「ほぼ等間隔」の限定がなされていること、また、「旋回溝」に関しその傾斜角度の限定がなされていることは、上記「【無効理由(2-9)】について」に述べたとおりである。
したがって、本願の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号の要件に違反しているものではない。

【無効理由(2-11)】について
請求項1の「隣り合うガイド溝(26)(26)の隔壁の最小厚さ(T)を、同上のガイド溝(26)の溝幅(W)よりも小さい値に設定した」という事項、及び請求項3の「隣り合うガイド溝(26)(26)の隔壁の最小厚さ(T)を、上記の係合ボール(29)の直径(D)よりも小さい値に設定した」という事項の技術的意義が不明であるということはできないことは、上記「【無効理由(1-7)】について」に述べたとおりである。
したがって、本願の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号の要件に違反しているものではない。

【無効理由(2-12)】について
請求項1の「隣り合うガイド溝(26)(26)の隔壁の最小厚さ(T)を、同上のガイド溝(26)の溝幅(W)よりも小さい値に設定した」という事項、及び請求項3の「隣り合うガイド溝(26)(26)の隔壁の最小厚さ(T)を、上記の係合ボール(29)の直径(D)よりも小さい値に設定した」という事項の技術的意味が不明であるということはできないことは、上記「【無効理由(1-7)】について」に述べたとおりである。
したがって、本願の特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号の要件に違反しているものではない。

7.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張、及び提出した証拠方法によっては、請求項1?8に係る発明についての本件特許を無効とすることはできない。
また、審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
旋回式クランプ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】ハウジング(3)内にほぼ90度の旋回角度で軸心回りに回転可能に挿入されると共に軸心方向の一端から他端へクランプ移動されるクランプロッド(5)であって、片持ちアーム(6)を固定する部分と、上記ハウジング(3)の一端側の第1端壁(3a)に緊密に嵌合支持されるようにロッド本体(5a)に設けた第1摺動部分(11)と、上記ハウジング(3)の筒孔(4)に挿入したピストン(15)を介して駆動される入力部(14)と、上記ハウジング(3)の他端側の第2端壁(3b)に緊密に嵌合支持されるように上記のロッド本体(5a)から他端方向へ一体に突出されると共に周方向へほぼ等間隔に並べた3つ又は4つのガイド溝(26)を外周部に形成した第2摺動部分(12)とを、上記の軸心方向へ順に設けたクランプロッド(5)と、
そのクランプロッド(5)の上記の第2摺動部分(12)に設けた3つ又は4つのガイド溝(26)にそれぞれ嵌合するように上記ハウジング(3)に支持した複数の係合具(29)とを備え、
上記ピストン(15)の外周に嵌着した封止具(15a)の両端方向の外側で同上ピストン(15)の外周面と上記ハウジング(3)の上記の筒孔(4)との間に比較的に大きな嵌合隙間を形成することにより、上記ピストン(15)の両端方向の外方に配置された上記の第1摺動部分(11)と第2摺動部分(12)との2箇所で上記クランプロッド(5)を上記ハウジング(3)に緊密に嵌合支持させて同上クランプロッド(5)が傾くのを防止するように構成し、
上記の第2摺動部分(12)に設けた上記3つ又は4つのガイド溝(26)を、それぞれ、上記の軸心方向の他端から一端へ連ねて設けた旋回溝(27)と直進溝(28)とによって構成し、上記の複数の旋回溝(27)を相互に平行状に配置すると共に上記の複数の直進溝(28)を相互に平行状に配置し、
前記の第2端壁(3b)に緊密に嵌合支持されると共に上記の3つ又は4つのガイド溝(26)が設けられた上記の第2摺動部分(12)について、その第2摺動部分(12)の外周面を展開した状態における上記の旋回溝(27)の傾斜角度(A)を10度から30度の範囲内に設定し、かつ、上記の隣り合うガイド溝(26)(26)の隔壁の最小厚さ(T)を、同上のガイド溝(26)の溝幅(W)よりも小さい値に設定した、ことを特徴とする旋回式クランプ。
【請求項2】請求項1の旋回式クランプにおいて、
前記の各係合具(29)をボールによって構成した、ことを特徴とする旋回式クランプ。
【請求項3】ハウジング(3)内にほぼ90度の旋回角度で軸心回りに回転可能に挿入されると共に軸心方向の一端から他端へクランプ移動されるクランプロッド(5)であって、片持ちアーム(6)を固定する部分と、上記ハウジング(3)の一端側の第1端壁(3a)に緊密に嵌合支持されるようにロッド本体(5a)に設けた第1摺動部分(11)と、上記ハウジング(3)の筒孔(4)に挿入したピストン(15)を介して駆動される入力部(14)と、上記ハウジング(3)の他端側の第2端壁(3b)に緊密に嵌合支持されるように上記のロッド本体(5a)から他端方向へ一体に突出されると共に周方向へほぼ等間隔に並べた3つ又は4つのガイド溝(26)を外周部に形成した第2摺動部分(12)とを、上記の軸心方向へ順に設けたクランプロッド(5)と、
そのクランプロッド(5)の上記の第2摺動部分(12)に設けた3つ又は4つのガイド溝(26)にそれぞれ嵌合するように上記ハウジング(3)に支持した複数の係合ボール(29)とを備え、
上記ピストン(15)の外周に嵌着した封止具(15a)の両端方向の外側で同上ピストン(15)の外周面と上記ハウジング(3)の上記の筒孔(4)との間に比較的に大きな嵌合隙間を形成することにより、上記ピストン(15)の両端方向の外方に配置された上記の第1摺動部分(11)と第2摺動部分(12)との2箇所で上記クランプロッド(5)を上記ハウジング(3)に緊密に嵌合支持させて同上クランプロッド(5)が傾くのを防止するように構成し、
上記の第2摺動部分(12)に設けた上記3つ又は4つのガイド溝(26)を、それぞれ、上記の軸心方向の他端から一端へ連ねて設けた旋回溝(27)と直進溝(28)とによって構成し、上記の複数の旋回溝(27)を相互に平行状に配置すると共に上記の複数の直進溝(28)を相互に平行状に配置し、
前記の第2端壁(3b)に緊密に嵌合支持されると共に上記の3つ又は4つのガイド溝(26)が設けられた上記の第2摺動部分(12)について、その第2摺動部分(12)の外周面を展開した状態における上記の旋回溝(27)の傾斜角度(A)を10度から30度の範囲内に設定し、かつ、上記の隣り合うガイド溝(26)(26)の隔壁の最小厚さ(T)を、上記の係合ボール(29)の直径(D)よりも小さい値に設定した、ことを特徴とする旋回式クランプ。
【請求項4】請求項2または3の旋回式クランプにおいて、
前記の係合ボール(29)を前記ハウジング(3)に設けた貫通孔(31)に回転自在に支持すると共に、上記の複数の係合ボール(29)にわたってスリーブ(35)を回転自在に外嵌した、ことを特徴とする旋回式クランプ。
【請求項5】請求項1から4のいずれかの旋回式クランプにおいて、
前記のガイド溝(26)を3つ設けた、ことを特徴とする旋回式クランプ。
【請求項6】請求項1から5のいずれかの旋回式クランプにおいて、
前記ピストン(15)を前記クランプロッド(5)と一体に形成した、ことを特徴とする旋回式クランプ。
【請求項7】請求項1から6のいずれかの旋回式クランプにおいて、
前記クランプロッド(5)の他端部に前記の複数のガイド溝(26)を設け、各ガイド溝(26)の前記の旋回溝(27)の他端部に、前記の係合具または係合ボール(29)を受け止めるストッパー壁(45)を設け、そのストッパー壁(45)の受け止め面(45a)を上記の係合具または係合ボール(29)に嵌合させた、ことを特徴とする旋回式クランプ。
【請求項8】請求項1から5のいずれかの旋回式クランプにおいて、
前記のハウジング(3)内に環状のピストン(15)を軸心方向へ移動可能に挿入し、そのピストン(15)内に前記クランプロッド(5)を挿入し、これらピストン(15)とクランプロッド(5)との間にラジアルベアリング(24)を配置した、ことを特徴とする旋回式クランプ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、クランプロッドを旋回させる形式のクランプに関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の旋回式クランプには、従来では、米国特許第5,820,118に示すように、次のように構成されたものがある。
シリンダチューブ内にクランプロッドを軸心回りに回転可能かつ軸心方向へ移動可能に挿入する。そのクランプロッドの途中高さ部の外周に、反対方向へ傾斜する二つの螺旋溝と一つのストレート溝とを設ける。これらの三つの溝のうちのいずれか一つの溝に係合ボールを嵌入する。その係合ボールを、上記シリンダチューブの胴部に設けた凹所に支持する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記の従来技術は次の問題がある。
上記シリンダチューブに一つの係合ボールを介して上記クランプロッドを支持するので、クランプおよびアンクランプ駆動時に上記クランプロッドが僅かに傾く。このため、そのクランプロッドの先端に設けたクランプ具のクランプ位置およびアンクランプ位置の位置決め精度が低下する。
本発明の目的は、上記クランプロッドの傾きを防止することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、請求項1の発明は、例えば、図1から図5、または、図7から図10に示すように、旋回式クランプを次のように構成した。
ハウジング3内にほぼ90度の旋回角度で軸心回りに回転可能に挿入されると共に軸心方向の一端から他端へクランプ移動されるクランプロッド5であって、片持ちアーム6を固定する部分と、上記ハウジング3の一端側の第1端壁3aに緊密に嵌合支持されるようにロッド本体5aに設けた第1摺動部分11と、上記ハウジング3の筒孔4に挿入したピストン15を介して駆動される入力部14と、上記ハウジング3の他端側の第2端壁3bに緊密に嵌合支持されるように上記のロッド本体5aから他端方向へ一体に突出されると共に周方向へほぼ等間隔に並べた3つ又は4つのガイド溝26を外周部に形成した第2摺動部分12とを、上記の軸心方向へ順に設けたクランプロッド5と、
そのクランプロッド5の上記の第2摺動部分12に設けた3つ又は4つのガイド溝26にそれぞれ嵌合するように上記ハウジング3に支持した複数の係合具29とを備え、
上記ピストン15の外周に嵌着した封止具15aの両端方向の外側で同上ピストン15の外周面と上記ハウジング3の上記の筒孔4との間に比較的に大きな嵌合隙間を形成することにより、上記ピストン15の両端方向の外方に配置された上記の第1摺動部分11と第2摺動部分12との2箇所で上記クランプロッド5を上記ハウジング3に緊密に嵌合支持させて同上クランプロッド5が傾くのを防止するように構成し、
上記の第2摺動部分12に設けた上記3つ又は4つのガイド溝26を、それぞれ、上記の軸心方向の他端から一端へ連ねて設けた旋回溝27と直進溝28とによって構成し、上記の複数の旋回溝27を相互に平行状に配置すると共に上記の複数の直進溝28を相互に平行状に配置し、
前記の第2端壁3bに緊密に嵌合支持されると共に上記の3つ又は4つのガイド溝26が設けられた上記の第2摺動部分12について、その第2摺動部分12の外周面を展開した状態における上記の旋回溝27の傾斜角度Aを10度から30度の範囲内に設定し、かつ、上記の隣り合うガイド溝26・26の隔壁の最小厚さTを、同上のガイド溝26の溝幅Wよりも小さい値に設定したものである。
【0005】
上記の請求項1の発明は、次の作用効果を奏する。
上記クランプロッドに複数のガイド溝を設けて、これらのガイド溝にそれぞれ係合具を嵌合させたので、前記ハウジングに上記の複数の係合具を介して上記クランプロッドを周方向でほぼ均等に支持することが可能となる。このため、クランプおよびアンクランプ駆動時に上記クランプロッドの傾きを防止できる。その結果、上記クランプロッドの先端に設けたクランプ具のクランプ位置およびアンクランプ位置の位置決め精度が向上する。
また、前記の隣り合うガイド溝の隔壁の最小厚さを、そのガイド溝の溝幅よりも小さい値に設定したので、上記クランプロッドに多くのガイド溝を設けて同上クランプロッドを周方向でほぼ均等に支持することと、前記の旋回溝の傾斜角度を小さくすることとを両立できる。このため、上記クランプロッドの旋回に必要なストロークを小さくして、旋回式クランプをコンパクトに造れる。そのうえ、複数の大径の係合具を隣接して配置することが可能となるので、上記クランプの旋回機構は、大きな旋回トルクに耐えることができ、寿命が長い。
【0006】
請求項2の発明に示すように、前記の係合具をボールによって構成することにより、前記クランプロッドをさらに円滑に旋回させることが可能になると共に旋回機構の寿命が長くなる。
【0007】
また、前述の目的を達成するため、請求項3の発明は、例えば、図1から図5に示すように、旋回式クランプを次のように構成した。
ハウジング3内にほぼ90度の旋回角度で軸心回りに回転可能に挿入されると共に軸心方向の一端から他端へクランプ移動されるクランプロッド5であって、片持ちアーム6を固定する部分と、上記ハウジング3の一端側の第1端壁3aに緊密に嵌合支持されるようにロッド本体5aに設けた第1摺動部分11と、上記ハウジング3の筒孔4に挿入したピストン15を介して駆動される入力部14と、上記ハウジング3の他端側の第2端壁3bに緊密に嵌合支持されるように上記のロッド本体5aから他端方向へ一体に突出されると共に周方向へほぼ等間隔に並べた3つ又は4つのガイド溝26を外周部に形成した第2摺動部分12とを、上記の軸心方向へ順に設けたクランプロッド5と、
そのクランプロッド5の上記の第2摺動部分12に設けた3つ又は4つのガイド溝26にそれぞれ嵌合するように上記ハウジング3に支持した複数の係合ボール29とを備え、
上記ピストン15の外周に嵌着した封止具15aの両端方向の外側で同上ピストン15の外周面と上記ハウジング3の上記の筒孔4との間に比較的に大きな嵌合隙間を形成することにより、上記ピストン15の両端方向の外方に配置された上記の第1摺動部分11と第2摺動部分12との2箇所で上記クランプロッド5を上記ハウジング3に緊密に嵌合支持させて同上クランプロッド5が傾くのを防止するように構成し、
上記の第2摺動部分12に設けた上記3つ又は4つのガイド溝26を、それぞれ、上記の軸心方向の他端から一端へ連ねて設けた旋回溝27と直進溝28とによって構成し、上記の複数の旋回溝27を相互に平行状に配置すると共に上記の複数の直進溝28を相互に平行状に配置し、
前記の第2端壁3bに緊密に嵌合支持されると共に上記の3つ又は4つのガイド溝26が設けられた上記の第2摺動部分12について、その第2摺動部分12の外周面を展開した状態における上記の旋回溝27の傾斜角度Aを10度から30度の範囲内に設定し、かつ、上記の隣り合うガイド溝26・26の隔壁の最小厚さTを、上記の係合ボール29の直径Dよりも小さい値に設定したものである。
【0008】
上記の請求項3の発明は、前記の請求項1の発明と同様に、次の作用効果を奏する。
上記クランプロッドに複数のガイド溝を設けて、これらのガイド溝にそれぞれ係合ボールを嵌合させたので、前記ハウジングに上記の複数の係合ボールを介して上記クランプロッドを周方向でほぼ均等に支持することが可能となる。このため、クランプおよびアンクランプ駆動時に上記クランプロッドの傾きを防止できる。その結果、上記クランプロッドの先端に設けたクランプ具のクランプ位置およびアンクランプ位置の位置決め精度が向上する。
また、前記の隣り合うガイド溝の隔壁の最小厚さを、上記の係合ボールの直径よりも小さい値に設定したので、上記クランプロッドに多くのガイド溝を設けて同上クランプロッドを周方向でほぼ均等に支持することと、前記の旋回溝の傾斜角度を小さくすることとを両立できる。このため、上記クランプロッドの旋回に必要なストロークを小さくして、旋回式クランプをコンパクトに造れる。そのうえ、複数の大径の係合ボールを隣接して配置することが可能となるので、上記クランプの旋回機構は、大きな旋回トルクに耐えることができ、寿命が長い。
【0009】
請求項4の発明に示すように、上記の請求項2または3の発明には次の構成を加えることが好ましい。
例えば、図1から図4または図7から図10に示すように、前記の係合ボール29を前記ハウジング3に設けた貫通孔31に回転自在に支持すると共に、上記の複数の係合ボール29にわたってスリーブ35を回転自在に外嵌したものである。
上記の請求項4の発明は次の作用効果を奏する。
前記クランプロッドの旋同時において、上記スリーブの内周面と上記の係合ボールとの間には、ほとんどコロガリ摩擦だけが作用してスベリ摩擦がほとんど作用しなくなるので、上記スリーブから上記の係合ボールに作用する抵抗が小さくなる。このため、上記の係合ボールから前記の旋回溝に作用する摩擦力が小さくなり、上記クランプロッドが軽い力で円滑に旋回する。
【0010】
請求項5の発明に示すように、前記のガイド溝を3つ設けることが好ましい。
【0011】
請求項6の発明に示すように、前記ピストン15を前記クランプロッド5と一体に形成してもよい。
【0012】
請求項7の発明に示すように、上記の請求項1から6の発明には次の構成を加えることが好ましい。
例えば、図4または図5に示すように、前記クランプロッド5の他端部に前記の複数のガイド溝26を設け、各ガイド溝26の前記の旋回溝27の他端部に、前記の係合具または係合ボール29を受け止めるストッパー壁45を設け、そのストッパー壁45の受け止め面45aを上記の係合具または係合ボール29に嵌合させたものである。
上記の請求項7の発明は、前記クランプロッドの旋回退避時に、上記ストッパー壁の受け止め面が上記の係合具に嵌合して上記クランプロッドの旋回を阻止するので、そのクランプロッドの旋回停止精度が高い。
【0013】
請求項8の発明に示すように、上記の請求項1から5のいずれかの発明には次の構成を加えることが好ましい。
例えば、図1に示すように、前記ハウジング3内に環状のピストン15を軸心方向へ移動可能に挿入し、そのピストン15内に前記のクランプロッド5を挿入し、これらピストン15とクランプロッド5との間にラジアルベアリング24を配置したものである。
上記の請求項8の発明は、上記クランプロッドがさらに円滑に旋回するという効果を奏する。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の第1実施形態を図1から図4によって説明する。まず、図1によって旋回式クランプの全体構造を説明する。その図1は、上記クランプの立面視の部分断面図である。
【0015】
ワークパレット1にはクランプ2のハウジング3が複数のボルト(図示せず)によって固定される。そのハウジング3の筒孔4内にクランプロッド5が挿入される。そのクランプロッド5の上端部分にアーム6がナット7によって所望の旋回位置に固定され、そのアーム6の先端部分に押ボルト8が固定される。
上記のハウジング3の上端壁(第1端壁)3aに、上記クランプロッド5のロッド本体5aに設けた上摺動部分(第1摺動部分)11が摺動自在で保密状に支持される。さらに、上記のハウジング3の下端壁(第2端壁)3bの一部を構成する支持筒13には、上記ロッド本体5aから下向きに突出させた下摺動部分(第2摺動部分)12が摺動自在に支持される。上記の上摺動部分11と下摺動部分12とは、それぞれ、上記の上端壁3aと下端壁3bとに緊密に嵌合されている。
また、上記の下摺動部分12の外径寸法は、上記の上摺動部分11の外径寸法よりも小さい値に設定してある。
【0016】
上記クランプロッド5を駆動する手段は次のように構成されている。
前記の上摺動部分11と下摺動部分12との間で上記クランプロッド5にフランジ状の入力部14が設けられる。また、上記クランプロッド5に環状のピストン15が封止具16を介して上下移動自在で保密状に外嵌され、そのピストン15が上記の入力部14に上側から対面される。そして、上記のピストン15が別の封止具15aを介して前記の筒孔4内に保密状に挿入される。
【0017】
さらに、上記の入力部14と上記のピストン15との間にラジアルベアリング24が配置されると共に、そのピストン15が止め輪25によって抜け止めされている。なお、上記ラジアルベアリング24は、ここでは、多数の金属製ボールによって構成してあり、半径方向の力のみならず上下方向のスラストも受け止め可能になっている。
【0018】
上記ピストン15と前記の上端壁3aとの間にクランプ用の第1室21が設けられ、その第1室21に、圧縮コイルバネ製のクランプバネ20が装着される。また、上記のピストン15と前記の下端壁3bとの間にアンクランプ用の第2室22が設けられ、その第2室22には、アンクランプ用の圧油給排口19と絞り用の油路18とを介して圧油が給排される。
なお、上記の第2室22の周壁と上記ピストン15の外周面との間の嵌合隙間Gによって、上記の油路18から上記の第2室22への圧油の供給量を制限すると共に、同上の第2室22から上記の油路18への圧油の排出量を制限するようになっている。
【0019】
上記クランプロッド5の下摺動部分12と上記の支持筒13の内壁13aの上部とにわたって旋回機構が設けられる。その旋回機構は、上記の図1と、図2から図4に示すように、次のように構成されている。その図2は、上記の旋回機構の平面視の断面図である。また、図3は、上記の図1中の要部の拡大図であって、上記の図2中のIII-III線矢視断面図に相当する図である。図4は、上記の下摺動部分12の外周面の拡大展開図である。
【0020】
上記の下摺動部分12の外周面に3つのガイド溝26が周方向へほぼ等間隔に設けられる。上記の各ガイド溝26は、断面視で弓形の溝からなり、螺旋状の旋回溝27と直進溝28とを上向きに連ねて構成される。上記の複数の旋回溝27が相互に平行状に配置されると共に、上記の複数の直進溝28も相互に平行状に配置されている。上記の隣り合うガイド溝26・26のうちの図4中の右方の旋回溝27の下部と左方の旋回溝27の上部との間で隔壁の厚さが最小となっており、その隔壁の最小厚さMが、上記ガイド溝26の溝幅Wよりも小さい値に設定される。また、その旋回溝27の傾斜角度Aが約11度から約25度の範囲内の小さな値に設定されている。なお、例示したバネ力によるクランプにおいては、旋回ストロークを小さくするために、上記の傾斜角度Aを約11度から約20度の範囲内の値にすることが好ましい。
このように上記の螺旋状の旋回溝27の傾斜角度Aを小さくしたので、その旋回溝27のリードが大幅に短くなる。このため、上記クランプロッド5の旋回用ストロークが小さくなる。
【0021】
上記の各ガイド溝26に係合ボール29が嵌入される。図3および図4中の参照符号29aは、上記の係合ボール29の嵌合部分を示している。上記の係合ボール29の直径D(図3参照)は、前記の隣り合うガイド溝26・26の隔壁の前記の最小厚さMよりも大きい値になっている。各係合ボール29が、前記の支持筒13の内壁13aの上部に設けた3つの貫通孔31に回転自在に支持される。これら3つの係合ボール29にわたってスリーブ35が軸心回りに回転自在に外嵌される。より詳しくいえば、上記スリーブ35の内周面にV字状の溝36が形成され、そのV字状の溝36の上下の二点で係合ボール29が転動可能になっている。
上記の係合ボール29は、上記スリーブ35に設けたメネジ孔49を通して前記の貫通孔31へ挿入される。そのメネジ孔49に取りつけた蓋ボルト50の先端の突出部50aが上記の係合ボール29を受け止め可能になっている。
【0022】
また、前記の旋回溝27の下端部には、上記の係合ボール29の前記の嵌合部分29aを受け止めるストッパー壁45が設けられる。そのストッパー壁45の受け止め面45aが上記の係合ボール29に嵌合可能になっている。
さらに、上記ガイド溝26の開口縁部には、干渉防止用の切削面34が設けられている。これにより、上記の係合ボール29の面圧によって上記ガイド溝26の開口縁部が塑性変形して盛り上がったときでも、その盛り上がり部と前記の支持筒13の内壁13aとの干渉を防止できる。その結果、前記クランプロッド5が長期間にわたって円滑に回転する。
【0023】
なお、図1に示すように、上記の支持筒13の外壁13bが上下方向へ延びる位置決めピン38を介して前記ハウジング3の胴部3cに回り止めされている。これにより、上記ハウジング3に対する上記クランプロッド5の旋回位相を正確に決定できるようになっている。なお、上記の支持筒13は、止め輪からなるロック部材39によって上記ハウジング胴部3cに固定されている。
【0024】
上記の旋回式クランプ2は次のように作動する。
図1の状態では、前記アンクランプ用の第2室22へ圧油が供給されており、これにより、前記クランプロッド5は図示の旋回退避位置へ上昇している。
上記クランプ2をクランプ状態へ切換えるときには、上記の第2室22の圧油を排出して、前記クランプバネ20によって上記クランプロッド5の前記の入力部14を押し下げていく。すると、そのクランプロッド5は、前記の旋回溝27に沿って平面視で時計回りの方向へ旋回しながら下降し、引き続いて、前記の直進溝28に沿って真っすぐに下降する。これにより、そのクランプロッド5がクランプ位置(図示せず)へ切り換わる。
【0025】
図2中の矢印に示すように、上記クランプロッド5が平面視で時計回りの方向へ旋回するときには、前記の旋回溝27に嵌入された前記の各係合ボール29が平面視で反時計回りの方向へ転動し、これと同時に、上記の各係合ボール29に外嵌された前記スリーブ35が反時計回りの方向へ自由に回転する。このため、上記スリーブ35の内周面と上記の各係合ボール29との間には、ほとんどコロガリ摩擦だけが作用してスベリ摩擦がほとんど作用しなくなり、上記スリーブ35から上記の各係合ボール29に作用する抵抗が小さくなる。その結果、上記の各係合ボール29から前記の旋回溝27に作用する摩擦力が小さくなり、前記クランプロッド5が軽い力で円滑に旋回する。
なお、ここでは、上記のスリーブ35の内径寸法は、上記クランプロッド5の前記の下摺動部分12の外径寸法の約1.5倍の値に設定されている。このため、上記クランプロッド5を90度旋回させる場合には、上記スリーブ35が約60度回転することになる。
【0026】
上記クランプ2を上記クランプ状態から図1の旋回退避状態へ切換えるときには、前記アンクランプ用の第2室22へ圧油を供給する。すると、まず、前記ピストン15が、その環状断面積に作用する上向きの油圧力によって上昇し、これと同時に、前記のクランプロッド5が、前記の封止具16の内側断面積に作用する上向きの油圧力によって前記の直進溝28に沿って真っすぐに上昇していく。引き続いて、上記クランプロッド5が、前記の旋回溝27に沿って平面視で反時計回りの方向へ旋回しながら上昇して、上記クランプロッド5および前記アーム6が図1の旋回退避位置へ切り換わる。
【0027】
この場合、上述したように、上記の第2室22の圧油から上記ピストン15に作用する上向きの力が上記クランプロッド5に加わらないので、上記の旋回溝27や前記の係合ボール29に過大な力が作用しない。
なお、上記の旋回退避時には、上記クランプロッド5が平面視で反時計回りの方向へ旋回すると、前記の各係合ボール29と前記スリーブ35とが前記の図2中の矢印とは逆の方向へ回転する。
【0028】
また、上記の旋回退避時には、上記の図1および図4に示すように、前記ストッパー壁45の前記の受け止め面45aが上記の係合ボール29の前記の嵌合部分29aに嵌合して上記クランプロッド5の旋回を阻止する。このため、そのクランプロッド5の旋回停止精度が高い。また、上記ストッパー壁45を上記クランプロッド5に設けたので、そのストッパー壁45を前記ハウジング3の前記の胴部3cに設けた場合と比較すると、次の長所が得られる。即ち、そのハウジング3の前記の筒孔4は、上記ストッパー壁用の段付き部を無くしてストレートに造れる。このため、その筒孔4の機械加工が容易になり、そのうえ、前記のクランプバネ20を大形かつ強力にできる。
【0029】
上記の第1実施形態はさらに次の長所を奏する。
上記クランプロッド5に複数のガイド溝26を設けて、これらのガイド溝26にそれぞれ係合ボール29を嵌合させたので、前記の支持筒13に上記の複数の係合ボール29を介して上記クランプロッド5を周方向でほぼ均等に支持することが可能となる。このため、クランプおよびアンクランプ駆動時に上記クランプロッド5の傾きを防止できる。その結果、前記アーム6に設けた前記の押ボルト8のクランプ位置およびアンクランプ位置の位置決め精度が向上する。
【0030】
また、前記の隣り合うガイド溝26・26の隔壁の最小厚さTを、そのガイド溝26の溝幅Wよりも小さい値に設定したので、上記クランプロッド5に多くのガイド溝26を設けて同上クランプロッド5を周方向でほぼ均等に支持することと、前記の旋回溝27の傾斜角度Aを小さくすることとを両立できる。このため、上記クランプロッド5の旋回に必要なストロークを小さくして、旋回式クランプ2をコンパクトに造れる。
【0031】
前記ピストン15の両端方向の外側で前記クランプロッド5に上摺動部分(第1摺動部分)11と下摺動部分(第2摺動部分)12とを設けたので、上記ピストン15の嵌合隙間の存在にもかかわらず、軸心方向へ離れた二つの摺動部分11・12によって上記クランプロッド5が傾くのを防止できる。従って、上記クランプロッド5を上記ハウジング3によって確実かつ高精度にガイドできる。
また、前記の旋回溝27および係合ボール29からなる旋回機構を、上述したガイド用の強度を備えた前記の支持筒13と下摺動部分12との間に設けたので、その旋回機構が旋回トルクに十分に耐えることが可能となり、旋回機構の寿命が長くなる。そのうえ、上記の係合ボール29を上記の支持筒13に設けたので、その係合ボール29の設置箇所と下摺動部分12の支持箇所とを兼用できる。このため、上記ハウジング3の高さを低くして、旋回式クランプ2をコンパクトに造れる。
【0032】
さらに、上記の下摺動部分12の外径寸法を前記の上摺動部分11の外径寸法よりも小さい値に設定したので、その下摺動部分12に形成した旋回溝27のリードが短くなる。このため、前記クランプロッド5の旋回用ストロークがさらに短くなる。このため、旋回式クランプ2をさらにコンパクトに造れるうえ、前記ピストン15を駆動するための圧油の給排量も少なくなる。
【0033】
図5は、上記の第1実施形態の第1変形例を示し、前記の図4に類似する部分図である。この図5では、隣り合う旋回溝27・27の隔壁の最小厚さMが前記の図4よりも小さい値に設定され、その最小厚さMの部分で前記の隣り合う切削面34・34がオーバーラップされている。また、この図5では、上記の旋回溝27の傾斜角度Aを、上記の図4よりも小さい範囲内(約11度から約15度)の値に設定してある。
【0034】
図6は、同上の第1実施形態の比較例を示し、前記の図4に類似する図である。この場合、前記クランプロッド5の前記の下摺動部分12に4つのガイド溝26が設けられる。隣り合う一対のガイド溝26・26および対応する係合ボール29を、上記クランプロッド5の周方向だけでなく軸心方向へも変位させてある。そして、隣り合う一対の旋回溝27・27の隔壁の最小厚さMを前記の溝幅Wよりも小さい値に設定すると共に、隣り合う一対の直進溝28・28の隔壁の最小厚さNを同上の溝幅Wよりも小さい値に設定し、さらに、後者の最小厚さNを前者の最小厚さMよりも小さい値に設定してある。これにより、隣り合う一対のガイド溝26・26の隔壁の最小厚さTが、上記の溝幅Wおよび前記の係合ボール29の直径よりも小さい値に設定されている。
【0035】
上記の第1実施形態と変形例は次のように変更可能である。
前記の係合ボール29を回転自在に支持する前記の貫通孔31は、例示した支持筒13(下端壁3b)に設けることに代えて、前記のハウジング3の前記の胴部3cなどに設けることも可能である。
前記スリーブ35の内周面は、例示したV字状の溝36を備えたもの代えて、U字状の溝または円弧状の溝を備えたものであってもよく、さらには、ストレート内周面であってもよい。なお、上記ストレート内周面の場合には、前記の係合ボール29に対して上記スリーブ35が上下移動するのを阻止するため、前記の支持筒13の内壁13aと上記スリーブ35との間に止め輪などのストッパーを設けることが考えられる。
【0036】
なお、前記の螺旋状に形成した旋回溝27の傾斜角度Aは、10度から30度の範囲内であることが好ましく、11度から20度の範囲内であることがさらに好ましい。
【0037】
図7から図10は本発明の第2実施形態を示し、図11から図13は本発明の第3実施形態を示し、図14と図15は本発明の第4実施形態を示している。これらの別の実施形態においては、上記の第1実施形態の構成部材と類似する部材には原則として同一の符号を付けてある。
【0038】
図7から図10の第2実施形態において、図7は、旋回式クランプ2の立面視の部分断面図であって、前記の図1に類似する図である。図8は、上記クランプ2に設けた旋回機構の平面視の断面図であって、前記の図2に類似する図である。図9は、上記の図7中の要部の拡大図であって、上記の図8中のIX-IX線矢視断面図に相当する図である。図10は、上記クランプ2のクランプロッド5に設けた下摺動部分12の拡大展開図である。
【0039】
この第2実施形態は、前記の第1実施形態とは次の点で異なる。
前記クランプロッド5の駆動手段が複動式に構成される。即ち、前記ピストン15の上側に設けた前記の第1室21には、クランプ用の圧油給排口17を介してクランプ用の圧油が給排される。また、上記ピストン15の下側に設けた前記の第2室22にも、アンクランプ用の圧油給排口(図示せず)と油路18とを介してアンクランプ用の圧油が給排される。
上記ピストン15の外周に嵌着した前記の別の封止具15aの上下の両外側では、そのピストン15の外周面と前記の筒孔4との間に比較的に大きな嵌合隙間が形成されている。これにより、上記のクランプロッド5は、前記の上摺動部分11と下摺動部分12との上下の2箇所で前記ハウジング3に円滑かつ精度良く支持される。
【0040】
上記の下摺動部分12の外周面に4つのガイド溝26が周方向へほぼ等間隔に設けられる。前述の第1実施形態と同様に、各ガイド溝26は、螺旋状の旋回溝27と直進溝28とを上向きに連ねて構成されているが、上記の旋回溝27の下部は上下方向へ延びる溝(参照数字なし)を介して上記クランプロッド5の下面に開口している。前記の係合ボール29は上記の開口部を通して上記ガイド溝26に挿入可能になっている。
なお、前記の第1実施形態と同様に、上記の隣り合うガイド溝26・26のうちの図10中の右方の旋回溝27の下部と左方の旋回溝27の上部との間で隔壁の厚さが最小となっており、その隔壁の最小厚さMが、上記ガイド溝26の溝幅Wおよび上記の係合ボール29の直径よりも小さい値に設定されている。
【0041】
上記の各ガイド溝26に嵌入した係合ボール29が、前記の支持筒13の内壁13aの上部に設けた4つの貫通孔31に回転自在に支持される。これら4つの係合ボール29にわたってスリーブ35が軸心回りに回転自在に外嵌される。前記の旋回溝27には円弧状の凹所37が形成されており、その凹所37の上下外側の二箇所で係合ボール29が旋回溝27に転動可能になっている。
【0042】
前記アンクランプ用の第2室22の周壁の下部と前記の支持筒13の上面との間には筒状のスペーサ32が装着されている。そのスペーサ32の上面に絞り用の溝33が形成され、その絞り用の溝33によって、前記の油路18から上記の第2室22への圧油の供給量を制御するようになっている。なお、その溝33に代えて貫通孔などを利用することも可能である。
上記の支持筒13は、雄ネジ筒からなるロック部材39によって上記ハウジング胴部3cに押圧固定されている。
なお、前記の第1実施形態と同様に、前記の上摺動部分11の外径寸法よりも前記の下摺動部分12の外径寸法を小さい値に設定している。このため、前記の螺旋状の旋回溝27のリードが短くなって、前記クランプロッド5の旋回用ストロークが小さくなる。
【0043】
図11は、本発明の第3実施形態を示している。その図11は、旋回式クランプの立面視の部分断面図であって、前記の図7に類似する図である。
この図11の第3実施形態は、上記の図7の構造とは次の点だけが異なる。
前記の図7中のスリーブ35を省略してある。そして、前記の支持筒13の前記の内壁13aに支持した前記の係合ボール29が前記のスペーサ32によって抜け止めされている。
【0044】
図12は、上記の第3実施形態の第1変形例を示し、上記の図11に類似する図である。
この図12の第1変形例は、上記の図11の構造とは次の点で異なる。
前記ピストン15は前記クランプロッド5と一体に形成される。そのピストン15と前記の下端壁3bとの間に、前記の第2室22と受圧排除用シリンダ孔41とが下方へ向けて順に設けられる。そのシリンダ孔41は、アダプター筒42の内周面によって構成されており、そのシリンダ孔41に上記クランプロッド5の封入部分5bが封止具43によって保密状に挿入される。
【0045】
上記の構成により、アンクランプ時に上記クランプロッド5に作用する上向きの力は、上記の第2室22の横断面積から上記の封入部分5bの横断面積を差し引いた環状断面積に作用する油圧力だけとなるので、前記の旋回溝27や前記の係合ボール29に過大な力が作用しない。
上記の封入部分5bの直径は、上記の第2室22の直径よりも小さい値であればよく、ここでは、上記クランプロッド5の上摺動部分11の直径とほぼ同じ値に設定してある。
なお、上記の封入部分5bの直径を上記の上摺動部分11の直径よりも大きい値に設定することが好ましい。この場合、アンクランプ時に上記クランプロッド5に作用する上向きの力をさらに小さくできるので、前記の旋回溝27や前記の係合ボール29の寿命が延びる。
【0046】
前記の図11と同様に、前記ピストン15の外周面と前記の筒孔4の上半部分との間に比較的に大きな嵌合隙間が形成されている。また、前記クランプロッド5の前記の封入部分5bと前記シリンダ孔41との間にも比較的に大きな嵌合隙間が形成されている。
前記の油路18の下端面に前記の絞り用の溝33が形成されている。
また、クランプ状態とアンクランプ状態とを検出するためのロッド46が前記の下摺動部分12から下向きに突出される。そのロッド46に形成したネジ孔47に被検出具(図示せず)がネジ止めされ、その被検出具にリミットスイッチ等のセンサ(図示せず)が対面される。
【0047】
さらに、前記の支持筒13の下部にプラグ51が保密状に嵌入され、そのプラグ51内に設けた呼吸路52によって前記のシリンダ孔41の内部空間が外部へ連通される。上記の呼吸路52には、模式図に示すように、バネ式逆止弁からなるトラップ弁53が設けられる。
そのトラップ弁53は次のように作用する。前記クランプロッド5が上昇して前記シリンダ孔41の内部空間が膨張したときには、そのトラップ弁53の逆止作用によって、外部の雰囲気中の切削油等が上記のシリンダ孔41へ侵入するのを防止する。また、そのトラップ弁53は、上記クランプロッド5が下降して上記シリンダ孔41の内部空間が収縮したときには、前記の第2室22から上記のシリンダ孔41の内部空間へ侵入した圧油を外部へ円滑に排出する。
【0048】
図13は、同上の第3実施形態の第2変形例を示し、前記の図11に類似する図である。この図13は、単動バネ復帰形の旋回式クランプ2を示し、上記の図11の構造とは次の点で異なる。
【0049】
前記ピストン15は前記クランプロッド5と一体に形成されている。また、前記の支持筒13と上記ピストン15との間に形成した第2室22内にアンクランプ用の戻しバネ56が装着され、その戻しバネ56によって前記クランプロッド5が上向きに付勢される。ここでは、上記の戻しバネ56は、圧縮コイルバネによって構成されている。そして、上記バネ56の下端が前記の支持筒13に接当され、そのバネ56の上端がスラストボールベアリング57を介して前記ピストン15よって受止められる。
また、前記の複数の係合ボール29にわたって前記スリーブ35が回転自在に外嵌されている。
なお、前記トラップ弁53は、上記の支持筒13の中央部にネジ止めしたボルト58に装着されている。
【0050】
図14は、本発明の第4実施形態を示している。その図14は、旋回式クランプ2の立面視の部分断面図であって、上記の図13に類似する図である。
この図14の第4実施形態は上記の図13の構造とは次の点で異なる。
【0051】
前記の係合ボール29は、前記の支持筒13の前記の内壁13aに外嵌したスリーブ35によって抜け止めされる。そのスリーブ35は、ピン69によって上記の内壁13aに固定されている。
前記クランプロッド5と前記の戻しバネ56との間の環状隙間に、コイルバネからなる捩りバネ(弾性体)61が装着される。その捩りバネ61の上端が前記ピストン15を介して前記クランプロッド5に連結される。また、同上の捩りバネ61の下端は前記スリーブ35に連結されており、これにより、上記の捩りバネ61の下端が、前記の支持筒13を介して前記ハウジング3に連結される。
上記の捩りバネ61は、上記クランプロッド5(及び前記アーム6)を図14の旋回退避位置へ付勢するものであり、その捩りバネ61には、例えば、次の手順でプリロードを付与してある。即ち、上記クランプロッド5の上端面にメネジ孔(図示せず)を開口させ、そのメネジ孔を利用して上記クランプロッド5を平面視で時計回りの方向へ所定の角度だけ捩って、上記の捩りバネ61の付勢力を平面視で反時計回りの方向へ作用させておくのである。
【0052】
上記の旋回式クランプ2は、例えば、次の手順で組み立てられる。
予め、前記クランプロッド5と前記の支持筒13と前記の捩りバネ61と前記の戻しバネ56とを仮組みしておく。より詳しくいえば、前記の各係合ボール29を前記の各ガイド溝26の所定旋回位置(例えば、図14に示す旋回位置)に挿入し、その状態で、上記の支持筒13と前記スリーブ35とを前記のピン69によって一体にする。
【0053】
次いで、上記の支持筒13のメネジ60から前記ボルト58を取り外し、そのメネジ60内に操作ボルト(図示せず)を挿入し、その操作ボルトを上記クランプロッド5のネジ孔63に嵌合する。上記の操作ボルトを回転させて上記クランプロッド5を上記の支持筒13へ向けて引っ張り、これにより、前記の戻しバネ56(および前記の捩りバネ61)を所定量だけ圧縮する。
引き続いて、前記アーム6を上記クランプロッド5から取り外した状態で、上記のクランプロッド5及び上記の支持筒13を前記ハウジング3内に下側から挿入し、そのハウジング3の下部に前記の支持筒13を前記の位置決めピン38によって回り止めする。これにより、上記ハウジング3に対する上記のクランプロッド5の旋回位相を自動的に決定できる。その後、前記の雄ネジ製のロック部材39によって上記の支持筒13を上記ハウジング3に固定するのである。
【0054】
上記の旋回式クランプ2は次のように作動する。
図14の状態では、前記の第1室21の圧油が排出されており、前記クランプロッド5は、前記の捩りバネ61によって平面視で反時計回りの方向へ旋回されると共に、前記の戻しバネ56によって上昇している。
上記の旋回退避状態のクランプ2をクランプ状態へ切換えるときには、前記の第1室21へ圧油を供給して、前記ピストン15によって前記クランプロッド5を押し下げていく。すると、上記ピストン15が前記の戻しバネ56を圧縮していき、これと同時に、上記クランプロッド5が前記の旋回溝27に沿って平面視で時計回りの方向へ旋回しながら下降して前記の捩りバネ61のネジリ力を高める。引き続いて、上記ピストン15が上記の戻しバネ56をさらに圧縮すると共に、上記クランプロッド5が前記の直進溝28に沿って真っすぐに下降する。これにより、そのクランプロッド5がクランプ位置(図示せず)へ切り換わる。
【0055】
上記クランプ状態から図1の旋回退避状態へ切換えるときには、上記の第1室21の圧油を排出する。
すると、まず、前記の戻しバネ56の付勢力によって前記ピストン15および前記のクランプロッド5が前記の直進溝28に沿って真っすぐに上昇していく。引き続いて、上記ピストン15および上記クランプロッド5が、上記の戻しバネ56の付勢力による旋回分力と前記の捩りバネ61の付勢力との合力によって反時計回りの方向へ強力に旋回しながら上昇し、上記クランプロッド5および前記アーム6が旋回退避位置へ円滑に切り換わる。
【0056】
上記の図14の第4実施形態は次の長所を奏する。
上記クランプロッド5は、アンクランプ旋回時に、上記の戻しバネ56の付勢力による旋回分力と上記の捩りバネ(弾性体)61の付勢力との合力によって旋回退避位置へ強力に旋回する。従って、上記クランプロッド5を円滑に旋回させるにあたり、前記の旋回溝27の勾配を大きくする必要がなくなり、そのクランプロッド5の旋回用ストロークが小さい。その結果、旋回式クランプ2の背丈が小さくなり、そのうえ、クランプ駆動時の圧油の消費量も少なくなる。
また、上記クランプロッド5に上記の戻しバネ56を環状隙間をあけて外嵌し、その環状隙間に前記の捩りバネ61を装着したので、前記ハウジング3内の余剰スペースを有効に利用して、旋回式クランプ2をさらにコンパクトに造れる。
【0057】
図15は、上記の第4実施形態の変形例を示し、上記の図14に類似する図である。
この図15の変形例は、上記の図14の構造よりも高圧の圧油をクランプ2へ供給するようにしたものであって、その図14の構造とは次の点で異なる。
前記の雄ネジからなるロック部材39と前記ハウジング胴部3cの下部との間に、横向きの位置決めピン38が設けられ、そのロック部材39と前記ピストン15との間に前記の捩りバネ61が装着される。上記のロック部材39に前記の支持筒13が複数のボルト70(ここでは1本だけ示してある)によって固定されている。前記ピストン15の下面にバネ受け71が下側から接当され、そのバネ受け71の下フランジ72と上記のロック部材39との間に、前記のスラストボールベアリング57を介して前記の戻しバネ56が装着される。
クランプ状態とアンクランプ状態とを検出するためのロッド73が前記の下摺動部分12から下向きに突出され、そのロッド73に前述のネジ孔63が形成されている。そのネジ孔63には被検出具(図示せず)がネジ止めされ、その被検出具にリミットスイッチ等のセンサ(図示せず)が対面される。
【0058】
上記の第4実施形態と変形例は次のように変更可能である。
前記クランプロッド5を周方向へ付勢する弾性体は、例示したコイル状の捩りバネ61に代えて、円筒状または円柱状のバネやゴム等であってもよい。なお、その弾性体は、上記クランプロッド5の内部空間に装着することも可能である。
前記ピストン15を上記クランプロッド5と一体に形成することに代えて、そのピストン15を上記クランプロッド5とは別体に形成してもよい。
【0059】
上記の各実施形態や各変形例は、さらに次のように変更可能である。
上記ガイド溝26は、例示した螺旋状の旋回溝27を備えたものに代えて、カム状の溝を備えたものであってもよい。
隣り合うガイド溝26・26の隔壁の前記の最小厚さTは、前記の係合ボール29の直径よりも小さい値であればよい。従って、上記の最小厚さTを上記ガイド溝26の前記の溝幅Wよりも大きい値にすることも可能である。
また、上記ガイド溝26に嵌入される係合具は、例示したボール29に代えて円柱状のピン等であってもよい。
【0060】
前記の第1室21または第2室22に給排される圧力流体は、例示した圧油に代えて、他の種類の液体や空気等の気体であってもよい。
前記クランプロッド5は、クランプ作動時に平面視で時計回りの方向へ旋回させるとしたが、これに代えて、そのクランプ作動時に平面視で反時計回りの方向へ旋回させてもよい。また、上記クランプロッド5の旋回角度は、例えば90度などの所望の角度に設定できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の第1実施形態を示し、旋回式クランプの立面視の部分断面図である。
【図2】
上記クランプに設けた旋回機構の平面視の断面図である。
【図3】
上記の図1中の要部の拡大図であって、上記の図2中のIII-III線矢視断面図に相当する図である。
【図4】
上記クランプのクランプロッドに設けた下摺動部分の拡大展開図である。
【図5】
上記の第1実施形態の第1変形例を示しており、上記の図4に類似する部分図である。
【図6】
同上の第1実施形態の比較例を示しており、上記の図4に類似する図である。
【図7】
本発明の第2実施形態のクランプの立面視の部分断面図であって、前記の図1に類似する図である。
【図8】
上記の第2実施形態のクランプに設けた旋回機構の平面視の断面図であって、前記の図2に類似する図である。
【図9】
上記の図7中の要部の拡大図であって、上記の図8中のIX-IX線矢視断面図に相当する図である。
【図10】
上記の第2実施形態のクランプのクランプロッドに設けた下摺動部分の拡大展開図であって、前記の図4に類似する図である。
【図11】
本発明の第3実施形態のクランプを示し、前記の図7に類似する図である。
【図12】
上記の第3実施形態の第1変形例を示しており、上記の図11に類似する図である。
【図13】
同上の第3実施形態の第2変形例を示しており、同上の図11に類似する図である。
【図14】
本発明の第4実施形態のクランプを示し、上記の図13に類似する図である。
【図15】
上記の第4実施形態の変形例を示し、上記の図14に類似する図である。
【符号の説明】
3…ハウジング、5…クランプロッド、15…ピストン、24…ラジアルベアリング、26…ガイド溝、27…旋回溝、28…直進溝、29…係合具(係合ボール)、31…貫通孔、35…スリーブ、45…ストッパー壁、45a…受け止め面、D…係合ボール29の直径、M…隣り合う旋回溝27・27の隔壁の最小厚さ、N…隣り合う直進溝28・28の隔壁の最小厚さ、T…隣り合うガイド溝26・26の隔壁の最小厚さ、W…ガイド溝26の溝幅。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2007-07-12 
結審通知日 2007-07-18 
審決日 2007-07-31 
出願番号 特願2002-289489(P2002-289489)
審決分類 P 1 113・ 121- YA (F15B)
P 1 113・ 537- YA (F15B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柳田 利夫  
特許庁審判長 溝渕 良一
特許庁審判官 亀丸 広司
山岸 利治
登録日 2004-11-26 
登録番号 特許第3621082号(P3621082)
発明の名称 旋回式クランプ  
代理人 野田 久登  
代理人 梶 良之  
代理人 別城 信太郎  
代理人 深見 久郎  
代理人 大畑 道広  
代理人 瀬川 耕司  
代理人 荒川 伸夫  
代理人 佐々木 眞人  
代理人 梶 良之  
代理人 瀬川 耕司  
代理人 吉田 昌司  
代理人 森田 俊雄  

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