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審決分類 審判 訂正 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降) 訂正する F27D
管理番号 1197414
審判番号 訂正2009-390033  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2009-03-09 
確定日 2009-05-07 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3196261号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3196261号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 I.手続の経緯

本件特許第3196261号は、平成3年11月20日に特許出願(特願平3-304688号)され、平成13年6月8日に特許権の設定登録がされ、平成21年3月9日付けで本件訂正審判の請求がされたものである。


II.請求の要旨

本件訂正審判の請求の要旨は、特許第3196261号の明細書(以下「本件特許明細書」という。)を本件訂正審判請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものである。


III.訂正の内容

本件訂正審判に係る訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の(1)?(4)のとおりである。

(1)訂正事項1
特許請求の範囲を、次の(1-1)から次の(1-2)に訂正する。

(1-1)
「【請求項1】 略鉛直方向に挿入され、かつ炉側壁に沿って互いに並列配置される炉内ヒータであって、
鉛直方向に沿って異なる複数の部位を設定し、前記異なる複数の部位のいずれかを発熱部としたことを特徴とする炉内ヒータ。
【請求項2】 炉側壁を含む炉本体と、炉本体の底部を閉塞する炉床とで形成される熱処理空間を有し、請求項1に記載の炉内ヒータを備えたことを特徴とする熱処理炉。」

(1-2)
「【請求項1】 炉側壁を含む炉本体と、炉本体の底部を閉塞する炉床とで形成される熱処理空間を有し、該熱処理空間には、略鉛直方向に挿入され、かつ前記炉側壁に沿って互いに並列配置され、鉛直方向に沿って異なる複数の部位を設定し、前記異なる複数の部位のいずれかを発熱部とした複数の炉内ヒータを備え、前記複数の炉内ヒータの前記発熱部が前記熱処理空間内の鉛直方向に沿ったそれぞれ異なる位置に設けられていることを特徴とする、熱処理炉。」
(請求項2を独立項に改めた場合の訂正箇所に下線を付した。)

(2)訂正事項2
明細書の段落【0006】の全文を次のように訂正する。

「【課題を解決するための手段】本発明は、このような目的を達成するために、炉側壁を含む炉本体と、炉本体の底部を閉塞する炉床とで形成される熱処理空間を有し、該熱処理空間には、略鉛直方向に挿入され、かつ前記炉側壁に沿って互いに並列配置され、鉛直方向に沿って異なる複数の部位を設定し、前記異なる複数の部位のいずれかを発熱部とした複数の炉内ヒータを備え、前記複数の炉内ヒータの前記発熱部が前記熱処理空間内の鉛直方向に沿ったそれぞれ異なる位置に設けられている熱処理炉であることを特徴とするものである。」
(訂正事項1及び3による訂正に伴う実質的な訂正箇所に下線を付した。)

(3)訂正事項3
明細書の段落【0007】を削除する。

(4)訂正事項4
発明の名称を「炉内ヒータを備えた熱処理炉」と訂正する。
(訂正箇所に下線を付した。)


IV.当審の判断

1.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更等の存否について

訂正事項1は、訂正前の請求項1を削除し、訂正前の請求項2を請求項1に繰り上げ、独立形式とするとともに、訂正前の請求項1を引用して記載されていた炉内ヒータにつき、該炉内ヒータが「複数」であることを明確にし、また、該炉内ヒータにおいて発熱部が設けられる位置が、「前記複数の炉内ヒータの前記発熱部が前記熱処理空間内の鉛直方向に沿ったそれぞれ異なる位置に設けられている」という限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮および明りようでない記載の釈明を目的とするものといえる。
また、訂正事項1は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内のものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

そして、訂正事項2?4は、上記訂正事項1によって特許請求の範囲の記載が訂正されたことに伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るためのものであるから、明りようでない記載の釈明を目的とするものといえる。
また、訂正事項2?4は、本件特許明細書に記載された事項の範囲内のものであって、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。

したがって、本件訂正は、平成6年改正前の特許法第126条第1項ただし書き第1号及び第3号、第2項の規定に適合する。


2.訂正後の発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて

(1)訂正後の発明

訂正後における特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本件訂正発明」という。)は、上記訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである((1-2)参照)。

(2)刊行物とその記載事項

本件訂正審判の請求人は、本件訂正審判請求書に添付して刊行物(東海高熱工業株式会社「エレマ発熱体」カタログ 昭和60年6月)を提出した。そして、そこには、以下の事項が記載されている。

(ア)「エレマ発熱体は高純度、再結晶SiCで組成され、わが国で最初に市販された炭化珪素発熱体です。」(第2頁)
(イ)「ソフトおよびハードフェライトの仮焼、焼成。セラミックコンデンサの焼成」(第2頁)
(ウ)「炉内温度分布を均一にするため、発熱部の中央部分を低温度にした特殊な構造(SDL型)のものもあります。」(第5頁)
(エ)図4には、「エレマU型」の形状図として、二本の発熱体が接続端側端部でU型に接続されるとともに、該二本の発熱体の自由端側端部にそれぞれピン孔を備えたU字形の発熱体の形状図が示されている。
(オ)図5には、「エレマU型」の使用例として、炉側壁を含む炉本体と炉床とで形成される熱処理空間に、略鉛直方向に挿入し、かつ前記炉側壁に沿って並列配置したものが示されている。
(カ)図7には、「エレマSDL型」の形状図として、中央に低温部、該低温部の両側に発熱部、さらにこれら発熱部の外側にそれぞれ端部を備えた直線形の発熱体の形状図が示されている。

(3)判断

上記刊行物には、本件訂正発明の「前記複数の炉内ヒータの前記発熱部が前記熱処理空間内の鉛直方向に沿ったそれぞれ異なる位置に設けられていること」について記載も示唆もされておらず、しかもその点は、当業者が容易に想到することができたものとは認められない。

したがって、本件訂正発明は、上記刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、他に本件訂正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由も見あたらない。
よって、本件訂正は、平成6年改正前の特許法第126条第3項の規定に適合する。


V.むすび

以上のとおりであるから、本件訂正は、平成6年改正前の特許法第126条第1項ないし第3項の規定に適合するので、本件訂正を認める。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
炉内ヒータを備えた熱処理炉
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】炉側壁を含む炉本体と、炉本体の底部を閉塞する炉床とで形成される熱処理空間を有し、該熱処理空間には、略鉛直方向に挿入され、かつ前記炉側壁に沿って互いに並列配置され、鉛直方向に沿って異なる複数の部位を設定し、前記異なる複数の部位のいずれかを発熱部とした複数の炉内ヒータを備え、前記複数の炉内ヒータの前記発熱部が前記熱処理空間内の鉛直方向に沿ったそれぞれ異なる位置に設けられていることを特徴とする、熱処理炉。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、焼成炉などにおいて用いられる炉内ヒータ、およびその炉内ヒータを備えた熱処理炉に関する。
【0002】
【従来の技術】図5はセラミック部品の焼成に際して使用されるバッチ式焼成炉の断面構造を示しており、この焼成炉の内部にはSiC(炭化けい素)製の炉内ヒータが設置されている。すなわち、図5中の符号21は炉体、22は炉床であり、23は炉内ヒータである。
【0003】そして、これらの炉内ヒータ23は、図6で示すように、2本の平行するヒータ本体の一端同士を互いに接続することによってU字形に構成されており、通常、炉底に対して縦向きになるように、すなわちその長手方向が略鉛直方向に沿うように挿入されたうえ、炉側壁に沿って互いに並列配置されている。なお、この片端子構造とされた炉内ヒータ23は、炉体21の構造を簡素化し得るほか、メンテナンスが容易で、省エネルギーにも役立つ、等の利点を有しているので多用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前記従来の炉内ヒータ23を用いて構成された焼成炉においては、図7で示すように、炉内における温度分布が高さ方向、すなわち鉛直方向に沿って不均一となりやすく、炉内の中間高さ位置から上部にかけての範囲が高温域となりがちである。これは、ヒータ本体のほぼ全長が発熱部23aとなっているのが普通であり、その長さ方向に沿う中心位置付近が最も高温となることから、これらの炉内ヒータ23によって加熱された雰囲気ガスが炉内に発生する上昇気流によって上側へと運ばれるためである。そのため、これらの炉内ヒータ23を用いて焼成炉を構成した場合には、炉内に積み重ねて載置された被焼成物の上段と下段との間に大きな温度差が生じ、焼成むらが生じることになる結果、焼成された製品それぞれの特性にばらつきが発生することになっていた。
【0005】本発明は、かかる不都合に鑑みて創案されたものであって、炉内における温度分布状態を均一化することができる炉内ヒータの提供を目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、このような目的を達成するために、炉側壁を含む炉本体と、炉本体の底部を閉塞する炉床とで形成される熱処理空間を有し、該熱処理空間には、略鉛直方向に挿入され、かつ前記炉側壁に沿って互いに並列配置され、鉛直方向に沿って異なる複数の部位を設定し、前記異なる複数の部位のいずれかを発熱部とした複数の炉内ヒータを備え、前記複数の炉内ヒータの前記発熱部が前記熱処理空間内の鉛直方向に沿ったそれぞれ異なる位置に設けられている熱処理炉であることを特徴とするものである。
【0007】
【0008】
【作用】上記構成によれば、鉛直方向に沿って異なる部位に発熱部が設けられた炉内ヒータのそれぞれを適宜選択したうえで炉内に配置することによって炉内の鉛直方向における発熱部の位置を調整することが可能となるので、炉内における温度分布状態を均一となるように制御することができる。
【0009】炉側壁を含む炉体と、炉本体の底部を閉塞する炉床とで形成される熱処理空間を有する熱処理炉において、請求項1に係る炉内ヒータを備えることで炉内の鉛直方向における発熱部の位置を調整可能にし、よって、炉内における温度分布状態を均一となるよう制御できる。【0010】
【実施例】以下、本発明にかかる実施例を図面に基づいて説明する。
【0011】図1ないし図3は本発明の一実施例にかかり、図1は炉内ヒータを備えた焼成炉の断面構造を示す縦断面図、図2は炉内ヒータの形状及び構造を示す正面図、図3は炉内ヒータによる炉内における温度分布状態を示す説明図である。
【0012】図1における符号1は炉本体、2は炉床、3,4はSiCを用いて形成された炉内ヒータであり、炉内ヒータ3,4のそれぞれは互いに一組とされたたうえで炉底に対して縦向きになるように、すなわちその長手方向が略鉛直方向に沿うように挿入されたうえ、炉側壁に沿って並列状に配置されている。なお、図中の符号5は温度検出用の熱電対を示しており、熱電対5のそれぞれは炉内の上部と下部とに配置されている。
【0013】そして、炉内ヒータ3,4のそれぞれは、図2で示すように、2本の平行するヒータ本体の一端同士を互いに接続することによってU字形として構成されており、各ヒータ本体における発熱部3a,4aはその長さ方向である鉛直方向に沿って互いに異なる部位ごとに設けられている。すなわち、図2における一方の炉内ヒータ3はその発熱部3aが上半部に設けられていることから上部発熱型となり、他方の炉内ヒータ4はその発熱部4aが下半部に設けられていることから下部発熱型となっている。
【0014】そこで、この焼成炉においては、図1で示すように、上部発熱型となった炉内ヒータ3と、下部発熱型となった炉内ヒータ4とが交互に並列配置されていることになり、上部発熱型の炉内ヒータ3によって炉内における上部範囲の温度が、また、下部発熱型の炉内ヒータ4によって炉内における下部範囲の温度がそれぞれ制御されることになる。したがって、熱電対5によって炉内の上部及び下部範囲における温度をそれぞれ検出しながら、その検出結果に応じて上部発熱型の炉内ヒータ3と下部発熱型の炉内ヒータ4とによる発熱状態を各別に制御すれば、炉内における温度分布状態が図3で示すような均一状態となる。すなわち、上記構成によれば、上部発熱型の炉内ヒータ3による温度分布と、下部発熱型の炉内ヒータ4による温度分布とを重ね合わせた形の温度分布状態が得られることになる。
【0015】ところで、上記の実施例では、炉内ヒータ3,4を構成するヒータ本体それぞれを長さ方向に沿う上下2つの部位に分けたうえ、その上下いずれか一方に発熱部3a,4aを設けているが、これに限定されるものではなく、ヒータ本体のそれぞれをより多数の部位に分けたうえで発熱部を設けるようにしてもよい。例えば、図4で示す他の実施例においては、炉内ヒータ3,4,5を構成するヒータ本体それぞれを上中下3つの部位に分けたうえ、上中下いずれかの互いに異なる部位ごとに発熱部3a,4a,5aを設けている。そこで、このようにした際には、炉内ヒータ3,4,5のそれぞれが各々上部発熱型、中部発熱型、下部発熱型として機能することになり、これらの炉内ヒータ3,4,5を備えた焼成炉では炉内の上部、中部、下部範囲における温度分布状態を各別に制御しうることになる。
【0016】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、略鉛直方向に挿入され、かつ炉側壁に沿って互いに並列配置される炉内ヒータにおいて、鉛直方向に沿って異なる複数の部位を設定し、前記異なる複数の部位のいずれかを発熱部としたので、炉内ヒータのそれぞれを適宜選択したうえで配置することによって炉内の鉛直方向における発熱部の位置を調整することが可能となり、炉内における温度分布状態を均一となるように制御することができる。その結果、炉内に積み重ねて載置された被焼成物間に大きな温度差が生じるのを抑制し、焼成むらのない均一な焼成を実現できるという効果が得られることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例にかかる炉内ヒータを備えた焼成炉の断面構造を示す縦断面図である。
【図2】炉内ヒータの形状及び構造を示す正面図である。
【図3】炉内における温度分布状態を示す説明図である。
【図4】本発明の他の実施例に係る炉内ヒータの形状及び構造を示す正面図である。
【図5】従来例にかかる炉内ヒータを備えた焼成炉の断面構造を示す縦断面図である。
【図6】炉内ヒータの形状及び構造を示す正面図である。
【図7】炉内における温度分布状態を示す説明図である。
【符号の説明】
3,4 ヒータ
3a,4a 発熱部
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2009-04-21 
出願番号 特願平3-304688
審決分類 P 1 41・ 832- Y (F27D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 長者 義久  
特許庁審判長 吉水 純子
特許庁審判官 守安 太郎
大橋 賢一
登録日 2001-06-08 
登録番号 特許第3196261号(P3196261)
発明の名称 炉内ヒータを備えた熱処理炉  
代理人 岩坪 哲  
代理人 速見 禎祥  
代理人 速見 禎祥  
代理人 岩坪 哲  

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