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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01Q
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01Q
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H01Q
管理番号 1197425
審判番号 不服2006-24584  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-10-31 
確定日 2009-05-15 
事件の表示 特願2002-123375「導波管スロットアレーアンテナ」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月 7日出願公開、特開2003-318641〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成14年4月25日の出願であって、平成18年9月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月31日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで審判請求時の手続補正がなされたものである。


第2.補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年10月31日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本願発明と補正後の発明
上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は補正前の平成18年6月6日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、

「板状導電性部材の一面に溝状の給電導波路およびこの給電導波路から給電される溝状の複数の放射用導波路が平行に設けられたベース体に、各放射用導波路に対応しその長手方向に沿って放射用スロットの列が設けられたスロット板を密着させた導波管スロットアレーアンテナであって、前記スロット板が銅箔プリント薄型誘電体シートの銅箔に放射用スロット列が設けられたものであり、このスロット板が導電性粘着シートで前記ベース体に貼着されたものであることを特徴とする導波管スロットアレーアンテナ。」
という発明(以下、「本願発明」という。)を、

「板状導電性部材の一面に溝状の給電導波路およびこの給電導波路から給電される溝状の複数の放射用導波路が平行に設けられたベース体に、各放射用導波路に対応しその長手方向に沿って放射用スロットの列が設けられたスロット板を密着させた導波管スロットアレーアンテナであって、前記スロット板が銅箔プリント薄型誘電体シートの銅箔に放射用スロット列が設けられたものであり、このスロット板が導電性粘着シートで前記ベース体に加圧、加熱をせずに貼着されたものであることを特徴とする導波管スロットアレーアンテナ。」
という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。


2.新規事項の有無、補正の目的要件について
上記補正後の発明にかかる「加圧、加熱をせずに貼着された」という構成は願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載されていない。
一方、「加熱」をしない「導電性粘着シート」はいわゆる「常温硬化型」の「導電性粘着シート」として周知であるものの、当該常温硬化型導電性粘着シートでも貼着時の押圧(即ち、加圧)ないしは十分な接着強度を得るまでの自重による固定手段を含むなんらかの固定手段(即ち、加圧)を行うものである。
したがって、少なくとも補正後の発明にかかる「加圧」をしない構成は周知な構成ではなく、また自明な構成でもない。また「加熱」をしない構成も、この構成自体は周知ではあるものの、加熱をするか否かは所望により選択すべき事項であり、必然的なもしくは自明な構成ではない。
以上のとおりであるから、この補正は出願当初の明細書より一義的に導き出されるものではなく、また前記補正後の構成が当初明細書等の記載から自明な構成であるとも認められない。
したがって、本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものではないから、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項(新規事項)の規定に適合していない。


3.独立特許要件について
仮に、本件補正が、新規事項を含まず、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとしても、上記補正後の発明は以下の理由により特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

(1)補正後の発明
上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で「補正後の発明」として認定したとおりである。

(2)引用発明及び周知技術
A.原審の拒絶理由に引用された特開平3-65805号公報(以下、「引用例」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。
イ.「導波路となる平行な複数本の溝を設けた導体よりなる底部と、複数個のスロットを設けた導体よりなる蓋とを組立ててなる放射部、および、分配導波路となる溝を設けた導体よりなる底部と、導体よりなる蓋とを組立ててなる給電部から基本的に構成され、前記放射部の蓋は金属薄板、もしくは金属薄板と有機基材との積層体に化学的エッチング法によりスロットを形成したものであることを特徴とする導波管アンテナ。」(2頁左下欄、特許請求の範囲第1項)

ロ.「第1図は、本発明による導波管アンテナの放射部の一実施例を説明するための図である。放射部は、導波路となる平行な複数本の溝(4)を設けた導体ブロック(3)よりなる底部と、プリント回路用積層板又はフレキシブルプリント回路用基板、あるいは金属薄板又は箔に、放射波の出口となる複数個のスロット(1)を設けた蓋(2)とを機械的、電気的に接続して組立てられている。
ここで用いられる導体ブロック(3)の材質は、金属板を板金加工したもの、あるいは射出成型、シートの熱成型等の方法で溝を形成させたプラスチック成型部材の表面にメッキ等の導電処理したものでもよい。」(2頁右上欄13行目?左下欄6行目)

ハ.「次に、本発明における導波管アンテナの給電部(13)は、第2図(b)に示すように導体ブロック(8)に導波路となる溝(9)を設けた底部と、導体よりなる蓋(10)とを組立てて構成され、第2図(c)に示すように放射部(15)と接続してアンテナを構成する。溝(9)の形状は、一例として、Y分岐の形状のものを第2図(a)のように7個組み合わせて、8分配の分配器を構成したものを挙げることが出来る。」(3頁右上欄15行目?左下欄4行目)

ニ.「〔実施例〕
厚さ70μmの電解銅箔で、第3図(a)に示したように16本の溝(16)を有する底部(17)を作成し、また、比誘導率2.9(12GHz)、誘電正接2.0×10-3(12GHz)、厚み0.8mmの耐熱性ポリオレフィンと厚み35μmの圧延無酸素銅箔とを積層したプリント回路用積層板を用いて蓋(18)を作り、蓋(18)には写真感光法を用いて、16本分の溝(16)の上部に相当する位置に、溝(16)の長さ方向に30個、横方向に16個のスロット(19)のアレイを化学エッチング法により形成させた。底部(17)と蓋(18)とは体積固有抵抗5.0X10-4(Ω、cm)の導電性接着剤を用いて接着し、アンテナの放射部を構成した。」(3頁左下欄16行目?右下欄9行目)

上記引用例の記載及び関連する図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、
上記「プリント回路用積層板」は「厚み0.8mmの耐熱性ポリオレフィン」からなるいわゆる「薄型誘電体シート」に「圧延無酸素銅箔」を積層したものであり、
また上記「導波管アンテナ」は導波管にスロットをアレイ化して形成したものであるから、当該アンテナはいわゆる「導波管スロットアレーアンテナ」である。
したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。

(引用発明)
「板状導電性部材の一面に溝状の給電導波路が設けられた給電部底部およびこの給電導波路から給電される溝状の複数の放射用導波路が平行に設けられた放射部底部に、それぞれ給電部の蓋および各放射用導波路に対応しその長手方向に沿って放射用スロットの列が設けられた放射部の蓋を密着させた導波管スロットアレーアンテナであって、前記放射部の蓋が銅箔プリント薄型誘電体シートの銅箔に放射用スロット列が設けられたものであり、この放射部の蓋が導電性接着剤で前記放射部底部に接着されたものである導波管スロットアレーアンテナ。」


B.例えば特開2001-168638号公報(以下、「周知例1」という。)又は特開平3-76305号公報(以下、「周知例2」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。

(周知例1)
イ.「【0012】先ず、図1(a)を参照しながら、平面アンテナ装置の主要構成部品となる導波管アンテナの一構成例を説明すると、符号1は、導波管アンテナであって、この導波管アンテナ1は、給電部11とアンテナ部12とを一体に有する底部13に、給電部11とアンテナ部12を閉蓋する蓋14が、止めねじ、ロウ付、溶接等の固着手段によって固定されることにより製造されている。より詳しくは、前記底部13は、比較的厚肉の金属(導体)で製造され、給電部11には分配導波路となる溝15が、アンテナ部12には導波管路となる複数の溝16が設けられている。前記蓋14のアンテナ部12を閉蓋する部分には複数のスロット17が設けられている。そして、この蓋14は金属板(導体)で構成されており、底部13の上に止めねじ、ロウ付、溶接等の固着手段により取付けられてなる構成になっている。なお、導波管アンテナには種々の形態のものがあるが、何れも分配導波路や導波管路を備えている。」(3頁3欄?4欄、段落12)

(周知例2)
イ.「また第2図は、中央に仕切り板(4)を残した2連仕切りの導波管(5)を構成する場合のプラスチック加工溝の例である。この場合は、導波管(5)の根元は1本の出力導波管(6)となるために、図に示されているように徐々に導波管の幅をかえたマツチング部(7)を形成することが好ましい。
第3図および第4図はスロット面の説明図であり、電波を受信するスロット(8)は銅箔(9)もしくは銅張積層板(10)の銅箔(9′)を化学エッチングすることにより形成される。」(3頁左上欄10?20行目)
ロ.「第1図および第2図で示された溝付きのプラスチック成形体(1)と、第3図および第4図で示されたスロットを形成した銅箔(9)や銅張積層板(10)は、Raが規定された面をプラスチック成形体(1)の溝に対向するように貼合わせられる。この場合、貼り合せはネジ止めでもよいが、導電性接着剤を用いて行なうのが最も望ましく、銅箔面とプラスチック成形体の導電面の電気的接触を確実にとることができる。」(3頁左下欄5?13行目)

例えば上記周知例1、2に開示されているように、
「給電部とアンテナ部とを一体に有する底部と、給電部とアンテナ部を一体に閉蓋する蓋からなり、両者を適当な固着手段により固着した導波管スロットアレーアンテナ」は周知である。


C.例えば特開平4-349700号公報(以下、「周知例3」という。)又は特開昭62-227985号公報(以下、「周知例4」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。

(周知例3)
イ.「【0021】また、導電性接着剤とは、例えば銀粉などの金属粉を導電性フィラーとしたエポキシ樹脂をベースとし、溶剤でペースト化したものであり、電気抵抗率は10-2?10-3Ω・m程度である。この導電性接着剤は、硬化品が導電性を示しかつ被着物に接着する性質を有するものであり、硬化方式は常温硬化型,加熱硬化型などがある。
【0022】そして、この導電性接着剤を使用する場合には、板材1の境目4に塗布した後に、シールド用テープ6を貼り付けて乾燥させて使用する。或は、予め一定の粘度に調整した導電性接着剤を、シールド用テープ6の導電層8の表面に塗布して粘着力のある粘着層を形成し、この粘着層によって板材1の接続を行なってもよい。」(3頁4欄、段落21?22)

ロ.「【0026】また、両板材10,13の接続には、シールド用テープ15が使用されるが、このシールド用テープ15の芯材16は、銅等の導電性のある金属を素材として薄肉のテープに形成されたものであり、その芯材16の両側の面には、適度な粘性を有する導電性接着剤からなる粘着層17が形成されている。
【0027】そして、この段部11の内側に他の板材13の端部を配置し、段部11と他の板材13との間隙18に配置したシールド用テープ15を用いて、両板材10,13を接続している。つまり、このシールド用テープ15を使用して、板材10,13の接続を行なう場合には、まず、粘着層17の表面に貼り付けられた図示しないシールを剥し、このシールド用テープ15を段部11の内側面11aに沿って貼り付け、更に貼り付けたシールド用テープ15を挟むようにして、もう一方の板材13を重ね合わせる。
【0028】これによって、両板材10,13の接続が行われるとともに、両板材10,13の導電層12,14が接続されて電磁波のシールドが完成する。(・・・以下略・・・)」(3頁4欄?4頁5欄、段落26?28)

(周知例4)
イ.「可撓性のある金属箔シートの両面に導電性接着剤層を形成したことを特徴とする導電性両面粘着テープ。」(1頁左下欄、特許請求の範囲第1項)
ロ.「本発明は導電性両面粘着テープ、さらに詳細には導電性を保持したまま被接着部材間を相互に接着可能な導電性両面粘着テープに関する。」(1頁左下欄13?15行目)

例えば上記周知例3、4に開示されているように、
「導電性を保持したままの部材間の固着に適度な粘性を有する導電性粘着層を形成した導電性シートを用いる」ことは周知である。


(3)対比・判断
補正後の発明と引用発明を対比すると、
引用発明の「給電部底部」と「放射部底部」を一体化したものが補正後の発明の「ベース体」であり、引用発明の「給電部の蓋」と「放射部の蓋」を一体化したものが補正後の発明の「スロット板」であるから、引用発明の「給電部底部」と「放射部底部」及び「給電部の蓋」と「放射部の蓋」はそれぞれ補正後の発明の「給電部のベース体」と「放射部のベース体」及び「給電部のスロット板」と「放射部のスロット板」に対応する。
したがって、引用発明の「板状導電性部材の一面に溝状の給電導波路が設けられた給電部底部およびこの給電導波路から給電される溝状の複数の放射用導波路が平行に設けられた放射部底部に、それぞれ給電部の蓋および各放射用導波路に対応しその長手方向に沿って放射用スロットの列が設けられた放射部の蓋を密着させた導波管スロットアレーアンテナ」と、
補正後の発明の「板状導電性部材の一面に溝状の給電導波路およびこの給電導波路から給電される溝状の複数の放射用導波路が平行に設けられたベース体に、各放射用導波路に対応しその長手方向に沿って放射用スロットの列が設けられたスロット板を密着させた導波管スロットアレーアンテナ」は、
いずれも「板状導電性部材の一面に溝状の給電導波路が設けられた給電部のベース体およびこの給電導波路から給電される溝状の複数の放射用導波路が平行に設けられた放射部のベース体に、給電部のスロット板および各放射用導波路に対応しその長手方向に沿って放射用スロットの列が設けられた放射部のスロット板を密着させた導波管スロットアレーアンテナ」である点で一致している。

また、引用発明の「前記放射部の蓋が銅箔プリント薄型誘電体シートの銅箔に放射用スロット列が設けられたものであり、この放射部の蓋が導電性接着剤で前記放射部底部に接着されたものである」という構成と、
補正後の発明の「前記スロット板が銅箔プリント薄型誘電体シートの銅箔に放射用スロット列が設けられたものであり、このスロット板が導電性粘着シートで前記ベース体に加圧、加熱をせずに貼着されたものである」という構成は、
いずれも「前記放射部のスロット板が銅箔プリント薄型誘電体シートの銅箔に放射用スロット列が設けられたものであり、この放射部のスロット板が導電性固着部材で前記放射部のベース体に固着されたものである」という構成の点で一致している。
したがって、補正後の発明と引用発明は、以下の点で一致し、また、相違している。

(一致点)
「板状導電性部材の一面に溝状の給電導波路が設けられた給電部のベース体およびこの給電導波路から給電される溝状の複数の放射用導波路が平行に設けられた放射部のベース体に、給電部のスロット板および各放射用導波路に対応しその長手方向に沿って放射用スロットの列が設けられた放射部のスロット板を密着させた導波管スロットアレーアンテナであって、前記放射部のスロット板が銅箔プリント薄型誘電体シートの銅箔に放射用スロット列が設けられたものであり、この放射部のスロット板が導電性固着部材で前記放射部のベース体に固着されたものである導波管スロットアレーアンテナ。」

(相違点1)
「板状導電性部材の一面に溝状の給電導波路が設けられた給電部のベース体およびこの給電導波路から給電される溝状の複数の放射用導波路が平行に設けられた放射部のベース体に、給電部のスロット板および各放射用導波路に対応しその長手方向に沿って放射用スロットの列が設けられた放射部のスロット板を密着させた導波管スロットアレーアンテナ」に関し、
補正後の発明は「板状導電性部材の一面に溝状の給電導波路およびこの給電導波路から給電される溝状の複数の放射用導波路が平行に設けられたベース体に、各放射用導波路に対応しその長手方向に沿って放射用スロットの列が設けられたスロット板を密着させた導波管スロットアレーアンテナ」であるのに対し、
引用発明は「板状導電性部材の一面に溝状の給電導波路が設けられた給電部底部およびこの給電導波路から給電される溝状の複数の放射用導波路が平行に設けられた放射部底部に、それぞれ給電部の蓋および各放射用導波路に対応しその長手方向に沿って放射用スロットの列が設けられた放射部の蓋を密着させた導波管スロットアレーアンテナ」である点。

(相違点2)
「前記放射部のスロット板が銅箔プリント薄型誘電体シートの銅箔に放射用スロット列が設けられたものであり、この放射部のスロット板が導電性固着部材で前記放射部のベース体に固着されたものである」という構成に関し、
補正後の発明は「前記スロット板が銅箔プリント薄型誘電体シートの銅箔に放射用スロット列が設けられたものであり、このスロット板が導電性粘着シートで前記ベース体に加圧、加熱をせずに貼着されたものである」という構成であるのに対し、
引用発明は「前記放射部の蓋が銅箔プリント薄型誘電体シートの銅箔に放射用スロット列が設けられたものであり、この放射部の蓋が導電性接着剤で前記放射部底部に接着されたものである」という構成である点

そこで、まず、上記相違点1について検討するに、
例えば上記周知例1、2に開示されているように「給電部とアンテナ部とを一体に有する底部と、給電部とアンテナ部を一体に閉蓋する蓋からなり、両者を適当な固着手段により固着した導波管スロットアレーアンテナ」は周知であり、当該周知技術を引用発明に適用する上での阻害要因は何ら見あたらないから、
当該周知技術に基づいて、引用発明の「板状導電性部材の一面に溝状の給電導波路が設けられた給電部底部およびこの給電導波路から給電される溝状の複数の放射用導波路が平行に設けられた放射部底部に、それぞれ給電部の蓋および各放射用導波路に対応しその長手方向に沿って放射用スロットの列が設けられた放射部の蓋を密着させた導波管スロットアレーアンテナ」を、 補正後の発明のような「板状導電性部材の一面に溝状の給電導波路およびこの給電導波路から給電される溝状の複数の放射用導波路が平行に設けられたベース体に、各放射用導波路に対応しその長手方向に沿って放射用スロットの列が設けられたスロット板を密着させた導波管スロットアレーアンテナ」とする程度のことは当業者であれば適宜なし得ることである。

ついで、上記相違点2について検討するに、
上記相違点1で検討したように、導波管スロットアレーアンテナを構成する「給電部」と「アンテナ部」とを一体化することは当業者であれば適宜なし得ることであり、当該一体化に伴い引用発明の「放射部のスロット板」、「放射部のベース体」が補正後の発明のような「スロット板」、「ベース体」となること及び給電部を含めた全体が固着の対象となることは上記周知例1、2の内容から自明である。
一方、例えば上記周知例3、4に開示されているように「導電性を保持したままの部材間の固着に適度な粘性を有する導電性粘着層を形成した導電性シートを用いる」ことは周知であり、当該周知技術を引用発明に適用する上での阻害要因もまた何ら見あたらず、
また「加圧、加熱をせずに」という構成は「粘着(即ち、貼着)」時の通常の接着方法であるから、
当該周知技術ないしは前記自明な事項及び通常の接着方法に基づいて、引用発明の「前記放射部の蓋が銅箔プリント薄型誘電体シートの銅箔に放射用スロット列が設けられたものであり、この放射部の蓋が導電性接着剤で前記放射部底部に接着されたものである」という構成を、
補正後の発明のような「前記スロット板が銅箔プリント薄型誘電体シートの銅箔に放射用スロット列が設けられたものであり、このスロット板が導電性粘着シートで前記ベース体に加圧、加熱をせずに貼着されたものである」という構成とする程度のことも当業者であれば適宜なし得ることである。

以上のとおりであるから、補正後の発明は、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合していない。

4.結語
以上のとおりであるから、本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものではなく、また仮に、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものであるとしても、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について
1.本願発明
本件補正(審判請求時の手続補正)は上記のとおり却下されたので、本願発明は、上記「第2.補正却下の決定」の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。

2.引用発明
引用発明は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項中の「(2)引用発明及び周知技術」の項で認定したとおりである。

3.対比・判断
そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明は上記補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「3.独立特許要件について」の項で検討したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、上記補正後の発明から当該補正に係る限定を省いた本願発明も、同様の理由により、容易に発明できたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-03-02 
結審通知日 2009-03-10 
審決日 2009-03-26 
出願番号 特願2002-123375(P2002-123375)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01Q)
P 1 8・ 561- Z (H01Q)
P 1 8・ 121- Z (H01Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 圭一郎西脇 博志佐藤 当秀  
特許庁審判長 石井 研一
特許庁審判官 萩原 義則
松元 伸次
発明の名称 導波管スロットアレーアンテナ  
代理人 八幡 義博  
代理人 八幡 義博  
代理人 八幡 義博  

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