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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 B60R 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 B60R |
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管理番号 | 1197468 |
審判番号 | 不服2006-24797 |
総通号数 | 115 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-07-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-11-02 |
確定日 | 2009-05-13 |
事件の表示 | 特願2002-235046号「車両の乗員を拘束する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年5月14日出願公開、特開2003-137062号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成14年8月12日(パリ条約による優先権主張:2001年8月11日、DE)の出願であって、平成18年8月1日付けで拒絶査定がなされ、この査定に対して、同年11月2日に本件審判請求がなされたものである。 第2 特許法第36条第4項の規定に違反する記載不備について 1 特許請求の範囲の請求項1について 平成18年7月10日付けの手続補正に係る特許請求の範囲の請求項1には、次のとおり記載されている。 「障害物に対する衝突のときに、拘束システムによって、車両の乗員の運動エネルギーを散逸することによって前記車両の乗員を拘束する方法であって、 まず事故の可能性が感知され、 次に、前記車両が前記障害物に最初に接触した時点から前記車両が最終の停止に到るまでの前記車両の乗員を制動するために利用可能な車両の乗員の移動距離(制動距離という)全体にわたって一定の加速度が前記車両の乗員に作用するように、前記車両と前記障害物との間の最初の接触によって前記車両に加えられる前記衝突の力の方向に乗員に作用させるべき力が、一定の値に設定され、 そして、拘束システムが、前記一定の値に設定された力を、遅くとも前記車両と前記障害物との間の前記最初の接触のときに、前記車両の乗員に加え、さらに、前記制動距離全体にわたって、該一定の値に設定された力を加え続け、 これによって、前記運動エネルギーの散逸が制動距離全体にわたってほぼ均一に行われるようにしたことを特徴とする方法。」 2 実施可能か否かの判断(いわゆる「実施可能要件」について) 上記請求項1では、「制動距離」を、「車両が前記障害物に最初に接触した時点から前記車両が最終の停止に到るまでの前記車両の乗員を制動するために利用可能な車両の乗員の移動距離(制動距離という)」と定義している。 同請求項1では、該「乗員の移動距離」を受け、上記定義以降に、「移動距離(制動距離という)全体にわたって一定の加速度が前記車両の乗員に作用する」、「制動距離全体にわたって、一定の値に設定された力を加え続け、」、「運動エネルギーの散逸が制動距離全体にわたってほぼ均一に行われる」と記載されている。 また、【発明の詳細な説明】には、【発明の実施の形態】が【0018】?【0024】に、具体例が【0025】、【0026】に記載されている。 上記「制動距離」の定義に沿って、そのまま解釈した場合、上記「乗員の移動距離全体にわたって」は、強い乗員の運動エネルギーの為に、拘束システム(モータ、シートベルト・プリテンショナー、エアバッグ等)の拘束力を超えてインストルメントパネル(フロントパネル)近傍まで移動する乗員の移動距離を含むものと解釈するのが通常である。 ところが、上記「乗員の移動距離全体にわたって」、上記請求項1の「一定の加速度が前記車両の乗員に作用」させ、「一定の値に設定された力を加え続け、」、「運動エネルギーの散逸が・・・ほぼ均一に行われるように」する為の具体例に関する記載は、【発明の実施の形態】及び具体例中、単にモータ、シートベルト・プリテンショナー、エアバッグの用語があるだけで、その仕様,用い方等に関する記載は全くなく、単に希望的な記載だけであるから、本願明細書の【発明の詳細な説明】は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。 また、請求人の提示した周知技術1(米国特許第3918545号明細書)及び周知技術2(特開平6-286581号公報)も、上記「乗員の移動距離全体にわたって」、「一定の加速度が前記車両の乗員に作用」させ、「一定の値に設定された力を加え続け、」、「運動エネルギーの散逸が・・・ほぼ均一に行われるように」する為の具体的技術を示唆するものではない。 3 したがって、この出願は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項に規定する要件(いわゆる「実施可能要件」)を満たしていないので、拒絶されるべきものである。 第3 特許法第36条第6項第2号の規定に違反する記載不備について 平成18年7月10日付けの手続補正に係る特許請求の範囲の請求項1の「車両が障害物に最初に接触した時点から前記車両が最終の停止に到るまでの前記車両の乗員を制動するために利用可能な車両の乗員の移動距離(制動距離という)全体にわたって」との記載は、前記「第2」の「2 実施可能要件について」のところで述べたように、「制動距離」を、 請求項1の記載に基づいて「車両が障害物に最初に接触した時点から前記車両が最終の停止に到るまでの前記車両の乗員を制動するために利用可能な車両の乗員の移動距離(制動距離という)」と定義したものと解釈する場合と、 審判請求書の請求理由補充書での主張に基づいて「車両が障害物に最初に接触した時点から前記車両が最終の停止に到るまでの前記車両の乗員を制動するために利用可能な車両の乗員の移動距離(制動距離という)」を「変形ゾーン」として解釈する場合とが存在し、 さらに、一般的な「制動距離」の概念として「制動を掛けてから、車両が最終の停止に到るまでの距離」も通常の解釈として存在すること、 を考慮すると、前記した「車両が障害物に最初に接触した時点から前記車両が最終の停止に到るまでの前記車両の乗員を制動するために利用可能な車両の乗員の移動距離(制動距離という)全体にわたって」の記載では、発明を特定することができないといわざるを得ない。 したがって、この出願は、特許請求の範囲の記載が明確ではないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件(いわゆる「明確性要件」)を満たしていないので、拒絶されるべきものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願は、前記「第2」及び「第3」の理由から拒絶されるべきものである。 |
審理終結日 | 2008-12-04 |
結審通知日 | 2008-12-09 |
審決日 | 2008-12-24 |
出願番号 | 特願2002-235046(P2002-235046) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
Z
(B60R)
P 1 8・ 536- Z (B60R) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 西本 浩司 |
特許庁審判長 |
藤井 俊明 |
特許庁審判官 |
中川 真一 渡邉 洋 |
発明の名称 | 車両の乗員を拘束する方法 |
代理人 | 石戸 久子 |
代理人 | 山口 栄一 |