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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09B |
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管理番号 | 1197540 |
審判番号 | 不服2006-5949 |
総通号数 | 115 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-07-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-03-30 |
確定日 | 2009-05-14 |
事件の表示 | 特願2001-282128「画像表示装置および入出力装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 3月28日出願公開、特開2003- 91233〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成13年9月17日の出願であって、平成16年8月13日付けの拒絶理由通知に対して、同年10月18日付けで意見書と共に手続補正書が提出され、更に、平成17年3月7日付けの(最後の)拒絶理由通知に対して、同年5月16日付けで意見書と共に手続補正書が提出されたが、平成18年2月20日付けで、平成17年5月16日付けの手続補正について補正の却下の決定がなされると共に、拒絶査定がなされたものである。 この拒絶査定に対して、平成18年3月30日付けで拒絶査定不服審判が請求され、同年5月1日付けで明細書についての手続補正がなされたものであり、その後、当審において、平成20年11月28日付けで、平成18年5月1日付け(審判請求時)の手続補正について、補正の却下の決定を行うと共に拒絶理由を通知したところ、平成21年1月30日付けで意見書及び手続き補正書が提出されたものである。 2.本願発明 したがって、本願の請求項1に係る発明は、平成21年1月30日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。 「画像を構成する複数の画素の1つに対応し上下動作自在な出力手段を縦横それぞれ等間隔で面状に複数配列し、これら出力手段を表示制御手段が上下動作制御して前記面状の複数配列に凹凸を生じさせることで、画像を触覚で表示する画像表示装置であって、 複数の前記出力手段は、それぞれ、 使用者と接触する接触手段と、 前記接触手段に振動を与えて、予め設定した色を振動で示す励振手段と、 前記接触手段の温度を変化させて、予め温度に応じて設定した色を示す温冷手段と、 前記使用者の操作により前記接触手段が押下されたことを検出して、記憶手段に記憶させる検出手段とを備え、 前記表示制御手段は、前記記憶手段が記憶する各検出手段の検出結果それぞれに基づいて、各検出結果に対応する前記出力手段をそれぞれ上下動作制御して、前記使用者の操作によって入力された画像の触覚表示を行わせるとともに、各出力手段の励振手段および温冷手段を動作制御して、振動と温度の組み合わせによって画像の色彩を前記使用者に伝達することを特徴とする画像表示装置。」 3.引用文献に記載された事項及び発明 (1)当審からの拒絶理由において引用した、特開平8-30189号公報(以下、「引用文献」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。 ア.【特許請求の範囲】 「【請求項1】電子計算機からの画像データを指先で読み取り可能な情報に変換する制御部と、格子上に配置されたピンを上下に運動および振動させる駆動部を備えることを特徴とする入出力装置。 【請求項2】連続変化量をピンの振動に変換し、指先で読み取ることができることを特徴とする請求項1記載の入出力装置。 【請求項3】電子計算機からのRGB出力値をそれぞれピンの高低,振動の振幅,振動の周期に変換する機能を有する請求項1記載の入出力装置。 【請求項4】指の圧力を検出し指の置かれた座標と圧力を用いて図形を入力する機能を有する請求項1記載の入出力装置。 【請求項5】?【請求項10】:記載省略」 イ.段落【0001】 「【産業上の利用分野】本発明は、特に電子計算機のデータの入出力にピンの上下運動および振動を用いる入出力装置に関する。」 ウ.段落【0004】 「本発明の目的は、視覚障害者に図形情報等を触覚により読み取ることができ、また自由に図形情報などを入力することができる入出力装置を提供する点にある。」 エ.段落【0005】 「【課題を解決するための手段】電子計算機の画像出力からデータを読み取り、そのデータをピンの高低情報と振動情報に変換し、変換された情報に基づいて駆動部により出力器のピンを上下運動させ、振動板により振動させることと、出力器自体に座標を検出できる機能および高低情報と振動情報を入力することのできる入力装置を備え、視覚障害者自身でデータを作成できる機能を有することで上記の目的が達成される。」 オ.段落【0006】 「【作用】点字および図形の入出力を行う装置において、上下運動および振動するピンをマトリックス状に配置するようにする。これによって上下運動によって点字や図形の線を表すことができ、振動によってハイライト表示や連続変化量を表すことができる。」 カ.段落【0007】 「【実施例】図1は本発明の一実施例の装置構成を示す。図1において、線や面などの図形や点字からなる画像情報を指先で読み取り可能な情報として出力する場合、外部記憶装置101から電子計算機102内に読み込まれたデータやプログラムによって生成された画像は、制御部103を通してピン高低変換部104およびピン振動変換部105に渡される。ピン高低駆動部106はマトリックスピン入出力装置114のピンを上下に動かし、マトリックスピン表面に凹凸を付ける。ピン振動駆動部107はマトリックスピンの先を振動させる。」 キ.段落【0008】 「また、画像情報の入力の場合、マトリックスピン入出力装置114上に指を置くと、座標値読み取り部110によってマトリックス上の指がおかれた位置の座標を読み取り、圧力読み取り部111によって指で押している位置の圧力を読み取る。」 ク.段落【0009】 「このとき、図2に示すようなマトリックスピン入出力装置114に備えられたボタン201-203からの入力をボタン読み取り部109で読み取る。制御部103で圧力データを押されたボタンに応じて、それぞれピンの高低,ピンの振動の振幅,ピンの振動の周期データに変換して、座標データと共に電子計算機に渡される。マトリックスピン入出力装置114上の目盛表示ボタン204を押すと、図17のように目盛表示部108により、マトリックス上に入力の目安になる等間隔の凹凸が浮き上がる。」 ケ.段落【0011】 「次に図2に従って、マトリックスピン入出力装置114について述べる。図2において205は上下運動および振動するマトリックスピン、201は入力の際に使用する高低入力ボタン、202は振動振幅入力ボタン、203は、振動周期入力ボタン、204は目盛表示ボタン、206は電子計算機との接続端子(背面)を示す。」 コ.段落【0012】 「入出力に用いられるピンは図4のような構造をしている。図4において401は圧電素子からなる振動板、402はピン本体、403はピン駆動部、404は圧力センサを示す。圧電素子への電源の供給のためピン本体は中空構造になっている。」 サ.段落【0013】 「次に図5に従って、電子計算機102によって作成された画像データの出力について述べる。電子計算機102から出力される画像データの各ピクセルは赤(R),緑(G),青(B)の三原色からなり、電子計算機から制御部103に渡された画像データは、画像上の座標(i,j)のピクセルのRGB値をマトリックスピン上の座標(i,j)のピンの高さ、振動振幅,振動周期に対応して処理される。」 シ.段落【0014】 「処理は以下の502-508の処理を画像データの全てのピクセルについて行う。まず、画像上のピクセル(i,j)のピンの高さをRとする(502)。そのときマトリックスピン入出力装置上の目盛表示ボタン(図2,203)が押されているかを調べ(503)、押されている場合、現在のピクセル(i,j)が目盛座標上かどうか調べ(504)、目盛座標上のときは高さの値に一定値を足す(505)。そうすることにより入力の目安になるグリッドを表示させる。次にGの値をピンの振動の振幅の値とする(506)。同様にBの値をピンの振動の周期の値とする(507)。計算されたピンの高さのデータは、ピン高低駆動部(図1,106)に渡され(508)、ピンを上下に動かし、ピンの振動の振幅と周期データは、ピン振動駆動部(図1,107)に渡され(508)、ピンの先を振動させる。全てのピクセルについて行った後(509)終了する。」 ス.段落【0018】 「次に図6に従って、画像データの入力について述べる。入力には画像入出力装置上のボタン(図2,201-203)を押下してフリーハンドで入力する方法と、点字およびスライダー入力装置(300)による入力の2種類の入力方法がある。モードの選択は、はじめにマトリックスピン入出力装置(図1,114)上の高低入力ボタン(図2,201),振動振幅入力ボタン(図2,202),振動周期入力ボタン(図2,203)が一つ以上押されているかどうか調べ(602)、押されている場合はボタン入力モードになる(603)。」 セ.段落【0019】3?6行 「入力された画像は、制御部で各ピンの高低,振動振幅,振動周期を、対応するピクセルのRGBに変換され電子計算機(図1,102)に渡される。」 ソ.段落【0021】 「はじめに図8に従ってボタンによる入力について述べる。ボタンによる入力では、マトリックスピン(図2,205)上に置かれた指の位置と圧力によって自由曲線を入力する。マトリックスピン入出力装置(図1,114)上の高低入力ボタン(図2,201),振動振幅入力ボタン(図2,202),振動周期入力ボタン(図2,203)の一つ以上のボタンが押され、かつマトリックスピン上に指がおかれると、以下の(802-810)の処理を指が離されるまで連続して行う。」 タ.段落【0022】 「まず、指の置かれた位置の座標値を読み(802)、圧力を読む(803)。このとき押された中の一番圧力の高い点の値を取る。高低入力ボタン(図2,201)が押されている場合は(804)、圧力をピンの高さの値に変換する(805)。振動振幅入力ボタン(図2,202)が押されている場合は(806)、圧力をピンの振動の振幅の値に変換する(807)。振動周期入力ボタン(203)が押されている場合は(808)、圧力をピンの振動の周期の値に変換する(809)。変換された各値は、ピンの高さをマトリックスピン上の座標に対応するピクセルのR値に、ピンの振動の振幅をG値に、ピンの振動の周期をB値にそれぞれ変換され、電子計算機(図1,102)に渡される(810)。810において指がマトリックスピンから離されていない場合は802の処理に戻り、離されている場合は終了する。」 チ.段落【0031】 「次に作成した画像の保存,呼び出しに用いるファイルのフォーマットについて述べる。作成された画像は、電子計算機(図1,102)に渡される際に、ピンの高低,振動の振幅,振動の周期をそれぞれRGB値に変換される。変換された画像は図19に示すフォーマットで保存される。図19において、(a)は画像の例、(b)は保存フォーマットを示す。保存フォーマットでは、はじめに表示する画像の縦横のピクセル数を示し、その後にR,G,Bの値がピクセルの数だけ連続する。」 ツ.段落【0032】 「【発明の効果】以上説明したように、本発明の入出力装置によれば、外部からの画像情報を読み込み、ピンを上下させ、また振動させることにより、視覚障害者にもわかりやすい絵や図を作成することができる。また、入力装置を備えることで、視覚障害者自ら文書や図形データを作成することができる。」 (2)上記記載から、引用文献には、次の発明が記載されていると認められる(以下、「引用文献記載発明」という。)。 「振動板とピン本体とピン駆動部と圧力センサとからなるピンをマトリックス状に配置し、画像の入出力を行う入出力装置であって、 入出力装置は、制御部、ピン高低駆動部、ピン振動駆動部、座標値読み取り部、ボタン読み取り部、圧力読み取り部等を備え、 入出力装置は、入力された画像情報に基づき、ピン高低駆動部がピンを上下動させて表面に凹凸を付けると共に、ピン振動駆動部がピンを振動させることにより、画像の触覚表示を行うものであり、 座標値読み取り部は、使用者が押下したマトリックスピンの位置座標を読み取り、圧力読み取り部は、使用者がマトリックスピンを押下した圧力を読み取り、ボタン読み取り部は、使用者が、高低入力ボタン、振動振幅入力ボタン、振動周期入力ボタンの何れが押下されたかを読み取り、 制御部は、読み取られた位置座標を電子計算機に渡すと共に、読み取られた圧力、高低・振動等の指示ボタンの情報を、各ピンの高低、振動振幅、振動周期の値に変換し、変換した各値を、マトリックスピンの座標に対応するピクセルのRGB値に変換して、電子計算機に渡し、作成された画像データとして保存し、 保存した画像データに基づいて、マトリックスピンの上下運動、振動等により、画像を表示する入出力装置。」 4.対比 本願発明と引用文献記載発明とを対比する。 本願明細書において、本願発明における「上下動作」なる用語は、特許請求の範囲の記載を繰り返す部分以外には記載がなく、その定義等が曖昧であるため、本願発明を特定できないので、本願明細書の他の記載を参酌しつつ、用語の意味、及び、該用語に係る特定事項について、検討する。 出願時の本願明細書には「上下動作」に類似する用語である「上下動」なる用語が、段落【0012】、【0019】、【0095】、【0098】に「接触手段の上下動と、振動と、温熱とにより」と記載されている。 又、請求項1には「上下動作自在な出力手段を…(略)…上下動作制御して凹凸を生じさせる」と記載されている。 上記各段落の記載によれば、「上下動」と「振動」とは、異なる作用をなすものと解され、又、請求項1において、出力手段が上下動作した結果、(表示面に)凹凸が生じると特定されているから、「上下動作」は、例えば、上下に細かく振動するというような「上下振動」のことではなく、出力手段が、凹凸を形成するために、上下に動かされることを意味すると解され、又、そのように解しても、他の記載と矛盾しない。 即ち、「上下動作」とは、画像を凹凸で表現するために、出力手段が「上下動する」ことと解される。 同様に、本願明細書において、本願発明の特定事項である「出力手段」を面状に複数配列する点は、その配列が「縦横それぞれ等間隔」であることについて、特許請求の範囲の記載を繰り返す部分以外には記載がないので、この点についても検討する。 本願発明の「出力手段」は「ドット形成部材DF」のことであるから、この「ドット形成部材DF」に関して本願明細書を参酌すると、段落【0022】に「複数のドット形成部材DFがマトリックス状に配置された」と、又、段落【0032】に「マトリックス状に配置されたドット形成部材DF」と記載されている。 してみると、発明の詳細な説明においては、ドット形成部材DF(出力手段)が「マトリックス状に配置された」と記載されているものを、特許請求の範囲においては、「縦横それぞれ等間隔で面状に」と特定したと解されるから、本願発明の特定事項である「縦横それぞれ等間隔で面状に」とは、複数の出力手段(ドット形成部材DF)がひとまずマトリックス状に配置されていることを意味するものと解される。 他の特定事項に関係する事項についても検討する。 引用文献記載発明の「マトリックスピン」(以下、「ピン」という。)が、本願発明の「出力手段」に相当することは明らかであり(上記ケ等参照)、又、当該「ピン」が、画像を構成するピクセル即ち画素と対応している(上記サ、シ等参照)といえる。 又、引用文献記載発明の「入出力装置」の使用者は、画像入力に際し、マトリックスピン入出力装置上に指を置くものである(上記キ参照)から、「ピン」の上端は「使用者と接触する接触手段」となっていることはいうまでもない。 さらに、引用文献記載発明の「ピン駆動部」は、ピンを振動させるものでもあるから、本願発明の「励振手段」に相当する。 ところで、上記サ?タによれば、引用文献記載発明は、作成された画像の出力について、画像上の座標のピクセルのRBG値に対応するように、ピンの高さを赤(R)に、ピンの振動振幅を緑(G)に、ピンの振動周期を青(B)に対応させて表示するものであるから、ピンの高さ、振動振幅、振動周期は、予め設定した色に対応しているといえる。 即ち、ピンの振動は、予め設定した色(G、B)を示すものであり、それにより、画像の色彩を使用者に伝えることができるものである。 又、上記チの「作成した画像の保存」に関する記載から、引用文献記載発明の「入出力装置」も「記憶手段」を備えていることは明らかであり、又、引用文献記載発明の「座標値読み取り部」は、押下されたピンの位置座標を読み取り、それら座標データを、保存のために電子計算機に渡すものであるから、本願発明の「検出手段」に相当するものである。 さらに、引用文献記載発明の「制御部」は、ピンの上下動、振動を制御し、その凹凸状態、振動状態によって画像を表示するものであるから、「表示制御手段」ということができる。 そして、引用文献記載発明の「入出力装置」は、画像の触覚表示を行わせる装置であるから、「画像表示装置」と言い換えることができる。 以上の点から、本願発明と引用文献記載発明とは、以下の点で一致する一方、以下の点で相違している。 《一致点》 「画像を構成する複数の画素の1つに対応し上下動作自在な出力手段を縦横にマトリックス状に複数配列し、これら出力手段を表示制御手段が上下動作制御して前記面状の複数配列に凹凸を生じさせることで、画像を触覚で表示する画像表示装置であって、 複数の前記出力手段は、それぞれ、 使用者と接触する接触手段と、 前記接触手段に振動を与えて、予め設定した色を振動で示す励振手段と、 前記使用者の操作により前記接触手段が押下されたことを検出して、記憶手段に記憶させる検出手段とを備え、 前記表示制御手段は、前記記憶手段が記憶する各検出手段の検出結果それぞれに基づいて、各検出結果に対応する前記出力手段をそれぞれ上下動作制御して、前記使用者の操作によって入力された画像の触覚表示を行わせるとともに、各出力手段の励振手段を動作制御して、振動によって画像の色彩を前記使用者に伝達することを特徴とする画像表示装置。」 《相違点1》 「本願発明では、上下動作自在な出力手段をマトリックス状に配するに際して、縦横それぞれ等間隔で面状に複数配列し、と特定されるのに対して、引用文献記載発明では、相当関係にあるマトリックスピンがマトリックス状に配されているものの、前記特定を有するものでない点。」 《相違点2》 「本願発明が、接触手段の温度を変化させて、予め温度に応じて設定した色を示す温冷手段を備えると特定されるのに対して、引用文献記載発明では、そのような温冷手段を備えておらず、前記特定を有しない点。」 《相違点3》 「本願発明では、励振手段および温冷手段を動作制御して振動と温度の組み合わせによって色彩を使用者に伝達すると特定されるのに対して、引用文献記載発明では、励振手段を動作制御して振動によって色彩を使用者に伝達するものであって、前記特定を有しない点。」 5.判断 上記相違点について検討する。 (1)相違点1について 通常、マトリックス状に配したと称する場合、概ね配されたものは、縦横共に等間隔で面状に配されていることは技術常識に属することである。 例えば、特開平11-184369号公報(実施例3参照)等に示されるように、「マトリックス状」と称される場合、概ね「縦横等間隔で面状」に配されたものを表している。 したがって、相違点1を格別のものということはできない。 (2)相違点2について 出力手段を熱くしたり冷たくすることにより使用者に温度を感知させて、触覚表示を行う温冷手段は、特開2001-75705号公報(段落【0086】、【0088】等参照)、特開平9-50232号公報(段落【0001】、【0005】等参照)、特開2000-66824号公報(段落【0007】、【0008】等参照)等に記載されるように、周知の技術事項である。 よって、同様に、触覚表示を行う装置である、引用文献記載発明の入出力装置に、触覚表示手段の一つとして、上記周知の「温冷手段」を採用することは、当業者が容易に想到し得ることである。 ところで、本願発明においては、温冷手段が「予め温度に応じて設定した色を示す」と特定されているところ、上記周知の技術事項は、特に、色との関連付けはない。 しかしながら、引用文献記載発明は、ピンの高さ、振動振幅、振動周期を予め設定した色に対応付けて、画像の色彩をも表現しようとするものであるから、上記周知の温冷手段を採用するに際して、この温冷手段についても、予め定めた色と対応させることは、引用文献の記載事項を勘案して、当業者が容易に想到し得るものである。 したがって、相違点2を格別のものということはできない。 (3)相違点3について 上記(2)に示したとおり、触覚表示装置の出力手段として、振動手段(振励手段)と温冷手段とを併用し、且つ、それらを予め設定した色に対応付けることは、当業者が容易に想到し得るものである。 そして、複数の出力手段が存在すれば、それらを組み合わせることにより、多様な表現をなし得ることは、技術常識に属する事項である。 ここで、出力手段を組み合わせたものと色表現との対応付けを如何に行うかは、人間の感性に基づくものであるから、その感性の個人差をどのように扱うかは微妙なものであると推察される。 しかしながら、使用する者の便宜を考慮しつつ、出力手段を組み合わせたものと色表現との対応付けを工夫することは、当業者であれば設計段階において当然に考慮すべきことであって、特定の格別な対応づけを明らかにしたものでない本願発明においては、これを格別なものとはいい得ない。 それ故に、本願発明の作用効果は明確に把握できものではないから、相違点3に係る事項は、相違点2に係る事項の副次的作用にすぎないものと認められる。 したがって、相違点2と同様に、相違点3も格別のものということはできない。 (3)まとめ 以上のとおりであるから、相違点1?3に係る特定事項は、当業者が適宜に採用或いは設定可能なものであって、それらを寄せ集めたことにより得られる作用効果も当業者であれば容易に推察可能なものであって、格別なものとはいえない。 6.むすび したがって、本願発明は、引用文献記載発明、及び、周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-03-12 |
結審通知日 | 2009-03-17 |
審決日 | 2009-03-30 |
出願番号 | 特願2001-282128(P2001-282128) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G09B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 松川 直樹 |
特許庁審判長 |
酒井 進 |
特許庁審判官 |
江成 克己 菅藤 政明 |
発明の名称 | 画像表示装置および入出力装置 |
代理人 | 村松 貞男 |
代理人 | 中村 誠 |
代理人 | 河野 哲 |
代理人 | 橋本 良郎 |
代理人 | 鈴江 武彦 |
代理人 | 福原 淑弘 |
代理人 | 蔵田 昌俊 |
代理人 | 峰 隆司 |