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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) D01F
管理番号 1197548
審判番号 不服2006-17904  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-08-17 
確定日 2009-05-14 
事件の表示 特願2001-385744「コラーゲン単糸の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年7月9日出願公開、特開2003-193328〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年12月19日の出願であって、平成17年3月25日付けの拒絶理由通知に対して同年6月2日に意見書及び手続補正書が提出され、平成18年4月12日付けの拒絶理由通知に対して同年6月19日に意見書及び手続補正書が提出され、同年7月10日付けで拒絶査定がされたところ、これに対して同年8月17日に拒絶査定不服審判が請求がされるとともに同年9月15日に手続補正書が提出され、その後、平成20年5月21日付けで審尋がされ、同年7月25日に回答書が提出され、同年12月8日付けで当審から拒絶理由が通知されたものである。
なお、平成20年12月8日付けの当審からの拒絶理由通知に対し、請求人からは何らの応答もなかった。

第2 本願発明
本願に係る発明は、平成18年9月15日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?11に記載されるとおりのものであって、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりである。
「コラーゲン溶液を、含水率50%以下の親水性有機溶媒中で脱水・凝固後、張力を保ちつつ、相対湿度50%以下、温度42℃以下の気体に曝して乾燥することにより得られた医療用コラーゲン単糸。」

第3 当審で通知した拒絶理由
平成20年12月8日付けで当審より通知した拒絶理由は、次のとおりである。
「平成18年9月15日付け手続補正による特許請求の範囲の請求項1についての補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではないので、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
また、上記請求項1を直接的又は間接的に引用する請求項2?11についても同様の不備がある。」

第4 当審の判断
1 はじめに
特許法17条の2第3項は、「第一項の規定により明細書又は図面について補正をするときは、誤訳訂正書を提出してする場合を除き、願書に最初に添付した明細書又は図面(・・・)に記載した事項の範囲内においてしなければならない。」と規定している。
そこで、以下、本願発明が特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしているか否かについて検討する。

2 特許請求の範囲の記載について
まず、本願発明においては、「脱水・凝固」に関し、「コラーゲン溶液を、含水率50%以下の親水性有機溶媒中で脱水・凝固後、」と規定されている。

3 当初明細書の記載について
次に、本願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書」という。)の記載をみると、「脱水・凝固」に関し、当初明細書には以下の記載がある。
(1) 「すなわち、本発明は(1)含水率約10%以下の親水性有機溶媒中で糸状コラーゲンを脱水・凝固後、相対湿度約50%以下、温度約42℃以下の条件で乾燥することを特徴とする、連続したコラーゲン単糸の製造方法、・・・」(段落【0006】)
(2) 「【発明の実施の態様】本発明方法は、(1)コラーゲン溶液を親水性有機溶媒による紡糸法で糸状コラーゲンとし、この糸状コラーゲンを含水率約10%以下の親水性有機溶媒中で凝固する工程、(2)相対湿度約50%以下、温度約42℃以下の条件で乾燥する工程により行われる。第(1)工程では、(マル1)コラーゲン溶液を含水率約10%以下の親水性有機溶媒中に吐出して、含水率約10%以下の状態で糸状コラーゲンを脱水及び凝固してもよく、(マル2)上記(マル1)の操作後さらに含水率10%以下の別の親水性有機溶媒中で強固に脱水及び凝固してもよく、(マル3)コラーゲン溶液を親水性有機溶媒に吐出し、含水率約10%を超える親水性有機溶媒中でいったん糸状コラーゲンを形成させ(脱水工程)、この糸状コラーゲンを含水率約10%以下の親水性有機溶媒中でさらに脱水・凝固(脱水・凝固工程)してもよい。」(段落【0007】)
(3) 「第(1)工程では、コラーゲン溶液をノズル等から連続的に親水性有機溶媒の充填された浴槽中に吐出し、脱水及び凝固させることにより糸状コラーゲンが得られる。コラーゲン溶液のコラーゲン濃度は、通常、約4?10重量%であり、好ましくは、約5?7重量%である。親水性有機溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノールなどの炭素数1から6のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類等が挙げられる。これらは単独または2種以上任意の割合で混合して用いても良い。このうち最も好ましくはエタノールである。親水性有機溶媒の含水率は、コラーゲン水溶液から糸状コラーゲンを得る(脱水工程)ために、通常約50容量%以下、好ましくは約30容量%以下であり、糸状コラーゲンの脱水・凝固(脱水・凝固工程)のためには通常約10容量%以下、好ましくは、約2容量%以下、さらに好ましくは約0.5容量%以下である。親水性有機溶媒の充填された浴槽は、必要に応じて1槽の独立した浴槽、または2槽から20槽程度の独立した槽を連続的に設置してもよい。1槽の独立した浴槽を用いる場合、最終的に約10容量%以下で脱水処理が行われるよう、親水性有機溶媒を循環的に入れ替え、含水率を約10容量%以下に維持する。複数の独立した槽を用いる場合、糸状コラーゲンの凝固処理のため、少なくとも最終脱水工程の1槽は、親水性有機溶媒の含水率を約10容量%以下に維持する。この際、親水性有機溶媒の優れた殺菌効果により医療用途に適した糸を得ることができる。糸状コラーゲンは脱水・凝固後、相対湿度約50%以下、温度約42℃以下の条件で乾燥される。」(段落【0008】)
(4) 「実施例1 コラーゲン単糸の製造
ブタ由来I型、III型混合コラーゲン粉末(日本ハム株式会社製、SOFDタイプ、Lot No.0102226)を注射用蒸留水(大塚製薬社製)に溶解し、7重量%に調製する。そして、後述する紡糸環境全域の相対湿度を38%以下に保持した後、この7重量%コラーゲン水溶液を充填したシリンジ3(EFD社製 Disposable Barrels/Pistons 、55cc)に、空気圧をかけてシリンジに装着した針より該コラーゲン水溶液を吐出した(図1)。この際シリンジに装着した針はEFD社製 Ultra Dispensing Tips (27G、ID :0.21 mm)を使用した。吐出した7重量 %コラーゲン水溶液は、99.5容量%エタノール(和光純薬、特級)3Lを収容したエタノール槽41で直ちに糸形状に脱水・凝固した。エタノール槽41から引き上げられた糸状コラーゲンを、99.5容量%エタノール(和光純薬、特級)3Lを収容しエタノール槽41とは完全に分離独立した第2のエタノール槽42に室温で約30秒間、浸漬し、さらに脱水・凝固を施した。続いて、第2のエタノール槽42から引き上げられた糸状コラーゲンは、その周囲にドライエアーが送り込まれる送風乾燥機51を約3秒間で通過させた後、糸が弛まないようにテンションプーリー52で張力を保ちつつ、直径78mm、全長200mmのSUS製ロール状巻き取り具6を35rpmで回転させ、巻き取った。このロール状巻き取り具6を巻き取りの際、ロール状巻き取り具の軸方向に1.5mm/sの速度で往復させつつ、シリンジ3に充填した7重量%コラーゲン水溶液が尽きるまで連続紡糸を行った。このようにして、コラーゲン単糸2のボビンを得た。」(段落【0016】)

4 判断
上記3の摘記(1)?摘記(4)に示したように、当初明細書における「脱水・凝固」に関する記載は、全て、「含水率約10%以下」の親水性有機溶媒中で糸状コラーゲンを脱水・凝固する旨の記載のみである。すなわち、当初明細書には、本願発明において規定されているように、「コラーゲン溶液を、含水率50%以下の親水性有機溶媒中で脱水・凝固」(注.下線は当審による。)する旨の記載は存在しない。

ただ、摘記(3)には「親水性有機溶媒の含水率は、コラーゲン水溶液から糸状コラーゲンを得る(脱水工程)ために、通常約50容量%以下、好ましくは約30容量%以下であり、」との記載はある。しかし、この記載に続けて「糸状コラーゲンの脱水・凝固(脱水・凝固工程)のためには通常約10容量%以下、好ましくは、約2容量%以下、さらに好ましくは約0.5容量%以下である。」と記載されていることから明らかなように、この記載においては、「脱水工程」は「通常約50容量%以下」であるが、「脱水・凝固(脱水・凝固工程)」は「通常約10容量%以下」であることを示している。そうすると、当初明細書では「脱水工程」と「脱水・凝固(脱水・凝固工程)」とを明確に区別しているので、本願発明における「コラーゲン溶液を、含水率50%以下の親水性有機溶媒中で脱水・凝固後、」との規定が、摘記(3)における「親水性有機溶媒の含水率は、コラーゲン水溶液から糸状コラーゲンを得る(脱水工程)ために、通常約50容量%以下、好ましくは約30容量%以下であり、」との記載に基づいてなされたものとは認められない。
また、「コラーゲン溶液を、含水率50%以下の親水性有機溶媒中で脱水・凝固」することが、当初明細書等の記載から自明な事項であるとも認められない。
したがって、平成18年9月15日付け手続補正による特許請求の範囲の請求項1についての「コラーゲン溶液を、含水率50%以下の親水性有機溶媒中で脱水・凝固後、」なる記載は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。

第5 むすび
以上のとおり、平成18年9月15日付け手続補正により補正された請求項1に係る発明(本願発明)は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではないので、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。したがって、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-03-11 
結審通知日 2009-03-17 
審決日 2009-03-30 
出願番号 特願2001-385744(P2001-385744)
審決分類 P 1 8・ 561- WZ (D01F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 馳平 裕美  
特許庁審判長 唐木 以知良
特許庁審判官 坂崎 恵美子
鈴木 紀子
発明の名称 コラーゲン単糸の製造方法  
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