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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1197555
審判番号 不服2006-24251  
総通号数 115 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2009-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-10-26 
確定日 2009-05-14 
事件の表示 特願2003-11985号「異方導電性コネクター装置および回路装置の検査装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年8月12日出願公開、特開2004-227828号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成15年1月21日の特許出願であって、平成18年9月19日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年9月26日)、これに対し、同年10月26日に拒絶査定不服審判が請求され、平成18年11月21日付けで手続補正書が提出されたものである。

2.平成18年11月21日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年11月21日付け手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
平成18年11月21日付け手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「検査対象である回路装置と、検査用回路基板との間に介在されて当該回路装置の被検査電極と当該検査用回路基板の検査用電極との電気的接続を行なうための異方導電性コネクター装置であって、
絶縁性シートおよび当該絶縁性シートをその厚み方向に貫通して伸びる複数の電極構造体よりなるシート状コネクターと、このシート状コネクターの表面に設けられた第1の異方導電性シートと、前記シート状コネクターの裏面に設けられた第2の異方導電性シートとを具えてなり、
前記シート状コネクターにおける電極構造体は、当該絶縁性シートの表面に露出する表面電極部および当該絶縁性シートの裏面に露出する裏面電極部が、当該絶縁性シートをその厚み方向に貫通して伸びる短絡部によって互いに連結されてなり、
前記第1の異方導電性シートは、前記シート状コネクターにおける電極構造体に対応するパターンに従って配置された、それぞれ厚み方向に伸びる複数の導電路形成部と、これらの導電路形成部を相互に絶縁する絶縁部とよりなり、当該導電路形成部の各々が、対応する電極構造体の表面電極部上に位置するよう配置されており、
前記第2の異方導電性シートは、前記シート状コネクターにおける電極構造体に対応するパターンに従って配置された、それぞれ厚み方向に伸びる複数の導電路形成部と、これらの導電路形成部を相互に絶縁する絶縁部とよりなり、当該導電路形成部の各々が、対応する電極構造体の裏面電極部上に位置するよう配置されており、
前記第1の異方導電性シートにおける導電路形成部の径に対する前記第2の異方導電性シートにおける導電路形成部の径の比が0.3?0.9であり、
前記第1の異方導電性シートが、検査対象である回路装置に接触されることを特徴とする異方導電性コネクター装置。」と補正された(以下「本件補正発明」という。)。

上記補正は、異方導電性コネクター装置について「検査対象である回路装置と、検査用回路基板との間に介在されて当該回路装置の被検査電極と当該検査用回路基板の検査用電極との電気的接続を行なうための異方導電性コネクター装置であって」と限定するとともに、同じく「第1の異方導電性シートが、検査対象である回路装置に接触されること」を限定するものであり、特許請求の範囲を減縮するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項に適合するか)否かについて、以下検討する。

(2)刊行物
(2-1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2001-351702号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

ア.「一方、図21に示すように、絶縁性シート基体93と、各々この絶縁性シート基体93の厚み方向に貫通して伸びるよう固定的に形成された複数の金属部94とからなるコアシート91の両面に、厚み方向に導電性を示す異方導電性エラストマー層92、92が一体的に設けられてなる異方導電性シート90が知られている(特開平11-273772号公報参照)。
しかしながら、このような異方導電性シート90においては、コアシート91における金属部94によって、異方導電性エラストマー層92、92の各々の変形量が個々に制限されるので、その一面に対する高さレベルの不均一性に対して、他面側の異方導電性エラストマー層は有効な凹凸吸収性を発揮するものではなく、結局、大きな凹凸吸収性を得ながら回路装置のすべての被検査電極について一斉に十分な電気的接続状態を得ることが困難である。
【発明が解決しようとする課題】本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、異方導電性エラストマーシートを有してなり、作用される押圧力が小さい場合にも、電気的に接続されるべき接続対象体について十分に信頼性の高い電気的接続を確実に達成することができるシート状コネクターを提供することにある。本発明の他の目的は、上記のようなシート状コネクターを有利に製造することができる方法を提供することにある。本発明の更に他の目的は、検査対象である回路装置の電気的動作検査を高い信頼性をもって実施することができる電気的検査装置を提供することにある。」(段落【0007】乃至【0009】、下線は当審にて付与、以下同様。)

イ.「以下、本発明のシート状コネクターの実施の形態について、回路装置の電気的検査を行う場合について具体的に説明する。
〈第1の実施の形態〉図1は、本発明の第1の実施の形態に係るシート状コネクターの構成を示す説明用断面図である。このシート状コネクター10は、複合導電性シート11と、この複合導電性シート11の上面に設けられた、厚み方向に導電性を示す上面側異方導電性エラストマーシート12により構成されている。 複合導電性シート11は、検査対象となる回路装置の被検査電極に対応した位置において、各々厚み方向に伸び、上方に向かって広がるテーパー状の複数の貫通孔13が形成された絶縁性シート14と、これらの貫通孔13内に移動可能に支持された、各々導電路を形成する円錐台状の複数の、例えば金属体よりなる可動導体15とにより構成されている。」(段落【0022】、【0023】)

ウ.「上記のシート状コネクター10は、次のようにして、回路装置の被検査電極と、これに対応する検査治具の接続電極との電気的な接続に供される。図13は、図1に示すシート状コネクターにより構成された回路装置の電気的検査装置の概略を示す説明用断面図である。この例における接続対象である回路装置1は、その下面より突出する複数の被検査電極2を有するものであり、検査治具5は、被検査電極2に対応した位置に複数の突出した検査用接続電極6をその上面に有するものである。
先ず、検査治具5の上面にシート状コネクター10を、その複合導電性シート11が上方に位置されると共に、その可動導体15が対応する当該検査治具5の検査用接続電極6上に位置されるよう配置して固定する。一方、シート状コネクター10の上面上には、検査治具5と電気的に接続すべき回路装置1を、その被検査電極2が可動導体15上に位置するよう配置する。そして、その状態で適宜の加圧機構により回路装置1を検査治具5に対して下方に押圧する。これにより、回路装置1の被検査電極2と、これに対応する検査用接続電極6とは、複合導電性シート11の可動導体15および上面側異方導電性エラストマーシート12に形成される導電路を介して電気的に接続された状態となり、この状態で回路装置1の所要の電気的動作検査が実施される。
而して、上記のシート状コネクター10によれば、回路装置1および検査治具5によって狭圧されることにより、複合導電性シート11における可動導体15の各々が、回路装置1の表面における被検査電極2の高さ位置に応じた変位量で各々独立して絶縁性シート14の厚み方向に移動することができ、これにより、上面側異方導電性エラストマーシート12がその厚み方向に圧縮されて変形するので、当該異方導電性エラストマーシート12の所要の個所が確実に押圧されて導電路が形成されると共に、接続対象体の表面における高さレベルの不均一性を確実に吸収することができる。」(段落【0045】乃至【0047】)

エ.「(2)複合導電性シートの両面に異方導電性エラストマーシートが設けられてなる構成においては、上面側異方導電性エラストマーシートと下面側異方導電性エラストマーシートの構成、特性、条件などを異なったものとすることができる。例えば、各々の異方導電性エラストマーシートの厚みが同じ大きさであってもよく、この場合には、可動導体の移動方向側に位置する上面側異方導電性エラストマーシートの硬度D1は、下面側異方導電性エラストマーシートの硬度D2より小さいことが好ましく、具体的には、これらの硬度の比(D1/D2)が0.5?1であることが好ましい。」(段落【0063】)

オ.「(3)本発明のシート状コネクターを構成する異方導電性エラストマーシートは、上記の構成に限定されるものではなく、例えば、図17および図18に示すように、導電性粒子がシート基体61中にその厚み方向に配向した状態で密に充填された導電路形成部62と、これらの導電路形成部62を相互に絶縁する、導電性粒子が全くあるいは殆ど存在しない絶縁部63とからなる異方導電性エラストマーシート60であってもよい。このような異方導電性エラストマーシート60は、例えば図19に示す金型を用いて製造することができる。」(段落【0065】)

カ.「本発明のシート状コネクターによれば、押圧されて使用されることにより、複合導電性シートにおける可動導体の各々が、接続対象体の表面の個々の個所における高さ位置に応じた変位量で各々独立して絶縁性シートの厚み方向に移動することができるので、両面に配置される接続対象体の表面における高さレベルの不均一性に対して大きな凹凸吸収性が得られると共に、全体において高い感度状態が得られる。従って、接続対象体の表面における高さレベルに相当に大きな不均一性があっても、低い押圧力で接続対象体の表面におけるすべての個所について信頼性の高い電気的接続を確実に達成することができる。
特に、複合導電性シートの両面に異方導電性エラストマーシートが設けられてなるシート状コネクターによれば、押圧されたときに、上面側異方導電性エラストマーシートおよび下面側異方導電性エラストマーシートが共に圧縮変形されるため、その結果として接続対象体の表面における高さレベルの不均一性に対して一層大きな凹凸吸収性が得られると共に、上面側異方導電性エラストマーシートおよび下面側異方導電性エラストマーシートは、別個の異方導電性エラストマーシートであるので、全体において十分に高い感度状態が確実に得られる。」(段落【0073】、【0074】)

キ.上記ウ、オ、及び【図18】の記載を総合すると、一方の異方導電性エラストマーシート60の導電路形成部62の各々が、対応する可動導体15の表面上に位置するように配置され、他方の異方導電性エラストマーシート60の導電路形成部62の各々が、対応する可動導体15の裏面上に位置するように配置されること、一方の異方導電性エラストマーシート60が検査用接続電極6を介して検査対象である検査治具5に電気的に接続されること、異方導電性エラストマーシート60、60は、絶縁性シート14における可動導体15に対応するパターンに従って導電路形成部62が配置されることが示されている。

上記記載事項及び図面の記載内容からみて、刊行物1には、次の発明が記載されている。

「回路装置1および検査治具5によって挟圧され回路装置1の被検査電極2と、これに対応する検査治具5の検査用接続電極6とを電気的に接続するシート状コネクター10であって、
絶縁性シート14と、この絶縁性シート14の厚み方向に伸びる複数の貫通孔13内に配置された各々導電路を形成する複数の可動導体15とよりなる複合導電性シート11と、この複合導電性シート11の両面に設けられた、厚み方向に導電性を示す異方導電性エラストマーシート60、60とよりなり、
異方導電性エラストマーシート60の一方は、導電性粒子が厚み方向に配向した状態で密に充填された複数の導電路形成部62と、これらの導電路形成部62を相互に絶縁する絶縁部63とからなり、当該導電路形成部62の各々が、対応する対応する可動導体15の表面上に位置するように配置され、
異方導電性エラストマーシート60の他方は、導電性粒子が厚み方向に配向した状態で密に充填された複数の導電路形成部62と、これらの導電路形成部62を相互に絶縁する絶縁部63とからなり、当該導電路形成部62の各々が、対応する可動導体15の裏面上に位置するように配置され、
異方導電性エラストマーシート60の一方が、検査用接続電極6を介して検査対象である検査治具5に電気的に接続される
シート状コネクタ10。」

(2-2)同じく特開2000-156119号公報(以下「刊行物2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

ア.「本発明は、例えば電子部品などの回路素子相互間の電気的接続やプリント基板の検査装置におけるコネクターとして好ましく用いられる異方導電性積層体に関する。」(段落【0001】)

イ.「図1は、本発明の異方導電性積層体の一例における要部の構成を示す説明用断面図である。この異方導電性積層体10は、柔軟性多孔質材料よりなる絶縁層20と、厚み方向に磁性体材料が配向してなる導電路を有する絶縁体層40とを有する積層体からなっている。この異方導電性積層体10の絶縁層には、特定のパターンに従って厚み方向に貫通して伸びる多数の短絡路21が形成されている。この絶縁層20は、多孔質材料からなっており、上記短絡路21は接続すべき電極のパターン、例えば被検査回路装置の被検査電極のパターンに対応するパターンに従って、当該絶縁層20の厚み方向に伸び、複数個形成されている。短絡路21の各々は、必要に応じて絶縁層20の表面に露出する表面電極部分22と、絶縁層20の裏面に露出する裏面電極部分23とを有していてもよい。これら表面電極部分22および裏面電極部分23は、絶縁層20を構成する多孔質材料の多数の孔を介して形成された短絡部分21によって一体に連結されている。」(段落【0017】)

ウ.「(b)多孔質の絶縁性シートを用意し、該絶縁性シートにおける導電路を形成すべき部分(以下、「導電路形成部分」という)に、無電解ニッケルメッキ処理のためのパラジウム等によるアクセレーター処理を行う。次いで、図5に示すように、絶縁性シート20の表面および裏面の各々に、フォトリソグラフィーの手法により、短絡部形成部分11の位置に例えば円形のパターン孔14,15を有するレジスト層12,13を形成する。そして、レジスト層12,13のパターン孔14,15によって露出された絶縁性シート20の短絡部形成部分11に対して、メッキ処理を施すことにより、図6に示すように、レジスト層12のパターン孔14内にニッケルが堆積されて、例えば円板状の表面電極基層22が形成されると共に、レジスト層13のパターン孔15内にニッケルが堆積されて円板状の裏面電極部分23が形成され、一方、絶縁性シート20の短絡部形成部分21には、その多孔質材料の多数の孔内にニッケルが充填されて、表面電極基層22および裏面電極部分23の各々に一体に連結された短絡路が形成される。」(段落【0047】)

上記記載事項及び図面の記載内容からみて、刊行物2には、次の発明が記載されている。

「絶縁層20における短絡路21は、絶縁層20の表面に露出する表面電極部分22および裏面に露出する裏面電極部分23が、絶縁層20を厚み方向に貫通して伸びる短絡部分によって一体に連結されている異方導電性積層体10。」

(2-3)同じく特開平11-204176号公報(以下「刊行物3」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

ア.「【発明の実施形態】本発明の導電性ゴムシートは、電気絶縁材料内に導電部を複数個有する導電性ゴムシートであって、その少なくとも1つの導電部において、異方導電性ゴムシートの一方の表面の導電部の面積と、他方の表面の導電部の面積との比が、1.05以上であることを特徴とする導電性ゴムシートである。上記面積の比は、好ましくは1.1以上であり、さらに好ましくは1.15?10、特に好ましくは1.2?3である。本発明の導電性ゴムシートは、、電気絶縁材料内に厚み方向に導電性粒子が並んだ導電部を複数個有する導電性ゴムシートであって、その一方の面の少なくとも1つの導電部の面積が、異方導電性ゴムシートの厚さをRとしたとき、R^(2)π/4の値が1以上であることが好ましい。かかるR^(2)π/4の値は、1以上が好ましく、より好ましくは1.1?10、さらに好ましくは1.2?5、特に好ましくは1.3?3である。なお、上記導電性ゴムシートの厚さRは、導電性ゴムシートが例えば多層シートの場合はその合計厚さであり、中間に回路基板などの中間層がある場合はそれを除いた導電性ゴムシートの合計厚さである。このような導電部は、導電性ゴムシート中に少なくとも1つであるが、複数個が集団であることが好ましい。かかる場合、導電性ゴムシートの全面もしくは部分的範囲内に、散在していてもよいし連続して配置されていてもよい。
本発明の導電性ゴムシートは、被検査物の電気的導通性や電気特性の検査時に、導電性ゴムシートを検査基板上に配置し、かつ検査物の電極に対面させた位置に置き、検査基板と検査物との間で挟み、必要に応じて圧縮した状態を保持しながら検査物の電極と検査基板の電極とを、導電性ゴムシートの導電部を介して電気的に確実に接続する事ができる。被検査物としては各種の回路基板、例えば、表面実装LSI、電子回路基板、BGA、CSP、各種パッケージ基板などが挙げられる。」(段落【0008】、【0009】)

イ.【図9】には、面積が大きい導電性ゴムシート1の表面が表面実装LSIに電気的に接続されることが記載されている。

上記記載事項及び図面の記載内容からみて、刊行物2には、次の発明が記載されている。

「異方導電性ゴムシートの一方の表面の導電部の面積と、異方導電性ゴムシートの他方の表面の導電部の面積との比が、特に好ましくは1.15?10であり、面積の大きい方の異方導電性ゴムシートの表面の導電部が、被検査物である表面実装LSIに電気的に接続される異方導電性ゴムシート。」

(3)対比
本件補正発明と刊行物1に記載された発明とを対比する。
刊行物1に記載された発明の「回路装置1」は、その構成及び機能からみて、本件補正発明の「検査対象である回路装置」及び「回路装置」に相当し、以下同様に、
「検査治具5」は「検査用回路基板」に、
「挟圧」は「介在」に、
「被検査電極2」は「被検査電極」に、
「検査用接続電極6」は「検査用電極」に、
「電気的に接続(する)」は「電気的接続(を行なう)」及び「接触(する)」に、
「絶縁性シート14」は「絶縁性シート」に、
「導電路を形成する可動導体15」は「電極構造体」に、
「複合導電性シート11」は「シート状コネクター」に、
「異方導電性エラストマーシート60、60」は「第1の異方導電性シート」及び「第2の異方導電性シート」に、
「異方導電性エラストマーシート60の一方」は「第1の異方導電性シート」に、
「導電路形成部62」は「導電路形成部」に、
「導電路形成部62を相互に絶縁する絶縁部63」は「絶縁部」に、
「異方導電性エラストマーシート60の他方」は「第2の異方導電性シート」に、
それぞれ相当する。

そして、刊行物1に記載された発明の「シート状コネクター10」は、異方導電性エラストマーシート60、60により構成されるものであるから、本件補正発明の「異方導電性コネクター装置」に相当する。
また、刊行物1に記載された発明の「導電路を形成する複数の可動導体15」と本件補正発明の「電極構造体」とは、「電極」として機能する点で共通するものである。
さらに、刊行物1に記載された発明の「可動導体15の表面」及び本件補正発明の「電極構造体の表面電極部」とは、「電極の表面」である点で共通するものであり、同様に、刊行部1に記載された発明の「可動導体15の裏面」及び本件補正発明の「電極構造体の裏面電極部」とは、「電極の裏面」である点で共通するものである。

したがって、上記両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「検査対象である回路装置と、検査用回路基板との間に介在されて当該回路装置の被検査電極と当該検査用回路基板の検査用電極との電気的接続を行なうための異方導電性コネクター装置であって、
絶縁性シートおよび当該絶縁性シートをその厚み方向に貫通して伸びる複数の電極よりなるシート状コネクターと、このシート状コネクターの表面に設けられた第1の異方導電性シートと、シート状コネクターの裏面に設けられた第2の異方導電性シートとを具えてなり、
第1の異方導電性シートは、シート状コネクターにおける電極に対応するパターンに従って配置された、それぞれ厚み方向に伸びる複数の導電路形成部と、これらの導電路形成部を相互に絶縁する絶縁部とよりなり、当該導電路形成部の各々が、対応する電極の表面上に位置するよう配置されており、
第2の異方導電性シートは、シート状コネクターにおける電極に対応するパターンに従って配置された、それぞれ厚み方向に伸びる複数の導電路形成部と、これらの導電路形成部を相互に絶縁する絶縁部とよりなり、当該導電路形成部の各々が、対応する電極の裏面上に位置するよう配置されており、
第1の異方導電性シートが、検査対象である回路装置に接触される
異方導電性コネクター装置。」

[相違点1]
シート状コネクターの電極構造について、
本件補正発明では、絶縁性シートの表面に露出する表面電極部および絶縁性シートの裏面に露出する裏面電極部が、絶縁性シートをその厚み方向に貫通して伸びる短絡部によって互いに連結されているのに対して、
刊行物1に記載された発明では、表面及び裏面を有する可動体15である点。

[相違点2]
本件補正発明では、検査対象である回路装置に接触される第1の異方導電性シートにおける導電路形成部の径に対する第2の異方導電性シートにおける導電路形成部の径の比が0.3?0.9であるのに対して、
刊行物1に記載された発明では、この発明特定事項を備えるか否か不明である点。

(4)当審の判断
以下、上記相違点について検討する。
まず、上記相違点1について検討する。
本件補正発明と刊行物2に記載された発明とを対比する。
刊行物2に記載された発明の「絶縁層20」は、その構成及び機能からみて、本件補正発明の「シート状コネクター」に相当し、以下同様に、
「短絡路21」は「電極構造体」に、
「表面電極部分22」は「表面電極部」に、
「裏面電極部分23」は「裏面電極部」に、
「短絡部分」は「短絡部」に、
「異方導電性積層体10」は「異方導電性コネクター装置」に、
それぞれ、相当する。

したがって、刊行物2に記載された発明は、
「シート状コネクターにおける電極構造体は、当該絶縁性シートの表面に露出する表面電極部および当該絶縁性シートの裏面に露出する裏面電極部が、当該絶縁性シートをその厚み方向に貫通して伸びる短絡部によって互いに連結されている異方導電性コネクター装置。」
と言い換えることができる。

そして、刊行物1および刊行物2に記載された発明は、共に、被検査物の電気的動作検査装置に用いる異方導電性コネクター装置という同一の技術分野に属する発明であり、しかも、シート状コネクターに、異方導電性シートを積層することにより構成されるものであるから、刊行物1に記載された発明の可動導体15に、刊行物2に記載された発明を適用することは、当業者が容易になし得たものである。

次に、上記相違点2について検討する。
本件補正発明と刊行物3に記載された発明とを対比する。
刊行物3に記載された発明の「異方導電性ゴムシートの一方」は、その構成及び機能からみて、本件補正発明の「第1の異方導電性ゴムシート」に相当し、以下同様に、
「表面の導電部」は「導電路形成部」に、
「異方導電性ゴムシートの他方」は「第2の異方導電性ゴムシート」に、
「被検査物である表面実装LSI」は「検査対象である回路装置」に、
「異方導電性ゴムシート」は「異方導電性コネクター装置」に、
それぞれ相当する。

そして、刊行物3に記載された発明の「異方導電性ゴムシートの一方の表面の導電部(「A」)の面積と、異方導電性ゴムシートの他方の表面の導電部(「B」)の面積との比が、特に好ましくは1.15?10(B/A)であり」なる発明特定事項は、面積を径に換算すると、「Aの径に対するBの径の比は、約0.32?約0.93であり」と同義である。
さらに、刊行物3に記載された発明の「電気的に接続される」は、本件補正発明の「接触される」と同義である。
また、刊行物3に記載された発明の「面積の大きい方の異方導電性ゴムシートの表面の導電部が、被検査物である表面実装LSIに電気的に接続される」は、「径の大きい第1の異方導電性ゴムシート導電路形成部が検査対象である回路装置に接触される。」と言い換えることができる。

したがって、刊行物3に記載された発明は、
「第1の異方導電性ゴムシートの導電路形成部の径に対する第2の異方導電性ゴムシートの導電路形成部の径の比が約0.32?約0.93であり、径の大きい第1の異方導電性ゴムシート導電路形成部が検査対象である回路装置に接触される異方導電性コネクター装置。」
と言い換えることができる。

そして、刊行物1および刊行物3に記載された発明は、共に、被検査物の電気的動作被検査物の電気的動作検査装置に用いられる異方導電性コネクター装置という同一の技術分野に属する発明である。さらに、被検査物の電極パターンおよび、検査装置の電極パターンに応じて両者を電気的に接続する、異方導電性シートを積層することにより構成した異方導電性コネクター装置の各異方導電性シートの径を、各電極パターン、導電性を考慮して決定することは当業者が適宜なし得たものである。
したがって、刊行物1に記載された発明に、刊行物3に記載された発明を適用して、上記相違点2に係る本件補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たものである。
なお、本件補正発明は、「第1の異方導電性シートにおける導電路形成部の径に対する第2の異方導電性シートにおける導電路形成部の径の比」を「0.3?0.9」とその数値範囲を特定するものであるが、このことにより本件補正発明が当該数値範囲内において格別の優れた効果を奏するものではないため、本件補正発明が当該数値範囲を特定したことに臨界的意義は見出せない。

また、本件補正発明の奏する効果についてみても、刊行物1乃至3に記載された発明により奏される効果の範囲内のものである。
したがって、本件補正発明は、刊行物1乃至3に記載された発明に基いて当業者が容易に想到し得たものである。

よって、本件補正発明は、刊行物1乃至3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する特許法第126条第5項の規定に違反するものであり、平成18年改正前特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成18年11月21日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年6月20日付けで手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「絶縁性シートおよび当該絶縁性シートをその厚み方向に貫通して伸び
る複数の電極構造体よりなるシート状コネクターと、このシート状コネクターの表面に設けられた第1の異方導電性シートと、前記シート状コネクターの裏面に設けられた第2の異方導電性シートとを具えてなり、
前記シート状コネクターにおける電極構造体は、当該絶縁性シートの表面に露出する表面電極部および当該絶縁性シートの裏面に露出する裏面電極部が、当該絶縁性シートをその厚み方向に貫通して伸びる短絡部によって互いに連結されてなり、
前記第1の異方導電性シートは、前記シート状コネクターにおける電極構造体に対応するパターンに従って配置された、それぞれ厚み方向に伸びる複数の導電路形成部と、これらの導電路形成部を相互に絶縁する絶縁部とよりなり、当該導電路形成部の各々が、対応する電極構造体の表面電極部上に位置するよう配置されており、
前記第2の異方導電性シートは、前記シート状コネクターにおける電極構造体に対応するパターンに従って配置された、それぞれ厚み方向に伸びる複数の導電路形成部と、これらの導電路形成部を相互に絶縁する絶縁部とよりなり、当該導電路形成部の各々が、対応する電極構造体の裏面電極部上に位置するよう配置されており、
前記第1の異方導電性シートにおける導電路形成部の径に対する前記第2の異方導電性シートにおける導電路形成部の径の比が0.3?0.9であることを特徴とする異方導電性コネクター装置。」

(2)刊行物
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物、刊行物の記載事項、及び、刊行物に記載された発明は、前記「2.[理由](2)刊行物」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明と刊行物に記載された発明とを対比する。

本願発明は、前記「2.[理由]」で検討した本件補正発明において、
異方導電性コネクター装置について、「検査対象である回路装置と、検査用回路基板との間に介在されて当該回路装置の被検査電極と当該検査用回路基板の検査用電極との電気的接続を行なうための異方導電性コネクター装置であって」、及び、「第1の異方導電性シートが、検査対象である回路装置に接触されること」とあったところ、その限定を省くものである。

そうすると、本願発明の構成要件の全てを含み、更に他の要件を付加したものに相当する本件補正発明が前記「2.[理由](4)当審の判断」に示したとおり、刊行物1乃至3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1乃至3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1乃至3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-03-16 
結審通知日 2009-03-17 
審決日 2009-03-30 
出願番号 特願2003-11985(P2003-11985)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01R)
P 1 8・ 575- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲垣 浩司  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 長崎 洋一
清水 富夫
発明の名称 異方導電性コネクター装置および回路装置の検査装置  
代理人 大井 正彦  
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